特許第6145304号(P6145304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6145304光照射装置及びこれを用いた既設管補修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6145304
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】光照射装置及びこれを用いた既設管補修方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/34 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
   B29C63/34
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-103761(P2013-103761)
(22)【出願日】2013年5月16日
(65)【公開番号】特開2014-223746(P2014-223746A)
(43)【公開日】2014年12月4日
【審査請求日】2016年5月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】595053777
【氏名又は名称】吉佳エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】大岡 伸吉
(72)【発明者】
【氏名】張 満良
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−158465(JP,A)
【文献】 特開2004−182246(JP,A)
【文献】 特開平06−015736(JP,A)
【文献】 特開2002−219753(JP,A)
【文献】 特開2000−104330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/26 − 63/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管内に導入された管状の光硬化性ライニング材の内側でその一端から他端に向けて気体が送られている状態で、前記光硬化性ライニング材をその内側から光照射する移動式の光照射装置であって、
前記送られている気体の流れを、前記光硬化性ライニング材の内側に別途気体を導入することなく変化させる気体流変化手段を備えており、
前記気体流変化手段はファンであり、
前記ファンの回転軸の位置が、前記光照射装置が前記光硬化性ライニング材の内側から光照射している状態において、前記光硬化性ライニング材の横断面中央となるように設けられていることを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記ファンの羽根が回転することにより描かれる円の直径は前記光硬化性ライニング材の内径の20〜80%であることを特徴とする請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
前記ファンは、その風向きが前記光照射装置の移動方向とは反対側の方向となるように設けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の光照射装置。
【請求項4】
前記気体流変化手段は、少なくとも前記光照射装置の移動方向中央よりも移動方向側に設けられたことを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の光照射装置。
【請求項5】
前記気体流変化手段は、前記光照射装置の移動方向側先端部と、前記光照射装置の移動方向の全長を3等分したときの中央の3分の1の領域とに、それぞれ少なくとも1個ずつ設けられたことを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載の光照射装置。
【請求項6】
前記ファンの羽は前記送られている気体の流れにより回転することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の光照射装置。
【請求項7】
複数の管型ランプがその伸長方向に列を為して連結された構成を有し、
前記複数の管型ランプはそれぞれその両端が支持体で支持され、
前記各管型ランプをそれぞれ支持する2個の支持体の間には、その一方の支持体から他方の支持体にかけてパイプ体が架設され、
