(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
乗員を拘束するウェビングの巻き取りを行うスプールと、該スプールを回転可能に収容するベースフレームと、緊急時に前記ウェビングを巻き取って弛みを除去するプリテンショナと、を備えたシートベルトリトラクタにおいて、
前記プリテンショナは、前記スプールと同軸に接続されるとともに外周に形成された複数の係合歯を有する回転体と、前記係合歯に係合して前記回転体を回転させる動力発生手段と、少なくとも前記回転体を収容するカバー部材と、を有し、
前記カバー部材は、前記ベースフレームの内側に配置されている、
ことを特徴とするシートベルトリトラクタ。
前記カバー部材は、前記スプールの端部を挿通可能な開口部を有し、該開口部の内縁部により前記スプールのラジアル荷重を支持するように構成されている、ことを特徴とする請求項2に記載のシートベルトリトラクタ。
前記カバー部材が配置された前記ベースフレームの外側に、緊急時に前記ウェビングの引き出しを停止するロック機構又は前記スプールを巻き取り方向に付勢するスプリングユニットが配置されている、ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のシートベルトリトラクタ。
前記動力発生手段は、前記係合歯に係合して前記回転体を回転させる射出体と、該射出体を収容するとともに駆動を案内するガイドパイプと、該ガイドパイプの端部に配置され前記射出体に動力を付与するガス発生装置と、を有し、前記ベースフレームに前記ガイドパイプ及び前記カバー部材を固定したフレーム体を形成してから他の部品を組み付けるようにした、ことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のシートベルトリトラクタ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について
図1〜
図6を用いて説明する。ここで、
図1は、本発明の第一実施形態に係るシートベルトリトラクタを示す部品展開図である。
図2は、
図1に示したシートベルトリトラクタを示す図であり、(A)は斜視図、(B)は
図2(A)におけるB−B矢視断面図、である。
【0017】
本発明の第一実施形態に係るシートベルトリトラクタ1は、
図1及び
図2に示したように、乗員を拘束するウェビングの巻き取りを行うスプール2と、スプール2を回転可能に収容するベースフレーム3と、スプール2を巻き取り方向に付勢するスプリングユニット4と、緊急時にウェビングを巻き取って弛みを除去するプリテンショナ5と、緊急時にウェビングの引き出しを停止するロック機構6と、を備え、プリテンショナ5は、スプール2と同軸に接続されるとともに外周に形成された複数の係合歯51aを有する回転体51と、係合歯51aに係合して回転体51を回転させる動力発生手段52と、少なくとも回転体51を収容するカバー部材53と、を有し、カバー部材53は、ベースフレーム3の内側に配置されるとともに、スプール2を軸受け可能に構成されている。なお、各図において、ウェビングの図を省略してある。
【0018】
スプール2は、ウェビングを巻き取る巻胴である。スプール2の一端はスプリングユニット4に接続されており、スプリングユニット4に格納されたゼンマイバネによりスプール2はウェビングを巻き取る方向に付勢されている。なお、スプール2に巻き取り力を付与する手段は、スプリングユニット4に限定されるものではなく、電動モータ等を用いた他の手段であってもよい。
【0019】
また、スプール2の中心部に形成された空洞には軸心を形成するトーションバー21が挿通されており、トーションバー21の一端はスプリングユニット4が接続された側のスプール2の端部内面に接続されており、トーションバー21の他端はロッキングベース22に接続されている。なお、トーションバー21を含む衝撃吸収機構の構成は図示した構成に限定されるものではなく、例えば、トーションバー21の一端はスプール2を貫通してスプリングユニット4に接続されていてもよいし、不要な場合には省略してもよい。
【0020】
ロッキングベース22は、一端がスプール2の空洞部に挿通されるとともに、他端がリテーナカバー35に回転可能に支持されている。また、ロッキングベース22の一端側には、後述する回転体51やデフォメーションプレート24を嵌挿する軸部が形成され、他端側にはロック機構6の係合爪61が回転可能に配置される。
【0021】
