(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
細胞のサブセットを、前記細胞のサブセットを特徴付ける標的に特異的な結合ドメインを用いて検出する免疫組織化学(IHC)方法であって、該方法が細胞試料中の前記細胞のサブセットをエクスビボで検出することを含み、細胞試料は前記細胞のサブセットを含むか又は含むと仮定され、前記細胞試料の摘出より前に前記結合ドメインを投与された被験体から得られたものであり、前記結合ドメインは蛍光標識で標識されており、前記検出は直接的免疫組織化学により行われる、方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は本質的には、細胞のサブセットを、前記細胞のサブセットを特徴付けている標的に特異的な結合ドメインを用いて検出する方法であって、該方法が前記細胞のサブセットをエクスビボで検出することを含み、前記結合ドメインが、前記細胞のサブセットの摘出より前に、前記細胞のサブセットを含むか又は含むと仮定される被験体に投与される方法に関する。本発明はまた、ここに定められている方法における、ここに定められている通りの結合ドメインの使用に関する。ここに定められている方法において使用される診断組成物の調製のための、ここに定義されている通りの結合ドメインの使用も考えられる。別の態様では、本発明は、ここに定められている方法において使用されるここに定められている通りの結合ドメインに関する。ここに定められている通りの結合ドメイン、及び前記結合ドメインを被験体に投与するための手段を含んでなるキットであって、場合によってはここに定められている方法を用いて前記結合ドメインを検出するための手段を含んでいてもよいキットも開示されている。別の態様では、本発明は、ここに定められている方法によって同定される前記結合ドメインに有利に応答する傾向である患者の治療のための薬学的組成物の調製のための、結合ドメイン、好ましくは治療的効果のある抗体、例えばアレムツズマブ、アポリズマブ、セツキシマブ、エプラツズマブ、ガリキシマブ、ゲムツズマブ、イピリムマブ、ラベツズマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、トラスツズマブ、ニモツズマブ、マパツムマブ、マツズマブ、rhMab ICR62、rhMab B-Ly1及びペルツズマブ等(その組合せ含む)の使用に関する。
【0002】
モノクローナル抗体によって腫瘍関連表面抗原を標的にすることは、異なる悪性腫瘍の治療に対する成功法である。しかしながら、任意抗体による治療的介入より前に、関連抗原の発現が確認されなければならない。これはしばしば、外植腫瘍組織のホルマリン固定及びパラフィン包埋手順後に、一般的な免疫組織化学(IHC)又はin situハイブリダイゼーションによって成される。治療抗体による処置は、関連する腫瘍関連標的抗原が確認された場合にのみ正当化される。放射標識抗体に基づく体内分布法も同様に検討されている(Decker et al., Nucl. Med. And Biol., 35 (2008),pp. 599-604)。しかしながら、これらの方法は、生体及び/又は外植臓器内の抗体の体内分布に対して幾らかの洞察を与えるだけである。
【0003】
免疫組織化学(IHC)は、特異的試薬として標識抗体の使用による、蛍光色素、酵素、放射性要素又はコロイド金等のマーカーによって可視化される抗原-抗体相互作用を通した、組織切片における抗原の局在化である。免疫組織化学は一般的に次の工程から成る:a)一次抗体が特異抗原に結合する;b)抗体-抗原複合体が二次の標識された抗体によって結合される;c)標識、従って抗原(存在すれば)が、抗体-抗原結合の部位で検出される。二次抗体は一般的に、そうでなければ十分な検出に低すぎうる検出シグナルを増強するために用いられる。
【0004】
Albert H. Coons及び彼の同僚(Coons et al.1941, 1955; Coons and Kaplan 1950)が初めて、蛍光色素によって抗体を標識し、組織切片において抗原を同定するためにそれを使用した。免疫組織化学技術の拡大及び発展により、酵素標識、幾つか挙げるとペルオキシダーゼ、及びアルカリホスファターゼ、並びにコロイド金など、が導入された。免疫組織化学染色は、癌性腫瘍に見られるものなどの異常細胞の診断において広く使用されている。他の特異的分子マーカーは、増殖又は細胞死等の特定の細胞事象の特徴である。IHCはまた、バイオマーカーの分布及び局在、及び生体組織の異なる部分において異なって発現されるタンパク質を理解するために、基礎研究において広く使用されている。免疫組織化学は特異的抗原-抗体反応を含むため、限られた数のタンパク質、酵素及び組織構造のみを同定する従来使用された特別な酵素染色技術に対し、明らかな利点を有する。従って、免疫組織化学は極めて重要な技術となり、多くの医学研究所並びに臨床診断において広く使用されてきた。
【0005】
WO2008/033495は、EGF受容体に特異的な特定の抗体クローンが、皮膚疾患、特に乾癬の検出及び治療に有用でありうるという驚くべき発見について報告している。前記抗体はまた、インビボイメージング方法及び「古典的」IHCベース方法に対しても提案されている。インビボイメージング方法が、検出より前に抗体の投与を必要とする一方で(前記文献の請求項26及び33並びに段落[0041]を参照)、WO2008/033495に開示されているIHC方法は(前記IHC方法がインビボイメージング方法の代わりに使用される)、問題の組織の摘出後にのみ、標識抗体を標的細胞と接触させる(特に段落[0044]、[0102]及び[0103]並びに実施例1を参照)。WO2008/033495は、それぞれの組織サンプルの摘出より前に抗体を投与すること、及び結合した抗体をIHC方法によって検出することを開示も示唆もしない。
【0006】
組織調製は、免疫組織化学のコーナーストーンである。組織構造及び細胞形態の保護を確実にするために、迅速かつ適切な固定化が必須である。しかしながら、不適切な又は長期に渡る固定化は、抗原性標的が固定化手順の過程において変化又は破壊さえされるため、抗体結合能を著しく減少しうる。これは、減少されたシグナル強度、シグナルの完全な欠損、又は更に悪いことには、偽陽性及び/又は偽陰性シグナルをもたらし得る標的の変更を導き得る。IHC結果の信頼性は、従って、IHC-固定化中の標的のありうる変更に依存する。また、他の要因がIHC結果の信頼性に影響しうる。例えば固定化組織をパラフィンに包埋することが標準的であるが、しかしながらそれは、IHC測定に用いられる結合ドメイン(例えば抗体)が「パラフィン透過性」であること、すなわちその標的をパラフィン設定において見つけることが可能でなければならないことを前提とする。IHC研究に適用可能な抗体は、このような特定基準(例えばパラフィン透過性)を満たすように最適化されており、従って、治療抗体と異なる結合特性を有しうる。治療抗体は、一般的に、パラフィン反応性ではなく、従って、治療的に効果のある抗体の他に、IHCでの標的の検出に使用できる抗体の開発が必要である。「診断」及び「治療」抗体間のこの差異は、しかしながら、問題となる傾向がある。例えば、早期及び進行HER2-陽性乳癌の患者におけるトラスツズマブの印象的な臨床的有用性にも関わらず、全ての治療された患者が同様な程度の利点を得ない。分子標的治療であるため、トラスツズマブの臨床効果は、治療の候補患者の腫瘍標本におけるHER2ステータスの正確な評価に依存する。現在、臨床設定におけるHER2ステータス評価のための2つの最も標準化された方法は、免疫組織化学(IHC)及びFISHである。上述方法を使用したHER2-陽性腫瘍を有する患者の信頼できる選択にもかかわらず、進行性乳癌を有する患者における単剤トラスツズマブの奏効率(RR)は19%〜34%のみの範囲である。これは、HER2過剰発現を検出するために最も広く使用されているIHC方法は、トラスツズマブの特異的標的部位の存在を実際には示すことができないからである。
【0007】
従って、当分野において、所望の標的(好ましくは細胞標的)及び/又はこのような標的によって特徴付けられる細胞のサブセットのより正確で及び/又はより高感度な検出を可能にする改善された方法に対するニーズがある。
【0008】
従って、本発明の基礎をなす技術的問題は、エクスビボでの細胞の検出のための診断的方法を提供することである。
【0009】
本発明はこのニーズに取り組み、従って技術的問題に対する解決法として、細胞のサブセットを、前記細胞のサブセットを特徴付けている標的に特異的な結合ドメインを用いて検出する方法であって、該方法は、被験体からの組織サンプルにおける前記細胞のサブセットをエクスビボで検出することを含み、前記被験体は、前記組織サンプルの摘出より前に、前記結合ドメインを受けたものである方法を提供する。
【0010】
これまで、標的発現の検証は一般的に治療抗体ではなく、IHCに適した抗体で実施されている。しかしながら、このアプローチは、標的確認の誤解釈を導きうる欠点を有する。更に、一般的なホルマリン固定は不利益を有する(Chu W-S et al.Modern Pathol 2005; 18:850-863)。固定化は、IHC抗体の結合を減少(又は増強)するように表面抗原を修飾し得、これは臨床状況を反映しない。更に、ホルマリン固定パラフィン包埋組織スライドは、IHC抗体による最適染色を得るために特殊な方法において処理されなければならない(例えば、加熱による抗原回復又は特殊酵素を用いたインキュベーション)。最後に、腫瘍関連表面抗原は、腫瘍増殖及び転移拡散間中に修飾(過剰発現、内部移行又は脱落(shedded))され得、これは、治療を変更する(異なる結合ドメインを使用する)か、又は与えられた治療が依然として適切か否かを決定することができるように可能な限り頻繁に、与えられた治療の実際の効果を評価する必要性を示す。従って、治療が開始された時点でインビボにおいて、標的発現の検証及び治療抗体の結合の実証を同時に可能にする技術は望ましく、層別化工程を最適にするだろう。
【0011】
我々は、両方の問題に対処する方法を開発した。治療抗体は有機フルオロフォアで標識され、ヒト異種移植に静脈内注入される。この報告では、我々は、標的発現及び腫瘍組織への結合を検証するために、近赤外蛍光(NIRF)の有用性を示す。マウス(Her2陽性腫瘍を保有する)における50マイクログラムのCy5標識ハーセプチン又はオムニターグの単回静脈内注入の後、強い蛍光シグナルが24〜48時間後、腫瘍領域において検出可能である。外植腫瘍組織のその後の分析は、Her2特異的抗体は腫瘍細胞にのみ結合するが、マウス組織には結合しないことを示した。対照的に、ヒトIgEに対するコントロール抗体ゾレアでは、蛍光シグナルは生成されない(
図1−3)。このアプローチは、i)関連標的はその「天然環境」にあり、それは結合ドメインによって結合される;ii)原発腫瘍増殖及び転移拡散中の標的発現の修飾が検出できるiii)腫瘍組織の外植及び固定化が、結合ドメイン(抗体)が関連抗原に結合した後に実施されるiv)治療抗体及びIHC抗体の結合特性における差異が廃れることから、古典的IHCによる標的抗原の一般的な検出に優る。
【0012】
本発明の更なる実施態様がここに特徴づけられまた記述され、請求の範囲にも反映されている。
【0013】