前記パイプ体は、前記支持体の近傍位置に、当該パイプ体の端部側から中央側に向かって前記管型ランプから離反する方向に延びる遠離部分を有することを特徴とする請求項1〜何れか1項に記載の光照射装置。
【請求項8】
前記遠離部分は前記パイプ体の両端側にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項に記載の光照射装置。
【請求項9】
前記支持体は円柱状又は角柱状の部分を有し、該円柱状又は角柱状の部分の一方の底面側が前記管型ランプ側を向くように設けられ、
前記パイプ体の両端はそれぞれ、前記各支持体の円柱状又は角柱状の部分の側面に接合していることを特徴とする請求項又はに記載の光照射装置。
【請求項10】
既設管内に管状の光硬化性ライニングを導入する導入工程、
前記光硬化性ライニング材の外面を既設管の内面に密着させる密着工程、
前記光硬化性ライニング材の内側でその一端から他端に向けて気体を送る送風工程、及び
請求項1〜の何れか1項に記載の光照射装置を用いて前記光硬化性ライニング材の内側から光照射を行う光照射工程、
を含む既設管補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設管の内面に被覆される光硬化性ライニング材に光を照射するための光照射装置及びこれを用いた既設管補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水管は長年の使用により劣化し、その耐用年数は一般に約50年とされているため、耐用年数を超えた下水管は年々増加している。老朽化した下水管は変形や亀裂等が生じており、下水の流下機能が低下するだけでなく、下水管周囲の地下水や土砂が下水管内に流入することによって地中に空洞が生じることから地面陥没の原因にもなっている。また、地中に埋設される下水管は地震等の地盤変動による影響を受けやすいこともあり、種々の事情から所定の時期に何らかの補修が必要となるのが現状である。
【0003】
下水道等の既設管の補修方法としては、例えば、光硬化性ライニング材により内層管を形成する補修方法が知られている。この補修方法では、未硬化状態の管状の光硬化性ライニング材を折り畳まれた状態で既設管内に導入した後、光硬化性ライニング材の両端部を閉塞部材で密閉し、その密閉空間内に圧縮空気を供給して、光硬化性ライニング材を折り畳まれた状態から既設管内面に密着させた状態としてから、光照射装置を光硬化性ライニング材の内側で移動させながら光照射を行うことにより光硬化性ライニング材を硬化させ、既設管内面を硬化したライニング材(内層管)で被覆している。
【0004】
光照射装置としては、特許文献1に記載されているような複数のランプが列をなすように連結されたランプ連結体(ランプトレイン)が使用されるのが一般的である。図7に従来の光照射装置の側面図(a)及び横断面図(b)を示す。この光照射装置60は、列をなすように連結された複数の管型ランプ62と、各管型ランプ62を水平状態で設置するために管型ランプ62をその両端で固定する複数の支持体64とを有している。図示していないが、円柱状の支持体64の側面を起端として管型ランプ62の連結方向に対して垂直方向に伸長する複数の脚部が設けられており、その先端には車輪が取り付けられ、光照射装置60は管型ランプ62の連結方向500に移動可能とされている。
【0005】
また、管型ランプ62を両端で固定する2個の支持体64間には、一方の支持体64から他方の支持体64にかけて3本のパイプ体70が架設されている。各管型ランプ62が独立して点灯及び消灯することができるように、パイプ体70の内部には導線が挿通されており、各管型ランプ62に電気を供給している。パイプ体70は連結方向500に対して平行に設けるとその部分が影となって光硬化性ライニング材に照射されない部分が生じることから、連結方向500に対して角度を持たせて斜めに又は湾曲させて設けられる。パイプ体70は、管型ランプ62へ給電する役割だけでなく、光照射装置60全体の強度を確保する役割もある。
【0006】
このような光照射装置を移動させながら管状の光硬化性ライニング材に光照射することにより、連結方向500に対して垂直方向の全方位に光照射を行うことができるので、光硬化性管状ライニング材の内面全てに光照射によるエネルギーを付与し、光硬化反応を開始させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−185512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、光硬化性ライニング材に光照射を行うと、光硬化反応する際に生じる熱により光硬化性ライニング材が過度に温度上昇して、硬化後のライニング材の品質劣化が生じる場合がある。光硬化性ライニング材で生じた熱は、光硬化性ライニング材の内側の空気にも伝達し、光硬化性ライニング材の内面付近の空気が熱せられて熱が篭るので、この状態で光照射作業を続けると更に品質劣化が拡大することとなる。
