(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光硬化型のインクを用いた画像記録装置では、インクを硬化させるための光の一部が、記録媒体の表面で反射するなどして、記録ヘッド側へ漏れると、記録ヘッドのノズルに付着したインクが硬化してしまう場合がある。このような記録ヘッドにおけるインクの硬化は、ノズルの目詰まりの要因となる。
【0006】
この点について、特許文献1の装置は、記録ヘッドに対向する第一対向面と、照射部に対向する第二対向面とによって、段状に形成されたプラテンを用いている。これにより、記録媒体の表面で反射する光が、記録ヘッドのインク吐出口に当たることを防止している(段落0006〜0007,
図2)。しかしながら、特許文献1の構造では、段状のプラテンによって記録媒体が湾曲する。このため、記録媒体の表面において、未硬化のインクの拡がりが大きくなり、印刷品質が低下する虞がある。
【0007】
一方、特許文献2の装置は、本硬化用光源ユニットと、半硬化用LEDアセンブリーとを有する。半硬化用LEDアセンブリーは、用紙に着弾したインクの形状が変化しない程度にまで、インクを硬化させる(段落0025,
図1)。このような半硬化用LEDアセンブリーを用いれば、本硬化前のインクの拡がりを抑制することができる。しかしながら、特許文献2のように、本硬化用光源ユニットと半硬化用LEDアセンブリーとを併用すると、搬送経路が長くなり、装置のフットプリントが増大してしまう、という他の問題が生じる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、記録ヘッドにおける光硬化型インクの不要な硬化を抑制でき、記録媒体の搬送の向きを変更することによる印刷品質の低下も抑制でき、かつ、装置のフットプリントの増大も抑制できる画像記録装置および画像記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、画像記録装置であって、記録媒体をその長手方向に沿う搬送方向に搬送する搬送機構と、固定配置されたノズルから、前記記録媒体の表面に光硬化型のインクを吐出する記録ヘッドと、前記記録ヘッドより前記搬送方向の下流側において、前記インクを増粘させる第1照射光を、前記記録媒体に照射する増粘用光照射部と、前記増粘用光照射部より前記搬送方向の下流側において、前記インクを前記記録媒体に定着させる第2照射光を、前記記録媒体に照射する定着用光照射部と、を備え、前記第1照射光の光量は、前記第2照射光の光量よりも小さく、前記搬送機構は、前記増粘用光照射部と前記定着用光照射部との間において、前記記録媒体の搬送の向きを、鉛直に近づくように変更する第1切替部と、前記定着用光照射部より前記搬送方向の下流側において、前記記録媒体の搬送の向きを、水平に近づくように変更する第2切替部と、を有し、前記記録媒体が、前記記録ヘッドと前記定着用光照射部とを結ぶ線分を横切るように、搬送される
と共に、複数の前記記録ヘッドと、単一の前記増粘用光照射部と、を有し、前記搬送方向の最も下流側に配置された前記記録ヘッドより下流側に、前記増粘用光照射部が配置される。
【0010】
本願の第2発明は、第1発明の画像記録装置において、前記インクは、紫外線硬化型のインクであり、前記増粘用光照射部および前記定着用光照射部は、紫外線を含む光を照射する。
【0011】
本願の第3発明は、第1発明または第2発明の画像記録装置において、前記増粘用光照射部は、LED光源を有し、前記LED光源から、前記第1照射光が照射される。
【0012】
本願の第4発明は、第1発明から第3発明までのいずれかの画像記録装置において、前記第1切替部は、前記記録媒体の搬送の向きを、鉛直下向きに変更する。
【0014】
本願の第
5発明は、
第1発明から第4発明までのいずれかの画像記録装置において、複数の前記記録ヘッドのうち、前記搬送方向の最も下流側に配置された記録ヘッドは、黒色インクを吐出する記録ヘッドである。
【0015】
本願の第
6発明は、記録媒体をその長手方向に沿う搬送方向に搬送しつつ、前記記録媒体に画像を記録する画像記録方法であって、a)
記録ヘッドに固定配置されたノズルから、前記記録媒体の表面に光硬化型のインクを吐出する工程と、b)前記工程a)の後に、前記インクを増粘させる第1照射光を、