ここで使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他を示さない限り複数系を含む。従って、例えば、「試薬(a reagent)」への言及は一又は複数のこのような異なる試薬を含み、「方法(the method)」への言及は、ここに記載されている方法のために修飾又は置換されうる当業者にしられている均等な工程及び方法への言及を含む。別段の定めがある場合を除き、一連の要素に先行する「少なくとも」なる用語は、該一連の全ての要素を指すことが理解される。当業者はルーチン的な実験以下を使用して、ここに記載されている本発明の特定の実施態様に均等な多くを認識又は確認できるだろう。このような均等なものは本発明に包含することを意図する。この明細書及び続く請求の範囲を通して、別段の定めがある場合を除き、「含む(comprise)」、及び「含む(comprises)」及び「含んでなる(comprising)」等のバリエーションは、記載の整数又は工程又は整数又は工程の群の包含を意味するが、何れかの他の整数又は工程又は整数又は工程の群の排除を意味しないことが理解されるだろう。
【0014】
幾つかの文献が、この明細書の文中に引用されている。ここに引用されている各々の文献(全ての特許、特許出願、化学文献、製造者の仕様書、指示等を含む)は、上記又は下記に関わらず、出典明記によりそららの全体をここに援用する。ここの何も、本発明が、先行発明によるこのような開示に先行する権利がないという承認として解釈されるべきではない。
【0015】
第一の態様では、本発明は、細胞のサブセットを、前記細胞のサブセットを特徴付けている標的に特異的な結合ドメインを用いて検出する方法であって、該方法が前記細胞のサブセットを前記結合ドメインを用いてエクスビボで検出することを含み、前記結合ドメインが、前記細胞のサブセットの摘出より前に、前記細胞のサブセットを含むか又は含むと仮定される被験体に投与される方法に関する。発明の方法は、好ましくはIHC-方法に基づく。
【0016】
本発明はまた、細胞のサブセットを、前記細胞のサブセットを特徴付けている標的に特異的な結合ドメインを用いて検出する方法であって、該方法が前記細胞のサブセットを前記結合ドメインを用いてエクスビボで検出することを含み、前記細胞のサブセットが、(a)前記細胞のサブセットを含むか又は含むと仮定され(b)前記結合ドメインで前処置された被験体に由来する方法に関する。
【0017】
本発明の方法は、好ましくはインビトロ(又はエクスビボ)方法である。
【0018】
更なる態様では、本発明は、細胞のサブセットを特徴付けている標的を、前記標的に特異的な結合ドメインを用いて検出する方法であって、該方法が前記標的をエクスビボで検出することを含み、前記結合ドメインが、前記細胞のサブセットの摘出より前に、前記細胞のサブセット及び/又は標的を含むか又は含むと仮定される被験体に投与される方法に関する。
【0019】
本発明はまた、細胞のサブセットを特徴付けている標的を、前記標的に特異的な結合ドメインを用いて検出する方法であって、該方法が前記標的をエクスビボで検出することを含み、前記細胞のサブセットが、(a)前記細胞のサブセットを含むか又は含むと仮定され(b)前記結合ドメインで前処置された被験体に由来する方法に関する。
【0020】
本発明の方法の好ましい実施態様では、前記細胞のサブセットは、組織サンプル内に含まれている。
【0021】
結合ドメインは、標的へのそれの結合を可能にする十分な量及び時間において被験体に投与されることが理解されるだろう。
【0022】
本発明は従って、標的に特異的な結合ドメインがその天然環境において、特に、標的によって特徴付けられている細胞のサブセットが被験体から摘出され、IHC固定化手順で処理される前に標的に結合することを特徴IHC方法に関する。標的の「天然環境」とは従って、例えばインビボの(被験体内の)標的又は細胞培養環境における細胞株である。「IHC固定化手順」なる用語は、組織構造及び細胞形態の保護を確実にするために実施されうる全てのよく知られた工程及び方法を含む。このようなIHC固定化手順はまた、ここに例示されている。
【0023】
「IHC方法」とは、特異的試薬として標識結合ドメインの使用による、前記標識によって可視化される標的-結合ドメイン相互作用を通した、組織切片における標的(例えば抗原)の局在化を意味する。前記組織切片は、組織サンプルの薄(約2−40μm)切片、又は組織サンプルがそれほど厚くなく透過可能である場合には、全体が使用されることが考えられる。前記組織サンプルは、好ましくは例えばパラフィンに包埋される。
【0024】
本発明は従って、更なる実施態様では、方法、好ましくはIHC方法であって、細胞のサブセットに特異的な標的によって特徴付けられている細胞のサブセットを検出する工程を含んでなり、標的が、前記標的がその標的に特異的な結合ドメインによって結合されることを特徴とし、結合ドメインが、被験体からの細胞のサブセット(又は前記細胞のサブセットを含んでなる組織サンプル)の摘出より前に前記標的に結合されている方法に関する。
【0025】
別の実施態様では、本発明は、方法、好ましくはIHC方法であって、細胞のサブセットに特異的な標的を検出する工程を含んでなり、標的が、前記標的がその標的に特異的な結合ドメインによって結合されることを特徴とし、結合ドメインが、被験体からの細胞のサブセット(又は前記細胞のサブセットを含んでなる組織サンプル)の摘出より前に前記標的に結合されている方法に関する。
【0026】
エクスビボで行われる「検出」は、標準的検出技術によって実施され、それは当業者に良く知られ、限定するものではないが、場合によってはスライド走査を含む、蛍光ベース顕微鏡法、好ましくは近赤外ベース顕微鏡法等の任意の種類の適切なIHC検出技術を含む。前記スライド走査は、その後の3D再構成に使用されうる。
【0027】
「結合ドメイン」なる用語は、本発明に関連して、任意の標的に特異的に結合/干渉するポリペプチドのドメインを特徴付ける。好ましくは、前記結合ドメインは、特定の抗原又は腫瘍標的抗原、又は特定の抗原グループ、例えば異なる種における同一な抗原又は腫瘍標的抗原に特異的に結合/干渉することができる。前記結合/干渉は、「標的の特異的認識」を定めるとも理解される。「結合ドメイン」なる用語は具体的に、全ての種類のスカフォールド(それらの幾つかはここに更に特徴付けられている)を含み、スカフォールドは少なくとも一つの抗原又はエピトープ相互作用部位によって特徴付けられる。抗原又はエピトープ相互作用部位は、抗原又はエピトープ(すなわち、発明の標的)を特異的に認識する抗原/エピトープ特異的結合実体によって特徴付けられる。このような抗原又はエピトープ結合部位は、好ましくは抗体/免疫グロブリン-ドメインベースである。
【0028】
「標的を特異的に認識する」又は「標的に特異的」なる用語は、本発明に従い、結合ドメイン、例えば抗体が、ここに定められている通りの標的と特異的に相互作用及び/又は結合できることを意味する。ここで使用される場合、「結合」なる用語は、標的及び結合ドメイン間の相互作用との関連において、結合ドメインが、一般的なタンパク質との会合(すなわち、非特異的結合)と比較して、標的と統計的に有意な度合いで会合する(例えば、相互作用する又は複合体を形成する)ことを意味する。このように、「結合ドメイン」なる用語はまた、標的と統計的に有意な会合又は結合を有するドメインを指すことが理解される。
【0029】
抗原-相互作用-部位の、その特異的抗原との特異的相互作用は、抗原への前記部位の単純結合となりうる。更に、結合ドメイン/抗原-相互作用-部位の、その特異的抗原との特異的相互作用はあるいは、例えば抗原のコンホメーションの変化、抗原のオリゴマー形成等の誘発に起因して、シグナルの開始をもたらしうる。本発明の「結合ドメイン」は、限定するものではないが、抗体、ドメイン抗体(dAb)、リポカリン、アフィボディ、アビマー、ペプチドアプタマー、マイクロボディ等を含む。
【0030】
本発明に従う結合ドメインの好ましい例は、抗体又はその抗原結合断片、より好ましくはモノクローナル抗体又はその抗原結合断片、更により好ましくは治療用抗体又はその抗原結合断片である。前記抗体又はその抗原結合断片は、最も好ましい実施態様では、標識される。二重特異性又は多量体抗体フォーマットも考えられる。
【0031】
結合ドメイン(例えば抗体)は、細胞のサブセット及び/又は前記細胞のサブセットを含んでなる前記組織サンプルが摘出される前に、また検出が実行される前に、すなわち検出(固定化を含む)より前に、また結果的に前記細胞のサブセット及び/又は前記細胞のサブセットを含んでなる前記組織サンプルの摘出より前に、被験体に投与される。「より前に」とは、結合ドメインの実際の投与と細胞のサブセット及び/又は組織サンプルの実際の摘出との間のタイムフレームが、環境に従い、結合ドメインがその標的に結合するのに十分な時間を有することを更に意味する。前記期間は、標的、結合ドメイン、結合ドメインの結合特性(標的に対する親和性又は結合ドメインのアビディティー)、被験体における結合ドメインの半減期、結合ドメインの血液クリアランス(静脈内投与されるとする)等に依存する。技術者は、しかしながら、標的に対する結合ドメインの特異的結合を可能にするのに十分な期間を判定することができる。結合ドメインの量、投与の経路等についても同じことが言える。
【0032】
二次結合ドメインが、第一結合ドメイン(一次結合ドメイン)を検出するために使用されるとして、第一結合ドメインのみが検出より前に投与されるか、又は両方、すなわち一次及び二次結合ドメインが検出より前に、また結果的に、前記細胞のサブセット及び/又は前記細胞のサブセットを含んでなる前記組織サンプルの摘出より前に前述のように投与(同時に、又は逐次に)されることがまた考えられる。一次及び二次結合ドメインは、ここにおいて以下により詳細に説明する。
【0033】
一次結合ドメインが、検出より前に、また結果として細胞のサブセット及び/又は前記細胞のサブセットを含んでなる前記組織サンプルの摘出より前に被験体に投与されること、及びその二次結合ドメイン(使用されるならば)が、前記細胞のサブセット及び/又は前記細胞のサブセットを含んでなる前記組織サンプルの摘出の後に使用されることが好ましい
【0034】
第一結合ドメインを検出するために二次結合ドメインではなく一次結合ドメインのみが使用されることがより好ましい。
【0035】
本発明の被験体は、結合ドメインが前記細胞のサブセット/組織サンプルの摘出より前に投与される被験体である。あるいは、本発明の被験体は、前記組織サンプル/細胞のサブセットの摘出より前に、発明の結合ドメインを受けた被験体である。発明の被験体は、ここに定められている結合ドメインを、組織サンプル/細胞のサブセットの摘出より前に既に有していることが考えられる。発明の被験体は、前記細胞のサブセット及び/又は標的を有しているか又は有していると仮定される。「含むと仮定される」とは、細胞のサブセット及び/又は標的が存在するか、非存在か、過剰発現か又は低発現かを診断することを意図する。従って、興味細胞のサブセット及び/又は標的が存在するか、非存在か、過剰発現か又は低発現かを事前に(すなわち、実際の検出が行われる前に)知っていることは必ずしも必要ではない。本発明の被験体が、本発明の結合ドメインを含んでなる被験体であることが更に考えられる。発明の組織サンプル及び/又は細胞のサブセットは、発明の被験体から得られることが理解されるだろう。
【0036】
本発明は従って、細胞のサブセットを、前記細胞のサブセットを特徴付けている標的に特異的な結合ドメインを用いて検出するための免疫組織化学(IHC)方法であって、該方法が前記細胞のサブセットをエクスビボで検出することを含み、前記細胞のサブセット(又はここに記載の組織サンプル)が、前記組織サンプル/細胞のサブセットの摘出より前に発明の結合ドメインを受けた被験体から得られる方法に関する。
【0037】
