特許第6145458号(P6145458)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニムの特許一覧

特許6145458エアロゾル発生装置内のエアロゾル形成基材の検出
<>
  • 特許6145458-エアロゾル発生装置内のエアロゾル形成基材の検出 図000002
  • 特許6145458-エアロゾル発生装置内のエアロゾル形成基材の検出 図000003
  • 特許6145458-エアロゾル発生装置内のエアロゾル形成基材の検出 図000004
  • 特許6145458-エアロゾル発生装置内のエアロゾル形成基材の検出 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6145458
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】エアロゾル発生装置内のエアロゾル形成基材の検出
(51)【国際特許分類】
   A24F 47/00 20060101AFI20170607BHJP
   A61M 15/06 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   A24F47/00
   A61M15/06 C
【請求項の数】13
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-549490(P2014-549490)
(86)(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公表番号】特表2015-507476(P2015-507476A)
(43)【公表日】2015年3月12日
(86)【国際出願番号】EP2012077063
(87)【国際公開番号】WO2013098396
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年12月18日
(31)【優先権主張番号】11196227.0
(32)【優先日】2011年12月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】タロン パスカル
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−515093(JP,A)
【文献】 特表2012−513750(JP,A)
【文献】 特表2005−517421(JP,A)
【文献】 米国特許第05730158(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2253233(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F47/00
A61M15/06
A61M11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生装置であって、
エアロゾル形成基材を加熱するように構成された加熱要素と、
前記加熱要素に接続された電力源と、
前記加熱要素及び前記電力源に接続されたコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記電力源から前記加熱要素に供給される電力を制御して前記加熱要素の温度を目標温度に維持するように構成され、更に、前記電力源から前記加熱要素に供給される電力の測定値又は前記加熱要素に供給されるエネルギの測定値を電力又はエネルギの閾値測定値と比較して、前記加熱要素に近接するエアロゾル形成基材の存在又は加熱要素に近接するエアロゾル形成基材の材料特性を検出するように構成されていることを特徴とする、エアロゾル発生装置。
【請求項2】
前記エネルギの測定値は、所定時間期間にわたる正規化エネルギ又は正規化エネルギの減少速度である、請求項1に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項3】
前記電力又はエネルギの測定値が前記電力又はエネルギの閾値測定値未満である場合には、前記コントローラは前記電力源から前記加熱要素への電力の供給をゼロに減少させるように構成されている、請求項1又は2に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項4】
前記装置は、前記加熱要素と接触した状態でエアロゾル形成基材を収容するように構成されている、請求項1から3の何れかに記載のエアロゾル発生装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記加熱要素の電気抵抗の測定値に基づいて前記加熱要素の温度を監視するように構成されている、請求項1から4の何れかに記載のエアロゾル発生装置。
【請求項6】
前記装置は電気式喫煙装置である、請求項1から5の何れかに記載のエアロゾル発生装置。
【請求項7】
前記装置はデータ出力手段を含み、前記コントローラは、前記加熱要素に近接するエアロゾル形成基材の存在及び前記加熱要素に近接するエアロゾル形成基材の材料特性の検出した記録を前記データ出力手段に供給するように構成されている、請求項1から6の何れかに記載のエアロゾル発生装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記加熱要素に近接するエアロゾル形成基材の存在及び前記加熱要素に近接するエアロゾル形成基材の材料特性の検出した記録を、前記電力源の充電時に前記データ出力手段に供給するように構成されている、請求項7に記載のエアロゾル発生装置。
【請求項9】
加熱要素に近接するエアロゾル形成基材の存在及びエアロゾル発生装置内のエアロゾル形成基材の材料特性を検出する方法であって、前記エアロゾル発生装置は、エアロゾル形成基材を加熱するように構成された前記加熱要素及び前記加熱要素に接続された電力源を含み、前記方法は、