増粘用光照射部から前記記録媒体に照射する工程と、c)前記工程b)の後に、前記記録媒体の搬送の向きを、鉛直に近づくように変更する工程と、d)前記工程c)の後に、前記インクを前記記録媒体に定着させる第2照射光を、
定着用光照射部から前記記録媒体に照射する工程と、e)前記工程d)の後に、前記記録媒体の搬送の向きを、水平に近づくように変更する工程と、を有し、前記第1照射光の光量は、前記第2照射光の光量よりも小さく、前記記録媒体が、前記記録ヘッドと前記定着用光照射部とを結ぶ線分を横切るように、搬送される
と共に、複数の前記記録ヘッドと、単一の前記増粘用光照射部と、を有し、前記搬送方向の最も下流側に配置された前記記録ヘッドより下流側に、前記増粘用光照射部が配置される。
【発明の効果】
【0016】
本願の第1発明〜第
5発明によれば、第1切替部と第2切替部との間に定着用光照射部を配置することにより、装置のフットプリントを低減できる。また、定着用光照射部から照射される第2照射光は、記録媒体に遮られるため、記録ヘッド側へ届きにくい。したがって、記録ヘッドにおけるインクの不要な硬化を抑制できる。また、第1切替部より搬送方向の上流側において、第1照射光によりインクを増粘させる。このため、インクが未硬化のまま第1切替部を通過することによる印刷品質の低下を抑制できる。
また、増粘用光照射部を複数箇所に配置する場合と比べて、装置のフットプリントをより低減できる。
【0017】
特に、本願の第3発明によれば、LED光源を用いることにより、波長帯域が狭い光を照射できる。また、光の照射に伴う発熱を抑制でき、熱によるインクの変質等の影響を抑えることができる。
【0018】
特に、本願の第4発明によれば、第1切替部と第2切替部との間において、記録媒体を鉛直下向きに搬送することで、装置のフットプリントをより低減できる。
【0020】
特に、本願の第
5発明によれば、黒色インクが吐出された直後に、第1照射光が照射される。このため、記録媒体の表面において、特に印刷品質への影響が大きい黒色インクの拡がりを抑制できる。
【0021】
また、本願の第
6発明によれば、記録媒体の搬送の向きを鉛直に近付けた状態で、記録媒体に第2照射光を照射する。これにより、装置のフットプリントを低減できる。また、工程d)において照射される第2照射光は、記録媒体に遮られるため、記録ヘッド側へ届きにくい。したがって、記録ヘッドにおけるインクの不要な硬化を抑制できる。また、記録媒体の搬送の向きを変更する前に、第1照射光によりインクを増粘させる。このため、インクが未硬化のまま記録媒体の搬送の向きを変更することによる印刷品質の低下を抑制できる。
また、増粘用光照射部を複数箇所に配置する場合と比べて、装置のフットプリントをより低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
<1.画像記録装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る画像記録装置1の構成を示す図である。この画像記録装置1は、帯状の記録媒体である印刷用紙9を搬送しつつ、複数のヘッドユニット21〜24から印刷用紙9にインクを吐出することにより、印刷用紙9にカラー画像を記録するインクジェット方式の印刷装置である。
図1に示すように、画像記録装置1は、搬送機構10、画像記録部20、増粘用光照射部30、定着用光照射部40、および制御部50を備えている。
【0025】
搬送機構10は、印刷用紙9をその長手方向に沿う搬送方向に搬送するための機構である。本実施形態の搬送機構10は、巻き出し部11、複数の搬送ローラ12、および巻き取り部13を有する。複数の搬送ローラ12は、後述する第1切替ローラ61、第2切替ローラ62、およびニップローラ63を含んでいる。印刷用紙9は、巻き出し部11から繰り出され、複数の搬送ローラ12により構成される搬送経路に沿って搬送される。各搬送ローラ12は、水平軸を中心として回転することによって、印刷用紙9を搬送経路の下流側へ案内する。また、搬送後の印刷用紙9は、巻き取り部13へ回収される。
【0026】
図1に示すように、印刷用紙9は、画像記録部20の下方において、複数のヘッドユニット21〜24の配列方向に沿って、略水平に移動する。このとき、印刷用紙9の記録面は、上方(ヘッドユニット21〜24側)に向けられている。また、搬送機構10は、画像記録部20より搬送経路の下流側に、第1切替ローラ61、第2切替ローラ62、およびニップローラ63を有する。
