特許第6145518号(P6145518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6145518
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】回転式熱処理炉
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/10 20060101AFI20170607BHJP
   F27B 9/16 20060101ALI20170607BHJP
   C21D 1/34 20060101ALI20170607BHJP
   F27D 7/04 20060101ALI20170607BHJP
   C21D 1/00 20060101ALI20170607BHJP
   C22F 1/04 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   F27B9/10
   F27B9/16
   C21D1/34 101
   F27D7/04
   C21D1/00 113C
   C22F1/04 M
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-556776(P2015-556776)
(86)(22)【出願日】2014年12月26日
(86)【国際出願番号】JP2014084539
(87)【国際公開番号】WO2015105026
(87)【国際公開日】20150716
【審査請求日】2016年2月19日
(31)【優先権主張番号】特願2014-1196(P2014-1196)
(32)【優先日】2014年1月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592017002
【氏名又は名称】三建産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391006430
【氏名又は名称】中央精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(72)【発明者】
【氏名】万代 悠輔
(72)【発明者】
【氏名】岸村 司
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 史
【審査官】 市川 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−200823(JP,A)
【文献】 特開2008−138916(JP,A)
【文献】 特表平02−502930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00−9/40
C21D 1/34
C21D 1/767
F27D 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側が第一ゾーンと第二ゾーンに分断された炉本体と、
径方向に延びる側壁で仕切られた略等しい大きさの格納室が周方向に複数かつ多段状に形成されるとともに中央部には空隙が形成されてなる平面視略ドーナツ状で、前記第一ゾーンと前記第二ゾーンを跨ぐように設置されしかも回転自在に支持される格納回転体と、
前記格納回転体を回転させる回転駆動装置と、
前記炉本体内の空気を加熱する加熱装置と、
前記加熱装置により加熱された空気を前記格納回転体に熱風として送るファンと、
前記炉本体の内側を前記第一ゾーンと前記第二ゾーンに分断する、前記ファンから前記格納回転体まで延びる第一仕切壁,及び前記炉本体の壁面から前記格納回転体まで延びる第二仕切壁と、
前記第一ゾーンに位置する前記格納室の外周側と前記ファンの吹出口とを連通する第一流路と、
前記第二ゾーンに位置する前記格納室の外周側と前記ファンの吸込口とを連通する第二流路を備え、
前記第一仕切壁の前記格納回転体側の部位が前記側壁の一つと近接するときに、前記第二仕切壁の前記格納回転体側の部位が前記側壁の他の一つと近接し、
前記第一流路を介した前記ファンからの熱風を、前記第一ゾーンに位置する前記格納室の外周側から略水平に前記空隙側へ送り、
さらにその熱風を前記空隙側から略水平に前記第二ゾーンに位置する前記格納室の外周側へ送り、前記第二流路を介して前記ファンまで戻すことを特徴とする回転式熱処理炉。
【請求項2】
前記第二ゾーンに位置する前記格納室の数よりも前記第一ゾーンに位置する前記格納室の数が多くなるように前記第一仕切壁及び前記第二仕切壁を配置して、
前記第一ゾーンに位置する前記格納室のそれぞれに流入する熱風の風量及び風速よりも前記第二ゾーンに位置する前記格納室のそれぞれに流入する熱風の風量及び風速を増大したことを特徴とする請求項1に記載の回転式熱処理炉。
【請求項3】
