(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであり、より緻密な図形や模様を被転写物に描画することが可能であり、また、熱刻印ヘッドが被転写物を押圧している時間を可能な限り短くして、生産性を向上させることが可能な熱刻印ヘッドを提供することを目的とする。また、この熱刻印ヘッドを用いた箔押機、箔押方法、及びこれによって得られる被転写物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
特許文献1〜3には、熱刻印ヘッドを構成する材料についての記載はされていないが、銅を用いることが一般的である。本発明は、熱刻印ヘッドを構成する材料としてチタンを用いることで、上記課題を解決できることを見出し、完成されたものである。すなわち、本発明は、略円筒形状の軸部と、軸部の底面部に設けられた突起部とを有し、底面部および突起部がチタンを20質量%以上含有する、熱刻印ヘッドに関する。
【0007】
本発明は、さらに、底面部および突起部の表面にチタン合金メッキ層を有する、熱刻印ヘッドであることが好ましい。
【0008】
本発明は、さらに、突起部の直径が2mm以下である、熱刻印ヘッドであることが好ましい。
【0009】
本発明は、上記の熱刻印ヘッドを有する箔押機に関する。
【0010】
本発明は、上記の熱刻印ヘッドを有する箔押機を用いる箔押方法に関する。
【0011】
本発明は、上記の熱刻印ヘッドを有する箔押機を用いて転写された被転写物品に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱刻印ヘッドを用いることにより、より緻密な図形や模様を被転写物に描画することが可能となり、また、熱刻印ヘッドが被転写物を押圧している時間を可能な限り短くして、生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0015】
本発明の熱刻印ヘッドは、略円筒形状の軸部と、軸部の底面部に設けられた突起部とを有する。略円筒形状の軸部はその内部に略円柱状の空洞を有しており、ヒーターを挿入することで、熱刻印ヘッドを加熱することができる。
【0016】
本発明の熱刻印ヘッドは、その軸部の底面部に突起部を有する。このような構造であることにより、突起部に熱が伝わりやすくなり、箔押しのための熱効率が高くなる。突起部を設けずに、例えば、熱刻印ヘッドの全体が略円錐形状である場合は、転写物を押圧する部分である突起部の先端に十分な熱が伝わらず、結果として、うまく転写できなくなる。
【0017】
本発明の熱刻印ヘッドの形状は、特に限定されないが、例えば、
図1および
図2に示す形状の熱刻印ヘッドが挙げられる。
図1(a)に示す熱刻印ヘッド10は、略円筒形状の軸部12と、軸部12の底面部13に設けられた突起部11とを有する。
【0018】
熱刻印ヘッドの軸部の形状は、特に限定されないが、
図1(a)に示す熱刻印ヘッド10の軸部12のような略円筒形状の他に、
図1(b)に示す熱刻印ヘッド20に示すように、直径の大きい軸部22と直径の小さい軸部25とを組み合わせた形状であってもよい。
【0019】
熱刻印ヘッド10の軸部12は、
図2(a)に示すように、ヒーターを挿入するための軸孔14を有する。同様に、熱刻印ヘッド20の軸部22は、
図2(b)に示すように、軸孔24を有するものであり、熱刻印ヘッド30の軸部32は、
図2(c)に示すように、軸孔34を有する。
【0020】
熱刻印ヘッドの突起部の形状は、特に限定されないが、例えば、
図1(a)に示す熱刻印ヘッド10の突起部11のような略円錐形状の他に、
図1(b)に示す熱刻印ヘッド20の突起部21のような全長の短い略円錐形状や、
図1(c)に示す熱刻印ヘッド30の突起部31のような針形状であってもよい。
【0021】
本発明の熱刻印ヘッドにおいては、その軸部の底面部および熱刻印ヘッドの突起部(以下、「熱刻印ヘッドの先端部」という。)がチタンを20質量%以上含有する。熱刻印ヘッドの先端部に含有されるチタンは、40質量%以上であることが好ましく、60質量%であることがより好ましく、80質量%であることがさらに好ましい。
【0022】
チタンは他の金属と比較して熱容量が小さい金属であるため、より少ない熱エネルギーで熱刻印ヘッドを高温に維持することが可能となる。そのため、先端部が細くても、転写物に十分な熱を伝えることが可能となる。そのため、より緻密な図形や模様を被転写物に描画することができる。熱刻印ヘッドが被転写物を押圧している時間をより短くしたとしても、転写物に十分な熱を伝えることができるため、転写により被転写物品の生産性を向上させることができる。
