特許第6145166号(P6145166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6145166太陽光発電パネルの故障検出探査システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6145166
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】太陽光発電パネルの故障検出探査システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/72 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
   G01N25/72 J
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-525666(P2015-525666)
(86)(22)【出願日】2014年4月22日
(86)【国際出願番号】JP2014002262
(87)【国際公開番号】WO2015162637
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2015年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】515027772
【氏名又は名称】株式会社 スカイロボット
(74)【代理人】
【識別番号】100074169
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 文彦
(72)【発明者】
【氏名】上瀧 良平
(72)【発明者】
【氏名】貝應 大介
【審査官】 後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−110981(JP,A)
【文献】 特開平06−137823(JP,A)
【文献】 特開2011−149839(JP,A)
【文献】 特開2012−081936(JP,A)
【文献】 特開2012−145346(JP,A)
【文献】 特開2006−082775(JP,A)
【文献】 特開2011−146472(JP,A)
【文献】 How to get a true picture of faulty solar panels,DEMM Engineering & Manufacturing December 2013,2014年 1月,p.28,URL,http://digital.adrenalin.co.nz/i/220740
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/00−25/72
G03B 15/00
G01J 5/00− 5/62
G05D 1/00− 1/12
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光発電パネルの異常または故障個所の検出を、遠隔操作可能な飛行体に搭載された探査装置によって行う太陽光発電パネルの探査システムであって、
探査装置を搭載して空中を遠隔操作により滑空および/または停空飛翔する飛行制御機構を備えた飛行体と、
飛行体の航路と飛行角度を制御する制御手段と、飛行体に搭載された検出手段の角度を制御調節する制御手段と、探査結果情報を受信する受信手段と、測定結果を分析処理する解析手段とを装備した地上に設けられた制御装置と、
太陽光発電パネルのモジュール面および/またはセル面と前記検出手段との角度を検知する角度センサと、探査時に前記検出手段が太陽光発電パネルのモジュール面および/またはセル面に対して一定の角度を保つように前記検出手段および/または飛行体の角度を角度センサの検出結果に基づいて変更する調整手段と、太陽光発電パネルのモジュールおよび/またはセルの発熱している部分を測定検出する前記検出手段と、太陽光発電パネルの状態を撮影するカメラからなる撮影手段と、を装備した探査装置と、
測定検出値および画像情報を含む探査結果情報を地上の制御装置に送信する送信手段と、
からなることを特徴とする太陽光発電パネルの故障検出探査システム。
【請求項2】
前記探査装置は、超音波および/またはレーザで太陽光発電パネルのモジュール面および/またはセル面との距離を測定するとともに、太陽光発電パネルのモジュール面および/またはセル面との角度を測定し最適探査状態を保って探査を行うことを特徴とする請求項1記載の太陽光発電パネルの故障検出探査システム。
【請求項3】
