(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記中間軸は、前記駆動軸の前記第1ギアと直接的に又は間接的に係合する第2ギアと、前記第2ギアよりも小さい径を有し且つ前記出力軸のギアと直接的に又は間接的に係合する第3ギアとを有し、
前記中間軸は2つのベアリングによって支持され、
前記中間軸の前記第2ギアと前記第3ギアは前記2つのベアリングの間に位置している
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の鞍乗型電動車両。
前記クラッチ機構は、前記駆動軸と一体的に回転する複数の第1クラッチ板と、前記駆動軸の前記第1ギアと一体的に回転する、前記複数の第1クラッチ板と交互に配置されている複数の第2クラッチ板と、前記クラッチ操作子の操作に応じて前記駆動軸の軸方向において移動可能であり、前記複数の第1クラッチと前記複数の第2クラッチ板とを互いに押しつけるためのプレッシャプレートとを有する
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の鞍乗型電動車両。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動モータが出力できるトルクを増すためには、電動モータの径を増すことが有効である。ところが、電動モータとスプロケットの双方が車体の左側に配置される特許文献1の構造では、電動モータとスプロケットとの干渉を避ける必要があるので、径の大きな電動モータを利用することは難しい。この点、電動モータがスプロケットとは反対側に配置される特許文献2の構造では、電動モータとスプロケットとの干渉を生じることなく、径の大きな電動モータを使用することが可能となる。
【0006】
ところが、特許文献2では、クラッチ機構として遠心クラッチ機構が利用されている。遠心クラッチ機構の係合状態は運転者の操作によらず、電動モータの回転速度に応じて自動的に変化する。そのため、運転者は、駆動輪に伝えられるトルクをクラッチ操作によって調節することができず、専らアクセル操作によって調節する必要がある。したがって、例えば駆動輪へのトルク伝達を運転者の意思で瞬時に遮断するといった操作が困難である。
【0007】
また、特許文献1では、電動モータが設けられている駆動軸とスプロケットが設けられた出力軸との間に中間軸が配置され、クラッチ機構は中間軸に設けられている。そして、電動モータのトルクは、駆動軸上の減速ギアとクラッチ機構と一体的に回転する減速ギアとで構成される減速機構によって増大されて、クラッチ機構に入力される。この構造では、クラッチ機構が伝達すべきトルクが大きくなるので、クラッチ機構の径も大きくする必要がある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、運転者によるトルク伝達制御の自由度を増すことができ、電動モータの出力トルクを増すことができ、且つクラッチ機構を小型化できる鞍乗型電動車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するための電動二輪車は、運転者が操作するためのクラッチ操作子と、駆動軸と、前記駆動軸に設けられ、車幅方向の中心に対して第1の方向に配置され、前記駆動軸に対してトルクを発生する電動モータと、前記駆動軸に設けられ、車幅方向の中心に対して前記第1の方向とは反対方向である第2の方向に配置され、前記クラッチ操作子と接続され、前記クラッチ操作子に対する運転者の操作によって係合状態を変えることのできるクラッチ機構と、前記駆動軸に設けられ、前記クラッチ機構を介して前記電動モータのトルクを受ける第1ギアと、前記駆動軸の第1ギアを通して前記電動モータのトルクを受ける出力軸と、前記出力軸に設けられ、車幅方向の中心に対して前記第2の方向に配置され、トルク伝達部材を介して車両の駆動輪と連結されている出力部とを有する。
【0010】
この電動二輪車では、クラッチ操作子の操作によって係合状態を変えることができるクラッチ機構が採用されている。そのため、運転者によるトルク伝達制御の自由度を増すことができる。また、電動モータは車幅方向での中心に対して第1の方向に配置され、クラッチ機構と出力部は車幅方向での中心に対して第2の方向に配置されている。そのため、径の大きな電動モータを使用した場合でも、電動モータと出力部との干渉が生じないので、出力トルクの大きな電動モータを使用することが可能となる。さらに、上述の電動二輪車では、電動モータとクラッチ機構の双方が駆動軸に同軸に設けられている。そのため、例えば電動モータのトルクが減速機構を介してクラッチ機構に入力される構造に比べて、クラッチ機構が伝達すべきトルクが小さくなり、その結果、クラッチ機構を小型化できる。
【0011】
(2)(1)に記載の電動二輪車では、前記電動モータを収容しているモータハウジングの径は前記クラッチ機構を収容しているクラッチカバーの径よりも大きくてもよい。
【0012】
(3)(1)または(2)に記載の電動二輪車では、前記駆動軸と前記出力軸との間には減速機構を構成する中間軸が配置されてもよい。
【0013】
(4)(3)に記載の電動二輪車では、前記中間軸は2つのベアリングによって支持され、前記2つのベアリングは、車幅方向において前記電動モータと前記クラッチ機構との間に位置してもよい。これによると、中間軸と駆動軸との距離を小さくでき、駆動ユニットを小型化できる。
【0014】
(5)(4)に記載の電動二輪車では、前記2つのベアリングの少なくとも一部は、側面視において前記電動モータと前記クラッチ機構の双方と重なってもよい。これによると、中間軸と駆動軸との距離が小さくなり、駆動ユニットを小型化できる。
【0015】
