特許第6145110号(P6145110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6145110
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物およびその成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 69/00 20060101AFI20170529BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20170529BHJP
   C08L 51/04 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   C08L69/00
   C08L33/06
   C08L51/04
【請求項の数】17
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-547090(P2014-547090)
(86)(22)【出願日】2012年12月5日
(65)【公表番号】特表2015-504936(P2015-504936A)
(43)【公表日】2015年2月16日
(86)【国際出願番号】KR2012010470
(87)【国際公開番号】WO2013094898
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年11月2日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0137735
(32)【優先日】2011年12月19日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2011-0141788
(32)【優先日】2011年12月23日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516257888
【氏名又は名称】ロッテ アドバンスト マテリアルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ジン ファ
(72)【発明者】
【氏名】クォン,キ ヘ
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チュ ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ク,チャ カン
(72)【発明者】
【氏名】パク,カン ソ
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−500914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08L 33/04−33/16
C08L 51/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリカーボネート樹脂;および
(B)ビフェニル基またはターフェニル基を含有する(メタ)アクリル系共重合体;を含前記(B)(メタ)アクリル系共重合体の屈折率は、1.495ないし1.640である、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)ポリカーボネート樹脂50重量%ないし99重量%、および前記(B)(メタ)アクリル系共重合体1重量%ないし50重量%を含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)ポリカーボネート樹脂1重量%ないし49重量%、および前記(B)(メタ)アクリル系共重合体51重量%ないし99重量%を含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)(メタ)アクリル系共重合体は、(b1)屈折率が1.580ないし1.700であるビフェニル基またはターフェニル基を含有する(メタ)アクリレート1重量%ないし50重量%、(b2)単官能性不飽和単量体0重量%ないし99重量%、および(b3)屈折率が1.490ないし1.579である脂環式または芳香族(メタ)アクリレート0重量%ないし50重量%を含む単量体から誘導された単位を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(b1)(メタ)アクリレートは、下記式1で表される、請求項に記載の熱可塑性樹脂組成物:
【化1】
(前記式1中、Rは水素またはメチル基であり、mは0ないし10の整数であり、Xは置換または非置換のビフェニル基および置換または非置換のターフェニル基からなる群から選ばれる)。
【請求項6】
前記(b2)単官能性不飽和単量体は、炭素数1ないし8のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸を含む不飽和カルボン酸;無水マレイン酸を含む酸無水物;ヒドロキシ基を含有する(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド;不飽和ニトリル;アリルグリシジルエーテル;グリシジルメタアクリレート;および芳香族ビニル系単量体の1種以上を含む、請求項4または5に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記(b3)屈折率が1.490ないし1.579である脂環式または芳香族(メタ)アクリレートは、下記式2で表される化合物、下記式3で表される化合物、またはこれらの混合物を含む、請求項4〜6のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物:
【化2】
(前記式2中、Rは水素またはメチル基であり、mは0ないし10の整数であり、Yは置換もしくは非置換の炭素数6ないし20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6ないし20のアリール基である);
【化3】
(前記式3中、Rは水素またはメチル基であり、mは0ないし10の整数であり、Zは酸素(O)または硫黄(S)であり、Arは置換もしくは非置換の炭素数6ないし20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6ないし20のアリール基である)。
【請求項8】
前記(B)(メタ)アクリル系共重合体は、重量平均分子量が3,000g/molないし300,000g/molである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記(B)(メタ)アクリル系共重合体は、非架橋構造である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
前記(B)(メタ)アクリル系共重合体は、ガラス転移温度が90℃ないし150℃で、前記ガラス転移温度以上の温度で押出または射出できる、請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂組成物は、(C)ゴム変性ビニル系グラフト共重合体樹脂をさらに含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
前記(C)ゴム変性ビニル系グラフト共重合体樹脂は、ゴムコアに不飽和単量体がグラフトされてシェルが形成された構造を有し、前記不飽和単量体は、炭素数1ないし12のアルキル(メタ)アクリレート、酸無水物、および炭素数1ないし12のアルキルまたはフェニル核置換マレイミド中の1種以上を含む、請求項11に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項13】
前記熱可塑性樹脂組成物は、難燃剤、界面活性剤、核剤、カップリング剤、充填剤、可塑剤、衝撃補強剤、滑剤、抗菌剤、離型剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、相溶化剤、無機物添加剤、静電気防止剤、顔料および染料中の1種以上をさらに含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物から形成された成形品。
【請求項15】
請求項に記載の熱可塑性樹脂組成物から形成され、ボールタイプスクラッチプロファイルテスト(Ball−type Scratch Profile Test)による幅(width)が180μmないし350μmで、鉛筆硬度が2Bないし3Hの範囲である、成形品。
【請求項16】
請求項に記載の熱可塑性樹脂組成物から形成され、全透過光が85%以上で、ボールタイプスクラッチプロファイルテスト(Ball−type Scratch Profile Test)による幅(width)が210μm以下で、ASTM D1525による耐熱度(荷重5Kg,50℃/hr基準)が110℃以上である、成形品。