前記電力源から前記加熱要素に供給される前記電力を制御して前記加熱要素の温度を目標温度に維持する段階と、
前記電力源から前記加熱要素に供給される電力の測定値又は前記加熱要素に供給されるエネルギの測定値を電力又はエネルギの閾値測定値と比較する段階と、
前記比較する段階の結果に基づいて、前記加熱要素に近接するエアロゾル形成基材の存在又は前記加熱要素に近接するエアロゾル形成基材の材料特性を判定する段階と、
を含む方法。
【請求項10】
前記電力又はエネルギの測定値が前記電力又はエネルギの閾値測定値未満である場合には、前記電力源から前記加熱要素への前記電力の供給をゼロに減少させる段階をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記エネルギの測定値は、所定時間期間にわたる正規化エネルギ又は正規化エネルギの減少速度である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記加熱要素の前記電気抵抗の測定値に基づいて前記加熱要素の温度を監視する段階をさらに含む、請求項9、10、又は11に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータ又は他の適切な処理装置で実行される場合、請求項9から12の何れかに記載の方法を実行する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、エアロゾル発生装置に関し、詳細には、喫煙装置等のユーザ吸入用エアロゾル発生装置に関する。本明細書は、エアロゾル発生装置内のエアロゾル形成基材の存在又は特性を経済的かつ信頼性が高い方法で検出するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の着火端シガレットは、吸煙時に800℃を超える場合もある温度で生じるタバコ及びラッパーの燃焼の結果として煙を送出する。この温度では、タバコは、熱分解及び燃焼によって熱的に劣化する。燃焼熱は、タバコから種々のガス状燃焼生成物及び留出物を放出及び発生させる。生成物は、シガレットを通って引き込まれて冷却及び凝縮して、喫煙に付随する味覚及び臭いを含む煙を形成するようになっている。燃焼温度において、味覚及び臭いだけでなく多くの不所望の化合物が発生する。
【0003】
電気加熱式喫煙装置が知られており、これは本質的にエアロゾル発生システムであり、従来の着火端シガレットよりも低い温度で作動する。このような電気式喫煙装置の例が、国際公開特許第2009/118085号に開示されている。国際公開特許第2009/118085号には、エアロゾル形成基材を加熱要素で加熱してエアロゾルを発生するようになった電気式喫煙システムが、開示されている。加熱要素の温度は、所定の温度範囲になるように制御され、他の所望の揮発性化合物の放出時に基材から不所望の揮発性化合物が確実に発生及び放出しないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開特許第2009/118085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エアロゾル発生装置の基材検出機能を安価かつ信頼性がある方法で与えることが望ましい。基材検出は、基材が存在しない場合に加熱要素の作動を防止するために及び基材の不適当な加熱を防止するために有用である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの実施形態において、エアロゾル発生装置が提供され、該装置は、エアロゾル形成基材を加熱するように構成された加熱要素と、該加熱要素に接続された電力源と、加熱要素及び電力源に接続され、電力源から加熱要素に供給される電力を制御して加熱要素の温度を目標温度に維持するように構成され、しかも電力源から加熱要素に供給される電力の測定値又は加熱要素に供給されるエネルギの測定値を電力又はエネルギの閾値測定値と比較して、加熱要素に近接するエアロゾル形成基材の存在又は加熱要素に近接するエアロゾル形成基材の材料特性を検出するように構成されたコントローラと、を備える。
【0007】
本明細書で用いる場合、「エアロゾル発生装置」は、エアロゾル形成基材と相互作用してエアロゾルを発生させる装置を意味する。エアロゾル形成基材は、エアロゾル発生物品の一部、例えば喫煙物品の一部とすることができる。エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生物品のエアロゾル形成基材と相互作用してユーザの口腔を通してユーザの肺に吸入されるエアロゾルを形成する喫煙装置とすることができる。エアロゾル発生装置は容器とすることができる。
【0008】
本明細書で用いる場合、用語「エアロゾル形成基材」は、エアロゾルを形成できる揮発性化合物を放出することができる基材を意味する。そのような揮発性化合物は、エアロゾル形成基材を加熱することによって放出させることができる。エアロゾル形成基材は、エアロゾル発生物品又は喫煙物品の一部とすることが好都合である。
【0009】
本明細書で用いる場合、用語「エアロゾル発生物品」又は「喫煙物品」は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出することができるエアロゾル形成基材を備える物品を指す。例えば、エアロゾル発生物品は、ユーザの口腔を通してユーザの肺に吸入されるエアロゾルを形成する喫煙物品とすることができる。エアロゾル発生物品は、廃棄することができる。用語「喫煙物品」は、以下において一般に用いる。喫煙物品は、タバコスティックであり又はこれを含むことができる。
【0010】