(6)(3)乃至(5)のいずれかに記載の電動二輪車では、前記中間軸は、前記駆動軸の前記第1ギアと直接的に又は間接的に係合する第2ギアと、前記第2ギアよりも小さい径を有し且つ前記出力軸のギアと直接的に又は間接的に係合する第3ギアとを有してもよい。そして、前記中間軸は2つのベアリングによって支持され、前記中間軸の前記第2ギアと前記第3ギアは前記2つのベアリングの間に位置してもよい。これによると、中間軸を支持する2つのベアリングが車幅方向に離れる。そのため、駆動ユニットのケースが車幅方向において互いに合体する2つのケース半体で2つのベアリングを支持し易くなる。
【0016】
(7)(1)乃至(6)のいずれかに記載の電動二輪車では、前記出力部の少なくとも一部は車体の側面視において前記電動モータを収容しているモータハウジングと重なってもよい。これによると、駆動軸と出力軸との距離が小さくなるので、駆動ユニットの小型化を図ることができる。
【0017】
(8)(1)乃至(7)のいずれかに記載の電動二輪車は、インバータを含み前記電動モータに電力を供給するモータ駆動装置をさらに備えてもよい。そして、前記モータ駆動装置は前記電動モータと前記クラッチ機構の前方に配置され、車体の正面視において前記前記電動モータの少なくとも一部と前記クラッチ機構の少なくとも一部と重なるように配置されてもよい。これによると、電動モータとモータ駆動装置との距離が小さくなり、これらを繋ぐ配線を短くできる。また、車両の走行時にモータ駆動装置が受ける風が多くなるので、モータ駆動装置を効果的に冷却することが可能となる。
【0018】
(9)(8)に記載の電動二輪車は、前記電動モータに供給する電力を蓄えるバッテリと、前記バッテリを収容するバッテリケースとをさらに備えてもよい。そして、前記駆動軸、前記電動モータ、前記クラッチ機構、前記出力軸、及び前記モータ駆動装置は前記バッテリケースの下方に配置され、前記モータ駆動装置は前記バッテリケースの前端よりも後方に位置し、前記出力軸は前記バッテリケースの後端よりも前方に位置してもよい。これによると、前後方向における駆動ユニットの大型化を抑えることができる。
【0019】
(10)(1)乃至(9)のいずれかに記載の電動二輪車は前記電動モータに供給する電力を蓄えるバッテリと、前記バッテリを収容するバッテリケースとをさらに備えてもよい。そして、前記駆動軸、前記電動モータ、前記クラッチ機構、及び前記出力軸は前記バッテリケースの下方に配置され、前記駆動軸、前記電動モータ、前記クラッチ機構、及び前記出力軸は駆動ユニットケースに配置され、前記バッテリケースの幅は前記駆動軸の位置における前記駆動ユニットケースの幅よりも小さくてもよい。これによると、運転者が車体に跨がっているときに、運転者は、その両足の間にバッテリケースを配置し易くなる。
【0020】
(11)(1)乃至(10)のいずれかに記載の電動二輪車は、インバータを含み前記電動モータに電力を供給するモータ駆動装置をさらに備えてもよい。そして、前記駆動軸、前記電動モータ、前記クラッチ機構、前記出力軸及び前記モータ駆動装置は駆動ユニットケースに配置され、前記駆動ユニットケースは前記クラッチ機構及び前記出力軸が配置される第1収容室と、前記電動モータ及び前記モータ駆動装置が配置される第2収容室とを有し、前記第1収容室と前記第2収容室は前記駆動ユニットケースが有する壁部によって区画されてもよい。これによれば、駆動ユニットケースにモータ駆動装置を収容するので、モータ駆動装置と電動モータとの間の配線を短くできる。また、第1収容室と第2収容室とが区画されているので、第1収容室に配置される装置に油を供給し、第2収容室に配置される電動モータとモータ駆動装置とに油が触れることを防止できる。
【0021】
(12)(11)に記載の電動二輪車において、前記第2収容室は、前記電動モータが配置されるモータ収容室と、前記モータ駆動装置が配置される駆動装置収容室とを有し、前記駆動ユニットケースは、その一部に、前記駆動装置収容室と前記モータ収容室とを連通する開口を有してもよい。これによれば、駆動ユニットケースに形成されている開口を通して電動モータとモータ駆動装置とを電気的に接続できる。
【0022】
(13)(1)乃至(12)のいずれかに記載の電動二輪車において、前記駆動軸、前記電動モータ、前記クラッチ機構、前記出力軸は駆動ユニットケースに収容され、前記駆動ユニットケースはケース本体と、前記電動モータを収容するモータ収容室を構成するモータハウジングとを有し、前記モータハウジングは前記ケース本体に固定されてもよい。これによれば、例えばモータハウジングとケース本体との間に別の部材が配置される構造に比べて、車幅方向における駆動ユニットケースの幅を低減できる。
【0023】
(14)(1)乃至(13)のいずれかに記載の電動二輪車において、前記クラッチ機構は、前記駆動軸と一体的に回転する複数の第1クラッチ板と、前記駆動軸の前記第1ギアと一体的に回転する、前記複数の第1クラッチ板と交互に配置されている複数の第2クラッチ板と、前記クラッチ操作子の操作に応じて前記駆動軸の軸方向において移動可能であり、前記複数の第1クラッチと前記複数の第2クラッチ板とを互いに押しつけるためのプレッシャプレートとを有してもよい。
【0024】
(15)(1)乃至(14)のいずれかに記載の電動二輪車において、前記駆動軸の前記第1ギアと前記クラッチ機構のうち一方には、前記駆動軸の軸方向に突出し、他方に係合する係合部が形成されてもよい。これによると、駆動軸の半径方向に突出する凸部やスプラインを利用して第1ギアとクラッチ機構が互いに係合する構造に比べて、第1ギアの径を小さくできる。その結果、駆動軸から出力軸までの距離を小さくし、すなわち駆動ユニットの小型化を図りながら、十分な減速比を得ることが容易となる。
【0025】