【請求項17】
請求項11に記載の熱可塑性樹脂組成物から形成され、全透過光が40%以上で、ボールタイプスクラッチプロファイルテスト(Ball−type Scratch Profile Test)による幅(width)が280μm以下で、ASTM D1525による耐熱度(荷重5Kg,50℃/hr基準)が105℃以上で、ASTM D256による1/8”アイゾッドノッチ衝撃強度が8Kg・cm/cm以上である、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物およびその成形品に関するものである。より具体的には、本発明は、ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体とポリカーボネート樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物およびその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は、ガラスや金属に比べて比重が低く、成形性、耐衝撃性等の物性に優れる。近年、電気電子製品の低原価、大型化、軽量化の趨勢に従い、熱可塑性樹脂を用いたプラスチック製品が、既存のガラスや金属が使用されていた領域を急速に代替してきており、電気電子製品から自動車部品に至るまで使用領域を広げている。これにより、外装材料における機能および外観の性能が重要になってきており、外部からの衝撃や傷からの耐スクラッチ性や、火災に対する安全性のための難燃性に対する要求も高くなっている。
【0003】
ポリカーボネート樹脂は、機械的強度や難燃性が非常に優れており、また、透明性および耐候性に優れるだけでなく、耐衝撃性、熱安定性等に非常に優れるが、耐スクラッチ性が非常に脆弱であるという短所がある。
【0004】
アクリル樹脂、特にポリメチルメタアクリレート(PMMA)樹脂は、透明性、耐候性、機械的強度、表面光沢、接着力等に優れ、特に、耐スクラッチ性が非常に優れているが、耐衝撃性および難燃性が非常に脆弱だという短所がある。
【0005】
前記問題点を克服し、耐衝撃性および耐スクラッチ性能を含む機械的な物性を同時に達成するために、PMMA樹脂の製造時に、高屈折率単量体を共重合する方法、ポリカーボネートとアクリル系樹脂、好ましくはPMMAを混用してPC/PMMA樹脂を製造する方法等が開発された。また、相溶性が高いPC/PMMA樹脂を製造するために、屈折率が高いアクリル系共重合体を適用する耐スクラッチ性が高いポリカーボネートとアクリルアロイ樹脂も開発された。しかし、従来開発された高屈折率単量体が導入された共重合体は、屈折率や耐熱性の改善に限界があり、前記ポリカーボネートとアクリルアロイ樹脂は、少ない含有量の難燃剤を添加して難燃性を発現させることが難しく、難燃剤の添加時に耐熱度を含む機械的な物性が低下するという短所がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、耐熱性、衝撃性および耐スクラッチ性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、難燃性、透明性、着色性および機械的物性に優れたバランスを有する熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
本発明のまた別の目的は、ポリカーボネートとの相溶性が高いアクリル共重合体を適用して、混合時に透明性が維持される熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【0009】
本発明のまた別の目的は、ゴム変性ビニル系グラフト共重合体の適用時にフローマーク(Flow Mark)が発生しない熱可塑性樹脂組成物を提供するためのものである。
【0010】
本発明のまた別の目的は、前記熱可塑性樹脂組成物を用いて製造されたプラスチック成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一つの観点は、熱可塑性樹脂組成物に関するものである。前記熱可塑性樹脂組成物は、(A)ポリカーボネート樹脂;および(B)ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体;を含むことを特徴とする。
【0012】
具体例において、前記(B)ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体の屈折率は約1.495ないし約1.640であり得る。
【0013】
第1具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、前記(A)ポリカーボネート樹脂約50重量%ないし約99重量%、および前記(B)ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体約1重量%ないし約50重量%を含み得る。
【0014】
第2具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、前記(A)ポリカーボネート樹脂約1重量%ないし約49重量%、および前記(B)ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体約51重量%ないし約99重量%を含み得る。
【0015】
具体例において、前記(B)ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体は、(b1)屈折率が約1.580ないし約1.700であるビフェニル基含有(メタ)アクリレート約1重量%ないし約50重量%、(b2)単官能性不飽和単量体約0重量%ないし約99重量%、および(b3)屈折率が約1.490ないし約1.579である脂環式または芳香族(メタ)アクリレート約0重量%ないし約50重量%を含む単量体から誘導された単位を含有することができる。
【0016】
具体例において、前記(b1)ビフェニル基含有(メタ)アクリレートは、下記式1で表すことができる:
【0017】
【化1】
【0018】
(前記式1中、Rは水素またはメチル基であり、mは0ないし10の整数であり、Xは置換または非置換のビフェニル基および置換または非置換のターフェニル基からなる群から選ばれる)。
【0019】
具体例において、前記(b2)単官能性不飽和単量体は、炭素数1ないし8のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸を含む不飽和カルボン酸;無水マレイン酸を含む酸無水物;ヒドロキシ基を含有する(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド;不飽和ニトリル;アリルグリシジルエーテル;グリシジルメタアクリレート;芳香族ビニル系単量体のうち、1種以上を含むことができる。
【0020】
具体例において、前記(b3)屈折率が約1.490ないし約1.579である脂環式または芳香族(メタ)アクリレートは、下記式2で表される化合物、下記式3で表される化合物、またはこれらの混合物を含むことができる:
【0021】
【化2】
【0022】
(前記式2中、Rは水素またはメチル基であり、mは0ないし10の整数であり、Yは置換もしくは非置換の炭素数6ないし20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6ないし20のアリール基である);
【0023】
【化3】
【0024】
(前記式3中、Rは水素またはメチル基であり、mは0ないし10の整数であり、Zは酸素(O)または硫黄(S)であり、Arは置換もしくは非置換の炭素数6ないし20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6ないし20のアリール基である)。
【0025】
具体例において、前記(B)ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体は、重量平均分子量が約3,000g/molないし約300,000g/molであり得る。
【0026】
具体例において、前記(B)ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体は、非架橋構造であり得る。
【0027】
具体例において、前記(B)ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体は、ガラス転移温度が約90℃ないし約150℃であり、前記ガラス転移温度以上の温度で押出または射出できるものであり得る。
【0028】