電力又はエネルギの測定値は、所定期間にわたる又は所定の測定繰り返し回数にわたる平均電力、電力又はエネルギの変化速度、又は所定期間にわたる又は所定の測定繰り返し回数にわたる累積測定値を含む、任意の電力又はエネルギの測定値とすることができる。
【0011】
1つの実施形態において、エネルギ測定値は、所定期間にわたる正規化エネルギである。他の実施形態において、エネルギ測定値は、所定期間にわたる正規化エネルギの減少速度である。
【0012】
加熱要素を目標温度に到達させて維持するのに必要な電力又はエネルギ量は、加熱要素からの熱損失率に依存する。これは、加熱要素を取り巻く環境に大きく依存する。基材が加熱要素に近接するか又は接触する場合、このことは、加熱要素に近接する基材が存在しない状况と比較して、加熱要素からの熱損失率に影響を及ぼすことになる。1つの実施形態において、装置乃至装置は、加熱要素と接触した状態でエアロゾル形成基材を収容するように構成されている。従って、加熱要素は、熱伝導によって基材に熱を奪われる。装置は、使用時に基材が加熱要素を取り囲むように構成することができる。
【0013】
コントローラは、電力又はエネルギの測定値が電力又はエネルギの閾値測定値未満の場合に、電力源から加熱要素への電力供給をゼロに減少させるように構成することができる。加熱要素の温度を目標温度に維持するのに必要なエネルギ量が期待量未満の場合、これは、装置内にエアロゾル形成基材が存在しないこと、又は装置内にすでに使用した基材のような不適切な基材が存在することに起因する可能性がある。一般的に、すでに使用した基材は、新しい基材よりも水分含量が少なく、エアロゾル生成物の含有量も少ないので、加熱要素からのエネルギの引き込みが少ないはずである。いずれの場合も、一般に加熱器への電力供給を停止することが好ましい。
【0014】
電力源は、例えば直流電圧電源といった任意の適切な電源とすることができる。電源は、バッテリとすることができる。1つの実施形態において、電源は、リチウムイオンバッテリである。代替的に、電源は、ニッケル水素バッテリ、ニッケルカドミウムバッテリ、又は例えば、リチウムコバルト、リン酸鉄リチウム又はリチウムポリマーバッテリ等のリチウム系バッテリとすることができる。電力は、加熱要素に対してパルス信号で供給することができる。加熱要素に供給される電力量は、電力信号のデューティサイクル又はパルス幅を変えることによって調整できる。
【0015】
コントローラは、加熱要素の電気抵抗の測定値に基づいて該加熱要素の温度を監視するように構成することができる。これにより、追加の検知ハードウェアを必要とせずに加熱要素の温度を検出することができる。
【0016】
加熱器の温度は、数ミリ秒毎といった所定の時間間隔で監視することができる。これは、連続して行うこと又は電力が加熱要素に供給される期間にのみ行うことができる。
【0017】
装置は、データ出力手段と、加熱要素に近接するエアロゾル形成基材の存在又は加熱要素に近接するエアロゾル形成基材の材料特性の検出した記録をデータ出力手段に送るように構成されているコントローラとを含むことができる。基材検出記録は、臨床解析時に不適当なデータが使用されることを防止するために有用な場合がある。例えば、エアロゾル発生装置は、コントローラに接続された無線装置又はコントローラに接続されたユニバーサルシリアルバス(USB)ソケットを含むことができる。代替的に、エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生装置が再充電される度に、データを適切なデータ接続部経由でメモリからバッテリ充電装置の外部メモリに送るように構成することができる。装置は、その目的ために特別な接点を備えることができる。
【0018】
また、装置は、不揮発性メモリを含むことができる。コントローラは、メモリ内に基材検出記録を記憶するように構成することができる。メモリは、より大きな永久的外部メモリに又は直接データ処理装置に記録が送られる前に、記録を一時的にデータ蓄積することができる。
【0019】
1つの実施形態において、コントローラは、電力源の充電作用時、データ出力手段に、加熱要素に近接するエアロゾル形成基材の存在又は加熱要素に近接するエアロゾル形成基材の材料特性の測定した記録を送るように構成されている。装置は、基材検出記録を長期間記憶するための大容量メモリを有する充電装置に接続することができる。
【0020】
装置は、電気式喫煙装置とすることができる。エアロゾル発生装置は、電気加熱器を備える電気加熱式喫煙装置とすることができる。用語「電気加熱器」は、1つ又はそれ以上の電気加熱要素を指す。
【0021】
電気加熱器は、単一の加熱要素を備えることができる。代替的に、電気加熱器は、2つ以上の加熱要素を備えることができる。単一の加熱要素又は複数の加熱要素は、エアロゾル形成基材を最も効率的に加熱するように適切に配置することができる。
【0022】
電気加熱器は、電気抵抗材料を含むことができる。適切な電気抵抗材料としては、限定されるものではないが、ドープセラミックスのような半導体、「導電性」セラミックス(例えば、二珪化モリブデン)、炭素、グラファイト、金属、金属合金、及びセラミック材料及び金属材料から作られる複合材料を挙げることができる。このような複合材料は、ドープ又は非ドープセラミックスを含むことができる。適切なドープセラミックスの例としては、ドープ炭化ケイ素を挙げることができる。適切な金属の例としては、チタニウム、ジルコニウム、タンタル、及び白金族金属を挙げることができる。適切な金属合金の例としては、ステンレス鋼、ニッケル−、コバルト−、クロム−、アルミニウム−チタニウム−ジルコニウム−、ハフニウム−、ニオビウム−、モリブデン−、タンタル−、タングステン−、錫−、ガリウム−、マンガン、金−、及び鉄含有合金、及びニッケル、鉄、コバルト、ステンレス鋼、Timetal(登録商標)、及び鉄−マンガン−アルミニウムベースの合金をベースにした超合金を挙げることができる。複合材料において、随意的にエネルギ伝達の動力学及び所要の外部物理化学的特性に基づいて、電気抵抗材料は、絶縁材料に埋め込むこと、封入すること、又はそれでコーティングすること、又はその逆とすることができる。代替的に、電気加熱器は、赤外線加熱要素、光学的ソース、又は誘導加熱要素を含むことができる。