【0023】
熱刻印ヘッドの先端部に用いられるチタン以外の金属材料は、特に限定されないが、銅や鉄などが挙げられる。
【0024】
本発明においては、熱刻印ヘッドの先端部の表面にチタン合金メッキ層を有することが好ましい。熱刻印ヘッドの先端部の表面が、チタン合金メッキ層を有することにより、熱刻印ヘッドの先端部の耐久性を向上させることができ、長時間の利用による熱刻印ヘッドの劣化を抑制することができる。
【0025】
熱刻印ヘッドの先端部の耐久性を向上させるためには、例えば、
図1(b)および
図2(b)に示すように、突起部21、軸部22および底面部23にチタン合金メッキを施す態様や、
図1(c)および
図2(c)に示すように、突起部31および底面部33にチタン合金メッキを施す態様が考えられる。
【0026】
チタン合金メッキを施す態様においては、熱刻印ヘッドの突起部の耐久性が向上するが、チタン合金メッキを施さなくても、チタンを含有する態様においては、熱刻印ヘッドの突起部に熱が伝わりやすくなっている。本発明の熱刻印ヘッドは、上記いずれの態様であっても、より緻密な図形や模様を被転写物に描画することが可能であり、また、熱刻印ヘッドが被転写物を押圧している時間を可能な限り短くして、生産性を向上させることができる。
【0027】
チタン合金を形成するチタン以外の金属は、特に限定されないが、例えば、スズ、マンガン、アルミニウム、バナジウム、鉄などが挙げられる。
【0028】
本発明の熱刻印ヘッドにおいては、その突起部の直径が2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがより好ましく、0.5mm以下であることがさらに好ましく、0.2mm以下であることがとりわけ好ましく、0.1mm以下であることが特に好ましい。熱刻印ヘッドの突起部の直径が2mmを超えると、緻密な図形や模様を描画することが難しくなる傾向にある。なお、ここでは、突起部の直径とは、底面部の結合部分における径をいう。
【0029】
本発明の熱刻印ヘッドにおいては、その突起部の全長が2〜3mmであることが好ましい。熱刻印ヘッドの突起部の全長が3mmを超えると、箔押しの際に、熱刻印ヘッドの突起部が折れやすくなる傾向にある。
【0030】
本発明の熱刻印ヘッドにおいて、その突起部の突起の角度は、30°以下であることが好ましく、20°以下であることがより好ましく、10°以下であることがさらに好ましい。突起部の突起の角度が30°を超えると、熱が箔に十分に伝わらず、適切な箔押しができなくなる傾向にある。
【0031】
熱効率の高い箔押しを実現する観点から、本発明の熱刻印ヘッドは、円筒状部材および運動用部材と組み合わせて用いることが好ましい。
【0032】
熱刻印ヘッド、円筒状部材および運動用部材の組み合わせの態様としては、例えば、
図3に示すような態様が挙げられる。
【0033】
図3に示す円筒状部材40は、熱刻印ヘッド10を嵌入させて支持するために、熱刻印ヘッド10の軸部12の外形と同一形状の嵌入穴41を嵌入機構として有する。また、円筒状部材40の嵌入機構が、熱刻印ヘッド10の軸部12の外形と同一形状の嵌入穴41を有することにより、熱刻印ヘッド10を加熱するための熱効率が向上する傾向にある。
【0034】
図3に示す運動用部材50は、円筒状部材40を挿通させて支持するために、円筒状部材40の軸部42の外形と同一形状の挿通孔51を挿通機構として有する。運動用部材50の軸部は、直径の小さい小軸部52と直径の大きい大軸部53とによって構成されている。小軸部52には、締結部品54が設けられており、小軸部52が雄ネジ、締結部品54が雌ネジの役割を担うような態様となっている。大軸部53と締結部品54との間にはバネ55が設けられている。
【0035】
なお、熱刻印ヘッド、円筒状部材および運動用部材は、それぞれが別の部材で構成されていることが好ましいが、例えば、熱刻印ヘッドと円筒状部材、円筒状部材と運動用部材、または熱刻印ヘッドと円筒状部材と運動用部材が、一体的な部材として構成された態様であってもよい。
【0036】
以下、本発明の箔押機およびそれを用いた箔押方法について、
図4を用いて説明する。
【0037】
図4は、本発明の箔押機の構造についての一例を簡易的に示したものである。
図4に示す箔押機100は、箔押台110、前後移動用部材120、左右移動用部材130、上下移動用部材140を有する。