前記カメラは、サーモグラフィーカメラであることを特徴とする請求項1記載の太陽光発電パネルの故障検出探査システム。
【請求項4】
前記探査装置は、サーモグラフィーカメラで太陽光発電パネルを構成する各モジュールおよび/またはセルの発熱している部分を個々に測定検出することを特徴とする請求項1記載の太陽光発電パネルの故障検出探査システム。
【請求項5】
前記探査装置は、異常または故障した太陽光発電パネルを構成するモジュールおよび/またはセルの位置を特定する為に、制御装置の解析結果に基づきレーザーポインタで該当箇所を照準照射するとともに、マーキング用カラーボールを発射する発射装置を備えたことを特徴とする請求項1記載の太陽光発電パネルの故障検出探査システム。
【請求項6】
前記飛行体は、複数個所に超音波センサおよび/またはレーザからなる障害物検出装置を装備し、障害物(太陽光発電パネルを含む)に一定距離以上接近すると、警告音を発し、自動的に飛行位置の修正を行うことを特徴とする請求項1記載の太陽光発電パネルの故障検出探査システム。
【請求項7】
前記飛行体は、飛行制御機構の故障等による墜落の衝撃から太陽光発電パネルおよび飛行体を保護するため、飛行不能状態となった際に、非常用のパラシュートおよび/またはエアーバッグが自動的に作動展開する自動事故回避機構を有することを特徴とする請求項1記載の太陽光発電パネルの故障検出探査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電パネルの異常または故障箇所を検出する探査システムに関するものであって、飛行体により上空から不具合が発生している箇所を、空撮および/または超音波探査機等により検出する探査システムに関するものであり、特に地上に設置された制御装置により飛行体の飛行航路および飛行角度を制御し、飛行体に搭載した探査装置により、探査装置から発せられる超音波および/またはレーザと太陽光発電パネルのモジュール面および/またはセル面を一定の距離・角度に保つことにより、最適な位置から太陽光パネルの異常または故障箇所を検出することが可能な太陽光パネルの故障検出探査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電パネルは、太陽エネルギーを光起電力効果により直接電力に変換する発電機であり、自然の力で定常的に発電する再生可能エネルギーによる電力供給源として注目され、旧来から幅広い産業分野で採用されている。変換効率の向上と生産コストの低下により、現在では一般家庭にまで広く普及すると同時に、メンテナンスの需要も高まり、目視によるものから固定機械式によるもの、また、空撮により故障箇所を検出するものなど、様々な検出システムが開発されている。
【0003】
太陽光発電パネルは、各モジュールおよび/またはセルが、電気的に相互に接続された複数の各モジュールおよび/またはセルの集合体からなる。太陽光発電パネルは、モジュールおよび/またはセルの温度が上昇するほど変換効率が低下するという現象が現れるので、発電および蓄電機構が故障していなくても、変換効率が低下するという問題がある。そこで、各モジュールおよび/またはセルの故障等による発熱は勿論のこと、経年劣化等を原因とする発熱などによるモジュールおよび/またはセルの温度の上昇をサーモグラフィーカメラで検出し、修理を行う異常検出システム等が開発されている。
【0004】
従来の故障箇所検出方法は、モジュールを直列に接続したストリングまたはストリングを並列に接続したアレイ毎に検出器を装置して発電状態を監視することにより異常の検出を行っているが、どのモジュールのどのセルに故障が起こっているかを検知するまでに手間と時間を要していた。そこで、検査員がサーモグラフィーカメラ等の測定器を現場に持って行って直接太陽光発電パネルを撮影するものや、定点にサーモグラフィーカメラ等を設置しておいて定期的に表面温度の異常を検出するものや、検査の都度サーモグラフィーカメラ等の機械制御検出機を直接太陽光発電パネルに取付けて機械制御で表面上に一定の間隔を設けてスライドさせて一定角度で異常を検出する取付式のものなど各種のシステムが開発されている。
【0005】
産業上利用可能なサイズの太陽光パネルは、一定以上の大きさが必要となり、また、太陽光を利用する関係上、設置場所が広範囲におよび、容易に検査を行うことが出来ない場所に設置されていることが多いのが実情である。上記の従来の探査検出方法による、手動または定点固定のサーモグラフィーカメラ等では、探査検出時に、太陽光パネルに対してサーモグラフィーカメラ等の検出機械を最適の角度または一定の距離に保つことが出来ないという問題が発生していた。一方、取付式のものにあっては、太陽光発電パネルから一定の角度と距離を保つことは可能であるが、探査検出前に検出機の取付が必要となり、規模の大きな太陽光発電パネルになると、機器の設置に多額の費用と時間を要するという問題が発生していた。