【0023】
電気加熱器は、任意の適切な形態とすることができる。例えば、電気加熱器は、加熱ブレードの形態とすることができる。代替的に、電気加熱器は、異なる導電性部分を有するケーシング又は基材、又は電気抵抗材料の管体の形態とすることができる。代替的に、すでに説明したように、エアロゾル形成基材の中心を貫通する1つ又はそれ以上の加熱ニードル又はロッドとすることができる。代替的に、電気加熱器は、円板型(端部)加熱器、又は円板型加熱器を加熱ニードル又はロッドに組み合わせたものとすることができる。別の例として、例えば、Ni−Cr(ニッケル−クロム)、白金、金、銀、タングステン、又は合金ワイヤである加熱ワイヤ又はフィラメント、又は加熱プレートを含む。随意的に、加熱要素は、硬質担体材料上に堆積させることができる。このような1つの実施形態において、電気抵抗加熱器は、温度と抵抗率との間で所定の関連性を有する金属を用いて形成することができる。このような例示的な装置において、セラミック材料のような適切な絶縁材料上に金属のトラックを形成し、次にガラスのような他の絶縁材料でサンドイッチすることができる。このようにして形成された加熱器は、作動時に加熱器を加熱すると共に温度を監視するために使用することができる。
【0024】
電気加熱器は、吸熱及び蓄熱して、後で経時的にエアロゾル形成基材に対して放熱することができる材料を備える、ヒートシンク又はヒートリザーバを備えることができる。ヒートシンクは、好適な金属又はセラミック材料等の何らかの好適な材料から形成することができる。1つの実施形態において、材料は、高い熱容量を有する(顕熱蓄熱材料)か、又は吸熱後に高温相変化のような可逆プロセスによって放熱することができる材料であることが好ましい。好適な顕熱蓄熱材料には、シルカゲル、アルミナ、炭素、ガラスマット、ガラス繊維、無機物、及びアルミニウム、銀、もしくは鉛等の金属又は合金、並びに紙などのセルロース材料が挙げられる。可逆的相変化によって放熱する他の好適な材料には、パラフィン、酢酸ナトリウム、ナフタレン、ワックス、ポリエチレンオキシド、金属、金属塩、共晶塩の混合物、又は合金が挙げられる。
【0025】
ヒートシンク又はヒートリザーバは、エアロゾル形成基材と直接接触して、蓄熱を直接エアロゾル形成基材に伝達できるように配置することができる。代替的に、ヒートシンク又はヒートリザーバに貯えられた熱は、金属管体のような熱伝導体によってエアロゾル形成基材に伝達することができる。
【0026】
電気加熱器は、エアロゾル形成基材を熱伝導で加熱することができる。使用時、電気加熱器は、少なくとも部分的に基材、又は基材が堆積された担体に接触することができる。代替的に、電気加熱器からの熱は、熱伝導要素によって基材に伝達することができる。
【0027】
1つの実施形態において、電気加熱器の1つ又は複数の加熱要素が約250℃から440℃の間の温度に達するまで、電気加熱器に電力が供給される。上述した二重用途加熱器を含む1つ又は複数の加熱要素が約250℃から440℃の間の温度に達するように加熱を制御するために、任意の適切な温度センサ及び制御回路を用いることができる。このことは、タバコ及びシガレットラッパーの燃焼温度が800℃に達する従来のシガレットとは対照的である。
【0028】
コントローラは、プログラマブルマイクロプロセッサを備えることができる。別の実施形態において、コントローラは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)又は特定用途向け集積回路(ASIC)などの専用電子チップを備えることができる。一般に、本明細書で説明した実施形態に適合する、加熱要素を制御できる信号を提供できる任意の装置を使用することができる。1つの実施形態において、コントローラは、加熱要素の温度と目標温度との差異を監視して、ユーザの吸入を示す加熱要素を通過する空気流の変化を検出するように構成されている。
【0029】
エアロゾル形成基材は、喫煙物品に含めることができる。作動時、エアロゾル形成基材を含む喫煙物品は、完全にエアロゾル発生装置内に収容される。この場合、ユーザは、エアロゾル発生装置のマウスピース上で吸煙することができる。マウスピースは、エアロゾル発生物品又はエアロゾル発生装置が発生するエアロゾルを直接ユーザの口腔内へ吸入するためにユーザの口腔内に入れられる、エアロゾル発生装置の任意の部分とすることができる。エアロゾルは、マウスピースを通過してユーザの口腔内に運ばれる。代替的に、作動時、エアロゾル形成基材を含む喫煙物品は、エアロゾル発生装置内に部分的に収容することができる。この場合、ユーザは、喫煙物品のマウスピースで直接吸煙することができる。
【0030】
喫煙物品は、ほぼ円筒形とすることができる。喫煙物品は、ほぼ細長い形状とすることができる。喫煙物品は、全長及び該全長にほぼ直交する外周を有することができる。エアロゾル形成基材は、ほぼ円筒形とすることができる。エアロゾル形成基材は、ほぼ細長い形状とすることができる。また、エアロゾル形成基材は、全長及び該全長にほぼ直交する外周を有することができる。エアロゾル形成基材は、エアロゾル発生装置のスライド容器内に収容することができ、エアロゾル形成基材の全長が、エアロゾル発生装置の空気流の方向にほぼ平行となっている。
【0031】
