(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
疎水性の熱可塑性樹脂からなる1種類の短繊維のみ、又は疎水性の熱可塑性樹脂からなる繊維径のみが異なる2種類以上の短繊維を混合して得た混合繊維のみからなるウェブにニードルパンチ加工を施し、繊維相互を結合することで熱可塑性樹脂繊維シートである不織布とする工程1、
上記不織布を繊維基層原体ウェブ層表面に重合し、ニードルパンチ加工を施して上記不織布と上記繊維基層原体ウェブ層とを結合すると共に上記繊維基層原体ウェブ層の繊維相互を結合して繊維基層とする工程2、
上記不織布と上記繊維基層との重合物を、上記不織布を構成する疎水性の熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度で加熱して、上記疎水性の熱可塑性樹脂からなる短繊維又は混合繊維を溶融せしめて通気性樹脂表層を形成すると共に所定形状に形成する工程3、
以上の工程からなる請求項1から請求項5のうち何れか一項に記載の耐着氷・防音緩衝材の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記防音緩衝材の樹脂表層にあっては、短繊維と、樹脂部を形成する樹脂繊維とを混合して樹脂表層繊維体を形成し、該樹脂表層繊維体を加熱することによって上記樹脂繊維を溶融して上記短繊維が埋め込まれた樹脂部としている。そして上記樹脂部はその両面を通過する無数の微細な空孔を有する。
しかし上記樹脂表層にあっては、バインダーである上記樹脂部に短繊維が混合されているため、その表面には短繊維によるケバが形成され、該ケバが上記樹脂層の着氷防止性を低下させる原因となっていた。
本発明は、上記通気性樹脂表層にケバを発生させることなく、該通気性樹脂表層に通気性を与え、もって防音性に優れた耐着氷・防音緩衝材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段として、本発明は、繊維基層に通気性樹脂表層を積層してなり、
上記繊維基層が、融点180℃以上の通常繊維と融点170℃以下の低融点熱可塑性樹脂繊維とを含む不織布によって構成され、上記通気性樹脂表層が、疎水性の熱可塑性樹脂繊維からなる1種類の短繊維のみ、又は疎水性の熱可塑性樹脂からなる繊維径のみが異なる2種類以上の短繊維を混合して得た混合繊維のみを使用してなる熱可塑性繊維シートの溶融物によって構成
されており、更に、上記通気性樹脂表層には該通気性樹脂表層を補強するべくスパンボンド不織布が挿入されている耐着氷・防音緩衝材を提供する。
上記繊維シートに使用する熱可塑性樹脂の融点は、140〜170℃であることが望ましい。
また、上記熱可塑性繊維シートは、上記短繊維又は上記混合繊維のウェブに対し、パンチ密度を200〜300本/cm
2としてニードルパンチ加工することで繊維相互を結合せしめた不織布によって作成され、更に上記通気性樹脂表層を構成する上記熱可塑性繊維シートは、パンチ密度を50〜150本/cm
2としてニードルパンチ加工することで上記繊維基層と結合することが望ましい。
上記通常繊維と上記低融点熱可塑性樹脂繊維とが30:70〜70:30設定比率で混合されていることが望ましい
。
また、上記耐着氷・防音緩衝材は、通気度が30cc/cm
2・sec以下であることが望ましい。
本発明の耐着氷・防音緩衝材は、特に車両用外装材として有用である。
上記の繊維其層に通気性樹脂表層を積層してなり、上記通気性樹脂表層が、疎水性の熱可塑性樹脂からなる1種類の短繊維のみ、又は疎水性の熱可塑性樹脂からなる繊維径のみが異なる2種類以上の短繊維を混合して得た混合繊維のみを使用してなる熱可塑性繊維シートの溶融物によって構成される耐着氷・防音緩衝材の製造方法は、下記の工程1〜工程3からなる。
疎水性の熱可塑性樹脂からなる1種類の短繊維のみ、又は疎水性の熱可塑性樹脂からなる繊維径のみが異なる2種類以上の短繊維を混合して得た混合繊維のみからなるウェブにニードルパンチ加工を施し、繊維相互を結合することで熱可塑性樹脂繊維シートである不織布とする工程1。
上記不織布を繊維基層原体ウェブ層表面に重合し、ニードルパンチ加工を施して上記不織布と上記繊維基層原体ウェブ層とを結合すると共に上記繊維基層原体ウェブ層の繊維相互を結合して繊維基層とする工程2。
