(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6145243
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】水道管路監視装置
(51)【国際特許分類】
G01M 3/24 20060101AFI20170529BHJP
F17D 5/06 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
G01M3/24 D
G01M3/24 B
F17D5/06
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-213262(P2013-213262)
(22)【出願日】2013年10月11日
(65)【公開番号】特開2015-75440(P2015-75440A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2015年8月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112691
【氏名又は名称】フジテコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103399
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 清
(72)【発明者】
【氏名】西條 和広
【審査官】
萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−178273(JP,A)
【文献】
特開2005−331374(JP,A)
【文献】
特開2006−317172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00 − 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水道管路の付帯設備に設置される、音圧センサを配置した複数のデータ収集装置と、これらデータ収集装置と無線によってデータを送受信する、表示装置を配置した携帯可能なデータ分析装置と、から構成される水道管路監視装置であって、
前記データ収集装置は、1日に所定時間に亘って所定間隔で音圧値を測定し、記録すると共に、測定された時間における最小音圧値を抽出し、保存し、最小音圧値データを任意に設定された複数の音圧閾値と比較し、前記最小音圧値データと前記音圧閾値との大小によって、漏水等の異常の発生の有無を判定し、さらに、古いデータを消去し、最新の所定日数分のデータを保持するものであって、
前記データ分析装置は、作業者が水道管路を巡回する間に、複数の前記データ収集装置から所定時間に亘る音圧値データ、最小音圧値データ、及び判定結果を受信し、その表示装置の画面において、前記判定結果に対応した判定結果マーク及び最小音圧値を表示することを特徴とする水道管路監視装置。
【請求項2】
前記判定結果マークは、判定結果のレベルLVに対応させた図案を使用したものであることを特徴とする請求項1に記載の水道管路監視装置。
【請求項3】
前記判定結果マークとして、雫を図案化したものを使用し、雫の数1〜3を判定結果のレベルLV1〜3に対応させることを特徴とする請求項2に記載の水道管路監視装置。
【請求項4】
前記データ分析装置は、その表示装置の画面において、前記データ収集装置から受信した音圧値データを各種グラフにして表示することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の水道管路監視装置。
【請求項5】
前記グラフとして、最新の所定日数における最小音圧値の推移を表示することを特徴とする請求項4に記載の水道管路監視装置。
【請求項6】
前記データ収集装置は、さらに、管路における瞬間的な極小値を無効な音圧値データとして除去する不連続除去フィルタを採用したことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の水道管路監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水道管路における漏水、水撃等の発生の有無、水の使用実態状況等を監視する水道管路監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水道管路の途中に設置されている多数の消火栓、空気弁等に音圧検出装置及びデータ記録装置を設置し、音圧を長時間自動検出すると共に、データ記録装置によりメモリカードに自動記録し、この多数のメモリカードに記録した音圧データをコンピュータに入力して処理、解析、保存することによって、水道管路の監視を行っていた(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、この方法では、作業者がデータ記録装置の設置個所を巡廻し、一々、メモリカードを収集しなければならず、データの収集に時間がかかると共に、音圧データをコンピュータに入力しなければ、漏水、水撃等の発生の有無、水の使用実態状況等を知ることはできなかった。
【0004】
かかる不都合を解消するため、音圧検出装置とデータ記録装置を一体化させたデータ収集装置と、携帯可能なデータ分析装置から構成され、作業者がデータ分析装置を携帯して巡廻する間に、データ収集装置から音圧データをデータ分析装置に無線で送信する水道管路監視装置が開発された。
【0005】
