特許第6145175号(P6145175)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6145175
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】車両用通信システム
(51)【国際特許分類】
   B62J 99/00 20090101AFI20170529BHJP
   B62J 11/00 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   B62J99/00 K
   B62J11/00 G
【請求項の数】13
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2015-544866(P2015-544866)
(86)(22)【出願日】2014年9月19日
(86)【国際出願番号】JP2014074970
(87)【国際公開番号】WO2015064246
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2016年4月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-228183(P2013-228183)
(32)【優先日】2013年11月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 博文
(72)【発明者】
【氏名】花倉 靖
(72)【発明者】
【氏名】池田 毅
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−264874(JP,A)
【文献】 特開2001−148657(JP,A)
【文献】 特開2003−309574(JP,A)
【文献】 特開2002−298300(JP,A)
【文献】 特開2010−055261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 99/00
B62J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両と物品とを備えている車両用通信システムであって、
前記鞍乗型車両は、
車体フレームと、
前記車体フレームに搭載されるパワーユニットと、
前記パワーユニットより上方に配置されるシートと、
前記シートより前方かつ前記パワーユニットより上方に配置されるハンドルと、
前記ハンドルの左端部および右端部に設けられるグリップ部と、
前記シートより下方に配置される足載せ部と、
前記車体フレームに搭載される電子機器と、
前記電子機器とデータ転送可能に有線接続された車両側通信機器と、を備えており、
前記物品は、前記車両側通信機器及び外部通信機器のそれぞれと無線通信可能である物品側通信機器を備え、座る行為、足で挟む行為、指で操作する行為、および、手で把持した当該物品により操作する行為のうちの少なくともいずれか1つの前記鞍乗型車両を使用する行為により、直接又は別の物品を介して前記所定の部位と接触しており、
前記車両側通信機器は、前記所定の部位を通信可能範囲に含み、前記所定の部位に直接触れたユーザーの姿勢によってはユーザーの体の一部が通信可能範囲を超えることがある通信機器であることを特徴とする車両用通信システム。
【請求項2】
鞍乗型車両と物品とを備えている車両用通信システムであって、
前記鞍乗型車両は、
車体フレームと、
前記車体フレームに搭載されるパワーユニットと、
前記パワーユニットより上方に配置されるシートと、
前記シートより前方かつ前記パワーユニットより上方に配置されるハンドルと、
前記ハンドルの左端部および右端部に設けられるグリップ部と、
前記シートより下方に配置される足載せ部と、
前記車体フレームに搭載される電子機器と、
前記ハンドルに設けられ、前記電子機器とデータ転送可能に有線接続された車両側通信機器と、を備えており、
前記物品は、グローブであって、前記車両側通信機器及び外部通信機器のそれぞれと無線通信可能である物品側通信機器を備え、前記グリップ部を手で握る行為により直接前記グリップ部と接触し
前記車両側通信機器は、前記グリップ部を通信可能範囲に含み、前記グリップ部に触れたユーザーの姿勢によってはユーザーの体の一部が通信可能範囲を超えることがある通信機器であることを特徴とする車両用通信システム。
【請求項3】
鞍乗型車両と物品とを備えている車両用通信システムであって、
前記鞍乗型車両は、
車体フレームと、
前記車体フレームに搭載されるパワーユニットと、
前記パワーユニットより上方に配置されるシートと、
前記シートより前方かつ前記パワーユニットより上方に配置されるハンドルと、
前記ハンドルの左端部および右端部に設けられるグリップ部と、
前記シートより下方に配置される足載せ部と、
前記車体フレームに搭載される電子機器と、
前記足載せ部の近傍に設けられ、前記電子機器とデータ転送可能に有線接続された車両側通信機器と、を備えており、
前記物品は、靴又は靴下であって、前記車両側通信機器及び外部通信機器のそれぞれと無線通信可能である物品側通信機器を備え、前記足載せ部に足を載せる行為により直接又は別の物品を介して前記足載せ部と接触し
前記車両側通信機器は、前記足載せ部を通信可能範囲に含み、前記足載せ部に触れたユーザーの姿勢によってはユーザーの体の一部が通信可能範囲を超えることがある通信機器であることを特徴とする車両用通信システム。
【請求項4】
鞍乗型車両と物品とを備えている車両用通信システムであって、
前記鞍乗型車両は、
車体フレームと、
前記車体フレームに搭載されるパワーユニットと、
前記パワーユニットより上方に配置されるシートと、
前記シートより前方かつ前記パワーユニットより上方に配置されるハンドルと、
前記ハンドルの左端部および右端部に設けられるグリップ部と、
前記シートより下方に配置される足載せ部と、
前記車体フレームに搭載される電子機器と、
前記電子機器とデータ転送可能に有線接続された車両側通信機器と、を備えており、
前記物品は、前記車両側通信機器及び外部通信機器のそれぞれと無線通信可能である物品側通信機器を備え、前記鞍乗型車両を使用する行為において、直接又は別の物品を介して、前記シートの後部に設けられるリアグリップ部又は当該物品を収納可能な収納部と接触し
前記車両側通信機器は、前記リアグリップ部又は前記収納部を通信可能範囲に含み、前記リアグリップ部又は前記収納部に触れたユーザーの姿勢によってはユーザーの体の一部が通信可能範囲を超えることがある通信機器であることを特徴とする車両用通信システム。
【請求項5】
鞍乗型車両と物品とを備えている車両用通信システムであって、
前記鞍乗型車両は、
車体フレームと、
前記車体フレームに搭載されるパワーユニットと、
前記パワーユニットより上方に配置されるシートと、
前記シートより前方かつ前記パワーユニットより上方に配置されるハンドルと、
前記ハンドルの左端部および右端部に設けられるグリップ部と、
前記シートより下方に配置される足載せ部と、
前記車体フレームに搭載される電子機器と、
前記電子機器とデータ転送可能に有線接続された車両側通信機器と、を備えており、
前記物品は、前記車両側通信機器及び外部通信機器のそれぞれと無線通信可能である物品側通信機器を備え、前記鞍乗型車両の所定の部位に固定可能であって、ユーザーが前記鞍乗型車両を運転している期間内に直接前記鞍乗型車両中の前記所定の部位と接触しており、
前記車両側通信機器は、前記所定の部位を通信可能範囲に含み、前記所定の部位に直接触れたユーザーの姿勢によってはユーザーの体の一部が通信可能範囲を超えることがある通信機器であることを特徴とする車両用通信システム。
【請求項6】
鞍乗型車両と第1物品とを備えている車両用通信システムであって、
前記鞍乗型車両は、
車体フレームと、
前記車体フレームに搭載されるパワーユニットと、
前記パワーユニットより上方に配置されるシートと、
前記シートより前方かつ前記パワーユニットより上方に配置されるハンドルと、
前記ハンドルの左端部および右端部に設けられるグリップ部と、
前記シートより下方に配置される足載せ部と、
前記車体フレームに搭載される電子機器と、
手で握る行為、および、指で操作する行為のいずれか一方の前記鞍乗型車両を使用する行為の際、ユーザーが直接または第2物品を介して触れる前記鞍乗型車両の所定の部位及び前記第1物品を通信可能範囲に含み、前記所定の部位に直接触れたユーザーの姿勢によってはユーザーの体の一部が通信可能範囲を超えることがある通信機器であって、前記電子機器とデータ転送可能に有線接続された車両側通信機器と、を備えており、
前記第1物品は、ユーザーの手及び首のいずれかに付けられた物品、又は、ユーザーが身に付けた服の袖であり、前記車両側通信機器及び外部通信機器のそれぞれと無線通信可能である物品側通信機器を備えていることを特徴とする車両用通信システム。
【請求項7】
前記所定の部位
記シートの座られる部位、
前記シートより前方かつ前記パワーユニットより上方に配置される燃料タンクの足で挟まれる部位、
前記車体フレームに支持される外装カバーの足で挟まれる部位
記ハンドルに設けられるスイッチ装置の指で操作される部位、
前記シートより前方に配置されるメーター装置の指で操作される部位、
前記シートを開閉式の蓋とするシート下収納部の開閉スイッチの指で操作される部位、
前記シートより前方かつ前記ハンドルより下方に配置されるフロント収納部の開閉スイッチの指で操作される部位、および、
前記シートより前方に配置されるキーシリンダのキーで操作される部位のうち少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項に記載の車両用通信システム。
【請求項8】
前記所定の部位は、前記物品が固定される物品固定部であることを特徴とする請求項5に記載の車両用通信システム。
【請求項9】
前記物品固定部が、固定用電子機器を固定する電子機器固定部であることを特徴とする請求項に記載の車両用通信システム。
【請求項10】
前記電子機器固定部が、携帯電話、ナビゲーション装置、ドライブレコーダー、オーディオ機器、カメラ、レーダー探知機、時計、およびETC車載器のいずれかを固定する部位であることを特徴とする請求項に記載の車両用通信システム。
【請求項11】
前記物品固定部が、電子機器以外の物品を固定する非電子機器固定部であることを特徴とする請求項に記載の車両用通信システム。