前記格納室に被加熱物を搬入するための搬出入口を、前記第一ゾーンの前記第二仕切壁側に位置する前記炉本体の壁面に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転式熱処理炉。
【請求項4】
前記搬出入口に相対向する前記格納室への熱風の流入を抑制する整流板を、前記第一流路に設けたことを特徴とする請求項3に記載の回転式熱処理炉。
【請求項5】
前記格納回転体の中央部に形成された空隙に、前記加熱装置とは異なる熱源によって前記空隙側から前記第二ゾーンへ送られる熱風の温度を上昇させる昇温装置を設置したことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の回転式熱処理炉。
【請求項6】
前記昇温装置は、前記格納回転体の中央部に形成された空隙に沿って設けられた熱供給管を備え、該熱供給管の前記第二ゾーン側の周面には開口部が複数形成され、前記第一ゾーンから前記空隙に流入する熱風の温度よりも高温の気体を前記炉本体の外部から前記熱供給管を通じて前記第二ゾーン側へ供給するようにしたことを特徴とする請求項5に記載の回転式熱処理炉。
【請求項7】
前記昇温装置は溶体化炉に接続され、前記炉本体の外部から供給される高温の気体は、前記溶体化炉から排出される排ガスであることを特徴とする請求項6に記載の回転式熱処理炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱風を循環させてアルミニウム合金などの被加熱物に熱処理を施す回転式熱処理炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、アルミニウム合金等の被加熱物に熱処理を施すために、熱風循環式や多段型炉床回転式といった熱処理炉が使用されている。前者は、炉内温度のバラツキを低減して品質の安定化を図ることができ、後者は、熱処理施設の省スペース化を図ることができるといった利点がある。
こうした熱風循環式と多段型炉床回転式を組み合わせた回転式熱処理炉について、本出願人は既に特許出願を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この回転式熱処理炉10は、図4に示すように、炉本体11内に配置された格納回転体12の格納室12aに対応して中空のチャンバーCが設けられており、中央部12bに対して上方から供給した熱風を中空のチャンバーCを介して、全ての被加熱物Wに対して上方から熱風を供給するものである。
特許文献1に記載の回転式熱処理炉10によると、被加熱物Wを加熱する熱風は、その被加熱物Wを加熱する前に他の被加熱物Wを加熱していないので、それぞれの被加熱物Wに作用する熱風の温度は略等しく、全ての被加熱物Wを均等に加熱することができる。
【0004】
またこれとは別に、被加熱物Wに下方から熱風を当てる回転式熱処理炉も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
この回転式熱処理炉20は、図5に示すように、中央部上方に設けられたファン24により一旦熱風を炉底まで送り、最も下方に位置する格納室22aに熱風を入れ、その熱風を最も上方に位置する格納室22aまで順に送るものである。そして、その熱風は再びファン24により炉底まで送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−7471号公報
【特許文献2】特開2004−257658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの発明では中央部において上方から下方に熱風を送るため、その中央部の上方や下方に熱風の流路となるスペースが必要である。つまり、そのスペースの分だけ炉本体の高さが高くなってしまう。
したがって、炉本体の大きさによっては、生産工場から納品場所まで輸送するためには炉本体を分割構造としなければ輸送できないという問題がある。
【0007】
また、被加熱物を加熱して昇温させる加熱ゾーンは、昇温した状態を保つ均熱ゾーンよりも多くの熱量、すなわち大きな風量・風速を必要とするので、ファンから吐出される熱風を均熱ゾーンよりも加熱ゾーンに多く分配するために中央部に固定式の内筒を設ける必要がある。その結果、回転炉床の構造が複雑になってしまう問題があった。
一方、固定式の内筒を設けずに均熱ゾーンの風量・風速を加熱ゾーンに合わせることも考えられるが、そうすると均熱ゾーンには必要以上の風量・風速を供給することになり、ファンの容量が大きくなってしまう問題もある。
【0008】