【0027】
ニップローラ63は、印刷用紙9の両面に接触して印刷用紙9を挟持しつつ、一定速度で能動回転する。印刷用紙9の搬送時には、制御部50が、ニップローラ63の回転速度に対して巻き出し部11の回転速度を調節する。これにより、印刷用紙9に張力が与えられる。その結果、搬送中における印刷用紙9の弛みやしわが抑制される。
【0028】
画像記録部20は、搬送機構10により搬送される印刷用紙9に対して、紫外線硬化型のインクを吐出する機構である。本実施形態の画像記録部20は、4つのヘッドユニット21〜24を有する。これらのヘッドユニット21〜24は、カラー画像の色成分となるC(Cyan)、M(Magenta)、Y(Yellow)、K(Black)の各色のインクの液滴を、印刷用紙9の記録面に、それぞれ吐出する。各ヘッドユニット21〜24は、画像記録装置1の枠体に対して、固定的に配置されている。
【0029】
図2は、ヘッドユニット24および増粘用光照射部30の下面図である。
図2に示すように、本実施形態のヘッドユニット24は、2つの記録ヘッド201を有する。また、
図2中に拡大して示したように、記録ヘッド201の下面には、複数のノズル202が規則的に配列されている。他の3つのヘッドユニット21〜23も、同様に、複数のノズル202をもつ2つの記録ヘッド201を有する。印刷時には、各ヘッドユニット21〜24の複数のノズル202から印刷用紙9の記録面へ向けて、各色のインクの液滴が吐出される。これにより、印刷用紙9の記録面にカラー画像が記録される。
【0030】
増粘用光照射部30は、画像記録部20よりも搬送方向の下流側において、印刷用紙9に第1照射光を照射する機構である。
図2に示すように、増粘用光照射部30の下面には、複数のLED(Light Emitting Diode,発光ダイオード)光源31が規則的に配列されている。なお、
図2の例では、複数のLED光源31が、搬送方向および幅方向(搬送方向に直交する水平方向)に二次元的に配列されているが、複数のLED光源31は、幅方向に一列に配列されていてもよい。
【0031】
各LED光源31から照射される第1照射光は、ヘッドユニット21〜24から吐出されるインクの硬化に有効な波長帯域の紫外線を含んでいる。このため、印刷用紙9上のインクに第1照射光が照射されると、インクの粘度が増加する。ただし、増粘用光照射部30から照射される第1照射光の光量は、定着用光照射部40から照射される第2照射光の光量よりも、小さい。このため、印刷用紙9上のインクは、完全には硬化されない。すなわち、第1照射光により、印刷用紙9上の各色のインクは、流動性が低下した半硬化の状態となる。
【0032】
インクが半硬化すると、印刷用紙9上におけるインクの拡がりが抑制される。したがって、増粘用光照射部30より下流側の搬送経路において、インクの拡がりによる印刷品質の低下が生じにくくなる。
【0033】
本実施形態では、画像記録部20の複数のヘッドユニット21〜24のうち、搬送方向の最も下流側に、黒色インクを吐出するヘッドユニット24が配置されている。そして、当該ヘッドユニット24から黒色インクが吐出された直後に、増粘用光照射部30から第1照射光が照射される。このため、印刷用紙9の記録面において、印刷品質への影響が特に大きい黒色インクの拡がりを、効果的に抑制できる。
【0034】
また、本実施形態では、増粘用光照射部30を、ヘッドユニット24に近接して配置しているが、増粘用光照射部30が発する第1照射光の光量自体が小さいため、ヘッドユニット24側への第1照射光の漏れが生じても、ヘッドユニット24への影響はほとんどない。したがって、増粘用光照射部30からの漏れ光によりヘッドユニット24内のインクが硬化し、ノズル202の目詰まりが生じるなどの問題は生じにくい。特に、本実施形態では、増粘用光照射部30の光源として、LED光源31を用いている。LED光源31は、定着用光照射部40に用いられるメタルハライドランプ41と比べて、照射光の波長帯域が狭く、かつ、光の照射に伴う発熱も小さい。このため、近接するヘッドユニット24に対する影響を、より抑えることができる。
【0035】
このように、増粘用光照射部30は、ヘッドユニット24に近接して配置できる。このため、増粘用光照射部30を搭載したことによる画像記録装置1のフットプリント(装置床面積)の増大を抑制できる。