したがって、プリテンショナ5やロック機構6が作動していない通常時には、トーションバー21はスプール2と一体になって回転するように構成されている。また、プリテンショナ5の作動時には、トーションバー21を回転させることによってウェビングをスプール2に巻き取ることができる。また、ロック機構6の作動時には、トーションバー21の回転が拘束され、スプール2の回転をロックすることにより、ウェビングの引き出しが抑制される。
【0022】
さらに、ウェビングに引き出し方向の力が作用した場合には、スプール2はトーションバー21により片持ち支持されていることから、トーションバー21の捩れ変形によってウェビングの荷重を制限することができ、乗員の衝撃エネルギーを吸収する。
【0023】
また、スプール2のプリテンショナ5が配置される側の端面には、金属製のデフォメーションピン23が頭部を露出するように挿入されている。また、ロッキングベース22の軸部には、デフォメーションピン23の頭部と係合可能な凸部を有するデフォメーションプレート24が嵌挿されている。なお、デフォメーションピン23とデフォメーションプレート24とは一体に形成されていてもよい。
【0024】
したがって、ロック機構6の作動時に引き出されるウェビングによってスプール2が回転すると、デフォメーションピン23を回転方向に引き抜こうとする力が作用する。そして、デフォメーションピン23は、スプール2の端面とデフォメーションプレート24との間でしごかれて塑性変形し、乗員の衝撃エネルギーを吸収する。
【0025】
かかるデフォメーションピン23及びデフォメーションプレート24を配置することにより、エネルギー吸収力を向上させることができる。なお、トーションバー21が十分なエネルギー吸収力を有している場合には、デフォメーションピン23及びデフォメーションプレート24を省略するようにしてもよい。
【0026】
ベースフレーム3は、シートベルトリトラクタ1の骨格を形成する筐体である。ベースフレーム3は、例えば、対峙する一対の端面31,32と、これらの端面を連結する側面33と、側面33と対峙し端面31,32に接続されるタイプレート34と、により構成される。端面31の外側にはスプリングユニット4が配置され、端面32の内側にはプリテンショナ5が配置され、端面32の外側にはロック機構6が配置されている。ロック機構6は、ベースフレーム3に接続されるリテーナカバー35内に収納される。
【0027】
リテーナカバー35には、車体の急減速や傾きを検出するビークルセンサ7が配置されている。ビークルセンサ7は、内蔵された球形の質量体(図示せず)と、質量体の移動によって揺動されるアクチュエータ71と、を有し、リテーナカバー35に形成された凹部に収納される。かかるビークルセンサ7は、車体に急減速や傾きが生じると、質量体が上方に移動し、それに伴ってアクチュエータ71の先端部を上方に揺動させるように構成されている。この揺動によって、アクチュエータ71は、後述するロックギア62の外歯62aに係止する。また、ビークルセンサ7は、車体の急減速や傾きを検出すると、車両に搭載された他の電子部品や電気制御システムに検出信号を発信するように構成されていてもよい。
【0028】
プリテンショナ5は、スプール2の端部にトーションバー21及びロッキングベース22を介して接続される回転体51と、回転体51を回転させる動力発生手段52と、回転体51を収容するカバー部材53と、を有している。回転体51は、径方向外方に突出するように形成された複数の係合歯51aを有している。
【0029】
動力発生手段52は、例えば、係合歯51aに係合して回転体51を回転させる射出体52aと、射出体52aを収容するとともに駆動を案内するガイドパイプ52bと、ガイドパイプ52bの端部に配置され射出体52aに動力を付与するガス発生装置52cと、を有している。
【0030】
射出体52aは、例えば、合成樹脂製のロッドであり、射出体52aの端部に圧力を加えると、ガイドパイプ52b内でガイドパイプ52bの形状に沿って塑性変形しながら移動するように形成されている。また、射出体52aは、プリテンショナ5の作動終了状態においてガイドパイプ52bから後端が放出されない長さに設定されている。かかる構成により、プリテンショナ5の作動終了後における、ガイドパイプ52bからの外部へのガスの放出を抑制することができる。なお、射出体52aは、ロッド部材に限定されるものではなく、例えば、金属製又は樹脂製の球体を複数利用したものや、二つの金属製又は樹脂製の球体が連結されたツインボールを複数利用したもの等であってもよい。
【0031】
ガイドパイプ52bは、先端が回転体51の係合歯51aに臨む位置に配置されており、後端側は射出体52aの移動に必要な長さ分だけ延伸されてシートベルトリトラクタ1の外形に沿って配置されている。ガイドパイプ52bの先端は、外周の一部に切欠部52dが形成されており、この切欠部52dから回転体51の係合歯51aがガイドパイプ52b内を通過して回転できるように構成されている。
