【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。実施例中の「%」および「部」は重量基準であるものとする。
なお、評価は以下の方法に従った。
【0048】
[色むら]
得られた本革製品の試験片をミノルタカメラ株式会社製の分光側色計CM−1000を用いて、L
*a
*b
*表示単位で明度と彩度を測定し、任意の1点を基準とした場合の色差を5点測定し、その平均を算出し、以下の基準に従って、評価した。
○:色差(ΔE
*)が0.2未満
△:色差(ΔE
*)が0.2以上、0.3未満
×:色差(ΔE
*)が0.3以上
【0049】
[風合い(BLC値)]
150mm四方の大きさの試験片を1枚採取し、ST300 Leather Softness Tester(BLC Leather Technology Center Ltd.製)を用いて、500gの荷重で押し込んだときの歪み測定値(BLC値)を測定した。
歪み測定値が大きいものほど柔らかい風合いであることを示す。
○:歪み測定値が3.0mm以上
△:歪み測定値が2.0mm以上、3.0mm未満
×:歪み測定値が2.0mm未満
【0050】
[風合い(官能評価)]
試験片を検査員が触って、手持ち感(試験片を持ったり握ったりしたときの感覚)の評価を行い、下記基準に従って判定した。
○:本革独特の柔らかい風合いであった。
△:やや硬い風合いであった。
×:風合いが硬く、本革独特の風合いが損なわれていた。
【0051】
[触感]
試験片の表面を検査員が触って、官能評価を行い、下記基準に従って判定した。
○:表面が滑らかでざらつきを感じなかった。
△:表面にわずかにざらつきを感じた。
×:表面にざらつきを感じた。
【0052】
[実施例1]
(1)本革基材の調製
原皮として成牛皮を用い、通常の工程を経ることにより銀むきまでを行った。なお、染色はベースコート層と同系色になるように行った。
【0053】
(2)ベースコート層の形成
[処方A1]
1)商品名「BAYDERM Bottom DLV」;160部
(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、固形分40%)
2)商品名「BAYDERM Bottom 51UD」;200部
(ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、固形分35%)
3)商品名「PRIMAL SB−300」;200部
(アクリル樹脂、固形分34%)
4)商品名「EUDERM White CB−N」;112.4部
(顔料、固形分60%)
5)商品名「EUDERM Charamel C−N」;3.1部
(顔料、固形分35%)
6)商品名「EUDERM Bordo CB−N」;2.7部
(顔料、固形分40%)
7)商品名「EUDERM Black B−N」;1.8部
(顔料、固形分23%)
8)商品名「EUDERM Nappa Softs」;110部
(艶消し剤、固形分25%)
9)商品名「EUDERM Matting Agent SN−C」;120部
(艶消し剤・充填剤、固形分23%)
10)商品名「EUDERM Paste DO」;40部
(艶消し剤・充填剤、固形分52%)
11)商品名「AQUADERM Fluid H」;10部
(レベリング剤、固形分100%)
12)商品名「AQUADERM XL−50」;150部
(架橋剤、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、固形分50%)
13)商品名「ACRYSOL RM−1020」;約10部
(増粘剤、固形分20%)
14)水;150部
【0054】
原料は、水を除き全てランクセス株式会社製である。
【0055】
処方A1に従い、各原料をミキサーにて混合し、ベースコート層形成用塗料1を調製した。このとき、カップ粘度計(アネスト岩田株式会社製)を用いて、粘度が50秒になるように、増粘剤で調整した。
塗料の合計部数は1270部であり、このうち34.2%にあたる434.9部が全固形分である。ウレタン樹脂に対するアクリル樹脂の割合は50.7%であった。
【0056】
(1)で得られた本革基材の表面に、リバースロールコーター(商品名「JUMBOSTAR−SR」、Ge.Ma.Ta.SpA製)を用いて、ベースコート層形成用塗料1を、ウェット塗布量が100g/m
2になるように塗布した。乾燥時の厚さは、固形分と塗布量から換算すると32μmであった。
【0057】