【0036】
図1に戻る。増粘用光照射部30と定着用光照射部40との間には、第1切替部としての第1切替ローラ61が配置されている。第1切替ローラ61は、印刷用紙9の裏面に接触しつつ回転する。これにより、印刷用紙9の搬送の向きが、略水平から鉛直下向きに変更される。
【0037】
ここで、第1切替ローラ61においては、印刷用紙9の搬送の向きが変更される際に、印刷用紙9が大きく湾曲する。このため、仮に、印刷用紙9に付着したインクが未硬化のままだと、インクの拡がりによって、印刷品質が低下する虞がある。しかしながら、本実施形態の画像記録装置1では、第1切替ローラ61を通過する時点で、印刷用紙9上のインクが半硬化の状態となっている。これにより、第1切替ローラ61におけるインクの拡がりが抑制される。
【0038】
また、本実施形態の第1切替ローラ61は、印刷用紙9の記録面ではなく、印刷用紙9の裏面に接触する。このため、第1切替ローラ61の表面は、半硬化状態のインクに接触しない。したがって、第1切替ローラ61における印刷品質の低下が、より抑制される。
【0039】
定着用光照射部40は、第1切替ローラ61よりも搬送方向の下流側、すなわち、第1切替ローラ61の鉛直下側において、印刷用紙9に第2照射光を照射する機構である。
図3は、ヘッドユニット24から定着用光照射部40までの構成を示す図である。
図3に示すように、本実施形態の定着用光照射部40は、メタルハライドランプ41と、リフレクタ42とを有する。メタルハライドランプ41は、印刷用紙9の幅方向に延びる管状の光源である。
【0040】
メタルハライドランプ41から照射される第2照射光は、ヘッドユニット21〜24から吐出されるインクの硬化に有効な波長帯域の紫外線を含んでいる。また、メタルハライドランプ41から照射される第2照射光は、インクを完全に硬化させるために十分な光量を有している。このため、印刷用紙9上のインクに第2照射光が照射されると、インクが硬化されて、印刷用紙9の記録面にインクが定着する。
【0041】
定着用光照射部40は、第1切替ローラ61と第2切替ローラ62との間において、鉛直下向きに搬送される印刷用紙9に向けて、第2照射光を照射する。仮に、画像記録部20と定着用光照射部40との間において、印刷用紙9の搬送の向きを変更しなければ、定着用光照射部40から照射される第2照射光の一部が、画像記録部20に影響を及ぼしやすくなる。その場合、画像記録部20から定着用光照射部40を、大きく引き離して配置する必要が生じる。
【0042】
しかしながら、この画像記録装置1では、画像記録部20と定着用光照射部40との間において、印刷用紙9の搬送の向きを、鉛直下向きに切り替えている。このため、定着用光照射部40からの漏れ光が、画像記録部20へ到達しにくい。したがって、各ヘッドユニット21〜24内のインクが硬化し、ノズル202の目詰まりが生じるなどの問題を抑制できる。このようにすれば、画像記録部20から定着用光照射部40を大きく引き離す必要はなく、画像記録装置1のフットプリントを低減できる。
【0043】
特に、この画像記録装置1では、
図3のように、最も下流側に配置されたヘッドユニット24と定着用光照射部40とを結ぶ線分を横切るように、印刷用紙9が搬送される。より具体的には、ヘッドユニット24の吐出面である下面の任意の点と、定着用光照射部40のメタルハライドランプ41またはリフレクタ42の任意の点とを結ぶ線分(
図3においてクロスハッチングで示した領域に含まれる線分)を横切るように、印刷用紙9が搬送される。このため、メタルハライドランプ41から発せられた第2照射光またはリフレクタ42において反射された第2照射光は、印刷用紙9に遮られて、いずれのヘッドユニット21〜24にも届かない。したがって、ヘッドユニット21〜24におけるインクの不要な硬化を抑制できる。
【0044】
図1に戻る。定着用光照射部40よりも搬送方向の下流側には、第2切替部としての第2切替ローラ62が配置されている。第2切替ローラ62は、印刷用紙9の表面に接触しつつ回転する。これにより、印刷用紙9の搬送の向きが水平に近づくように変更される。第2切替ローラ62を通過した印刷用紙9は、ニップローラ63および複数の搬送ローラ12を経て、巻き取り部13へ回収される。
【0045】