【請求項12】
前記非電子機器固定部が、キー、タンクバック、およびETCカードのいずれかを固定する部位であることを特徴とする請求項11に記載の車両用通信システム。
【請求項13】
前記車両側通信機器は、車両に設けられた電力供給源から電力を供給されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の車両用通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部と通信を行う通信機器を備える車両用通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車には、車両のデータを外部に取り出すための故障診断コネクターが設けられている。そして、この故障診断コネクターに取り付けた無線通信装置から、無線LAN等によってスマートフォンなどの接続機器に車両のデータを送信することが行われている(例えば特許文献1参照)。無線LAN等の無線通信は、通信線を接続する作業が不要なため、ユーザーにとっては利便性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−019716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような自動車用の無線通信装置は、車室内に設けられたコネクターと接続される。そのため、車体が風雨にさらされても、無線通信装置の防水対策を考慮する必要性は低い。一方、自動二輪車などの鞍乗型車両は自動車のような車室がない。したがって、上述したような無線通信装置を鞍乗型車両に適用しようとした場合、車体が風雨にさらされても問題が生じないように、無線通信装置の防水対策が必要となる。防水対策としては、鞍乗型車両の内部の水がかからない箇所に無線通信装置を配置することが好ましい。しかし、鞍乗型車両ではそのような箇所は限られている。その上、そのような箇所には既に様々な機器が設置されており、スペースに余裕はない。よって、新たに無線通信装置を配置するスペースを確保することは困難である。
【0005】
なお、上述の自動車の無線通信装置は、車両のデータを外部に送信するものであるが、外部からデータを受信する無線通信装置を鞍乗型車両に設ける場合にも上記と同様の問題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、ユーザーの利便性を確保しつつ車両が風雨にさらされても通信機器の通信に問題が生じにくい車両用通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点による車両用通信システムは、鞍乗型車両と物品とを備えている車両用通信システムであって、前記鞍乗型車両は、車体フレームと、前記車体フレームに搭載されるパワーユニットと、前記パワーユニットより上方に配置されるシートと、前記シートより前方かつ前記パワーユニットより上方に配置されるハンドルと、前記ハンドルの左端部および右端部に設けられるグリップ部と、前記シートより下方に配置される足載せ部と、前記車体フレームに搭載される電子機器と、前記電子機器とデータ転送可能に有線接続された車両側通信機器と、を備えており、前記物品は、前記車両側通信機器及び外部通信機器のそれぞれと無線通信可能である物品側通信機器を備え、座る行為、足で挟む行為、指で操作する行為、および、手で把持した当該物品により操作する行為のうちの少なくともいずれか1つの前記鞍乗型車両を使用する行為により、直接又は別の物品を介して前記所定の部位と接触しており、前記車両側通信機器は、前記所定の部位を通信可能範囲に含み、前記所定の部位に直接触れたユーザーの姿勢によってはユーザーの体の一部が通信可能範囲を超えることがある通信機器である
また、本発明の第2の観点による車両用通信システムは、鞍乗型車両と物品とを備えている車両用通信システムであって、前記鞍乗型車両は、車体フレームと、前記車体フレームに搭載されるパワーユニットと、前記パワーユニットより上方に配置されるシートと、前記シートより前方かつ前記パワーユニットより上方に配置されるハンドルと、前記ハンドルの左端部および右端部に設けられるグリップ部と、前記シートより下方に配置される足載せ部と、前記車体フレームに搭載される電子機器と、前記ハンドルに設けられ、前記電子機器とデータ転送可能に有線接続された車両側通信機器と、を備えており、前記物品は、グローブであって、前記車両側通信機器及び外部通信機器のそれぞれと無線通信可能である物品側通信機器を備え、前記グリップ部を手で握る行為により直接前記グリップ部と接触し、前記車両側通信機器は、前記グリップ部を通信可能範囲に含み、前記グリップ部に触れたユーザーの姿勢によってはユーザーの体の一部が通信可能範囲を超えることがある通信機器である。
また、本発明の第3の観点による車両用通信システムは、鞍乗型車両と物品とを備えている車両用通信システムであって、前記鞍乗型車両は、車体フレームと、前記車体フレームに搭載されるパワーユニットと、前記パワーユニットより上方に配置されるシートと、前記シートより前方かつ前記パワーユニットより上方に配置されるハンドルと、前記ハンドルの左端部および右端部に設けられるグリップ部と、前記シートより下方に配置される足載せ部と、前記車体フレームに搭載される電子機器と、前記足載せ部の近傍に設けられ、前記電子機器とデータ転送可能に有線接続された車両側通信機器と、を備えており、前記物品は、靴又は靴下であって、前記車両側通信機器及び外部通信機器のそれぞれと無線通信可能である物品側通信機器を備え、前記足載せ部に足を載せる行為により直接又は別の物品を介して前記足載せ部と接触し、前記車両側通信機器は、前記足載せ部を通信可能範囲に含み、前記足載せ部に触れたユーザーの姿勢によってはユーザーの体の一部が通信可能範囲を超えることがある通信機器である。
また、本発明の第4の観点による車両用通信システムは、鞍乗型車両と物品とを備えている車両用通信システムであって、前記鞍乗型車両は、車体フレームと、前記車体フレームに搭載されるパワーユニットと、前記パワーユニットより上方に配置されるシートと、前記シートより前方かつ前記パワーユニットより上方に配置されるハンドルと、前記ハンドルの左端部および右端部に設けられるグリップ部と、前記シートより下方に配置される足載せ部と、前記車体フレームに搭載される電子機器と、前記電子機器とデータ転送可能に有線接続された車両側通信機器と、を備えており、前記物品は、前記車両側通信機器及び外部通信機器のそれぞれと無線通信可能である物品側通信機器を備え、前記鞍乗型車両を使用する行為において、直接又は別の物品を介して、前記シートの後部に設けられるリアグリップ部又は当該物品を収納可能な収納部と接触し、前記車両側通信機器は、前記リアグリップ部又は前記収納部を通信可能範囲に含み、前記リアグリップ部又は前記収納部に触れたユーザーの姿勢によってはユーザーの体の一部が通信可能範囲を超えることがある通信機器である。
また、本発明の第5の観点による車両用通信システムは、鞍乗型車両と物品とを備えている車両用通信システムであって、前記鞍乗型車両は、車体フレームと、前記車体フレームに搭載されるパワーユニットと、前記パワーユニットより上方に配置されるシートと、前記シートより前方かつ前記パワーユニットより上方に配置されるハンドルと、前記ハンドルの左端部および右端部に設けられるグリップ部と、前記シートより下方に配置される足載せ部と、前記車体フレームに搭載される電子機器と、前記電子機器とデータ転送可能に有線接続された車両側通信機器と、を備えており、前記物品は、前記車両側通信機器及び外部通信機器のそれぞれと無線通信可能である物品側通信機器を備え、前記鞍乗型車両の所定の部位に固定可能であって、ユーザーが前記鞍乗型車両を運転している期間内に直接前記鞍乗型車両中の前記所定の部位と接触しており、前記車両側通信機器は、前記所定の部位を通信可能範囲に含み、前記所定の部位に直接触れたユーザーの姿勢によってはユーザーの体の一部が通信可能範囲を超えることがある通信機器である。
また、本発明の第の観点による車両用通信システムは、鞍乗型車両と第1物品とを備えている車両用通信システムであって、前記鞍乗型車両は、車体フレームと、前記車体フレームに搭載されるパワーユニットと、前記パワーユニットより上方に配置されるシートと、前記シートより前方かつ前記パワーユニットより上方に配置されるハンドルと、前記ハンドルの左端部および右端部に設けられるグリップ部と、前記シートより下方に配置される足載せ部と、前記車体フレームに搭載される電子機器と、手で握る行為、および、指で操作する行為のいずれか一方の前記鞍乗型車両を使用する行為の際、ユーザーが直接または第2物品を介して触れる前記鞍乗型車両の所定の部位及び前記第1物品を通信可能範囲に含み、前記所定の部位に直接触れたユーザーの姿勢によってはユーザーの体の一部が通信可能範囲を超えることがある通信機器であって、前記電子機器とデータ転送可能に有線接続された車両側通信機器と、を備えており、前記第1物品は、ユーザーの手及び首のいずれかに付けられた物品、又は、ユーザーが身に付けた服の袖であり、前記車両側通信機器及び外部通信機器のそれぞれと無線通信可能である物品側通信機器を備えている。
【0008】
この構成によると、鞍乗型車両は、電子機器とデータ送信用の配線を介して接続された通信機器を備えている。この通信機器は、鞍乗型車両のある部位が通信可能範囲内となるように車両に設けられた場合に、上記部位に直接触れたユーザーの姿勢によってはユーザーの体の一部が通信可能範囲を超えることがあるような機器である。つまり、この通信機器の通信可能範囲はユーザーの体の範囲程度である。このように、通信可能範囲が限られた通信機器が採用されているため、通信機器は無線LAN機器等の通信可能距離がより大きい通信機器と比べて小さくて薄いものとなる。このため、樹脂製の膜で覆うといった防水加工が可能である。したがって、通信機器は大型化を抑えつつ防水性を確保できるため、車両の外側に配置できる。また、通信機器は小さくて薄いことから、車両の内部の狭いスペースにも設置しやすい。このように通信機器の小さく薄い点を活かすことで、防水性を確保しつつ車両の外側に配置する場合でも車両の内部に設置する場合でも、車両が風雨にさらされても通信に問題が生じにくい。
【0009】