喫煙物品の全長は、約30mmから約100mmとすることができる。喫煙物品の外径は、約5mmから約12mmとすることができる。喫煙物品は、フィルタプラグを備えることができる。フィルタプラグは、喫煙物品の下流端に設けることができる。フィルタプラグは、セルロースアセテートフィルタプラグとすることができる。1つの実施形態において、フィルタプラグの長さは、約7mmであるが、約5mmから約10mmの長さをもつことができる。
【0032】
1つの実施形態において、喫煙物品の全長は、約45mmである。喫煙物品の外径は、約7.2mmとすることができる。さらに、エアロゾル形成基材の長さは、約10mmとすることができる。代替的に、エアロゾル形成基材の長さは、約12mmとすることができる。さらに、エアロゾル形成基材の外径は、約5mmから約12mmである。喫煙物品は、外側紙ラッパーを含むことができる。さらに、喫煙物品は、エアロゾル形成基材とフィルタプラグとの間に離隔距離を含むことができる。離隔距離は、約18mmとすることができるが、約5mmから約25mmの範囲とすることができる。
【0033】
エアロゾル形成基材は、固形のエアロゾル形成基材とすることができる。代替的に、エアロゾル形成基材は、固形及び液体成分を含むことができる。エアロゾル形成基材は、加熱時に基材から放出された揮発性タバコ香味化合物を含有する、タバコ含有材料を含むことができる。代替的に、エアロゾル形成基材は、非タバコ材料を含むことができる。エアロゾル形成基材は、高濃度で安定したエアロゾルの生成を助長するエアロゾル生成物をさらに含むことができる。適切なエアロゾル生成物の例は、グリセリン及びプロピレングリコールである。
【0034】
エアロゾル形成基材が固形エアロゾル形成基材である場合、固形エアロゾル形成基材は、例えば、1つ又はそれ以上の、粉体、粒体、ペレット、細断片、スパゲティ、ストリップ、又はシートを含むことができ、これらは1つ又はそれ以上のハーブ葉、タバコ葉、タバコ茎の断片、再構成タバコ、均質化タバコ、押し出しタバコ、及び膨張タバコを含むことができる。固形エアロゾル形成基材は、容器に入っていない形態とすること、又は適切な容器又はカートリッジで提供することができる。随意的に、固形エアロゾル形成基材は、追加のタバコ又は非タバコ揮発性香味化合物を含むことができ、基材の加熱時に放出されることになる。また、固形エアロゾル形成基材は、例えば、追加のタバコ又は非タバコ揮発性香味化合物を含むカプセルを有することができ、このカプセルは、固形エアロゾル形成基材の加熱時に溶融する。
【0035】
本明細書で用いる場合、均質化タバコは、凝集粒子状タバコで形成された材料を指す。均質化タバコは、シートの形態とすることができる。均質化タバコ材料のエアロゾル生成物の含有量は、乾燥重量ベースで5%よりも多い。代替的に、均質化タバコ材料のエアロゾル生成物の含有量は、乾燥重量ベースで5%から30%の間とすることができる。均質化タバコ材料シートは、タバコ葉身及びタバコ葉柄の一方又は両方を破砕又は粉砕することで得られる凝集粒子状タバコで形成することができる。代替的に又は追加的に、均質化タバコ材料シートは、例えば、タバコの処理時、搬送時、及び配送時に生じる1つ又はそれ以上のタバコの灰、タバコの粉末、及び他の粒子状タバコ副生成物を含むことができる。均質化タバコ材料シートは、粒子状タバコの凝集を助けるために、タバコ内因性のバインダである1つ又はそれ以上の内因性バインダ、タバコ外因性のバインダである1つ又はそれ以上の外因性バインダ、又はこれらの組み合わせを含むことができる。代替的に又は追加的に、限定されるものではないが、均質化タバコ材料シートは、タバコ及び非タバコ繊維、エアロゾル生成物、湿潤剤、可塑剤、香味料、増量剤、水性溶媒又は非水溶媒、及びこれらの組み合わせを含む他の添加物を含むことができる。
【0036】
特に好ましい実施形態において、エアロゾル形成基材は、均質化タバコ材料のギャザー付き皺寄せシートを含む。本明細書で用いる場合、用語「皺寄せシート」は、複数のほぼ平行な隆起部又は皺部を有するシートを指す。好ましくは、エアロゾル発生物品が組み立てられた場合、ほぼ平行な隆起部又は皺部は、エアロゾル発生物品の長手方向軸に沿って又はそれに平行に延在する。これは、エアロゾル形成基材を形成するために、好都合に均質化タバコ材料の皺寄せシートのギャザー寄せを助長する。しかしながら、代替的に又は追加的に、エアロゾル発生物品内に包含する均質化タバコ材料の皺寄せシートは、エアロゾル発生物品が組み立てられた場合に、エアロゾル発生物品の長手方向軸線に対して鋭角又は鈍角でもって配置されるほぼ平行な複数の隆起部又は波形部を有することができることを理解されたい。特定の実施形態において、エアロゾル形成基材は、全表面上にほぼ均一に凹凸を付けた均質化タバコ材料のギャザー付きシートを含むことができる。例えば、エアロゾル形成基材は、シートの幅を横切ってほぼ均一に離間した複数のほぼ平行な隆起部又は波形部を備える、均質化タバコ材料のギャザー付きの皺寄せシートを含むことができる。
【0037】
随意的に、固形エアロゾル形成基材は、熱的に安定した担体上に設けること又はそれに組み込むことができる。担体は、粉体、粒体、ペレット、細断片、スパゲティ、ストリップ、又はシートの形態とすることができる。代替的に、担体は、その内面、外面、又は内面及び外面の両面に堆積された薄層の固形基材を有する管状担体とすることができる。このような管状担体は、例えば、紙又は紙状材料、不織布炭素繊維マット、低質量の目の荒いメッシュの金属スクリーン、又は有孔金属箔、又は他のあらゆる耐熱性ポリマーマトリクスの形を成すことができる。
【0038】
固形エアロゾル形成基材は、例えば、シート、発泡体、ゲル、又はスラリーの形態で担体表面に堆積することができる。固形エアロゾル形成基材は、担体の全表面に堆積すること、又は代替的に使用時に不均一な香味送出をもたらすために所定のパターンで堆積することができる。
【0039】
