特許第6145441号(P6145441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6145441
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】ピボットアッシー軸受
(51)【国際特許分類】
   G11B 21/02 20060101AFI20170607BHJP
   G11B 19/20 20060101ALI20170607BHJP
   F16C 33/80 20060101ALI20170607BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20170607BHJP
   F16C 25/08 20060101ALI20170607BHJP
   F16C 35/063 20060101ALI20170607BHJP
   F16C 35/07 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   G11B21/02 630D
   G11B19/20 F
   F16C33/80
   F16C19/06
   F16C25/08 Z
   F16C35/063
   F16C35/07
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-228573(P2014-228573)
(22)【出願日】2014年11月11日
(65)【公開番号】特開2016-91588(P2016-91588A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2016年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】土屋 邦博
【審査官】 堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−332201(JP,A)
【文献】 特開2003−016742(JP,A)
【文献】 特開2006−077924(JP,A)
【文献】 特開平09−215295(JP,A)
【文献】 特開2008−144783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 21/02
F16C 19/06
F16C 25/08
F16C 33/80
F16C 35/063
F16C 35/07
G11B 19/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリーブと、
該スリーブ内に挿入されたシャフトと、
前記シャフトに固定される内輪と前記スリーブに固定される外輪とこれら内輪と外輪との間に介装される転動体とを含み、前記スリーブと前記シャフトとの間に軸方向に離間して配設された一対の転がり軸受と、
を備え、
少なくとも軸方向一方側の端部において、前記内輪に軸方向内側に向けて予圧をかけ、これにより該内輪の端面を前記外輪の端面よりも軸方向内側に位置させ、該一方側の端部に、前記外輪の端面に当接し前記内輪の端面との間に第1のラビリンス隙間を形成するとともに、前記シャフトとの間に第2のラビリンス隙間を形成するシール部材を設け、さらに、前記シール部材の外側にシール板を配し、該シール板と前記シール部材との間に前記第2のラビリンス隙間に連通する第3のラビリンス隙間を形成するとともに、該シール板と前記スリーブとの間に前記第3のラビリンス隙間に連通する第4のラビリンス隙間を形成した端部構造を有することを特徴とするピボットアッシー軸受。
【請求項2】
前記端部構造が軸方向両端に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のピボットアッシー軸受。
【請求項3】
磁気ディスク上で磁気ヘッドを移動させる磁気ヘッドアームを揺動可能に支持する請求項1または2に記載のピボットアッシー軸受を備えたことを特徴とするハードディスク駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は磁気ディスク駆動装置等に使用されるピボットアッシー軸受に係り、特にラビリンス隙間によるシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のピボットアッシー軸受は、一般に、シャフトの外周に転がり軸受を介してスリーブが回転自在に支持された構造を有しており、転がり軸受は軸方向に離間した一対の状態で装備されるものが多い。そして、軸方向両端部のシャフトとスリーブとの間には、転がり軸受内に充填される潤滑油の漏洩や飛散の抑制、あるいは異物の混入抑制のために、リング状のシール部材や、シャフトと一体のフランジ部が配設されるとともに、ラビリンス状の隙間を、それらシールやフランジ部と転がり軸受やシャフトとの間に形成したものが知られている(特許文献1,2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−077924号公報