投与の経路は環境に依存し、経口投与を含むが、投与は好ましくは非経口であり、例えば静脈内、筋肉内、腹腔内、腫瘍内等である。静脈内投与がより好ましい。非経口投与の調製は、無菌水性又は非水性溶液、懸濁液及びエマルションを含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油、及び注入可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体は水、アルコール/水性溶液、エマルション又は懸濁液を含み、生理食塩水及び緩衝媒体を含む。非経口ビヒクルは、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル、又は固定油を含む。静脈内ビヒクルは、液体及び栄養補充剤、電解質補充剤(例えばリンゲルデキストロースに基づくもの)、及び同様なものを含む。保存剤及び他の添加物も存在し得、例えば、抗菌、抗酸化、キレート化剤、及び不活性ガス及び同様なものである。
【0038】
結合ドメインは、細胞のサブセットを特徴付けている標的に特異的であることが考えられる。「細胞のサブセット」なる用語は、少なくとも一つ、すなわち1、2、3、4、5、6、7、又はそれ以上の標的によって特徴付け及び/又は同定される興味の細胞であって、該標的は、この細胞のサブセットを他の細胞と区別するのを助ける。前記標的は、細胞のサブセットに特異的であるか、又は特異的であると仮定される。
【0039】
標的は、前記細胞のサブセット上か又は内に特異的に存在するか(発現)、前記細胞のサブセット上/内において特異的に上方制御されるか(過剰発現)、前記細胞のサブセット上/内において特異的に下方制御されるか(低発現)、又は推定細胞のサブセットに特異的に不在でありうる。従って、標的の存在又は不在だけが細胞のサブセットを特徴付けうるだけでなく、標的の発現レベルにおける変更もまた同様である(例えば、経時の;刺激又はインヒビターに対する応答性;比較可能なコントロール細胞の正常/天然状態と比較して、ここで「比較可能なコントロール細胞の正常/天然状態」とは、細胞のサブセットを形成している細胞と好ましくは同じ種類であるが(例えば双方が上皮細胞)、異なる供給源から得られる/得られたのコントロール細胞を意味する)ことが理解されるだろう。「異なる供給源」は、例えば健常な被験体から得られる細胞/組織サンプル、又は異なるが、同じ被験体の明らかに健常な部分から得られる細胞/組織サンプルを含み、前記異なる部分は、前記細胞のサブセットによって特徴付けられる疾患の関連症状がないと考えられる。
【0040】
また、細胞のサブセットを、例えば少なくとも一つの標的が特異的に存在するが、他は存在しない等、上述の条件の混合によって定めることも考えられる。
【0041】
「興味の細胞」は、どの細胞が対象でありそうでないか決定する、分析の意図、従って選択した標的(一又は複数)に依存することを意味する。例えば、特定の腫瘍は腫瘍マーカー、例えばβ-HCG、CA15-3、CA19-9、CA72-4、CFA、MUC-1、MAGE、p53、ETA、CA-125、CEA、AFP、PSA、PSMA、4つの近縁の受容体型チロシンキナーゼ:EGFR(ErbB-1)、HER2/c-neu(ErbB-2)、Her3(ErbB-3)及びHer4(ErbB-4)のサブファミリーであるErbB受容体ファミリー等を過剰発現することがよく知られており、すなわち、「細胞のサブセット」は、一又は複数のこれらの腫瘍マーカーを発現/過剰発現する細胞(おそらくは腫瘍細胞)を含みうる。同様に、言及した腫瘍マーカーの一又は全てを発現しない 細胞のサブセットを同定することが可能であり、分析の意図に依存する。
【0042】
細胞のサブセットを形成する細胞は、動物細胞、寄生体の細胞、例えばワーム、真菌細胞、細菌、ウィルス、又は原生動物でありうる。
【0043】
「動物細胞」なる用語は、例えば、ここに後で定められている「被験体」の細胞を含む。腫瘍細胞が好ましい。このように、好ましい実施態様では、前記細胞のサブセットは、腫瘍細胞(一又は複数)から成るか又は腫瘍細胞(一又は複数)を含む。
【0044】
「腫瘍」又は「腫瘍細胞」なる用語は、ここで使用される場合、上方制御された細胞増殖によって典型的には特徴付けられる、哺乳類における生理的状態を指すか又は述べる。腫瘍の例は、限定するものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫(髄芽細胞腫及び網膜芽細胞腫を含む)、肉腫(脂肪肉腫及び滑膜細胞肉腫を含む)、神経内分泌腫瘍(カルチノイド腫瘍、ガストリノーマ、及び膵島細胞癌を含む)、中皮腫、シュワン腫(聴神経腫を含む)、髄膜腫、腺癌、及びメラノーマを含む。「腫瘍細胞」は更に「固形腫瘍」を含み、胃腸癌、膵臓癌、グリオブラストーマ、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、ヘパトーマ、乳癌、結腸癌、直腸癌、 結腸直腸癌、 子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓(kidney又はrenal)癌、前立腺癌 、外陰癌、甲状腺癌、肝細胞癌、肛門癌、陰茎癌、精巣癌、食道癌、胆道の腫瘍、並びに頭頸部癌の群から選択される腫瘍を指し、乳癌が好ましい。
【0045】
細胞株も考えられる。これらの細胞株は、「単離された形態」において使用されうる。このような細胞株は限定されるものではなく、すなわち、本発明の意味において標的を発現する全ての考えられる細胞が考えられる。細胞株は、同種性又は異種性でありうる。好ましくは、前記細胞株は腫瘍細胞に由来する。
【0046】
「原虫」又は寄生原虫なる用語は、例えば赤痢アメーバ、又はアピコンプレックス門に属する種(特にAdeleorina、Haemosporida及び Eimeriorinaを含む血液由来亜目を含み、プラスモディウム属の種が好ましい)、及び/又は内部寄生虫を含む。
【0047】
真菌なる用語は、Aspergillus、Candida、Cryptococcus、Histoplasma、Blastomyces、Paracoccoides、Mucor、Curvularia、Fusarium等の種を含み、菌類胞子を含む。
【0048】
「細菌」なる用語は、インターライク(interlike)に増殖する種を含み、例えばEscherichia、Salmonella、Shigella、Klebsiella、Vibrio、Pasteurella、Borrelia、Leptospira、Campylobacter、Clostridium、Corynebacterium、Yersinia、Treponema、Rickettsia、、Chlamydia、Mycoplasma、Coxiella、Neisseria、Listeria、Haemophilus、Helicobacter、Legionella、Pseudomonas、Bordetella、Brucella、Staphylococcus、Streptococcus、Enterococcus、Bacillus、Mycobacterium、Nocardia等の種である。
【0049】
「ウィルス」なる用語は、属Picornaviridae、Caliciviridae、Reoviridae、Togaviridae、Flaviviridae、Orthomyxoviridae、Paramyxoviridae、Rhabdoviridae、Coronaviridae、Bunyaviridae、Arenaviridae、Rteroviridae、Parvoviridae、Papovaviridae、Adenoviridae、Herpesviridae、Poxviridae、HAV、HBV、HCV、HIV、HTLV、インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルスのウィルスを含み、全ての既知のサブタイプ及びバリエーションを含み、HBV、HCV及びHIVが好ましい。
【0050】
このように定めた細胞のサブセットはそれ自体で同種性である必要はなく、すなわち、異なる細胞タイプ(異種性細胞)がグループ化されること考えられ、例えば全ての異なる細胞が、これらの細胞を特徴づけるか又は特徴づけると仮定される所望の標的を発現するためグループ化され−例えば腫瘍マーカーを発現している細胞又はサイトカイン又はホルモン受容体の様な受容体を発現している細胞である。しかしながら、細胞のサブセットは同種性、すなわち、一つの同じ細胞タイプ(例えば上皮細胞、線維芽細胞等)から主に成ることも考えられる。腫瘍は通常は、該腫瘍に似た細胞のタイプによって分類され、従って、腫瘍細胞はしばしば同種性である。同種性腫瘍の一般的な分類の例は:癌腫(上皮細胞由来の悪性腫瘍であり、乳房、前立腺、肺及び結腸癌の一般形態を含む);肉腫(結合組織又は間葉系細胞由来の悪性腫瘍);リンパ腫及び白血病(造血(血液形成)細胞由来の悪性腫瘍);胚細胞腫瘍(全能細胞由来の腫瘍−成人では精巣及び卵巣に最もよく見られる;胎児、乳児、及び幼児では正中、特に尾骨の先端で最もよく見られる);芽細胞腫瘍又はブラストーマ(未成熟又は胚組織に似た腫瘍(通常は悪性)を含む。これらの腫瘍の多くは小児に最も一般的である。言及したこれらの全ての腫瘍は、細胞のサブセットをそれぞれ形成うる。同様に、言及した細胞においてより限定した腫瘍細胞のサブセットを定めることも可能であり、例えば、少なくとも一つの標的、例えばErbB受容体ファミリーの受容体、を発現する、過剰発現する及び/又は低発現するそれらの腫瘍細胞である。細胞のサブセットは、例えば、ErbB受容体ファミリーの受容体、例えばHer2/neu受容体を過剰発現する腫瘍細胞である。
【0051】
前記細胞のサブセットは組織サンプルに含まれるか、又はそれ自体が組織サンプルである(例えば、腫瘍由来の腫瘍細胞、細胞培養物において増殖された細胞株、単離され好ましくは所望の細胞タイプに濃縮するために精製された初代細胞)。例えば腫瘍細胞及び/又は(微小)転移はしばしば、健康な、すなわち非腫瘍形成組織によって囲まれ、すなわち腫瘍細胞は次いで健康組織内で細胞のサブセットを形成しうる。組織サンプルは従って、健康細胞のサブセット及び腫瘍形成細胞のサブセットを含みうる。前記腫瘍細胞のサブセット内において、更なる腫瘍細胞のサブセット、例えばHER2/neuを発現/過剰発現する腫瘍細胞を定めることが可能でありうる。また、例えばウィルス又は他の病原性種(細菌、原生動物等)が、組織サンプルに含まれることも考えられる。このような細菌はこの組織サンプル内に細胞のサブセットを形成し得、又は例えば細胞内細菌を有する細胞が組織サンプル内に細胞のサブセットを形成しうる。前述したように、組織サンプルは、全て細胞のサブセットから成ることも考えられる。「組織」、「組織サンプル」、「組織切片」等の用語は互換可能に使用されることが理解されるだろう。更に、本発明の方法は、細胞のサブセット(組織サンプルに含まれていてもよい)を用いて実施されうることも考えられる。
【0052】
組織サンプルは生検、例えば針生検、外科生検、骨髄生検等によって得られうる。
【0053】
「標的」又は「前記細胞のサブセットを特徴付けている標的」なる用語は、結合ドメインが結合し、所望の細胞のサブセットに特異的であるか又は特異的であると仮定される全ての構造/抗原/エピトープを含む。「特異的」とは、この標的が前記細胞のサブセットを特徴付けていることを意味し、すなわち、それはこれらの細胞上(内)に主に存在又は主に非存在するか、又はこれらの細胞の上又は内に過剰-又は低-発現される。「主に」とは従って、生体システムでは、所望の細胞のサブセットが時間にわたって不変なままである状況を得ることがほぼ不可能であるという事実を反映する。標的は、生物学的状態、例えば疾病又は疾患並びに病原体の存在と関連しうる。標的が特定の生物学的状態「と関連している」場合、標的の存在又は非存在、又は所定量の標的の存在又は非存在は生物学的状態を識別できる。