また、この通信機器は、無線LAN機器等と比べて通信可能範囲が狭い。仮に、車両に設けられた通信機器と通信可能な外部の接続機器とを通信させるためだけに、その狭い通信可能範囲にユーザーがわざわざ接続機器を持ち込まなければならないとすると、利便性が悪い。しかしながら、本発明の通信機器は、鞍乗型車両を使用する行為においてユーザーが直接または物品を介して触れる部位を通信可能範囲に含むように配置されている。そのため、前記物品またはユーザーの服飾品(但し前記物品を除く)のうち車両の前記部位と触れる箇所付近に接続機器を設けることで、車両を使用する行為をするだけで、接続機器を通信機器の狭い通信可能範囲内に配置することができる。したがって、通信機器と接続機器とを通信させるためだけにわざわざ接続機器を通信機器の通信可能範囲内に持ち込むという動作を行わなくて済む。その結果、ユーザーの利便性を確保しつつ、車両が風雨にさらされても通信に問題が生じにくい鞍乗型車両を実現できる。
【0010】
お、本発明において、ユーザーが物品を介して触れるとは、ユーザーが身に着けている服飾品(物品)を介して触れる場合と、ユーザーが把持する物品を介して触れる場合を含む。ここでの服飾品とは、衣服と装飾品の総称である。また、本発明において、ユーザーが鞍乗型車両を使用する行為とは、運転中に行う行為だけでなく、運転停止時に行う行為(例えば物品を車両に固定する行為など)を含む。
【0012】
ーザーは、運転中または運転前後に鞍乗型車両に対して、手で握る行為、座る行為、足で挟む行為、足を載せる行為、指で操作する行為、および手で把持した操作用物品で操作する行為のうちの少なくともいずれか1つの行為を行う。通信機器は、これら6つの行為のうちの少なくともいずれか1つの行為においてユーザーが直接または物品を介して触れる部位を通信可能範囲に含むように配置される。そのため、操作用物品またはユーザーの服飾品のうち車両の前記部位と触れる箇所付近に接続機器を配置することで、運転中または運転前後に通信機器と接続機器との間で通信を行うことができる。
【0013】
また、本発明においては、前記所定の部位、前記シートの座られる部位、前記シートより前方かつ前記パワーユニットより上方に配置される燃料タンクの足で挟まれる部位、前記車体フレームに支持される外装カバーの足で挟まれる部位、前記ハンドルに設けられるスイッチ装置の指で操作される部位、前記シートより前方に配置されるメーター装置の指で操作される部位、前記シートを開閉式の蓋とするシート下収納部の開閉スイッチの指で操作される部位、前記シートより前方かつ前記ハンドルより下方に配置されるフロント収納部の開閉スイッチの指で操作される部位、および、前記シートより前方に配置されるキーシリンダのキーで操作される部位のうち少なくともいずれか1つであることが好ましい。
【0014】
この構成によると、上記行為のそれぞれに関して適切な部位が通信可能範囲となるように通信機器が配置される。なお、この構成は、シート、グリップ部、リアグリップ部、燃料タンク、外装カバー、足載せ部、スイッチ装置、メーター装置、シート下収納部、フロント収納部及びキーシリンダのすべてが車両に設けられていることを意味するのではなく、これらの部分のうちの少なくともいずれか1つが車両に設けられていればよいことを意味する。
【0016】
上記第5の観点による車両用通信システムによると、通信機器は、物品を固定する行為により前記物品が触れる部位を通信可能範囲に含むように配置される。そのため、物品において車両の前記部位と触れる箇所付近に接続機器を配置することで、少なくとも物品を固定する際に通信機器と接続機器との間で通信を行うことができる。
【0017】
また、本発明においては、前記所定の部位は、前記物品が固定される物品固定部であることが好ましい。
【0018】
この構成によると、通信機器は、物品が固定される物品固定部を通信可能範囲に含んでいる。そのため、物品の物品固定部と触れる部位に接続機器を設けることにより、ユーザーが物品を固定するときだけでなく、固定行為の後も物品が固定されている限り通信機器と接続機器との間で通信を行うことができる。
【0019】
また、本発明においては、前記物品固定部が、固定用電子機器を固定する電子機器固定部であってもよい。
【0020】
固定用電子機器には電力が供給される。そのため、固定用電子機器に通信機器と通信可能な接続機器を設けた場合には、接続機器に電力を供給することができる。
【0021】
また、本発明においては、前記電子機器固定部が、携帯電話、ナビゲーション装置、ドライブレコーダー、オーディオ機器、カメラ、レーダー探知機、時計、およびETC車載器のいずれかを固定する部位であることが好ましい。
【0022】
この構成によると、車両に設置することが多いと考えられる機器の固定部位が通信可能範囲となるので、通信の機会が確保されやすい。
【0023】
また、本発明においては、前記物品固定部が、電子機器以外の物品を固定する非電子機器固定部であってもよい。
【0024】
この構成によると、電子機器以外の物品を車両に固定する場合を利用して通信を確保できる。
【0025】
また、本発明においては、前記非電子機器固定部が、キー、タンクバック、およびETCカードのいずれかを固定する部位であることが好ましい。
【0026】
この構成によると、電子機器以外では車両に設置することが多いと考えられる物品の固定部位が通信可能範囲となるので、通信の機会が確保されやすい。
【0027】
また、本発明においては、前記車両側通信機器は、車両に設けられた電力供給源から電力を供給されていることが好ましい。
【0028】
この構成によると、通信機器には車両に設けられた電力供給源から電力が供給される。通信機器が電力供給される構成の場合、この通信機器と通信する接続機器には電力を供給しなくても、接続機器と通信機器との間で通信できる。このため、接続機器を物品に取り付ける場合に、その物品に接続機器用の電力供給源を設ける必要がない。したがって、通信を確保するために必要な構成が小規模になるため、接続機器を取り付け可能な物品の種類が多くなる。よって、利便性をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態に係る自動二輪車の側面図である。
図2】乗車したライダーから見たハンドル周辺の図である。
図3図3(a)は、ライダーが乗車時にグローブを装着してグリップを握った状態のグリップ周辺の斜視図である。図3(b)は、車両側のNFC通信部におけるグリップの周方向に直交する縦断面図である。図3(c)は、自動二輪車の電気系の構成を示すブロック図である。
図4図4(a)はグローブの斜視図である。図4(b)は、グローブ側のNFC通信部の縦断面図である。図4(c)は、自動二輪車及びグローブの電気系の構成を示すブロック図である。
図5図5(a)は、ライダーがグローブを装着して携帯端末を操作している状態の携帯端末周辺の斜視図である。図5(b)は、携帯端末及びグローブの電気系の構成を示すブロック図である。
図6図6(a)は、一変形例に係るグローブの斜視図である。図6(b)は、当該変形例において、ライダーがグローブを装着して携帯端末を操作している状態の携帯端末周辺の斜視図である。
図7図7(a)は、別の変形例に係るグローブの斜視図である。図7(b)は、当該変形例において、ライダーがグローブを装着して携帯端末を操作している状態の携帯端末周辺の斜視図である。
図8】さらに別の変形例において、ライダーが乗車時にグローブを装着してグリップを握った状態のグリップ周辺の斜視図である。
図9図9(a)はその他の変形例において、複数の車両側接触部位が示された自動二輪車の側面図である。図9(b)は、図9(a)の車両側接触部位に対応するライダー側の物品におけるNFC通信部の配置が示されたライダーの側面図である。
図10】その他の変形例において、複数の車両側接触部位が示されると共に、当該車両側接触部位に対応する各種物品におけるNFC通信部の配置が示された、乗車したライダーから見たハンドル周辺の図である。
図11】グリップにNFC通信部が設置された場合におけるその通信可能範囲とライダーとの位置関係を示す概念図である。
図12】さらに別の変形例に係る自動二輪車の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本願発明者は、鞍乗型車両の水がかかりやすい箇所、即ち、車両の外側であれば無線通信装置の配置スペースが確保しやすい点に気付いた。そこで、無線通信装置の防水性を高めることで、鞍乗型車両の水がかかりやすい箇所にも設置できるようにしようとした。しかしながら、無線通信装置の通信方式が無線LANやブルートゥースの場合、モジュールが大きいため、防水ケースなどに入れるとさらに大型化してしまう。そのため、車両の外側であっても設置スペースの確保が難しくなる。
【0031】
そこで、本願発明者は、無線通信装置の通信方式として、無線LAN等に代えて、より通信可能範囲が限られた通信方式を利用することを考え付いた。具体的には、車両のある部位が通信可能範囲内となるように車両に通信機器を設けた場合に、その通信機器と上記部位に直接触れたユーザーの姿勢によってはユーザーの体の一部が通信可能範囲を超えるような通信機器を採用することを考え付いた。このような通信機器の通信可能範囲は、鞍乗型車両のある部位に直接触れたユーザーの体の範囲程度である。このような通信機器(以下、「近距離通信機器」とする)における通信方式の一例として、NFC(Near Field Communication)方式や、クラス3のブルートゥース方式がある。近距離通信機器は、通信可能距離が限られているため、通信用のモジュールが小さくて薄くなる。このため、樹脂製の膜で覆うといった防水対策を施しやすい。これにより、装置の大きさを抑えつつ防水性を確保できるため、車両の外側に通信装置を配置しやすい。
【0032】
また、近距離通信機器は通信用のモジュールが小さくて薄いことから、車両の内部の狭いスペースにも配置できることにも気付いた。このように、NFC等を利用すれば、防水性を確保しつつ水がかかりやすい箇所に設置することもできるし、鞍乗型車両の内部の水がかからない箇所に設置することもできる。
【0033】
このように大きさと防水性の点では近距離通信機器は適切であるものの、近距離通信機器は無線LAN等と比べて通信可能範囲が狭い。そのため、近距離通信機器と外部の接続機器とを通信させるには、近距離通信機器の狭い通信範囲内にユーザーが接続機器をわざわざ持ち込むという行為が必要となる。したがって、近距離通信機器は、小型で防水性に優れる一方で、ユーザーにとって利便性が低くなる。
【0034】