【特許文献2】特開2008−069920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献に記載されるラビリンス状の隙間(以下、ラビリンス隙間)は、例えばシール部材をスリーブあるいはシャフトに接着等で固定して形成していた。ラビリンス隙間はその機能面から狭ければ狭いほど好ましいが、ラビリンス隙間を狭くするためには部品加工精度や接着による組み付け精度を向上させる必要があり、困難であった。また、近年では磁気ディスク装置の記憶密度が高まるのに伴い、より確実に潤滑剤の漏洩を抑制できるピボットアッシー軸受が強く望まれてきている。
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであってその主たる目的は、潤滑油の漏洩や飛散の抑制あるいは異物の混入抑制のための、より狭いラビリンス隙間を容易に形成することができ、これによりハードディスク駆動装置内の清浄度を維持できるピボットアッシー軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のピボットアッシー軸受は、スリーブと、該スリーブ内に挿入されたシャフトと、前記シャフトに固定される内輪と前記スリーブに固定される外輪とこれら内輪と外輪との間に介装される転動体とを含み、前記スリーブと前記シャフトとの間に軸方向に離間して配設された一対の転がり軸受と、を備えたピボットアッシー軸受において、少なくとも軸方向一方側の端部において、前記内輪に軸方向内側に向けて予圧をかけ、これにより該内輪の端面を前記外輪の端面よりも軸方向内側に位置させ、該一方側の端部に、前記外輪の端面に当接し前記内輪の端面との間に第1のラビリンス隙間を形成するとともに、前記シャフトとの間に第2のラビリンス隙間を形成するシール部材を設け、さらに、前記シール部材の外側にシール板を配し、該シール板と前記シール部材との間に前記第2のラビリンス隙間に連通する第3のラビリンス隙間を形成するとともに、該シール板と前記スリーブとの間に前記第3のラビリンス隙間に連通する第4のラビリンス隙間を形成した端部構造を有することを特徴とする(請求項1)。本発明では、前記端部構造が軸方向両端に設けられている形態を含む(請求項2)。
【0007】
本発明のピボットアッシー軸受によれば、内輪の端面に予圧をかけて得られる第1のラビリンス隙間は、本来の転がり軸受の内部に形成される内部隙間と同等のものであり、その第1のラビリンス隙間を容易に、かつ、より狭く形成することができる。このため、より効果的に潤滑油の漏洩や飛散、あるいは外部からの異物混入を防ぐことができる。
【0008】
次に、本発明のハードディスク駆動装置は、磁気ディスク上で磁気ヘッドを移動させる磁気ヘッドアームを揺動可能に支持する請求項1または2に記載のピボットアッシー軸受を備えたことを特徴とする(請求項3)。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、潤滑油の漏洩や飛散の抑制あるいは異物の混入抑制のための、より狭いラビリンス隙間を容易に形成することができ、これによりハードディスク駆動装置内の清浄度を維持できるピボットアッシー軸受が提供されるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)一実施形態に係るピボットアッシー軸受が適用されたハードディスク駆動装置を示す斜視図、(b)ピボットアッシー軸受の斜視図である。
図2】一実施形態に係るピボットアッシー軸受の全体断面図である。
図3図2の右側の端部に形成されるラビリンス隙間を示す一部拡大断面図である。
図4図2の左側の端部の一部拡大断面図である。
図5図4で示した部分に形成されるラビリンス隙間を示す断面図である。
図6】本発明の他の実施形態に係るピボットアッシー軸受の全体断面図である。
図7】他の実施形態のピボットアッシー軸受の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
[1]一実施形態の構成
図1(a)は、一実施形態に係るピボットアッシー軸受10Aが適用されたコンピュータの記憶装置の一つであるハードディスク駆動装置1を示している。このハードディスク駆動装置1においては、ピボットアッシー軸受10Aに揺動可能に支持された磁気ヘッドアーム3の先端に設けられた磁気ヘッド4が磁気ディスク5上を移動することにより、情報を磁気ディスク5に記録し、また、記録した情報を磁気ディスク5から読み出す。