【0054】
「標的」とは、本発明との関連においては、特に、タンパク質、ペプチド、酵素、核酸、多糖、脂質、受容体、細胞標的、及び/又は腫瘍抗原又はその存在(定性的)及び/又はその量(定量的)に興味があり細胞のサブセットを特徴付けている任意の他の種類の構造/抗原/エピトープを含む。好ましくは、前記標的(その存在、非存在又は量)は、特定の疾患、好ましくは癌に対して予後的価値を有する。
【0055】
「細胞標的」は、全ての種類のエピトープ/抗原/構造を含み、好ましくは細胞表面上にあり、細胞のサブセットを特徴づけ、例えばCAM、例えばNCAM、ICAM-1、VCAM-1、PECAM-1、L1、CHL1、MAG、インテグリン、例えばαvβ3及びαvβ5インテグリン、セレクチン、CD抗原、例えばCD1d、例えば樹状細胞、腸上皮細胞、B細胞サブセット、NKT細胞サブセットを標的にするのに使用されうる;CD11a、b、c、d;CD14及びCD16/18、例えばマクロファージを標的にするのに使用されうる;CD23、例えばIgM又はIgDを発現している活性化成熟B細胞(特にマントル細胞)、活性化単球/マクロファージ、T細胞サブセット、血小板、好酸球、ランゲルハンス細胞、濾胞樹状細胞、又は腸上皮を標的にするのに使用されうる;CD54(ICAM-1としても知られる)、例えばB及びT細胞及びB細胞前駆体、単球、破骨細胞、内皮細胞、及び様々な上皮細胞を標的にするのに使用されうる;CD57、例えばNKサブセットの細胞、T細胞サブセット、神経外胚葉組織、網膜、脳、前立腺、腎近位尿細管を標的にするのに使用されうる;CD64(FcガンマRIとも呼ばれる)、マクロファージ/単球、活性化顆粒球、樹状細胞又は早期骨髄系細胞を標的にするのに使用されうる;CD91(低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)としても知られる;α2マクログロブリン受容体とも呼ばれる)、線維芽細胞、樹状細胞、マクロファージ、肝臓、脳、又は肺組織を標的にするのに使用されうる、並びにCD-20、CD-45等である。更に、該用語は抗CD抗体に、異なる起源(乳房、結腸、肺、前立腺、卵巣、肝臓及び膵臓)の癌幹細胞によって発現される抗原に、分子性危険シグナル、TLR、細菌毒素、例えばWO2006/114308に記載の神経細胞に対する「trapo」又はDEC-205(典型的には樹状細胞に提示される)に関する。更に、該用語は、例えば脳、腎臓、肺、皮膚、又は心臓などの特定の臓器又は組織に特異的でありうる血管ホーミングペプチドに関する。より好ましくは、該用語は、Arap, W. et al. Proc. Natl Acad Sci. U.S.A., 99:1527-1531 (2002); Rajotte, D. et al., J. Clin Invest., 102:430-437 (1998); Pasqualini, R., and Ruoslahti, E. (2002) Nat. Rev. Cancer 2:83; Rajotte, D. and Ruoshlati, E., J. Biol. Chem. 274:11593-11598 (1999); Essler, M., and Ruoshlati, E., Proc. Natl Acad. Sci. U.S.A., 99:2252-2257 (2002)に記載されているようなペプチドに関する。
【0056】
「受容体-分子」又は「受容体」なる用語は、リガンドに結合し典型的にはシグナルを伝達する細胞膜上又は細胞質又は細胞核内のタンパク質に関し、例えば代謝型受容体、Gタンパク質共役型受容体、ムスカリン性アセチルコリン受容体、アデノシン受容体、アドレノセプター、GABA受容体、アンジオテンシン受容体、カンナビノイド受容体、コレシストキニン受容体、ドーパミン受容体、グルカゴン受容体、代謝型グルタミン酸受容体、ヒスタミン受容体、嗅覚受容体、オピオイド受容体、ケモカイン受容体、カルシウム感知受容体、ソマトスタチン受容体、セロトニン受容体、セクレチン受容体、Fc受容体又は受容体チロシンキナーゼ(RTK)である。受容体チロシンキナーゼファミリーは、多くのポリペプチド増殖因子、サイトカイン及びホルモンに対する高親和性細胞表面受容体から成り、特にエフリン受容体(Eph受容体ファミリー)、RET受容体ファミリー;特にVEGFR1(Flt-1)、VEGFR2(Flk-1/KDR)及びVEGFR4(Flt-4)を含んでなるVEGF-受容体ファミリー、及びFGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4及びFGFR6によって例示される線維芽細胞増殖因子受容体ファミリーを含む。4つの近縁の受容体チロシンキナーゼ:EGFR(ErbB-1)、HER2/c-neu(ErbB-2)、Her3(ErbB-3)及びHer4(ErbB-4)のサブファミリーであるErbB受容体ファミリーも含まれ、特に好ましい。
【0057】
「核酸」なる用語は、当業者に知られている何れかの核酸を指し、例えばDNA、RNA、一本鎖DNA、cDNA、PNA又はその誘導体などのポリヌクレオチドである。
【0058】
「タンパク質」なる用語は、何れかの興味のポリペプチドを含み、治療的に活性なタンパク質、酵素、マーカータンパク質等を含む。
【0059】
「ペプチド」なる用語は、アミド結合により少なくとも2つのアミノ酸(好ましくはアルファ-アミノ酸)、すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、及びそれ以上、30までのアミノ酸を結合することによって形成される分子を指す。
【0060】
「酵素」なる用語は、細胞のサブセットに特異的であるか又は特異的であると仮定されている触媒活性タンパク質を含むことを意味し、例えば、腫瘍細胞等においてしばしば過剰発現されるメタロプロテアーゼ等である。
【0061】
「脂質」なる用語は、細胞のサブセットを特徴づけることができる全ての種類の脂質を含むことを意味し、受容体、キナーゼ又はホスファターゼ等のタンパク質に結合し、次いでこれらの脂質の作用を特定の細胞応答に媒介する脂質メッセンジャーを含む。
【0062】
「多糖」なる用語は、重合糖鎖構造を意味し、グリコシド結合によって結合される繰り返し単位(単-又は二-糖)から形成され、細胞の表面に提示される多糖(例えばMUC-1)、細菌又はウィルスカプセル又はエンベロープを形成するか又はその一部である多糖、グラム陰性細菌のリポ多糖(LPS)等を含む。
【0063】
「腫瘍抗原」なる用語は、「腫瘍マーカー」と交換可能であり、腫瘍特異的抗原及び腫瘍関連抗原、好ましくは原発腫瘍増殖及び転移に関与する腫瘍関連抗原を含む。「腫瘍抗原」は、幾つか挙げると、β-HCG、CA15-3、CA19-9、CA72-4、CFA、MUC-1、MAGE、ras、p53、ETA、CA-125、CEA、AFP、PSA、PSMA、Ep-CAM、CD33、CD44v6、MCSP、CD30、4つの近縁の受容体型チロシンキナーゼ:EGFR(ErbB-1)、HER2/c-neu(ErbB-2)、Her3(ErbB-3)及びHer4(ErbB-4)のサブファミリーであるErbB受容体ファミリー、アンジオポエチン及びそれらの受容体、アンジオポエチン及びそれらの受容体、CD9;CDCP1;CSF1R;CYR61;HER3;HPN(=ヘプシン);TDGF1;TROP2;CD44;IGF1R;TWEAK;EGFR及びPLGF及び/又はc-metに例示される(限定するものではない)。
【0064】
また、細菌、ウィルス又はここに記載されている他の病原生物は、好ましくはこれらの病原生物が細胞(宿主細胞)に含まれる場合に、標的を形成しうる。宿主細胞は次いで、前記標的(細菌、ウイルス)によって特徴付けられる。
【0065】
細胞のサブセットの表面に存在する標的は、特に好ましい(単一標的又はその組合せとして)。
【0066】
診断的価値のある標的は更により好ましい。「診断的価値」とは、標的の存在又は不在又は上方制御又は下方制御が、特定の疾患に対する診断的価値を有することが既に知られている又は将来知られることを意味する(例えば乳癌に対するHER2/neu)。
【0067】
「エクスビボ」なる用語は、インビトロと互換可能であり、管理環境における細胞に実施される活動を指す。本明細書中及び当分野で使用される場合、この用語はしばしば「培養物中で」と互換可能に使用され、細胞培養物における細胞又は臓器培養物における細胞を指しうる。
【0068】
従って、別の態様では、本発明は、細胞のサブセットを検出するための、及び/又は前記細胞のサブセットを特徴付ける標的を検出するための方法であって、前記細胞のサブセットを特徴付ける標的に特異的な結合ドメインを用いる方法に関し、該方法は前記細胞のサブセットをインビトロで検出することを含み、ここで前記結合ドメインは、前記細胞のサブセットの検出より前に、及び/又は前記標的の検出より前にその標的に結合している。
【0069】
好ましい実施態様では、前記細胞のサブセットは、組織サンプル内に含まれている。
【0070】
本発明の結合ドメインは、好ましくは標識される。
【0071】
標識とは、発明との関連では、分光的、光化学的、生化学的、免疫化学的、又は化学的手段によって検出可能な化合物又は組成物を指す。
【0072】
標識は、直接的に又は間接的に検出可能でありうる。
【0073】
「直接的に」とは、標識それ自体が、放射性、発色性、又は蛍光性シグナル等のシグナルを生成することを意味する。直接的標識は、放射標識、蛍光標識、高電子密度試薬等を含む。直接的標識は、結合した結合ドメインを定量化及び/又は検出(定性的に)するために使用できる測定可能なシグナルを有するか又は生成する。蛍光標識が、好ましい直接的標識である。
【0074】
本発明の幾つかの実施態様では、前記検出は直接的免疫組織化学によって為され、前記標識(好ましくは蛍光標識)結合ドメインの存在を検出することを含む。前記結合ドメインは、より好ましくは抗体である。
【0075】
二次結合ドメインが使用されない場合は、一次結合ドメインが直接的に標識されることが理解されるだろう。
【0076】
「間接的に」とは、標識が、例えば、それ自体が検出可能である別の実体(検出実体)によって結合されることを意味する。間接的検出又は間接的標識は、間接的標識に対する、第二の直接的又は間接的検出可能結合ドメインの結合を含む。例えば、発明の結合ドメインの間接的標識は、結合パートナーのリガンドであり得、例えば、ストレプトアビジンの結合パートナーであるビオチン、又は特異的にハイブリダイズできる相補配列の結合パートナー等であるヌクレオチド配列である。「間接的標識」とは従って、一次結合ドメインが操作され、その操作(例えばビオチン標識)に特異的な第二の結合ドメイン(時々、検出実体とも呼ばれる)によって検出されることができることを特徴とする。
【0077】
好ましい実施態様では、前記結合ドメインは抗体(一次抗体)であり、前記検出実体は一次抗体(の標識)と特異的に反応する二次抗体である。
【0078】
間接的及び直接的標識が混合されることも考えられる。例えば、直接標識が既にシグナルを生成できるが(例えばFITCのような蛍光標識)、例えば該標識に特異的に結合する直接標識(抗FITC抗体)で標識された二次結合ドメインが、一次シグナルの標識に結合し、それにより検出可能シグナルを増加されうる。このような手段及び方法は、当業者、特に免疫化学の分野の実践者によく知られている。
【0079】