【0032】
ガス発生装置52cは、例えば、ビークルセンサ7や車体に搭載された加速度センサからの検出信号に反応してガイドパイプ52bにガスを噴出するマイクロガスジェネレータである。このガス発生装置52cと射出体52aとの間には、射出体52aとガイドパイプ52bの周面との隙間をシールするとともに受圧面を形成するピストン(図示せず)を配置してもよい。
【0033】
かかる動力発生手段52によれば、通常時は、射出体52aの剛性により、ガイドパイプ52b内に射出体52aが収容された状態が維持される。そして、ガス発生装置52cからガスが発生されると、射出体52aは、塑性変形しながらガイドパイプ52b内を移動し、ガイドパイプ52bの先端からカバー部材53内に放出される。このとき、射出体52aは、回転体51の係合歯51aと塑性変形しながら係合し、係合歯51aを図中の矢印方向に回転させる。射出体52aは、カバー部材53の外形に沿って移動し、最終的に、ガイドパイプ52b、射出体52a自身、カバー部材53又はその他の部品に接触して停止する。
【0034】
カバー部材53は、略椀形状又は略箱形状を有する金属部品であって、ベースフレーム3の端面32及び側面33の内側に固定される。また、カバー部材53は、
図1及び
図2(B)に示したように、スプール2の端部を挿通可能な開口部53aを有し、開口部53aの内縁部によりデフォメーションプレート24を介して間接的にスプール2のラジアル荷重を支持するように構成されており、開口部53aがスプール2の軸受けを構成している。本実施形態では、開口部53aの内縁側を端面32側に向かって折り曲げて屈曲部53bを形成し、この屈曲部53bにより軸受けを構成している。
【0035】
なお、デフォメーションプレート24を省略した場合には、カバー部材53の開口部53aの内縁部により直接的にスプール2のラジアル荷重を支持するように軸受けを形成してもよいし、デフォメーションプレート24以外の部品を介してスプール2を軸受けするようにしてもよい。また、屈曲部53bは、開口部53aの内縁側を端面31側に向かって折り曲げて形成するようにしてもよい。
【0036】
また、スプール2の端部は、リテーナカバー35にも回転可能に支持されていることから、リテーナカバー35で小荷重の軸受けを形成し、カバー部材53で大荷重の軸受けを形成することができる。なお、スプール2のスラスト荷重は、リテーナカバー35で支持することもできるし、カバー部材53で支持するようにしてもよい。
【0037】
ロック機構6は、ロッキングベース22の
端面に揺動可能に配置された係合爪61(パウル)と、係合爪61を内側に向かって回動させるロックギア62と、ロックギア62とリテーナカバー35との間に形成された空間に配置されたフライホイール63と、を有している。ベースフレーム3の端面32には、ロッキングベース22を挿通可能な開口部32aが形成されており、開口部32aの内縁には内歯が切られている。係合爪61は、この開口部32aの内歯に係合できるように配置されている。
【0038】
ロックギア62は、ロッキングベース22のリテーナカバー35に支持される軸部に嵌挿されており、外周に外歯62aが形成されている。この外歯62aには、ビークルセンサ7のアクチュエータ71が係合される。ロックギア62の外側には、フライホイール63が揺動可能に配置されている。リテーナカバー35には、円形の凹部が形成されており、この凹部の内側に内歯35aが形成されている。この内歯35aには、フライホイール63の先端部が係合される。なお、フライホイール63は、スプリング(図示せず)によって、先端部が内歯35aから離隔する方向に付勢されている。
【0039】
また、ロックギア62の平面部には外縁側から内縁側に向かって湾曲するように形成されたカム孔62bが形成されている。このカム孔62bには、係合爪61の側面部に形成されたピン(図示せず)が挿通されており、ロックギア62の回転に伴ってピンがカム孔62bに沿って移動し、係合爪61が揺動される。なお、係合爪61は、スプリング(図示せず)によって、先端部が開口部32aの内歯から離隔する方向に付勢されていてもよい。
【0040】
フライホイール63は、リテーナカバー35とロックギア62との間に揺動可能に配置された質量体である。ウェビングの引き出し加速度が所定の閾値以下の場合には、フライホイール63の付勢力(スプリングの弾性力)がフライホイール63に生じる慣性力よりも大きくなるように設定されており、このとき、フライホイール63はロックギア62と一緒に回転することとなる。
【0041】
