特許第6145191号(P6145191)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6145191
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】電動ビット式ドライバ
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/14 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
   B25B23/14 620G
   B25B23/14 620J
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-60724(P2016-60724)
(22)【出願日】2016年3月24日
【審査請求日】2016年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】513268243
【氏名又は名称】奇力速工業股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲徳▼煌
【審査官】 大山 健
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−164261(JP,A)
【文献】 特開昭58−071079(JP,A)
【文献】 特開2009−125907(JP,A)
【文献】 特開昭58−090473(JP,A)
【文献】 特開平07−308864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 23/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結検出付き電動ビット式ドライバであって、
駆動モジュールであって、
電動モータと、
締具を締結するよう構成されたビットと、
前記電動モータと前記ビットとの間に接続され、前記ビットによって前記締具が締結されているときに前記ビットを前記電動モータから離間させるクラッチ部と、
を有する駆動モジュールと;
前記駆動モジュールの前記電動モータに接続され、前記電動モータが動作しているあいだ動作信号を出力し続け、前記電動モータが動作を停止したときに該動作信号の出力を停止する動作検出部と;
前記駆動モジュールの前記クラッチ部に接続され、前記クラッチ部が前記ビットを前記電動モータから離間させたことを検出すると停止信号を出力する停止検出部と;
前記動作検出部と前記駆動モジュールとに電気的に接続され、その内部には下限締結時間及び上限締結時間が設定され、前記動作信号を受信するとに組み込まれた時間計測プロシージャと締結検出プロシージャとを開始する制御部であって、前記時間計測プロシージャは前記動作信号の開始から終了までの動作期間を計測し、前記締結検出プロシージャは前記動作信号の前記期間が前記下限締結時間よりも短いことを検出すると第1の警告信号を出力し、前記停止信号を受信すると前記電動モータの動作を停止し、前記締結検出プロシージャは、前記制御部が前記停止信号を受信しないうちに前記電動モータが動作を開始してからの期間が前記上限締結時間を超過したと判定した場合に、更に第2の警告信号を出力する、制御部と;
前記制御部に電気的に接続され、前記第1の警告信号又は前記第2の警告信号を受信すると起動されて警告を発する警告モジュールと、
を含み、
前記締結検出プロシージャが:
前記電動モータが動作を開始する開始時間を検出する工程であって、該開始時間は前記動作信号が受信されたときに検出され、前記時間計測プロシージャは前記開始時間において実行され前記動作信号が継続して受信される動作期間を計測する、工程と;
前記動作期間が下限締結時間よりも長いかどうかを判定し、該判定が偽である場合、前記第1の警告信号を発して警告プロシージャを実行する、工程と;
前記停止信号の受信を待機し、前記開始時間から前記上限締結時間内に停止信号が受信されているかどうかを判定し、前記判定結果が偽である場合、第2の警告信号を出力して前記警告プロシージャを実行する、工程と;
現在の締具が適切に締結されているかどうか判定し、中断判定プロシージャ及び自動逆回転プロシージャを実行し、該中断判定プロシージャ及び前記自動逆回転プロシージャを実行後に前記開始時間を検出する工程に戻る、工程と、
