(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱可塑性樹脂により形成された裏面層、模様フィルムを含む意匠層、透明層及び表面保護層がこの順に積層され、前記意匠層の厚みが0.5〜1.5mmであり、床材の表面角部に面取り形状部が形成され、JIS K7106に準拠して測定される20℃での剛性度が500kgf/cm2〜1400kgf/cm2である床材の製造方法であって、
裏面層形成用熱可塑性樹脂ペースト層上に、意匠層形成用樹脂組成物、模様フィルム及び透明層形成用樹脂組成物を、この順に積層することにより、床材形成用積層体を得る工程(1)と、
前記床材形成用積層体を加熱して硬化させた後、前記硬化させた床材形成用積層体の表面のみに紫外線硬化樹脂を塗布し、紫外線を照射することにより、表面保護層を形成する工程(2)と、
前記表面保護層が形成された床材形成用積層体の表面角部に、切断刃とテーパー面を有する押圧刃を押圧することにより、打ち抜き加工と同時に面取り加工を施す工程(3)と、
を有することを特徴とする床材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各図において、各部材又は各部の長さ、厚み、及び大きさは、実際のものとは異なっていることに留意されたい。
【0020】
図1に示すように、本実施形態において、本発明の床材1は下から順に、裏面層5、意匠層4、透明層3、及び、表面保護層2が積層された層構成からなる。
【0021】
本発明の床材1は、その表面部1aの角部に面取り形状部6を有している。
表面部1aの角部に面取り形状部6を設けることにより、施工者が床材1を引き剥がす際に面取り形状部6、及び、床材1の側面部1bに指先やカッター、目打ち等の引っ掛け治具を引っ掛け易くなり、ピールアップ性を向上することができる。
また、本発明の床材1は、表面部1aの角部に面取り形状部6が形成されている。このため、床材間の境界に直角の角部が存在せず、床材間の境界を目立たなくすることができる。このことによって、床材相互間の段差を隠蔽することができる。
即ち、面取り形状部6の形成により床材相互間に形成される目地が上部において広く形成されるので、床材相互間に段差が生じた場合でも、その段差は目立たない。
さらに、床材相互間に段差が存在する場合、表面部1aの角部が直角であると、歩行時に素足や靴などの爪先がその段差部分に引っ掛かって歩行感を損なったり、床材1の表面層4を損傷する場合があるが、面取り形状部6の形成により歩行時の素足や靴などの爪先の引っ掛かりを抑制することができる。
本実施形態の面取り形状部6は平面であり、
図1において直線状に示されている。
上記面取り形状部6は、深さがTとなるように設けられている。ここで、上記深さTは、
図1に示すように、床材1の縦断面図において床材表面を示す線の延長線6cと、床材側面を示す直線の最上部6eとの距離である。
【0022】
上記深さTの値は、床材1を縦方向に切断して縦断面を形成し、床材1の表面に直線状の定規を置き、当該定規と、床材側面を表す線の最上部との距離を、他の定規で測定することにより得ることができる。
【0023】
上記面取り形状部の深さTは、0.1〜0.6mmであることが好ましい。また、0.2〜0.4mmであることがより好ましい。
上記深さTが浅すぎると、施工者が指先や、カッター、目打ち等の引っ掛け治具を引っ掛け難くなり、ピールアップ性向上効果を損ねるおそれがあり、また、歩行感を損ね、床材表面層を損傷するおそれがある。
一方、上記深さTが深すぎると、目地部の清掃が困難になりゴミが溜まりやすくなくなるおそれがあり、下層に積層した形状安定化層51や、裏面層形成熱可塑性樹脂層52が露出し、床材を敷設した際に床材の境界部分が目立つことにより美観を損なうおそれがある。
【0024】
また、上記面取り形状部の深さTは、透明層と意匠層との厚みの合計より浅いことが好ましい。
上記厚みの合計より深いと、下層に積層した形状安定化層51や裏面層形成熱可塑性樹脂層52が露出して、床材を敷設した際に床材の境界部分が目立つおそれがある。
【0025】
上記面取り形状部6は、
図1に示すように、床材1の縦断面図において、床材表面を表す辺を延長した辺6cと面取り形状部表面を表す辺6dで所定の角度αをなすように形成されている。
【0026】
上記角度αは、床材1を縦方向に切断して、縦断面を形成し、床材1の表面に直線状の定規を置き、当該定規と、面取り形状部表面とにより形成される角度を分度器で測定することにより測定することができる。
【0027】
上記面取り形状部の角度αは、30〜60度であることが好ましい。また、40〜50度であることがより好ましい。
【0028】
上記角度αが小さすぎると、床材1を敷設した場合に、面取り形状部6によって形成される目地の幅が広くなり過ぎて、床面に凹凸を生じ、歩行感を損なうおそれがある。また、歩行時につま先が引っ掛かり床材の表層部を損傷するおそれもある。
また、上記角度αが小さすぎると、目地が浅くなり、施工者が指先やカッター、目打ち等の引っ掛け治具を引っ掛け難くなるため、ピールアップ性向上効果を損ねるおそれがある。
【0029】
一方、上記角度αが大きすぎると、上記目地の幅が狭くなるので清掃性を損ね、施工者が指先やカッター、目打ち等の引っ掛け治具を引っ掛け難くなるのでピールアップ性を損ねるおそれがある。
また、上記角度αが大きすぎると、上記目地が深くなり、下層に積層した形状安定化層51や裏面層形成熱可塑性樹脂層52が露出し、床材を敷設した際に、床材の境界部分が目立ち、美観を損なうおそれがある。
【0030】
上記床材1の厚みは、1.60〜2.50mmであることが好ましい。また、1.80〜2.20mmであることがより好ましく、1.85〜2.15mmであることがさらに好ましい。
【0031】
床材1が厚すぎると施工者が床材1を上方に反らせることが困難となるので、下地面に敷設されている床材1を剥がし難くなる。また、床材1が重くなるため、複数枚を梱包して運搬する際に運搬作業が困難になる。さらに、樹脂層の厚みが厚くなるほど、経時的に寸法変化を起こしやすくなる。
【0032】