それに対して、ウェビングの引き出し加速度が所定の閾値を超えた場合には、フライホイール63に生じる慣性力が付勢力(スプリングの弾性力)よりも大きくなり、フライホイール63の先端部はリテーナカバー35の内歯35aに接近して係合することとなる。
【0042】
かかる構成のロック機構6によれば、通常時は、アクチュエータ71、フライホイール63及び係合爪61は非係合状態であることから、スプール2の回転に伴ってロッキングベース22及びロックギア62が回転することとなる。
【0043】
そして、ウェビングが通常の引き出し加速度よりも早い場合、すなわち、ウェビングの引き出し加速度が所定の閾値を超えた場合には、フライホイール63が揺動してリテーナカバー35の内歯35aに係合し、ロックギア62の回転が規制される。それに対して、ロッキングベース22は回転し続けようとすることから、ロッキングベース22とロックギア62との間に相対回転が生じ、それに伴って係合爪61がカム孔62bに沿って移動し、係合爪61の先端部がベースフレーム3の開口部32aの内縁に形成された内歯に係合することとなる。その結果、ロッキングベース22の回転が規制される。
【0044】
なお、上述した実施形態では、係合爪61をベースフレーム3に係合させる場合について説明したが、カバー部材53の開口部53aに係合爪61と係合可能な内歯を形成し、ベースフレーム3の開口部32aによりスプール2を軸受けするようにしてもよい。
【0045】
また、ビークルセンサ7が車体の急減速や傾きを検出した場合には、アクチュエータ71がロックギア62の外歯62aに係合し、ロックギア62の回転が規制される。その状態でウェビングが引き出されようとすると、ロッキングベース22とロックギア62との間に相対回転が生じ、それに伴って係合爪61がカム孔62bに沿って移動し、係合爪61の先端部がベースフレーム3の開口部32aの内縁に形成された内歯に係合することとなる。その結果、ロッキングベース22の回転が規制される。
【0046】
上述した第一実施形態に係るシートベルトリトラクタ1によれば、プリテンショナ5のカバー部材53をベースフレーム3の内側に配置したことにより、ベースフレーム3の側面をスプール2の軸受けとして利用することができ、従来、カバー部材53と別体に配置されていたプリテンショナプレートや軸受リングを省略することができ、部品点数の削減を図ることができる。また、ベースフレーム3の内側にプリテンショナ5を配置したことにより、ベースフレーム3の外側に配置される部品を削減することができ、シートベルトリトラクタ1の小型化を図ることができる。
【0047】
ここで、
図3は、本発明の基本概念を示す図であり、(A)は比較例1を示す従来技術、(B)は比較例2を示す従来技術、(C)は第一実施形態、(D)は変形例、を示している。なお、各図において、シートベルトリトラクタ1の構成を概念化して図示している。
【0048】
図3(A)に示した従来技術(比較例1)に係るシートベルトリトラクタ1′は、例えば、特許文献1に記載されたものである。かかるシートベルトリトラクタ1′は、ベースフレーム3′の片側にロック機構6′が配置され、反対側の片側にプリテンショナ5′及びスプリングユニット4′が配置されている。このシートベルトリトラクタ1′は、ロック機構6′の係合爪(図示せず)が、ベースフレーム3′の端面32′に形成された開口部の内歯(図示せず)に係合するように構成されていることから、ベースフレーム3′の開口部でスプール2′を軸受けすることができない。そこで、ベースフレーム3′とプリテンショナ5′との間には軸受部品50′(例えば、プリテンショナプレート)が配置されている。
【0049】
図3(B)に示した従来技術(比較例2)に係るシートベルトリトラクタ1′は、例えば、特許文献2に記載されたものである。かかるシートベルトリトラクタ1′は、ベースフレーム3′の片側にスプリングユニット4′が配置され、反対側の片側にプリテンショナ5′及びロック機構6′が配置されている。このシートベルトリトラクタ1′も、比較例1と同様に、ロック機構6′の係合爪(図示せず)が、ベースフレーム3′の端面32′に形成された開口部の内歯(図示せず)に係合するように構成されていることから、ベースフレーム3′の開口部でスプール2′軸受けすることができない。そこで、ベースフレーム3′とプリテンショナ5′との間には軸受部品50′(例えば、軸受リング)が配置されている。
【0050】
図3(C)に示した第一実施形態に係るシートベルトリトラクタ1は、
図1及び
図2に示したものである。かかるシートベルトリトラクタ1は、ベースフレーム3の片側内側にプリテンショナ5が配置され、片側外側にロック機構6が配置され、反対側の片側にスプリングユニット4が配置されている。このシートベルトリトラクタ1は、