上記不織布と上記繊維基層との重合物を、上記不織布を構成する疎水性の熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度で加熱して、上記疎水性の熱可塑性樹脂からなる短繊維又は混合繊維を溶融せしめて通気性樹脂表層を形成すると共に所定形状に形成する工程3。
上記不織布と上記繊維基層との重合物は、上記不織布に用いた熱可塑性樹脂の融点よりも30〜50℃高い温度で加熱されることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕
本発明の耐着氷・防音緩衝材
は、繊維基層に通気性樹脂表層を積層してなるものであり、前記繊維基層は、融点180℃以上の通常繊維と融点170℃以下の低融点熱可塑性樹脂繊維とを含む不織布によって構成されており、前記通気性樹脂表層として、疎水性の熱可塑性樹脂からなる1種類の短繊維のみ、又は疎水性の熱可塑性樹脂からなる繊維径のみが異なる2種類以上の短繊維を混合して得た混合繊維のみからなる疎水性の熱可塑性繊維シートの溶融物を使用する。上記熱可塑性繊維シートの溶融物は、繊維相互の間に空隙を有することから、通気性を有するものとすることが出来る。
更に上記熱可塑性繊維シートの溶融物は、熱可塑性樹脂からなる1種類の短繊維(ステープル)のみ、又は繊維径のみが異なる2種類以上の短繊維(ステープル)を混合して得た混合繊維のみを使用している。1種類の短繊維(ステープル)のみからなる場合は言うに及ばず、混合繊維からなる場合も2種類以上の短繊維(ステープル)は繊維径のみが異なるのであって同系の熱可塑性樹脂からなるものであるから、該短繊維(ステープル)は、所定温度(使用する熱可塑性樹脂の融点)で全量が溶融する。このため、通気性樹脂表層の表面には、該短繊維(ステープル)によるケバが存在しないので、水滴や氷が付着しにくく、好適な耐着氷性を発揮するものとすることが出来る。なお、通常の短繊維(ステープル)とは、繊維長が100mm以下の繊維である。
また、上記通気性樹脂表層には、スパンボンド不織布を挿入することで、加熱成形の際の樹脂破れ等といった不具合の発生を抑制することが出来る。
また上記熱可塑性繊維シートは、使用する熱可塑性樹脂の融点を140〜170℃とすることで、加工・成形の際に短繊維(ステープル)の全量をほぼ確実に溶融することができ、該短繊維(ステープル)によるケバが全く存在しないものとすることが出来る。
また、上記熱可塑性繊維シートは、上記短繊維又は上記混合繊維のウェブに対し、ニードルパンチ加工を施して繊維相互を結合せしめて不織布とするが、この際パンチ密度を200〜300本/cm
2の高密度にすることにより、通気性樹脂表層の表面の一層の平滑化を図り、通気性を保持しつつ該通気性樹脂表層の着氷防止性(耐着氷性)を向上せしめることが出来る。加えて、上記通気性樹脂表層を構成する上記熱可塑性繊維シートは、パンチ密度を50〜150本/cm
2の高密度としてニードルパンチ加工することで上記繊維基層と結合されるので、該繊維基層との結合に接着剤等を使用しないことで通気性を保持することが出来るとともに、通気性樹脂表層の表面のより一層の平滑化を図り、通気性樹脂表層の着氷防止性(耐着氷性)を好適なものにせしめることが出来る。
また、上記通気性樹脂表層によって被覆される繊維基層は、本発明の耐着氷・防音緩衝材に防音性を付与するものであるが、
上記通常繊維と上記低融点熱可塑性樹脂繊維とが30:70〜70:30設定比率で混合されていることが望ましく、加熱成形の際に上記低融点熱可塑性樹脂繊維を溶融せしめて繊維相互を結着することにより
、繊維基層の強度を向上させることが出来る
。
また、上記耐着氷・防音緩衝材は、通気度を30cc/cm
2・sec以下にすることが望ましく、防音性を好適なものにせしめることが出来る。なお、該通気度は、JIS L1096通気性A法に準じて測定した値とする。