次いで、下記処方A2に従い、各原料をミキサーにて混合し、ベースコート層形成用塗料2を調整した。このとき、カップ粘度計(アネスト岩田株式会社製)を用いて、粘度が25秒になるように、増粘剤で調整した。
塗料の合計部数は1265部であり、このうち34.3%にあたる433.9部が全固形分であり、ウレタン樹脂に対するアクリル樹脂の割合は50.9%であった。
[処方A2]
1)商品名「BAYDERM Bottom DLV」;160部
(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、固形分40%)
2)商品名「BAYDERM Bottom 51UD」;200部
(ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、固形分35%)
3)商品名「PRIMAL SB−300」;200部
(アクリル樹脂、固形分34%)
4)商品名「EUDERM White CB−N」;112.4部
(顔料、固形分60%)
5)商品名「EUDERM Charamel C−N」;3.1部
(顔料、固形分35%)
6)商品名「EUDERM Bordo CB−N」;2.7部
(顔料、固形分40%)
7)商品名「EUDERM Black B−N」;1.8部
(顔料、固形分23%)
8)商品名「EUDERM Nappa Softs」;110部
(艶消し剤、固形分25%)
9)商品名「EUDERM Matting Agent SN−C」;120部
(艶消し剤・充填剤、固形分23%)
10)商品名「EUDERM Paste DO」;40部
(艶消し剤・充填剤、固形分52%)
11)商品名「AQUADERM Fluid H」;10部
(レベリング剤、固形分100%)
12)商品名「AQUADERM XL−50」;150部
(架橋剤、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、固形分50%)
13)商品名「ACRYSOL RM−1020」;約5部
(増粘剤、固形分20%)
14)水;150部
【0058】
原料は、水を除き全てランクセス株式会社製である。
【0059】
ベースコート層形成塗料1を塗布した後の湿潤状態である塗布面表面に、スプレーコーター(商品名「TU ROT.3400/1.41」、BARNINI Srl製)を用いて、ベースコート層形成用塗料2を、ウェット塗布量が20g/m
2なるよう塗布し、110℃に調整した乾燥機内に3分間静置して熱処理した。乾燥時の厚さは、固形分と塗布量から換算すると7μmであった。ベースコート層全体の厚さは39μm、色むら(色差)は0.20であった。
【0060】
(3)型押し、ステーキング(揉み、叩き)
(2)で得られた中間製品に対し、エンボス機(商品名「KOMBIPRESS−1800NE」、BERGI ofb s.p.a製)を用いて、ロール温度90℃、圧力150kgf/m
2、加工速度5m/分の条件で、型押しを行い、絞模様を付与した。
次いで、ミリング機(商品名「N2500×1200TS」、BAGGIO Tecnologie s.r.l製)を用いて、温度20℃、回転数15rpmの条件で、30分間揉み加工を行った。
次いで、ステーキング機(商品名「3H3200A」、CARTIGLIANO S.p.A製)を用いて、加工速度8m/分、打ち込み深度:順に2mm、1.5mm、1mmの条件で、叩き加工を行った。
【0061】
(4)カラーコート層の形成
[処方B1]
1)商品名「BAYDERM Bottom DLV」;160部
(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、固形分40%)
2)商品名「BAYDERM Bottom 51UD」;200部
(ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、固形分35%)
3)商品名「PRIMAL SB−300」;200部
(アクリル樹脂、固形分34%)
4)商品名「EUDERM White CB−N」;112.4部
(顔料、固形分60%)
5)商品名「EUDERM Charamel C−N」;3.1部
(顔料、固形分35%)
6)商品名「EUDERM Bordo CB−N」;2.7部
(顔料、固形分40%)
7)商品名「EUDERM Black B−N」;1.8部
(顔料、固形分23%)
8)商品名「EUDERM Nappa Softs」;110部
(艶消し剤、固形分25%)
9)商品名「EUDERM Matting Agent SN−C」;120部
(艶消し剤・充填剤、固形分23%)
10)商品名「EUDERM Paste DO」;40部