図1及び
図2(B)に示したように、従来技術と同様に、ロック機構6の係合爪61が、ベースフレーム3の端面32に形成された開口部32aの内歯に係合するように構成されていることから、ベースフレーム3の開口部32aでスプール2を軸受けすることができない。そこで、本実施形態では、プリテンショナ5をベースフレーム3の内側に配置し、カバー部材53に形成した開口部53aによりスプール2を軸受けするようにしている。
【0051】
図3(D)に示した第一実施形態の変形例に係るシートベルトリトラクタ1は、
図3(C)に示したスプリングユニット4とロック機構6の配置を入れ替えたものである。このように、カバー部材53が配置されたベースフレーム3の端面32の外側には、緊急時にウェビングの引き出しを停止するロック機構6を配置してもよいし、スプール2を巻き取り方向に付勢するスプリングユニット4を配置してもよい。スプリングユニット4及びロック機構6の配置は、シートベルトリトラクタ1の構成に応じて任意に設定される。
【0052】
なお、
図3(A)〜(D)に示したシートベルトリトラクタ1の構成は、構造を簡略化した概念図であり、例えば、ロック機構6,6′はロックギアとパウルとがベースフレーム3の両則部に分離して配置されていてもよい。
【0053】
次に、シートベルトリトラクタ1の骨格を形成するフレーム体100の構成について、
図4(A)及び(B)を参照しつつ説明する。ここで、
図4は、フレーム体を示す図であり、(A)は正面斜視図、(B)は背面斜視図、(C)は変形例、を示している。
【0054】
上述したベースフレーム3やプリテンショナ5のガイドパイプ52b等の金属部品は、腐食防止の観点から防食被膜をコーティングする場合がある。ところで、
図3(A)及び(B)に示したような従来のシートベルトリトラクタ1′では、ベースフレーム3′の外側にカバー部材が配置されていることから、プリテンショナ5′の部品を組み付けてからカバー部材をベースフレーム3′に固定しなければならない。したがって、ベースフレーム3′、ガイドパイプ、カバー部材等の金属部品は、それぞれ個別に防食塗料に含浸してコーティングしなければならなかった。
【0055】
それに対して、第一実施形態に係るシートベルトリトラクタ1では、カバー部材53をベースフレーム3の内側に配置したことにより、ベースフレーム3にガイドパイプ52b及びカバー部材53を固定したフレーム体100を形成してから、ベースフレーム3の端面32に形成された開口部32aを介して他の部品を組み付けることができる。したがって、フレーム体100を形成してから、防食塗料に含浸してフレーム体100に防食被膜をコーティングすることができ、複数の部品を纏めて防食処理を施すことができ、防食処理工程の削減及び処理作業の負担軽減を図ることができる。
【0056】
また、
図3(A)及び(B)に示したような従来のシートベルトリトラクタ1′では、プリテンショナ5′がベースフレーム3′の外側に配置されていることから、カバー部材はベースフレーム3′の端面32に固定するしかなかった。
【0057】
それに対して、第一実施形態に係るシートベルトリトラクタ1では、カバー部材53をベースフレーム3の内側に配置したことにより、カバー部材53をベースフレーム3の端面32及び側面33の両方に接続することができ、カバー部材53を強固に固定することができる。例えば、
図4(B)に示したように、カバー部材53の外周には複数の突起53cが形成されており、これらの突起53cをベースフレーム3の端面32及び側面33に形成された開口部に挿通したり、縁部に沿って配置したりした後、必要に応じて、かしめて折り曲げることによって、カバー部材53をベースフレーム3に固定することができる。
【0058】
また、
図4(C)に示した変形例のように、ベースフレーム3の側面33に形成された挿通部3aや端面32に形成された貫通部3bに、カバー部材53の突起53cを挿通するようにしてもよい。挿通部3aは、カバーフレーム3の側面33の一部を内側に隆起させたブリッジ部により構成される。挿通した突起53cは折り曲げてもよいし、折り曲げなくてもよい。また、突起53cの配置は図示した構成に限定されるものではなく、ベースフレーム3やカバー部材53の形状に応じて任意に配置される。
【0059】
次に、本発明の第二実施形態に係るシートベルトリトラクタ1について、
図5を参照しつつ説明する。ここで、
図5は、本発明の第二実施形態に係るシートベルトリトラクタを示す断面図である。この断面図は、