を含み、
前記中断判定プロシージャには複数逆算モードと単数逆算モードとが設定され、該複数逆算モードの実行中、中断期間中に逆回転を1回検出する度に、前記中断判定プロシージャは締結予定締具数に1を加算し、該単数逆算モードの実行中、前記中断期間中に1回以上の逆回転を検出すると、前記中断判定プロシージャは前記締結予定締具数に1のみ加算し;
前記自動逆回転プロシージャには自動逆回転期間が設定され、該自動逆回転期間中、前記自動逆回転プロシージャは、継続的に逆回転するよう前記電動モータを駆動する、
電動ビット式ドライバ。
【請求項2】
請求項に記載の電動ビット式ドライバであって、
前記警告プロシージャにはリセット動作モードが設定され、
前記警告プロシージャが:
前記リセット動作モードが実行されているかどうか判定し、偽であれば前記警告プロシージャを終了して前記締結判定プロシージャの前記開始時間を検出する工程に戻る工程と;
前記駆動モジュールをロックして前記電動モータを無効にし、ロック解除コマンドの受信を待機する工程と;
前記ロック解除コマンドを受信すると前記電動モータをロック解除し、前記締結判定プロシージャの前記開始時間を検出する工程に戻る工程と、
をさらに含む、
電動ビット式ドライバ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電動ビット式ドライバであって、
前記駆動モジュールが更に:
前記電動モータに接続され、押下されると前記電動モータを起動する電源ボタンと;
前記電動モータに接続され、切り替えられると前記電動モータの正回転と逆回転とをトグルする正回転/逆回転スイッチと、
を有する、
電動ビット式ドライバ。
【請求項4】
請求項に記載の電動ビット式ドライバであって、
前記制御部が更に:
前記下限締結時間を格納するメモリと;
前記動作検出部と、前記停止検出部と、前記メモリと、に接続されたプロセッサであって、前記正回転/逆回転スイッチに更に接続されて前記電動モータの回転方向を検出し、前記締結判定プロシージャを実行する、プロセッサと、
を含む、
電動ビット式ドライバ。
【請求項5】
請求項に記載の電動ビット式ドライバであって、前記警告モジュールが複数の発光ダイオード(LED)インジケータとブザーとを有する、電動ビット式ドライバ。
【請求項6】
請求項に記載の電動ビット式ドライバであって、操作インターフェースを更に含み、
該操作インターフェースが前記制御部の前記プロセッサに接続されるとともに:
ディスプレイと;
操作されると前記ロック解除コマンドを前記駆動モジュールに送信する複数の入力ボタンと、
を有する、
電動ビット式ドライバ。
【請求項7】
請求項に記載の電動ビット式ドライバであって、
前記制御部の前記メモリが更に、前記締結予定締具数を格納し;
前記締結判定プロシージャの前記開始時間を検出する工程が更に、前記メモリ内の前記締結予定締具数を読み込み、前記締結予定締具数を前記操作インターフェースの前記ディスプレイに出力して前記締結予定締具数を表示する、
電動ビット式ドライバ。
【請求項8】
請求項に記載の電動ビット式ドライバであって、前記制御部の前記プロセッサには更に、締具バッチ締結検出プロシージャが組み込まれ、該締具バッチ締結検出プロシージャは:
単一検出モードであって、該単一検出モードが実行される際、前記締具バッチ締結検出プロシージャは単一締具用締結期間と、締結予定締具数とを予め設定し、前記締結予定締具数を前記ディスプレイに出力して前記締結予定締具数を前記ディスプレイに表示し、1以上の締具が前記単一締具用締結期間内に正しく締結されているかを判定し、真であれば前記締結予定締具数を1減算し、更新された締結予定締具数をディスプレイに表示し、次の単一締具用締結期間において判定を繰り返し、偽であれば前記警告モジュールを起動して警報を発する、単一検出モードと;
バッチ検出モードであって、該バッチ検出モードの実行中、前記締具バッチ締結検出プロシージャはバッチ締具用締結期間と、前記締結予定締具数とを予め設定し、前記締結予定締具数を前記ディスプレイに出力して前記締結予定締具数をディスプレイに表示し、前記バッチ締具用締結期間内に正しく締結された締具が前記締結予定締具数に達したかを判定し、偽であれば前記警告モジュールを起動して警報を発する、バッチ検出モードと、を有する、
