特許第6145332号(P6145332)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6145332
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】磁気記録媒体、磁気記憶装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/738 20060101AFI20170529BHJP
   G11B 5/65 20060101ALI20170529BHJP
   G11B 5/64 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   G11B5/738
   G11B5/65
   G11B5/64
【請求項の数】12
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-129883(P2013-129883)
(22)【出願日】2013年6月20日
(65)【公開番号】特開2015-5317(P2015-5317A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】神邊 哲也
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 和也
(72)【発明者】
【氏名】村上 雄二
(72)【発明者】
【氏名】張 磊
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/109822(WO,A1)
【文献】 特開2011−165232(JP,A)
【文献】 特開2012−014750(JP,A)
【文献】 特開2012−181902(JP,A)
【文献】 特開2002−145622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/738
G11B 5/64
G11B 5/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
L1構造を有するFePt合金を含む磁性層と、
前記基板と、前記磁性層との間に配置された複数の下地層と、
を有しており、
前記複数の下地層のうち少なくとも1層が、TiOを含む下地層であり、
前記TiOを含む下地層がルチル型TiOを含み、かつ、(100)面を基板面と平行とした配向を有していることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項2】
前記複数の下地層が、Cr、または、Crを主成分としたBCC構造の合金により形成された下地層を含み、
前記TiOを含む下地層が、前記Cr、または、Crを主成分としたBCC構造の合金により形成された下地層の上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項3】
前記TiOを含む下地層が、B2構造を有する材料により形成された下地層の上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項4】
前記TiOを含む下地層が、第1のNaCl型構造を有する材料により形成された下地層の上に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
【請求項5】
前記第1のNaCl型構造を有する材料により形成された下地層に含まれるNaCl型構造を有する材料がMgOであることを特徴とする請求項4に記載の磁気記録媒体
【請求項6】
前記磁性層が、前記TiOを含む下地層の直上に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の磁気記録媒体
【請求項7】
前記TiOを含む下地層の上に、第2のNaCl型構造を有する材料により形成された下地層が配置されており、
前記第2のNaCl型構造を有する材料により形成された下地層の上に、前記磁性層が配置されていることを特徴とする請求項1乃至5いずれか一項に記載の磁気記録媒体。
【請求項8】
前記第2のNaCl型構造を有する材料により形成された下地層に含まれるNaCl型構造を有する材料がMgOであることを特徴とする請求項7に記載の磁気記録媒体。
【請求項9】
基板と、
L1構造を有するFePt合金を含む磁性層と、
前記基板と、前記磁性層との間に配置された複数の下地層と、
を有しており、
前記複数の下地層のうち少なくとも1層が、TiOのみからなる下地層であることを特徴とする磁気記録媒体。
【請求項10】
前記磁性層がL1構造を有するFePt合金を主成分とし、かつ、SiO、TiO、Cr、Al、Ta、ZrO、Y、CeO、MnO、TiO、ZnO、C、B、B、BNから選択される1種類以上の物質を含有していることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の磁気記録媒体。
【請求項11】
前記磁性層が、
L1構造を有するFePt合金を主成分とし、かつ、8mol%以上30mol%以下のTiOを含有している第1の磁性層と、