【0012】
ピボットアッシー軸受10Aは、図1(b)に示すように、円筒状のスリーブ20の内部に配設された転がり軸受30にシャフト40が挿入されることによって、図2に示すスリーブ20とシャフト40とが相対的に回転することを可能にした軸受装置である。
【0013】
ピボットアッシー軸受10Aは、シャフト40が図1(a)に示すケース6の底部に設けられたシャフト支持部7に固定され、スリーブ20が回転する。スリーブ20は、磁気ヘッドアーム3の基部2の取付孔2aに圧入して嵌合され、磁気ヘッドアーム3はスリーブ20の回転に伴って揺動する。
【0014】
以下、図2図5により一実施形態のピボットアッシー軸受10Aを説明する。
ピボットアッシー軸受10Aは、図2に示すように、円筒状のスリーブ20の内部に、軸方向(図2で左右方向)に離間して配設された一対の転がり軸受30を介してシャフト40が回転自在に支持された構造を有している。
【0015】
転がり軸受30は、内輪31と外輪32とを有し、これら内輪31と外輪32との間に、複数の球状の転動体33が保持されている玉軸受である。複数の転動体33は、内輪31と外輪32との間に嵌合された図示せぬ保持器に、回転自在、かつ、周方向に一列の状態で保持されている。内輪31はシャフト40の外周面に固着され、外輪32はスリーブ20の内周面に固着される。転がり軸受30のシャフト40およびスリーブ20への固着は、接着等の手段によってなされる。転がり軸受30においては、内輪31と外輪32との間に、グリース等の潤滑油が封入される。
【0016】
シャフト40は軸心に中空部40aを有する円柱状のもので、図2において右側の端部にフランジ部41が形成されている。フランジ部41は半径方向に延在する円盤部41bと、円盤部41bの外周から軸方向に突出する円筒部41cとを有する。シャフト40のフランジ部41が形成された側の端面には、中空部40aの開口を囲繞する環状凸部42が突設されている。フランジ部41の円筒部41bの外周面は、スリーブ20の内周面の端部に形成された環状凹部20aに対向している。フランジ部41の円筒部41bの内周面は、右側の転がり軸受30の外輪32の外周面に対向している。また、フランジ部41の内面側には環状溝41aが形成されており、この環状溝41aに、右側の転がり軸受30における外輪32の端面が対向している。右側の転がり軸受30の内輪31は、フランジ部41の内面が当接して押されることで軸方向内側に予圧がかけられている。
【0017】
図3に示すように、フランジ部41と、右側の転がり軸受30の外輪32およびスリーブ20の内周面との間にはラビリンス隙間63が形成されている。さらに、この転がり軸受30の外輪32の端面とフランジ部41の円盤部41bとの間にラビリンス隙間63aが形成され、外輪32の外周面とフランジ部41の円筒部41cとの間にラビリンス隙間63bが形成されている。これにより、従来よりも長い距離のラビリンス隙間が得られる。
【0018】
スリーブ20の内周面の軸方向中間部には、両端部よりも内径が小さいスペーサ部21が同心状に形成されている。図4に示すように、スペーサ部21の段差面には、スリーブ20の内周面と直交する位置決め部21aと、この位置決め部21aから軸方向内側に切り欠かれた傾斜逃げ部21bが形成されている。2つの転がり軸受30は、位置決め部21aに外輪32を当接させることで軸方向の位置決めがなされる。そしてそのように位置決めされた状態で、外輪32がスリーブ20の内周面に接着等の手段で固着される。
【0019】
ピボットアッシー軸受10Aの、図2において左側の端部内には、環状のシール板(シール部材)50が配設されている。シール板50はスリーブ20とシャフト40との間の隙間を閉塞するために配設され、その外周面がスリーブ20の内周面に接着等の手段で固着される。
【0020】
さて、ピボットアッシー軸受10Aの図2において左側の端部においては、図5に示すように、左側の転がり軸受30の内輪31の端面31aが外輪32の端面32aよりも軸方向内側(図5で右側)に位置している。そして、シール板50が外輪32の端面32aに当接しており、内輪31の端面31aとの間に第1のラビリンス隙間61が形成されているとともに、シール板50の内周面とシャフト40との間に第2のラビリンス隙間62が形成されている。
【0021】