【0006】
また、太陽光発電パネルは、同一形状の複数枚のモジュール(またはセル)を電気的に連続的に接続した構成であるため、太陽光発電パネルの規模が大きい場合には、検出データから異常を発見できたとしても、後のモジュール(またはセル)単位での部品交換作業時に、故障したモジュール(またはセル)の正確な位置を特定するのに時間を要するという問題も発生していた。
【0007】
そこで、多くの人員の派遣を要さず、現場で太陽光発電パネルに探査装置を設置する必要が無く、探査装置と太陽光パネルの距離を常に一定に保つことが可能であり、また、探査装置から発せられる超音波またはレーザ、太陽光パネルに対して常に一定の最適角度を保つことが可能であり、更に、検出した異常または故障箇所を交換作業時に瞬時に正確かつ的確に把握することが可能な太陽光発電パネルの故障を検出する探査システムの開発が望まれていた。
【0008】
【特許文献1】特開2012−205061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記の課題を解決するため、遠隔操作可能な飛行体に探査装置を搭載した太陽光発電パネルの探査システムであって、飛行制御機構を備えた飛行体を、地上の制御装置により滑空または停空飛行させ、飛行体の角度制御機構と、飛行体に搭載された探査装置のカメラと角度センサにより、太陽光パネルと検出手段の距離を常に一定に保ち、故障検出手段の角度を常に最適角度に保つことが可能であり、更に、異常発見箇所を特定するためのマーキング手段も兼ね備えた、太陽光発電パネルの故障検出探査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明に係る太陽光発電パネルの故障検出探査システムは、太陽光発電パネルの異常または故障箇所の検出を、遠隔操作可能な飛行体に搭載された探査装置によって行う太陽光発電パネルの探査システムにおいて
探査装置を搭載して空中を遠隔操作により滑空および/または停空飛翔する飛行制御機構を備えた飛行体と、
飛行体の航路と飛行角度を制御する制御手段と、飛行体に搭載された検出手段の角度を制御調節する手段と、探査結果情報を受信する受信手段と、測定結果を分析処理する解析手段とを装備した地上に設けられた制御装置と、
太陽光発電パネルのモジュール面および/またはセル面と前記検出手段との角度を検知する角度センサと、探査時に前記検出手段が太陽光発電パネルのモジュール面および/またはセル面に対して一定の角度を保つように前記検出手段および/または飛行体の角度を角度センサの検出結果に基づいて変更する調整手段と、太陽光発電パネルのモジュールおよび/またはセルの発熱している部分を測定検出する前記検出手段と、太陽光発電パネルの状態を撮影するカメラからなる撮影手段を装備した探査装置と、
測定検出値および画像情報を含む探査結果情報を地上の制御装置に送信する送信手段と、
からなる構成である。
【0011】
また、前記探査装置は、超音波および/またはレーザで太陽光発電パネルのモジュール面および/またはセル面との距離を測定するとともに、太陽光発電パネルのモジュール面および/またはセル面との角度を測定し最適探査状態を保って探査を行う構成である。
【0012】
また、前記カメラは、サーモグラフィーカメラからなる構成である。
【0013】
また、前記探査装置は、サーモグラフィーカメラで太陽光発電パネルを構成する各モジュールおよび/またはセルの発熱している部分を個々に測定検出する構成である。
【0014】
また、前記探査装置は、異常または故障した太陽光発電パネルを構成するモジュールおよび/またはセルの位置を特定する為に、制御装置の解析結果に基づきレーザーポインタで該当箇所を照準照射するとともに、マーキング用カラーボールを発射する発射装置を備えた構成である。
【0015】
また、前記飛行体は、複数箇所に超音波センサおよび/またはレーザからなる障害物検出装置を装備し、障害物(太陽光発電パネルを含む)に一定距離以上接近すると、警告音を発し、自動的に飛行位置の修正を行う構成である。
【0016】