【0009】
光硬化作業においては、管状の光硬化性ライニング材の両端を密閉した後、一端から空気を供給し、他端から排出することで、その一端から他端にかけて空気が流れるようにし、光硬化性ライニング材の内側の熱せられた空気を光硬化性ライニング材の外部に逃すことが行われるが、その場合であっても、流体の特性により、光硬化性ライニング材の内側の空気のうち径方向最外側の空気は円滑に流れず、光硬化性ライニング材の内面付近に加熱空気滞留層が生じることがあり、期待した熱の放散効果を得られない場合がある。
【0010】
また、光硬化性ライニング材の硬化反応時の熱だけでなく、光照射装置の管型ランプ(水銀ランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ等)から発生する熱や、パイプ体内部に挿通される導線から発生する熱によっても光硬化性ライニング材の内側の空気の温度が上昇する。また、光照射装置から発生する熱により、光照射装置を構成するパイプ体等の各部材が高温となる。光照射装置の各部材は光照射作業において作業者によって把持されることから、作業に支障がでることのないよう光照射装置の各部材の温度上昇は可能な限り抑えることが望ましい。また、高温になると光照射装置の故障を招く場合もある。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、光照射時の光硬化性ライニング材の内側の空気、光硬化性ライニング材自体及び光照射装置の各部材の温度上昇を抑えることのできる光照射装置及びこれを用いた既設管補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を解決するため、請求項1に記載の光照射装置は、
既設管内に導入された管状の光硬化性ライニング材の内側でその一端から他端に向けて気体が送られている状態で、前記光硬化性ライニング材をその内側から光照射する移動式の光照射装置であって、前記送られている気体の流れを、前記光硬化性ライニング材の内側に別途気体を導入することなく変化させる気体流変化手段を備えており、前記気体流変化手段はファンであり、前記ファンの回転軸の位置が、前記光照射装置が前記光硬化性ライニング材の内側から光照射している状態において、前記光硬化性ライニング材の横断面中央となるように設けられていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、光硬化性ライニング材の内側の気体の流れを変化させることにより乱流を発生させて対流を促進させることで、光硬化性ライニング材の内面に近い空気や、ランプ周辺の空気が局所的に高温となって温度勾配が生じることを防止することができる。
【0014】
また、上記構成によれば、光硬化性ライニング材の内側でその一端から他端に向けて空気が流れている場合に生じ得る光硬化性ライニング材の内側の空間の径方向最外側に生じる加熱空気滞留層を解消することができる。
【0015】
このように、光硬化性ライニング材の内側の空気の温度勾配を解消することにより、光硬化性ライニング材の過度の温度上昇や光照射装置のパイプ体等の各部材の温度上昇を防止できるので、硬化後のライニング材の品質劣化を防止でき、また、作業に支障がでることなく光照射作業を効率的に行うことができる。また、ファンを使用することにより、回転する羽によって周辺の空気を撹拌させて上述した気体の流れを変化させることで、温度勾配を確実に解消することができる。また、あらゆる大きさに構成可能なファンを使用することにより、光照射装置のあらゆる箇所にファンを備え付けることができる。すなわち、集水桝と下水道本管とを連通接続する取付管等の管径の小さい既設管を補修する場合に使用する小型の光照射装置にも小型のファンを設けることにより本発明の光照射装置を構築できるので、既設管の管径の大小にかかわらず本発明の光照射装置を使用して既設管を補修することができる。
【0016】
請求項2に記載の光照射装置は、
前記ファンの羽根が回転することにより描かれる円の直径は前記光硬化性ライニング材の内径の20〜80%であることを特徴とする。
