【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一様態によると、本発明は、(i)架橋結合されて、ビーズの形態を形成するアルブミンと、(ii)前記アルブミン架橋物内に含まれた陰イオン性高分子のデキストランサルフェートと、を含む、抗癌剤吸着能力の向上された生分解性マイクロビーズを提供する。
【0015】
本発明者らは、従来の癌局所治療用マイクロビーズが有する、生体内で分解されない問題を解決し、マイクロビーズにより多い量の抗癌剤を吸着させることができて、製造工程が簡単で経済性の高いマイクロビーズの製造方法を開発するために鋭意研究した。その結果、ビーズの形態を形成する高分子物質としてアルブミンを使用して、抗癌剤をビーズの表面に吸着できるように、前記アルブミン架橋物中に陰イオン性高分子のデキストランサルフェートが含まれるようにマイクロビーズを製造した。また、アルブミンが熱架橋結合されたマイクロビーズを製造した後、ビーズの抗癌剤吸着能力を確認した結果、グルタルアルデヒドを架橋剤として使用して製造されたビーズより抗癌剤吸着能が著しく優れていることを確認した。
【0016】
本発明の一具現例によると、前記マイクロビーズは、前記陰イオン性高分子との静電気的引力によってビーズ表面に吸着された抗癌剤を追加的に含む。
【0017】
一つの特定例において、前記抗癌剤は、アントラサイクリン系抗癌剤である。前記アントラサイクリン系抗癌剤には、例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ゲムシタビン、ミトザントロン、ピラルビシン及びバルビシンなどがある。
【0018】
他の特定例において、前記抗癌剤は、イリノテカンである。
【0019】
本発明の一具現例によると、本発明のマイクロビーズは、固形癌治療のための化学塞栓用ビーズである。
【0020】
一つの特定例において、本発明のマイクロビーズは、肝癌化学塞栓術(肝動脈塞栓術)用ビーズである。肝癌治療の他に適用可能な固形癌としては、直腸動脈を通じて直腸細胞癌腫を治療する方法が挙げられる(K.Tsuchiya,Urology.Apr;55(4):495−500(2000))。
【0021】
本発明のマイクロビーズは、構成成分としてアルブミン及びデキストランサルフェートを含む。前記アルブミンは、架橋結合されてマイクロビーズの形態を形成して維持する支持体としての役割をする。前記デキストランサルフェートは、陰イオン性高分子として架橋結合されたアルブミン内に含まれて、抗癌剤をビーズの表面に吸着させる役割をする。前記アルブミン及びデキストランサルフェートは、生体適合性高分子物質であって、体内で分解が可能であるため、従来のポリビニルアルコールを利用したビーズが有する、体内で分解されなくて発生する問題点、例えば、ポリビニルアルコールが不特定に広がって炎症を起こすか、血管にのって他の臓器に広がって脳血栓を起こすなどの問題点を解決することができる。
【0022】
本明細書で使用された用語、‘生分解性’とは、生理的溶液(physiological solution)に露出された時分解可能な性質を意味し、例えば、人間を始めとした哺乳動物の生体内で体液又は微生物などによって分解できる性質を意味する。
【0023】
本発明の一具現例によると、前記アルブミンは、生体細胞や体液中に広く分布されているタンパク質であって、動物性アルブミン及び植物性アルブミンを含む。
【0024】
一つの特定例において、前記動物性アルブミンは、オボアルブミン、血清アルブミン、ラクトアルブミン及びミオゲンを含み、前記植物性アルブミンは、ロイコシン(小麦)、レグメリン(えんどう豆)及びリシン(蓖麻子)を含む。前記アルブミンには、アルブミンの変異体も含まれる。
【0025】
本発明の一具現例によると、前記アルブミンの架橋は、熱架橋によるものである。下記実施例から確認されたように、アルブミンが熱架橋結合されたマイクロビーズは、グルタルアルデヒドを架橋剤として製造されたビーズに比べ、抗癌剤吸着能力が高く、体内に有害な化学的架橋剤を使用しないため身体適合性に優れており、化学的架橋剤の除去工程を省くことができ、経済的な利点が得られる(表2〜4参照)。
【0026】