本発明の耐着氷・防音緩衝材は、通常、上記の工程1〜工程3の3つの工程からなる。工程1では通気性樹脂表層となる熱可塑性樹脂繊維シートである不織布が得られ、工程2で該不織布は繊維基層とニードルパンチ加工によって結合されるので、得られる通気性樹脂表層、ひいては耐着氷・防音緩衝材の通気性が確保される。更に工程3では熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度で加熱されることで、通気性樹脂表層に使用した短繊維(ステープル)の全量を確実に溶融することができるため、該短繊維(ステープル)によるケバの発生を防止し、該通気性樹脂表層の着氷防止性(耐着氷性)を好適なものにせしめることが出来る。
また、加熱温度は、通気性樹脂表層となる不織布を構成する短繊維(ステープル)に使用した熱可塑性樹脂の融点よりも30〜50℃高い温度に設定すれば、上記短繊維(ステープル)は完全に溶融するが、溶融物は通気性を損なわない程度の多孔となる。
【0007】
〔効果〕
本発明の耐着氷・防音緩衝材は、防音性に富み、かつ着氷防止性に優れているので、自動車のフェンダライナー、エンジンアンダーカバー、ボディアンダーカバー等といった車両用外装材に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明を具体化した実施形態について、以下に詳細に説明する。
図
2に示すように、耐着氷・防音緩衝材1は、繊維基層3の一面に通気性樹脂表層2を積層して構成されている。該繊維基層3は、該防音緩衝材1に防音性を付与するとともに、石等が当たった際の傷付きを抑制する緩衝性を付与するものである。該通気性樹脂表層2は、水や氷が付着した場合にこれを撥水することで、該繊維基層3の吸水性を阻止するものである。
図1に示すように、上記耐着氷・防音緩衝材1においては、上記通気性樹脂表層2の内部にスパンボンデッド不織布4を挿入してもよい
。
【0010】
〔通気性樹脂表層〕
本発明の耐着氷・防音緩衝材1に使用される通気性樹脂表層2は、上記したように繊維基層3の吸水性を阻止するものであり、また上記繊維基層3による防音性の付与のために所定の通気性を有するものである。
該通気性樹脂表層2には、疎水性の熱可塑性樹脂からなる短繊維(ステープル)によって得られた熱可塑性繊維シートの溶融物が用いられる。なお、該短繊維(ステープル)は、通常、100mm以下の長さの繊維である。
上記短繊維(ステープル)は、該通気性樹脂表層2の通気性を確保するため、1種類の短繊維(ステープル)のみ、又は繊維径のみが異なる2種類以上を混合して得た混合繊維として使用する。例えば、繊維径のみが異なる2種類以上を混合して得た混合繊維を使用する場合、上記繊維径は、4〜5dtexの極細繊維と、6〜8dtexの中細繊維と、15〜20dtexの太径繊維との3種類を混合する等して使用する。混合比率は少なくともいずれかの繊維径の繊維が混合繊維中10質量%以下にならないようにすることが望ましい。また本発明においては、例えば上記極細繊維と上記太径繊維との2種の混合繊維、上記中径繊維と上記太径繊維との2種類の混合繊維も使用することができる。この場合の混合比率は20:80〜80:20質量比の範囲とすることが望ましい。
上記熱可塑性樹脂には、疎水性のものが使用される。該疎水性の熱可塑性樹脂としては、融点が145〜165℃の範囲のものが望ましく、一般にはポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリエチレン等のポリオレフィンが使用され、強度・剛性等の点からみて、ポリプロピレンは本発明の疎水性の熱可塑性樹脂として望ましいものである。
【0011】
上記1種類の短繊維(ステープル)、又は繊維径のみが異なる2種類以上の短繊維(ステープル)を混合して得た混合繊維は、該短繊維(ステープル)のみ又は該混合繊維のみがカーディングされてウェブとしたうえで、通常はニードルパンチ加工を施すことによって繊維同士を交絡させ、繊維相互を結合することにより、熱可塑性樹脂繊維シートである不織布とされる。該熱可塑性樹脂繊維シートである不織布は、繊維相互の間に空隙を有しており、多孔質のものとなるため、上記通気性樹脂表層2に通気性が付与される。この場合、着氷防止性(耐着氷性)の高い表面を得るには、パンチ密度を高くして200〜300本/cm
2の範囲に設定することが望ましい。