(16)(1)乃至(15)のいずれかに記載の電動二輪車において、前記駆動軸に前記電動モータを冷却するためのファンが取り付けられてもよい。これによれば、電動モータの冷却性能を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施形態に係る鞍乗型電動車両について説明する。本明細書では、鞍乗型電動車両の一例として、電動二輪車1について説明する。本発明は乗型四輪車両や、鞍乗型三輪車両に適用されてもよい。
【0028】
図1は電動二輪車1の側面図である。
図2及び
図3は電動二輪車1が備えているバッテリケース20と駆動ユニットケース40を示す図である。
図2は側面図であり、
図3は正面図である。以下の説明においては、これらの図に示す矢印Y1及びY2をそれぞれ車両の前方及び後方とし、矢印X1及びX2をそれぞれ車体の右方及び左方とし、矢印Z1及びZ2はそれぞれ車体の上方及び下方とする。また、矢印X1−X2で示す方向を車幅方向或いは駆動軸11(
図7参照)の軸方向と称する。
【0029】
図1に示すように、電動二輪車1は前輪2と、前輪2を操舵するためのステアリングハンドル3とを備えている。ステアリングハンドル3はフロントフォーク4によって前輪2に連結されている。電動二輪車1は運転者が跨がることのできるシート5を有している。電動二輪車1は後輪6と、後輪6を駆動するための電動モータ30を有している。後輪6はリアアーム17によって上下動可能に支持されている。電動二輪車1は、電動モータ30に供給する電力を蓄えるバッテリ7と、バッテリ7を収容しているバッテリケース20とを有している。バッテリケース20は、その上部に、開閉可能なカバー21(
図2参照)を有してもよい。そして、バッテリ7は、カバー21を開けることにより、バッテリケース20から取り出すことができてもよい。
【0030】
電動二輪車1の一例では、シート5の下方にバッテリケース20が配置され、バッテリケース20の下方に電動モータ30が配置される。電動モータ30は駆動ユニットケース40に配置されている。後述するように、駆動ユニットケース40にはクラッチ機構50が収容されている(
図7参照)。ステアリングハンドル3には、運転者がクラッチ機構50の係合状態を操作するためのクラッチレバー3aが設けられている(クラッチレバー3aは請求項の「クラッチ操作子」に対応している)。
【0031】
図2に示すように、バッテリケース20の内側には、電動モータ30を制御する制御装置(不図示)や、灯火器などに電力を供給する低電圧バッテリ9が配置されてもよい。低電圧バッテリ9はバッテリ7の出力電圧よりも低い電圧を出力する。低電圧バッテリ9のレイアウトはこれに限定されない。例えば、低電圧バッテリ9は、バッテリケース20から離れた車体の後部に配置されてもよい。
【0032】
図4及び
図5は駆動ユニットケース40の斜視図である。
図5では駆動ユニットケース40から電動モータ30が取り外されている。
図6は駆動ユニットケース40の側面図である。
図6では、駆動ユニットケース40に収容される駆動ユニット機構が破線で示される一方で、後述する油圧ユニット55は省略されている(「駆動ユニット」は、電動モータ30、クラッチ機構50、並びに、後述する中間軸及び出力軸を含む))。
図7、
図8、及び
図9は駆動ユニットケース40の断面図である。
図7は
図6のVII−VII線で示される切断面で得られる断面図であり、
図8は
図6のVIII−VIII線で示される切断面で得られる断面図であり、
図9は
図6のIX−IX線で示される切断面で得られる断面図である。
【0033】
図7に示すように、駆動ユニットケース40には、駆動軸11と、電動モータ30とクラッチ機構50とが配置されている。
【0034】
図7に示すように、電動モータ30は駆動軸11上に設けられている。電動モータ30はバッテリ7の電力を受けて、駆動軸11に対して、駆動軸11を回転させるトルクを発生する。電動モータ30は駆動軸11と一体的に回転するロータ31と、車体に固定され、バッテリ7の電力を受けてロータ31を回転させるステータ32とを有している。電動モータ30の一例では、ステータ32は、駆動ユニットケース40の一部を構成する後述するモータハウジング33に固定される。電動モータ30は例えばラジアルギャップ型のモータである。すなわち、ステータ32はロータ31に対して駆動軸11の半径方向における外方に位置し、ロータ31の外側を取り囲んでいる。電動モータ30は例えば、ステータとロータとが駆動軸11の軸方向において対向するアキシャルギャップ型のモータでもよい。
図7に示すように、駆動軸11の端部には、電動モータ30を冷却するためのファン72が取り付けられてもよい。ファン72は電動モータ30に対して車幅方向の外方に位置している。ファン72は駆動軸11と一体的に回転し、外気を電動モータ30(より詳細には、モータハウジング33の側面)に送る。
【0035】
図7に示すように、クラッチ機構50は、電動モータ30と同様に、駆動軸11上に設けられている。クラッチ機構50は駆動軸11と一体的に回転する駆動部と、駆動部と駆動軸11とに対して相対回転可能であり、且つ駆動部との係合によって駆動部からトルク(回転)を受ける従動部とを有している。
【0036】
クラッチ機構50は例えば多板式クラッチ機構である。すなわち、クラッチ機構50の従動部は、複数の第1クラッチ板53と、複数の第1クラッチ板53と一体的に回転するクラッチハウジング54とを有している。第1クラッチ板53とクラッチハウジング54は、駆動軸11上の第1ギア58と一体的に回転する。クラッチ機構50の駆動部は、クラッチハウジング54の内側に配置され、駆動軸11と一体的に回転するクラッチインナ51と複数の第2クラッチ板52とを有している。複数の第1クラッチ板53と複数の第2クラッチ板52は駆動軸11の軸方向において交互に配置されている。クラッチ機構50は、クラッチレバー3aの操作に応じて駆動軸11の軸方向において移動可能であり、第1クラッチ板53と第2クラッチ板52とを互いに押しつけるプレッシャプレート57とを有している。クラッチ機構50の一例では、プレッシャプレート57はクラッチスプリング56の弾性力によって第1クラッチ板53と第2クラッチ板52とを互いに押しつける。