一方、上記床材1が薄すぎると、床材としての十分な強度が得られず、また、下地面に凹凸や目地等が有る場合、下地面の形状が床材1の表面に現れ、美観を損ねるおそれがある。
【0033】
なお、本明細書において、床材1、及び、各層の厚みは、(株)キーエンス社製のマイクロスコープ測定機により測定することができる。
【0034】
本発明の床材1は、JIS K7106に準拠して測定される20℃での剛性度が、500kgf/cm
2〜1400kgf/cm
2である。620kgf/cm
2〜1380kgf/cm
2であることが好ましく、640kgf/cm
2〜1360kgf/cm
2であることがより好ましい。上記剛性度は、床材の縦方向(長手方向)又は横方向(短手方向)の少なくとも何れか一方における剛性度である。
上記剛性度が高すぎると、上方に反らせて剥がすことが困難になり、床材の張替えに時間がかかり施工性が低下する。
また、床材1を軟質樹脂床材やゴム床材、クッションフロア等の柔軟性を有する床面の上に敷設した場合、上記剛性度が高すぎると、歩行やキャスター移動等により生じる下地面の変形に床材1が追従できず、割れや接着面の剥離を生じるおそれがある。
一方、上記剛性度が低すぎると、床材1をフローリングやセラミックタイル、樹脂タイル等の目地やエンボス模様、割れ等の凹凸面を有する比較的硬質な下地面上に敷設した場合、敷設後の床材1の表面に目地などの凹凸面の形状が現出して美観を損なうおそれがある。
【0035】
本発明の床材1は、5℃での剛性度が、1200kgf/cm
2〜2800kgf/cm
2であることが好ましい。より好ましくは1220kgf/cm
2〜2780kgf/cm
2であり、さらに好ましくは1240kgf/cm
2〜2760kgf/cm
2である。前記5℃での剛性度は、JIS K7106に準拠して、5℃で測定される床材の縦方向(長手方向)又は横方向(短手方向)の少なくとも何れか一方における剛性度である。前記5℃での剛性度を有する床材1は、低温条件下(例えば、寒冷地又は冬季など)で張替えを行う場合でも上方に反らして剥がすことができ、低温条件下での張替えが容易となる。
なお、本明細書において、剛性度は、JIS K7106に準拠して、床材の縦方向(長手方向)、及び、横方向(短手方向)について測定した値である。具体的には、以下の測定方法により測定を行った。
(20℃の剛性度)
20±2℃、湿度65±10%の条件の下、オルゼン型剛性度試験機(以下、試験機と記す)、150mm直定規(JIS C型1級、以下、直定規と記す)、マイクロメーター、及び25mm×100mmの大きさに裁断した試験片を24時間養生した。
次に試験機の水平、支点間距離、及び0点の各調整を行い、マイクロメーターで前記試験片の厚みを1/100mmの位まで測定した。さらに、前記試験片を試験機にセットし、偏位角度指針が所定の偏位角度に達したときの荷重目盛を読み取った。
剛性度E(kgf/cm
2)は、次式により求めた。
E=(4×S×M×(読み値)×C)/(b×h
3×100×φ)
S:支点間距離(cm)=4cm
b:試料幅(cm)=2.5cm
h:試料厚さ(cm)=測定値
M:荷重(lb)=2lbs
φ:荷重目盛読み取り角度(rad)=0.1047rad
C:定数=2.304
尚、定数Cは、単位を換算してモーメント値に補正する為の数値である。
測定は、n=5で行い、試料5個の平均値を測定値の1桁下でJIS Z 8401に準じて丸めることによりEを算出した。
(5℃の剛性度)
5±2℃、湿度50±10%の条件下で24時間養生したこと以外は、上記20℃の剛性度と同様である。
【0036】
[透明層]
透明層3は、床材1の表面側に積層されて、意匠層4が表現する意匠を視認可能にしつつ、表面を保護する層である。
上記透明層3を備えることにより、美観を損ねることなく、住宅やオフィスでの使用に十分耐えうる耐傷性、耐磨耗性を含めた耐久性を床材1に付与することができる。
【0037】
上記透明層3は、熱可塑性樹脂により形成される。
上記熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂、オレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂、アミド系樹脂、エステル系樹脂、酢酸ビニル、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの各種エラストマー、ゴムなどが挙げられる。
なかでも、塩化ビニル樹脂が好ましい。塩化ビニル樹脂は、優れた可撓性と柔軟性を示すため、歩行感が良好である上、低い剛性度も合わせ持つので、ピールアップ性が高く、下地面からの剥離を容易に行うことができる。また、塩化ビニル樹脂を用いると、材料費が比較的安価な上、製造が容易であるので、低コストで製造することができる。
【0038】
上記透明層3の厚みは、0.05〜0.30mmであることが好ましく、0.10〜0.20mmであることがより好ましい。
【0039】
上記透明層3が薄すぎると、床材1の表面の保護が十分でないおそれがある。
また、上記透明層3が厚すぎると、床材1の剛性度が高くなり、床材1を張替える際に下地面から容易に剥がすことができないおそれがある。
また、上記透明層3が厚すぎると、意匠層が視認し難くなるおそれがある。
【0040】
[意匠層]
意匠層4は、所望の意匠を表現し、床材1の表面に意匠性を付与する層である。
上記意匠層4を備えることにより、床材1に所望の意匠性を簡易、且つ、安価に付与することができる。
【0041】
上記意匠層4は、熱可塑性樹脂により形成される。上記熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂、オレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂、アミド系樹脂、エステル系樹脂、酢酸ビニル、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの各種エラストマー、ゴムなどが挙げられる。