上記熱可塑性樹脂繊維シートである不織布は、加熱溶融されて通気性樹脂表層2を形成するが、その場合の加熱温度は、通常、上記熱可塑性樹脂の融点よりも30〜50℃高い温度に設定することが望ましい。上記熱可塑性樹脂の融点との温度差が30℃を下回ると、該熱可塑性樹脂からなる短繊維(ステープル)の溶融が不十分となり、該短繊維(ステープル)によるケバが上記通気性樹脂表層2の表面に残ってしまうことで、十分な着氷防止性(耐着氷性)のある表面が得られないおそれがある。また、上記熱可塑性樹脂の融点との温度差が50℃を上回ると、該熱可塑性樹脂からなる短繊維(ステープル)が過剰に溶融され、溶融した樹脂が繊維相互の間の空隙を埋めてしまうため、溶融物の通気性が阻害されるおそれがある。
本発明の通気性樹脂表層2は、上記熱可塑性樹脂繊維シート(不織布)の溶融物であるが、強度・剛性等の点からみて、該通気性樹脂表層2の単位面積当たりの質量は、通常は50〜300g/m
2程度に設定されることが望ましく、厚みは1〜3mmに設定されることが望ましい。
【0012】
〔繊維基層〕
本発明の耐着氷・防音緩衝材1に使用される繊維基材3は、例えばポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アセテート繊維等の有機合成繊維、とうもろこしやサトウキビ等の植物から抽出された澱粉からなる生分解繊維、パルプ、木綿、ヤシ繊維、麻繊維、竹繊維、ケナフ繊維等の植物性繊維、炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、石綿繊維等の無機繊維等の繊維の一種または二種以上の繊維を材料とする不織布あるいは編織物である。
通常、上記繊維基材3として使用される繊維材料は、融点180℃以上の通常繊維と、融点170℃以下の低融点熱可塑性樹脂繊維とを30:70〜70:30設定比率で混合した混合繊維のウェブをニードルパンチ加工することによって繊維同士を交絡させ、繊維相互を結合せしめた不織布である。上記低融合繊維としては、例えば、融点170℃以下のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリウレタン繊維、ポリエステル繊維、ポリエステル共重合体繊維、ポリアミド繊維、ポリアミド共重合体繊維等の熱可塑性繊維が挙げられる。
また上記低融点繊維として、例えば上記有機合成繊維を芯部分とし、該低融点繊維の材料樹脂である融点100〜170℃の低融点熱可塑性樹脂を鞘とする芯鞘型繊維を用いてもよい。
上記繊維基材3は、強度・剛性と防音性能等の点からみて、単位面積当たりの質量は、通常は300〜800g/m
2程度に設定されることが望ましく、厚みは3〜8mm程度に設定されることが望ましい。
【0013】
〔スパンボンデッド不織布〕
本発明の通気性樹脂表層
2を補強し、繊維の密度ムラ等によって成形時等に通気性樹脂表層
2に生じる破れ(以下、樹脂破れ)を防止するためには、
図1に示すように上記通気性樹脂表層2にスパンボンデッド不織布4を挿入す
る。
一般に上記スパンボンデッド不織布4は、熱可塑性樹脂をノズルから押し出して得られたフィラメント(長繊維)に延伸処理、熱処理、クリンプ処理等を施した後、空気流、静電力等によって上記フィラメント(長繊維)を適当に分離且つ分散してマット状にしたものを、圧縮、熱処理することで、該フィラメント(長繊維)相互間を結着した不織布であるが、空気流や静電力を及ぼしてマット状にする場合、該フィラメント(長繊維)は上記空気流や静電力の方向(縦方向、長さ方向)に沿って流れるので、引張り強度や引裂強度等の強度は縦方向に大きく、横方向(巾方向)に小さい。
一方、上記通気性樹脂表層
2も供給エプロン上に載せたウェブをニードルパンチ機に送り込んでニードルパンチ加工を施した不織布が一般的に使用されるが、ニードルパンチ機におけるニードルパンチング方向(横方向、巾方向)に沿って流れるので、強度は横方向(巾方向)に大きく、縦方向(長さ方向)に小さい。
そこでスパンボンデッド不織布4と、通気性樹脂表層
2との縦横を合わせて重合すれば、繊維の流れ方向は相互に直交し、従って重合物の強度は、通気性樹脂表層
2と、スパンボンデッド不織布4との強度が相互縦方向(長さ方向)と横方向(巾方向)に相補って縦横両方向に大きな強度を有するものが得られる。
上記スパンボンデッド不織布4は、強度・剛性の点からみて、単位面積当たりの質量が通常は12〜70g/m
2のものが使用されることが望ましく、上記通気性樹脂表層