【0018】
請求項3に記載の光照射装置は、
前記ファンは、その風向きが前記光照射装置の移動方向とは反対側の方向となるように設けられたことを特徴とする。
【0019】
光硬化反応により生じる発熱は、移動式の光照射装置の移動方向側(光照射が行われる側)から生じることから、移動方向側から生じる加熱空気が移動方向とは反対側に送られるようにファンを備え付けることにより、効率的な熱の放散効果が奏される。
【0022】
請求項に記載の光照射装置は、
前記気体流変化手段は、少なくとも前記光照射装置の移動方向中央よりも移動方向側に設けられたことを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、移動方向側に位置するランプでの光照射によって順次生じる加熱空気をいち早く撹拌することができるので、後部側に位置するランプでの光照射が、光硬化性ライニング材が過度に温度上昇した状態で行われることを防止でき、光硬化反応の更なる適正化が図られる。
【0024】
請求項に記載の光照射装置は、
前記気体流変化手段は、前記光照射装置の移動方向側先端部と、前記光照射装置の移動方向の全長を3等分したときの中央の3分の1の領域とに、それぞれ少なくとも1個ずつ設けられたことを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、光照射装置の全体の長さが長い場合であっても、上記位置に気体流変化手段を配置することで、所定箇所では上記気体の流れが変化するが、それ以外の箇所では変化しない等の不都合が生じることなく、光照射装置が通過する箇所の気体の流れを全体的に変化させることができる。
【0028】
請求項に記載の光照射装置は、
前記ファンの羽は前記送られている気体の流れにより回転することを特徴とする。
【0029】
この構成によれば、ファンに電気を供給しなくてもファンの羽が回転し、ファン近傍の空気を撹拌することができる。したがって、光照射装置に電気を供給するケーブルを配設することなく気体流変化機能を有する光照射装置を構築することができる。
【0032】
請求項に記載の光照射装置は、
複数の管型ランプがその伸長方向に列を為して連結された構成を有し、
前記複数の管型ランプはそれぞれその両端が支持体で支持され、
前記各管型ランプをそれぞれ支持する2個の支持体の間には、その一方の支持体から他方の支持体にかけてパイプ体が架設され、
前記パイプ体は、前記支持体の近傍位置に、当該パイプ体の端部側から中央側に向かって前記管型ランプから離反する方向に延びる遠離部分を有することを特徴とする。
【0033】
この構成によれば、パイプ体における管型ランプから遠ざかる遠離部分の存在により、パイプ体と管型ランプとの距離が長くなるように構成されているので、パイプ体は管型ランプから発生する熱の影響を受けにくくなり、パイプ体の温度上昇が抑えられる。パイプ体の温度上昇が抑えられれば、その周囲の気体の温度上昇が抑えられるだけでなく、作業時にパイプ体を把持して移動させるなど作業の効率化が図られる。
【0034】
請求項に記載の光照射装置は、
前記遠離部分は前記パイプ体の両端側にそれぞれ形成されていることを特徴とする。
【0035】
この構成によれば、遠離部分はパイプ体の一端側のみならず両端側にそれぞれ形成されていることから、パイプ体と管型ランプとの距離をパイプ体の長さ方向に広範囲で確保することが可能である。
【0036】
請求項に記載の光照射装置は、
前記支持体は円柱状又は角柱状の部分を有し、該円柱状又は角柱状の部分の一方の底面側が前記管型ランプ側を向くように設けられ、前記パイプ体の両端はそれぞれ、前記各支持体の円柱状又は角柱状の部分の側面に接合していることを特徴とする。
【0037】
この構成によれば、パイプ体の両端が管型ランプから最も遠い箇所の支持体の側面に接合しており、パイプ体と管型ランプとの距離が最大限に長くなるように構成することができるので、管型ランプからの熱の影響を最小限に抑えることが可能となる。また、上記構成とすることでパイプ体が取っ手のような形状となるので、作業者は光照射装置のパイプ体を容易に把持することができ、作業効率が向上する。
【0038】
また、上記目的は、既設管内に管状の光硬化性ライニングを導入する導入工程、前記光硬化性ライニング材の外周面を既設管内面に密着させる密着工程、前記光硬化性ライニング材の内側でその一端から他端に向けて気体を送る送風工程、及び本発明の光照射装置を用いて前記光ライニング材の内側から光照射を行う光照射工程、を含む既設管補修方法により達成される。上述した光硬化装置を用いて既設管補修方法を行うことにより、光硬化性反応の適正化及び光硬化作業の効率化が図られる。