L1構造を有するFePt合金を主成分とし、かつ、SiO、TiO、Cr、Al、Ta、ZrO、Y、CeO、MnO、TiO、ZnO、C、B、B、BNから選択される1種類以上の物質を含有している第2の磁性層と、を有していることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の磁気記録媒体。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の磁気記録媒体を有する磁気記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気記録媒体、磁気記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクドライブHDDに対する大容量化の要求が益々強まっている。この要求を満たす手段として、レーザーダイオードを搭載した磁気ヘッドで磁気記録媒体を加熱して記録を行う熱アシスト記録方式や、10GHz以上の高周波を印加して記録を行う高周波記録方式が提案されている。
【0003】
熱アシスト記録では、記録媒体を加熱することによって保磁力を大幅に低減できるため、記録媒体の磁性層に結晶磁気異方定数Kuの高い材料を用いることができる。このため、熱安定性を維持したまま磁性粒径の微細化が可能となり、1Tbit/inch級の面密度を達成できる。
【0004】
一方、高周波アシスト記録の場合も、ヘッドに搭載されたSTO(Spin Torque Oscillator)から発信される高周波のアシストにより、媒体の保磁力以下の記録磁界での書き込みが可能となる。このため、熱アシスト記録の場合と同様、記録媒体の磁性層に結晶磁気異方定数Kuの高い材料を用いることができる。
【0005】
高Ku磁性材料としては、L1型FePt合金、L1型CoPt合金、L1型CoPt合金等の規則合金等が提案されている。また、磁性層には、上記規則合金からなる結晶粒を分断するため、粒界相材料としてSiO、TiO等の酸化物、もしくはC、BN等が添加されている。磁性結晶粒が粒界相で分離されたグラニュラー構造とすることにより、磁性粒子間の交換結合を低減でき、高い媒体SN比(Signal−to−Noise ratio)を実現できる。
【0006】
磁性層に、上記、L1型FePt合金を用いる場合、高い垂直磁気異方性を実現させるため、c軸が膜面と垂直になる(001)配向をとっていることが望ましい。そして、L1型FePt合金の配向は、下地層によって制御できることが知られている。
【0007】
例えば、特許文献1には、(100)面が基板と平行になるように制御されたMgOやNiO等の下地層上にL1型FePt合金を形成することにより、該FePt合金が(001)配向を示すことが提案されている。
【0008】
また、特許文献2、特許文献3には、ZrN、TaN、CrN等のNaCl構造を有する下地層上にL1型FePt磁性層を形成することにより、該磁性層が良好な(001)配向を示すことが提案されている。
【0009】
さらに、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3には、それぞれ、NaCl型構造を有するFeO下地層、TiN下地層、TiC下地層上にL1型FePt磁性層を形成することにより、該磁性層が(001)配向を示すことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−353648
【特許文献2】特開2009−146558
【特許文献3】US7829208−B2
【非特許文献1】IEEE Trans. Magn. Vol.41, 3211-3213 (2005)
【非特許文献2】J. Vac. Sci. Technol. B 25 (6), 1892-1895 (2007)
【非特許文献3】IEEE Trans. Magn. Vol.47, 4077-4079 (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、磁気記録媒体には、媒体SN比の向上が求められている。しかしながら、磁性層に含まれるL1型FePt合金を(001)配向とすることにより、垂直磁気異方性は向上できるものの、媒体SN比は十分ではなかった。
【0012】
本発明は、上記従来技術が有する問題に鑑み、媒体SN比が高い磁気記録媒体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、基板と、
L1構造を有するFePt合金を含む磁性層と、
前記基板と、前記磁性層との間に配置された複数の下地層と、
を有しており、
前記複数の下地層のうち少なくとも1層が、TiOを含む下地層であり、
前記TiOを含む下地層がルチル型TiOを含み、かつ、(100)面を基板面と平行とした配向を有していることを特徴とする磁気記録媒体を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、媒体SN比が高い磁気記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第2の実施形態における磁気記録装置の構成図。