なかでも、塩化ビニル樹脂により形成されることが好ましい。優れた可撓性を示すため、床材1を比較的凹凸の大きい下地面に施工した場合でも、凹凸に追随して意匠を保つことができる上、施工時に床材1を反らせても意匠層が破壊されることがない。また、多様な意匠を着色剤の混入や印刷によって容易に形成できるため、意匠層4を安価且つ容易に形成することができる。
【0042】
上記意匠層4を形成する意匠層形成用樹脂組成物には、通常、熱可塑性樹脂以外に各種添加剤が配合される。
添加剤としては従来公知のものが使用可能であり、例えば、充填剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、発泡剤などが挙げられる。
【0043】
上記意匠層4は、意匠層形成熱可塑性樹脂層42の上面に直接模様を印刷することにより形成してもよいし、意匠層形成熱可塑性樹脂層42の上面に、印刷の施された模様フィルム41を貼付して形成してもよい。
また、着色剤を含有する意匠層形成用樹脂組成物により形成してもよいし、着色剤を含有する意匠層形成用樹脂組成物に、他の色の樹脂チップを添加し、練り込むことにより形成してもよい。
図1では、意匠層形成熱可塑性樹脂層42の上面に、印刷の施された模様フィルム41を貼付した形態を示した。
【0044】
上記意匠層4は、意匠層形成熱可塑性樹脂層42の上面に印刷の施された模様フィルム41を貼付したものであることが好ましい。
上記構成とすることにより、面取り形状部が模様フィルムに被覆され、床面の意匠と面取り形状部の意匠とが同一となり、面取り形状部を目立たなくすることができる。
また、床材表面に、木目等複雑な意匠を簡易且つ安価に付与することができる。
さらに、模様フィルム41を取り替えることで、同一の生産設備で床材1の表面の模様や、明度、彩度、色合い等の外観の要素を容易にばらつかせることができる。上記外観の要素がばらついた床材1を不規則に敷設することにより、床面全体で一意匠を一体的に表現することができる。
【0045】
上記外観の要素がばらついた床材1により一意匠を一体的に表現する場合の例としては、例えば、木目模様の明度、彩度、色合いを変化させることにより、様々な木材を使用して床面を形成したような風合いを、床面全体で一体的に表現する場合が挙げられる。
床面は、飲食物の付着や破損により部分的に張替えが必要な場合がある。長期間敷設されている床材1は、日焼け等のために明度等が変化しており、新しく張替えた床材1とは明度等が同一となり難い。
明度等の外観の要素が統一された床材1を床面に敷設した場合、部分的に床材1を張替えると、張替えた部分の明度等が他の部分と整合せず、意匠的に違和感が生じることがある。
しかし、元から外観の要素がばらついた床材1を不規則に敷設してあると、部分的に床材1を張替えても、意匠的な違和感を生じず、様々な木材を使用して床面を一体的に形成したような風合いを床面全体で一体的に表現することができる。
【0046】
上記意匠層4の厚みは、0.50〜1.50mmである。0.60〜1.00mmであることが好ましく、0.65〜0.80mmであることがより好ましい。
【0047】
上記意匠層4は、上述した構成であるので、床材が適度な剛性度を示し、且つ、床材間の境界が目立たない。
【0048】
即ち、上記床材1は、賃貸住宅等の集合住宅に敷設される場合が多い。これらの住宅の床の下地面は、床材の施工前に補修されるが、高低差が0.5mm程度の不陸A(凹凸)が存在するのが一般的である。不陸Aを有する下地面上に本発明の床材1を敷設すると、剛性度が上述した範囲であるので、
図2のように、不陸Aの形状に沿った形状に変形して不陸に追随する一方で、不陸Aに追随しすぎて表層に不陸Aの形状が表出することがなく、床材間の段差を緩和させることができる。
それでも、床材間の境界部分に段差Lを生じた場合、この段差Lにおいて、床材の側面が一部露出する場合がある。
このような場合であっても、本発明の床材1は、意匠層4の厚みが0.50〜1.50mmであるので、高低差が0.5mm以下程度の不陸Aによって生ずる段差Lにおいては、裏面層5は露出せず、
図2に示すように、模様フィルム41と、意匠層形成熱可塑性樹脂層42とにより構成される意匠層4が露出するのみである。露出した意匠層4の色は、床材表面と略同色を示すので、床材間の境界部分が目立つことはない。
【0049】
一方、
図3の比較例のように、床材の剛性度が高く、意匠層4の厚みが薄すぎると、段差Lにおいて、意匠層下の裏面層の側面が露出し、形状安定化層51や裏面層形成熱可塑性樹脂層52が視認されてしまう。とくに、裏面層形成熱可塑性樹脂層52の色は白色や、灰色等であり、床材表面の色とは異なるので、床材間の境界部分が非常に目立ってしまう。
【0050】
また、本発明の床材1は、意匠層の厚みが上述した範囲であるため、適切な剛性度を示すので、張替えの際に上方に反らせて剥がすことができ、床材を容易に張替えることができる。
【0051】
上記意匠層4が、意匠層形成熱可塑性樹脂層42の上面に、印刷の施された模様フィルム41を貼付したものである場合、上記模様フィルム41の厚みは、0.07〜0.20mmであることが好ましく、0.10〜0.16mmであることがより好ましい。
上記模様フィルム41の厚みが薄すぎると、光が透過して下面に積層されている意匠層形成熱可塑性樹脂層42の表面が透けて見え、模様フィルム41の意匠性を十分に表現できないおそれがある。
また、上記模様フィルム41の厚みが薄すぎると、床材1を敷設した際に、床材1の境界部分が目立つおそれがある。
上記模様フィルム41の厚みが厚すぎると、床材1の剛性度が高くなり、床材1を張替える際に下地面から容易に剥がすことができないおそれがある。
【0052】
(表面保護層)
表面保護層2は、床材1の最上面に位置し、床材上面の耐久性をより一層向上させる層である。
【0053】
上記表面保護層2としては、他の層と安定的に接着できるものであれば特に限定されず、ポリ塩化ビニル樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等の種々の熱可塑性樹脂を使用することができる。また、例えば、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物等の不飽和ポリエステル類、ポリエステルメタクリレート、ポリエーテルメタクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンメタクリレート等のメタクリレート類、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリレート等の紫外線硬化樹脂を使用してもよい。