前述の固形エアロゾル形成基材を参照したが、他の実施形態において当業者には他の形態のエアロゾル形成基材を利用できることは明らかである。例えば、エアロゾル形成基材は、液体エアロゾル形成基材とすることができる。液体エアロゾル形成基材を設ける場合、エアロゾル発生装置は、液体を保管する手段を備えることが好ましい。例えば、液体エアロゾル形成基材は、容器内に保管することができる。代替的に又は追加的に、液体エアロゾル形成基材は、多孔性担体材料内に吸収することができる。多孔性担体材料は、何らかの適切な吸収プラグ又は吸収体で作られており、例えば、発泡金属又はプラスチック材料、ポリプロピレン、テリレン、ナイロン繊維、又はセラミックである。液体エアロゾル形成基材は、エアロゾル発生装置の使用前に多孔性担体材内に保持すること、又は代替的に、液体エアロゾル形成基材材料は、使用中又は直前に多孔性担体材料内に放出することができる。例えば、液体エアロゾル形成基材は、カプセル内に設けることができる。カプセルの殻は、加熱されると溶けて液体エアロゾル形成基材を多孔性担体材料内に放出することが好ましい。随意的に、カプセルは、液体エアロゾル形成基材と一緒に固形エアロゾル形成基材を含むことができる。
【0040】
代替的に、担体は、タバコ成分が組み込まれた不織布又は繊維束とすることができる。不織布又は繊維束は、例えば、炭素繊維、天然セルロース繊維、又はセルロース誘導体繊維を含むことができる。
【0041】
さらに、エアロゾル発生装置は、空気入口を備えることができる。さらに、エアロゾル発生装置は、空気出口を備えることができる。さらに、エアロゾル発生装置は、所望の特性を有するエアロゾルを形成可能とするための凝縮チャンバを備えることができる。
【0042】
エアロゾル発生装置は、ユーザが片手の指の間に楽に保持することできる、手持ち型エアロゾル発生装置であることが望ましい。エアロゾル発生装置は、ほぼ円筒形とすることができる。エアロゾル発生装置は、多角形横断面を有し、一面には突出ボタンが形成されている。この実施形態において、エアロゾル発生装置の外径は、平坦面から反対側の平坦面まで測定した場合、約12.7mmから約13.65mmの間、縁部から反対側の縁部まで(即ち、エアロゾル発生装置の片側の2つの表面の交差部から他方側の対応する交差部まで)測定した場合、約13.4mmから約14.2mmの間、及び底部の頂部から反対側の底部平坦面まで測定した場合、約14.2mmから約15mmの間とすることができる。エアロゾル発生装置の長さは、約70mmから約120mmの間とすることができる。
【0043】
本発明の別の態様において、加熱要素に近接するエアロゾル形成基材の存在及びエアロゾル発生装置内のエアロゾル形成基材の材料特性を検出する方法が提供され、エアロゾル発生装置は、エアロゾル形成基材を加熱するように構成された加熱要素及び該加熱要素に接続された電力源を含み、本方法は、
電力源から加熱要素に供給される電力を制御して加熱要素の温度を目標温度に維持する段階と、電力源から加熱要素に供給される電力の測定値又は加熱要素に供給されるエネルギの測定値を電力又はエネルギの閾値測定値と比較する段階と、該比較する段階の結果に基づいて加熱要素に近接するエアロゾル形成基材の存在又は加熱要素に近接するエアロゾル形成基材の材料特性を判定する段階とを含む。
【0044】
電力又はエネルギの測定値は、所定期間にわたる又は所定の測定繰り返し回数にわたる平均電力、電力又はエネルギの変化速度、又は所定期間にわたる又は所定の測定繰り返し回数にわたる累積測定値を含む、任意の電力又はエネルギの測定値とすることができる。
【0045】
1つの実施形態において、エネルギの測定値は、所定時間期間にわたる正規化エネルギである。別の実施形態において、エネルギの測定値は、所定時間期間にわたる正規化エネルギの減少速度である。
【0046】
本方法は、さらに、電力又はエネルギの測定値が電力又はエネルギの閾値測定値未満である場合には、電力源から加熱要素への電力の供給をゼロに減少させる段階を含むことができる。加熱要素の温度を目標温度に到達させて維持するのに必要なエネルギ量が期待量未満の場合、これは、装置内にエアロゾル形成基材が存在しないこと、又は装置内にすでに使用した基材のような不適切な基材が存在することに起因する可能性がある。何れの場合も、一般に加熱器への電力供給を停止することが好ましい。
【0047】
本方法は、加熱要素の電気抵抗の測定値に基づいて加熱要素の温度を監視する段階を含むことができる。
【0048】
本発明の別の態様において、コンピュータ又は他の適切な処理装置で実行される場合、上述の方法を実行するコンピュータ可読プログラムが提供される。本明細書は、プログラマブルコントローラ並びに他の所要のハードウェア要素を有するエアロゾル発生装置で作動するのに適したソフトウェア製品として実装することができる実施形態を含む。
【0049】
各実施形態は、以下に添付図面を参照して例示的に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】1つの実施形態によるエアロゾル発生装置の基本的な要素を示す概略図である。
図2】1つの実施形態の制御要素を示す概略図である。
図3】加熱要素に隣接する基材が新しい場合、古い場合、又は存在しない場合の温度を目標レベルに維持するために加熱要素に供給する必要がある正規化エネルギの差異を示すグラフである。
図4】適切な基材が装置に存在するか否かを判定するための制御シーケンスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
図1には、1つの実施形態の電気加熱式エアロゾル発生システム100の内部が簡易的に示されている。詳細には、電気加熱式エアロゾル発生システム100の各構成要素は、縮尺通りには示されていない。図1を単純化するために、システムの理解に無関係な構成要素は、省略されている。