図2】本発明の第2の実施形態における磁気ヘッドの構成図。
図3】実験例1で作製した熱アシスト磁気記録媒体の層構成の断面模式図。
図4】実験例2で作製した熱アシスト磁気記録媒体の層構成の断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、下記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、下記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
[第1の実施態様]
本実施形態の磁気記録媒体の構成例について以下に説明する。
【0017】
本実施形態の磁気記録媒体は、基板と、L1構造を有するFePt合金を含む磁性層と、基板と、磁性層との間に配置された複数の下地層と、を有している。そして、複数の下地層のうち少なくとも1層が、TiOを含む下地層である。
【0018】
ここで、各層について説明する。
【0019】
基板としては特に限定されるものではないが、例えばガラス基板を用いることができ、特に耐熱ガラス基板を好ましく用いることができる。
【0020】
そして、基板上には複数の下地層が形成されている。
【0021】
複数の下地層のうち、少なくとも1層がTiOを含む下地層となっている。この点について以下に説明する。
【0022】
まず、磁性層に含まれるL1型構造を有するFePt合金にできる限り良好な(001)配向をとらせるため、下地層とL1型FePt合金の格子ミスフィットは小さいことが望ましい。ただし、本発明の発明者らの検討によると、L1型FePt合金の膜面内方向に引っ張り応力を加えることにより規則度を高めることができる。このため、下地層の格子定数は、L1型FePt合金の膜面内方向に適度な引っ張り応力を導入できる値であることが望ましい。
【0023】
また、磁性層に含まれるL1型FePt合金の規則化促進のため、該FePt合金は600℃以上の高温で成膜することが好ましい。このため、少なくとも磁性層の直下に形成する下地層は、FePt合金の成膜温度よりも融点が高く、かつ、化学的に安定な材料であることが望ましい。FePt合金の成膜温度よりも磁性層の直下に形成する下地層の融点が低いと、下地層材料がFePt合金の成膜時等にFePt合金内へ拡散するので好ましくない。
【0024】
ここで、TiOは正方晶のルチル型構造、アナタ−ゼ型構造、斜方晶のブルッカイト型構造をとることが知られている。表1にTiOが上記各構造をとった場合のa軸長、b軸長、及びc軸長の値を示す。また、TiOの融点はFePt合金の成膜温度よりも高くなっている。
【0025】
【表1】
例えば、ルチル型構造のTiOのa軸長は0.474nmであり、L1型構造のFePt合金のa軸長(0.385nm)よりも16%程度大きい。しかし、ルチル型構造のTiOを含む下地層の上にL1構造のFePt合金を含む磁性層をエピタキシャル成長させることができる。この際、L1構造を有するFePt合金を(001)配向させるため、TiOを含む下地層は(100)配向していることが好ましい。なお、TiOを含む下地層が(100)配向しているとは、TiOを含む下地層が(100)面を基板面と平行にした配向を有していることを意味している。
【0026】
このように、ルチル型TiOを含む下地層上に、L1型FePt合金を含む磁性層を成膜するとL1型構造のFePt合金の膜面内方向に引っ張り応力が掛かるため、上述のように良好な規則度を有するL1型構造のFePt合金とすることができる。このため、磁性層を、TiOを含む下地層の上に形成することによって、高い垂直磁気異方性を示す磁気記録媒体が得られる。そして、高い媒体SN比を有する磁気記録媒体とすることができる。
【0027】
なお、TiOを含む下地層に含まれるTiOは、ルチル型構造に限定されるものではなく、アナタ−ゼ型構造のTiO、ブルッカイト型構造のTiOを用いることもできる。また、複数の型のTiOが混在した形態でも、同様にL1型構造のFePt合金の膜面内方向に引っ張り応力を加えることができる。TiO以外に、TiO、Tiが混在していてもよい。ただし、磁性層の(001)配向を劣化させないようにこれらの成分の比率を選択することが好ましい。また、上述のようにルチル型構造のTiOのa軸長は他の構造のTiOよりも、L1型構造のFePt合金のa軸長と近くなっているため、TiOを含む下地層がルチル型TiOを含むことが好ましい。特に、ルチル型TiOがTiOを含む下地層の主成分であることがより好ましい。例えば、TiOを含む下地層のうち、ルチル型構造のTiOの比率が、70%以上とすることが好ましい。このように、ルチル型構造のTiOがTiOを含む下地層の主成分である場合、磁性層に含まれるL1構造型FePt合金が、特に良好な規則度を有し、かつ、良好な(001)配向とすることができる。特にTiOを含む下地層は、ルチル型TiOからなることがより好ましい。
【0028】
次に、TiOを含む下地層以外の他の下地層の構成例について説明する。
【0029】
上記のようにTiOを含む下地層のTiOは、ルチル型構造を有するTiOを主成分とすることが好ましく、さらに、TiOを含む下地層のTiOは(100)配向であることが好ましい。