制御部50は、画像記録装置1内の各部を動作制御するための手段である。本実施形態の制御部50は、CPU等の演算処理部51、RAM等のメモリ52、およびハードディスクドライブ等の記憶部53を有するコンピュータにより構成されている。
図1中に破線で示したように、制御部50は、上述した巻き出し部11、巻き取り部13、4つのヘッドユニット21〜24、増粘用光照射部30、定着用光照射部40、およびニップローラ63と、それぞれ電気的に接続されている。制御部50は、記憶部53に記憶されたコンピュータプログラムPをメモリ52に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムPに基づいて、演算処理部51が演算処理を行うことにより、上記の各部を動作制御する。これにより、画像記録装置1における印刷処理が進行する。
【0046】
また、制御部50は、画像記録装置1の外部に設置されたサーバ2と、電気的に接続されている。サーバ2には、印刷対象となる画像データDが保存されている。印刷処理時には、搬送機構10により印刷用紙9が搬送されるとともに、制御部50が、指定された画像データDをサーバ2から読み出し、当該画像データDに基づいて、各ヘッドユニット21〜24から各色のインクを吐出する。その結果、画像データDに対応する画像が、印刷用紙9の記録面に記録される。
【0047】
<2.印刷処理について>
続いて、上記の画像記録装置1における印刷処理について、説明する。この画像記録装置1において印刷処理を行うときには、巻き出し部11から巻き取り部13へ向けて、印刷用紙9が連続的に搬送される。そして、印刷用紙9の長手方向の各部に、インクの吐出や光照射等の諸処理が、順次に行われる。
図4は、印刷用紙9の長手方向の一部分に着目したときに、当該一部分(以下、「着目部分」と称する)が順次に受ける処理の流れを示すフローチャートである。
【0048】
まず、印刷用紙9の着目部分は、巻き出し部11から繰り出され、複数の搬送ローラ12により案内されつつ、画像記録部20の下方へ搬送される(ステップS1)。着目部分が画像記録部20の下方に到達すると、画像記録部20は、各ヘッドユニット21〜24の複数のノズル202から、着目部分の記録面に向けて、各色のインクの液滴を吐出する(ステップS2)。これにより、着目部分の記録面に、カラー画像が形成される。上述の通り、ステップS2において吐出されるインクは、紫外線硬化型のインクである。
【0049】
印刷用紙9の着目部分が画像記録部20を通過すると、次に、増粘用光照射部30が、着目部分の記録面に向けて、第1照射光を照射する(ステップS3)。ここでは、継続的に点灯する複数のLED光源31の下方を、印刷用紙9の着目部分が通過する。これにより、着目部分の記録面に付着したインクの粘度が増加し、インクが半硬化の状態となる。
【0050】
続いて、印刷用紙9の着目部分は、第1切替ローラ61を通過する。これにより、着目部分の搬送の向きが、略水平から鉛直下向きに変更される(ステップS4)。この際、印刷用紙9の着目部分は、大きく湾曲することとなるが、着目部分に付着したインクは、半硬化の状態となっているため、インクの拡がりによる印刷品質の低下は生じにくい。
【0051】
次に、定着用光照射部40が、着目部分の記録面に向けて、第2照射光を照射する(ステップS5)。ここでは、継続的に点灯するメタルハライドランプ41の正面を、印刷用紙9の着目部分が通過する。これにより、着目部分の記録面に付着したインクが硬化して、記録面にインクが定着する。ここで、定着用光照射部40から照射される第2照射光は、印刷用紙9に遮られるため、いずれのヘッドユニット21〜24にも届かない。したがって、ヘッドユニット21〜24におけるインクの不要な硬化が抑制される。
【0052】
続いて、印刷用紙9の着目部分は、第2切替ローラ62を通過する。これにより、着目部分の搬送の向きが、鉛直下向きから水平に近づくように変更される(ステップS6)。この際、着目部分の記録面は、第2切替ローラ62の表面に接触することとなるが、着目部分に付着したインクは、完全に硬化しているため、第2切替ローラ62との接触による印刷品質の低下は生じにくい。
【0053】
その後、印刷用紙9の着目部分は、ニップローラ63および複数の搬送ローラ12により案内されつつ搬送され、巻き取り部13へ回収される(ステップS7)。以上をもって、印刷用紙9の着目部分に対する印刷処理が終了する。
【0054】