上記のような構造を得るために、内輪31には軸方向内側に向けて予圧がかけられ、その状態で内輪31はシャフト40に固着される。これにより図5に示すように外輪32の端面32aはアキシャル隙間に相当する分だけ内輪31の端面31aよりも軸方向外側(図5で左側)に位置することになる。そして外輪32の端面32aにシール板50を当接させて外輪32およびシール板50をスリーブ20の内周面に固着させることで、シール板50と内輪31の端面31aとの間に第1のラビリンス隙間61が形成される。シール板50を内輪31の端面31aよりも軸方向外側に位置する外輪32の端面32aに当接させることにより、シール板50として段差のない平坦な円板を用いて容易にラビリンス隙間が形成することができる。そのため、シール板50はプレス加工などで安価に製造することができる。また、シール板50とシャフト40との間には第2のラビリンス隙間62が形成される。第2のラビリンス隙間62は、シール板50の内径を調整するなどの手段で形成することができるが、第2のラビリンス隙間62を第1のラビリンス隙間61よりも小さくすることが好ましい。
【0022】
[2]一実施形態の作用効果
上記ピボットアッシー軸受10Aにおいては、内部に充填される潤滑油の漏洩や飛散、あるいは外部からの異物混入が、シール板50が配設された左側の端部では第1のラビリンス隙間61と第2のラビリンス隙間62によって、また、フランジ部41が形成された右側の端部ではラビリンス隙間63、ラビリンス隙間63aおよびラビリンス隙間63bによって、それぞれ抑制される。
【0023】
ここで、本実施形態では、シール板50が配設された左側の端部においては、転がり軸受30の内輪31の端面31aに予圧をかけて得られる第1のラビリンス隙間61は、本来、当該転がり軸受30の内部に形成される内部隙間と同等のものであり、したがってその第1のラビリンス隙間61を容易に、かつ、従来よりも狭く形成することができる。このため、より効果的に潤滑油の漏洩や飛散、あるいは外部からの異物混入を防ぐことができる。
【0024】
[3]他の実施形態
次に、図6および図7を参照して、上記一実施形態と近似する構成を備えた他の実施形態に係るピボットアッシー軸受10Bを説明する。参照図面で上記一実施形態と同一構成要素には同一符号を付し、それらの説明は省略する。
【0025】
他の実施形態のピボットアッシー軸受10Bは、両端部のラビリンス隙間の構造が同一であり、シャフト40に上記フランジ部41は形成されていない。上記一実施形態ではシャフト40のフランジ部41で閉塞されていた右側の端部には、スリーブ20の内周面に固着されたシール板50が配設されている。そして両端部においては、各シール板50の外側に、環状の外側シール板51が配設されている。外側シール板51は、シャフト40の両端部に形成された段部43が圧入あるいは接着されることでシャフト40にそれぞれ固定され、その固定状態でスリーブ20の両端部の内側に配設されている。図7に示すように、外側シール板51とシール板50との間には隙間(第3のラビリンス隙間)65が形成され、外側シール板51とスリーブ20との間には隙間(第4のラビリンス隙間)64が形成されている。
【0026】
ピボットアッシー軸受10Bの両端部には、シール板50および外側シール板51が配設されている。そして、上記一実施形態と同様であって図7に示すようにその両端部においては、シール板50が外輪32の端面32aに当接しており、シール板50と内輪31の端面31aとの間に第1のラビリンス隙間61が形成されているとともに、シール板50とシャフト40との間に第2のラビリンス隙間62が形成されている。
【0027】
他の実施形態にあっても上記一実施形態と同様に第1のラビリンス隙間61は各転がり軸受30の内輪31の端面31aに予圧をかけて形成されている。このため、それら第1のラビリンス隙間61を容易に、かつ、できる限り狭く形成することができ、その結果、ピボットアッシー軸受60Bは、より効果的に潤滑油の漏洩や飛散、あるいは外部からの異物混入を防ぐことができるものとなっている。
【0028】
上記各実施形態に係るピボットアッシー軸受10A(10B)によって磁気ヘッドアーム3が揺動可能に支持された図1に示すハードディスク駆動装置1は、内部の清浄度を維持することができ、このため、装置の信頼性を高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0029】
1…ハードディスク駆動装置
3…磁気ヘッドアーム
4…磁気ヘッド
5…磁気ディスク
10A,10B…ピボットアッシー軸受
20…スリーブ
30…転がり軸受
31…内輪
31a…内輪の端面
32…外輪
32a…外輪の端面
33…転動体
40…シャフト
50…シール板(シール部材)
61…第1のラビリンス隙間
62…第2のラビリンス隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7