また、前記飛行体は、飛行制御機構の故障等による墜落の衝撃から太陽光発電パネルおよび飛行体を保護するため、飛行不能状態となった際に、非常用のパラシュートおよび/またはエアーバッグが自動的に作動展開する自動事故回避機構を備えた構成である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る太陽光発電パネルの故障検出探査システムは、上記詳述した通りの構成であるので、以下のような効果がある。
1.どのような規模または地形に設置された太陽光発電パネルであっても、飛行体の遠隔飛行制御機構により、飛行体と太陽光発電パネルの距離を一定に保つことが可能であり、また、飛行体の飛行角度制御手段と、飛行体に搭載された検出手段の角度センサにより、検出手段を太陽光パネルに対して一定の角度に保った状態で測定検出することが可能であり、更に、送信手段により、探索結果情報を地上の制御装置に送信することが可能となった。
2.探査装置に搭載された検出手段の超音波および/またはレーザのセンサで、太陽光発電パネルとの距離または角度を測定することにより、直角に限りなく近い角度で正確な測定が可能となり、飛行体の航路と飛行角度も制御することが可能となる。
3.探査装置に搭載されたサーモグラフィーカメラにより、モジュール(またはセル)の異常または故障による表面の発熱を検出することが可能である。
4.探査装置に搭載された検出手段から発せられるサーモグラフィーカメラで太陽光パネルの各モジュール(またはセル)の発熱している部分を個々に測定検出することが可能である。
5.レーザポインタ照準器を備えたマーキング用カラーボール発射装置でマーキングを行うことにより、故障個所を検出した後のモジュール(またはセル)交換作業時に、故障個所を瞬時に明確に判別することが可能となる。
6.飛行体に搭載された自動飛行位置修正システムにより、飛行体が障害物に接近すると警告音を発するとともに、自動的に航路または飛行角度を修正するため、飛行体が障害物に接触するのを回避して安全な飛行を行うことが可能となる。
7.飛行体が故障などにより飛行不能状態となっても、非常用のパラシュートおよび/またはエアーバッグが自動的に作動して広く拡幅するため、太陽光発電パネルなどの障害物および飛行体自体と搭載されている機器等を破損から保護し、被害を最小限に抑えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る太陽光発電パネルの故障検出探査システムのブロック図
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る太陽光発電パネルの故障検出探査システムを図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。
本発明にかかる太陽光発電パネルの故障検出探査システムは、飛行体10と、制御装置20と、探査装置30と、探査結果情報等を送信する送信手段40と、からなり、探査装置30と、探査結果情報送信手段40とは、飛行体10に搭載される構成である。
【0020】
図1は、本発明に係る太陽光発電パネルの故障検出探査システムのブロック図であり、地上の制御装置20により、遠隔地の飛行体10の飛行と探査を制御するシステムからなる。
【0021】
飛行体10は、本体の飛行機構に加えて、飛行制御機構12を装備しており、更に、探査装置30を搭載し、同時に、探査結果情報送信手段40を備えており、遠隔操によって滑空または停空飛翔することが可能である。滑空するだけでも故障または劣化による発熱箇所の検出と、その空撮は可能ではあるが、より的確に異常または故障を発見して、明確な探査結果(サーモグラフィー画像)を得るために、飛行体10は、停空飛翔・垂直移動・平行移動することが可能な無人ヘリコプター等の回転翼機であることが望ましい。
【0022】
飛行制御機構12は、地上の制御装置20から発信される信号を受信することにより、飛行体の航路と飛行角度を制御する装置であり、自動飛行位置修正機構212と、自動事故回避機構312を付加装備した構成とすることも可能である。飛行制御機構12は、従来技術による飛行制御手段からなり、探査する太陽発電パネルの範囲を安定した状態で飛行可能であり、探査装置30と探査結果情報送信手段40を搭載できる程度の出力が確保できればよい。
【0023】
制御装置20は、航路・飛行角度制御手段22と、探査装置制御手段24と、探査結果情報受信手段26と、測定結果解析手段28とからなり、地上に設けられて、地上から遠隔操作で上空の飛行体10と探査装置30の制御を行い、データの解析を行う構成である。
【0024】