そこで、本発明の目的とするところは、高さ方向について格納室の数を減らすことなく炉本体の高さを低くすることができ、しかも回転炉床の構造が単純でファンの容量も抑制可能な回転式熱処理炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の回転式熱処理炉(30)は、内側が第一ゾーン(P)と第二ゾーン(Q)に分断された炉本体(31)と、径方向に延びる側壁(32c)で仕切られた略等しい大きさの格納室(32a)が周方向に複数かつ多段状に形成されるとともに中央部には空隙(32b)が形成されてなる平面視略ドーナツ状で、前記第一ゾーン(P)と前記第二ゾーン(Q)を跨ぐように設置されしかも回転自在に支持される格納回転体(32)と、前記格納回転体(32)を回転させる回転駆動装置(33)と、前記炉本体(31)内の空気を加熱する加熱装置(39)と、前記加熱装置(39)により加熱された空気を前記格納回転体(32)に熱風として送るファン(34)と、前記炉本体(31)の内側を前記第一ゾーン(P)と前記第二ゾーン(Q)に分断する、前記ファン(34)から前記格納回転体(32)まで延びる第一仕切壁(37),及び前記炉本体(31)の壁面から前記格納回転体(32)まで延びる第二仕切壁(38)と、前記第一ゾーン(P)に位置する前記格納室(32a)の外周側と前記ファン(34)の吹出口とを連通する第一流路(35)と、前記第二ゾーン(Q)に位置する前記格納室(32a)の外周側と前記ファン(34)の吸込口とを連通する第二流路(36)を備え、前記第一仕切壁(37)の前記格納回転体(32)側の部位が前記側壁(32c)の一つと近接するときに、前記第二仕切壁(38)の前記格納回転体(32)側の部位が前記側壁(32c)の他の一つと近接し、前記第一流路(35)を介した前記ファン(34)からの熱風を、前記第一ゾーン(P)に位置する前記格納室(32a)の外周側から略水平に前記空隙(32b)側へ送り、さらにその熱風を前記空隙(32b)側から略水平に前記第二ゾーン(Q)に位置する前記格納室(32a)の外周側へ送り、前記第二流路(36)を介して前記ファン(34)まで戻すことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の回転式熱処理炉(30)は、前記第二ゾーン(Q)に位置する前記格納室(32a)の数よりも前記第一ゾーン(P)に位置する前記格納室(32a)の数が多くなるように前記第一仕切壁(37)及び前記第二仕切壁(38)を配置して、前記第一ゾーン(P)に位置する前記格納室(32a)のそれぞれに流入する熱風の風量及び風速よりも前記第二ゾーン(Q)に位置する前記格納室(32a)のそれぞれに流入する熱風の風量及び風速を増大したことを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の回転式熱処理炉(30)は、前記格納室(32a)に被加熱物を搬出入するための搬出入口(41)を、前記第一ゾーン(P)の前記第二仕切壁(38)側に位置する前記炉本体(31)の壁面に設けたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の回転式熱処理炉(30)は、前記搬出入口(41)に相対向する前記格納室(32a)への熱風の流入を抑制する整流板(42)を、前記第一流路(35)に設けたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の回転式熱処理炉(30)は、前記格納回転体(32)の中央部に形成された空隙(32b)に、前記加熱装置(39)とは異なる熱源によって前記空隙(32b)側から前記第二ゾーン(Q)へ送られる熱風の温度を上昇させる昇温装置を設置したことを特徴とする。
【0014】
また、請求項6に記載の回転式熱処理炉(30)は、前記昇温装置は、前記格納回転体(32)の中央部に形成された空隙(32b)に沿って設けられた熱供給管(50)を備え、該熱供給管(50)の前記第二ゾーン(Q)側の周面には開口部(51)が複数形成され、前記第一ゾーン(P)から前記空隙(32b)に流入する熱風の温度よりも高温の気体を前記炉本体(31)の外部から前記熱供給管(50)を通じて前記第二ゾーン(Q)側へ供給するようにしたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項7に記載の回転式熱処理炉(30)は、前記昇温装置は溶体化炉(60)に接続され、前記炉本体(31)の外部から供給される高温の気体は、前記溶体化炉(60)から排出される排ガスであることを特徴とする。
【0016】
ここで、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に記載の回転式熱処理炉によれば、径方向に延びる側壁で格納室が仕切られ、炉本体の内側を第一ゾーンと第二ゾーンに分断する、ファンから格納回転体まで延びる第一仕切壁,及び炉本体の壁面から格納回転体まで延びる第二仕切壁と、第一ゾーンに位置する格納室の外周側とファンの吹出口とを連通する第一流路と、第二ゾーンに位置する格納室の外周側とファンの吸込口とを連通する第二流路を備えるので、熱風が第一ゾーンに位置する格納室の外周側から略水平に空隙側に送られ、さらにその熱風が空隙側から略水平に第二ゾーンに位置する格納室の外周側へ送られる。