なかでも、より安定的に他の層と接着し、且つ、強固な被膜を形成できる点で、紫外線硬化樹脂を用いることが好ましい。
【0054】
上記表面保護層2の厚みは、0.005〜0.040mmであることが好ましい。また、0.010〜0.030mmであることがより好ましく、0.015〜0.025mmであることがさらに好ましい。
【0055】
上記表面保護層2が薄すぎると、床材1の表面の保護が十分でないおそれがある。
また、厚すぎると、床材1の剛性度が高くなり、床材1を下地面から容易に剥がすことができないおそれがある。
また、厚すぎると、意匠層4が表現する意匠性を低下させるおそれがある。
【0056】
[裏面層]
裏面層5は、床材1の下面側に形成される層であり、下地面と接する層である。
本実施形態において、上記裏面層5は、形状安定化層51、裏面層形成熱可塑性樹脂層52、及び、基材層53により構成されている。
【0057】
上記裏面層形成熱可塑性樹脂層52は、熱可塑性樹脂を含有する、裏面層形成用熱可塑性樹脂組成物(以下、裏面層形成用熱可塑性樹脂ペーストともいう。)により形成される。
上記熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル樹脂、オレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂、アミド系樹脂、エステル系樹脂、酢酸ビニル、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの各種エラストマー、ゴムなどが挙げられる。
なかでも、塩化ビニル樹脂が好ましい。塩化ビニル樹脂を主成分とする裏面層を有する床材1は、優れた可とう性を示すため歩行感が良好であり、低い剛性度を示すため下地面から容易に剥離することができる。また、塩化ビニル樹脂を用いると、床材1を安価且つ容易に製造することができる。
【0058】
上記裏面層形成熱可塑性樹脂層52は、非発泡でもよいし、或いは、発泡されていてもよい。良好なクッション性を床材1に付与できる点から、裏面層は、発泡樹脂から形成されていることが好ましい。
【0059】
上記裏面層形成用熱可塑性樹脂組成物には、通常、熱可塑性樹脂以外に、各種添加剤が配合される。
上記添加剤としては、従来公知のものを使用でき、例えば、充填剤、可塑剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、発泡剤などが挙げられる。
【0060】
上記充填材の含有量は特に限定されないが、裏面層形成用熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、30〜250質量部であることが好ましい。50〜200質量部であることがより好ましく、75〜150質量部であることがさらに好ましい。
【0061】
上記充填剤の含有量が多すぎると、床材1の重量が重くなり運搬作業が困難になるおそれがある。
また、裏面層形成熱可塑性樹脂層52が固くなり、床材1が上面側に反り難くなるため、床材1を剥がす作業が困難になるおそれがある。
【0062】
上記含有量が少なすぎると、相対的に熱可塑性樹脂や、他の添加剤の量が増えるため、コスト的に不利になるおそれがある。
【0063】
上記裏面層形成熱可塑性樹脂層52の厚みは、0.35〜0.75mmであることが好ましい。また、0.45〜0.65mmであることがより好ましく、0.50〜0.60mmであることがさらに好ましい。
【0064】
上記裏面層形成熱可塑性樹脂層52が薄すぎると、基材層53より厚みが薄くなる場合があり、基材層53が、十分に裏面層形成熱可塑性樹脂層52に含浸されず、床材1を剥がす際に、基材層53の表面が破損するおそれがある。
また、上記裏面層形成熱可塑性樹脂層52が厚すぎると、床材1の剛性度が高くなり、張替え作業の際に床材1を上面側に反らせて剥がすことが難しくなり、張替え作業に時間を要し、作業性が低下する場合がある。
【0065】
(形状安定化層)
形状安定化層51は、経時的な収縮や膨張による床材1の寸法変化を抑制するための層である。
本発明の床材1は、裏面層形成熱可塑性樹脂層52の上面に、形状安定化層51を備えることが好ましい。
上記形状安定化層51を備えると、床材1の寸法安定性を高め、端部の反りを抑制することができる。
【0066】
上記形状安定化層51としては、ポリエステル不織布、ポリエステル織布、ガラス不織布、ガラス織布、PET不織布、PET織布等が用いられる。
なかでも、ガラス繊維不織布が好ましい。ガラス繊維不織布を用いると、床材1の寸法変化や床材端部の反りをより効果的に抑制することができる。
【0067】
上記形状安定化層51の厚みは、0.10〜0.50mmであることが好ましい。また、0.20〜0.40mmであることがより好ましく、0.25〜0.35mmであることがさらに好ましい。
【0068】
上記形状安定化層51が薄すぎると、床材1の寸法変化や床材端部の反りを効果的に抑制することができないおそれがある。
また、上記形状安定化層51が厚すぎると、当該形状安定化層51の上下に積層されている他の層との層間接着強度が弱くなり層間剥離を生じるおそれがある。
【0069】
(基材層)
基材層53は、床材1の最下部に位置する層である。本発明の床材1は、床材の反り抑制、強度向上等の点で、基材層を設けることが好ましい。
基材層53としては、ポリエステル不織布、ポリエステル織布、ガラス不織布、ガラス織布、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと示す。)不織布、PET織布が用いられる。
なかでも、基材層53ポリエステル不織布が好適に使用することができる。ポリエステル不織布は、床材全体の強度向上に寄与する上、収縮により床材1の端部を下面側に反らせることにより、上部に積層される裏面層形成熱可塑性樹脂層52、意匠層4、及び、透明層3の収縮による床材1の上面側への反りを抑制することができる。