航路・飛行角度制御手段22は、制御装置20に組み込まれた飛行体10の遠隔操作システムである。後述する撮影手段37により空撮された飛行中の映像を基に、飛行制御機構12により手動(または自動)で飛行体10の飛行航路および角度を制御することが可能であり、また、予め飛行体10の飛行速度・範囲・高度・角度などのプログラムを入力しておき、それに基づき自動遠隔操作で飛行させることも可能である。
【0025】
探査装置制御手段24は、後述する探査装置30に搭載された、角度検知センサ32と、角度調整手段33と、検出手段34と、撮影手段37とを制御するシステムである。飛行位置や飛行角度から、検出手段の超音波および/またはレーザが太陽光パネルに対して探査に適した一定角度を保つように地上から遠隔操作する構成である。カラーボールを発射させる発射装置135を付加したり、更に、発熱箇所をレーザーポインタ照準器135aで照準を定め、カラーボール発射装置135からマーキング用カラーボール弾を発射させる指示信号を発信するという構成である。映像やデータに基づき、手動で探査装置30を制御することも可能であり、また、予め与えられた制御指示による自動探査を行うことも可能である。
【0026】
探査結果情報受信手段26は、従来技術によるデータ通信手段から構成され、飛行している飛行体10に搭載された探査結果情報送信手段40から送信された、サーモグラフィーカメラ等の撮影手段37によって撮影された太陽光パネルの画像データをオンタイムで地上で受信する構成である。また、探査結果情報受信手段26により受信した探査結果は測定結果解析手段のスクリーンに表示させることが可能である。
【0027】
測定結果解析手段28は、地上に設けられた制御装置20に組み込まれた画像解析システムであり、探査結果情報受信手段26が受信した太陽光パネルのモジュール(またはセル)のサーモグラフィーデータを解析し、画像に映し出された温度の変化により異常または故障であるか否かの判断をする。異常または故障と判断された場合には、付加された機構を有する実施例では、該当箇所にカラーボール発射装置135からカラーボール弾を発射させ、塗料によるマーキングが行われる。
【0028】
探査装置30は、角度検知センサ32と、角度調整手段33と、検出手段34と、カメラ等の撮影手段37とからなる。地上の制御装置の探査装置制御手段24から発信される信号により、探査装置に搭載された機器を地上からコントロールする構成である。探査装置30は、太陽光発電パネルに劣化や故障で異常が発生すると、モジュール面および/またはセル面の異常箇所が熱を帯びるという特性をとらえて、サーモグラフィーカメラで温度変化を検出して異常箇所を特定している。
【0029】
角度検知センサ32は、超音波および/またはレーザにより、太陽光発電パネルのモジュール面(またはセル面)と検出手段34との角度を検知するセンサであり、探査時に検出手段34から発せられる超音波および/またはレーザにより、モジュール面(またはセル面)と検出手段34とを一定の角度に保つように角度を測定している。対象となる太陽光発電パネルの設置角度や使用する機器や天候などにより、発熱している部分を検出するのに最適な角度は多少変化するため、適宜に最適角度を設定することにより、それに合わせて角度検知センサ32が自動的に飛行体の飛行角度を考慮して、角度調整手段33に角度を補正するための信号を送る構成である。
【0030】
角度調整手段33は、角度検知センサ32の指令信号に基づき検出手段34の角度を調整(補正)するものであり、検出手段34から発せられる超音波および/またはレーザにより測定されたモジュール面に対する角度を最適(例えば90度)に保つように制御する構成である。角度調整手段33は、サーボモーターなど角度を無段階に微調整することが可能な機構であればよく、他の従来技術で代替することも可能である。
【0031】
検出手段34は、探査装置30に搭載され、超音波および/またはレーザを発する装置からなり、超音波および/またはレーザを太陽光パネルのモジュール(またはセル)に照射することにより、故障などで発熱している部分を検出する。検出手段34によって特定された異常箇所の映像データを収集するために、カメラ等の撮影手段37に検出信号(撮影信号)が送られる。
【0032】
カメラ等の撮影手段37は、探査装置に組み込まれたサーモグラフィーカメラからなり、検出手段34の検出結果に従い、太陽光パネルのモジュール(またはセル)の発熱箇所の写真を撮影する。なお、太陽光パネルのモジュール(またはセル)の発熱箇所の検出は、上記の通りであるが、その他、前述のように前記サーモグラフィーカメラが太陽光パネルのモジュールおよび/またはセル面の異常個所の熱(温度変化)を検出して特定する構成とすることも可能である。
【0033】