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る光照射装置によれば、光照射時における光硬化性ライニング材の内側の空気の温度勾配を解消することにより、光硬化性ライニング材の過度の温度上昇や光照射装置のパイプ体等の各部材の温度上昇を抑制できるので、光硬化性ライニング材の品質劣化を防止でき、また、光照射作業を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の光照射装置の実施の形態の一例を示す部分斜視図である。
図2図1で示した光照射装置の全体側面図である。
図3図1で示した光照射装置の使用状態を示す説明図である。
図4図1で示した光照射装置の詳細側面図である。
図5】パイプ体の他の例を示す説明図である。
図6】他の実施の形態の光照射装置を示す部分斜視図である。
図7】従来の光照射装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照して本発明の光照射装置を詳細に説明する。図1は本発明の光照射装置の実施の形態の一例を示す部分斜視図である。図2図1の光照射装置の全体側面図である。図3は光照射装置の使用状態を示す説明図である。
【0042】
図示のように、本実施の形態の光照射装置10は複数の管型ランプ12が列をなすように連結された構成を有し、各管型ランプ12は、その両端が各支持体14−1〜nによって支持されることにより固定されている。各支持体14−1〜nのうち支持体14−1、14−3、14−4、14−6、14−7、14−nには、管型ランプ12の連結方向に対して略垂直方向に伸長する複数の脚部16が設けられている。各脚部16の先端には車輪18が取り付けられており、この車輪18によって光照射装置10は管型ランプ12の連結方向に移動可能となっている。
【0043】
本実施の形態では、支持体14−1、14−3、14−4、14−6、14−7、14−nそれぞれにつき3本の脚部16が既設管内配置状態(図3を参照)における既設管100の周方向に等間隔で設けられている。3本の脚部16の長さはほぼ同じ長さに設定されており、図3に示しているように、光照射装置10が補修対象の既設管100内を移動する時の各管型ランプ12の位置が既設管100の横断面中央を連続して通過するようにされている。光照射装置10の端部にはライト付きカメラ28が設置されており、既設管100内を移動する際に地上にて管内部の状況の確認が行われる。光照射装置10の移動は、光照射装置10の先端にケーブル54を接続して地上から牽引することにより行われ、図示した例では、後述する一方の閉塞部材52−1側から他方の閉塞部材52−2側に移動しながら光照射を行う。
【0044】
図1及び2に示しているように、管型ランプ12はその伸長方向が移動方向200に一致するようにそれぞれ連結されており、支持体14−1〜nの管型ランプ側中央部14a(詳細図である図4を参照)に管型ランプ12が嵌合されて支持固定され、各管型ランプ12は各支持体14−1〜nを介して互いに間接的に連結されている。
【0045】
また、各管型ランプ12を支持固定する隣り合う支持体14−1と14−2、支持体14−2と14−3、支持体14−4と14−5、支持体14−5と14−6、支持体14−7と14−8、支持体14−8と14−nの間には、それぞれの一方の支持体から他方の支持体にかけて3本のパイプ体26が架設されている。パイプ体26には管型ランプ12に電気を供給するための導線が挿通されており、電気は地上に配置された電源を備える作業機(図示せず)からケーブル54を介して各管型ランプ12に供給される。各々の管型ランプ12は、それぞれ独立して点灯及び消灯可能となるように、別個に配線をする必要があることから、パイプ体26は通常少なくとも3本設けられる。
【0046】
図3に示しているように、既設管100内に導入された光硬化性ライニング材50の両端は、閉塞部材52−1、52−2によって閉塞されており、これによって管状の光硬化性ライニング材50の内側の空間は密閉空間80とされ、その密閉空間80に圧縮空気を導入することにより、密閉空間80内部の圧力を一定圧以上に保持し、光硬化性ライニング材50の外面を既設管100内面に密着させている。なお、光硬化性ライニング材50の既設管100内への導入は、従来から行われている引き込み導入方法や反転導入方法が用いられる。