第3具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、(C)ゴム変性ビニル系グラフト共重合体樹脂をさらに含むことができる。
【0029】
具体例において、前記(C)ゴム変性ビニル系グラフト共重合体樹脂は、ゴムコアに不飽和単量体がグラフトされてシェルが形成された構造を有し、前記不飽和単量体は、炭素数1ないし12のアルキル(メタ)アクリレート、酸無水物、および炭素数1ないし12のアルキルまたはフェニル核置換マレイミドのうち、少なくとも1種以上を含むことができる。
【0030】
具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、難燃剤、界面活性剤、核剤、カップリング剤、充填剤、可塑剤、衝撃補強剤、滑剤、抗菌剤、離型剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、相溶化剤、無機物添加剤、静電気防止剤、顔料および染料のうち、少なくとも1種以上をさらに含むことができる。
【0031】
本発明の別の観点は、前記熱可塑性樹脂組成物から形成された成形品に関するものである。
【0032】
具体例において、前記成形品は、第1具体例にかかる熱可塑性樹脂組成物から形成され、ボールタイプスクラッチプロファイルテスト(Ball‐type Scratch Profile Test)による幅(width)が約180μmないし約350μmで、鉛筆硬度が2Bないし3Hの範囲であり得る。
【0033】
具体例において、前記成形品は、第2具体例にかかる熱可塑性樹脂組成物から形成され、全透過光が約85%以上で、ボールタイプスクラッチプロファイルテスト(Ball‐type Scratch Profile Test)による幅(width)が約210μm以下で、ASTM D1525による耐熱度(荷重5Kg,50℃/hr基準)は約110℃以上であり得る。
【0034】
具体例において、前記成形品は、第3具体例にかかる熱可塑性樹脂組成物から形成され、全透過光が約40%以上で、ボールタイプスクラッチプロファイルテスト(Ball‐type Scratch Profile Test)による幅(width)が約280μm以下で、ASTM D1525による耐熱度(荷重5Kg,50℃/hr基準)が約105℃以上で、ASTM D256による1/8”アイゾッドノッチ衝撃強度は約8Kg・cm/cm以上であり得る。
【発明の効果】
【0035】
本発明は、耐熱性、難燃性、耐スクラッチ性、機械的物性、透明性の全てが優れるため電気電子製品の部品に最適に適用することができ、アクリル樹脂の透明性と耐スクラッチ性等の優れた物性を維持し、改善された衝撃性を有する熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。また、前記熱可塑性樹脂組成物を使用して既存の製品より優れた特性を示すプラスチック成形品を製造することができ、これを各種電気・電子部品または自動車部品に好ましく使用できるという、発明の効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の具体例を詳しく説明する。但し、これは例示として提示するものであり、これによって本発明が制限されるものではなく、本発明は後述する請求項の範囲によって定義されるのみである。
【0037】
本明細書において特別な言及がない限り、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」及び「メタクリル」の両方が含まれることを意味する。例えば、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」と「メタクリレート」の両方が含まれることを意味する。
【0038】
また、「置換」は、化合物中の水素原子がハロゲン原子(F,Cl,Br,I)、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバミル基、チオール基、エステル基、カルボキシル基またはその塩、スルホン酸基またはその塩、リン酸基またはその塩、C1ないしC20(炭素数1ないし20)アルキル基、C2ないしC20アルケニル基、C2ないしC20アルキニル基、C1ないしC20アルコキシ基、C6ないしC30アリール基、C6ないしC30アリールオキシ基、C3ないしC30シクロアルキル基、C3ないしC30シクロアルケニル基、C3ないしC30シクロアルキニル基、またはこれらの組合せの置換基で置換されたものを意味する。
【0039】
本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物は、(A)ポリカーボネート樹脂、および(B)ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体を含む。ここで、前記ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体(B)の屈折率は、約1.495ないし約1.640であり得る。
【0040】
第1具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、前記(A)ポリカーボネート樹脂約50重量%ないし約99重量%、および前記(B)ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体約1重量%ないし約50重量%を含み得る。
【0041】
ここで、前記ポリカーボネート樹脂(A)の含有量は、(A)+(B)を含む樹脂中、約50重量%ないし約99重量%、好ましくは約55重量%ないし約95重量%、より好ましくは約60重量%ないし約90重量%である。前記範囲で優れた機械的特性および耐スクラッチ性のバランスを有する。
【0042】
また、前記ビフェニル基含有(メタ)アクリレート共重合体(B)の含有量は、(A)+(B)を含む樹脂中、約1重量%ないし約50重量%、好ましくは約5重量%ないし約45重量%、より好ましくは約10重量%ないし約40重量%、例えば、約10重量%ないし約30重量%である。前記範囲で耐スクラッチ性が十分に改善され、衝撃および機械的物性の低下を防止できる。
【0043】
第2具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は前記(A)ポリカーボネート樹脂約1重量%ないし約49重量%、および前記(B)ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体約51重量%ないし約99重量%を含むことができる。
【0044】
ここで、前記ポリカーボネート樹脂(A)の含有量は、(A)+(B)を含む樹脂中、約1重量%ないし約49重量%、好ましくは約10重量%ないし約40重量%、さらに好ましくは約15重量%ないし約35重量%である。前記範囲でポリカーボネートの優れた機械的特性が発現され、鉛筆硬度H以上の耐スクラッチ性を有する。
【0045】
また、前記ビフェニル基含有(メタ)アクリレート共重合体(B)の含有量は、(A)+(B)を含む樹脂中、約51重量%ないし約99重量%、好ましくは約60重量%ないし約90重量%、より好ましくは約65重量%ないし約85重量%である。前記範囲で耐スクラッチ性が十分に改善され、衝撃および機械的物性の低下を防止できる。
【0046】
また、本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、(C)ゴム変性ビニル系グラフト共重合体樹脂、および/または(D)リン系難燃剤をさらに含むことができる。
【0047】
第3具体例において、前記第2具体例にかかる熱可塑性樹脂組成物は、前記(A)+(B)を含む基礎樹脂100重量部に対して、(C)ゴム変性ビニル系グラフト共重合体樹脂は、約0重量部を超え、約30重量部以下、例えば、約0重量部を超え、約30重量部以下、好ましくは約3重量部ないし約20重量部をさらに含むことができる。
【0048】
前記範囲で、衝撃補強効果を得ることができるだけでなく、引張強度、屈曲強度、屈曲弾性率等の機械的強度を改善することができる。
【0049】
第4具体例において、前記第1具体例にかかる熱可塑性樹脂組成物は、前記(A)+(B)を含む基礎樹脂100重量部に対して、(C)ゴム変性ビニル系グラフト共重合体樹脂約0重量部ないし約30重量部、および(D)リン系難燃剤約0重量部ないし約30重量部をさらに含むことができる。
【0050】
ここで、前記ゴム変性ビニル系グラフト共重合体(C)は、前記(A)+(B)を含む基礎樹脂100重量部に対して、約0重量部ないし約30重量部、好ましくは約3重量部ないし約20重量部がさらに含まれていてもよい。前記範囲で、衝撃補強効果を得ることができるだけでなく、引張強度、屈曲強度、屈曲弾性率等の機械的強度を改善させることができる。
【0051】