<3.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0055】
図5は、一変形例に係るヘッドユニット24および増粘用光照射部30の下面図である。
図5の例では、ヘッドユニット24内の2つの記録ヘッド201の搬送方向の位置に応じて、増粘用光照射部30の複数のLED光源31の搬送方向の位置が設定されている。具体的には、各記録ヘッド201と、その搬送方向下流側に位置するLED光源31との搬送方向の距離Lが、幅方向の位置に拘わらず一定となっている。このようにすれば、各記録ヘッド201からインクが吐出された後、当該インクに第1照射光が照射されるまでの時間を、略一定とすることができる。したがって、印刷用紙9上におけるインクの拡がり方に、ばらつきが生じにくくなる。
【0056】
また、上記の実施形態では、増粘用光照射部30の光源として、複数のLED光源を用いていた。しかしながら、LED光源に代えて、他の光源を用いてもよい。例えば、定着用光照射部40に用いられるメタルハライドランプ41よりも光量の小さいメタルハライドランプを、増粘用光照射部30に用いてもよい。
【0057】
また、上記の実施形態では、画像記録部20から吐出されるインクとして、紫外線硬化型のインクを用いていた。しかしながら、紫外線以外の光(例えば可視光)により硬化する光硬化型のインクを用いてもよい。
【0058】
また、上記の実施形態では、第1切替ローラ61が、印刷用紙9の搬送の向きを鉛直下向きに変更していた。しかしながら、本発明の第1切替部は、記録媒体の搬送の向きを、必ずしも正確に鉛直下向きに変更するものでなくてもよい。すなわち、本発明の第1切替部は、記録媒体の搬送の向きを、鉛直に近づくように変更するものであればよい。
【0059】
また、上記の実施形態では、画像記録部20が4つのヘッドユニット21〜24を有していた。しかしながら、画像記録部20が有するヘッドユニットの数は、1〜3つであってもよく、5つ以上であってもよい。例えば、C,M,Y,Kの各色に加えて、特色のインクを吐出するヘッドユニットが設けられていてもよい。また、上記の実施形態では、各ヘッドユニット21〜24が、2つの記録ヘッド22を有していた。しかしながら、各ヘッドユニットが有する記録ヘッドの数は、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。
【0060】
また、上記の実施形態では、画像記録装置1が単一の増粘用光照射部30を有していた。しかしながら、画像記録装置1は、複数の増粘用光照射部30を有していてもよい。例えば、各ヘッドユニット21〜24の搬送方向の直後に、増粘用光照射部30が設けられていてもよい。そのようにすれば、インクの吐出から半硬化までの時間を、より短縮することができる。したがって、インクの拡がりによる印刷品質の低下を、より抑制できる。
【0061】
ただし、上記の実施形態のように、搬送方向の最も下流側に配置されたヘッドユニット24より下流側に、単一の増粘用光照射部を配置すれば、増粘用光照射部を複数箇所に配置する場合より、画像記録装置1のフットプリントを低減できる。したがって、フットプリントの低減を重視する場合には、上記の実施形態の構造を採ることが好ましい。
【0062】
また、上記の実施形態では、増粘用光照射部30の複数のLED光源31を、一定の光量で継続的に点灯させていた。しかしながら、画像記録装置1の制御部50は、LED光源31の光量を、諸条件に応じて制御してもよい。例えば、印刷用紙9の種類や、使用されるインクの種類ごとに、LED光源31の光量を、最適な光量に変更してもよい。また、画像記録部20からのインクの吐出量が多いときには、LED光源31の光量を増加させ、画像記録部20からのインクの吐出量が少ないときには、LED光源31の光量を低下させるように、LED光源31の光量を制御してもよい。
【0063】
また、上記の画像記録装置1は、被記録媒体としての印刷用紙9に画像を記録するものであった。しかしながら、本発明の画像記録装置は、一般的な紙以外の帯状の記録媒体(例えば、樹脂製のフィルム等)に、画像を記録するものであってもよい。
【0064】
また、搬送機構および画像記録装置の細部の形状については、本願の各図と相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。