【0047】
そして、光照射を行う際には、光硬化反応により生じる発熱により熱せられた密閉空間80内の空気を密閉空間80の外に排出するために、光硬化性ライニング材50の一端から他端に向けて空気等の気体が送られる。この気体の送風は、図示していないが、閉塞部材52−2に設けられた孔部にホースを連結し、地上に配置されたコンプレッサーからそのホースを通して閉塞部材52−2の孔部から密閉空間80内に圧縮空気を導入し、他方の閉塞部材52−1の孔部から導入した空気が排出されるようすることで行なわれ、送られる気体の方向は矢印300方向となる。送風の速度は例えば0.5〜5m/sである。
【0048】
圧縮空気の導入量及び排出量は、光硬化性ライニング材50内の密閉空間80の圧力が上述した一定圧以上を維持できるように設定される。このような密閉空間80内を上記光照射装置10が矢印200方向に移動しながら光照射を行うことで、光硬化性ライニング材50が硬化し、既設管100の内側に内層管である更生管が形成される。
【0049】
そして、本発明において特徴的なことは、光照射装置10が、光硬化性ライニング材50の内側の気体の流れを、光硬化性ライニング材50の内側に別途気体導入することなく変化させる気体流変化手段を備えていることである。図1及び図2に示しているように、本実施の形態では気体流変化手段としてファン32−1〜4を用いた例を示している。
【0050】
光照射時にファン32−1〜4を稼働させ、光硬化性ライニング材50の内側の気体の流れを変化させてその流れを乱すことにより、光硬化性ライニング材50の内面に近い空気や、管型ランプ12周辺の空気が局所的に高温となって光硬化性ライニング材50の内側の密閉空間80内に温度勾配が生じることが防止される。特に、光硬化性ライニング材50の内側で一端から他端にかけて空気が流れている際に光硬化性ライニング材50の内側の空間の径方向最外側に生じる加熱空気滞留層をファン32−1〜4を稼働させることで解消することができる。
【0051】
本実施の形態では、ファン32−1〜4は光照射装置10に4個設けられており、そのうち2個のファン32−1及び32−4は光照射装置10の移動方向200の先端及び後端近傍にそれぞれ設けられており、残りの2個のファン32−3、32−4は、支持体14−3と14−4を連結する連結部22と、支持体14−6と14−7を連結する連結部22にそれぞれ設けられている。
【0052】
光照射装置10の移動方向200の最も後側に設けられたファン32−1は、支持体14−1とライト付きカメラ28との間の連結部23に設けられている。
【0053】
光照射装置10に設けられたファン32−1〜4は、その風向きが光照射装置10の移動方向200とは反対側の方向300となるとなるように設けられている。光照射を行うと、光照射を行った箇所から順次発熱が生じるが、光照射中及び光照射後に熱せられた空気が、光照射を行っていない箇所の内部空間に流れることがないようにファン32−1〜4の風向きを設定することで、より効率的に温度勾配の低減を図ることができる。
【0054】
また、図2に示されているように、光照射装置10の移動方向200の全長の中央よりも移動方向200側にファン32−3及び32−4を設けることにより、移動方向200側に位置する管型ランプ12での光照射によって順次生じる加熱空気をいち早く撹拌することができるので、移動方向200後部側に位置する管型ランプ12での光照射が、光硬化性ライニング材50が過度に温度上昇した状態で行われることを防止でき、光硬化反応の更なる適正化が図られる。
【0055】
本実施の形態において、各ファン32−1〜4は、その回転軸の位置が使用状態における光硬化性ライニング材50の横断面中央となるように設けられている。また、各ファン32−1〜4はそれぞれ4つの羽を有しており、その羽が回転することにより描かれる円の直径は、光硬化性ライニング材50の内径の略半分とされている。しかしながら、羽の数や大きさは適宜設定することができ、羽が回転することにより描かれる円の直径は光硬化性ライニング材50の内径の20〜80%とするのが好ましい。
【0056】
図4は、図1で示した光照射装置10の部分側面図である。図示のように、光照射装置10に設けられるパイプ体26は、これを支持する各支持体14−1〜nの近傍位置に、パイプ体26の端部側から中央側に向かって管型ランプ12から離反する方向に延びる遠離部分26aを有している。
【0057】