【0037】
上述したように、駆動軸11上には駆動軸11に対して相対回転可能な第1ギア58が設けられている。第1ギア58はクラッチ機構50を介して電動モータ30のトルク(回転)を受ける。すなわち、第1ギア58はクラッチ機構50の従動部(より具体的にはクラッチハウジング54)と一体的に回転する。
図7に示すように、駆動ユニットケース40には、第1ギア58を通して電動モータ30のトルクを受ける出力軸13がさらに設けられている。電動二輪車1の例では、電動モータ30のトルクは中間軸14を介して出力軸13に伝えられる。出力軸13にスプロケット13aが取り付けられている(スプロケット13aは請求項の「出力部」に対応している)。スプロケット13aはチェーン19(
図6参照)を介して、電動二輪車1の駆動輪、すなわち後輪6に連結され、スプロケット13aの回転(電動モータ30からのトルク)はチェーン19を介して後輪6に伝えられる。出力軸13にはスプロケット13aに替えてプーリが「出力部」として設けられてもよい。そして、チェーン19に替えて、トルク(回転)を後輪6に伝達するトルク伝達部材としてベルトが使用されてもよい。これに替えて、出力軸13にはスプロケット13aに替えて、「出力部」としてベベルギアが設けられ、トルク伝達部材としてチェーン19に替えてシャフトが使用されてもよい。
【0038】
図7に示すように、電動モータ30は車幅方向での中心C1に対して右方に設けられている。一方、クラッチ機構50とスプロケット13aは車幅方向での中心Cに対して左方に設けられている。このレイアウトによると、径の大きな電動モータ30を使用した場合でも電動モータ30とスプロケット13aとの干渉が生じない。そのため、駆動軸11の軸方向での電動モータ30の幅を大きくすることなく、電動モータ30の出力トルクを大きくすることが可能となる。電動二輪車1の例では、電動モータ30は、駆動軸11の軸方向、すなわち車幅方向での幅W1(
図7参照)よりも大きな径R1(
図6参照)を有している。上述したように電動モータ30とクラッチ機構50の双方が駆動軸11上に配置されている。これにより、例えば電動モータのトルクが減速機構を介してクラッチ機構に入力される構造に比べて、クラッチ機構50に入力されるトルクが小さくなり、その結果、クラッチ機構50を小型化できる。そのため、駆動軸11と出力軸13との距離を小さくでき、駆動ユニットケース40を小型化できる。
【0039】
電動二輪車1の例では、
図6に示すように、電動モータ30の径R1はクラッチ機構50の径R2よりも大きい(ここでは、電動モータ30の径R1はステータ32の外径であり、クラッチ機構50の径R2はクラッチハウジング54の外径である)。その結果、モータハウジング33の外径も、クラッチ機構50に対して車幅方向での外方に位置し、クラッチ機構50を覆っているクラッチカバー43の外径よりも大きい。
図6及び
図7に示されるように、スプロケット13aは、側面視及び断面において、クラッチ機構50及びクラッチカバー43の後方に位置している。
【0040】
クラッチレバー3aの操作に応じてクラッチ機構50の係合状態が変化するように、クラッチ機構50はクラッチレバー3aと接続されている。すなわち、クラッチ機構50の駆動部と従動部との係合状態は、クラッチレバー3aに対する運転者の操作によって変えることができる。これにより、例えば電動モータの回転速度に応じて自動的に係合状態が変化する遠心クラッチに比べて、運転者によるトルク伝達制御における自由度を増すことができる。例えば、運転者はクラッチレバー3aの操作によって、後輪6へのトルク伝達を瞬時に遮断することが可能となる。反対に、電動モータ30が大きなトルクを出力している状態で、クラッチ機構50を急激に係合させることによって、瞬間的に大きな駆動力を得ることができる。
【0041】
電動二輪車1の例では、クラッチレバー3aは機械的にクラッチ機構50に接続される。より具体的には、クラッチレバー3aは油圧ホース(不図示)によってクラッチ機構50の油圧ユニット55(
図4及び
図7参照)に接続される。
図7に示すように、油圧ユニット55はその内部に油圧ホースを通してオイルを受けるシリンダー55sを有している。シリンダー55sには、駆動軸11の軸方向に移動可能なピストン55bが設けられている。クラッチ機構50は、ピストン55bとともに駆動軸11の軸方向に移動可能なロッド55cを有している。ロッド55cはプレッシャプレート57とともに駆動軸11の軸方向において移動可能となっている。クラッチレバー3aの操作によってシリンダー55s内の圧力が高まると、ロッド55cはクラッチインナ51とプレッシャプレート57とが互いに離れる方向にプレッシャプレート57を押圧する。プレッシャプレート57は、クラッチスプリング56によって、クラッチインナ51に近づく方向に付勢されている。
【0042】
クラッチレバー3aは、油圧ホースに替えてワイヤーによってクラッチ機構50に接続されてもよい。また、クラッチレバー3aは電気的にクラッチ機構50に接続されてもよい。例えば、クラッチ機構50にプレッシャプレート57を動かすアクチュエータが設けられ、このアクチュエータとクラッチレバー3aとがハーネスや制御装置を介して電気的に接続されてもよい。そして、アクチュエータの作動によってクラッチ機構50の係合状態が操作されてもよい。
【0043】
駆動軸11上の第1ギア58は車幅方向において、電動モータ30とクラッチ機構50との間に位置している。
図7に示すように、トルク伝達経路において駆動軸11と出力軸13との間に、減速機構を構成する中間軸14が配置されている。すなわち、電動モータ30の回転(トルク)は中間軸14を通して出力軸13に伝えられる。
【0044】