そこで、本願発明者は、ユーザーが鞍乗型車両を使用するときに直接または物品を介して車両に触れている点に着目した。ユーザーが直接または物品を介して触れることにより、ユーザーまたは物品が車両に近い位置に配置されることとなる。本願発明者は、ユーザーが鞍乗型車両を使用する行為に伴って、近距離通信機器の狭い通信範囲内に接続機器が配置されれば、通信のためだけに接続機器を近距離通信機器の通信範囲内に持ち込む動作が不要となることに気付いた。そこで、本願発明者は、鞍乗型車両を使用する行為においてユーザーが直接または物品を介して触れる部位を通信可能範囲に含む位置に近距離通信機器を配置することを考案した。これにより、ユーザーの利便性を確保しつつ、車両が風雨にさらされても通信に問題を生じにくくできる。本願発明者は、このような経緯で本願発明に至った。
【0035】
以下、本発明に係る鞍乗型車両の実施の形態について、自動二輪車1を例に挙げて説明する。ただし、本発明に係る鞍乗型車両は自動二輪車1に限定される訳ではない。鞍乗型車両は、乗員が跨って乗車する任意の車両を意味する。鞍乗型車両はオフロード型、スクータ型、モペット型等の他の型式の自動二輪車であってもよい。また、本発明の鞍乗型車両には、三輪車、四輪バギー(ATV:All Terrain Vehicle(全地形型車両))、水上バイク等が含まれる。なお、以下の説明において、前後方向とは、自動二輪車1の後述するライダーシート11に着座したライダーRから視た車両前後方向のことであり、左右方向とは、ライダーシート11に着座したライダーRから視たときの車両左右方向(車幅方向)のことである。また、図中の矢印F方向と矢印B方向は、前方と後方を表している。図中の矢印L方向と矢印R方向は、左方と右方を表している。
【0036】
図1に示すように、自動二輪車1は、前輪2と、後輪3と、車体フレーム4と、ライダーシート11とを備えている。ライダーシート11は、ライダーRがその後端部の開閉スイッチ11aを指で操作することにより、図1の矢印Aの方向に開閉できるように車体フレーム4に支持されている。ライダーシート11と車体フレーム4との間には、ライダーシート11が閉じられた状態で物品を収容可能な収納部11bが形成されている。図2に示すように、車体フレーム4のライダーシート11より前方の部分には、ヘッドパイプ5が設けられている。ヘッドパイプ5の内部には、ステアリングシャフト(図示せず)が回転可能に挿入されている。このステアリングシャフトの上端には、ハンドルクラウン6が固定されている。
【0037】
ハンドルクラウン6の左右両端部には、フロントフォーク7の上端部が固定されている。このフロントフォーク7の下端部は、前輪2を支持している。また、2本のフロントフォークの上端部には、それぞれ、ハンドルバー8が固定されている。
【0038】
2本のハンドルバー8の外周部には、ハンドルグリップ9R及び9L(右グリップ部、左グリップ部)が装着されている。ハンドルグリップ9R及び9Lはそれぞれ、十数cm(centimeter)の長さを有している。右側のハンドルグリップ9Rは、アクセルグリップである。また、右側のハンドルバー8には、ブレーキレバー10が取り付けられており、左側のハンドルバー8には、クラッチレバー25が取り付けられている。また、左側のハンドルバー8にはスイッチボックス17が、右側のハンドルバー8にはスイッチボックス18が設けられている。スイッチボックス17及び18は、左右方向に関してハンドルグリップ9L及び9Rの内側に、これらのグリップにそれぞれ近接する位置に配置されている。スイッチボックス17及び18には各種のスイッチが設けられている。ハンドルクラウン6の上面にはメインスイッチ用のキーシリンダ21が設けられている。このキーシリンダ21の上端面には、キー31を挿入可能な挿入口が形成されている。ライダーRがキー31を挿入口に挿入し、そのキー31によってキーシリンダ21を所定方向に操作すると、自動二輪車1の電気系が起動すると共に、後述のエンジン13が始動する。自動二輪車1への乗車中、キー31はキーシリンダ21に挿入されたままである。
【0039】
車体フレーム4の下部には、スイングアーム12の前端部が揺動可能に支持されている。このスイングアーム12の後端部は、後輪3を支持している。スイングアーム12の揺動中心と異なる箇所と車体フレーム4とは、上下方向の衝撃を吸収するリアサスペンションを介して接続されている。
【0040】
車体フレーム4の後部にはリアグリップ19が設けられている。リアグリップ19は、停車時にライダーRが車体を支持するために握る部位である。車体フレーム4の後部上面にはタンデムシート20が設けられている。タンデムシート20は、ライダーRがその前端部の開閉スイッチ20aを指で操作することにより、図1の矢印Bの方向に開閉できるように車体フレーム4に支持されている。タンデムシート20と車体フレーム4との間には、タンデムシート20が閉じられた状態で物品を収容可能な収納部20bが形成されている。
【0041】
車体フレーム4は、水冷式のエンジン13(パワーユニット)を支持している。なお、エンジン13は、空冷式であってもよい。車体フレーム4は、エンジン13を直接支持していてもよいし、他の部材を介して間接的に支持していてもよい。エンジン13の上方には、燃料タンク14が配置されている。
【0042】
エンジン13の後方には、複数段の変速ギヤを有するトランスミッション(図示せず)が配置されている。エンジン13の駆動力は、トランスミッションおよびチェーン26を介して後輪3に伝達される。トランスミッションの左側には、トランスミッションのギヤを切り換えるためのシフトペダル24が設けられている。
【0043】
車体フレーム4の両側方であってエンジン13より上方には外装カバー22が設けられている。外装カバー22は樹脂製の板状部材である。ライダーRは、乗車中、この外装カバー22や燃料タンク14を両足で挟み込むことで体を支持する。車体フレーム4の両側方であって後輪3のやや前方にはフットレスト23が設けられている。ライダーRは、乗車中、フットレスト23に両足を載せる。
【0044】
前輪2の上方であってハンドルグリップ9R及び9Lの前方には、フロントカウル15が配置されている。前後方向にフロントカウル15とハンドルグリップ9R及び9Lとの間にはメーターユニット16が配置されている。メーターユニット16は、表示面が後方かつ上方を向くように、前後方向と上下方向に対して傾斜して配置されている。表示面には、車速やエンジン回転数、車両の状態、走行距離、時計、計測時間などが表示される。また、メーターユニット16にはスイッチ16aが設けられている(図2参照)。メーターユニット16は、スイッチ16aを操作することで、各種の計測を開始したり時計の時間を合わせたりできるように構成されている。
【0045】
自動二輪車1の車体内にはECU(Electronic Control Unit)40が設けられている。ECU40は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェアと、ROMやRAMなどに記憶されたプログラムデータなどのソフトウェアとから構築されている。CPUは、プログラムデータなどのソフトウェアに基づいて各種の情報処理を実行する。ASICは、かかる情報処理の結果に基づいてエンジン13等を制御する。また、自動二輪車1には、前輪2等の回転速度、車体の角度、エンジン温度などを検出する各種のセンサが設けられている。これらのセンサによる検出結果はECU40に送信される。ECU40は、これらの検出結果に基づいて各部を制御する。さらに、自動二輪車1のタンデムシート20の下方にはGPS(Global Positioning System)による位置検出装置27が設けられている。位置検出装置27による位置の検出結果もECU40に送信され、ECU40における制御処理に使用される。
【0046】
自動二輪車1は、ECU40およびメーターユニット16等の電子機器に電力を供給するバッテリ45を備えている。この電力は、これらの電子機器の駆動に用いられる。また、この電力は、後述のECU40からNFC通信部50への供給電力としても用いられる。
【0047】
スイッチボックス17とハンドルグリップ9Lとの境界付近には、図3(a)に示すように、NFC通信部50(通信機器)が設けられている。NFC通信部50は、国際標準規格ISO/IEC14443、ISO/IEC18092又はISO/IEC21481に準拠したNFC(Near Field Communication)方式の無線通信を他のNFC通信機器との間で実行する。NFC通信部50は、いわゆるリーダライタ方式のNFC通信機器であり、他のNFC通信機器に電力を供給しつつデータの読み出し及び書き込みが可能である。NFC通信部50は、図3(c)に示すように、通信処理部51、アンテナ部52及びメモリ53を有している。通信処理部51は、ECU40と接続されるインタフェース部や通信処理を実行する論理回路等を有している。アンテナ部52は通信処理部51に接続され、通信用の電波を発したり受け取ったりする。メモリ53は、通信処理部51によって処理されるデータを一時的に格納する。
【0048】
NFC通信部50は、図3(b)に示すように、通信処理部51、アンテナ部52及びメモリ53を含む本体50aと、本体50aを覆う樹脂製の膜50bとを有している。本体50aは、ハンドルグリップ9Lの右端部に固定されている。本体50aは、膜50bとハンドルグリップ9Lとの間に配置され、これらによって全体が覆われている。これにより、本体50aへの浸水が防止されている。一例として、本体50aの厚みは約数mm(millimeter)、縦や横の長さは数cm程度である。このため、膜50bをあまり大きくしなくても防水性能を十分に確保できる。
【0049】
NFC通信部50は、図3(c)に示すように、電力供給線41及び通信線42を介してECU40と接続されている。NFC通信部50には電力供給線41を介してECU40から電力が供給される。ECU40から供給された電力は、NFC通信部50の駆動に用いられたり、後述の他のNFC通信機器への電力供給に用いられたりする。また、通信処理部51は、通信線42を介し、ECU40から各種のデータを受信する。このデータは、ECU40によるエンジン13などの各部の処理に関する設定データ、センサによる検出結果や位置検出装置27による位置検出の結果を示すデータ、これらが検出された日時等の時刻情報を示すデータなどである。通信処理部51は、受信したデータをメモリ53に格納する。