遠離部分26aは各パイプ体26の両端にそれぞれ1つずつ形成され、この2つの遠離部分26aは、光照射装置10の使用状態における既設管100の径方向外側方向に起立するように形成されている。本実施の形態では、パイプ体26は、管型ランプ12をその両端で支持する2つの支持体14−1と14−2、14−2と14−3の一方の支持体の側面14b(移動方向200と平行の面)を起端部とし、他方の支持体の側面14bを終端部としている。パイプ体26の遠離部分26a以外の部分26bは直線部26bとされている。
【0058】
パイプ体26をこのような形状として、管型ランプ12から距離を持たせてパイプ体26を配置することにより、パイプ体26の温度上昇を防止することができるので、作業者がパイプ体26に触れることが可能となり、作業効率が向上する。また、各パイプ体26同士の間隔の幅も広くなることから、パイプ体26に阻まれることなく手や腕を管型ランプ12まで届かせてその交換を行うことができる。なお、パイプ体26は全体として移動方向200に対して角度を持たせて斜めに配置され、光照射装置10が走行しながら光照射する際に光硬化性ライニング材に照射されない部分が生じるのを防いでいる。
【0059】
本実施の形態では、支持体14−1〜nは、六角柱部の両底面に、その底面と同じ大きさの下底を有する2つの六角錐台の当該下底をそれぞれ合わせた形状の二十面体として一体形成されており、更に、その六角柱部の側面14bが光照射装置の移動方向200と平行面とされ、その側面14bにパイプ体26の両端が接合している。この形状を有する支持体14−1〜nは、3本のパイプ体26及び3本の脚部16をそれぞれ互いに等間隔で配置するのに有利である。また、このような六角錐台を合わせた形状として管型ランプ12側に向かって突出した形状とすることにより、管型ランプ12から支持体14に到達した光をより多く外方(光硬化性ライニング材内面)に反射させることが可能である。
【0060】
支持体14の形状はこれに限られず、円柱状や、六角形以外の角柱状でもよい。この場合、円柱又は角柱の底面は上記本実施の形態で示したような角錐台や円錐台を合わせた形状としてもよいし、単に平面であってもよい。
【0061】
図5はパイプ体の他の例を示している。なお、本図では説明の容易化のため、通常3本以上設けられるパイプ体は1本のみ図示しており、管型ランプ12、支持体14及びパイプ体126、226以外の部材は図示していない。
【0062】
図5(a)示す例では、パイプ体126の両端部とも支持体14の上述した六角錐台の側面部14cに接合している。パイプ体126は各端部から中央側に向かうに従って管型ランプ12からの距離が遠ざかるように形成された遠離部分126aをそれぞれ有し、両遠離部分126aの間は直線部分126bとなって形成されている。
【0063】
図5(b)に示す例では、パイプ体226は両端部とも支持体14の側面14bに接合している。パイプ体226全体の形状は円弧状とされており、その各端部側から中央側に向かうに従ってランプ12から遠ざかる遠離部分226aが形成されている。この例においてはパイプ体12の中央を基準として光照射装置の移動方向前側及び後側がそれぞれ遠離部分226aとなっている。
【0064】
本実施の形態において、支持体14−1〜nの表面は光反射材料で形成されていることが好ましい。光反射材料で形成する方法としては、反射性の高い顔料、特に二酸化チタン等の白色顔料をバインダーに混ぜて支持体14−1〜nの表面に被覆する方法や、支持体14−1〜nの表面に鏡面メッキをする方法等を採用することができる。また、支持体14−1〜nの表面はエンボス加工を施すことにより、管型ランプ12からの光を乱反射させて更に反射効率を高めることが好ましい。
【0065】
本実施の形態の光照射装置10は、図2に示されているように、移動方向200後側から順に、ライト付きカメラ28/連結部23(ファン32−1)/支持体14−1/管型ランプ12/支持体14−2/管型ランプ12/支持体14−3/連結部22(ファン32−2)/支持体14−4/管型ランプ12・・・という順でそれぞれ配置され、隣り合う管型ランプ12において一方の管型ランプ12の一端及び他方の管型ランプ12の一端は同じ支持体14−2、14−5、14−8で支持されている。
【0066】
しかしながら、本発明はこれに限られず、移動方向後端側から順に、ライト付きカメラ/連結部(ファン)/支持体/管型ランプ/支持体/連結部(ファン)/支持体/管型ランプ/支持体/連結部(ファン)/支持体・・・という順として、管型ランプ一つ毎にファンを設けてもよい。