図6に示すように、電動二輪車1の例では、駆動ユニットケース40の側面視においては駆動軸11と中間軸14は出力軸13よりも低い位置に配置されている。これにより、車体の低重心化を図ることができる。また、前後方向における駆動軸11と出力軸13との距離を小さくでき、駆動ユニットケース40の小型化を図ることができる。駆動ユニットケース40の側面視においては、中間軸14は駆動軸11の後方に位置し、出力軸13より前方に位置している。駆動軸11、中間軸14、及び出力軸13の位置関係は、
図6に示す例に限られず、適宜変更されてよい。
【0045】
出力軸13の後方にリアアーム17の前端を支持するピボット軸18(
図4参照)が配置されている。ピボット軸18は、駆動ユニットケース40を構成する後述するケース本体41によって支持されている。
【0046】
図7に示すように、中間軸14には、第1ギア58と一体的に回転する第2ギア14aと、第2ギア14aよりも小さい径を有している第3ギア14bとが設けられている。第3ギア14bは、出力軸13上のギア13bと一体的に回転する(以下では、出力軸13上のギア13bを第4ギアと称する)。電動二輪車1の例では、第2ギア14aは第1ギア58に係合し、第3ギア14bは出力軸13上の第4ギア13bと係合している。これに替えて、中間軸14上の第2ギア14aは駆動軸11上の第1ギア58に間接的に係合してもよい(すなわち、第1ギア58の回転はさらに他の軸及びギアを介して第2ギア14aに伝えられてもよい)。中間軸14上の第3ギア14bは出力軸13の第4ギア13bと間接的に係合してもよい。ギア58、14a、14b、13bによって駆動軸11の回転は減速されて出力軸13に伝えられる。
【0047】
図7に示すように、中間軸14は2つのベアリング63、64によって支持されている。ベアリング63、64は、車幅方向において、クラッチ機構50と電動モータ30との間に位置している。すなわち、ベアリング63、64は、車幅方向での中心C1側のクラッチ機構50の端部よりも、電動モータ30寄りに位置している。また、ベアリング63、64は、車幅方向での中心C1側の電動モータ30の端部よりもクラッチ機構50寄りに位置している。言い換えると、中間軸14の全体が、車幅方向での中心C1側のクラッチ機構50の端部よりも電動モータ30寄りに位置し、且つ車幅方向での中心C1側の電動モータ30の端部よりもクラッチ機構50寄りに位置している。これにより、駆動軸11と中間軸14との距離を小さくでき、その結果、駆動ユニットケース40を小型化できる。
【0048】
電動二輪車1の例では、
図7に示すように、ベアリング63、64の一部(ベアリング63、64の前部)は、クラッチ機構50の後端、すなわち、電動二輪車1の例ではクラッチハウジング54の後端54nよりも前方に位置している。そのため、駆動ユニットケース40の側面視において、ベアリング63、64の一部はクラッチ機構50と重なる。これにより、中間軸14と駆動軸11との間の距離が小さくなり、駆動ユニットを小型化できる。
図7に示すように、中間軸14の一部(前面14d)もクラッチ機構50の後端54nよりも前方に位置してもよい。また、
図7に示す例に替えて、ベアリング63、64は、その全体が駆動ユニットケース40の側面視においてクラッチ機構50と重なるように配置されてもよい。
【0049】
また、
図7に示すように、ベアリング63、64は電動モータ30の後端、すなわちステータ32の後端32nよりも前方に位置している。そのため、駆動ユニットケース40の側面視において、ベアリング63、64は電動モータ30と重なっている。電動二輪車1の例では、ベアリング63、64は、その全体が駆動ユニットケース40の側面視においてクラッチ機構50と重なるように配置されている。ベアリング63、64は、駆動ユニットケース40の側面視においてその一部(前部)だけがクラッチ機構50と重なるように配置されてもよい。
【0050】
このように中間軸14と駆動軸11との距離が小さくなり、その結果、駆動軸11と出力軸13との距離も小さくできる。そして、電動二輪車1の例では、
図7に示すように、スプロケット13aの一部(前端13n)はモータハウジング33の後端33nよりも前方に位置している。その結果、スプロケット13aの一部は、車体の側面視においてモータハウジング33と重なっている。スプロケット13aの配置は、必ずしも電動二輪車1の例に限られず、例えば、モータハウジング33の後端33nよりも後方に位置してもよい。
【0051】
駆動軸11上の第1ギア58はクラッチ機構50(より具体的にはクラッチハウジング54)よりも小さな径を有している。電動二輪車1の例では、第1ギア58は、後述するように、駆動軸11の軸方向に突出する係合凸部58a、54a(
図10参照)によって、クラッチ機構50と係合している。より詳細には、第1ギア58は係合凸部58a、54aによってクラッチハウジング54の側部54d(
図10参照)と係合している。これにより、例えば第1ギア58が駆動軸11の径方向に突出する凸部や、スプラインによってクラッチハウジング54と係合する構造に比べて、第1ギア58の径を小さくできる。そのため、駆動軸11と中間軸14との距離を小さくしながら、十分な減速比を確保できる。また、駆動軸11の軸方向に突出する係合凸部58a、54aを利用することにより、クラッチハウジング54と第1ギア58との間に軸方向での隙間が確保し易くなる。そして、この隙間を利用して中間軸14を支持するベアリング63を配置することが可能となる。
【0052】
図7に示すように、中間軸14を支持しているベアリング63、64は中間軸14の両端に設けられている。出力軸13はベアリング65、66によって支持されている。一方のベアリング66は出力軸13の端部に設けられ、他方のベアリング63はスプロケット13aと第4ギア13bとの間に設けられている。
【0053】