【0050】
NFC通信部50は、アンテナ部52を介し、他の通信機器と通信を行っていない時にある信号を発している。NFC通信部50は、この信号を受信した他の通信機器が応答のために発する信号を受けることで、NFCによる通信が可能な他のNFC通信機器を検出することができる。NFC通信部50と他のNFC通信機器とが通信可能距離まで近くづくと、上記の信号の送受信によって互いを検出する。NFC通信部50と他のNFC通信機器とは、互いを検出すると、所定のプロトコルに従って通信確立のための処理を実行する。これにより、NFC通信部50は、他のNFC通信機器との通信を確立する。通信処理部51は、通信を確立した他のNFC通信機器へと、メモリ53に格納したデータを、アンテナ部52を介して送信する。
【0051】
NFC通信部50は、他のNFC通信機器との通信確保に先立ち、そのNFC通信機器へとアンテナ部52を介して非接触での電力供給が可能である。他のNFC通信機器は、別の電力供給源に接続されていなくても、NFC通信部50からの電力供給によって起動し、NFC通信部50との間で通信を確立するための処理を実行できる。NFC通信部50は、電力供給源を持たない他のNFC通信機器へと電力を供給し続けることができるように構成されている。これにより、電力供給源を持たない他のNFC通信機器とNFC通信部50との通信が確保される。
【0052】
なお、通信処理部51は、他のNFC通信機器から受け取ったデータをECU40へと転送してもよい。例えば、通信処理部51は、アンテナ部52を介して外部のNFC通信機器から受信したデータをメモリ53に格納する。そして、通信処理部51は、メモリ53に格納したデータを、通信線42を介してECU40へと送信する。
【0053】
このように、通信処理部51は、メモリ53を介してECU40と外部のNFC通信機器との間でデータを転送することができる。また、通信処理部51は、ECU40と外部のNFC通信機器との間でデータを直接転送することもできる。例えば、通信処理部51は、ECU40からのデータをメモリ53に格納せず、外部のNFC通信機器へと直接送信したり、外部のNFC通信機器からのデータをメモリ53に格納せず、ECU40へと直接送信したりする。
【0054】
NFC通信部50は、アンテナ部52から約10cmの範囲内にある別のNFC通信機器との間で通信が可能である。図3(a)の二点鎖線からなる円は、NFC通信部50の通信可能範囲を概略的に示している。このように、NFC通信部50との通信可能範囲にはハンドルグリップ9Lの大半が含まれる。したがって、ハンドルグリップ9Lを握るライダーRの左手は、ほぼ全体がこの通信可能範囲内に納まることになる。一方、ライダーRは、乗車の際、グローブ61を装着する。よって、ライダーRの左手に装着されるグローブ61にNFC通信部80を設けることにより、自動二輪車1側のNFC通信部50とこのNFC通信部80との間で通信させることが可能である。
【0055】
一例として、図3(a)及び図4(a)に示すように、グローブ61の左手の人差し指における手の甲側の表面にNFC通信部80が設けられる。NFC通信部80は、NFC通信部50と同様、他のNFC通信機器との通信が可能である。NFC通信部80は、図4(c)に示すように、通信処理部81、アンテナ部82及びメモリ83を有している。通信処理部81は、アンテナ部82を介し、自動二輪車1のNFC通信部50との通信処理を実行する。メモリ83は、NFC通信部50から受信したデータを格納する。NFC通信部80は、図4(b)に示すように、通信処理部81、アンテナ部82及びメモリ83を含む本体80aと、本体80aを覆う樹脂製の膜80bとを有している。そして、膜80bにより本体80aが防水されている。グローブ61にはNFC通信部80へと電力を供給する手段が設けられていない。
【0056】
ライダーRがグローブ61を装着したまま図3(a)に示すようにハンドルグリップ9Lを握ると、自動二輪車1のNFC通信部50とグローブ61のNFC通信部80とが互いの通信可能範囲内まで近づく。NFC通信部80は電力供給源を持たないため、上記の通り、NFC通信部50からNFC通信部80へと電力の供給が開始される。NFC通信部80は、NFC通信部50から供給された電力により起動する。そして、NFC通信部50とNFC通信部80とが互いを検出すると、これらの間に通信が確立する。自動二輪車1のNFC通信部50は、グローブ61のNFC通信部80へと、ECU40から受け取ったデータを転送する。グローブ61のNFC通信部80は、転送されたデータをメモリ83に格納する。この間、NFC通信部80は、NFC通信部50から供給された電力で動作する。なお、NFC通信部80に一時的な蓄電手段が設けられ、NFC通信部50からの電力がこの蓄電手段に蓄えられてもよい。そして、NFC通信部80が、蓄電手段からの電力供給を受けつつ動作してもよい。
【0057】
なお、以上のように自動二輪車1からグローブ61へとデータが転送されることに代えて、又は、これに加えて、グローブ61から自動二輪車1へとデータが転送されてもよい。この場合、自動二輪車1へと転送されるデータは、例えば、後述の通り携帯端末90からグローブ61へとあらかじめ転送されたデータである。
【0058】
上記のようにECU40からのデータがNFC通信部80のメモリ83に格納されたグローブ61からは、さらに他のNFC通信機器を使用してデータが取り出される。以下、その一例として、NFC方式の無線通信が可能な携帯端末90によってデータが取り出される場合について説明する。携帯端末90としてはライダーRが所持する多機能携帯電話(スマートフォン)が想定される。その他、従来型携帯電話やタブレットPC(Personal
Computer)、ノートパソコンなどが携帯端末90として用いられてもよい。携帯端末90は、図5(b)に示すように、各種の情報処理を実行する制御部91と、NFC方式の無線通信が可能なNFC通信部92とを有している。
【0059】
制御部91は、CPU、ROM、RAMなどのハードウェアと、ROMやRAMなどに記憶されたプログラムデータなどのソフトウェアとから構築されている。RAMには、グローブ61からデータを取り出す処理を実行するためのプログラムに対応するデータが格納される。このデータは、例えば、インターネットを介してダウンロードされてもよいし、データ記録メディアから読みだされてRAMに格納されたものであってもよい。制御部91による以下の制御処理は、RAMに格納されたデータに基づいてCPUが情報処理を実行することで実現する。
【0060】
NFC通信部92は、電力供給線41及び通信線42を介して制御部91に接続されている。NFC通信部92には電力供給線41を介して電力が供給される。この供給電力によってNFC通信部92が動作する。また、NFC通信部92は、通信線42を介して制御部91との間でデータを送受信する。NFC通信部92は、NFC通信部50と同様に、電力供給源を持たない他のNFC通信機器に対して電力供給が可能である。
【0061】
グローブ61は、かかる携帯端末90と通信可能距離まで接近する蓋然性が高い。例えば、図5(a)に示すように、ライダーRがグローブ61を装着したまま携帯端末90を使用する場合には、グローブ61のNFC通信部80と携帯端末90とが通信可能距離まで接近する。よって、NFC通信部80とNFC通信部92とが互いに通信可能範囲内に近づく。あるいは、ライダーRがグローブ61と携帯端末90とを同じかばんの中に収容した場合などにも、携帯端末90とグローブ61とが通信可能距離まで近づくことがある。
【0062】
携帯端末90のNFC通信部92とグローブ61のNFC通信部80とが通信可能範囲内まで近づくと、NFC通信部92からNFC通信部80へと電力の供給が開始される。NFC通信部80は、NFC通信部92から供給された電力により起動する。そして、NFC通信部92とNFC通信部80とが互いを検出すると、これらの間に通信が確立する。通信が確立すると、NFC通信部80は、メモリ83に格納しておいたデータをNFC通信部92へと転送する。NFC通信部92は、転送されたデータをさらに制御部91へと転送する。この間、NFC通信部80は、NFC通信部92から供給された電力で動作する。なお、NFC通信部80に蓄電手段が設けられている場合にはこの蓄電手段に蓄えられた電力に基づいてNFC通信部80がNFC通信部92との通信を実行してもよい。また、NFC通信部92から供給された電力が蓄電手段に蓄えられてもよい。
【0063】
このようにして、グローブ61のメモリ83に格納されていたECU40からのデータが携帯端末90によって取り出される。取り出されたデータは、さらに、データ記録メディアやインターネットなどの通信ネットワークを介して携帯端末90から外部に取り出されてもよい。また、取り出されたデータに基づいて所定の処理を自動的に行うように制御部91が構成されていてもよい。
【0064】
なお、以上のようにグローブ61から携帯端末90へとデータが転送されることに代えて、又は、これに加えて、携帯端末90からグローブ61へとデータが転送されてもよい。グローブ61のNFC通信部80は、携帯端末90のNFC通信部92から受信したデータをメモリ83に格納する。メモリ83に格納されたデータは、上記の通り、ライダーRがグローブ61を介してハンドルグリップ9Lを握った際に、グローブ61のNFC通信部80から自動二輪車1のNFC通信部50へと転送される。これにより、携帯端末90からグローブ61を介して自動二輪車1へとデータを転送することが可能になる。このデータ転送の方法により、例えば、ECU40において各部の制御に用いられる設定値を自動二輪車1に取り込ませてもよい。
【0065】
以上のように、本実施形態では、ハンドルグリップ9Lを通信可能範囲に含むようにNFC通信部50を配置している。これにより、ハンドルグリップ9Lと接触するライダーR側の物品であるグローブ61にNFC通信部80を設けておくと、ライダーRが通信を意図しない自然な動作でNFC通信部50及びNFC通信部80同士を通信可能な距離まで近づけることになるからである。そして、ライダーRがハンドルグリップ9Lを握る際にNFC通信部80がNFC通信部50と通信可能な範囲内に配置されるためには、グローブ61におけるNFC通信部80の位置は、図3及び図5に示す位置に限られない。
【0066】