本発明の他の具現例によると、前記アルブミンの架橋は、アルデヒド類架橋剤によるものである。一つの特定例において、前記アルデヒド類架橋剤は、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、ジアルデヒドデンプン、コハク酸アルデヒド、アクリルアルデヒド、オキサルアルデヒド、2−メチルアクリルアルデヒド及び2−オキソプロパンアルからなる群から選択される。
【0027】
本発明の一具現例によると、本発明のマイクロビーズの抗癌剤吸着能力は、マイクロビーズ1mL当り10〜100mgである。一つの特定例では、マイクロビーズ1mL当り20〜60mgであり、他の特定例では、マイクロビーズ1mL当り20〜55mgであって、また他の特定例では、マイクロビーズ1mL当り20〜50mgである。
【0028】
本発明の一具現例によると、本発明のマイクロビーズの抗癌剤吸着能力は、熱架橋に代わってグルタルアルデヒド架橋剤を使用したことを除いては同一な条件で製造されたマイクロビーズに吸着された抗癌剤の量より20〜45%向上されて、一つの特定例では21〜43%、他の特定例では22〜42%、また他の特定例では、23〜41%向上される。
【0029】
本発明の一具現例によると、本発明のマイクロビーズは、徐放型特性を示す。下記実施例では、本発明のマイクロビーズにおいて、ドキソルビシンが一ヶ月にかけて徐々に溶出されることを確認した(
図7参照)。
【0030】
本発明のマイクロビーズは、溶液と主にバイアルにパッケージングすることができて(湿式マイクロビーズ)、選択的に粉末化して利用することもできる(乾式マイクロビーズ)。
【0031】
本発明の他の様態によると、本発明は、
(a)アルブミン及び陰イオン性高分子のデキストランサルフェートの溶解されたビーズ製造用溶液をエマルジョン化し、マイクロサイズのバブルを形成させる工程と、
(b)工程(a)のマイクロサイズのバブルを架橋し、アルブミンが架橋結合されて、前記アルブミン架橋物内にデキストランサルフェートの含まれたマイクロビーズを形成させる工程と、
を含む、抗癌剤吸着能力の向上された生分解性マイクロビーズの製造方法を提供する。
【0032】
本発明の一具現例によると、本発明の方法は、工程(b)以後に、工程(b)のマイクロビーズに抗癌剤を接触させ、マイクロビーズのデキストランサルフェートの静電気的引力によって抗癌剤をビーズ表面に吸着させる工程(c)をさらに含む。
【0033】
本発明の一具現例によると、本発明の工程(a)のビーズ製造用溶液内アルブミンとデキストランサルフェートの組成比は、15〜50:10%濃度(W/V)である。ビーズ製造用溶液内アルブミンの量がデキストランサルフェートに比べて著しく少ない場合は、ビーズが堅固に形成されず、デキストランサルフェートの量がアルブミンに比べて著しく少ない場合は、抗癌剤の吸着効率が低下する。
【0034】
一つの特定例において、本発明の工程(a)のビーズ製造用溶液内アルブミンとデキストランサルフェートの組成比は、15〜45:10%濃度(W/V)であり、他の特定例では、15〜40:10%濃度(W/V)であって、また他の特定例では、15〜35:10%濃度(W/V)であり、また他の特定例では、15〜30:10%濃度(W/V)であって、また他の特定例では、20〜45:10%濃度(W/V)であり、また他の特定例では、20〜40:10%濃度(W/V)であって、また他の特定例では、20〜35:10%濃度(W/V)であり、また他の特定例では、20〜30:10%濃度(W/V)である。
【0035】
本発明の一具現例によると、本発明の工程(a)のビーズ製造用溶液のエマルジョン化は、天然オイル又は粘度増加剤を含有する有機溶媒を使用して行う。使用可能な天然オイルの例としては、MCTオイル、綿実油、玉蜀黍油、アーモンド油、あんず油、アボカド油、ババスヤシ油、カモミール油、カノラ油、ココアバター油、ココナッツ油、タラ肝油、コーヒー油、魚油、亜麻種油、ホホバ油、瓢箪油、ブドウ種子油、ヘーゼルナッツ油、ラベンダー油、レモン油、マンゴ種油、オレンジ油、オリーブ油、ミンク油、棕櫚油、ローズマリー油、ゴマ油、シアバター油、豆油、ヒマワリ油、及び胡桃油などが挙げられる。
【0036】