上記水道管路監視装置によれば、一々、メモリカードを収集する必要はなく、作業者の労力を大幅に軽減することができると共に、データ分析装置によって漏水、水撃等の発生の有無、水の使用実態状況等を直ちに確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−186126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記水道管路監視装置では、データ収集装置において、複数日間に亘って音圧データを記録することができ、データ分析装置において、それら音圧データを受信して、表示装置に数値表示することによって、漏水、水撃等の発生の有無、水の使用実態状況等を確認していた。
【0008】
しかし、データ分析装置において、音圧データを数値表示することによって、漏水等の発生の有無を確認するのでは、どの程度の音圧値であれば漏水等が発生しているのか、作業者の技量、経験によって判断が異なり、判断ミスを生じやすい。
【0009】
又、データ分析装置において、音圧データを数値表示することによって、水の使用実態状況等を確認するのでは、表示装置に数値表示された音圧データを出力装置によって紙面に印字しなければ、経過情報等を確実に把握することができない。
【0010】
本発明は、かかる問題点を解消すべく為されたものであって、漏水等の発生の有無を判断するのに、作業者の技量、経験を必要とせず、又、紙面に印字しなくとも、簡易に経過情報等を把握することができる水道管路監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の水道管路監視装置は、水道管路の付帯設備に設置される、音圧センサを配置した複数のデータ収集装置と、これらデータ収集装置と無線によってデータを送受信する、表示装置を配置した携帯可能なデータ分析装置と、から構成される水道管路監視装置であって、前記データ収集装置は、1日に所定時間に亘って所定間隔で音圧値を測定し、記録すると共に、測定された時間における最小音圧値を抽出し、保存し、最小音圧値データを任意に設定された複数の音圧閾値と比較し、前記最小音圧値データと前記音圧閾値との大小によって、漏水等の異常の発生の有無を判定し、さらに、古いデータを消去し、最新の所定日数分のデータを保持するものであって、前記データ分析装置は、作業者が水道管路を巡回する間に、複数の前記データ収集装置から所定時間に亘る音圧値データ、最小音圧値データ、及び判定結果を受信し、その表示装置の画面において、前記判定結果に対応した判定結果マーク及び最小音圧値を表示することを特徴とする。
【0012】
ここで、前記判定結果マークは、判定結果のレベルLVに対応させた図案を使用したものであれば、容易に視覚的に把握することができ、好ましい。
【0013】
特に、前記判定結果マークとして、雫を図案化したものを使用し、雫の数1〜3を判定結果のレベルLV1〜3に対応させるようにすれば、好ましい。
【0014】
又、前記データ分析装置は、その表示装置の画面において、前記データ収集装置から受信した音圧値データを各種グラフにして表示することを特徴とする。
【0015】
特に、前記グラフとして、最新の所定日数における最小音圧値の推移を表示するようにすれば、好ましい。
【0016】
さらに、管路における定常音といえども変動しており、その瞬間的な極小値を無効な音圧値データとして除去するため、不連続除去フィルタを採用するのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の水道管路監視装置によれば、設定した音圧閾値によって漏水等の発生の有無を判定し、そのレベルを判定結果マークによって図案表示するから、作業者の技量、経験によって漏水等の判断が異なることはなく、判断ミスを生じることはない。
【0018】
又、データ分析装置において、音圧値データを各種グラフにして画面表示することができるから、出力装置によって紙面に印字する必要はなく、経過情報等を確実に視覚的に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図4】水道管路監視装置におけるデータ処理の概要を示す説明図である。
【
図5】データ収集装置において保存されるデータを示す説明図である。
【
図6】データ収集装置において実行される判定フローを示す説明図である。
【
図7】データ受信時におけるデータ分析装置の表示画面を示す図である。
【
図8】データ整列時におけるデータ分析装置の表示画面を示す図である。
【
図9】最小音圧値の推移を示すグラフを画面表示した図である。
【
図10】1日における音圧値の分布を示すグラフを画面表示した図である。
【
図11】1日における音圧値の分布を6分割して示すグラフを画面表示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
先ず、本発明の水道管路監視装置について、
図1乃至3を参照して説明する。
【0021】
水道管路監視装置1は、
図1に示すように、複数のデータ収集装置2と、データ分析装置3と、から構成され、データ収集装置2とデータ分析装置3とは無線によってコマンド及びデータを送受信するようになっている。
【0022】
データ収集装置2は、
図2に示すように、下端部に音圧センサ21を配置し、上端部にアンテナ22と把持部材23を配置してある。
そして、把持部材23を把持して携帯し、
図1に示すように、水道管路Lの制御弁、消火栓、メータ等の付帯設備に設置される。
【0023】
データ分析装置3は、
図3に示すように、筐体31の表面部に表示装置32と操作ボタン33を配置し、上端部にアンテナ34を配置してある。
そして、データ収集装置2から受信したデータを処理、解析して、表示装置32に数値表示、グラフ表示、図形表示等できるようになっている。
【0024】
データ収集装置2は、生活音の少ない深夜の時間帯に2時間(2〜4時)、所定の間隔(1〜60秒)で音圧値を記録し、測定された2時間において最小音圧値を漏水判定に使用する音圧データとする。