被験体に投与される(又は被験体に含まれている)結合ドメインの集団の少なくとも10%が、直接又は間接標識で標識されていることが好ましい。好ましくは、被験体に投与される結合ドメインの集団の50、60、70、80、90%より大又は100%が、直接又は間接標識で標識されていることが好ましい。
【0080】
別の実施態様では、一次結合ドメイン(例えば抗体)はそれ自体標識されないが、一次結合ドメインに結合する二次結合ドメイン(検出実体)によって検出される/検出可能である(例えばマウスにおいて産生された一次非標識抗体は、別の種において産生され、マウス抗体に特異的に結合する第二の標識抗体によって検出される(例えばヤギ抗マウス))。二次結合ドメインは直接的に又は間接的に標識される。このような抗体検出サンドイッチはよく確立されていて、当業者はこのようなシステムを作成/確立又は作成するのに問題はないだろう。
【0081】
免疫組織化学に使用される最も一般的な固定液はパラホルムアルデヒドであり、約1〜5%のパラホルムアルデヒドを有する様々なバッファーにおいてしばしば使用される。パラホルムアルデヒドに基づいた特定のバッファーを次に例示する:
a)0.1Mリン酸バッファー中に4%パラホルムアルデヒド
b)0.1Mリン酸バッファー中に0.2%ピクリン酸を伴う2%パラホルムアルデヒド
c)PLP(パラホルムアルデヒド、リシン、パラホルムアルデヒド)固定液:例えば0.1Mリン酸バッファー中に4%パラホルムアルデヒド、0.2%過ヨウ素酸及び1.2%リシン
d)0.05%グルタルアルデヒドを伴う4%パラホルムアルデヒド
【0082】
これらのバッファーは発明を限定することを意図せず、組織の十分な固定を得るために通常使用される特定条件を単に示している。標準的な固定時間は約5、10、15、20、30分〜一晩である。このように処理された組織はしばしば、その後のパラフィン包埋プロトコル、次いで例えばキシレン及びエタノール処理等の有機溶媒におけるインキュベーションを受ける。サンプルは次いで通常は、それを95%、70%、50%、30%のアルコール(例えばエタノール)に各々数分間に置くことによって水和される。しかしながら、IHCに標準プロトコルは無く、すなわち、プロトコルは、使用される標的、組織、抗体等に依存して様々であろう。これは全て当業者に知られていて、更なる困難無くルーチン的扱われている。特定のプロトコルは、例えばインターネットに開示されている(Google等の検索装置において文字列IHCプロトコルを用いて検索可能である)。幾つかの抗原は、中程度の量のアルデヒド固定さえも生存しないだろう。この条件下では、組織はしばしば液体窒素において新鮮凍結され、クリオスタットを用いてカットされる。切片は、固定まで、冷アセトン又はアルコールを用いて、−20℃以下で凍結維持される
【0083】
従って、本発明に関連して使用される標識はIHC手順、例えば固定、パラフィン包埋、ハイブリダイゼーション等に耐えることが考えられる。標識は、IHCプロトコルを受けた後にもまだ検出可能である場合に、「IHC手順に耐える」。例えば:幾つかの標識は、例えば加熱(パラフィン包埋)によって又は有機溶媒によって、又は固定バッファーによって不活性化され得、シグナルが低すぎるか又はシグナルがもはや存在しないため、もはや検出可能なシグナルを生成できない。標識の耐性は従って、使用される特定のIHCプロトコルに依存するだろう。このように、一標識は一特定のIHCプロトコルの過程において不活性化されるが、別のIHCプロトコルを使用する場合では使用可能である場合がありうる。
【0084】
好ましくは、発明の標識は固定に耐え、より好ましくはホルマリンを用いるアルデヒド固定に耐える。「耐える」とは、この点においては、前記手順後も依然として検出可能であることを意味し、すなわち、好ましくはその検出能の50%より大を失わないことを意味する。
【0085】
また、一次結合ドメイン及び、もし検出より前に用いられるなら二次結合ドメインも、IHC手順に耐えることが考えられる。
【0086】
「蛍光標識」は、ここで使用される場合、フルオロフォアを含む分子を特徴付ける。フルオロフォアは時々蛍光色素とも呼ばれ、特定波長のエネルギーを吸収し、異なる波長でエネルギーを再放出する分子中における官能基である。記異なる波長は、前記特定(所定の)波長と比較される場合、特定(所定の)波長と鑑別可能な波頭を再放出され、例えばそれはより長い波長で又はより短い波長で再放出されるが、後者の場合、低減された強度になる。放出されたエネルギーの量及び波長は、フルオロフォア及びフルオロフォアの化学環境双方に依存する。
【0087】
NIR蛍光標識を含む蛍光標識のカップリング方法は、当分野でよく知られている。抗体へのこれらの標識のコンジュゲーション技術は過去数年の間で著しく成熟され、優れた概要が、Aslam, M., and Dent, A., Bioconjugation (1998) 216-363, London, and in the chapter "Macromolecule conjugation" in Tijssen, P., "Practice and theory of enzyme immunoassays" (1990), Elsevier, Amsterdamから得られる。
【0088】
適切なカップリング化学は、上記引用文献(Aslam, supra)から知られている。蛍光色素標識は、どのカップリング部分が存在するかに依存して、水性又は有機媒体において抗体と直接反応させることができる。カップリング部分は、抗体への蛍光色素標識の化学的カップリングに使用される反応基又は活性基である。蛍光色素標識は、抗体に直接結合されるか、又はスペーサーによって抗体に結合され、抗体及びNIR蛍光色素標識を含んで成るNIR蛍光色素標識コンジュゲートを形成する。使用されるスペーサーは、適切に長いインビボ持続(半減期)を本質的に有するように選択又は設計されうる。
【0089】
蛍光標識は好ましくは、量子ドット剤、蛍光色素、pH-感受性蛍光色素、電位感受性蛍光色素、及び蛍光標識マイクロスフェアから成る群から選択され、蛍光色素が好ましい。
【0090】
「量子ドット剤」又は「量子ドット」はナノ結晶としても知られ、半導体として知られる物質の特殊なクラスであり、周期群のII−VI、III−V、又はIV−VIの物質から成る結晶である。
【0091】
「蛍光タンパク質」は、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、CFP、YFP、BFP(増強有無)を含む。更なる蛍光タンパク質は、Zhang, Nat Rev Mol Cell Biol.2002, 12, pages 906-18 or in Giepmans, Science.2006, 312, pages 217-24に記載されている。
【0092】
「蛍光色素」は、全種類の蛍光標識を含み、限定するものではないが、フルオレセイン、全てのその誘導体を含み、例えばFITC;ローダミン、全てのその誘導体を含み、例えばテトラメチルローダミン(TAMRA)及びそのイソチオシアネート誘導体(TRITC)、スルホローダミン101(そのスルホニルクロリドはTexas Redを形成する)、ローダミンレッド、及びローダミンの他の誘導体、例えばAlexa 546、Alexa 555、Alexa 633、DyLight 549及びDyLight 633等の新規なフルオロフォア;Alexa Fluor(蛍光色素のAlexa Fluorファミリーは分子プローブによって産生される);DyLight Fluor、蛍光色素のファミリーであり、Dyomics, ATTO Dyesによって生産され、ATTO-TEC GmbH(Siegen, WO/2007/067978日本)によって製造される一連の蛍光標識及び色素を表す;ラホヤブルー(Diatron, Miami, Fla.);インドシアニングリーン(ICG)及びそのアナログ(Licha et al., 1996, SPIE 2927:192-198; Ito et al.,米国特許第5,968,479号);インドトリカルボシアニン(ITC;WO98/47538)、及びキレート化ランタニド化合物を含む。蛍光ランタニド金属は、ユーロピウム及びテルビウムを含む。近赤外(NIR)蛍光標識も考えられる。励起及び放出波長が近赤外スペクトルにあるNIR蛍光標識が使用され、すなわち、640−1300nm好ましくは640−1200nm、そしてより好ましくは640−900nmである。電磁波スペクトルのこの部分の使用は、組織透過を最大化し、ヘモグロビン(<650nm)ヘモグロビン水(>1200nm)等の生理学的に豊富な吸収体による吸収を最小化する。インビボでの使用のための理想的な近赤外蛍光色素は以下を示す:
(1)狭スペクトル特性、
(2)高感度(量子収率)、
(3)生体適合性、
(4)分離した吸収及び励起スペクトル、及び
(5)光安定性。
【0093】
様々な近赤外(NIR)蛍光標識が商業的に入手可能であり、この発明に従う蛍光実体を調製するのに使用できる。例示的NIRF標識は次を含む:Cy5.5、Cy5及びCy7(Amersham, Arlington Hts., IL;IRD41及びIRD700(LI-COR, Lincoln, NE);NIR-I,(Dejindo, Kumamoto, Japan);LaJoIIa Blue(Diatron, Miami, FL);インドシアニングリーン(ICG)及びそのアナログ(Licha, K., et al., SPIE-The International Society for Optical Engineering 1996; Vol. 2927: 192-198; US 5,968,479);インドトリカルボシアニン(ITC;WO98/47538);及びキレート化ランタニド化合物及びSF64、5−29、5−36及び5−41(WO2006/072580)。蛍光ランタニド金属は、ユーロピウム及びテルビウムを含む。ランタニドの蛍光特性は、Lackowicz, J. R., Principles of Fluorescence Spectroscopy, 2nd Ed., Kluwer Academic, New York, (1999)に記載されている。
【0094】
「蛍光マイクロスフェア」は、WO/2007/067978に非常に詳細に記載され、出典明記によりここに援用する。
【0095】
蛍光色素によって放出されるエネルギーの量及び波長は、フルオロフォア及びフルオロフォアの化学環境双方に依存することが知られている。従って、蛍光色素は、pH-感受性又は電位感受性に反応し得、すなわち、それらは化学環境のこのような変化によって活性化可能である。更なる活性化可能蛍光標識は、例えばUS2006/0147378A1、US6592847、US6,083,486、WO/2002/056670又はUS2003/0044353A1に非常に詳細に記載され、その全てを出典明記によりここに援用する。
【0096】
蛍光色素は、本発明の関連において好ましい。特に好ましいのは、Cy、Alexa及びDylightファミリーの蛍光色素である。
【0097】
被験体は、本発明の関連においては、動物である。好ましくは前記被験体は脊椎動物であり、より好ましくは哺乳類である。より好ましくは、前記哺乳類被験体はヒト、サル、例えばカニクイザル、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ウマ、ラクダ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヤギ又はトリ(fowl)である。ヒト被験体が最も好ましい。非ヒト被験体が、特定の疾病又は疾患のモデルを代表しうる。また本発明の被験体が、異種移植片、好ましくはヒト腫瘍細胞を有することが考えられる。
【0098】