【0052】
電気加熱式エアロゾル発生システム100は、ハウジング10及び例えばシガレットであるエアロゾル形成基材2を備える。エアロゾル形成基材2は、ハウジング10内部に押し込まれて加熱要素20に熱的に近接した状態になる。エアロゾル形成基材2は、異なる温度でさまざまな揮発性化合物を放出することになる。エアロゾル形成基材2から放出されるいくつかの揮発性化合物は、加熱プロセスを通してのみ形成される。各揮発性化合物は、特有の放出温度以上で放出されることになる。電気加熱式エアロゾル発生システム100の最大作動温度を一部の揮発性化合物の放出温度未満に制御することによって、これらの煙成分の放出又は形成を避けることができる。
【0053】
さらに、ハウジング10は、例えば、充電式リチウムイオンバッテリである電気エネルギ供給部40を備える。コントローラ30が、加熱要素20、電気エネルギ供給部40、吸煙検出部32、及び例えば表示部である図形ユーザインタフェース36に接続されている。
【0054】
コントローラ30は、ユーザインタフェース36を制御して、例えば、バッテリ電力、温度、エアロゾル形成基材2の状態、他のメッセージ、又はこれらの組み合わせ等のシステム情報を表示するようになっている。
【0055】
吸煙検出器32は、随意的な構成要素であり、ユーザが吸煙したことを示す装置内の空気流を検出するようになっている。吸煙検出器は、そのような吸煙をコントローラ30に信号で伝える。
【0056】
さらに、コントローラ30は、加熱要素20の最大作動温度を制御する。加熱要素の温度は、専用の温度センサで検出することができる。しかしながら、この実施形態において、加熱要素の温度は、電気抵抗率を監視することによって判定することができる。ワイヤの所定長さの電気抵抗率はその温度に依存する。抵抗率ρは、温度が高くなると大きくなる。実際の抵抗率ρ特性は、加熱要素20の正確な合金成分及び幾何学的構造に応じて変化することになり、コントローラは、実験的に決定した関係性を利用することができる。従って、所定時間の抵抗率ρの知識を利用して、加熱要素20の実際の作動温度を推測することができる。
【0057】
加熱要素の抵抗はR=V/Iであり、Vは加熱要素の両端の電圧、Iは加熱要素20を通過する電流である。抵抗Rは、加熱要素20の構成並びに温度に左右され、以下の関係式で表すことができ、
R=ρ(T)*L/S 式(1)
式中、ρ(T)は温度に依存する抵抗率、Lは加熱要素20の長さ、Sは加熱要素20の断面積である。L及びSは、加熱要素20の所定の構成では一定であり測定可能である。従って、所定の加熱要素デザインに関して、Rはρ(T)に比例する。
【0058】
加熱要素の抵抗率ρ(T)は、以下の多項式で表すことができ、
ρ(T)=ρ0*(1+α1T+α22) 式(2)
式中、ρ0は基準温度T0での抵抗率、α1及びα2は多項式係数である。
【0059】
従って、加熱要素20の長さ及び断面積が分かると、加熱要素の電圧V及び電流Iを測定することによって、所定温度での抵抗R、従って抵抗率ρを決定することができる。温度は、使用する加熱要素に関する特有の抵抗率−温度の関係性のルックアップテーブルから単純に得ること、又は前述の多項式(2)の値を求めることで得ることができる。好ましくは、このプロセスは、タバコに適用できる温度範囲における1つ又はそれ以上の、好ましくは2つの直線近似で、抵抗率ρ−温度曲線を表すことによって単純化することができる。このことは温度の評価を単純化するが、これは、計算資源が限られるコントローラ30に望ましいものである。
【0060】
図2は、図1の装置の制御要素を示すブロック図である。また、図2は、エアロゾル発生装置が外部装置58に接続されていることを示す。コントローラ30は、測定ユニット50及び制御ユニット52を含む。測定ユニットは、加熱要素20の抵抗Rを決定するように構成されている。測定ユニット50は、抵抗測定値を制御ユニット52に送る。次に、制御ユニット52は、トグルスイッチ54によってバッテリ40から加熱要素20への電力供給を制御する。コントローラは、マイクロプロセッサ並びに別個の電子制御回路を備えることができる。
【0061】
温度を制御するために、電気加熱式エアロゾル発生システム100の目標作動温度を選択する。この選択は、放出するはずの又は放出すべきではない揮発性化合物の放出温度に基づく。次に、この所定値を制御ユニット52に記憶する。制御ユニット52は、不揮発性メモリ56を含む。
【0062】
コントローラ30は、バッテリから加熱要素20への供給電気エネルギを制御することによって加熱要素20の加熱を制御する。スイッチ54を切替えることによって、電力は、パルス信号として供給される。制御ユニット52は、この信号のパルス幅又はデューティサイクルを調節して加熱要素に供給されるエネルギ量を変更する。
【0063】
使用時、コントローラ30は、加熱要素20の抵抗率ρを測定する。次に、コントローラ30は、加熱要素20の抵抗率を、測定した抵抗率ρをルックアップデーブルと比較することによって、実際の加熱要素の作動温度に変換する。これは、測定ユニット50又は制御ユニット52が行うことができる。次のステップでは、コントローラ30は、得られた実際の作動温度を目標作動温度と比較する。実際の作動温度が目標作動温度以下の場合、制御ユニット52は、加熱要素20の実際の作動温度を上昇させるために加熱要素20に追加の電気エネルギを供給する。実際の作動温度が目標作動温度を超える場合、制御ユニット52は、実際の作動温度を目標作動温度に戻すために加熱要素20に供給される電気エネルギを減少させる。
【0064】
制御ユニットは、単純な温度自動調節フィードバックループ又は比例、積分、微分(PID)制御策略といった何らかの適切な制御技術を実行して温度を調節することができる。
【0065】