【0030】
TiOを含む下地層を、ルチル型構造のTiOを主成分とし、かつ(100)配向とする方法は特に限定されないが、例えば、TiOを含む下地層が、Cr、または、Crを主成分としたBCC構造の合金から形成された下地層の上に形成されることが好ましい。すなわち、複数の下地層が、Cr、または、Crを主成分としたBCC構造の合金により形成された下地層を含み、TiOを含む下地層が、Cr、または、Crを主成分としたBCC構造の合金により形成された下地層の上に形成されていることが好ましい。
【0031】
なお、Crにより形成された下地層のことを以下、「Cr下地層」とも記載する。また、Crを主成分としたBCC構造の合金により形成された下地層のことを以下「Cr合金下地層」とも記載する。
【0032】
まず、Cr下地層上にTiOを含む下地層を形成する場合について説明する。
【0033】
Crのa軸長は0.288nmのため、√2×0.288=0.408nmとなり、ルチル型構造のTiOのa軸長と近い値となる。このため、Cr下地層上にTiO膜を形成することにより、成膜されたTiO膜はルチル構造をとり、Cr<100>//TiO<100>の関係でエピタキシャル成長して(100)配向を示す。この場合、Cr下地層は(100)配向していることが好ましい。
【0034】
(100)配向したCr下地層の形成方法は特に限定されるものではないが、例えば、非晶質合金により形成された下地層上にCr膜を成膜することにより得ることができる。この際、基板温度を200℃以上として、Cr膜を成膜することが好ましい。
【0035】
ここでの非晶質合金としては、例えば、Cr−50at%Ti、Cr−50at%Ta、Co−50at%Ti、Ti−50at%Al、Ni−50at%Ti、Ni−50at%Ta等の合金を好ましく用いることができる。
【0036】
次に、Crを主成分としたBCC構造の合金により形成されたCr合金下地層上にTiOを含む下地層を形成する場合について説明する。
【0037】
Crを主成分としたBCC構造の合金としては、例えば、Ti、V、Mn、W、Mo、Ta、Nb、B、Ru等の元素をCrに添加したBCC構造を有するCr合金が挙げられる。
【0038】
Crに対して上記元素を添加することにより、格子定数が拡がり、ルチル型構造のTiOのとの格子ミスフィットを低減することができ、好ましい。このため、より良好な(100)配向を示すTiO下地層が得られる。ただし、上記元素を過剰にCrに添加すると、Cr合金の(100)配向が劣化する場合があるため、添加量は概ね50at%以下とすることが好ましい。
【0039】
上記Cr下地層または上記Cr合金下地層の上に、より格子定数の大きいBCC構造の元素または合金から形成された下地層を形成してもよい。具体的には、例えばMo、W、Ta、Nbから選択された1以上のBCC構造を有する元素(金属)、または、Mo、W、Ta、Nbから選択された1以上の元素を含有したBCC構造を有する合金を用いることができる。そして、該BCC構造の元素または合金により形成された下地層の上にTiOを含む下地層を形成することができる。これによって、例えば、TiOを含む下地層がルチル型構造のTiOを主成分とする場合、ルチル型構造のTiOとの格子ミスフィットを更に低減でき、TiOを含む下地層の(100)配向を更に高めることができる。
【0040】
TiOを含む下地層は、B2構造を有する材料により形成された下地層上に形成してもよい。また、TiOを含む下地層は、第1のNaCl型構造を有する材料により形成された下地層上に形成してもよい。この場合、B2構造を有する材料により形成された下地層または第1のNaCl型構造を有する材料により形成された下地層は、(100)配向を有していることが好ましい。
【0041】
B2構造を有する材料としては例えば、NiAl、RuAl合金が挙げられる。また、第1のNaCl型構造を有する材料により形成された下地層に含まれるNaCl型構造を有する材料としては、MgO、TiN、TaN、ZrN、CrN、TiC、TaC、ZrC等が挙げられ、特にMgOを好ましく用いることができる。
【0042】
上記のように、B2構造を有する材料により形成された下地層または第1のNaCl型構造を有する材料により形成された下地層は(100)配向を有することが好ましい。そして、B2構造を有する材料により形成された下地層または第1のNaCl構造を有する材料により形成された下地層を(100)配向とする方法は特に限定されるものではないが、例えば、上述の(100)配向したCr下地層、もしくはCr合金下地層上に形成する方法が挙げられる。
【0043】
また、書き込み特性を改善するため、軟磁性下地層を形成してもよい。軟磁性下地層には、CoTaZr、CoFeTaB、CoFeTaSi、CoFeTaZr等の非晶質合金、FeTaC、FeTaN等の微結晶合金、NiFe等の多結晶合金等を用いることが出来る。軟磁性下地層は、上記合金からなる単層膜でもよいし、適切な膜厚のRu層を挟んで反強磁性結合した積層膜でもよい。
【0044】