また、前記リン系難燃剤(D)は、前記(A)+(B)を含む基礎樹脂100重量部に対して、約0重量部ないし約30重量部、好ましくは約3重量部ないし約20重量部がさらに含まれていてもよい。前記範囲で、他の物性が低下することなく、難燃性をさらに確保することができる。
【0052】
第5具体例において、前記第1具体例にかかる熱可塑性樹脂組成物は、前記(A)+(B)を含む基礎樹脂100重量部に対して、(C)ゴム変性ビニル系グラフト共重合体樹脂約0重量部ないし約30重量部、好ましくは約3重量部ないし約20重量部をさらに含むことができる。
【0053】
前記範囲で、衝撃補強効果を得ることができるだけでなく、引張強度、屈曲強度、屈曲弾性率等の機械的強度を改善させることができる。
【0054】
第6具体例において、前記第1具体例にかかる熱可塑性樹脂組成物は、前記(A)+(B)を含む基礎樹脂100重量部に対して、(D)リン系難燃剤約0重量部ないし約30重量部、好ましくは約3重量部ないし約20重量部をさらに含むことができる。
【0055】
前記範囲で、他の物性が低下することなく、難燃性をさらに確保することができる。
【0056】
以下、本発明の各成分について詳しく説明する。
【0057】
(A)ポリカーボネート樹脂
本発明に使用されるポリカーボネート樹脂は、通常の製造方法に従って、分子量調節剤と触媒の存在下で、二個の水酸基を含むフェノール系化合物とホスゲンを反応させて製造することができる。また、他の具体例として、前記ポリカーボネート樹脂は、二個の水酸基を含むフェノール系化合物とジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体のエステル相互交換反応を用いて製造することもできる。
【0058】
このようなポリカーボネート樹脂の製造方法において、前記二個の水酸基を含むフェノール系化合物としてはビスフェノール系化合物を使用でき、好ましくは、2,2‐ビス(4‐ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)を使用することができる。このとき、前記ビスフェノールAが、部分的または全体的に他の種類の二個の水酸基を含むフェノール系化合物で代替されても構わない。使用可能な他の種類の二個の水酸基を含むフェノール系化合物の例としては、ハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン又はビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルや、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のハロゲン化ビスフェノール等を挙げることができる。
【0059】
但し、前記ポリカーボネート樹脂の製造のために使用できる二個の水酸基を含むフェノール系化合物の種類がこれに限定されるのではなく、任意の二個の水酸基を含むフェノール系化合物を使用して前記ポリカーボネート樹脂を製造することができる。
【0060】
また、前記ポリカーボネート樹脂は一種類の二個の水酸基を含むフェノール系化合物を使用した単一重合体か、或いは二種類以上の二個の水酸基を含むフェノール系化合物を使用した共重合体またはこれら混合物でもよい。
【0061】
そして、通常、ポリカーボネート樹脂は、線形ポリカーボネート樹脂、分枝形ポリカーボネート樹脂またはポリエステルカーボネート共重合体樹脂等の形態を有することができる。本発明のポリカーボネート系樹脂組成物に含まれるポリカーボネート樹脂としては、特定形態に制限されず、これら線形ポリカーボネート樹脂、分枝形ポリカーボネート樹脂またはポリエステルカーボネート共重合体樹脂等を全て使用することができる。
【0062】
前記線形ポリカーボネート樹脂としては、例えば、ビスフェノールA系ポリカーボネート樹脂を使用でき、前記分枝形ポリカーボネート樹脂としては、例えば、トリメリック無水物またはトリメリック酸等の多官能性芳香族化合物を二個の水酸基を含むフェノール系化合物およびカーボネート前駆体と反応させて製造されたものを使用することができる。また、前記ポリエステルカーボネート共重合体樹脂としては、例えば、二官能性カルボン酸を二個の水酸基を含むフェノールおよびカーボネート前駆体と反応させて製造されたものを使用できる。これ以外にも、通常の線形ポリカーボネート樹脂、分枝形ポリカーボネート樹脂またはポリエステルカーボネート共重合体樹脂を制限なく使用できる。
【0063】
本発明においてポリカーボネート樹脂は、単独で、或いは分子量が異なる2種以上を混合して使用できる。
【0064】
(B)ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体
本発明に使用されるビフェニル基含有(メタ)アクリレート共重合体(B)は、(b1)屈折率が約1.580ないし約1.700であるビフェニル基含有(メタ)アクリレートと、(b2)単官能性不飽和単量体の共重合体になり得る。
【0065】
具体例において、前記ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体(B)は、(b1)屈折率が約1.580ないし約1.700であるビフェニル基含有(メタ)アクリレート約1重量%ないし約50重量%、(b2)単官能性不飽和単量体約0重量%ないし約99重量%、および(b3)屈折率が約1.490ないし約1.579である脂環式または芳香族(メタ)アクリレート約0重量%ないし約50重量%を含む単量体から誘導された単位を含有することができる。以下、各単量体について説明する。
【0066】
(b1)屈折率が約1.580ないし約1.700であるビフェニル基含有(メタ)アクリレート
本発明に使用されるビフェニル基含有(芳香族)(メタ)アクリレート(b1)は、それ自体の屈折率が約1.580ないし約1.700であって、ビフェニル構造を含有することを特徴とする。
【0067】
具体例において、前記ビフェニル基含有(メタ)アクリレート(b1)は、下記式1で表される化合物であり得る。
【0068】
【化4】
【0069】
前記式1中、Rは水素またはメチル基であり、mは0ないし10の整数であり、Xは置換もしくは非置換のビフェニル基、および置換もしくは非置換のターフェニル基からなる群から選ばれる。例えば、Xはオルソビフェニル基、メタビフェニル基、パラビフェニル基、2,6‐ターフェニル基、オルソターフェニル基、メタターフェニル基、またはパラターフェニル基であり得る。
【0070】
前記ビフェニル基含有(メタ)アクリレート(b1)の例としては、オルソビフェニルメタクリレート、メタビフェニルメタクリレート、パラビフェニルメタクリレート、2,6−ターフェニルメタクリレート、オルソターフェニルメタクリレート、メタターフェニルメタクリレート、パラターフェニルメタクリレート、4−(4−メチルフェニル)フェニルメタクリレート、4−(2−メチルフェニル)フェニルメタクリレート、2−(4−メチルフェニル)フェニルメタクリレート、2−(2−メチルフェニル)フェニルメタクリレート、4−(4−エチルフェニル)フェニルメタクリレート、4−(2−エチルフェニル)フェニルメタクリレート、2−(4−エチルフェニル)フェニルメタクリレート、2‐(2‐エチルフェニル)フェニルメタクリレート等があり、これに制限されるのではない。これらは、単独または2種以上混合して使用できる。
【0071】
前記芳香族(メタ)アクリレート(b1)単位は、前記(メタ)アクリレート共重合体(B)中約1重量%ないし約50重量%で含有されうる。前記範囲で、高屈折率、透明性、耐熱性の物性バランスを得ることができる。好ましくは約5重量%ないし約40重量%、例えば、約10重量%ないし約35重量%で含有できる。前記範囲でより優れた耐熱性および高屈折率の物性バランスを得ることができる。
【0072】
(b2)単官能性不飽和単量体
本発明に使用される単官能性不飽和単量体(b2)は、不飽和基を1個含有する単量体であり、例えば、炭素数1ないし8のアルキル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸を含む不飽和カルボン酸;無水マレイン酸を含む酸無水物;ヒドロキシ基を含有する(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド;不飽和ニトリル;アリルグリシジルエーテル;グリシジルメタアクリレート;芳香族ビニル系単量体、これらの混合物等を含むことができる。これらは、単独または2種以上混合して適用できる。
【0073】