例えば、図6(a)は、左手の親指の付け根に対応する位置付近にNFC通信部80が配置された場合を示す。この場合にも、図3(a)に示すNFC通信部50の通信可能範囲内にNFC通信部80が配置されることは明らかである。また、ライダーRが携帯端末90を使用する際にも、図6(b)に示すようにNFC通信部80が携帯端末90に接近する。これによって、NFC通信部80が携帯端末90との通信可能範囲内に配置される。また、図7(a)は、左手の人差し指、中指及び薬指の付け根に対応する位置付近にNFC通信部80が配置された場合を示す。この場合にも、図3(a)に示すNFC通信部50の通信可能範囲内にNFC通信部80が配置されることは明らかである。また、ライダーRが携帯端末90を使用する際にも、図7(b)に示すようにNFC通信部80が携帯端末90に接近する。これによって、NFC通信部80が携帯端末90との通信可能範囲内に配置される。
【0067】
また、NFC通信部50の配置も、図3(a)とは異なっていてもよい。例えば、図8に示すように、NFC通信部50がスイッチボックス17の左端部に配置されてもよい。スイッチボックス17の左端部はハンドルグリップ9Lと近接しているため、ハンドルグリップ9Lの一部がNFC通信部50の通信可能範囲内となる。このため、この場合でも、図8の二点鎖線に示すNFC通信部50の通信可能範囲内にNFC通信部80が配置される。
【0068】
また、上記ではハンドルグリップ9Lが通信可能範囲となるようにNFC通信部50が設置されている。しかし、ハンドルグリップ9Rが通信可能範囲となるようにNFC通信部50が設置されてもよい。
【0069】
以上説明した本実施形態によると、自動二輪車1は、ECU40と通信線42を介して接続されたNFC通信部50を備えている。そして、NFC通信部50は、図3(a)に示すように、ハンドルグリップ9Lの大半がその通信可能範囲になるように配置されている。NFC通信部50に採用されているNFC方式は通信可能範囲が限られている。そして、NFC通信部50は通信可能距離が比較的大きい無線LAN機器等の通信機器と比べて小さくて薄いものとなっている。このため、樹脂製の膜50bで覆うことで防水加工が可能である。したがって、NFC通信部50は大型化を抑えつつ防水性を確保できるため、自動二輪車1の外側に配置できる。このように、本実施形態は、NFC通信部50の小さく薄い点を活かすことで防水性を確保しつつ、自動二輪車1の外側(ハンドルグリップ9Lの表面)に配置されている。したがって、NFC通信部50の設置場所を確保しやすく、且つ、自動二輪車1が風雨にさらされても通信に問題が生じにくい。
【0070】
また、NFC通信部50は通信可能範囲が比較的狭い。仮に、NFC通信部50と外部のNFC通信機器とを通信させるためだけに、その狭い通信可能範囲にユーザーがわざわざNFC通信機器を持ち込まなければならないとすると、利便性が悪い。しかしながら、NFC通信部50はハンドルグリップ9Lの大半が通信可能範囲に収まるような位置に配置されている。ハンドルグリップ9Lは、ライダーが自動二輪車1に乗車する際にグローブ61を介して触れる部位である。そのため、グローブ61にNFC通信部80を設け、さらにその設置位置をハンドルグリップ9Lに接触する位置付近とすることで、ライダーRが乗車する際に自然にNFC通信部50及びNFC通信部80同士が通信可能範囲内に配置される。したがって、NFC通信部50との通信のためだけにわざわざ他のNFC通信機器をNFC通信部50の通信可能範囲内に持ち込むという動作をライダーRにさせなくて済む。これにより、本実施形態は、NFC通信部50の設置場所を確保しやすく、自動二輪車1が風雨にさらされても通信に問題が生じにくく、なお且つ、ライダーRにとって利便性が損なわれないものとなっている。
【0071】
また、本実施形態では、NFC通信部50にはバッテリ45からの電力がECU40を介して供給される。この電力は、さらにNFC通信部50からNFC通信部80へと供給される。これによって、独自の電力供給源を持たないNFC通信部80とNFC通信部50との通信が確保される。NFC通信部80が電力供給されない構成であっても通信が確保されるため、グローブ61には電力供給源が設けられていない。このように、ライダーR側の物品に電力供給源を設けなくてもよいため、物品側の通信関係の構成が小規模である。よって、NFC通信部80を取り付け可能な物品の種類が多くなるため、利便性をより向上できる。
【0072】
以下、NFC通信部50の配置に関する変形例について、図9及び図10を参照しつつ説明する。なお、以下の変形例はNFC通信部50から自動二輪車1の外部のNFC通信部80へとデータが転送される場合が想定されている。しかし、これらの変形例において、自動二輪車1の外部のNFC通信部80からNFC通信部50を介してECU40等の電子機器へとデータが取り込まれてもよい。
【0073】
上述の実施形態は、ハンドルグリップ9Lが通信可能範囲となるようにNFC通信部50が配置されることで、ライダーRが自動二輪車1に乗車中にハンドルグリップ9Lを握った際に、グローブ61に設けられたNFC通信部80とNFC通信部50とが通信可能な距離に配置されるように構成されている。一方、自動二輪車1には、ハンドルグリップ9L以外にも、ライダーRが自動二輪車1を使用する際に服飾品などの物品を介して触れる、又は、直接的に触れる部位(以下、「車両側接触部位」とする)がある。したがって、自動二輪車1側においては、このような部位が通信可能範囲になるようにNFC通信部50を配置する。そして、ライダーR側の服飾品等の物品においては、ライダーRが自動二輪車1に接触した際にその接触位置の近傍となる位置にNFC通信部80を設ける。これにより、上述の実施形態と同様、ライダーRが車両側接触部位に触れることを利用することで、NFC通信部50と物品側のNFC通信部80とを通信させることが可能である。
【0074】
図9(a)及び図10において黒塗りのx印で示すX1〜X17はそれぞれ車両側接触部位を示す。NFC通信部50は、部位X1〜X17の近傍であって、これらの部位が通信可能範囲内となるように配置される。図9(b)及び図10において白抜きのx印で示すZ1〜Z11は、ライダーR側の物品において、部位X1〜X17の近傍に配置されたNFC通信部50と通信可能となるようなNFC通信部80の配置部位を示す。図中、黒塗り又は白塗りのx印は、いずれも単に各部位の位置を示すものであって、物理的な形状を示すものではない。以下、これらの各部位について説明する。
【0075】
部位X1はライダーシート11の外表面である(図9(a)参照。以下、部位X7まで同様に図9(a)参照)。部位X1に対応する部位Z1は、ズボンやライダースーツなどの衣服の臀部に相当する部位である(図9(b)参照。以下、部位Z5まで同様に図9(b)参照)。ここで、「部位X1と部位Z1とが対応すること」は、「部位X1が通信可能範囲内となるように配置されたNFC通信部50と部位Z1に配置されたNFC通信部80とが、ライダーRが部位X1に触れた際に通信可能になること」を意味する。以下、同様である。ライダーRの自動二輪車1への乗車時には、着座したライダーRの衣服のうち、臀部に相当する部位がライダーシート11に接触する。よって、部位X1と部位Z1が接近する。なお、自動二輪車1への乗車は、自動二輪車1の使用の一例である。
【0076】
部位X2はリアグリップ19の表面である。部位X2に対応するライダーR側の部位は、部位Z2又はZ3である。部位Z2はグローブ61の表面である。部位Z3はライダースーツやジャケットなどの袖である。なお、部位Z2が指輪などの手に付ける装飾品等であってもよい。また、部位Z3が手首に付けるブレスレットやリストバンド、時計などであってもよい。ライダーRは、自動二輪車1の使用時、車体を支持する際にリアグリップ19を握る。このとき、部位Z2及びZ3は部位X2に接近する。
【0077】
部位X3は燃料タンク14の表面である。部位X4は外装カバー22の表面である。部位X3及びX4に対応する部位Z4は、ライダーRのニーパッド62の表面である。ライダーRは、自動二輪車1への乗車時に燃料タンク14や外装カバー22を両足で挟み込む。このとき、ニーパッド62が燃料タンク14や外装カバー22に押し付けられることになる。したがって、部位X3及びX4と部位Z4とが互いに接近する。なお、部位Z4が、ズボンやライダースーツの膝に相当する部位であってもよい。
【0078】
部位X5はフットレスト23(足載せ部)である。部位X5に対応する部位Z5は靴63である。ライダーRは、乗車時、靴63をフットレスト23上に載せる。このとき、部位X5と部位Z5が接近する。なお、部位Z5が靴下であってもよい。
【0079】
部位X6はライダーシート11の開閉スイッチ11aである。部位X6に対応するライダーR側の部位は、部位Z2又はZ3である。ライダーRは、自動二輪車1の使用時、開閉スイッチ11aを指で操作してライダーシート11をA方向に開閉する。このとき、グローブ61が開閉スイッチ11aに触れたり、ライダースーツ等の袖が開閉スイッチ11aに接近したりする。よって、部位X6と部位Z2及びZ3とが接近する。
【0080】
部位X7はタンデムシート20の開閉スイッチ20aである。部位X7に対応するライダーR側の部位は、部位Z2又はZ3である。ライダーRは、自動二輪車1の使用時、開閉スイッチ20aを指で操作してタンデムシート20をB方向に開閉する。このとき、グローブ61が開閉スイッチ20aに触れたり、ライダースーツ等の袖が開閉スイッチ20aに接近したりする。よって、部位X7と部位Z2及びZ3とが接近する。
【0081】
部位X8はスイッチボックス17又は18におけるスイッチである(図10参照。以下、部位X13まで同様に図10参照)。部位X8に対応するライダーR側の部位は、部位Z2や部位Z3である。ライダーRは、自動二輪車1の使用時、スイッチボックス17又は18に設けられた各種のスイッチを指で操作する。このとき、グローブ61がスイッチに触れると共に、ライダースーツ等の袖がスイッチに接近する。よって、部位X8と部位Z2及びZ3とが接近する。
【0082】
部位X9はハンドルクラウン6の上面である。部位X9に対応するライダーR側の部位は部位Z2又は部位Z3である。ライダーRは、自動二輪車1への乗車時などの使用時に、ハンドルグリップ9Lを握ったりスイッチボックス17又は18のスイッチを操作したりすると、グローブ61や袖がハンドルクラウン6と接近するからである。
【0083】