また、TiO下地層とL1型FePt磁性層の間に、第2のNaCl型構造を有する材料により形成された下地層を形成してもよい。すなわち、TiOを含む下地層の上に、第2のNaCl型構造を有する材料により形成された下地層が形成され、第2のNaCl型構造を有する材料により形成された下地層の上に、磁性層が形成されていてもよい。
【0045】
この場合、第2のNaCl型構造を有する材料により形成された下地層の膜厚は特に限定されるものではないが、5nm以下とすることが好ましく、3nm以下とすることがより好ましい。膜厚を上記値以下とすることにより、TiOを含む下地層からの引っ張り応力により、該第2のNaCl型構造を有する材料により形成された下地層の格子定数をTiO含む下地層の格子定数により近づけることができる。このため、磁性層に含まれるL1型構造を有するFePt合金に対して、膜面内方向に引っ張り応力を導入することができ、良好な規則度を有するL1型構造を有するFePt合金が得られる。第2のNaCl型構造を有する材料により形成された下地層に含まれるNaCl型構造を有する材料としては、特に限定されるものではないが、例えばMgO、TiN、TaN、ZrN、TiC、TaC、ZrC等、TiOよりも融点の高い材料を好ましく用いることができ、特にMgOを好ましく用いることができる。TiOよりも融点の高い材料を用いることにより、下地層から磁性層への熱拡散を抑制することができる。
【0046】
そして、本実施形態の磁気記録媒体においては、磁性層として、L1構造を有するFePt合金を含む磁性層が設けられている。磁性層は複数の下地層上に形成することが好ましく、例えば、TiOを含む下地層の直上に形成することができる。また、TiOを含む下地層と磁性層との間に他の下地層を形成することもできる。
【0047】
磁性層形成時に磁性層の規則化を促進するため加熱処理を行うことが好ましいが、この際の加熱温度(規則化温度)を低減するため、L1構造を有するFePt合金に、Ag、Au、Cu、Ni等を添加してもよい。これらの成分を添加することにより、磁性層形成時の加熱温度(基板温度)を400〜500℃程度まで低減することができる。
【0048】
また、磁性層中において、L1構造を有するFePt合金の結晶粒は磁気的に孤立していることが好ましい。このため、磁性層は、L1構造を有するFePt合金を主成分とし、かつ、SiO、TiO、Cr、Al、Ta、ZrO、Y、CeO、MnO、TiO、ZnO、C、B、B、BNから選択される1種類以上の物質を含有していることが好ましい。これにより、結晶粒間の交換結合をより確実に分断し、媒体SN比をより高めることができる。
【0049】
ここで、L1構造を有するFePt合金を主成分とするとは、分子量比率で、磁性層中に含まれる成分のうち、L1構造を有するFePt合金の含有比率が最も高いことを意味している。特にL1構造を有するFePt合金は、磁性層中に体積比率で50vol%以上含まれていることが好ましい。
【0050】
また、磁性層は、複数の磁性層により構成することもできる。例えば、磁性層が、L1構造を有するFePt合金を主成分とし、かつ、8mol%以上30mol%以下のTiOを含有する第1の磁性層と、L1構造を有するFePt合金を主成分とし、かつ、SiO、TiO、Cr、Al、Ta、ZrO、Y、CeO、MnO、TiO、ZnO、C、B、B、BNから選択される一種類以上の物質を含有する第2の磁性層と、を有していることが好ましい。
【0051】
下地層以外の構成として、例えば以下のような部材、層を形成することができる。
【0052】
例えば、磁性層上には、DLC保護膜を形成することが望ましい。
【0053】
DLC保護膜の製造方法は特に限定されるものではない。例えば炭化水素からなる原料ガスを高周波プラズマで分解して膜を形成するRF−CVD法、フィラメントから放出された電子で原料ガスをイオン化して膜を形成するIBD法、原料ガスを用いずに固体Cタ−ゲットを用いて膜を形成するFCVA法等により形成できる。
【0054】
DLC保護膜の膜厚についても特に限定されるものではないが、例えば、1nm以上6nm以下とすることが好ましい。これは、1nmを下回ると磁気ヘッドの浮上特性が劣化する場合があり好ましくないためである。また、6nmを上回ると磁気スペ−シングが大きくなり、媒体SN比が低下する場合があり好ましくないためである。
【0055】
DLC保護膜上には、さらにパーフルオロポリエーテル系のフッ素樹脂からなる潤滑剤を塗布することもできる。
【0056】
また、上述した層以外にも、シード層や、接着層等を必要に応じて任意に設けることができる。
【0057】
本実施形態の磁気記録媒体においては、複数の下地層のうち少なくとも1層を、TiOを含有する下地層とすることにより、磁性層に含まれるL1型構造を有するFePt合金を高い規則度とすることができる。また同時に、規則度が低い磁性粒子が排除されるため、反転磁界分散SFDを低減できる。これにより、高いKuを有し、かつ規格化保磁力分散(ΔHc/Hc)の低い磁気記録媒体を提供することができる。そして、規格化保磁力分散が低いほど、高い媒体SN比が得られることを示しているため、媒体SN比を高めることが可能になる。
【0058】