本発明の結合ドメインは好ましくはエピトープ結合ドメインであるか、又はそれを含む。
【0099】
好ましくは、前記エピトープ結合ドメインは、抗体又はその抗原結合断片である。
【0100】
「抗体」なる用語は、標的に結合するモノクローナル又はポリクローナル抗体(Harlow and Lane, “Antibodies, A Laboratory Manual", CSH Press, Cold Spring Harbor, USA, 1988を参照)、又はその結合特異性を保持又は本質的に保持している前記抗体の誘導体を指す。このような抗体の好ましい誘導体は、例えばマウス又はラット可変領域及びヒト定常領域を含んでなる、キメラ抗体である。「抗体」なる用語はまた、二官能性(二重特性)抗体及び抗体コンストラクト、例えば単鎖Fvs(scFv)又は抗体-融合タンパク質を含む。「scFv断片」(単鎖Fv断片)なる用語は当分野でよく理解されていて、その小サイズ及びこのような断片を組換え産生できる可能性から好ましい。前記抗体又は抗体結合部分はヒト抗体又はヒト化抗体である。「ヒト化抗体」なる用語は、本発明に従うと、可変領域の少なくとも一つの相補性決定領域(CDR)、例えばCDR3、好ましくは全6つのCDRが所望の特異性を有するヒト起源の抗体のCDRと置換されている非ヒト起源の抗体を意味する。場合によっては、抗体の非ヒト定常領域(一又は複数)は、ヒト抗体の定常領域(一又は複数)と置換されている。ヒト化抗体の製造方法は、例えばEP-A10239400及びWO90/07861に記載されている。抗体及びその抗原結合断片なる用語はまた、重鎖抗体及びその可変ドメイン(WO94/04678、WO96/34103及びWO97/49805、WO04/062551、WO04/041863、WO04/041865、WO04/041862及びWO04/041867に記述されている);並びにドメイン抗体又は「dAb」(従来の4鎖抗体分子の重鎖可変ドメイン(VH)又は軽鎖可変ドメイン(VL)に基づくか又は由来する)(例えばWard et al.1989 Nature 341, 544-546を参照)を含む。
【0101】
「抗原結合断片」なる用語は、ここで使用される場合、抗体の結合特異性を保持又は本質的に保持しているここに記載の抗体の断片を指し、例えば分離軽及び重鎖、Fab、Fab/c、Fv、Fab’、F(ab’)2である。抗原結合断片は抗体の軽鎖可変ドメイン(VL)及び重鎖可変ドメイン(VH)を含みうるが、両方を含む必要はない。Fd断片は例えば2つのVH領域を有し、しばしばインタクトな抗原結合断片の抗原結合機能を保持している。
【0102】
「エピトープ結合ドメイン」なる用語は、抗体又はその抗原結合断片に加えて、標的に結合する(特異的に結合する)他の結合実体を含む。「エピトープ結合ドメイン」なる用語は、例えば、別のV領域又はドメインと独立して抗原又はエピトープに(特異的に)結合するドメインを含み、これはドメイン抗体(dAb)、例えばヒト、ラクダ、サメ免疫グロブリン単一可変ドメインであり得、又はCTLA-4(Evibody);リポカリン;プロテインA由来分子、例えばプロテインAのZ-ドメイン(Affibody,SpA)、A-ドメイン(Avimer/Maxibody);熱ショックタンパク質、例えばGroEI及びGroES;トランスフェリン(trans-body);アンキリンリピートタンパク質(DARPin);ペプチドアプタマー;C型レクチンドメイン(Tetranectin);ヒトγ-クリスタリン及びヒトユビキチン(affilins);PDZドメイン;ヒトプロテアーゼインヒビターのサソリ毒kunitz型ドメイン;及びフィブロネクチン(adnectin)から成る群から選択されるスカフォールドの誘導体であるドメインであり得、これは天然のリガンド以外のリガンドへの結合を得るためにタンパク質操作を受けている。CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球抗原4)は、主にCD4+T細胞上に発現されるCD28ファミリー受容体である。その細胞外ドメインは、Igフォールド等の可変ドメインを有する。抗体のCDRに該当するループは、異なる結合特性を付与するために異種性配列で置換されてもよい。異なる結合特異性を有するように操作されたCTLA-4分子はEvibodiesとして知られる。更なる詳細は、Journal of Immunological Methods 248 (1-2), 31-45 (2001)を参照のこと。
【0103】
リポカリンは、ステロイド、ビリン、レチノイド及び脂質等の小疎水性分子を輸送する細胞外タンパク質のファミリーである。それらは、異なる標的抗原に結合するよう操作されうる、円錐構造の開口端に多くのループを有する剛性β-シート二次構造を有する。アンチカリンは160−180アミノ酸のサイズであり、リポカリンに由来する。更なる詳細についてはBiochim Biophys Acta 1482:337-350 (2000)、US7250297B1及びUS20070224633を参照のこと。
【0104】
アフィボディは、抗原に結合するよう操作できる、黄色ブドウ球菌のプロテインAに由来するスカフォールドである。ドメインはおよそ58アミノ酸の3-ヘリックス束から成る。ライブラリーが表面残基のランダム化によって作成されている。更なる詳細についてはProtein Eng. Des.SeI.17, 455-462 (2004)及びEP1641818A1を参照のこと。
【0105】
アビマーは、A-ドメインスカフォールドファミリー由来のマルチドメインタンパク質である。およそ35アミノ酸の未変性ドメインは、規定ジスルフィド結合構造を採用する。多様性は、A-ドメインにより呈されている天然バリエーションのシャッフルによって生成される。更なる詳細についてはNature Biotechnology 23(12), 1556 - 1561 (2005) and Expert Opinion on Investigational Drugs 16(6), 909-917 (June 2007)を参照のこと。
【0106】
トランスフェリンは単量体結成輸送糖タンパク質である。トランスフェリンは、許容表面ループへのペプチド配列の挿入によって、異なる標的抗原に結合するように操作できる。変性トランスフェリンスカフォールドの例はトランス-ボディを含む。更なる詳細についてはJ. Biol.Chem 274, 24066-24073 (1999)を参照のこと。
【0107】
設計アンキリンリピートタンパク質(DARPins)は、細胞骨格への内在性膜タンパクの結合を媒介するタンパク質のファミリーであるアンキリンに由来する。単一アンキリンリピートは、2つのα-ヘリックス及び一つのβ-ターンから成る33残基モチーフである。それらは、各リピートの第一α-ヘリックス及びβ-ターンにおける残基をランダム化することによって、異なる標的に結合するように操作できる。それらの結合インターフェースは、モジュールの数を増加させることによって増加させることができる(親和性成熟方法)。更なる詳細についてはJ. MoI.Biol.332, 489-503 (2003), PNAS 100(4), 1700-1705 (2003)及びJ. MoI.Biol.369, 1015-1028 (2007)及びUS20040132028A1を参照のこと。
【0108】
フィブロネクチンは、抗原に結合するように操作できるスカフォールドである。アドネクチンは、ヒトフィブロネクチンIII型(FN3)の15リピートユニットの第10ドメインの天然アミノ酸配列のバックボーンから成る。β-サンドイッチの一端の3つのループは、アドネクチンが興味の治療標的を特異的に認識できるように操作できる。更なる詳細についてはProtein Eng. Des.SeI.18, 435- 444 (2005)、US20080139791、WO2005056764及びUS6818418B1を参照のこと。
【0109】
ペプチドアプタマーは、普遍的な足場タンパク質、典型的には、活性部位に挿入された、制限された可変ペプチドループを含有するチオレドキシン(TrxA)からなるコンビナトリアル認識分子である。さらなる詳細についてはExpert Opin.Biol.Ther.5, 783-797 (2005)を参照のこと。
【0110】
マイクロボディーは、長さが25〜50アミノ酸の、3〜4システイン架橋を含有する、天然に存在するマイクロタンパク質に由来し、マイクロタンパク質の例は、KalataB1およびコノトキシンおよびノッチンを含む。マイクロタンパク質は、マイクロタンパク質の全体的な折り畳み部分に影響を与えることなく、25までのアミノ酸を含むように操作することができるループを有する。操作されたノッチンドメインのさらなる詳細については、WO2008098796を参照されたい。
【0111】
他のエピトープ結合ドメインは、異なる標的抗原結合特性を設計するようにスカフォールドとして使用されているタンパク質を含み、ヒトγ-クリスタリン及びヒトユビキチン(affilin)、ヒトプロテアーゼインヒビターのkunitz型ドメイン、Ras-結合タンパク質AF-6のPDZ-ドメイン、サソリ毒(カリブドトキシン)、C型レクチンドメイン(テトラネクチン)を含み、Chapter 7 - Non-Antibody Scaffolds from Handbook of Therapeutic Antibodies (2007, edited by Stefan Dubel) and Protein Science 15:14-27 (2006)に総説されている。本発明のエピトープ結合ドメインは、これらの代替タンパク質ドメインの何れかに由来しうる。更なる「エピトープ結合ドメイン」の例は、受容体(それらのリガンドに特異的に結合)、レクチン(多糖に特異的に結合)、ジンクフィンガー及びロイシンジッパー(核酸に結合)、酵素(それらの基質に特異的に結合)、ウィルス及び細菌(例えばそれらの標的細胞に特異的に結合)、核酸(互いに特異的にハイブリダイズ)等である。
【0112】
本発明の幾つかの実施態様では、前記結合ドメインは治療的に有効である。
【0113】
「治療的に有効」とは、結合ドメインそれ自体が、被験体に治療的効果をおよぼすことができるか又はできると考えられることを意味し、例えば、疾患の症状または原因を軽減する治療的に有効な抗体は、疾患を処置し、疾患などの発生を防止できる。
【0114】
幾つかの実施態様では、前記治療的に有効な結合ドメインは、アレムツズマブ、アポリズマブ、セツキシマブ、エプラツズマブ、ガリキシマブ、ゲムツズマブ、イピリムマブ、ラベツズマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、トラスツズマブ、ニモツズマブ、マパツムマブ、マツズマブ、rhMab ICR62、rhMab B-Ly1及びペルツズマブから成る群から選択される。
【0115】
幾つかの実施態様では、前記被験体が、前記組織サンプル及び/又は細胞のサブセットの摘出より前に、治療的に有効な用量において前記結合ドメインを受けていることも予想され、すなわち、前記発明の被験体は、組織サンプル/細胞のサブセットの摘出より前に、治療的に有効な用量の前記結合ドメインを既に含む。本発明の被験体はあるいは、前記組織サンプル/細胞のサブセットの摘出より前に、治療的に有効な用量において発明の結合ドメインを受けた被験体である。
【0116】