(艶消し剤・充填剤、固形分52%)
11)商品名「AQUADERM Fluid H」;5部
(レベリング剤、固形分100%)
12)商品名「ACRYSOL RM−1020」;約5部
(増粘剤、固形分20%)
13)水;150部
【0062】
原料は、水を除き全てランクセス株式会社製である。
【0063】
処方B1に従い、各原料をミキサーにて混合し、カラーコート層形成用塗料を調製した。このとき、カップ粘度計(アネスト岩田株式会社製)を用いて、粘度が25秒になるように、増粘剤で調整した。
塗料の合計部数は1115部であり、このうち32.2%にあたる358.9部が全固形分であり、顔料の含有率は19.5%であった。
【0064】
(3)の工程を経た中間製品の表面に、スプレーコーター(商品名「TU ROT.3400/1.41」、BARNINI Srl製)を用いて、カラーコート層形成用塗料を、ウェット塗布量が25g/m
2となるよう塗布し、110℃に調整した乾燥機内に3分間静置して熱処理した。
乾燥時のカラーコート層の厚さは、固形分と塗布量から換算すると7.0μmであった。
【0065】
(5)トップコート層の形成
[処方C1]
1)商品名「HYDRHOLAC UD−2」;320部
(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、固形分25%)
2)商品名「HYDRHOLAC Finish HW−2」;140部
(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、固形分35%)
3)商品名「AQUADERM Finish HAT」;200部
(ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂、固形分40%)
4)商品名「EUDERM White CB−N」;22.4部
(顔料、固形分60%)
5)商品名「EUDERM Charamel C−N」;3.1部
(顔料、固形分35%)
6)商品名「EUDERM Bordo CB−N」;2.7部
(顔料、固形分40%)
7)商品名「EUDERM Black B−N」;1.8部
(顔料、固形分23%)
8)商品名「Rosilk 2229」;70部
(平滑剤、固形分60%)
9)商品名「AQUADERM Additive SF」;30部
(平滑剤、固形分50%)
10)商品名「AQUADERM Fluid H」;10部
(レベリング剤、固形分100%)
11)商品名「AQUADERM XL−50」;150部
(架橋剤、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、固形分50%)
12)商品名「ACRYSOL RM1020」;約10部
(増粘剤、固形分20%)
13)水;150部
【0066】
原料は、水を除き全てランクセス株式会社製である。
【0067】
処方C1に従い、各原料をミキサーにて混合し、トップコート層形成用塗料を調製した。このとき、カップ粘度計(アネスト岩田株式会社製)を用いて、粘度が25秒になるように、増粘剤で調整した。
塗料の合計部数は1110部であり、このうち33.2%にあたる369.0部が全固形分であり、顔料の含有率は4.3%であった。
【0068】
(4)で得られた中間製品の表面に、スプレーコーター(商品名「TU ROT.3400/1.41」、BARNINI Srl製)を用いて、トップコート層形成用塗料を、ウェット塗布量が25g/m
2となるよう塗布し、110℃に調整した乾燥機内に3分間静置して熱処理した。
乾燥時のトップコート層の厚さは、固形分と塗布量から換算すると7.0μmであった。
【0069】
かくして、実施例1の本革製品を得た。
【0070】
実施例2および実施例3は、ベースコート層1回目の塗料の塗布量を変更した以外は、実施例1と同様にして表1〜3に従い本革製品を作製した。比較例1はベースコート層2回目の塗布をせず、比較例2はベースコート1回目の塗布後に乾燥工程(110℃に調整した乾燥機内に3分間静置)を実施する変更をした以外は、実施例1と同様にして表1〜3に従い本革製品を作製した。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
実施例および比較例によって作製された本革製品の評価は前述の方法によってなされ、結果を表3に記載した。
表3に示されるように、実施例の本革製品は、色むら、風合い、触感の全ての面において優れたものであった。
これに対し、比較例の本革製品は、色むらや風合い、触感が劣るものであった。