本実施形態の磁気記録媒体は、熱アシスト記録方式の磁気記憶装置用の磁気記録媒体としても用いることができるし、高周波記録方式、例えば、マイクロ波アシスト記録方式の磁気記憶装置用の磁気記録媒体としても用いることができる。
【0059】
熱アシスト記録方式の磁気記憶装置用の磁気記録媒体として使用する場合、磁気記録媒体は、ヒートシンク層を形成することが好ましい。ヒートシンク層の材料としては、熱伝導率の高い、Ag、Cu、Al、Au、もしくはこれらの合金を好ましく用いることができる。
[第2の実施形態]
本実施形態の磁気記憶装置の構成例について以下に説明する。なお、本実施形態では熱アシスト記録方式による磁気記憶装置の構成例について説明するが、係る形態に限定されるものではなく、第1の実施形態で説明した磁気記録媒体は、マイクロ波アシスト記録方式による磁気記憶装置とすることもできる。
【0060】
本実施形態の磁気記憶装置は、第1の実施形態で説明した磁気記録媒体を有する磁気記憶装置とすることができる。
【0061】
磁気記憶装置においては例えば、さらに、磁気記録媒体を回転させるための磁気記録媒体駆動部と、先端部に近接場光発生素子を備えた磁気ヘッドとを有する構成とすることができる。また、磁気記録媒体を加熱するためのレーザー発生部と、レーザー発生部から発生したレーザー光を近接場光発生素子まで導く導波路と、磁気ヘッドを移動させるための磁気ヘッド駆動部と、記録再生信号処理系と、を有することができる。
【0062】
磁気記憶装置の具体的な構成例を図1に示す。
【0063】
例えば本実施形態の磁気記憶装置100は図1に示す構成とすることができる。具体的には、磁気記録媒体101と、磁気記録媒体を回転させるための磁気記録媒体駆動部102と、磁気ヘッド103と、磁気ヘッドを移動させるための磁気ヘッド駆動部104と、記録再生信号処理系105等から構成できる。
【0064】
そして、磁気ヘッド103として、例えば図2に示した熱アシスト記録用ヘッド200を用いることができる。係る熱アシスト記録用ヘッド200は、記録ヘッド208、再生ヘッド211を備えている。記録ヘッド208は、主磁極201、補助磁極202、磁界を発生させるためのコイル203、レーザー発生部となるレーザーダイオード(LD)204、LDから発生したレーザー光205を近接場光発生素子206まで伝達するための導波路207を有する。再生ヘッド211はシールド209で挟まれた再生素子210を有する。
【0065】
そして、磁気記録媒体100として、上述のように第1の実施形態で説明した磁気記録媒体を用いている。このため、媒体SN比を高めることができる。また、エラーレートが低い磁気記憶装置とすることができる。
【実施例】
【0066】
以下に具体的な実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない
(実験例1)
図3に本実施例で作製した磁気記録媒体の層構成の一例を示す。2.5インチガラス基板301上に、膜厚が20nmのNi−50at%Taシード層302を形成し、300℃の基板加熱を行った。
【0067】
その後、第1の下地層303として表2に示した材料からなる下地層をいずれも膜厚が20nmになるように形成した。第1の下地層303の材料としては、実施例1.1ではCr−10at%Mnを、実施例1.2ではCr−15at%Ruを、実施例1.3ではCr−20at%Tiを、実施例1.4ではCr−30at%Moを、実施例1.5ではCr−30at%Wを、実施例1.6ではCrを、実施例1.7ではCr−25at%Vを、実施例1.8ではCr−5at%Bを、実施例1.9ではCr−10at%Ti−5at%Bを、実施例1.10ではCr−15at%Mo−3at%Bを、実施例1.11ではNi−50at%Alを、実施例1.12ではRu−50at%Alをそれぞれ用いている。また、比較例において、第1の下地層303の材料として比較例1.1ではCr−10at%Mnを、比較例1.2ではCr−30at%Wを、比較例1.3ではCr−10at%Ti−5at%Bをそれぞれ用いている。
【0068】
次いで、実施例1.1〜実施例1.12の試料については膜厚が2nmのTiOを含む下地層304として、TiOからなる下地層を形成した。比較例1.1〜1.3についてはTiOを含む下地層304を設けずに、第1の下地層303上に後述の磁性層305を直接形成した。
【0069】
その後、640℃の基板加熱を行い、(Fe−55at%Pt)−30at%Cにより、膜厚が6nmの磁性層305を形成した。
【0070】
そして、磁性層305の上面にはさらに、膜厚が3.5nmのDLC保護膜306を形成した。
【0071】
得られた磁気記録媒体について保磁力Hcと規格化保磁力分散ΔHc/Hcの評価を行った。
【0072】
保磁力Hcは、7Tの最大磁界を印加して室温にて測定した磁化曲線から見積もった。また、ΔHc/Hcは、「IEEE Trans.Magn.,vol.27,pp4975−4977,1991」に記載の方法で測定した。
【0073】
評価結果を表2に示す。
【0074】
【表2】
表2に示した結果によると、本発明の規定を充足する実施例1.1〜実施例1.12は、36kOe以上の高い保磁力Hcと、0.35以下の低い規格化保磁力分散ΔHc/Hcを示した。