図2(B)に示したB−B矢視断面図と同じ断面図である。なお、上述した第一実施形態に係るシートベルトリトラクタ1の構成部品と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0060】
図示した第二実施形態に係るシートベルトリトラクタ1は、ベースフレーム3、スプリングユニット4、プリテンショナ5及びロック機構6の配置は上述した第一実施形態に係るシートベルトリトラクタ1と同じである。第二実施形態におけるカバー部材53は、基本的な構成は上述した第一実施形態と同じであるが、開口部53aにおける屈曲部53bを有していない。このように、開口部53aに屈曲部53bを形成するか否かは任意に設定することができる。
【0061】
また、第二実施形態におけるプリテンショナ5では、カバー部材53内に放出された射出体52aの移動を案内するガイド部材54が配置されている。ガイド部材54は、射出体52aがカバー部材53の外形に沿って移動させるように形成されている。したがって、かかるガイド部材54により、放出された射出体52aが回転体51(ロッキングベース22と一体に形成されているか否かを問わない)と干渉しないようにすることができ、回転体51の駆動を安定させることができる。
【0062】
また、ガイド部材54は、デフォメーションプレート24の外側に嵌挿される形状を有していてもよい。この場合、図示したように、カバー部材53の開口部53aでガイド部材54の外周部を支持することにより、スプール2のラジアル荷重を間接的に支持するようにしてもよい。
【0063】
次に、本発明の実施形態に係るシートベルト装置について、
図6を参照しつつ説明する。ここで、
図6は、本発明の実施形態に係るシートベルト装置を示す全体構成図である。なお、
図6において、説明の便宜上、シートベルト装置以外の部品については、一点鎖線で図示している。
【0064】
図6に示した本実施形態に係るシートベルト装置10は、乗員を拘束するウェビングWと、ウェビングWの巻き取りを行うシートベルトリトラクタ1と、車体側に設けられウェビングWを案内するガイドアンカー11と、ウェビングWを車体側に固定するベルトアンカー12と、シートSの側面に配置されたバックル13と、ウェビングWに配置されたトング14と、を備え、シートベルトリトラクタ1は、
図1に示したように、ウェビングWの巻き取りを行うスプール2と、スプール2を回転可能に支持するベースフレーム3と、スプール2を巻き取り方向に付勢するスプリングユニット4と、緊急時にウェビングWを巻き取って弛みを除去するプリテンショナ5と、緊急時にウェビングWの引き出しを停止するロック機構6と、を備えている。かかるシートベルトリトラクタ1は、
図1〜
図2(B)に示したものと同じ構成であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0065】
シートSは、例えば、乗員が着座する腰掛部S1と、乗員の背面に位置する背もたれ部S2と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト部S3と、を備えている。シートベルトリトラクタ1は、例えば、車体のBピラーPに内蔵される。また、一般に、バックル13は腰掛部S1の側面に配置されることが多く、ベルトアンカー12は腰掛部S1の下面に配置されることが多い。また、ガイドアンカー11は、BピラーPに配置されることが多い。そして、ウェビングWは、一端がベルトアンカー12に接続され、他端がガイドアンカー11を介してシートベルトリトラクタ1に接続されている。
【0066】
したがって、トング14をバックル13に嵌着させる場合、ウェビングWはガイドアンカー11の挿通孔を摺動しながらシートベルトリトラクタ1から引き出されることとなる。また、乗員がシートベルトを装着した場合や降車時にシートベルトを解除した場合には、シートベルトリトラクタ1のスプリングユニット4の作用により、ウェビングWは一定の負荷がかかるまで巻き取られる。
【0067】
上述したシートベルト装置10は、前部座席における通常のシートベルト装置に、上述した本実施形態に係るシートベルトリトラクタ1を適用したものである。したがって、本実施形態に係るシートベルト装置10においても、シートベルトリトラクタ1の部品点数の削減や小型化を図ることができる。なお、シートベルト装置10は、前部座席への適用に限定されるものではなく、例えば、ガイドアンカー11を省略して後部座席にも容易に適用することができる。
【0068】
本発明は上述した実施形態に限定されず、例えば、車両以外の乗物に使用されるシートベルト装置に適用してもよい等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。