本発明により、結合ドメインの2つの異なる能力を組み合わせることが可能であり、すなわち(a)IHC検出技術により標的を検出可能に標識するその能力、及び(b)同時に、治療的に活性な様式で作用するその能力を組み合わせることが可能である。従って、IHCにおいて使用できる検出可能に標識されたマーカーと治療的に活性な薬剤が、同一でありうる。特に今では、IHC設定において各全ての治療抗体を用いることが可能であり、従ってIHC結果の信頼性を増加させる。例えば特定の腫瘍を、例えばHER2/neu等の腫瘍マーカーの発現レベルに応じて「グレード化」することが標準的である−このような測定の予後関連性は本発明の実施態様によって改善でき、なぜなら今では、測定はその後使用されるだろう(又は既に使用された)治療抗体を用いて実施されるからである。得られたIHC測定は従って、特定の腫瘍標的(治療抗体によって「使用」もされる)がまだそこにあるか否か、そして結果として、その同じ抗体を用いる後続治療が恐らく成功となるか否かを仮定できるかをより正確に反映する(例えば、その治療抗体によって使用された標的がまだそこにある場合、その同じ抗体による治療が成功の期待をもつことを推測しうる)。従って、2つの異なる目的に対して同じ抗体を使用することの著しい利点である。また、IHC染色で作用する特異的抗体を開発する必要がなく、なぜなら抗体は、細胞のサブセット/組織サンプルが固定化等を受ける前に、その標的に既に結合しているからである。抗体-標的の結合反応は、従って、より厳密に実際の状況を反映する。
【0117】
更に、ホルマリン固定パラフィン包埋組織スライドは、IHC抗体による最適な染色を得るために特殊な方法において処理されなければならない(例えば加熱及び/又は特殊な酵素によるインキュベーションによる抗原1の回復/アンマスクが必要である)。このような特殊な処理は本発明の教示により必要ではなく、なぜなら、抗原エピトープは、被験体内又は細胞培養設定内において提示及び結合され、それによって、固定手順中に抗原がマスクされ(従って、結合ドメインによって検出されないか又は誤って検出される)、その標的の存在、不在又は発現の程度を示すエピトープを破壊するか又は変更しうる危険性を防止又は低減させるからである。
【0118】
本発明はまた、ここに定められている方法における、ここに定められている通りの結合ドメインの使用に関する。
【0119】
本発明はまた、ここに定められている方法において使用される組成物の調製のための、ここに定められている通りの結合ドメインの使用に関する。前記組成物は好ましくは診断用組成物であるが、しかしながら薬学的組成物も考えられる。
【0120】
本発明はまた、ここに定められている方法において使用するための、ここに定められている通りの結合ドメインに関する。従って、更なる態様では、本発明は、発明の免疫組織化学(IHC)方法における使用のための、細胞のサブセットを特徴付けている標的に特異的な結合ドメインに関し、該IHC方法は前記細胞のサブセットをエクスビボで検出することを含み、前記結合ドメインは、前記細胞のサブセットの摘出より前に、前記細胞のサブセットを含むか又は含むと仮定される被験体に投与される。本発明はまた、細胞のサブセットを検出するための免疫組織化学(IHC)方法における使用のための、細胞のサブセットを特徴付けている標的に特異的な結合ドメインに関し、該方法は前記細胞のサブセットをエクスビボで検出することを含み、前記細胞のサブセット(又はここに記載の組織サンプル)は、前記組織サンプル/細胞のサブセットの摘出より前に発明の結合ドメインを受けた被験体から得られる。
【0121】
本発明の幾つかの実施態様では、前記細胞のサブセットは、免疫組織化学によって、好ましくは直接的免疫組織化学によって検出される。
【0122】
免疫組織化学(IHC)は、直接標識された(直接的IHC)又は間接的に標識された(間接的IHC)結合ドメインの使用による、組織切片における標的(例えば抗原)及び/又は標的を提示している細胞のサブセットの局在化であり、結合ドメインは、特異的標的-結合ドメイン相互作用を通してそれらの標的と反応する。これらの相互作用は次いで、記述した標識によって可視化される。
【0123】
組織における抗原の免疫組織化学(IHC)検出に使用される主に2つのストラテジーがあり、直接的方法及び間接的方法である。免疫組織化学染色の直接的方法は、一つの直接標識された結合ドメインを使用し、それは、染色される標的に直接結合する。直接的方法は、従って一工程染色方法であり、例えば組織切片において抗原と直接反応する標識抗体(例えばFITCがコンジュゲートした抗血清)を含む。この技術は一つのみの抗体を使用し、従って手順は単純で速い。この直接的IHC方法は、本発明より前に使用されている「一般的なフォーマット」において実施される場合、わずかなシグナル増幅による感受性の問題を有することが知られている。これはおそらく、標的それ自体が固定化工程の過程中に既に変更されることに起因し、これは「検出可能な」標的の量を著しく低減させ、結果として標的に結合し標的を検出しうる結合ドメインの量も低下させする。しかしながら、驚くべきことに、本発明の教示を適用することによって、すなわち検出より前に、従って組織の摘出より前に、また組織の固定化より前に、直接的に標識された結合ドメインを標的と反応させることによって、直接的に標識された一次結合ドメインによって標的を検出することが実際に可能である(すなわち、一次結合ドメインに特異的に結合する第二の結合ドメインによってシグナルを「増幅」する必要がない)ことを示すことができた。
【0124】
本発明の他の実施態様では、前記細胞のサブセットは、間接的免疫組織化学によって検出される。免疫組織化学染色の間接的方法は、プローブされる標的に対する一結合ドメイン、及び第一に対する、第二の標識された結合ドメインを使用する。前記結合ドメインが抗体(一次抗体)であり、前記検出実体が一次抗体(の標識)と特異的に反応する二次抗体である方法が考えられる。
【0125】
間接的方法は、標的と反応する一次抗体(第一の層−通常は非標識)、及び一次結合ドメインと反応する標識された二次結合ドメイン(第二の層)を含む。二次結合ドメインは例えば、一次抗体が産生された動物種のIgGに対して産生される。
【0126】
本発明の方法の幾つかの実施態様では、前記免疫組織化学は次の工程によって特徴付けられることが考えられる:
(a)細胞のサブセット及び/又は結合ドメインが結合した前記細胞のサブセットを含んでなる前記組織サンプルを含んでなる手段(例えばスライド)を提供する工程;
(b)場合によっては前記組織サンプルを固定化する工程;
(c)場合によっては前記組織サンプルを脱水する工程;
(d)場合によっては組織サンプルをパラフィン処理させる工程;
(e)結合ドメイン、従って細胞のサブセットを直接的に又は間接的に検出する工程。
【0127】
「固定」又は「固定化」とは、その後のIHC手順のために標的/細胞のサブセット/前記細胞のサブセットを含んでなる組織サンプルを調製するのに適した固定化手順を意味する。「固定化」は、組織構造及び細胞形態の保護を確実にするために特に実施される。適切な固定化条件はよく知られており、ここにも開示されている。あるいは、組織/サブセットが低温凍結によって(例えば液体窒素において)保存されることも考えられる。
【0128】
上記の全ての前処理工程/測定は、「固定化」なる用語の範囲内であり、すなわち、固定化は具体的に、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等の固定化剤による固定化;及び/又は組織サンプル/細胞のサブセットの低温凍結、及び/又は場合によってはパラフィン又は類似な薬剤における組織/細胞のサブセットの包埋を含む。固定化手順は標的の量及び/又は質に影響し、結果を望まない様式に変更しうるため、結合ドメイン(例えば標的に特異的な一次抗体)が、前記標的を提示している組織/サブセットが固定化手順を受ける前に、その標的に結合されることが有利であるという驚くべき発見に、本発明の主旨が基づくことが理解されなければならない。
【0129】
組織/サブセットはまた、パラフィン処理されうる(通常は固定化後)。
【0130】
異なるIHCプロトコルを実行に移す手段及び方法は当業者によく知られており、余計な面倒無く特定の組織/細胞のサブセット/興味の標的に適用されてきており、将来もされ/可能である。これらの例示的なプロトコルを以下に示すが、しかしながらプロトコルは単に説明であり、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0131】
A. 細胞株
培養された細胞を無菌ガラスカバースリップ又はスライド上で一晩増殖させる
PBSで短く洗浄する
所望であれば固定化する。手順は以下を含みうる::
PBS中に10%のホルマリンで10分(湿らせたまま)
氷冷メタノールで5分、空気乾燥させる
氷冷アセトンで5分、空気乾燥させる
PBSにおいて洗浄する
【0132】
B. 凍結切片
液体窒素又は液体窒素において事前冷却されたイソペンタンにおいて瞬間凍結した新鮮な組織をO.C.T.化合物に包埋させる。凍結塊を−80℃で保存する。
【0133】
約4−8μmの厚さのクリオスタット切片にカットし、スーパーフロストプラススライド又はゼラチンコーティングスライドに載せる。必要であるまでスライドを−80℃で保存する。
【0134】
染色の前に、スライドを室温で30分間温め、氷冷アセトンにおいて5分間固定させる。30分間空気乾燥させる。
PBSにおいて洗浄する
【0135】
C. パラフィン切片
切片をキシレンにおいて、2x5分脱パラフィン化させる。
100%エタノールで、2x3分水和させる。
95%エタノールで、1分水和させる。
【0136】
固定化手順は次のように実施されることが好ましい;
【0137】
切片をキシレンにおいて約3x約1分脱パラフィン化させる;
100%エタノールで、約2x約1分水和させる;
90%エタノールで、約1分水和させる;
80%エタノールで、約1分水和させる;
70%エタノールで、約1分水和させる;
水で約1分。
【0138】
メイヤーのヘマトキシリンで約1分間染色
流水で約0,5分〜2分洗浄する
水で約10秒
0,1%エオシン、約1分
【0139】
70%エタノールで、約5秒水和させる;
80%エタノールで、約10秒水和させる;
90%エタノールで、約10秒水和させる;
100%エタノールで、約10秒水和させる(切片を顕微鏡において検査);
キシレン、約1分。
【0140】
上記プロトコルにおける「約」なる用語は、100%までの逸脱を含む(時間間隔に関して)。また、例えば2回実施されると言われている工程が、3回又は1回のみ等実施されることが考えられ−当業者は、上記プロトコルをある程度補正できることが可能なことを理解している。上記プロトコルは単に、効果的な固定化手順を実施するためのガイドラインとしての役割を果たすことが理解される。
【0141】
それぞれの切片が蛍光顕微鏡によって調査されうることが考えられる。
【0142】
我々は50マイクログラムのCy5標識ハーセプチン、オムニターグ及びゾレアを、Calu3(Her2陽性腫瘍)保有マウスに注入した。ハーセプチン及びオムニターグはHer2に対する治療抗体であり(ポジティブコントロール)、ゾレアはヒトIgEに結合する抗体である(ネガティブコントロール)。注入の48時間後、強い蛍光シグナルがハーセプチン-Cy5及びオムニターグ-Cy5処置マウスの腫瘍領域で検出可能であるが、ゾレア-Cy5処置グループは腫瘍にnow蛍光シグナルを示した(
図1a−c)。インビボイメージング後、腫瘍を外植し、ホルマリンに固定し、その後脱水しパラフィンに包埋した。パラフィン包埋組織を2μmのスライスにカットし、顕微鏡スライドの載せ、39°Cにより一晩インキュベートした。外植腫瘍組織のその後の分析は、Her2特異的抗体は腫瘍細胞にのみ結合し、マウス組織には結合しないことを示した。対照的に、ヒトIgEに対するコントロール抗体ゾレアでは、蛍光シグナルは生成されない(