【0067】
管型ランプ12としては通常使用されるランプを使用することができる。光硬化性ライニング材を硬化させるのに通常使用されるランプは、例えば、紫外線〜可視光の範囲の波長を照射することのできるランプであり、メタルハライドランプ、水銀ランプ、ガリウムランプ等を例示することができる。
【0068】
本発明の光照射装置を使用してファンを稼働させながら光硬化性ライニング材に光照射を行うことより硬化反応が適正に起こり、既設管の内周面に硬化した内層管が形成され、補修が完了する。
【0069】
次に、図6を参照して本発明の他の実施の形態を説明する。本実施の形態では、光照射装置110の脚部16にそれぞれ小型のファン42が設けられている。小型のファン42は、その風向きが光照射装置60の移動方向200に対して反対の方向と略垂直方向との間の斜め方向400となるように設けられている。この斜め方向400の角度は移動方向200に対して反対の方向を基準として30〜60°であることが好ましい。
【0070】
このようにファンの風向きや設置位置を設定することで、上述したように、光硬化性ライニング材の両端を密閉し、光硬化性ライニング材の内側においてその一端側から他端側に気体が流れている場合に生じるライニング材の内面近くに生じる加熱空気滞留層に対してファンによる風が送られるようし、その滞留層を含むライニング材の内側の空気全体を確実に撹拌することで、光硬化性ライニング材の内側の空気の温度勾配を更に効率的に解消することが可能となる。なお、図1〜4に示した実施の形態の光照射装置10においても、ファン32−1〜4の羽の形状を変更することによりその風向きを斜め方向に設定することができる。本実施の形態においてファン以外の他の部分は、図1に示した実施の形態と同様である。
【0071】
上述した各実施の形態において、ファンは電動で動作させてもよいが、電動でなくても上述した光硬化性ライニング材の一端から他端に向かう気体の流れによりファンの羽を回転させて、その周辺の空気を撹拌することにより、温度勾配を解消することも可能である。これにより、光照射装置にファンのための電源ケーブル等を配設しなくても気体流変化機能を有する光照射装置を構築することができる。
【0072】
本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、本発明の要旨を超えない範囲で種々の変更が可能である。上述した各実施の形態では、気体流変化手段は光照射装置の連結部22や脚部16に設けた例を示したがこれに限られず、図1及び図2で示した支持体14−1〜nやパイプ体26等に設けてもよい。
【0073】
また、本発明において、気体流変化手段は、光照射装置の移動方向側先端部と、光照射装置の移動方向の全長を3等分したときのその中央の3分の1の領域とに、それぞれ少なくとも1個ずつ設けられていることが好ましい。
【0074】
これにより、光照射装置の全体の長さが長い場合であっても、ランプ間に配置されたにより、所定箇所では空気の撹拌が行われるがそれ以外の箇所では撹拌が行わない等の不都合が生じることなく、光照射装置が通過する箇所の空気を全体的に撹拌することができる。
【0075】
また、本発明において、気体流変化手段はファンではなく整流板であってもよい。整流板を使用することにより簡易な構造で気体流変化機能を有する光照射装置を構成することができる。整流板は、例えば、図6に示した小型のファン42の位置と同じ取付けることができる。光硬化性ライニング材の内側で送られている気体の流れを矢印400方向に変化させることができるように傾きを持たせて整流板を設置することが好ましい。
【0076】
本発明で用いる整流板や上述したファンの羽は、光照射の妨げにならないよう、光透過性の高い材質のものを使用することが好ましく、例えば紫外線領域の波長を照射する光照射装置の場合には、ポリ4−メチル−1−ペンテン等を用いることができる。
【符号の説明】
【0077】
10 光照射装置
12 管型ランプ
14、14−1〜n 支持体
16 脚部
18 車輪
22、23 連結部
26 パイプ体
26a 遠離部分
26b 直線部
28 ライト付きカメラ
32−1〜4 ファン
42 ファン
50 光硬化性ライニング材
52−1、52−2 閉塞部材
54 ケーブル
80 閉塞空間
100 既設管
110 光照射装置
200 光照射装置の移動方向
300 気体の流れ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7