漏水音は継続して発生するものであって、音の大きさが急に変化することは基本的にはない。音が急に大きくなる要因としては、生活音、自動販売機等の電気機器の動作音等が考えられるが、2時間発生し続けることはない。よって、最小音圧値を監視すれば、水道管路から本来発生する音の大きさがわかることになる。
そして、本来発生する音の大きさを基準として所定の閾値を設ければ、この閾値を大幅に超えた最小音圧値を示す個所は、何等かの異常音が発生しているとして、漏水が発生していることを判定することができる。
【0025】
データ収集装置2では、
図4に示すように、1日に2時間に亘って所定間隔で音圧値を測定し、記録する。又、測定された2時間における最小音圧値を抽出し、保存する。
そして、
図5に示すように、複数日間(最大35日間)に亘って、2時間に亘る音圧値及び最小音圧値を保存する。ここで、35日以降も保存は継続されるが、その場合には、古いデータは消去され、常に最新の35日分のデータが保存される。
【0026】
次に、データ収集装置2において実行される漏水等の異常状態判定方法について、
図6に示す判定フロー図を基に説明する。
【0027】
異常状態判定の対象データとしては、直近日の音圧値データを使用するが、先ず、これら音圧値データから不連続除去フィルタによって無効な音圧値データを除去する。
データ収集装置2は、管路における最小音圧値を利用して漏水等を発見するものであるが、管路における定常音といえども変動しており、その瞬間的な極小値を最小音圧値と把握してしまうと、異常状態判定を誤ることとなる。
よって、このような極小値を無効な音圧値データとして除去するため、不連続除去フィルタを採用している。
【0028】
不連続除去フィルタは、下記条件1を満たし、かつ、条件2又は3を満たした音圧値データを無効な音圧値データとして除去する。
条件1.最多発生頻度の音圧値未満の音圧値データを除去対象とする。
条件2.他の音圧値と繋がりのない、単独で存在する音圧値データを除去対象とする。
条件3.母集団から離れ、最多発生頻度の音圧値におけるカウント数の1%(少数点以下切り上げ)以下のカウント数の音圧値データを除去対象とする。
【0029】
先ず、表1のような音圧値データが得られたとすると、除去対象となるデータは、条件1によれば、15dB未満のデータであって、さらに、条件2によれば、表1に下線で示すように、0dB、3dBのデータとなる。
【0031】
次に、最多発生頻度の音圧値におけるカウント数は220であるから、その1%(少数点以下切り上げ)は3である。
よって、除去対象となるデータは、条件3によれば、表2に下線で示すように、5dB、6dBのデータとなる。
【0033】
従って、表1のような音圧値データから、不連続除去フィルタによって、無効な音圧値データを除去すれば、表3に示すような音圧値データが得られる。
【0035】
以上によって、異常状態判定の対象データとする最小音圧値データとしては、表3からわかるように、8dBを抽出することができる。
【0036】
次に、この最小音圧値データを任意に設定された音圧閾値(LV1,LV2,LV3:LV1<LV2<LV3)と比較する。
【0037】
最小音圧値データがLV1より小さい場合には、異常なしと判定する。次に、最小音圧値データがLV2より小さい場合、LV3より小さい場合、LV3より大きい場合には、
それぞれ、レベルLV1〜3の異常と判定する。
【0038】
このように判定された結果は、
図4に示すように、データ収集装置2に保存されると共に、データ分析装置3に送信される。
【0039】
データ分析装置3では、
図4に示すように、複数のデータ収集装置2,2,・・・から2時間に亘る音圧値データ、最小音圧値データ、及び、判定結果を受信する。
図7は、データ受信時における表示装置32の表示画面を示す図であり、左上部には受信マーク41、中央部には判定結果マーク42、最小音圧値43が表示される。
又、左側部には各データ収集装置2,2・・・の識別番号44、右側部にはデータ受信日時45が表示される。
【0040】
ここで、判定結果マーク42としては、雫を図案化したものを使用しており、雫が1〜3になるのに従って、レベルLV1〜3の異常判定に対応させてある。
【0041】
図8は、データ整列時における表示装置32の表示画面を示す図であり、データ一覧の白黒表示を反転すると、そのデータ収集装置2の音圧値データを各種グラフにして表示することができる。
【0042】
図9は、最小音圧値の推移を示すグラフを画面表示した図であり、測定期間における最小音圧値の変化を確認することができる。
【0043】
図10は、1日における音圧値の分布を示すグラフを画面表示した図であり、1日における測定された音圧値の分布を確認することができる。
【0044】
図11は、1日における音圧値の分布を6分割して示すグラフを画面表示した図であり、1日における音圧値の変化を時系列で確認することができる。
【0045】
以上のように、本発明の水道管路監視装置は、設定した音圧閾値によって漏水等の発生の有無を判定し、そのレベルを判定結果マーク42によって図案表示するから、作業者の技量、経験によって漏水等の判断が異なることはなく、判断ミスを生じることはない。
【0046】
又、データ分析装置において、音圧値データを各種グラフにして画面表示することができるから、出力装置によって紙面に印字する必要はなく、経過情報等を確実に視覚的に把握することができる。
【0047】
さらに、管路における瞬間的な極小値を無効な音圧値データとして除去するため、不連続除去フィルタを採用したから、漏水等の発生の有無の判定の精度をより向上させることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 水道管路監視装
2 データ収集装置
21 音圧センサ
22 アンテナ
3 データ分析装置
32 表示装置
34 アンテナ
42 判定結果マーク
43 最小音圧値
44 識別番号
45 データ受信日時
L 水道管路