電動ビット式ドライバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ビット式ドライバに関し、より具体的には、締結されているネジが浮いていること及びネジのネジ山がスリップしていることを検出すると警告を発する締結検出付きの電動ビット式ドライバに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動ビット式ドライバは、駆動モジュール内の電動モータによって駆動されるビットを通じてネジ、ナット等の締具を締結するものである。初期の電動ビット式ドライバは、締具が過締結された後にビットが回転を続けることによる内部回路の焼損を防ぐために、駆動モジュール内にクラッチ部が備わっている。該クラッチ部は、締具がビットにより過締結されているかどうか(すなわち、ビットの回転への抵抗が異常である場合)を検出する機構を有する。締具がビットにより過締結されていることを検出すると、クラッチ部は、内部回路又はビットの破損を防ぐためにビットの動作を自動的に停止する。
【0003】
図7を参照すると、従来の電動ビット式ドライバは、そのクラッチ部を用いてビットの動作を停止させる場合、締具浮き状態又はネジ山スリップ状態を自動的に判定し、また、駆動モジュール70、停止検出部80、制御部90、及び警告モジュール100を有する。
【0004】
駆動モジュール70は、電動モータ71、クラッチ部72、及びビット73を有する。クラッチ部72は電動モータ71とビット73との間に接続され、ビット73によって締具が所望の通りに締結されたとき、電動モータ71から切断されて、ビット73が電動モータ71によって駆動されないようにする。
【0005】
停止検出部80は駆動モジュール70のクラッチ部72に接続され、クラッチ部72が電動モータ71から切断されたことを検出すると停止信号を出力する。停止検出部80は一般に感応スイッチである。
【0006】
制御部90は駆動モジュール70の電動モータ71と停止検出部80とに電気的に接続され、その内部には下限締結時間が設定される。制御部90は駆動モジュール70の開始を検出し、駆動モジュール70が動作を開始した時点から制御部90が停止信号を受信した時点までの期間を算出し、該期間が下限締結時間よりも短いかどうかを判定して、真であれば警告信号を出力する。
【0007】
警告モジュール100は制御部に電気的に接続され、警告信号を受信すると起動されて警告音や警告表示のような警報をトリガする。
【0008】
ネジ山スリップ又は締具浮き状態は、通常、ネジのネジ山とネジ穴のネジ山とが正しく位置合わせされず、互いに完全に噛み合う前に止まってしまった場合に発生する。すると、駆動モジュール70のクラッチ部72は、下限締結時間が満了する前にビット73から切断される。駆動モジュール70の起動を電動ビット式ドライバが検出すると、クラッチ部72はすみやかに(下限締結時間よりも早く)電動モータ71から切断され、ネジ山スリップ状態が発生する。不正な位置合わせが原因でなく、ネジが十分に締結される前に電動ビット式ドライバが操作されなくなった(例えば使用者が電源ボタンを解放した)ためにネジとネジ穴とのネジ山が動作中に止まった場合には、締具浮き状態が発生する。しかしながら、ネジが浮き状態となっていても、駆動モジュール70のビット73は該ネジを十分に締結していないため、停止検出部80は停止信号を出力しない。そのため、駆動モジュール70が動作を開始した時点から制御部90が停止信号を受信するまでの期間、制御部90は警告信号を出力せず、警告モジュールは警報をトリガしない。したがって、使用者は締具浮き状態を見逃しやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、締具浮き状態において締具が締結されたかどうかを検出することが可能な電動ビット式ドライバを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、電動ビット式ドライバは駆動モジュールと、動作検出部と、停止検出部と、制御部と、警告モジュールと、を有する。
【0011】
駆動モジュールは電動モータと、ビットと、クラッチ部とを有する。
【0012】
ビットは締具を締結するためのものである。
【0013】