前記単官能性不飽和単量体(b2)の非限定的な例としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシプロピルアクリレート、モノグリセロールアクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタアクリレート、スチレン、アルファ‐メチルスチレン等を例示することができる。好ましくは炭素数1ないし8のアルキル(メタ)アクリレート、より好ましくは炭素数1ないし4のアルキル(メタ)アクリレートを使用することができる。この場合、より優れた耐スクラッチ性と透明性を達成することができる。
【0074】
具体例において、メタアクリレートとアクリレートを混合して適用することができる。この場合、メタアクリレートとアクリレートの比率は約15:1ないし約45:1になり得る。前記範囲でより優れた熱安定性および流動性を有することができる。
【0075】
前記単官能性不飽和単量体(b2)単位は、(メタ)アクリレート共重合体(B)中約0重量%ないし約99重量%、好ましくは約50重量%ないし約95重量%、より好ましくは約55重量%ないし約89重量%で含有することができる。前記範囲で、耐スクラッチ性、流動性、透明性および難燃性の物性バランスを得ることができる。
【0076】
(b3)屈折率が約1.490ないし約1.579である脂環式または芳香族(メタ)アクリレート
本発明に使用される脂環式または芳香族(メタ)アクリレート(b3)は、それ自体の屈折率が約1.490ないし約1.579の範囲を有し、下記式2で表される化合物、下記式3で表される化合物、またはこれらの混合物であり得る。
【0077】
【化5】
【0078】
前記式2中、Rは水素またはメチル基であり、mは0ないし10の整数であり、Yは置換もしくは非置換の炭素数6ないし20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6ないし20のアリール基である。
【0079】
前記Yの例としては、シクロヘキシル基、フェニル基、メチルフェニル基、メチルエチルフェニル基、メトキシフェニル基、プロピルフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、ベンジルフェニル基等であり得る。
【0080】
【化6】
【0081】
前記式3中、Rは水素またはメチル基で、mは0ないし10の整数であり、Zは酸素(O)または硫黄(S)で、Arは置換もしくは非置換の炭素数6ないし20のシクロアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6ないし20のアリール基である。
【0082】
前記Arの例としては、シクロヘキシル基、フェニル基、メチルフェニル基、メチルエチルフェニル基、メトキシフェニル基、シクロヘキシルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、ベンジルフェニル基等であり得る。
【0083】
前記脂環式または芳香族(メタ)アクリレート(b3)の非限定的な例としては、シクロヘキシルメタクリレート、フェノキシメタクリレート、2−エチルフェノキシメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2−エチルチオフェニルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、3−フェニルプロピルメタクリレート、4−フェニルブチルメタクリレート、2−2−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−3−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−4−メチルフェニルエチルメタクリレート、2−(4−プロピルフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−(1−メチルエチル)フェニル)エチルメタクリレート、2−(4−メトキシフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−シクロヘキシルフェニル)エチルメタクリレート、2−(2−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−クロロフェニル)エチルメタクリレート、2−(4−ブロモフェニル)エチルメタクリレート、2−(3−フェニルフェニル)エチルメタクリレート、および2−(4−ベンジルフェニル)エチルメタクリレートのようなメタクリル酸等を例示することができる。これらは、単独または2種以上混合して使用できる。
【0084】
前記脂環式または芳香族(メタ)アクリレート(b3)単位は、(メタ)アクリレート共重合体(B)中約0重量%ないし約50重量%、好ましくは約0重量%ないし40重量%、より好ましくは約1重量%ないし約35重量%で含むことができる。前記範囲でより優れた屈折率および耐熱性の物性バランスを有する。
【0085】
本発明のビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体(B)は、共重合体製造分野で知られている通常の重合方法、例えば、塊状重合、乳化重合または懸濁重合で製造することができる。好ましくは懸濁重合で製造することができる。
【0086】
具体例において、前記ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体(B)は、前記(b1)屈折率が約1.580ないし約1.700であるビフェニル基含有(メタ)アクリレート約1重量%ないし約50重量%、前記(b2)単官能性不飽和単量体約0重量%ないし約99重量%、および前記(b3)屈折率が約1.490ないし約1.579である脂環式または芳香族(メタ)アクリレート約0重量%ないし約50重量%を含む単量体混合物を重合して製造することができる。例えば、前記単量体混合物に重合開始剤および連鎖移動剤を投入して反応混合液を製造し、その反応混合液を懸濁安定剤が溶解された水溶液に投入して懸濁重合し製造できる。
【0087】
前記の重合温度と重合時間は適切に調節することができる。例えば、約65℃ないし約125℃、好ましくは約70℃ないし約120℃の重合温度で、約2時間ないし約8時間反応させることができる。
【0088】
前記重合開始剤としては、重合分野で知られている通常のラジカル重合開始剤を使用することができ、例えば、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、モノクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビス−(2,4−ジメチル)−バレロニトリル等を使用できるが、これに制限されるのではない。前記重合開始剤は、単独または2種以上混合して適用することができる。具体例において、前記重合開始剤は、前記単量体混合物100重量部に対して、約0.01重量部ないし約10重量部、好ましくは約0.03重量部ないし約5重量部で含まれうる。
【0089】
前記連鎖移動剤は、(メタ)アクリレート共重合体(B)の重量平均分子量を調節し、熱安定性を向上させるために使用されてもよい。重量平均分子量は、単量体混合物に含まれる重合開始剤の含有量によって調節することができる。しかし、連鎖移動剤によって重合反応が停止すると、鎖の末端は第2炭素構造になる。これは、連鎖移動剤を使用しなかった時に生成される二重結合を有する鎖の末端よりも結合強度がより強い。よって、連鎖移動剤の添加は熱安定性を向上させることができ、最終的には、(メタ)アクリレート共重合体(B)の光特性を向上させることができる。
【0090】
前記連鎖移動剤としては、重合分野で知られている通常の連鎖移動剤を使用することができ、例えば、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、イソプロピルメルカプタンおよびn−アミルメルカプタン等を含むCH(CHSH(nは1ないし20の整数である)形態のアルキルメルカプタン;カーボンテトラクロライド等を含むハロゲン化合物;及びアルファメチルスチレンダイマー又はアルファエチルスチレンダイマー等を含む芳香族化合物等を使用できるが、これに制限されるのではない。これらは単独または2種以上混合して適用できる。前記連鎖移動剤は、前記単量体混合物100重量部に対して、約0.01重量部ないし約10重量部、好ましくは約0.02重量部ないし約5重量部で含まれうる。前記範囲で熱安定性および適切な分子量を有することができる。
【0091】
また、前記ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体(B)は、前記単量体混合物に懸濁安定性、懸濁安定補助剤等の添加剤を1種以上さらに含んで重合することもできる。前記添加剤は、前記単量体混合物100重量部に対して、約0.001重量部ないし約20重量部で含まれ得るが、これに制限されるものではない。
【0092】