【0070】
上記基材層53は、裏面層形成熱可塑性樹脂層52の下面側に含浸され、且つ、裏面層形成熱可塑性樹脂層52の下面側が露出した状態で設けられることが望ましい。
このように構成することによって、裏面層形成熱可塑性樹脂層52に含まれる可塑剤の接着剤層への移行が、基材層53によって抑制される。
すなわち、可塑剤が接着剤層に移行して接着剤の硬化を阻害することを抑制するので、接着剤が本来の接着強度を発揮することができる。
【0071】
また、基材層53を裏面層形成熱可塑性樹脂層52の下面側に含浸して一体化した構成であるので、基材層53が裏面層形成熱可塑性樹脂層52に強固に保持される。このため、下地面から床材1を剥がしても、基材層53は破壊されることなく裏面層形成熱可塑性樹脂層52と一体的に剥がされるため、床材1全体を、一体的に下地面から分離させることが容易であり、基材層53の一部が下地面に残存することがない。
このため、床材1の張替え時に、下地面に残存した基材層53の除去作業が不要となり、床材1を容易に短時間で張替えることができる。
【0072】
さらに、上記構成において、基材層53の繊維の一部が裏面層形成熱可塑性樹脂層52の下面側に露出させるように構成することが望ましい。
このように構成することにより、床材1の底面は凹凸形状となり、床材1の底面と、下地面との接触面積が減少する。このため、下地面に敷設する際の接着強度を適度な範囲に調整することができ、床材1を下地面から容易に剥がすことができるようになる。
【0073】
また、底面が凹凸形状であるので、床材1と下地面との間で高い摩擦力を発揮する。このため、接着剤が固化するまでの間に歩行により床材1がずれることを抑制できる。
【0074】
上記基材層53の厚みは、0.10〜0.70mmであることが好ましい。また、0.20〜0.60mmであることがより好ましく、0.25〜0.45mmであることがさらに好ましい。
【0075】
上記基材層53が薄すぎると、裏面層形成熱可塑性樹脂層52に含まれる可塑剤が基材層53を透過して下地面上の接着剤の硬化を阻害したり、基材層53の繊維が全て裏面層形成熱可塑性樹脂層52に埋没して下地面との接着強度が高くなり過ぎたりするおそれがある。
さらに、上記基材層53が薄すぎると、基材層53の強度が弱くなり、裏面層形成熱可塑性樹脂層52に含浸しているにも関わらず、床材1を剥がす際に基材層53が破損したり、下地面との間で摩擦力を発揮することができず床材1がずれるなどの不具合が生じるおそれがある。
【0076】
一方、上記基材層53が厚すぎると、裏面層形成熱可塑性樹脂層52の厚さを超える場合があり、裏面層形成熱可塑性樹脂層52に十分に含浸されず、床材1を下地面から剥がす際に基材層53の表面が破損して基材層53の一部が下地面に残存するおそれがある。
【0077】
以下、床材1の製造方法について説明する。床材1は、裏面層形成用熱可塑性樹脂ペースト層上に意匠層形成用樹脂組成物、及び、透明層形成用樹脂組成物を、この順に積層することにより床材形成用積層体を得る工程(1)と、上記床材形成用積層体を加熱して硬化させる工程(2)と、上記硬化させた床材形成用積層体に面取り加工を施す工程(3)を有する製造方法により製造することができる。
【0078】
[工程(1)]
上記工程(1)は、裏面層形成用熱可塑性樹脂ペースト層上に意匠層形成用樹脂組成物、及び、透明層形成用樹脂組成物を積層することにより、床材形成用積層体を得る工程である。
【0079】
上記裏面層形成用熱可塑性樹脂ペースト層は、形状安定化層51上に裏面層形成用熱可塑性樹脂ペーストを塗布して形成することができる。
【0080】
また、床材1が基材層53を備える場合は、裏面層形成用熱可塑性樹脂ペースト層を形成し、その上に基材層53を一定時間載せて自重により裏面層形成用熱可塑性樹脂ペースト層表面に含浸させることにより、基材層53を備えた裏面層形成用熱可塑性樹脂ペースト層を得ることができる。
基材層53が積層される裏面層形成用熱可塑性樹脂ペーストの粘度は、8〜10Pa・sであることが好ましい。かかる裏面層形成用熱可塑性樹脂ペーストは、基材層53の繊維間に含浸し易い。
なお、上記粘度は、リオン株式会社製粘度計(商品名「ビスコテスタ」)を用いて20℃の条件下で測定した値である。
【0081】
基材層53の重量及び裏面層形成用熱可塑性樹脂ペーストの粘度等に起因して、基材層53の自重だけでは含浸が十分でない場合には、基材層53の非載置面(裏面層形成用熱可塑性樹脂ペースト層に載せた面とは反対側の面)から加重を加える。
例えば、基材層53の非載置面上からロールにより押圧することにより、裏面層形成用熱可塑性樹脂ペーストが、基材層53の非載置面に浸み出すように加重を加えることができる。
【0082】
上記工程(1)は、上記裏面層形成用熱可塑性樹脂ペースト層を加熱によりプリゲル化させて、プリゲル化裏面層を得る工程を有していることが好ましい。
【0083】
上記加熱の方法は、特に限定されないが、例えば、電熱ヒーターでの加熱が挙げられる。
【0084】
加熱温度は、裏面層52を形成する樹脂に応じて適宜設定される。塩化ビニル樹脂である場合、上記加熱温度は、110〜170℃であることが好ましく、120〜160℃であることがより好ましい。
加熱温度が低すぎると、プリゲル化が十分に行われず、プリゲル化裏面層が破損するおそれがある。
加熱温度が高すぎると、裏面層形成用熱可塑性樹脂ペースト層の表面が完全に硬化し、意匠層を一体的に積層接着することが出来ないおそれがある。
【0085】
また、加熱時間は、裏面層52を形成する樹脂に応じて適宜設定される。塩化ビニル樹脂である場合、40〜90秒であることが好ましく、50〜70秒であることがより好ましい。
加熱時間が短すぎると、プリゲル化が十分に行われず、プリゲル化後の裏面層が破損するおそれがある。
加熱時間が長すぎると、裏面層形成用熱可塑性樹脂ペースト層の表面が完全に硬化し、意匠層を一体的に積層接着することが出来ないおそれがある。
【0086】
上記床材形成用積層体は、上記裏面層形成用熱可塑性樹脂ペースト上に、意匠層形成用樹脂組成物、透明層形成用樹脂組成物、表面保護層形成用樹脂組成物を順次塗布して積層することにより得ることができる。