【0038】
箔押台110は、台座111、支持台112、および支持台溝113を有する。台座111は支持台112に連結され、支持台112に支持台溝113が設けられている。支持台溝113は、前後移動用部材120を前後に移動させるための溝となる。
【0039】
前後移動用部材120は、支持板121、支持板122、および支持板121と支持板122とを連結させる連結板123を有する。支持板121と支持板122とによって形成される隙間は、左右移動用部材130を左右に移動させるための隙間となる。
【0040】
前後移動用部材120の前後移動の態様としては、前後移動用部材120に設けた電力供給機構または外部電源によって作動するモーターによって車輪を駆動させる態様や、コンピュータ制御によって前後移動用部材120を前後移動させる態様が考えられる。前後移動用部材120の前後移動を適切に行うためには、箔押台110の支持台溝113に、前後移動用部材120の移動方向に沿った直線状の溝を設け、その溝に前後移動用部材120の支持板122に設けた車輪を噛ませるような態様とすることが考えられる。
【0041】
左右移動用部材130は、前後移動用部材120の支持板121と支持板122との隙間に設けられる支持部材131と、上下移動用部材140を上下に移動させるため機構を有する移動機構板132を有する。また、左右移動用部材130は、上下移動用部材140を上下に移動させるための動力供給機構と熱刻印ヘッド10を加熱するための電力供給機構とを内包する箱体133を有する。箱体133からは、熱刻印ヘッド10を加熱するためのヒーターに電力を供給するためのコード134がコード穴135を介して外に出ている。
【0042】
左右移動用部材130の左右移動の態様としては、箱体133の中に設けられた電力供給機構または外部電源によって作動するモーターによって車輪を駆動させる態様や、コンピュータ制御によって左右移動用部材130を前後移動させる態様が考えられる。左右移動用部材130の左右移動を適切に行うためには前後移動用部材120の支持板122に、左右移動用部材130の移動方向に沿った直線状の溝を設け、その溝に左右移動用部材130の支持部材131に設けた車輪を噛ませるような態様とすることが考えられる。
【0043】
上下移動用部材140は、支持体141、支持体142、および支持体141と支持体142とを連結させる連結体143を有する。支持体141および支持体142は、運動用部材50を支持しつつ、上下移動用部材140を上下に移動させる。
【0044】
上下移動用部材140の上下移動は、左右移動用部材130の箱体133の中に設けられた動力供給機構の動力によって行われる。上下移動用部材140は、動力供給機構との連結機構と、左右移動用部材130に設けられた移動機構板132に沿って摺動するための摺動機構とを有するため、移動機構板132には、上下移動用部材140の連結機構および摺動機構を構成するための穴が設けられている(図示しない)。
【0045】
運動用部材50が、バネ55などの弾性体を有することにより、上下移動用部材140の上下移動に伴う箔押しの押圧力が適度に調整される。
【0046】
本発明の箔押機による箔押しは、台座111の上で行われる。台座111の上に、被転写物を乗せ、被転写物の上に転写物となる箔シートを載せる。熱刻印ヘッド10の滑りを良くするため、箔シートのうえにパラフィン紙を重ねたものを載せて、転写を行っても良い。加熱された熱刻印ヘッド10の突起部11が、上から箔シートを押圧することによって、転写物である箔シートが被転写物に転写され、被転写物品が得られる。
【0047】
熱刻印ヘッド10の突起部11の動きは、前後移動用部材120、左右移動用部材130および上下移動用部材140によって制御される。前後移動用部材120、左右移動用部材130および上下移動用部材140の動きは、各移動用部材に設けられた制御装置によって制御される。
【0048】
各移動用部材に設けられた制御装置は、転写する文字、記号、図形または模様等の画像から導出された画像信号を入力されることによって制御される。転写する文字等の画像は、CAD等によるコンピュータ画像処理によって作製することができる。
【0049】
本発明の熱刻印ヘッドを用いて転写できる箔の素材は、特に限定されないが、例えば、金、銀、プラチナ、アルミニウムなどの金属、顔料等が挙げられる。
【0050】
本発明の熱刻印ヘッドを用いて箔を転写される被転写物の素材は、特に限定されないが、例えば、布、皮、紙、木材、金属、プラスチックなどが挙げられる。