駆動軸11はベアリング61、62で支持されている。電動二輪車1の例では、ベアリング61はクラッチ機構50と電動モータ30との間に配置されている。より詳細には、ベアリング61は第1ギア58と電動モータ30との間に配置されている。ベアリング61と第1ギア58との間にはスペーサ15が配置されている。他方のベアリング62は、電動モータ30に対して車幅方向(駆動軸11の軸方向)での外方に位置している。駆動軸11は2つのベアリング61、62だけで支持されている。電動二輪車1の例では、後において説明するように、クラッチハウジング54と第1ギア58は互いに異なる材料で形成されている。これにより、クラッチハウジング54を第1ギア58の材料に比べて軽い材料(例えば、アルミニウム)で形成でき、クラッチ機構50の軽量化を図ることができる。こうすることにより、駆動軸11を支持するベアリングの数を減らすことが容易となる。駆動軸11を支持するベアリングの数は2つに限られず、より多くのベアリングによって駆動軸11は支持されてもよい。例えば、クラッチ機構50側にも駆動軸11を支持するベアリングが設けられてもよい。
【0054】
駆動ユニットケース40は、
図4に示すように、ケース本体41を有している。ケース本体41は、その右部を構成する右ケース半体41Rと、その左部を構成する左ケース半体41Lとを有している。右ケース半体41Rと左ケース半体41Lは車幅方向において互いに固定されている。本実施形態では、駆動ユニットケース40は、ケース本体41、モータハウジング33、及びクラッチカバー43によって構成され、上述した電動モータ30、クラッチ機構50、駆動軸11、中間軸14、及び出力軸13を収容している。
【0055】
図7に示すように、電動二輪車1の例では、ベアリング61、64、66は右ケース半体41R、すなわち電動モータ30側のケース半体によって支持されている。ベアリング63、65は左ケース半体41L、すなわちクラッチ機構50側のケース半体によって支持されている。
【0056】
中間軸14を支持する2つのベアリング63、64の間に第2ギア14a及び第3ギア14bが配置されている。これにより、2つのベアリング63、64が車幅方向において離れるので、車幅方向において合体している2つのケース半体41R、41Lで2つのベアリング63、64をそれぞれ支持し易くなる。
【0057】
図7に示すように、減速機構を構成するギア58、14a、14b、13bはいずれも中間軸14を支持している左側のベアリング63よりも右方に配置されている。これにより、ベアリング63を支持する専用の部材を利用することなく、ベアリング63を左ケース半体41Lで支持することが容易となる。
【0058】
図7に示すように、中間軸14上の第2ギア14aは中間軸14上の第3ギア14bに対してクラッチ機構50寄りに位置している。これにより、駆動軸11の軸方向における第1ギア58とクラッチ機構50との距離が過剰に大きくなることを抑えることができる。
【0059】
図7に示すように、中間軸14上の第2ギア14aの後部は、出力軸13を支持しているベアリング65と出力軸13上の第4ギア13bとの間に位置している。これにより、出力軸13と中間軸14との距離が大きくなることをおさえることができ、且つ、出力軸13を支持する2つのベアリング65、66の距離を確保できるので、出力軸13の支持強度を確保できる。中間軸14上のギア14a、14bの配置は必ずしも
図7に示す例に限られない。例えば、駆動軸11上の第1ギア58と係合している第2ギア14aは、第3ギア14bに対して電動モータ30寄りに配置されてもよい。
【0060】
図4に示すように、電動二輪車1はモータ駆動装置29を有している。モータ駆動装置29はバッテリ7から受けた電力を電動モータ30に供給する。より詳細には、モータ駆動装置29はインバータを含み、バッテリ7から受けた電力を直流から交流に変換して電動モータ30に供給する。電動二輪車1の例では、モータ駆動装置29は電動モータ30とクラッチ機構50の前方に配置されている。これにより、車両の走行時に、モータ駆動装置29を冷却し易くなる。モータ駆動装置29のレイアウトはこれに限られない。例えば、モータ駆動装置29は、電動モータ30とクラッチ機構50の上方且つバッテリ7の下方に配置されてもよい。また、モータ駆動装置29はバッテリ7の後方に配置されてもよいし、シート5の下方に配置されてもよい。
【0061】
電動二輪車1の例では、駆動ユニットケース40には、上述した電動モータ30、クラッチ機構50、駆動軸11、中間軸14、及び出力軸13に加えて、モータ駆動装置29が配置されている。これにより、モータ駆動装置29と電動モータ30とを繋ぐ配線28(
図4参照)を短くできる。
図7に示すように、駆動ユニットケース40は第1収容室S1と第2収容室S2とを有している。第1収容室S1には、クラッチ機構50や、中間軸、14、出力軸13などによって構成されるトルク伝達機構が収容されている。第2収容室S2には、電動モータ30とモータ駆動装置29が収容されている。駆動軸11は第1収容室S1と第2収容室S2とに亘って配置されている。第1収容室S1はケース本体41とクラッチカバー43によって構成され、第2収容室S2はケース本体41とモータハウジング33とによって構成されている。
【0062】
モータ駆動装置29は電動モータ30とクラッチ機構50の前方に配置されている。ケース本体41は、前方に開口している開口部41hを有している(
図4参照)。開口部41hは、
図4に示すように例えば矩形である。モータ駆動装置29は開口部41hに嵌められ、開口部41hの縁に固定されている。モータ駆動装置29の前面は駆動ユニットケース40から前方に露出している。これにより、車両の走行時にモータ駆動装置29の前面に走行風があたり、モータ駆動装置29を効果的に冷却できる。モータ駆動装置29の取付構造はこれに限られない。例えば、モータ駆動装置29の全体がケース本体41に収容されてもよい。