クラッチ部は電動モータとビットとの間に接続され、ビットによって締具が締結されるとビットを電動モータから離間させる。
【0014】
動作検出部は、駆動モジュールの電動モータに接続され、電動モータが動作しているあいだ動作信号を出力し続け、電動モータが動作を停止したときに該動作信号の出力を停止する。
【0015】
停止検出部は駆動モジュールのクラッチ部に接続され、クラッチ部がビットを電動モータから離間させたことを検出すると停止信号を出力する。
【0016】
制御部は動作検出部と駆動モジュールとに電気的に接続され、その内部には下限締結時間が設定され、動作信号を受信すると該制御部に組み込まれた時間計測プロシージャと締結検出プロシージャとを開始する。時間計測プロシージャは動作信号の開始から終了までの動作期間を計測し、締結検出プロシージャは動作信号の期間が下限締結時間よりも短いことを検出すると第1の警告信号を出力し、停止信号を受信すると電動モータの動作を停止する。
【0017】
警告モジュールは、制御部に電気的に接続され、第1の警告信号を受信すると起動される。
【0018】
動作検出部は、電動モータが動作を停止し動作信号が出力されなくなるまで、駆動モジュールの電動モータから出力される動作信号を継続的に検出する。使用者が電源ボタンから指を離す等の使用者の操作によって駆動モジュールが動作を停止すると、動作検出部はただちに動作信号の出力を停止し、この際も制御部は継続期間が下限締結時間より少ないかどうかを判定できる。したがって、クラッチ部の動作以外の理由で電動モータが動作を停止したとしても、締具が正しく締結されたかどうか判定し使用者に適切なタイミングで警報を与えることができる。
【0019】
本発明のその他の目的、利点、及び新規な特徴が、以下の詳細な説明を図面と併せて参照することによって更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】本発明に係る電動ビット式ドライバの側面図である。
図1B図1Aの電動ビット式ドライバの別の側面図であり、内部を一部露出させた図である。
図2図1Aの電動ビット式ドライバの機能ブロック図である。
図3図2の電動ビット式ドライバの制御部、警告モジュール、及び操作インターフェースの回路図である。
図4図2の制御部のプロセッサに組み込まれた締結検出プロシージャのフロー図である。
図5図4の警告プロシージャのフロー図である。
図6図2の制御部のプロセッサに組み込まれた自動学習プロシージャのフロー図である。
図7】従来の電動ビット式ドライバの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1A、1B、2、及び3を参照すると、本発明に係る電動ビット式ドライバは、駆動モジュール10、動作検出部20、停止検出部30、制御部40、及び警告モジュール50を有する。
【0022】
駆動モジュール10は電動モータ11、クラッチ部12、及びビット13を有する。クラッチ部12は電動モータ11とビット13との間に接続され、ビット13によって締具が所望の通りに締結されたとき、電動モータ11から切断されて、ビット13が電動モータ11によって駆動されないようにする。本実施形態において、駆動モジュール10は電源ボタン14と正回転/逆回転スイッチ15とを有する。電源ボタン14と正回転/逆回転スイッチ15とは電動モータ11に接続されている。電源ボタン14を押下すると電動モータ11が起動する。正回転/逆回転スイッチ15を切り替えると電動モータ11の正回転と逆回転とがトグルされる。
【0023】
動作検出部20は駆動モジュール10に電気的に接続され、電動モータ11の動作中、動作信号を継続的に出力し、電動モータ11が動作を停止すると、動作信号の出力を停止する。
【0024】
停止検出部30は駆動モジュール10のクラッチ部12に接続され、クラッチ部12がビット13を電動モータ11から離間させたことを検出すると停止信号を出力する。
【0025】