【0075】
特に、第1の下地層にCr、Ni−50at%Al、Ru−50at%Alを用いた磁気記録媒体(実施例1.6、実施例1.11、実施例1.12)は、43kOe以上の特に高い保磁力Hcを示した。
【0076】
また、第1の下地層にCr−5at%B、Cr−10at%Ti−5at%B、Cr−15at%Mo−3at%Bを用いた媒体(実施例1.8、実施例1.9、実施例1.10)は0.31以下の特に低い規格化保磁力分散ΔHc/Hcを示した。
【0077】
これに対して、比較例1.1〜比較例1.3の磁気記録媒体の保磁力Hcはいずれも23kOe以下と低く、規格化保磁力分散ΔHc/Hcは0.4以上と高かった。
【0078】
本実験例の結果から、TiOを含む下地層を形成することにより、高い保磁力Hcを有し、かつ、低い規格化保磁力分散ΔHc/Hcを有する磁気記録媒体が得られることが確認できた。また、規格化保磁力分散ΔHc/Hcが低いほど、高い媒体SN比が得られることを示している。このため、実施例1.1〜実施例1.12の磁気記録媒体を用いることにより、媒体SN比を達成できることが確認できた。
(実験例2)
本実験例では、第1の下地層303とTiOを含む下地層304との間に第2の下地層を設けた以外は、実施例1.3と同様な構成の磁気記録媒体を作製した。
【0079】
第2の下地層としては、表3に示した材料からなる膜厚が25nm膜を形成した。第2の下地層の材料として、実施例2.1ではW−10at%Crを、実施例2.2ではMo−20at%Vを、実施例2.3ではWを、実施例2.4ではW−20at%Taを、実施例2.5ではMo−50at%Nbを、実施例2.6ではTaをそれぞれ用いた。
【0080】
得られた磁気記録媒体について、実験例1の場合と同様に、保磁力Hcと規格化保磁力分散ΔHc/Hcを評価した。結果を表3に示す。
【0081】
【表3】
実施例2.1〜実施例2.6の磁気記録媒体は、何れも実施例1.3の磁気記録媒体よりも高い保磁力Hcと低い規格化保磁力分散ΔHc/Hcを示した。
【0082】
本実施例の磁気記録媒体についてX線回折測定を行ったところ、実施例2.1〜実施例2.6における第2の下地層はいずれもBCC構造を有し、(100)配向していた。第2の下地層の(200)回折ピークから見積もった面間隔d200は0.44nm以上であった。この場合、第2の下地層と、TiOを含む下地層と、の格子ミスフィットは、5%以下と見積もられる。実施例2.1〜実施例2.6の磁気記録媒体が、実施例1.3の磁気記録媒体よりも高い保磁力Hcと低い規格化保磁力分散ΔHc/Hcを示したのは、第2の下地層と、TiOを含む下地層と、の格子ミスフィットが緩和されたためと考えられる。
(実験例3)
図4に本実験例で作製した磁気記録媒体の層構成の一例を示す。
【0083】
2.5インチガラス基板401上に、膜厚が5nmのCr−50at%Ti接着層402と、膜厚が50nmのCu−0.4at%Zrヒートシンク層403と、膜厚が20nmのNi−50at%Taシード層404と、を形成し、270℃の基板加熱を行った。
【0084】
その後、第1の下地層405として表4に示した材料からなる下地層を、いずれも膜厚が10nmになるように形成した。第1の下地層405の材料としては、実施例3.1および比較例3.1ではCrを、実施例3.2および比較例3.2ではCr−20at%Vを、実施例3.3〜実施例3.5および比較例3.1〜比較例3.5ではCr−10at%Ruを、それぞれ用いている。
【0085】
次いで、第2の下地層406として表4に示した材料からなる下地層を、いずれも膜厚が4nmになるように形成した。第2の下地層406の材料としては、実施例3.1〜実施例3.3および比較例3.1〜比較例3.3ではTiNを、実施例3.4および比較例3.4ではTiCを、実施例3.5および比較例3.5ではMgOを、それぞれ用いている。
【0086】
さらに実施例3.1〜実施例3.5においては、TiOを含む下地層407として、膜厚が2nmのTiOからなる下地層を形成した。比較例3.1〜比較例3.5においては、TiOを含む下地層407を設けずに、第2の下地層406上に後述する磁性層408を直接形成した。
【0087】
その後、680℃の基板加熱を行い、膜厚が6nmの(Fe−50at%Pt)−50at%C磁性層408と、膜厚が3nmのDLC保護膜409を形成した。
【0088】
得られた磁気記録媒体について、実験例1の場合と同様に、保磁力Hcと規格化保磁力分散ΔHc/Hcの評価を行った。結果を表4に示す。
【0089】
【表4】
実施例3.1〜実施例3.5の磁気記録媒体は、何れも41kOe以上の高い保磁力Hcと、0.35以下の低い規格化保磁力分散ΔHc/Hcを示した。
【0090】
特に、第1の下地層405にCrを用いた実施例3.1の磁気記録媒体が特に高い保磁力Hcを示し、第2の下地層406にMgOを用いた実施例3.5の磁気記録媒体が特に低い規格化保磁力分散ΔHc/Hcを示した。
【0091】
一方、TiOを含む下地層407を形成しなかった比較例3.1〜比較例3.5の磁気記録媒体は、何れも保磁力Hcが23kOe以下と低く、規格化保磁力分散ΔHc/Hcも0.4以上と高い値を示した。