前記懸濁安定剤としては、ポリアルキルアクリレート‐アクリル酸、ポリオレフィン‐マレイン酸、ポリビニルアルコール、セルロース等を含む有機懸濁安定剤;トリカルシウムホスフェート等を含む無機懸濁安定剤;これらの混合物等が使用できるが、これに制限されるものではない。
【0093】
前記懸濁安定補助剤としては、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等が使用でき、水溶性高分子や単量体の溶解度特性を制御するために硫酸ナトリウム等を添加することもできる。
【0094】
前記酸化防止剤としては、オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール−ビス−3(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリ(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、n−オクタデシル−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリ(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアネート、3−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルチオプロピオネートメタンおよびジ−フェニル−イソオクチルホスフィナート等が使用できるが、これに制限されるものではない。これらは単独または2種以上を混合して適用できる。
【0095】
前記重合が完了した後、冷却、洗浄、脱水、乾燥工程を経て粒子形態のビフェニル基含有(メタ)アクリレート共重合体(B)を得ることができる。
【0096】
具体例において、前記ビフェニル基含有(メタ)アクリレート共重合体(B)は、非架橋構造を有し、好ましくは線形構造を有する。このような非架橋構造を有するビフェニル基含有(メタ)アクリレート共重合体(B)は、押出および射出が可能で、ポリカーボネート樹脂(A)との相溶性に優れる。
【0097】
具体例において、前記ビフェニル基含有(メタ)アクリレート共重合体(B)は、ガラス転移温度が約90℃ないし約150℃、好ましくは約101℃ないし約130℃である。前記ビフェニル基含有(メタ)アクリレート共重合体(B)は、前記ガラス転移温度以上の温度で押出または射出が可能である。
【0098】
具体例において、前記ビフェニル基含有(メタ)アクリレート共重合体(B)は、ASTM D1525によって、5Kg荷重および50℃/hr条件で測定されたビカット軟化温度(VST)が約100℃ないし約140℃、好ましくは約110℃ないし約130℃となり得る。
【0099】
具体例において、前記ビフェニル基含有(メタ)アクリレート共重合体(B)は、重量平均分子量が約3,000g/molないし約300,000g/mol、好ましくは約10,000g/molないし約290,000g/mol、より好ましくは約40,000g/molないし約280,000g/mol、例えば50,000g/molないし250,000g/molになり得る。前記範囲内で、相溶性と機械的物性を同時に維持することができる。
【0100】
前記ビフェニル基含有(メタ)アクリレート共重合体(B)は、2.5mm厚で屈折率が約1.495ないし約1.640、好ましくは約1.50ないし約1.60で、ASTM D1003によって測定した透過率が85%以上、好ましくは90%以上になり得る。
【0101】
(C)ゴム変性ビニル系グラフト共重合体
本発明に使用されるゴム変性ビニル系グラフト共重合体(C)は、ゴムのコア構造に不飽和単量体がグラフトされてシェルが形成された構造であるコア‐シェルグラフト共重合体構造を有するものであり、熱可塑性樹脂組成物内で衝撃補強剤の役割をする。
【0102】
前記ゴムとしては、炭素数4ないし6のジエン系ゴム、アクリレート系ゴム、およびシリコン系ゴムの1種以上のゴム単量体を重合して製造されたものを使用することが好ましく、構造的安定性の面で、シリコン系ゴムを単独で、またはシリコン系ゴムおよびアクリレート系ゴムを混合して使用することがより好ましい。
【0103】
前記アクリレート系ゴムとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート単量体を使用することができ、このとき、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート等の硬化剤をさらに使用することができる。
【0104】
前記シリコン系ゴムは、シクロシロキサンから製造されるものであり、具体的な例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトロシロキサン、及びオクタフェニルシクロテトラシロキサン中の1種以上から製造できる。このとき、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等の硬化剤をさらに使用することができる。
【0105】
前記ゴムは、前記ゴム変性ビニル系グラフト共重合体(C)100重量部に対して、約50重量部ないし約95重量部、好ましくは約60重量部ないし約90重量部、より好ましくは約70重量部ないし約85重量部で含むことができる。前記範囲で樹脂との相溶性に優れ、その結果、優れた衝撃補強効果を表すことができる。
【0106】
前記ゴムの平均粒径は、約0.1μmないし約1μm、好ましくは約0.4μmないし約0.9μmであり得る。前記範囲で耐衝撃性と着色性バランスの維持により好ましい。
【0107】
前記ゴムにグラフトされる不飽和単量体としては、炭素数1ないし12のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリレート、酸無水物、及び炭素数1ないし12のアルキルまたはフェニル核置換マレイミド中の1種以上の不飽和化合物を使用することができる。
【0108】
前記アルキル(メタ)アクリレートの具体的な例としては、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、プロピルメタアクリレート等を例示でき、このうち、メチルメタアクリレートが好ましく使用できる。
【0109】
前記酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸無水物を使用できる。
【0110】
前記のグラフトされる不飽和単量体は、前記ゴム変性ビニル系グラフト共重合体(C)100重量部に対して、約5重量部ないし約50重量部、好ましくは約10重量部ないし約40重量部、より好ましくは約15重量部ないし約30重量部で含まれ得る。前記範囲で樹脂との相溶性に優れ、優れた衝撃補強効果を表すことができる。
【0111】
(D)リン系難燃剤
本発明に使用されるリン系難燃剤は、難燃性をより確保するために添加されるものであり、例えば、赤リン、ホスフェート(Phosphate)、ホスホネート(Phosphonate)、ホスフィナート(Phosphinate)、ホスフィンオキシド(Phosphine Oxide)、ホスファゼン(Phosphazene)及びこれらの金属塩等の通常のリン含有難燃剤が制限なく使用できる。
【0112】
一具体例において、前記リン系難燃剤としては、下記式4で表されるものが使用できる。
【0113】
【化7】
【0114】
前記式4中、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、C6‐C20(炭素数6ないし20)のアリール基、またはC1‐C10アルキル置換C6‐C20アリール基で、Rはレゾルシノール、ハイドロキノール、ビスフェノール‐A、またはビスフェノール‐Sのジアルコールから誘導されたものの一つであり、nは0ないし10の整数である。
【0115】
前記式4において、i)nが0の場合を具体的に例示すると、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシリルホスフェート、トリ(2,4,6−トリメチルフェニル)ホスフェート,トリ(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート、トリ(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート等があり、ii)nが1の場合を具体的に例示すると、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ハイドロキノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールA−ビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニルホスフェート)、ハイドロキノールビス(2,6−ジメチルフェニルホスフェート)等がある。iii)nが2以上の場合は、オリゴマー形態の混合物の形態で存在する。