部位X10は、メーターユニット16におけるスイッチ16aの周辺部位である。部位X10に対応するライダーR側の部位は部位Z2又は部位Z3である。ライダーRは、自動二輪車1の使用時、スイッチ16aを操作して計測を開始したり時間を合わせたりする。このとき、グローブ61がスイッチ16aに接触すると共に、ライダースーツ等の袖がスイッチ16aに接近する。よって、部位X10と部位Z2及びZ3とが接近する。
【0084】
部位X11はキーシリンダ21である。部位X11に対応する部位Z6はキー31(操作用物品)である。ライダーRは、自動二輪車1への乗車時、キー31を挿入してキーシリンダ21を操作する。なおこのとき、ライダーRは、キー31を介して部位X12(キーシリンダ21)に触れることになる。キー31がキーシリンダ21に挿入されている間には、部位X11と部位Z6とが接近したままである。したがって、この間、部位X11近傍のNFC通信部50と部位Z6のNFC通信部80とは互いに通信可能な状態である。なお、キーシリンダ21は、電子機器以外の物品であるキー31を固定する本発明における非電子機器固定部の一例である。
【0085】
振動アラーム32がハンドルバー8などに固定される場合には、その固定部位(非電子機器固定部)が部位X12に設定される。振動アラーム32は、振動を検出すると警報を発する警報モードと、警報を発しない通常モードとを選択的に取ることができる。振動アラーム32にはキー33(操作用物品)の挿入口が設けられている。振動アラーム32は、キー33が挿入口から取り外されているときには警報モードを、キー33が挿入口に挿入され、所定の位置を取るときには通常モードを取る。そこで、部位X12に対応する部位Z7はキー33に設定される。ライダーRは、自動二輪車1から離れているときにはキー33を携行し、自動二輪車1を使用する際にはキー33を振動アラーム32の挿入口に挿入して所定の位置を取らせる。なおこのとき、ライダーRは、キー33及び振動アラーム32を介し、振動アラーム32の固定部位である部位X12に触れることになる。そして、自動二輪車1への乗車時にはキー33は振動アラーム32の挿入口に挿入されたままである。したがって、この間、部位X12近傍のNFC通信部50と部位Z7のNFC通信部80とは互いに通信可能な状態である。
【0086】
ETC(Electronic Toll Collection System)車載器34がハンドルクラウン6などに固定される場合には、その固定部位(非電子機器固定部)が部位X13に設定される。ETC車載器34は、ETCカード35が挿入されることにより、高速道路などのゲートを通過する際に、ゲートに設置されたETC機器と通信することで自動的に料金を精算する機器である。部位X13に対応する部位Z8はETCカード35である。ライダーRは、自動二輪車1から離れているときにはETCカード35を携行し、自動二輪車1を使用する際にはETCカード35をETC車載器34に挿入する。なおこのとき、ライダーRは、ETCカード35及びETC車載器34を介し、ETC車載器34の固定部位である部位X13に触れることになる。そして、自動二輪車1への乗車時にはETCカード35はETC車載器34に挿入されたままである。したがって、この間、部位X13近傍のNFC通信部50と部位Z8のNFC通信部80とは互いに通信可能な状態である。
【0087】
以上、ライダーRが自動二輪車1を使用する各状況において、部位Z1〜Z5に配置されたNFC通信部80は、ライダーRがグローブ61等の物品を介して、又は、直接的に部位X1〜X10に接触している間にNFC通信部50と通信する。これにより、ECU40のデータがNFC通信部80のメモリ83に転送される。また、部位Z6〜Z8に配置されたNFC通信部80は、キー31、キー33又はETCカード35が部位X11のキーシリンダ21、部位X12の振動アラーム32又は部位X13のETC車載器34に挿入されている間にNFC通信部50と通信する。これにより、ECU40のデータがNFC通信部80のメモリ83に転送される。部位Z1〜Z8などの服飾品やアクセサリー類は、ライダーRの身の回り品であり、同じく身の回り品である携帯端末90の近くに配置される機会が多い。したがって、NFC通信部80と携帯端末90側のNFC通信部92との通信が確保されやすい。この通信によって、上述の実施形態と同様、NFC通信部80のメモリ83に格納されたECU40のデータが携帯端末90へと取り出される。
【0088】
レーダー探知機やナビゲーションシステム(ナビゲーション装置)など、自動二輪車1に追加で設置される電子機器がある場合には、以下の通り、これらの機器にNFC通信部80が設けられてもよい。レーダー探知機は無線電波を探知し、探知結果をライダーRに音などで報知する。ナビゲーションシステムは、GPSを搭載し、車両の現在地とその周辺の交通状況をディスプレイに表示する。例えば、図9(b)に示すように、レーダー探知機やナビゲーションシステムなどの電子機器64(固定用電子機器)がハンドルクラウン6上に固定される場合がある。この場合、電子機器64が部位Z9に設定される。部位Z9に対応する部位X14は、図9(a)に示すように、ハンドルクラウン6における電子機器64の固定部位(電子機器固定部)である。電子機器64としては、その他、音楽や画像を再生するオーディオ機器、時計、ETC車載器などが考えられる。電子機器64が、例えばハンドルバー8など、ハンドルクラウン6以外に固定されてもよい。この場合、部位X14は電子機器64の各固定部位である。
【0089】
また、ドライブレコーダーなどの電子機器65(固定用電子機器)が自動二輪車1の車体の前端部に固定される場合には、図9(a)に示すように、その固定部位(電子機器固定部)が部位X15に設定される。ドライブレコーダーは、ビデオカメラを搭載しており、乗車中に自動二輪車1の前方の状況を自動的に撮影する機器である。この場合、図9(b)に示すように、部位X15に対応する部位Z10が電子機器65に設定される。電子機器65としては、ドライブレコーダー以外に、ライダーRの操作に基づいて静止画や動画を撮影するカメラが考えられる。電子機器65が、例えばハンドルバー8など、車体の前端部以外に固定されてもよい。この場合、部位X15は電子機器65の各固定部位である。
【0090】
このように、電子機器64や電子機器65などの追加の電子機器が自動二輪車1に固定される場合には、少なくとも、これらの電子機器が自動二輪車1に取り付けられる際に部位Z9又はZ10に配置されたNFC通信部80と部位X14又はX15近傍のNFC通信部50とが通信する。これにより、ECU40のデータがNFC通信部80のメモリ83に転送される。なお、ライダーRによる電子機器の固定行為の後で、これらの電子機器が自動二輪車1に固定された状態にある間に、NFC通信部80とNFC通信部50とが通信してもよい。
【0091】
電子機器64又は65のNFC通信部80からのデータの取り出しは、電子機器64又は65が自動二輪車1から取り外された機会に行われてもよい。例えば、ドライブレコーダーやオーディオ機器は、自動二輪車1から取り外された後にPCと接続され、PCにおいて情報が閲覧されることがある。このような場合には、これらの機器のNFC通信部80からPCへとデータが転送されればよい。また、自動二輪車1から取り外された電子機器64又は65から携帯電話90へとNFC方式の無線通信により取り出されてもよい。さらに、電子機器64又は65にNFC以外の別の通信方式による他の通信機器が備えられている場合には、NFC通信部80のメモリ83に格納されたデータが上記他の通信機器に送信されるように構成されていてもよい。この場合、上記別の通信方式に基づく通信によってNFC通信部80のデータが上記他の通信機器から外部の通信機器へと取り出されてもよい。
【0092】
また、電子機器64や電子機器65の動作を確保するため、これらの機器は独自の電力供給源を有するか、自動二輪車1と接続され、自動二輪車1から電力供給を受けるように構成される。したがって、上記独自の電力供給源からの電力か自動二輪車1から電子機器64又は65に供給された電力がNFC通信部80にも供給されるように、電子機器64又は65が構成されていることが好ましい。
【0093】
以上の他、図9(b)に示すように、燃料タンク14にマグネット等でタンクバッグ66が取り付けられる場合には、タンクバッグ66に部位Z11が設定される。この場合、部位Z11に対応する部位X16は、図9(a)に示すように、タンクバッグ66の固定部位(非電子機器固定部)である燃料タンク14である。ライダーRは、自動二輪車1の使用時、タンクバッグ66を燃料タンク14に取り付ける。なおこのとき、ライダーRはタンクバッグ66を介して部位X16に触れることになる。これによって、部位X16と部位Z11が接近する。このとき、NFC通信部50のメモリ53からNFC通信部80のメモリ83へとECU40のデータが転送される。なお、ライダーRによるタンクバッグ66の固定行為の後で、タンクバッグ66が燃料タンク14に固定された状態にある間に、NFC通信部50とNFC通信部80とが通信してもよい。また、タンクバッグ66に携帯端末90が収容された際に、携帯端末90のNFC通信部92とタンクバッグ66のNFC通信部80との間で通信がなされ、NFC通信部80のメモリ83のデータが携帯端末90へと取り出される。なお、タンクバッグ66がクリップなどによって他の部位、例えばハンドルバー8に固定されてもよい。この場合には、部位X16がハンドルバー8の固定部位に設定される。
【0094】
また、図10に示すように、ハンドルバー8にクリップ36を介して携帯端末90が固定される場合には、ハンドルバー8における固定部位(電子機器固定部)が部位X17に設定される。この場合、部位X17近傍のNFC通信部50と携帯端末90のNFC通信部92とが直接通信することにより、NFC通信部50のメモリ53から携帯端末90へとECU40のデータが取り出される。
【0095】
なお、図9には主に自動二輪車1の左半分及びライダーRの左半身における車両側接触部位(X1等)及びNFC通信部80の設置部位(Z1等)が図示されている。しかし、自動二輪車1の右半分及びライダーRの右半身にもこれらの部位と同様に車両側接触部位及びNFC通信部80の設置部位が設定されてもよい。
【0096】
[変形例]