【0087】
上記工程(1)は、上記形状安定化層51上に裏面層形成用熱可塑性樹脂ペーストを塗布して、プリゲル化させることによりプリゲル化裏面層を形成する場合には、上記プリゲル化裏面層の表裏を反転させる工程を有することが好ましい。
上記工程を有することにより、反転したプリゲル化裏面層上に意匠層形成用樹脂組成物、透明層形成用樹脂組成物、表面保護層形成用樹脂組成物を順次塗布して積層することができ、容易に床材形成用積層体を製造することができる。
【0088】
[工程(2)]
上記工程(2)は、上記床材形成用積層体を加熱して硬化させることにより、面取り加工用積層体を得る工程である。
【0089】
上記加熱の方法は特に限定されないが、例えば、ガスヒーターなどが挙げられる。
【0090】
加熱温度は、床材形成用積層体の各層を形成する樹脂に応じて適宜設定されるが、塩化ビニル樹脂である場合、180〜250℃であることが好ましく、190〜220℃であることがより好ましい。
加熱温度が低すぎると、樹脂が十分に硬化せず、各層の層間接着力が弱くなり層間剥離を生じるおそれがある。
加熱温度が高すぎると、樹脂が硬化しすぎ、床材1の剛性度が高くなるおそれがある。 また、加熱時間は、床材形成用積層体の各層を形成する樹脂に応じて適宜設定されるが、塩化ビニル樹脂である場合、1分30秒〜4分30秒であることが好ましく、2分〜4分であることがより好ましい。
加熱時間が短すぎると、樹脂が十分に硬化せず、各層の層間接着力が弱くなり層間剥離を生じるおそれがある。
一方、加熱時間が長すぎると、樹脂が硬化しすぎて床材1の剛性度が高くなりすぎ、床材1の張替え容易性を損ねるおそれがある。
【0091】
上記表面保護層2が紫外線硬化樹脂により形成される場合、更に、紫外線を照射する工程を有していてもよい。
【0092】
また、上記表面保護層2が紫外線硬化樹脂により形成される場合、上記工程(1)および工程(2)により表面保護層以外の層を形成した後、表面に表面保護層形成用樹脂組成物を塗布して紫外線を照射する工程を有していてもよい。
【0093】
[工程(3)]
上記工程(3)は、上記面取り加工用積層体に面取り加工を施すことにより、本発明の床材1を得る工程である。
【0094】
上記面取り加工の方法は特に限定されないが、例えば、面取り加工用積層体の表面角部に回転刃を押圧する方法が挙げられる。
また、切断刃と、テーパー面を有する押圧刃とを、一体的に備える切断装置を用いて、打ち抜き加工と面取り加工とを同時に行う方法であってもよい。
【0095】
上記面取り加工の方法としては、切断刃と、テーパー面を有する押圧刃とを、一体的に備える切断装置を用いて、打ち抜き加工と面取り加工とを同時に行う方法が好ましい。
上述した方法を用いることにより、工程数を減らしてより簡易に床材1を得ることができる。
【0096】
以上の工程(1)、(2)及び(3)によって、本発明の床材1を製造することができる。
【0097】
なお、本発明は上記の実施形態に限らず、種々の変更・変形が可能である。
【0098】
例えば、上記の実施形態では、透明層3の上に表面保護層2が積層された構成を例示したが、これに限らず、例えば、
図4に示すように表面保護層2を備えない構成としてもよい。
【0099】
また、上記の実施形態では、裏面層5として基材層53、裏面層形成熱可塑性樹脂層52、形状安定化層51をこの順に積層した構成を示したが、これに限らず、例えば、
図5に示すように形状安定化層51を備えない構成としてもよい。
【0100】
形状安定化層51を備えない場合は、裏面層形成用フィルム上に裏面層形成用熱可塑性樹脂ペーストを塗布することにより、裏面層形成用熱可塑性樹脂ペースト層を形成することができる。
この場合、後工程で裏面層形成用熱可塑性樹脂ペースト層を加熱して基材層含浸樹脂ペースト層をプリゲル化させた後、上記裏面層形成用フィルムを剥離除去することとなる。
【0101】
また、上記の実施形態では、裏面層5として基材層53、裏面層形成熱可塑性樹脂層52、形状安定化層51をこの順に積層した構成を示したが、これに限らず、例えば、
図6に示すように基材層53を有しない構成としてもよい。
【0102】
また、上記の実施形態では、裏面層5として基材層53、裏面層形成熱可塑性樹脂層52、形状安定化層51をこの順に積層した構成を示したが、これに限らず、例えば、
図7に示すように形状安定化層51と基材層53とを備えない構成としてもよい。
【0103】
さらに、上記の実施形態では、面取り形状部を直線状とした構成を示したが、これに限らず、面取り形状を
図8に示すようにR面取り形状としてもよい。
【0104】
上述した構成とすることにより、床材1を敷設して床面を形成すると床材1と、併設して敷設された他の床材1との間に形成される目地部分が曲面により構成される。これにより、床面を歩行した際に滑らかな歩行感を実現することができる。
【実施例】
【0105】
以下、本発明の実施例及び比較例を示す。ただし、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0106】
[実施例及び比較例で使用した材料]
(裏面層形成用樹脂ペースト)
100質量部の塩化ビニル樹脂ペースト(平均重合度2000の塩ビペースト:平均重合度950の塩ビペースト=2:1(重量比))と、100質量部の充填材(炭酸カルシウム)と、60質量部の可塑剤(DOP)と、2質量部のBa−Zn系安定剤と、1質量部の顔料と、を混練したものを使用した。
この裏面層形成用樹脂ペーストの20℃における粘度は、8Pa・sであった。
なお、この粘度は、リオン株式会社製の粘度計(商品名「ビスコテスタ」)を用いて測定した。
【0107】
(意匠層形成用樹脂組成物)
100質量部の塩化ビニル樹脂ペースト(平均重合度2000の塩ビペースト:平均重合度950の塩ビペースト=2:1(重量比))と、200質量部の充填材(炭酸カルシウム)と、85質量部の可塑剤(DOP)と、8質量部のトーナーとを混練したものを使用した。
【0108】
(印刷フィルム)
木目模様が印刷された厚み約0.13mmの塩化ビニル製フィルムを使用した。