【0116】
他の具体例において、前記リン系難燃剤としては、下記式5で表されるものを使用できる。
【0117】
【化8】
【0118】
前記式5中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、およびR10は、それぞれ独立して、炭素数1ないし6のアルキル基、炭素数6ないし20のアリール基、炭素数1ないし6のアルキル置換炭素数6ないし20のアリール基、炭素数6ないし20のアラルキル基、炭素数1ないし6のアルコキシ基、炭素数6ないし20のアリールオキシ基、アミノ基またはヒドロキシ基から任意的に選ばれた置換基を表し、R11はC6ないしC30ジオキシアリールまたはアルキル置換されたC6ないしC30ジオキシアリール基誘導体であり、nは数平均重合度であってnの平均値は0.3ないし3であり、kとjは0ないし10の整数である。ここで、前記式5のアルコキシ基またはアリールオキシ基は、アルキル基、アリール基、アミノ基、またはヒドロキシル基等で置換できる。
【0119】
本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、難燃剤、界面活性剤、核剤、カップリング剤、充填剤、可塑剤、衝撃補強剤、滑剤、抗菌剤、離型剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、相溶化剤、無機物添加剤、静電気防止剤、顔料および染料等の添加剤をさらに含むことができる。前記添加剤は、単独または2種以上混合して適用することができる。これら添加剤は、前記ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体(B)の重合工程時に添加して、熱可塑性樹脂組成物中ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体(B)に含むこともでき、熱可塑性樹脂組成物の通常のペレット化工程(押出工程)に添加されて前記熱可塑性樹脂組成物全体に含むこともできるが、その方法は特に制限されない。前記添加剤は、前記(A)+(B)からなる樹脂100重量部に対して、約0.001重量部ないし約20重量部で含まれ得るが、これに制限されるのではない。
【0120】
本発明の他の観点は、前記熱可塑性樹脂組成物から形成された成形品に関するものである。前記成形品を製造するための成形方法としては、押出、射出、キャスティング等を適用できるが、これに制限されるのではない。前記成形方法は、本発明が属する分野の通常の知識を有する者に広く知られている。例えば、本発明の構成成分とその他添加剤を同時に混合した後、押出器内から溶融押出してペレット形態に製造し、前記ペレットを用いて射出および圧縮成形品を製造できる。
【0121】
前記第1具体例にかかる熱可塑性樹脂組成物から形成された成形品は、ボールタイプスクラッチプロファイルテスト(Ball‐type Scratch Profile Test)による幅(width)が約180μmないし約350μm、好ましくは約190μmないし約260μmで、鉛筆硬度が2Bないし3H、好ましくはHないし2Hの範囲になり得る。
【0122】
前記成形品は、各種プラスチック成形品等を含むことができる。本発明の第1具体例にかかる熱可塑性樹脂組成物は、耐スクラッチ性、衝撃強度、透明性および成形性に優れるため、様々な製品の成形に使用できる。特に、各種電気・電子製品の外装材、部品または自動車部品、レンズ、窓ガラス等に広範囲に適用できる。例えば、前記成形品は、テレビ、オーディオ、洗濯機、カセットデッキ、MP3、電話機、ゲーム機、ビデオデッキ、コンピュータ、コピー機等の電気・電子製品のハウジングおよび自動車計器板、インストルメントパネル、ドアパネル、クォーターパネル、フィールキャップ等の自動車の内・外装材に適用できる。
【0123】
前記第2具体例にかかる熱可塑性樹脂組成物から形成された成形品は、全透過光が約85%以上、例えば、約87%ないし約99%で、ボールタイプスクラッチプロファイルテスト(Ball‐type Scratch Profile Test)による幅(width)が約210μm以下、例えば、約175μmないし約210μmで、ASTM D1525による耐熱度(荷重5Kg,50℃/hr基準)が約110℃以上、例えば、約110℃ないし約130℃になり得る。
【0124】
また、前記第3具体例にかかる熱可塑性樹脂組成物から形成された成形品は、全透過光が約40%以上、例えば、約45%ないし約70%で、ボールタイプスクラッチプロファイルテスト(Ball‐type Scratch Profile Test)による幅(width)が約280μm以下、例えば、約200μmないし約270μmで、ASTM D1525による耐熱度(荷重5Kg,50℃/hr基準)が約105℃以上、例えば、約105℃ないし約125℃で、ASTM D256による1/8”アイゾッドノッチ衝撃強度が約8Kg・cm/cm以上、約9Kg・cm/cmないし約25Kg・cm/cmになり得る。
【0125】
本発明の第2および第3具体例にかかる熱可塑性樹脂組成物は、様々な製品の成形に使用でき、特に、TVおよび事務自動化機器のハウジングのような電気、電子製品に用いられる。
【実施例】
【0126】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて本発明の構成および作用をより詳しく説明する。但し、下記実施例は本発明の理解を助けるためのものであり、本発明の範囲が下記実施例に限定されるのではない。ここに記載していない内容は、本技術分野における当業者であれば十分に技術的に類推できるもののため、その説明は省略する。
【0127】
実施例
下記実施例および比較例で使用された各成分の仕様は次の通りである:
(A)ポリカーボネート系樹脂
重量平均分子量が25,000g/molで、ビスフェノール‐A型線形ポリカーボネート樹脂である日本の帝人社のPANLITE L‐1250WPを使用した。
【0128】
(B)ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体
(B1)ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体−1
屈折率が1.640であるオルソビフェニルメタアクリレート単量体15重量%、メチルメタアクリレート単量体82.5重量%およびメチルアクリレート2.5重量%を用いて通常の懸濁重合法により共重合体を製造し、製造された共重合体の重量平均分子量は25,000g/molで、屈折率は1.5117だった。
【0129】
(B2)ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体−2
屈折率が1.640であるオルソビフェニルメタアクリレート単量体30重量%、メチルメタアクリレート単量体67.5重量%およびアクリレート2.5重量%を用いて通常の懸濁重合法により共重合体を製造し、製造された共重合体の重量平均分子量は85,000g/molで、屈折率は1.5343だった。
【0130】
(B3)ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体−3
屈折率が1.640であるパラビフェニルメタアクリレート単量体15重量%およびメチルメタアクリレート単量体85重量%を用いて通常の懸濁重合法により共重合体を製造し、製造された共重合体の重量平均分子量は55,000g/molで、屈折率は1.5119だった。
【0131】
(B4)ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体−4
屈折率が1.640であるパラビフェニルメタアクリレート単量体15重量%、メチルメタアクリレート単量体70重量%およびフェニルメタアクリレート15重量%を用いて通常の懸濁重合法により共重合体を製造し、製造された共重合体の重量平均分子量は55,000g/molで、屈折率は1.5241だった。
【0132】
(B5)ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体−5
屈折率が1.640であるオルソビフェニルメタアクリレート単量体15重量%、メチルメタアクリレート単量体82.5重量%およびメチルアクリレート2.5重量%を用いて通常の懸濁重合法により共重合体を製造し、製造された共重合体の重量平均分子量は55,000g/molで、屈折率は1.5117だった。
【0133】
(B6)ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体−6