2におい
て下面あるいは中間(内部)に挿入されてもよい。
【0014】
〔耐着氷・防音緩衝材〕
本発明の耐着氷・防音緩衝材を製造するには下記の2つの方法が考えられる。
〔方法1〕(二貫二層法)
(1).通気性樹脂表層の原体である疎水性の熱可塑性樹脂からなる1種類の短繊維のみ、又は繊維径のみが異なる2種類以上の短繊維を混合して得た混合繊維のみのウェブ層にニードルパンチ加工を施し、繊維相互を結合して熱可塑性樹脂繊維シートである不織布を製造する工程1。
(2).上記不織布を繊維基層原体ウェブ層表面に重合し、ニードルパンチ加工を施して上記不織布を上記繊維基層原体ウェブ層に結合すると共に、上記繊維基層原体ウェブ層の繊維相互を結合して繊維基層とする工程2。
(3)上記不織布と上記繊維基層との重合物を上記不織布の疎水性熱可塑性樹脂繊維の融点よりも高い温度で加熱して、上記疎水性の熱可塑性樹脂からなる短繊維の全量を溶融せしめて通気性樹脂表層とすると共に設定形状に形成する工程3。
工程3においては、例えば、上記短繊維に使用した疎水性の熱可塑性樹脂が融点155℃前後のポリプロピレンである場合には、180〜190℃、3分程度の加熱を行う。
スパンボンデッド不織布を使用する場合には、通常、上記(1)において上記ウェブ層の下地に挿入しておく、あるいは上記(2)において上記繊維基層原体ウェブ層の下地に挿入しておく。
〔方法2〕(一貫二層法)
(1).上記疎水性の熱可塑性樹脂からなる1種類の短繊維のみ又は繊維径のみが異なる2種類以上の短繊維を混合して得た混合繊維のみのウェブ層と、上記繊維基層原体ウェブ層とを重合し、該重合物にニードルパンチ加工を施し、上記疎水性熱可塑性樹脂繊維混合物ウェブ層中の繊維相互を結合して熱可塑性樹脂繊維シートである不織布と、上記繊維基層原体ウェブ層の繊維相互を結合して繊維基層とすると共に、上記不織布と上記繊維基層とを結合する工程1。
(2).上記不織布と上記繊維基層との重合物を上記不織布の疎水性熱可塑性樹脂繊維の融点よりも高い温度で加熱して、上記疎水熱可塑性樹脂繊維を溶融せしめて通気性樹脂表層とすると共に設定形状に形成する工程2。
工程2においては、例えば、上記疎水性の熱可塑性樹脂からなる短繊維が融点150〜160℃のポリプロピレン繊維である場合には、180〜190℃、3分程度の加熱を行う。
スパンボンデッド不織布を使用する場合には、通常、上記(1)において、上記ウェブ層または上記繊維基層原体ウェブ層の下地に挿入しておく。
【0015】
上記二つの方法のうち、着氷防止性の点から見ると、方法1(二貫二層法)が望ましい。
上記方法1及び方法2においては、加熱の際に成形することなく原反として保管しておき、その後上記原反を所定形状に加熱成形してもよい。成形は通常プレス成形が適用される。
【実施例】
【0016】
〔実施例1〕(二貫二層法)
下記のポリプロピレン繊維(融点155℃)を表1に示す割合で混合した繊維混合物を梳毛機によってカーディングして樹脂表層に使用するウェブ層とした。
中細ポリプロピレン繊維:7.0dtex
太径ポリプロピレン繊維:17.0dtex
ポリプロピレン繊維(融点155℃)と、ポリエステル樹脂(融点253℃)を芯成分とし、融点110℃のポリエステル樹脂を鞘成分とした芯鞘型複合繊維を表1に示す割合で混合した混合繊維を、梳毛機によってカーディングして、繊維基層に使用するウェブ層を形成した。
上記樹脂表層に使用するウェブ層をニードルパンチ機によって300本/cm
2のパンチ密度によってニードルパンチして上記ウェブ層の繊維相互を結合するとともに、ポリエステル繊維のスパンボンド不織布20g/m
2とも結合させて、単位質量220g/m
2、厚さ2mmの樹脂表層原体不織布とした。
単位質量780g/m
2の上記繊維基層原体ウェブ層の一面に上記樹脂表層原体不織布を重合して100本/cm
2のパンチ密度によってニードルパンチして、上記繊維基層原体ウェブ層の繊維相互を結合して繊維基層とするとともに、3層を結合して複層物を作成した。
上記複層物を180℃、3分の加熱処理し、上記樹脂表層原体不織布を構成するポリプロピレン繊維を完全溶融して通気性樹脂表層2を有する
図1に示す形態の耐着氷・防音緩衝材を形成した。
【0017】
〔実施例2〕(二貫二層法)