制御部40は動作検出部20と駆動モジュール10とに電気的に接続され、その内部には下限締結時間Ltが設定され、動作信号を受信すると制御部40に組み込まれた時間計測プロシージャと締結検出プロシージャとを開始する。時間計測プロシージャは動作信号の開始から終了までの動作期間を計測する。締結検出プロシージャは、動作期間が下限締結時間よりも短いことを検出すると第1の警告信号を出力し、停止信号を受信すると電動モータ11の動作を停止する。本実施形態において、制御部40はプロセッサ41とメモリ42とを有する。プロセッサ41は動作検出部20と、停止検出部30と、メモリ42とに接続され、締結検出プロシージャを実行する。メモリ42は下限締結時間Ltを格納する。プロセッサ41は正回転/逆回転スイッチに更に接続されて電動モータ11の回転方向を検出する。
【0026】
警告モジュール50は制御部40に電気的に接続され、第1の警告信号を受信すると起動される。本実施形態において、警告モジュール50は複数の発光ダイオード(LED)インジケータ51及びブザー52を有する。
【0027】
締結中のネジの不適切な状態は2種類に分類可能である。一方の種類の不適切な状態は、短いネジ締結期間、もしくは、ネジ山スリップ又はネジとネジ穴との位置合わせ不良によって引き起こされ、下限締結時間Ltよりも短いビット13のネジ締結時間をもたらし、本発明の電動ビット式ドライバによって検出可能である。他方の種類の不適切な状態は、ネジとネジ穴との寸法の不適合によって引き起こされ、電動モータが継続的に空回りを続ける場合には通常は検出されない。そのため、制御部40のメモリ42は上限締結時間Htを更に格納する。締結検出プロシージャは更に、制御部40が停止信号を受信するよりも前に電動モータ11の動作開始からの期間が上限締結時間Htを超過したと判定すると、第2の警告信号を警告モジュール50に出力して警告モジュール50に警報を発させる。そのため使用者は、ネジが空回りしており正しく締結されていない不適切な状態について警告を受けることができる。同様に、単に空回りしているのではなく、ネジが十分に締結される前に電源ボタン14が解放された場合にも、締結検出プロシージャは、制御部40が停止信号を受信するよりも前に電動モータ11の動作開始からの期間が上限締結時間Htを超過したと検出できる。したがって、本発明の電動ビット式ドライバはこのような状態を検出して警報を発することで、電動ビット式ドライバのビット13を用い、クラッチ部を意図通りに動作させてネジを確実に締結させることを使用者に可能にする。
【0028】
前述の下限締結時間Lt、上限締結時間Ht、及び以下の多様な動作モードを提供するために、電動ビット式ドライバは操作インターフェース60を更に有する。操作インターフェース60は制御部40のプロセッサ41に接続され、ディスプレイ61と複数の入力ボタン62とを有する。
【0029】
図4を参照すると、締結検出プロシージャは制御部40によって実行され、以下の工程を有する。
【0030】
工程S10:電動モータ11が動作を開始した開始時間を検出する。該開始時間は動作信号が受信されたときに検出され、時間計測プロシージャは開始時間において実行され動作信号が継続して受信される動作期間を計測する。本実施形態において、本工程は更に、メモリ42に予め格納された締結予定締具数を読み込み、該数をディスプレイ61に出力して、締結予定締具数を表示する。
【0031】
工程S20:動作期間が下限締結時間Ltよりも長いかどうか判定する。
【0032】
工程S30:判定結果が偽であれば、第1の警告信号を発して警告プロシージャを実行し、判定結果が真であれば、次の工程へ進む。
【0033】
工程S40:停止信号を待機し、開始時間から上限締結時間Htまでの間に停止信号が受信されたかどうか判定する。判定結果が偽であれば、第2の警告信号を出力して警告プロシージャを実行し、判定結果が真であれば、次の工程へ進む。
【0034】
工程S50:現在の締具が適切に締結されているかどうか判定し、利用可能な様々な特別動作プロシージャを実行し、特別動作プロシージャの実行後、工程S10に戻る。本実施形態において、現在の締具が適切に締結されていると判定した後、締結予定締具数は1減算され、更新された数がディスプレイ61に表示される。特別動作プロシージャは制御部40に組み込まれており、これには中断判定プロシージャと自動逆回転プロシージャとが含まれる。中断判定プロシージャ及び自動逆回転プロシージャのいずれかのみが、操作インターフェース60の入力ボタン62を通じて選択的に起動される。すなわち、中断判定プロシージャが起動しているとき、自動逆回転プロシージャは行われず、自動逆回転プロシージャが起動している場合、中断判定プロシージャは行われない。