【0063】
図7及び
図8に示すように、ケース本体41は第1収容室S1と第2収容室S2とを区画する壁部41a、41bを有している。壁部41a、41bには、駆動軸11が貫通する穴を除いて、2つの収容室S1、S2を連通する穴や開口が形成されない。これにより、第1収容室S1に配置される機構やベアリングにオイルを供給する一方で、第2収容室S2に配置される電動モータ30とモータ駆動装置29とにオイルが触れることを防ぐことができる。駆動軸11が貫通する穴には、シール部材12が配置される。第1収容室S1には、
図8に示すように、オイルを排出するためのドレイン41cや、作業者がオイルを視認するための開口41dが設けられてもよい。そして、開口41dはキャップ44によって閉じられてもよい。
【0064】
図7に示すように、第2収容室S2は、電動モータ30が配置されるモータ収容室S2aと、モータ駆動装置29が配置される駆動装置収容室S2bとを有している。モータ収容室S2aはモータハウジング33によって構成され、駆動装置収容室S2bはケース本体41によって構成される。
【0065】
図5に示すように、駆動ユニットケース40は、モータ収容室S2aと駆動装置収容室S2bとを連通させる開口部41eを有している。開口部41eはケース本体41に形成されている。電動二輪車1の例では、開口部41eは右ケース半体41Rに形成されている。電動モータ30の一部はこの開口部41eを通して駆動装置収容室S2bに向けて露出している。電動二輪車1の例では、電動モータ30の車幅方向での中心C1側の部分、より具体的には、電動モータ30の上部30a(
図4参照)が駆動装置収容室S2bに向けて露出している。この開口部41eを利用して、電動モータ30とモータ駆動装置29が電気的に接続されている。
図4に示すように、車幅方向における電動モータ30の内方に、すなわち電動モータ30とクラッチ機構50との間に端子台27が配置され、端子台27によって配線28の端子が保持されている(
図7及び
図8において端子台27は省略されている)。開口部41eの位置は
図5に示す例に限られない。例えば電動モータ30の上側を覆っている壁部41i(
図4参照)に開口部が形成されてもよい。そして、この開口部を利用して、電動モータ30とモータ駆動装置29が電気的に接続されてもよい。
【0066】
上述したように、モータハウジング33の内側にステータ32が固定されている。
図7に示すように、モータハウジング33はケース本体41に対して車幅方向の外方に位置している。電動二輪車1の例では、モータハウジング33はケース本体41に対して右方に位置している。モータハウジング33はケース本体41に固定されている。より詳細には、モータハウジング33は車幅方向での中心C1に向かって開口している(電動二輪車1の例では、モータハウジング33は左方に開口している)。そして、モータハウジング33の開口の縁33aはケース本体41に接し、ケース本体41(電動二輪車1の例では右ケース半体41R)に直接固定されている。モータハウジング33をこのようにケース本体41に固定することによって、例えばモータハウジング33の縁33aとケース本体41との間に別の部材が配置される構造に比べて、車幅方向における駆動ユニットケース40の幅を低減できる。電動二輪車1の例では、モータハウジング33は、駆動軸11を取り囲むように配置される複数のボルト73によって右ケース半体41Rに固定されている。
【0067】
ボルト73はケース本体41の内側からモータハウジング33と右ケース半体41Rとに形成された取付穴に差し込まれている。この構造によると、例えばボルト73がケース本体41の外側から取付穴に差し込まれる構造に比べて、径の大きな電動モータ30が採用し易くなる。モータハウジング33の取付構造は
図7に示す例に限られない。例えば、ボルト73はケース本体41の外側からモータハウジング33の取付穴に差し込まれてもよい。
【0068】
図8に示すように、駆動ユニットケース40の第2収容室S2は、電動モータ30とクラッチ機構50の上方に位置する収容室S2cをさらに有している。収容室S2cには、例えば種々の電装品が配置される(以下では、収容室S2cを「電装品収容室」と称する)。電装品は、例えば、バッテリ7の電力をその電圧を下げてバッテリ9に供給するコンバータや、バッテリ7からの電力供給を制御するリレーなどある。電装品収容室S2cはケース本体41によって構成されている。すなわち、ケース本体41は電装品収容室S2cを規定する周壁部41fを有している。電装品収容室S2cは中間軸14と出力軸13の上方にも設けられてもよい(
図9参照)。電装品収容室S2cは、好ましくは、ケース本体41における中間軸14や出力軸13を収容している部分の幅よりも大きな幅を有する。電装品収容室S2cの内側には、電装品を支持するためのトレイ71が配置されてもよい。収容室S2cに配置される部品は電装品に限られない。周壁部41fの上縁41g(
図4参照)がバッテリケース20に固定される。
【0069】
図3に示すように、モータ駆動装置29は、車体の正面視において、電動モータ30の一部(車幅方向での中心C1側の部分)とクラッチ機構50の一部(車幅方向での中心C1側の部分)と重なるように配置されている。こうすることにより、電動モータ30とモータ駆動装置29との距離を小さくでき、これらを繋ぐ配線28を短くできる。また、車両の走行時にモータ駆動装置29が受ける風が多くなるので、モータ駆動装置29を効果的に冷却することが可能となる。モータ駆動装置29は、車体の正面視において、電動モータ30の全体と重なるように配置されてもよい。また、モータ駆動装置29は、車体の正面視において、クラッチ機構50の全体と重なるように配置されてもよい。
【0070】