探査結果情報送信手段40は、従来技術によるデータ通信手段から構成され、サーモグラフィーカメラ等の撮影手段37によって撮影された太陽光パネルの異常または故障箇所の画像データを、地上の制御装置に組み込まれた探査結果情報受信手段26へと送信する。
【0034】
本発明の別の実施例に搭載された、カラーボール発射装置135は、塗料が封入された弾丸を発射する機構であり、検出手段34が検出した太陽光発電パネルのモジュール(またはセル)の発熱部分にカラーボール弾を発射し、着弾させ、マーキングを行う。カラーボール発射装置135は、レーザーポインタ照準器135aを備えた構成であり、レーザーポインタ照準器135aで、発熱箇所に正確にピンポイントでマーキングを行うことで、異常の発生しているモジュール(またはセル)の位置を的確に示すことが可能である。さらに、カラーボールで的確にマーキングすることにより、特定したモジュール(またはセル)の中で、どの位置に故障が生じているのかも明示することが出来る。
【0035】
また、別の実施例として;自動飛行位置修正機構212は、障害物検出装置212aと、警告音発生装置212bとからなり、飛行体10の複数箇所に設けられた超音波センサおよび/またはレーザからなる障害物検出装置212aにより、飛行中の周囲の障害物と飛行体10との距離を常に計測することにより、飛行体が安全に航行することを可能としている。飛行体10が、予め設定された障害物接近距離よりも障害物(太陽光パネルを含む)に接近すると、地上の制御装置の航路・飛行角度制御手段からの指令信号よりも優先的に飛行体10の飛行位置を自動的に修正する。これにより、飛行体10が太陽光発電パネルに接触する事故を回避でき、また、想定外の障害物および飛行体10自体の破損を回避することが可能となる。なお、障害物接近距離は、探査対象となる太陽光パネルの種類、設置場所などに合わせて適宜変更されるものである。
【0036】
更に別の実施例では;自動事故回避機構312は、パラシュートおよび/またはエアーバッグ312aと、自動起動機構312bとからなり、飛行体10が事故や故障などで飛行不能となった際に、自動起動機構312bにより、飛行体10に搭載されているパラシュートおよび/またはエアーバッグ312aを、制御装置からの指令信号が無くても自動的に作動展開させる構成である。自動事故回避機構312を装備したことにより、飛行体10が飛行不能に陥り太陽光パネルに墜落してしまった場合でも、非常に低速であるか、または、衝撃を吸収できる状態で太陽光パネルに着地するので、太陽光パネルを破損から守ることが出来る。
【0037】
上述の構成としたことにより、飛行体10の飛行角度制御機構と探査装置30の角度検知センサ32による角度調整により、検出手段34から発する超音波および/またはレーザの角度が、太陽光パネルに対して直角に近い一定の角度を保つことが可能となった。太陽光パネルの種類や検査方法によって探査時の最適角度は異なるが、正確な探査結果を得るには、太陽光パネル面に対して直角に近い計測角度(超音波および/またはレーザの照射角度)が最適である。本発明は、その計測角度を維持しながら探索検出することを可能にしたものであり、更に、従来のような多数の人員を動員することなく、多くの機器を設置することもなく、地上からの指令信号で的確かつ正確な探査検出を行うことが可能となった。
【0038】
また、本発明に係る太陽光発電パネルの故障検出探査システムは、太陽光パネルのモジュールおよび/またはセルの故障を検出するために開発されたものであるが、様々な角度、高度、範囲に及んで飛行体10が飛行し、探査装置30により発熱部分を検出することが可能であるため、サーモグラフィーカメラで、太陽光発電システムの全体を検査することも可能である。接続部品や蓄電池などの周辺機器等においても、異常または故障が生じて熱を持った箇所を発見し、管理保守することで、太陽光発電システム全体の故障を未然に防ぎ、長期に亘って安全に効率よく再生可能エネルギーを利用することを可能にしたものである。
【符号の説明】
【0039】
10 飛行体
12 飛行制御機構
20 制御装置
22 航路・飛行角度制御手段
24 探査装置制御手段
26 探査結果情報受信手段
28 測定結果解析手段
30 探査装置
32 角度検知センサ
33 角度調整手段
34 検出手段
37 撮影手段
40 探査結果情報送信手段
135 カラーボール発射装置
135a レーザーポインタ照準器
212 自動飛行位置修正機構
212a 障害物検出装置
212b 警告音発生装置
312 自動事故回避機構
312a パラシュート・エアバッグ
312b 自動起動機構
図1