【0035】
図5を参照すると、工程S30における警告プロシージャは、その内部にリセット動作モードが設定され、以下の工程を更に有する。
【0036】
工程S31:リセット動作モードが実行されているかどうか判定し、偽であれば警告プロシージャを終了して工程S10に戻り、真であれば次の工程へ進む。
【0037】
工程S32:駆動モジュール10をロックして電動モータ11を無効化し、操作インターフェース60上の入力ボタン62の操作を通じて発せられるロック解除コマンドの受信を待機する。
【0038】
工程S33:ロック解除コマンドを受信すると電動モータ11をロック解除し、工程S10に戻る。
【0039】
通常の電動ビット式ドライバの駆動モジュールの全てに、ビットを逆回転させる機能が設けられている。駆動モジュール10は、電動モータ11の正回転と逆回転とをトグルするための正回転/逆回転スイッチ15を有する。上述の中断判定プロシージャは、適切に締結されたと判定された締具がビット13を逆回転することで再度緩められた際に、締結予定締具数に再度1を加算することを目的としている。2種類の操作習慣に対応するため、中断判定プロシージャはその内部に複数逆算モードと単数逆算モードとが設定されている。複数逆算モードの実行中、中断期間中に逆回転を1回検出する度に、中断判定プロシージャは締結予定締具数に1を加算する。単数逆算モードの実行中、中断期間中に1回以上の逆回転を検出すると、中断判定プロシージャは締結予定締具数に1のみ加算する。締具が適切に締結されたことを1本ずつ判定するのに慣れている使用者向けには、単数逆算モードを選択できる。複数の締具をバッチとして数えてバッチ内の全締具が適切に締結されたことを判定するのに慣れている使用者向けには、複数逆算モードを選択できる。
【0040】
自動逆回転プロシージャは、その内部に自動逆回転期間Rtが設定されており、自動逆回転期間Rtの間、継続的かつ逆方向に回転するよう電動モータを駆動する。変圧器のケース等、特定の製品の締具の一部には、組み立て時には完全に締結してはならないものがあるため、このような締具は、後続の組み立て工程や使用者の操作のために緩く締結しておく必要がある。そのため、組み立て工員は、自動逆回転プロシージャを実行して締結された締具を逆回転させ、締具を緩く取り付けることができる。
【0041】
制御部40のプロセッサ41には、締具バッチ締結検出プロシージャが更に組み込まれている。締具バッチ締結検出プロシージャには、その内部に、単一検出モードとバッチ検出モードとが設定されている。単一検出モードが実行される際、単一締具用締結期間と、締結予定締具数とが予め設定され、締結予定締具数はディスプレイ61に出力されてディスプレイ61に表示される。更に、締結検出プロシージャは、1以上の締具が単一締具用締結期間内に正しく締結されているかを判定し、真であれば締結予定締具数を1減算し、更新された数をディスプレイ61に表示し、次の単一締具用締結期間において判定を繰り返し、偽であれば第3の警告信号を出力して警告モジュール50を起動して警報を発する。バッチ検出モードが実行される際、バッチ締具用締結期間と、締結予定締具数とが予め設定され、締結予定締具数はディスプレイ61に出力されてディスプレイ61に表示される。更に、締結検出プロシージャは、バッチ締具用締結期間内に正しく締結された締具が締結予定締具数に達したかを判定し、偽であれば第4の警告信号を出力して警告モジュール50を起動して警報を発する。
【0042】
したがって、使用者は、単一締具用締結期間において一度に1本の締具を締結するか、または、バッチ締具用締結期間において所望の数の締具を締結するよう促される。
【0043】
図6を参照すると、操作中の締具によって上限締結時間Htを変更するために、プロセッサ41には以下の工程を有する自動学習プロシージャが更に組み込まれている。
【0044】
工程S71:電動モータ11が動作を開始した開始時間を検出する。該開始時間は動作信号が受信されたときに検出される。
【0045】
工程S72:時間計測を開始し、停止信号の受信を待機する。
【0046】
工程S73:停止信号を受信する。
【0047】
工程S74:電動モータの開始時間から、クラッチ部12がビット13を電動モータ11から切断した時間(すなわち制御部40が停止信号を受信した時間)までの動作期間を検出する。