以上、本発明の好適な実施の形態及び各種の変形例について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。また、本明細書における変形例は適宜組み合わせて実施することができる。なお、本明細書において「好ましい」という用語は非排他的なものであって、「好ましいがこれに限定されるものではない」ということを意味するものである。
【0097】
例えば、上述の実施形態では、NFC通信部50には、約10cm程度の距離の範囲を通信可能範囲とするNFC方式が採用されている。しかし、通信可能範囲がこれより広くてもよい。例えば、数十cmまで通信可能範囲が広げられてもよい。また、NFC方式以外の近距離無線通信が用いられてもよい。このような通信方式の一例として、近距離型のブルートゥース方式、例えば、クラス3のブルートゥース方式がある。本実施形態の変形例として採用可能な通信方式は、通信可能範囲がある程度制限されたものである。具体的には、その通信可能範囲は、自動二輪車1のある部位を通信可能範囲に含むように通信機器を配置したとしても、その部位に触れたライダーRの姿勢によっては、ライダーRの体の一部が通信可能範囲を超えてしまう程度の範囲である。例えば、変形例として採用可能な通信方式に基づく通信機器150を、図11に示すように、ハンドルグリップ9Lがその通信可能範囲W(通信機器150からD2の距離)内となるように設置したとする。しかしながら、ハンドルグリップ9Lに触れたライダーRの姿勢によっては、図11に示すように、ライダーRの体の一部(通信機器150からD1の距離)が通信可能範囲Wを逸脱してしまう。この程度に通信可能範囲Wが制限されていることにより、NFC通信部50と同様に、通信機器150が小さく且つ薄い構成で済んでいる。よって、本明細書におけるいずれのNFC方式の通信部や通信機器も、このように通信可能範囲が制限された通信部や通信機器に代えることができる。
【0098】
また、通信可能範囲が車両の大きさ程度に抑えられたさらに別の通信機器がNFC通信部50又は通信機器150の代わりに用いられてもよい。例えば、左右方向に関してハンドルグリップ9Lの左端とハンドルグリップ9Rの右端との間の長さよりも通信可能範囲の直径が小さい通信方式が採用された通信機器が用いられてもよい。かかる通信機器も、通信可能範囲が制限されていることにより、NFC通信部50や通信機器150と同様に小さく且つ薄い構成で済む。なお、このように車両の大きさ程度に抑えられた通信可能範囲や、NFC通信部50の通信可能範囲、通信機器150の通信可能範囲は単なる一例である。これらの通信可能範囲以外の範囲を通信可能範囲とするさらに別の通信方式が採用されてもよい。例えば、NFC通信部50の通信可能範囲よりも小さい範囲を通信可能範囲とする通信方式が採用されてもよい。また、NFC通信部50の通信可能範囲と通信機器150の通信可能範囲との間の範囲を通信可能範囲とする通信方式が採用されてもよい。このように、通信可能範囲内の部位に触れたライダーRの姿勢によっては、ライダーRの体の一部がその通信可能範囲を超えてしまうような通信方式であれば、どのような通信方式が採用されてもよい。この場合における「ライダーRの姿勢」とは、図1に示す乗車中の姿勢であってもよいし、図11に示す降車した状態の姿勢であってもよい。図1の乗車中の姿勢においては、図3(a)に示すように、ライダーRの体の一部が、二点鎖線の円によって示されるNFC通信部50の通信可能範囲を超えている。また、図11の降車した姿勢においては、図11に示すように、ライダーRの体の一部がNFC通信部150の通信可能範囲Wを超えている。
【0099】
また、上述の実施形態では、NFC通信部50が小さく且つ薄いものであるため、膜50bによって防水性を確保できている。そして、これを利用し、自動二輪車1の狭い内部スペースを避け、NFC通信部50を自動二輪車1の外側に配置している。しかし、NFC通信部50が小さく且つ薄いものであるため、狭い内部スペースに配置することもそれほど困難ではない場合もあり得る。この場合には、NFC通信部50を内部スペースに配置してもよい。例えば、スイッチボックス17又は18内にNFC通信部50を配置してもよい。この場合、スイッチボックス17又は18自体で防水性が確保される。このため、膜50bが省かれてもよい。なお、NFC方式とは異なる方式の通信機器が採用された場合にも、上記の通り、通信機器が小さく且つ薄い構成で済む。よって、狭い内部スペースに配置することがそれほど困難ではない場合には、その通信機器を内部スペースに配置してもよい。
【0100】
また、上述の実施形態では、NFC通信部50と通信するNFC通信部80が独自の電力供給源を持たないものとしている。しかし、NFC通信部80の代わりに独自の電力供給源を伴うNFC通信機器が用いられてもよい。この場合には、自動二輪車1側のNFC通信部から電力供給を受けなくても通信が確保される。例えば、上述のグローブ61に、NFC通信部に電力を供給する電池が設けられてもよい。またこのように独自の電力供給源が設けられる場合には、さらに別の通信方式の通信機器も設けられていてもよい。例えば、グローブ61にブルートゥース方式の通信機器がさらに設けられてもよい。この場合には、自動二輪車1からグローブ61のNFC通信部へと転送されたデータがブルートゥース方式の通信機器によってさらに他の通信機器へと転送されてもよい。
【0101】
また、上述の実施形態では、NFC通信部50がECU40からデータを受け取り、外部のNFC通信部80へとそのデータを転送する。しかし、NFC通信部50が外部に転送するデータがECU40のデータではなく、自動二輪車1に搭載された別の電子機器のデータであってもよい。例えば、メーターユニット16からNFC通信部50へと各種の計測値を示すデータが送信され、そのデータが外部へと転送されてもよい。外部からのデータがNFC通信部50を介して上記別の電子機器に取り込まれてもよい。
【0102】
また、上述の実施形態では、本体50aを覆う樹脂製の膜50bを設けることによりNFC通信部50が防水加工されている。しかし、防水加工がなされる場合には、これ以外の方法でなされてもよい。例えば、樹脂製の薄く硬質なケースに本体50aが収容されてもよい。また、防水加工に樹脂以外の素材が用いられてもよい。このとき、通信に影響を及ぼしにくい素材が用いられることが好ましい。ただし、アンテナ部52とそれ以外の部分とで異なる防水加工が施されてもよい。この場合には、アンテナ部52以外の部分の防水加工に金属などが用いられてもよい。
【0103】
また、上述の実施形態では、NFC通信部50は、アンテナ部52とそれ以外の部分とが一体に形成されている。しかし、車両側接触部位が通信可能範囲になるようにアンテナ部52が配置されていれば、それ以外の部位が離れた場所に配置されていてもよい。これと同様に、NFC通信部80においても、アンテナ部83とそれ以外の部分とが離れた場所に配置されてもよい。
【0104】
上述の実施形態において、ライダーRがグローブ61等の物品を、収納部11bや収納部20bなどの収納部に収容する行為が、通信確保のために利用されてもよい。このとき、ライダーRは物品を介して収納部11bや収納部20bの内部に触れる。このため、収納部11bや収納部20bの内部が車両側接触部位となる。そこで、収納部11bや収納部20bの内部が通信可能範囲となるようにNFC通信部50が設けられてもよい。この場合、収納されるグローブ61等の物品にNFC通信部80が設けられればよい。また、携帯端末90が収納部11b等に収納される場合には、NFC通信部50から携帯端末90へとデータが直接転送されてもよい。
【0105】
上述の実施形態において、ナビゲーションシステムやカメラなどの追加の電子機器が自動二輪車1に固定される場合であって、これら追加の電子機器と自動二輪車1内の電子機器とが互いに通信可能に接続される場合には、追加の電子機器から外部の物品へとNFC方式の無線通信を介してデータを転送するような構成が設けられてもよい。例えば、追加の電子機器がECU40からデータを受け取ると共に、そのデータをNFC方式の無線通信によって外部に送信可能であってもよい。この場合には、グローブ61等にNFC通信部80を設けることにより、ライダーRが追加の電子機器を操作した際に、NFC方式の無線通信を介して追加の電子機器からNFC通信部80へとデータが転送される。
【0106】
上述の実施形態では、セパレートハンドルが採用されているが、本発明のハンドルは、バーハンドルであってもよい。セパレートハンドルとは、ハンドルバーがハンドルクラウンを介さずにフロントフォークに連結された形式のハンドルである。バーハンドルとは、ハンドルバーがハンドルクラウンに直接連結された形式のハンドルである。
【0107】
また、上述の実施形態における自動二輪車1の代わりに、図12に示すスクータ型の自動二輪車101が採用されてもよい。そして、ライダーシート111の前方であって、ハンドル109より下方にフロント収納部120が配置されていてもよい。フロント収納部120は、開閉スイッチ120aを指で操作することで、図12のC方向に開閉するように自動二輪車101の車体に支持されている。フロント収納部120は、開かれた状態(二点鎖線の状態)において後方に開口した箱型の形状を有し、閉じられた状態ではほぼ全体が開口も含めて車体内に収容される。この場合、開閉スイッチ120aが通信可能範囲となるように上述のNFC通信部50が設けられていれば、例えば上述のグローブ61を装着したライダーRが指で開閉スイッチ120aを操作した際に、グローブ61に設けられたNFC通信部80がNFC通信部50と通信可能になる。これにより、ECU140から通信線142を介してNFC通信部50へと転送されたデータが、さらにNFC通信部80へと転送されてもよい。
【符号の説明】
【0108】
1 自動二輪車
9L ハンドルグリップ
11 ライダーシート
11a 開閉スイッチ
11b 収納部
13 エンジン
14 燃料タンク
16 メーターユニット
16a スイッチ
17 スイッチボックス
18 スイッチボックス
19 リアグリップ
21 キーシリンダ
22 外装カバー
23 フットレスト
31,33 キー
32 振動アラーム
34 ETC車載器
35 ETCカード
50 NFC通信部
61 グローブ
62 ニーパッド
63 靴
64 電子機器
65 電子機器
66 タンクバッグ
80 NFC通信部
90 携帯端末
92 NFC通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12