【0109】
(透明層形成用樹脂組成物)
100質量部の塩化ビニル樹脂ペースト(平均重合度2000の塩ビペースト:平均重合度950の塩ビペースト=4:3(重量比))と、50質量部の可塑剤(DOP)と、3質量部のBa−Zn系安定剤と、を混練したものを使用した。
【0110】
(表面保護層形成用樹脂組成物)
ウレタン樹脂系紫外線硬化型樹脂を使用した。
【0111】
(基材層)
ポリエステル系不織布(スパンボンド不織布。目付量40g/m
2。厚み約0.3mm。)を使用した。
【0112】
(形状安定化層)
ガラス繊維不織布(目付量50g/m
2。厚み約0.3mm。)を使用した。
【0113】
[実施例1]
基材層の上に裏面層形成用樹脂ペーストを塗布することにより、裏面層形成用樹脂ペーストの膜を形成した。この膜の上に、形状安定化層を載置した。この基材層の上をステンレス製ローラーで押圧した(荷重約4kg/m
2)。基材層の非載置面から樹脂ペーストが若干滲み出してきたことが確認された時点で前記押圧を止めた。
次に、セラミックヒーターを用いて、この積層体を160℃、1分間加熱することにより、前記樹脂ペーストをプリゲル化させた。
【0114】
形状安定化層の上に、意匠層形成用樹脂組成物を塗布した。さらに、その膜上に印刷フィルムを載置した。
この印刷フィルムの上に、透明層形成用樹脂組成物を塗布した。
次に、ガスヒーターを用いて、この積層体を200℃、3分間加熱することにより、裏面層形成用樹脂ペースト、意匠層形成用樹脂組成物及び透明層形成用樹脂組成物を硬化させた。
このようにして、下から順に、基材層、厚み約0.55mmの裏面層、厚み約0.68mmの意匠層(印刷フィルムを含む)及び厚み約0.15±0.05mmの透明層が積層された積層体を得た。
【0115】
次に、前記透明層の上に、表面保護層形成用樹脂組成物を塗布した。80Wの紫外線ランプ3本を用いて紫外線を照射し、表面保護層形成用樹脂組成物を硬化させることにより、前記透明層の上に表面保護層(厚み約0.02±0.01mm)を形成し、床材形成用積層体を得た。
得られた床材形成用積層体を、切断刃と、テーパー面を有する押圧刃とを、一体的に備える切断装置を用いて、打ち抜き加工と同時に面取り加工を行うことにより、床材を作製した。
得られた実施例1の床材は、縦900mm、横150mm、厚み2.00mmであり、意匠層の厚み(印刷フィルムを含む)は、0.68mmであった。
なお、各厚みは、(株)キーエンス製のマイクロスコープ測定器を用いて測定した。
【0116】
また、得られた実施例1の床材の面取り形状部の深さTは、0.30mmであった。また、面取り形状部の角度αは、45度であった。
なお、上記深さTは、床材を縦方向に切断して縦断面を形成し、床材の表面に直線状の定規を置き、当該定規と、断面において床材側面がなす直線の最上部との距離を他の定規で測定することにより得た値である。
また、上記角度αは、床材を縦方向に切断して縦断面を形成し、床材の表面に直線状の定規を置き、当該定規と、断面において面取り形状部表面がなす直線とにより形成される角度を分度器で測定することにより得た値である。
【0117】
実施例1の床材の20℃での縦方向(長手方向)の剛性度は、1056kgf/cm
2であり、横方向(短手方向)の剛性度は、704kgf/cm
2であった。
また、実施例1の床材の5℃での縦方向の剛性度は、2113kgf/cm
2であり、横方向の剛性度は、1409kgf/cm
2であった。
【0118】
上記各剛性度は、JIS K7106に準拠して、床材の縦方向(長手方向)、及び、横方向(短手方向)について測定した。具体的には、以下の測定方法により測定を行った。
(20℃の剛性度)
20±2℃、湿度65±10%の条件の下、オルゼン型剛性度試験機(以下、試験機と記す)、150mm直定規(JIS C型1級、以下、直定規と記す)、マイクロメーター、及び25mm×100mmの大きさに裁断した試験片を24時間養生した。
次に試験機の水平、支点間距離、及び0点の各調整を行い、マイクロメーターで前記試験片の厚みを1/100mmの位まで測定した。さらに、前記試験片を試験機にセットし、偏位角度指針が所定の偏位角度に達したときの荷重目盛を読み取った。
剛性度E(kgf/cm
2)は、次式により求めた。
E=(4×S×M×(読み値)×C)/(b×h
3×100×φ)
S:支点間距離(cm)=4cm
b:試料幅(cm)=2.5cm
h:試料厚さ(cm)=測定値
M:荷重(lb)=2lbs
φ:荷重目盛読み取り角度(rad)=0.1047rad
C:定数=2.304
尚、定数Cは、単位を換算してモーメント値に補正する為の数値である。
測定は、n=5で行い、試料5個の平均値を測定値の1桁下でJIS Z 8401に準じて丸めることによりEを算出した。
(5℃の剛性度)
5±2℃、湿度50±10%の条件下で24時間養生したこと以外は、上記20℃の剛性度と同様である。
【0119】
[実施例2]
意匠層の厚み(印刷フィルムを含む)を0.55mmとして以外は、実施例1と同様にして、床材を作製した。得られた実施例2の床材の厚みは、1.87mmであった。
【0120】
実施例2の床材の20℃での縦方向の剛性度は、1292kgf/cm
2であり、横方向の剛性度は、862kgf/cm
2であった。
また、実施例2の床材の5℃での縦方向の剛性度は、2585kgf/cm
2であり、横方向の剛性度は、1724kgf/cm
2であった。
【0121】
[実施例3]
表面保護層を形成しなかったこと以外は(表面保護層形成用樹脂組成物の塗布を行わなかったこと以外は)、実施例1と同様にして、床材を作製した。得られた実施例2の床材の厚みは、1.98mmであり、意匠層の厚み(印刷フィルムを含む)は、0.68mmであった。
【0122】
実施例3の床材の20℃での縦方向の剛性度は、1089kgf/cm
2であり、横方向の剛性度は、726kgf/cm
2であった。
また、実施例3の床材の5℃での縦方向の剛性度は、2177kgf/cm
2であり、横方向の剛性度は、1452kgf/cm
2であった。
【0123】
[比較例1]