電動モータ30、クラッチ機構50、駆動軸11、中間軸14、出力軸13、及びモータ駆動装置29はバッテリケース20の下方に配置されている。すなわち、駆動ユニットケース40はバッテリケース20の下方に配置されている。
図2に示すように、モータ駆動装置29はバッテリケース20の前端20aよりも後方に位置している。これにより、車両の走行時に前輪2が巻き上げる水や、砂、小石などがモータ駆動装置29にあたることを抑えることが容易となる。
【0071】
図3に示すように、モータ駆動装置29の下縁29aの位置は、車体の正面視において、駆動ユニットケース40における電動モータ30及びクラッチ機構50を収容している部分の下縁40cの位置よりも高い。これにより、車両の走行時に前輪2が巻き上げる水や砂、小石などがモータ駆動装置29にあたることを、さらに効果的に抑えることができる。
【0072】
図2に示すように、出力軸13はバッテリケース20の後端20bよりも前方に位置している。これにより、駆動ユニットケース40を小型化でき、また前輪2と後輪6との距離であるホイールベースを適正に設定し易くなる。
【0073】
上述したように、バッテリケース20はシート5の下方に配置されている。
図3に示すように、車幅方向でのバッテリケース20の幅W3は、車幅方向での駆動ユニットケース40の幅W2よりも小さい。これにより、運転者はシート5に跨がったときに、両足の間にバッテリケース20を快適に配置できる。ここで、バッテリケース20の幅W3はバッテリケース20の上部の幅である。また、駆動ユニットケース40の幅W2は、駆動ユニットケース40における電動モータ30とクラッチ機構50とが配置されている部分の幅である。すなわち、駆動ユニットケース40の幅W2は、車幅方向でのモータハウジング33の端部33dと、車幅方向でのクラッチカバー43の端部43dとの間の距離である。
【0074】
上述したように、駆動軸11上にはクラッチ機構50と第1ギア58とが設けられている。第1ギア58とクラッチハウジング54は別個に成型されている。第1ギア58、クラッチハウジング54、及び第1クラッチ板53は一体的に回転し、且つ駆動軸11に対しては相対回転可能である。
図10はクラッチ機構50と第1ギア58の斜視図である。第1ギア58とクラッチハウジング54のうち少なくとも一方には駆動軸11の軸方向に突出する係合凸部58a、54aが形成されている。そして、第1ギア58とクラッチハウジング54はこれらが一体的に回転するように係合凸部58a、54aによって互いに係合している。こうすることにより、駆動軸11の半径方向に突出する凸部やスプラインを利用して第1ギア58とクラッチハウジング54が互いに係合する構造に比べて、第1ギア58の径を小さくできる。その結果、駆動軸11から中間軸14と出力軸13までの距離を小さくしながら、十分な減速比を得ることが容易となる。
【0075】
電動二輪車1の例では、
図10に示すように、第1ギア58は、クラッチ機構50に向かって軸方向に突出している複数の係合凸部58aを有している。複数の係合凸部58aは、駆動軸11を囲むように間隔を空けて形成されている。クラッチハウジング54は、第1ギア58に向かって軸方向に突出している複数の係合凸部54aを有している。複数の係合凸部54aは駆動軸11を囲むように間隔を空けて形成され、第1ギア58の係合凸部58aと係合している。すなわち、各係合凸部54aは隣接する2つの係合凸部58aの間に嵌まっている。
【0076】
第1ギア58とクラッチハウジング54は異なる材料によって形成されてもよい。こうすることにより、第1ギア58とクラッチハウジング54の係合構造の強度を確保しながら、クラッチ機構50の軽量化を図ることができる。電動二輪車1の例では、クラッチハウジング54は、第1クラッチ板53を取り囲む筒部54bを有している本体54cと、ボルトやリベットなどの固定具54eによって本体54cの側面(第1ギア58側の面)に固定されている側部54dとを有している。上述した係合凸部54aは側部54dに形成されている。本体54cは、第1ギア58の材料(例えば、鉄)よりも軽い材料(アルミニウム)で形成されている。側部54dは第1ギア58と同じ材料で形成されてもよい。
【0077】
以上説明したように、電動二輪車1では、電動モータ30は車幅方向での中心C1に対して右方に設けられている。一方、クラッチ機構50とスプロケット13aは車幅方向での中心Cに対して左方に設けられている。このレイアウトによると、径の大きな電動モータ30を使用した場合でも電動モータ30とスプロケット13aとの干渉が生じない。そのため、電動モータ30の出力トルクを大きくすることが容易となる。また、電動モータ30とクラッチ機構50の双方が駆動軸11上に配置されている。これにより、例えば電動モータのトルクが減速機構を介してクラッチ機構に入力される構造に比べて、クラッチ機構50に入力されるトルクが小さくなり、その結果、クラッチ機構50を小型化できる。そのため、駆動軸11と出力軸13との距離を小さくでき、駆動ユニットケース40を小型化できる。さらに、クラッチレバー3aの操作に応じてクラッチ機構50の係合状態が変化するように、クラッチ機構50はクラッチレバー3aと接続されている。これにより、運転者によるトルク伝達制御における自由度を増すことができる。
【0078】
本発明は以上説明した電動二輪車1に限られず、種々の変更がなされてよい。
【0079】
例えば、電動モータ30は車幅方向での中心C1に対して左方に設けられてもよい。そして、クラッチ機構50とスプロケット13aは車幅方向での中心Cに対して右方に設けられてもよい。
【0080】
また、駆動ユニットケース40を構成するケース本体41は2つの部材、すなわち右ケース半体41Rと左ケース半体41Lとによって構成されていた。しかしながら、ケース本体41は、ケース半体41R、41Lに加えて、例えばベアリングを支持する部材をさらに有してもよい。