屈折率が1.640であるパラビフェニルメタアクリレート単量体15重量%、メチルメタアクリレート単量体85重量%を用いて通常の懸濁重合法により共重合体を製造し、製造された共重合体の重量平均分子量は100,000g/molで、屈折率は1.5119だった。
【0134】
(B7)ビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体−7
屈折率が1.640であるパラビフェニルメタアクリレート単量体15重量%、メチルメタアクリレート単量体70重量%およびフェニルメタアクリレート15重量%を用いて通常の懸濁重合法により共重合体を製造し、製造された共重合体の重量平均分子量は100,000g/molで、屈折率は1.5241だった。
【0135】
(C)ゴム変性ビニル系グラフト共重合体
平均粒径が0.1〜0.3μmであるブタジエンゴム複合体70重量%に、スチレン単量体20重量%とメチルメタアクリレート単量体10重量%がグラフト重合された日本の三菱レイヨン(MITSUBISHI RAYON)社のメタブレン(METABLEN)C‐223Aを使用した。
【0136】
(D)リン系難燃剤
レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)を使用した。
【0137】
(E)アクリル系樹脂
(E1)アクリル系樹脂‐1
重量平均分子量が92,000g/molのポリメチルメタアクリレート樹脂であるLG MMA社のL84を使用した。
【0138】
(E2)アクリル系樹脂‐2
屈折率が1.570であるフェニルメタアクリレート単量体30重量%およびメチルメタアクリレート単量体70重量%を用いて通常の懸濁重合法により共重合体を製造し、製造された共重合体の重量平均分子量は25,000g/molだった。
【0139】
(E3)アクリル系樹脂‐3
屈折率が1.570であるフェニルメタアクリレート単量体30重量%およびメチルメタアクリレート単量体70重量%を用いて通常の懸濁重合法により共重合体を製造し、製造された共重合体の重量平均分子量は85,000g/molだった。
【0140】
(E4)アクリル系樹脂‐4
屈折率が1.570であるフェニルメタアクリレート単量体50重量%およびメチルメタアクリレート単量体50重量%を用いて通常の懸濁重合法により共重合体を製造し、製造された共重合体の重量平均分子量は85,000g/molだった。
【0141】
実施例1ないし4および比較例1ないし3
前記各構成成分を下記表1に記載した通りの含有量で添加した後、ヒンダードフェノール系熱安定剤0.1重量部を添加して、溶融、混錬押出してペレットを製造した。このとき、押出は、L/D=29、直径45mmの二軸押出器を使用し、製造されたペレットは80℃で6時間乾燥した後、6Oz射出器で射出して試片を製造した。製造された試片に対して下記の方法で物性を評価し、その結果を下記表1に示した。
【0142】
物性の測定方法
(1)フローマーク:L90mm×W50mm×t2.5mmの大きさの試片を準備し、肉眼でフローマークの有無を観察した。フローマークがない場合は、ポリカーボネートとビフェニル基含有(メタ)アクリル系共重合体間の相溶性が改善されたと評価できる。
【0143】
(2)透明度および色相:前記試片を使用して肉眼で、透明、半透明または不透明を判断した。
【0144】
(3)全透過光:日本電色工業社のHaze meter NDH 2000装備を用いて全透過光(TT)およびヘイズ値を測定し、全透過光は拡散透過光(DF)と平行透過光(PT)の合計光量で計算される。このとき、全透過光(TT)が高いほど、ヘイズが低いほど、透明性に優れると評価される。
【0145】
(4)衝撃強度(Izod,単位:Kgf・cm/cm):ASTM D256に規定された評価方法によって1/8”アイゾッド試片にノッチ(Notch)を作って評価した。
【0146】
(5)耐熱度(VST,単位:℃):ASTM D1525に規定されている評価方法によって荷重5Kgの錘、50℃/hr条件で測定した。
【0147】
(6)難燃度:厚さ1.5mmの試片を製造してUL94バーティカルテスト方法で難燃度を測定した。
【0148】
(7)耐スクラッチ性:BSP(Ball‐type Scratch Profile)テストによって測定した。L90mm×W50mm×t2.5mmの試片表面に0.7mm径の球形の金属チップを使用して、荷重1,000g、スクラッチ速度75mm/minで、10mmないし20mmの長さのスクラッチを加えた。加えられたスクラッチのプロファイルを、Ambios社の接触式表面プロファイル分析器(XP‐1)を使用して直径2μmの金属スタイラスチップで表面スキャンし耐スクラッチ性の尺度になるスクラッチ幅(μm)を評価した。このとき、測定されたスクラッチ幅が減少するほど耐スクラッチ性は増加する。
【0149】
(8)鉛筆硬度:試片を、23℃、相対湿度50%で48時間放置した後、JIS K 5401規格に従って鉛筆硬度を測定した。耐スクラッチ性は、鉛筆硬度の結果に従って、3B、2B、B、HB、F、H、2H、3H等で評価され、高いH値であるほど耐スクラッチ性能に優れ、高いB値であるほど耐スクラッチ物性が低下することを意味する。
【0150】
【表1】
【0151】
前記表1の結果から、実施例1ないし4は、比較例1ないし3に比べて、外観、透明度、衝撃強度、耐熱度および耐スクラッチ性が全て優れることが分かる。
【0152】
実施例5ないし6および比較例4ないし5
ゴム変性ビニル系グラフト共重合体樹脂(C)をさらに含むことを除いては、前記実施例1と同様に行った。結果は表2に示した。
【0153】
【表2】
【0154】
前記表2の結果から、実施例5ないし6は、比較例4に比べて、透明度、衝撃強度、耐熱度および耐スクラッチ性に全て優れ、比較例2に比べて透明度および耐スクラッチ性に優れることが分かる。
【0155】
実施例7および比較例6ないし7
(D)リン系難燃剤をさらに含むことを除いては、前記実施例1と同様に行った。結果は下記表3に示した。
【0156】
【表3】
【0157】
前記表3の結果から、実施例7は比較例6に比べて、衝撃強度、耐熱度および耐スクラッチ性に全て優れ、比較例7に比べて透明度および耐スクラッチ性に優れることが分かる。
【0158】
実施例8ないし9および比較例8ないし9
ゴム変性ビニル系グラフト共重合体樹脂(C)とリン系難燃剤(D)をさらに含むことを除いては、前記実施例1と同様に行った。結果は下記表4に示した。
【0159】
【表4】
【0160】
前記表4の結果から、実施例8ないし9は、比較例8に比べて、全透過光、衝撃強度、耐熱度に優れ、比較例9に比べて、外観、全透過光および耐スクラッチ性に優れることが分かる。
【0161】
実施例10ないし15および比較例10ないし16
前記各構成成分を下記表5および6に記載した通りの含有量で添加した後、ヒンダードフェノール系熱安定剤0.1重量部を添加して、溶融、混錬押出してペレットを製造した。このとき、押出は、L/D=29、直径45mmの二軸押出器を使用し、製造されたペレットは80℃で6時間乾燥した後、6Oz射出器で射出して試片を製造した。製造された試片に対して、前記の方法で、ヘイズ、衝撃強度、耐熱度および耐スクラッチ性、並びに鉛筆硬度を測定した。その結果を下記表5および6に示した。
【0162】
【表5】
【0163】
前記表5の結果から、通常のポリメチルメタアクリレートとポリカーボネートを混合した際(比較例10)、二つの樹脂間の相溶性低下によってフローマークの発生および不透明な乳白色の外観を表すことが分かり、これは全透過光の減少によるものであることが確認できる。屈折率が1.495ないし1.590間の値を有し、重量平均分子量が25,000ないし95,000の高屈折率アクリル共重合体を使用した比較例11の場合、PMMAを適用した比較例10に比べて透明性と外観が多少改善されたが、衝撃強度と耐熱性が低下し、透明性、耐スクラッチ性が十分でなかった。ポリカーボネートをブレンドせず、ポリメチルメタクリレートを単独で適用した比較例12は、衝撃強度および耐熱性が著しく低下することが確認できる
【0164】
【表6】
【0165】
前記表6の結果から、通常のPMMA樹脂を適用した比較例14の場合、フローマークの発生および全透過光の減少が確認できる。重量平均分子量が25,000ないし95,000の高屈折率アクリル共重合体を使用した比較例15の場合は、PMMAを適用した比較例14に比べて透明性と外観が多少改善されたが、衝撃強度と耐熱性が低下し、透明性、耐スクラッチ性が十分でなかった。ポリカーボネートをブレンドしない比較例16は、衝撃強度および耐熱性が低下したことが確認できる。
【0166】
本発明の単純な変形ないし変更は、本分野の通常の知識を有する者によって容易に実施でき、このような変形や変更は、全て本発明の領域に含まれると見なすことができる。