面取り加工を施さなかった以外は実施例1と同様にして、床材1を作製した。得られた比較例1の床材の厚みは、2.00mmであり、意匠層の厚み(印刷フィルムを含む)は、0.68mmであった。
【0124】
比較例1の床材の20℃での縦方向の剛性度は、1056kgf/cm
2であり、横方向の剛性度は、704kgf/cm
2であった。
また、比較例1の床材の5℃での縦方向の剛性度は、2113kgf/cm
2であり、横方向の剛性度は、1408kgf/cm
2であった。
【0125】
[比較例2]
意匠層の厚み(印刷フィルムを含む)を0.2mmとした以外は実施例1と同様にして、床材1を作製した。得られた比較例4の床材1は、厚さが1.52mmであった。
【0126】
比較例2の床材の20℃での縦方向の剛性度は、134kgf/cm
2であり、横方向の剛性度は、118kgf/cm
2であった。
また、比較例2の床材の5℃での縦方向の剛性度は、460kgf/cm
2であり、横方向の剛性度は、442kgf/cm
2であった。
【0127】
[比較例3]
意匠層の厚み(印刷フィルムを含む)を1.80mmとした以外は実施例1と同様にして床材1を作製した。得られた比較例3の床材1は、厚さが3.12mmであった。
【0128】
比較例3の床材の20℃での縦方向の剛性度は、1631kgf/cm
2であり、横方向の剛性度は、1605kgf/cm
2であった。
比較例3の床材の5℃での縦方向の剛性度は、4160kgf/cm
2であり、横方向の剛性度は、4292kgf/cm
2であった。
【0129】
[比較例4]
面取り加工を施さず、意匠層の厚み(印刷フィルムを含む)を0.05mmとし、裏面層の厚みを1.07mmとした以外は実施例1と同様にして、床材を作製した。得られた比較例4の床材は、厚さが2.44mmであった。
【0130】
比較例4の床材の20℃での縦方向の剛性度は、134kgf/cm
2であり、横方向の剛性度は、118kgf/cm
2であった。
また、比較例4の床材の5℃での縦方向の剛性度は、460kgf/cm
2であり、横方向の剛性度は、442kgf/cm
2であった。
【0131】
[比較例5]
面取り加工を施さず、意匠層の厚み(印刷フィルムを含む)を1.80mmとした以外は実施例1と同様にして、床材を作製した。得られた比較例5の床材は、厚さが3.12mmであった。
【0132】
比較例5の床材の20℃での縦方向の剛性度は、1631kgf/cm
2であり、横方向の剛性度は、1605kgf/cm
2であった。
また、比較例5の床材の5℃での縦方向の剛性度は、4160kgf/cm
2であり、横方向の剛性度は、4292kgf/cm
2であった。
【0133】
ここから
上記の実施例1〜3、及び、比較例1〜5の床材1について以下の評価を行った。
【0134】
[ピールアップ性評価試験]
実施例1〜3、及び、比較例1〜5の各床材を、それぞれ9枚ずつ準備した。この9枚の床材を、縦×横=3×3となるように、アクリル樹脂エマルション系接着剤(東リ株式会社製、商品名「エコGAセメント」)が、110g/m
2の塗布量で塗布された吸水下地面上にそれぞれ敷設した。吸水下地面は、サンドブラスト研磨機で研磨することにより、不陸の高低差を0.5mm以下とした。上記不陸の高低差は、表面粗さ計により測定した。中央部に敷設した床材の側縁部を摘んでこの床材を手で剥がし、容易に剥離することができるか否かを以下の判定基準により判定した。その結果を表1に示す。
○:手で容易に剥離することができた。
△:手で剥離することができるが、困難である。
×:手では剥離することができなかった。
【0135】
[境界評価試験]
実施例1〜3、及び、比較例1〜5の各床材を、それぞれ2枚準備した。この2枚の床材を、隙間なく密着させて並べ、アクリル樹脂エマルション系接着剤(東リ株式会社製、商品名「エコGAセメント」)が、110g/m
2の塗布量で塗布された吸水下地面上にそれぞれ敷設した。吸水下地面は、サンドブラスト研磨機で研磨することにより、不陸の高低差を0.5mm以下とした。上記不陸の高低差は、表面粗さ計により測定した。2枚の床材の境界が目立つかどうかを、目視により以下の判定基準で判定した。その結果を表1に示す。
○:境界に、白い線が全く視認されなかった。
△:境界に、わずかに白い線が確認された。
×:境界に、白い線がはっきりと確認された。
【0136】
【表1】
【0137】
表1から、実施例1〜3の床材は、面取り形状部を有しているので床材と併設された他の床材との境界部に目地が形成され、上記目地部分に指先等を引っ掛けて床材の端部を持ち上げることができるため、敷設されている床材を剥がす作業が容易であった。
【0138】
また、実施例1〜3の床材は、適度な剛性度を示し、不陸追従性に優れているので、床材間の段差が小さく、且つ、意匠層の厚みが適切な範囲内であるため、下地面の不陸により敷設後の床材の側面が露出しても、当該側面は意匠層であり、床材間の境界が視覚的に目立たなかった。
【0139】
さらに、実施例1〜3の床材は、適度な剛性度を示し、上方向に捲ることができるので、下地面に敷設されている床材を容易に剥がすことができた。
【0140】
一方、比較例1及び5の床材は、面取り形状部が形成されていないので、床材と、併設された他の床材との境界部に指先等を引っ掛けて床材の端部を持ち上げることができず、敷設されている床材を剥がす作業が困難であった。
【0141】
特に、比較例5の床材は、剛性度が高いため、上方向に捲り難く、下地面から剥がし難かった。
【0142】
また、比較例3の床材は、面取り形状部を有し、床材と、併設された他の床材との境界部に指先等を引っ掛けることができる。しかしながら、床材の剛性度が高いため、上方向に捲り難く、下地面から剥がし難かった。
【0143】
また、比較例4の床材は、剛性度が低いため、上方向に捲りやすい。しかし、面取り形状部が設けられていないので、床材と、併設された他の床材との境界部に指先等を引っ掛けて床材の端部を持ち上げることができない。よって、比較例4の床材は、手で剥離することができるものの、その作業は困難であった。
【0144】
さらに、比較例2及び4の床材は、意匠層の厚みが薄いため、敷設後の床材の側面が露出すると当該側面に裏面層が含まれ、他の床材との境界が視覚的に目立った。