【0048】
工程S75:確認コマンドを受信しているかどうか判定する。真であれば動作期間をメモリ42に格納し、動作期間を上限締結時間Htとして設定する(工程S76)。偽であれば、動作時間を格納及び設定するのではなく、工程S71に戻る。確認コマンドは操作インターフェース60の入力ボタン62を通じて出力される。
【0049】
上述のような手段で、使用者は自動学習モードを実行し、任意のランダムな仕様の締具をネジ穴に締結することができる。締具が適切に締結されると、自動学習モードにおいて締具の締結にかかった時間が測定可能である。同一仕様の締具が再度締結される際、自動学習モードにおいて測定された上限締結時間Htを使用して、締具が適切に締結されているかどうかを判定することが可能である。
【0050】
検出された条件に従って制御部が第1、第2、第3、又は第4の警告信号を発すると、第1、第2、第3、及び第4の警告信号の受信に際し、警告モジュールのブザー52は、短い2回の音、3回の短い音、1回の長い音等の異なる警告音を発する。
【0051】
駆動モジュール10の電源ボタン14が押下されると、電動モータ11はビット13の回転駆動を開始する。その一方で、動作検出部20は動作信号の継続的出力を開始する。電動モータ11の動作期間が下限締結時間Lt(通常0.1秒に設定)を超えない場合、それはネジ山スリップが発生しているか、使用者の指が意図通りに電源ボタン14を押下していないために、締具が適切に締結されていないことを示す。すると、プロセッサ41は動作期間が下限締結時間Ltよりも短いことを検出し、更に第1の警告信号を発して警告モジュール50を起動することにより、使用者に警告条件を通知する。電動モータ11の動作期間が下限締結時間を超えており、かつ、使用者の指が不注意により電源ボタン14を離してしまったことで締具がまだ締結されていない場合、制御部40は上限締結時間Htまでの間に停止信号を受信できないことから、使用者に警告条件を通知する警報を発する。その結果、電動ビット式ドライバはクラッチ部12のために動作を停止したのではないものの、締具浮き状態が検出可能であり、対応する警告信号が発せられ得る。加えて、電動ビット式ドライバは更に、警告信号への対応を忘れないよう使用者に知らせるための警告信号が発せられた後に、使用者が手動で入力ボタン62を操作して駆動モジュール10をロック解除できるリセット動作モードを提供する。更に、締結予定締具の計数、自動学習プロシージャ、自動逆回転プロシージャ、逆回転動作における締具の計数、などの機能が、使用者の必要に応じて実行される。
【0052】
つまり、制御部は、何らかの警告条件の結果として駆動モジュールが動作を停止したときに、締具が適切に締結されているかどうかを検出し、適時に警告を発して警告への対応を怠らないよう使用者に通知し、汎用性の高い補助機能を提供して、本締結検出付き電動ビット式ドライバがより完全に実施され、使用に際してより実用的になるようにする。
【0053】
本発明の多くの特徴ならびに利点が、本発明の構造及び機能の詳細と併せて、上掲の記載において説明されてきたが、該記載は例示のみを目的とするものである。細部、特に形状、寸法、及び部品の配置には、添付の特許請求の範囲を記述している用語の広義の意味によって示される本発明の要旨の範囲内で変更が加えられ得る。
【要約】
【課題】本発明の目的は、締具浮き状態において締具が締結されたかどうかを検出することが可能な電動ビット式ドライバを提供することである。
【解決手段】本発明の締結検出付き電動ビット式ドライバは、駆動モジュール、動作検出部、停止検出部、制御部、及び警告モジュールを有する。駆動モジュールはビットを有する。動作検出部は駆動モジュールに接続され、駆動モジュールが動作している間、動作信号を継続的に出力する。制御部は動作検出部と警告モジュールとに接続され、動作信号の開始から終了までの期間が下限締結時間よりも短い場合に、第1の警告信号を警告モジュールに出力する。したがって、電動ビット式ドライバの動作がクラッチ部によって停止されなくても締具浮き状態が検出可能であり、使用者が警告条件への対応を忘れてしまうことを防止できる。
【選択図】図2
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7