【0092】
以上より、TiOを含む下地層407を形成することにより、高い保磁力Hcを有し、かつ、規格化保磁力分散ΔHc/Hcが低い磁気記録媒体が得られることが確認できた。また、規格化保磁力分散ΔHc/Hcが低いほど、高い媒体SN比が得られることを示している。このため、実施例3.1〜実施例3.5の磁気記録媒体を用いることにより、高い媒体SN比を達成できることが確認できた。
(実験例4)
本実験例では磁性層408を第1の磁性層と、第2の磁性層からなる積層構造とした以外は実施例3.1と同様の層構造を有する磁気記録媒体を製造した。
【0093】
ここで、第1の磁性層には、表5に示すように、実施例4.1〜実施例4.6の各試料においてTiOの含有量を変化させた磁性材料を使用した。また、第2の磁性層については、いずれの試料でも実施例3.1の磁性層408に用いた(Fe−50at%Pt)−50at%Cを用いた。第1の磁性層と、第2の磁性層の膜厚は、それぞれ5nm、4nmとした。
【0094】
作製した磁気記録媒体について、実験例1の場合と同様に、保磁力Hcと規格化保磁力分散ΔHc/Hcの評価を行った。結果を表5に示す。
【0095】
【表5】
実施例4.1〜実施例4.5の磁気記録媒体は、何れも42kOe以上の高い保磁力Hcと0.35以下の低い規格化保磁力分散ΔHc/Hcを示した。特に、磁性層中のTiOが8mol%以上30mol%以下の実施例4.2〜実施例4.5が、高い保磁力Hcと低い規格化保持力分散ΔHc/Hcを示した。
【0096】
以上より、磁性層を二層構造とし、第1の磁性層に8mol%以上、30mol%以下のTiOを含有する磁性層を用いることにより、特に高い保磁力Hcを有し、かつ、規格化保磁力分散ΔHc/Hcが低い磁気記録媒体が得られることが確認できた。
(実験例5)
実験例3で示した実施例3.1〜実施例3.5および比較例3.1〜比較例3.5の磁気記録媒体にパーフルオルエーテル系の潤滑剤を塗布し、図2に示した熱アシスト記録用ヘッドを用いてRW特性を評価した。
【0097】
本実験例で使用した熱アシスト記録用ヘッド200は図2に示すように、記録ヘッド208、再生ヘッド211を備えている。記録ヘッド208は、主磁極201、補助磁極202、磁界を発生させるためのコイル203、レーザーダイオード(LD)204、LDから発生したレーザー光205を近接場光発生素子206まで伝達するための導波路207を有する。再生ヘッド211はシールド209で挟まれた再生素子210を有する。近接場光素子から発生した近接場光により媒体212を加熱し、媒体の保磁力をヘッド磁界以下まで低下させて記録できる。
【0098】
表6に、上記熱アシスト記録用ヘッド200を用いて線記録密度1600kFCIのオールワンパターン信号を記録して測定した媒体SN比と、トラックプロファイルの半値幅と定義したトラック幅MWWを示す。ここで、レーザーダイオードに投入するパワーは、MWWが概ね55nmとなるように設定した。
【0099】
【表6】
実施例3.1〜実施例3.5の磁気記録媒体は、何れも12dB以上の高い媒体SN比
を示したが、特に実施例3.1と実施例3.5の磁気記録媒体とが13dB以上の高い媒
体SN比を示した。
【0100】
一方、比較例3.1〜比較例3.5の磁気記録媒体は、何れも媒体SN比が9.5dB以下と低かった。
【0101】
以上より、TiO下地層を用いることにより、高い媒体SN比を示す磁気記録媒体が得られることが確認できた。
(実験例6)
実験例3で示した各磁気記録媒体を図1に示す磁気記憶装置に組み込み、ビットエラーレートの評価を行った。
【0102】
本実験例で用いた磁気記憶装置100は、既述のように磁気記録媒体101と、磁気記録媒体を回転させるための磁気記録媒体駆動部102と、磁気ヘッド103と、磁気ヘッドを移動させるための磁気ヘッド駆動部104と、記録再生信号処理系105から構成される。なお、磁気ヘッド103には、実験例5で示した熱アシスト記録用磁気ヘッドを用いた。また、磁気記録媒体には、その表面にパーフルオルエーテル系の潤滑剤を塗布したものを用いている。
【0103】
表7に線記録密度1600kFCI、トラック密度500kFCI(面記録密度800Gbit/inch)の条件で評価したビットエラーレート(BER)の値を示す。
【0104】
【表7】
実施例媒体3.1〜3.5を組み込んだ磁気記憶装置は、1×10−6.6以下の低いビットエラーレートを示した。特に、実験例5で高い媒体SN比を示した実施例3.1の磁気記録媒体と実施例3.5の磁気記録媒体が、1×10−7以下の低いビットエラーレートを示している。一方、比較例3.1〜比較例3.5の磁気記録媒体を組み込んだ磁気記憶装置のビットエラーレートは、1×10−4台であった。
【0105】
以上より、TiOを含む下地層を形成した磁気記録媒体を組み込むことにより、ビットエラーレートが低い磁気記憶装置が得られることが確認できた。
【符号の説明】
【0106】
100 磁気記憶装置
101、212 磁気記録媒体
301、401 ガラス基板
304、407 TiOを含む下地層
305、408 磁性層
図1
図2
図3
図4