実施例1の繊維基層原体ウェブ層において、各繊維の割合を表1に示す通りとしたうえで単位質量を480g/m
2とした他は、実施例1と同様にして耐着氷・防音緩衝材を製造した。
【0018】
〔実施例3〕(二貫二層法)
実施例1の樹脂表層原体不織布においてスパンボンド不織布を結合させることなく、単位質量200g/m
2、厚さ2mmとし、一方、繊維基層原体ウェブ層をニードルパンチ機によって300本/cm
2のパンチ密度によってニードルパンチして上記ウェブ層の繊維相互を結合するとともに、ポリエステル繊維のスパンボンド不織布20g/m
2とも結合させて、単位質量800g/m
2の繊維基層原体不織布とし、樹脂表層原体不織布と繊維基層原体不織布を結合した他は、実施例1と同様にして
図2に示す形態の耐着氷・防音緩衝材を製造した。
【0019】
〔実施例4〕(二貫二層法)
実施例3の樹脂表層原体不織布の単位質量を250g/m
2、厚さ2mmとし、繊維基層原体ウェブ層として実施例2のものを使用した他は、実施例1と同様にして耐着氷・防音緩衝材を製造した。
【0020】
〔実施例5〕(二貫二層法)
樹脂表層原体として実施例4のものを使用し、繊維基層原体ウェブ層として実施例2のものを使用し、スパンボンド不織布を使用しなかったことの他は、実施例1と同様にして
図3に示す形態の防音緩衝材を製造した。
【0021】
〔比較例1〕(一貫二層法)
実施例5の繊維基層原体ウェブ層において、各繊維の割合を表1に示す通りとしたうえで単位質量を250g/m
2とし、一貫二層法としたことの他は、実施例1と同様にして防音緩衝材を製造した。
〔比較例2〕(一貫二層法)
実施例5の繊維基層原体ウェブ層において、各繊維の割合を表1に示す通りとしたうえで単位質量を250g/m
2としことの他は、実施例1と同様にして防音緩衝材を製造した。
【0022】
〔試験〕
(1)引張強度:ダンベル型に打ち抜いた試験片を、インストロンタイプの引張り試験機に取り付け、200mm/minの速さで引っ張り、試験片が破断するまでの荷重を測定した。
(2)引裂強度:逆へ字型に打ち抜いた試験片を、ショッパ式試験機により200mm/minの速さで引っ張り、試験片を引き裂くのに要した荷重を測定した。
(3)曲げ強度:150×50mmの試験片を、曲げ試験装置で圧縮速度20mm/minにて最大発生荷重値が得られるまでストロークした。試験は試料の表側と裏側のそれぞれ実施し、N数は3個でその平均値を求めた。
(4)着氷せん断力:100×100mmの試験片を使用し、−15℃の低温室にて円筒治具(内径:43.85mm、高さ:30mm、引っ張り位置:中心から径方向に48mmで高さ26mmの位置)の内部に5℃以下の水を注入し、試験片に着氷させ、フォースゲージを円筒治具の引っ張り位置に接続し、鉛直方向へ引き上げ、氷を試験片から剥がし、その最大荷重を測定した。
(5)耐チッピング性:150×70×0.8mmの試験片の左右2箇所をスペーサーで20mmかさ上げしたうえで、摩耗試験装置に装着し、該試験片の上方に配置された試験片漏斗の口からナット(1回分が3kg)を60回落下させ、該試験片の繊維基層が露出するまでの回数を測定した。
(6)吸音率:1000×1000mmの試験片を使用し、JIS A 1409:1998に規定の残響室法吸音率の測定方法に準じて測定した。
(7)通気度:定常流差圧測定方式により、通気性試験機(製品名:KES−F8−AP1、カトーテック株式会社製、定常流差圧測定方式)を使用し、シリンダー状の通気路W内に試験片Lを配置し、一定の通気量Vの状態で、始点側と終点側との圧力差による通気抵抗を測定し、該通気抵抗を通気度に変換した。なお、通気抵抗をRとし、通気度をQとした場合、Q=12.4/Rの関係式に従って測定値を変換した。
【0023】
〔試験結果〕
実施例1〜5及び比較例1,2の性能を表1に示す。
【表1】
表1の結果より、実施例1〜5は、全体的に好適な性能を示し、特に着氷せん断力が5N未満であって耐着氷性に優れ、通気度が30cc/cm
2・sec以下であって防音性に優れたものであることが示された。
一方、比較例1及び比較例2については、着氷せん断力が20Nを超え、耐着氷性が悪く、また通気度が40cc/cm
2・secと30cc/cm
2・secを超えており、防音性に劣るものであることが示された。