図3a−3c)。
【0143】
腫瘍細胞に対する標識抗体の特異的結合を検証するために、我々は新規に開発された染色手順を使用し、これは、明視野及び一組織スライドからの蛍光情報を得ることを可能にする。通常の染色手順では、2つの連続的組織スライドが必要となる。一つのスライドはヘマトキシリン(好塩基性構造)/エオシン(好酸性構造)染色のためであり、非常に詳細な微細な構造の形態概要を提供する。第二のスライドは、Cy5標識抗体の蛍光シグナルを可視化するのに使用される。これらの通常方法の不利益は、2つの組織スライドの形態学的差異と、細胞核及び細胞組織の蛍光染色のための更なる調製時間である。我々の新規なアプローチにより、これらの情報を一つのスライドから得ることができる。これのために、我々は、既存ロシュヘマトキシリン/エオシン染色プロトコルの濃度及びインキュベーション時間を変化させた。ヘマトキシリン及びエオシンは蛍光条件下で活性を示し、従って我々は明視野測定とおおよそ同じ形態学的詳細を可視化することができる。我々の特別の蛍光カメラシステム(Nuance; CRi)により、異なるフルオロフォアの蛍光スペクトルを分離することが可能である。これらのマルチスペクトルイメージングシステムは、分子マーカーを、それらが単一組織切片に共局在する場合であっても、使用者が定量化するのを可能にし、複数標識組織切片における各個々の標識の明瞭で正確なイメージングを生成する。これらのシステムはまた、Nuance蛍光画像における自己蛍光を非混合して除去する強力な能力を我々に提供し、これによってノイズに対するシグナルが劇的に増加され、結果の正確性を改善する。新規な方法では、我々は最初に、明視野において、組織スライドの最適化ヘマトキシリン/エオシン染色を測定した(
図2a−2c)。次いで同じスライド領域を蛍光に変更し、ヘマトキシリン及びエオシンシグナル+Cy5標識抗体シグナルを測定した。Nuanceシステムは、これらの3つの蛍光シグナルを残りの不必要スライド情報(例えば自己蛍光)と分離し、それらを一つの画像にまとめた(
図3a−3c)。
【0144】
従って、本発明の方法は好ましくは上記のように実施されることが考えられる。特に、細胞のサブセット(好ましくは組織サンプルに含まれている)は、ヘマトキシリン/エオシンで染色され、その後、異なるフルオロフォアの蛍光スペクトルを分離できる蛍光検出装置(例えば蛍光カメラシステム(Nuance;CRi))又はオリンパスからの同等なシステムで分析されることが考えられる。その目的のために使用又は設計され得るソフトウェア等は、当業者によく知られている。
【0145】
一旦「シグナル」が得られたら、シグナルが標的の分布を真に反映していると証明するのがまた、いくらか難しい問題である。単純なネガティブコントロールは、標的のRNAがリボヌクレアーゼプロテクションにより発現されないことが分かっている組織における発現の不在、及びin situハイブリダイゼーションによって見られる発現されたRNAを有する標的組織の領域に対する発現の制限である。別のネガティブコントロールは、結合ドメインを、過剰のそれが産生されたペプチド又はタンパク質を用いて結合ドメインをプレインキュベートすることによるシグナルの除去である。ウエスタンブロットは、一つのみのバンドが見られたら、相互作用の特異性を示唆しうる;しかしながら、ウエスタンブロットの条件の最適化の難しさは、免疫組織化学反応における条件が最適未満である可能性を示すだろう。
【0146】
本発明の方法において、前記検出が、インサイツハイブリダイゼーション技術、好ましくは蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)を更に含むことが考えられる。
【0147】
本発明はまた、ここに定められている通りの結合ドメイン、及び場合によっては前記結合ドメインを被験体に投与するための手段、及び/又はここに定められている方法を用いて前記結合ドメインを検出するための手段を含んでなるキットに関する。前記キットは、どのように結合ドメインを使用するか、特に本発明の方法においてどのように結合ドメインを使用するかに関する指示を含んでなるリーフレットを更に含みうる。本発明のキットは、好ましい実施態様では、ここに記載の結合ドメイン(結合ドメインは標識されていて、好ましくは蛍光色素標識されている)、及び更に投与手段、例えばシリンジ、前記結合ドメインを希釈するための薬学的に許容可能な担体等、及び好ましくは、それぞれの被験体への結合ドメインの投与において技術者を助ける技術指示(結合ドメインが、組織/細胞のサブセットが摘出される前に投与されることが特に重要である)を含む。キットは、一旦結合ドメインがその被験体に投与されたら前記被験体から組織サンプルを摘出するための手段、及び/又は摘出した組織サンプルの固定化を可能にするバッファー等、摘出した組織サンプルを固定するための手段、及び/又はその後の蛍光顕微鏡法のためのガラススライド、及び/又は摘出した組織サンプルをパラフィン処理するためのパラフィン、及び/又はパラフィン等を除去するための有機溶媒を更に含みうる。
【0148】
本発明はまた、細胞のサブセットを、前記細胞のサブセットを特徴付けている標的に特異的な結合ドメインを用いて検出する方法であって、該方法が前記細胞のサブセットをインビトロで検出することを含み、前記結合ドメインが、前記細胞のサブセットの固定化より前に、及び/又は前記標的の検出より前にその標的に結合している方法に関する。
【0149】
本発明はまた、前記細胞のサブセットを特徴付けている標的を、前記標的に特異的な結合ドメインを用いて検出する方法であって、該方法が前記標的をインビトロで検出することを含み、前記結合ドメインが、前記細胞のサブセットの固定化より前に、及び/又は前記標的の検出より前にその標的に結合している方法に関する。
【0150】
ここに定められている「細胞のサブセットを検出するための」方法は、更に又はあるいは以下のために使用されうる:
(i)結合ドメインに有利に応答する傾向の被験体の同定(前記被験体は好ましくは腫瘍を患っている被験体である)、又は
(ii)治療、好ましくは結合ドメインに基づく抗-癌/腫瘍治療のモニタリング(すなわち、結合ドメインが治療的に有効)、又は
(iii)インビボで標的に結合可能な結合ドメインの同定、
(iv)標的によって特徴付けられている腫瘍に治療的に有効に作用する傾向の結合ドメインの選択;
(v)腫瘍の典型化。
【0151】
「細胞のサブセットを検出する」なる用語は、ここで使用される場合、言及した細胞のサブセットの全ての(定量的)個々の細胞が結合ドメインによって結合されてはいない(これらの細胞が標的によって同様に特徴付けられているにも関わらず)状況を含む。腫瘍等の細胞塊における結合ドメインの蓄積の天然の限界により、細胞のサブセットを定めている全ての標的細胞は、結合ドメインに結合されないことがあり得、そして考えられる。
【0152】
有利には、本発明の方法は、治療が開始された時点でインビボにおいて、標的発現の検証及び治療抗体の結合の実証を同時に可能にする。本発明の方法は従って、患者の層別化に適用されうる。アジュバント設定では、患者はまず少量の標識治療抗体で処置されるだろう。続いて、腫瘍組織は約24〜48時間後、外科的に摘出され、ホルマリンに固定され、パラフィンに包埋されるだろう。腫瘍関連抗原の発現と、腫瘍細胞への抗体の特異的結合は近赤外ベース顕微鏡法によって確認できる。
【0153】
結合ドメインに有利に応答する傾向の患者の同定は、あるいは「層別化医学」とも表されうる。層別化医学は、群に対して考えられ得る最良の医療結果を達成するために最も最適な治療を選択するための、分子診断試験の使用する、共有の生物学的特性(例えばここに定められている標的又は細胞のサブセット)を有する患者の群の管理である。例えば、患者におけるある腫瘍を治療するために、どの結合ドメイン(例えば、治療的に有効であるか又は有効であると仮定されるモノクローナル抗体)が、患者の群に又は特定の患者に最良の結合特性を有するか特徴づけることが想定される。従って、本発明の実施態様を用いることによって、患者に最良の結合ドメインを見つけることが可能である(オーダーメイド医療)。それに関して、本発明の大きな利点は、治療的に活性な結合ドメイン(例えば抗体)がまた、実際のインビボ状況を反映する結果を導くIHCを基にした検出に使用されうることでありる。インビボ状況は、何人かの患者は抗体Aにより有利に応答し、他は抗体Bにより有利に反応することを意味する(それに関して、両抗体は同じ抗原、例えばHer2/neuに特異的である)。結合特性における差異は従って、技術者に所定の治療状況(例えば腫瘍)に対する最良の結合ドメインを使用するように導きうる。結合ドメインは従って、特定の患者のために特異的に選択される。例えば、全てが同じ標的に結合する一組の抗体を与え、これらの抗体の内どれが最もそれぞれの患者に対して有望な結合特性を示すか試験することが想定される(オーダーメイド医療)。
【0154】
「治療のモニタリング」は、今では、任意の標的又は該標的によって特徴付けられる細胞のサブセットの存在、不在、過剰発現、低発現を、該標的及び/又はサブセットによって特徴付けられる疾患の治療のために既に使用されているか又は使用されうる治療的に活性な抗体によってモニタすることが可能であることを含む。従って、今では、例えば患者において特異的抗体を用いて腫瘍を処置し、同じ抗体を用いて治療の「成功」をモニタすることが可能である。この点に関して、治療抗体が標識又は少なくとも部分的に標識され(例えば、全抗体集団の10%が標識され、残りは非標識)、インビボでの応答が経時にモニタされることが考えられる。また、治療的に有効であるが非標識の抗体が時々、インビボでの応答をモニタするために、標識形態における同じ抗体と交換されることも考えられる。
【0155】
「標的にインビボで結合できる結合ドメインを同定する」とは、今では、(a)治療的に有効であるか又は有効であると仮定される;又は(b)治療的に有効である結合ドメインを含むか又は含むと仮定される結合ドメインのセットを提供し、これらの結合ドメインがそれぞれの標的に結合できるかどうか試験することが可能であり、それにより、一般的に又は患者のサブグループにおいて又は一人の患者のみにおいて(個別化識別)、前記結合ドメインが治療的に有効か示すことを意味する。従って、腫瘍(この腫瘍は前記標的によって特徴づけられる)に治療的に有効に作用する傾向の結合ドメインを選択することが可能である
【0156】
「腫瘍を典型化する」とは、腫瘍のステータス、例えばHER2/neuステータスを評価することを意味する。
【0157】
本発明はまた、ここに記載の方法によって同定される前記結合ドメインに有利に応答する傾向の患者の治療のための、結合ドメイン、好ましくは治療に有効な抗体、例えばアレムツズマブ、アポリズマブ、セツキシマブ、エプラツズマブ、ガリキシマブ、ゲムツズマブ、イピリムマブ、ラベツズマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、トラスツズマブ、ニモツズマブ、マパツムマブ、マツズマブ、rhMab ICR62、rhMab B-Ly1及びペルツズマブ等(その組合せ含む)の使用に関する。
【0158】
本発明はまた、ここに記載の方法によって同定される前記結合ドメインに有利に応答する傾向の患者の治療における使用のための、治療的に活性な結合ドメイン、好ましくは治療的に活性な抗体、例えばアレムツズマブ、アポリズマブ、セツキシマブ、エプラツズマブ、ガリキシマブ、ゲムツズマブ、イピリムマブ、ラベツズマブ、パニツムマブ、リツキシマブ、トラスツズマブ、ニモツズマブ、マパツムマブ、マツズマブ、rhMab ICR62、rhMab B-Ly1及びペルツズマブ等(その組合せ含む)に関する。