使用可能な有機溶媒としては、アセトン、エタノール及びブチルアセテートなどが挙げられる。前記有機溶媒は、適切な粘度を付与するために粘度増加剤を含む。前記粘度増加剤の例としては、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、セルロースアセテートブチレートなどのセルロース系列のポリマーが挙げられる。好ましくは、前記粘度増加剤を含有する有機溶媒は、セルロースアセテートブチレートを含有したブチルアセテートである。
【0037】
本発明の一具現例によると、本発明の工程(a)のマイクロサイズのバブルは、マイクロ流体システム又はエンカプセレーターを利用して形成できる。マイクロ流体システムは、微細構造のチップを利用してビーズを製造する方法であって、大きい管の内部にそれより小さい管を位置させた後、互いに反対方向に水相と油相を流すと、相互張力によりビーズが形成される。即ち、ビーズ製造用溶液を内部流体として、それと同時に前記天然オイル又は有機溶媒(収集溶液)を外部流体として流すと、張力によりビーズが形成されて、これを再び収集溶液に収集し、架橋反応を通じてビーズを製造することができる。
【0038】
エンカプセレーションは、電気放射と類似した方法でノズルと収集溶液との間に電場を形成し、張力により生成される水玉を細かく割って、非常に小さい大きさの水滴に分散させることをその特徴とする。ビーズ製造用溶液を容量に合う注射器に移して、これを注射器ポンプに取り付けた後、エンカプセレーターと連結する。そして、収集溶液も容量に合うディッシュに移した後、攪拌機に位置させて、エンカプセレーターの環境を適切に設定した後、ビーズ製造用溶液を収集溶液に噴射し、バブルを形成させる。エンカプセレーターの条件は、流速1〜5mL/分、加える電力1,000〜3,000V、超音波2,000〜6,000Hz、回転数100rpm以下が好ましく、放出ノズルの大きさは、製造するビーズの大きさに合わせて選択して使用する。
【0039】
本発明の他の一具現例によると、本発明の工程(a)のマイクロ大きさのバブルは、ビーズ製造用溶液と収集溶液を混合した後、適切な回転数で攪拌する乳化法で製造することができる。この際、ビーズの大きさは、回転数と攪拌時間に依存する。適切な大きさのバブルが形成されると、前記収集溶液を加熱して、アルブミンの熱架橋によるマイクロビーズを形成させる。
【0040】
本発明の一具現例によると、アルブミンの架橋反応が完了するまで攪拌し続けて反応を維持し、反応が完了すると、収集溶液の洗浄のために過量のアセトンあるいはエタノールを利用してビーズを数回洗浄する。
【0041】
本発明の一具現例によると、本発明の工程(b)では、工程(a)で収得したマイクロサイズのバブルに熱を加え、アルブミンを熱架橋結合させてマイクロビーズの形態を形成させて、前記アルブミン熱架橋物にデキストランサルフェートが含まれるようにする。
【0042】
本発明の一具現例によると、前記熱架橋温度は、60〜160℃であり、熱架橋時間は、1〜4時間である。一つの特定例において、前記熱架橋温度は、80〜160℃であり、熱架橋時間は、1〜4時間である。
【0043】
本発明の一具現例によると、工程(b)でアルブミンが熱架橋結合された場合、工程(c)でマイクロビーズに吸着された抗癌剤の量は、熱架橋に代わってグルタルアルデヒド架橋剤を使用したことを除いては同一な条件で製造されたマイクロビーズに吸着された抗癌剤の量より20〜45%向上されて、一つの特定例では21〜43%、他の特定例では22〜42%、また他の特定例では、23〜41%向上される。
【0044】
本発明のまた他の様態によると、本発明は、架橋結合されて、ビーズの形態を形成するアルブミンと、前記アルブミン架橋物内に含まれた陰イオン性高分子のデキストランサルフェートと、前記陰イオン性高分子との静電気的引力によってビーズ表面に吸着された抗癌剤とを含む、抗癌剤吸着能力の向上された生分解性マイクロビーズを患者に投与する工程を含む癌治療方法を提供する。
【0045】
本発明によると、本発明のマイクロビーズを癌患者に投与し、化学塞栓を通じて癌を治療することができる。
【0046】
本発明の一具現例によると、前記患者は、肝癌患者であって、前記マイクロビーズは、患者の肝動脈に投与される。