加熱要素を目標温度に到達させてこれを目標温度に維持するのに必要なエネルギ量は、加熱要素20に近接して基材材料2が存在するか否か、及び基材の特性によって決まる。図3は、時間の関数で加熱要素に供給される正規化エネルギの漸進的な変化を示す。曲線60は、新しい基材が装置内に存在する場合の正規化エネルギであり、曲線61は、基材が装置内に無い場合の正規化エネルギである。正規化エネルギは、初期エネルギ測定値に対して正規化された一定期間内に供給されるエネルギである。エネルギの正規化測定は、外気温度、空気流量、及び湿度等の環境状態の影響を最小にする。
【0066】
いずれの場合も、加熱要素に供給される電力は、加熱要素を目標温度に上げるための初期の高電力期間に続いて時間と共に単調に減少することが分かる。しかしながら、図3は、T=10秒において装置内の新しい基材に供給されるエネルギ量は、装置内に基材が無い場合のエネルギ量の約2倍であることを示している。新しい基材と既に加熱された基材との間の供給エネルギの差は小さいが、それでも検出可能である。1つの実施形態において、正規化エネルギの差は、T=5秒で測定することができ、基材が存在するか否かを正確に判定することができる。
【0067】
コントローラは、所定時間に至るまでに加熱要素に供給される正規化エネルギを計算することができ、これから予期された又は適切な基材が装置内に存在するか否かを判定することができる。
【0068】
図4は、基材が装置内に存在するか否かを判定するために制御ユニット52が実行する制御プロセスの実施例を示す。このプロセスは、ループプロセスでありステップ400で始まる。ステップ410において、ラウンド数(round number)を増加させる。プロセスの開始時には、ラウンド数はゼロに設定される。制御ループが通過する度にラウンド数は、ステップ410で増加される。ステップ420において、プロセスは、ラウンド数に基づいて分岐する。最初のループでラウンド数が1に等しい場合、プロセスは、ステップ430に進む。ステップ430において、初期エネルギ、つまり、加熱器にここまで供給したエネルギをエネルギとして設定する。この初期エネルギは、その後のエネルギ測定値を正規化するために利用する。次に、プロセスは、ステップ440に進みステップ410に戻る。その後のラウンドは、判定ラウンドに達するまでステップ420からステップ440に直接進む。各ラウンドは、一定の時間間隔、例えば2秒毎に実行することができる。判定ラウンドは、コントローラが正規化エネルギを予期値又は閾値と比較して基材が存在するか否かを判定するように構成される時間に対応する。正規化エネルギの閾値は、図3において破線64で示される。本実施例において、判定ラウンドは、5番目のラウンドであり、装置の作動から10秒後に発生する。判定ラウンドにおいて、プロセスは、ステップ420からステップ450に進む。ステップ450において、正規化エネルギは、装置がスイッチオンになった以降に供給されるエネルギを初期エネルギに判定ラウンド数(本実施例では5)を乗算したもので除算することによって計算される。次に、ステップ460において、計算した正規化エネルギを閾値と比較する。正規化エネルギが閾値を超える場合には、制御ユニットは、適切な基材が存在すると判定し、装置は、継続して使用できる。正規化エネルギが閾値を超えない場合、制御ユニットは基材が存在しない(又は不適切な基材が存在する)と判定し、制御ユニットは、スイッチ54を開放することによって加熱要素への電力供給を防止する。
【0069】
図4に示すプロセスは、エアロゾル発生装置内に適切な基材が存在するか否かを判定するためのプロセスの1つの実施例にすぎない。加熱要素に供給される電力又はエネルギの他の測定値を用いることができ、正規化又は非正規化データを用いることができる。また、判定を行う時間は選択事項である。必要であれば、早期に対応策をとるための早期判定の利点は、信頼できる結果を得るための要件とバランスをとる必要がある。
【0070】
電力又はエネルギの測定値は、複数の閾値と比較することができる。これは、別のタイプの基材を区別するために、又は基材が不適切であることと何らかの基材が無いこととを区別するために有用であろう。
【0071】
エアロゾル発生装置の動的制御で有用であることは勿論のこと、コントローラ30が決定した基材検出データは、臨床試験の解析目的で有用であろう。図2は、ディスプレイ59を含む外部装置58に対するコントローラ30の接続を示す。基材検出データは、(何らかの他の取得データと一緒に)外部装置58にエクスポートすることができ、さらに装置58から他の外部処理又はデータ記憶装置60に送り込むことができる。エアロゾル発生装置は、何らかの適切なデータ出力手段を含むことができる。例えば、エアロゾル発生装置は、コントローラ30又はメモリ56に接続された無線装置、又はコントローラ30又はメモリ56に接続されたユニバーサルシリアルバス(USB)ソケットを含むことができる。代替的に、エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生装置が再充電される度に、データを適切なデータ接続部経由でメモリからバッテリ充電装置の外部メモリに送るように構成することができる。バッテリ充電装置は、長期の吸煙データを記憶するために大容量メモリを備えることができ、後で適切なデータ処理装置又は通信ネットワークに接続することができる。
【0072】
前述の例示的な実施形態は例示であり限定的ではない。当業者には、前述の例示的な実施形態に鑑みて前述の例示的な実施形態と一貫性のある他の実施形態が明らかになるはずである。
【符号の説明】
【0073】
2 基材
10 ハウジング
20 加熱要素
30 コントローラ
40 電気エネルギ供給部
50 測定ユニット
52 制御ユニット
56 不揮発性メモリ
58 外部装置
100 エアロゾル発生システム
図1
図2
図3
図4