つまり、格納室に対して略水平に熱風を送るので、格納回転体の中央部の上方や下方に熱風の流路となるスペースが不要である。その結果、高さ方向について格納室の数を減らすことなく炉本体の高さを低くすることができる。よって、回転駆動装置やバーナなどの加熱装置やファンといった最低限の部材を取外すだけで、他は分解せずに炉本体を輸送可能となる。
【0018】
また、第一ゾーンから第二ゾーンに熱風を送るので、従来例では必要であったファンからの熱風を第一ゾーンと第二ゾーンに分配するための格納回転体中央部の固定式内筒が不要になり、回転炉床の構造を単純化可能である。また、ファンも容量が大きなものを選択する必要がない。
しかも、炉本体の高さが低く炉本体の体積が小さいことで熱損失が少なくなるので、省エネにつながる。
また、第一ゾーンに位置する格納室には温度低下していない熱風が供給されるので、この複数の格納室において温度ばらつきが少ない。
【0019】
また、請求項2に記載の回転式熱処理炉によれば、請求項1に記載の発明の作用効果に加え、第二ゾーンに位置する格納室の数よりも第一ゾーンに位置する格納室の数が多くなるように第一仕切壁及び第二仕切壁を配置したので、第一ゾーンに位置する格納室のそれぞれに流入する熱風の風量及び風速よりも第二ゾーンに位置する格納室のそれぞれに流入する熱風の風量及び風速が増大する。これにより、第二ゾーンにおける熱伝達率が上がるので、第二ゾーンの位置する格納室内の被加熱物を急速昇温することができる。
【0020】
また、請求項3に記載の回転式熱処理炉によれば、請求項1又は2に記載の発明の作用効果に加え、格納室に被加熱物を搬出入するための搬出入口を、第一ゾーンの第二仕切壁側に位置する炉本体の壁面に設けたので、搬出入口から漏れる熱量を抑制することができる。
すなわち、第一ゾーンでは第二ゾーンに比較して熱風の風量及び風速が低いので、被加熱物の搬出入時における搬出入口からの熱損失を抑制できる。
【0021】
また、請求項4に記載の回転式熱処理炉によれば、請求項1乃至3に記載の発明の作用効果に加え、搬出入口に相対向する格納室への熱風の流入を抑制する整流板を、第一流路に設けたので、搬出入口からの熱損失をさらに抑制可能で、搬出入口まわりのダクト構造が不要となる。
【0022】
さらに、請求項5に記載の回転式熱処理炉によれば、請求項1乃至4に記載の発明の作用効果に加え、格納回転体の中央部に形成された空隙に昇温装置を設置して、加熱装置とは異なる熱源によって空隙側から第二ゾーンへ送られる熱風の温度を上昇させるようにしたので、第二ゾーンにおける雰囲気温度が高くなり、第二ゾーンに位置する格納室内の被加熱物をより急速に昇温することができる。
【0023】
また、請求項6に記載の回転式熱処理炉によれば、請求項5に記載の発明の作用効果に加え、昇温装置は、格納回転体の中央部に形成された空隙に沿って設けられた熱供給管を備えるとともにその熱供給管の第二ゾーン側の周面には開口部が複数形成され、第一ゾーンから空隙に流入する熱風の温度よりも高温の気体を炉本体の外部から熱供給管を通じて開口部を介して第二ゾーン側へ供給するようにしたので、簡易な構成で第二ゾーンにおける雰囲気温度を急速に昇温させることができる。
また、熱供給管に形成された開口部の開度を変えて熱風の量を調整することで、第二ゾーンにおける雰囲気温度を所望の温度に設定する制御を容易に行うことができる。
【0024】
また、請求項7に記載の回転式熱処理炉によれば、請求項6に記載の発明の作用効果に加え、昇温装置は溶体化炉に接続され、炉本体の外部から供給される高温の気体はその溶体化炉から排出される排ガスであるので、エネルギーの有効利用が図れる。
【0025】
なお、本発明の回転式熱処理炉のように、熱風を第一ゾーンに位置する格納室の外周側から略水平に空隙側に送り、さらにその熱風を空隙側から略水平に第二ゾーンに位置する格納室の外周側へ送る点は、上述した特許文献1及び2には全く記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る回転式熱処理炉を示す平面図である。
図2】本発明の実施形態に係る回転式熱処理炉を示す縦断面図である。
図3】本発明の他の実施形態に係る回転式熱処理炉を示す平面図である。
図4】従来例に係る回転式熱処理炉を示す縦断面図である。
図5】他の従来例に係る回転式熱処理炉を示す縦断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る別の回転式熱処理炉を示す平面図である。
図7】本発明の実施形態に係る別の回転式熱処理炉を示す縦断面図である。
図8図7に示す熱供給管の拡大断面図である。
図9図7に示す熱供給管から熱風を排出することによる温度上昇を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1及び図2を参照して、本発明の実施形態に係る回転式熱処理炉30を説明する。
この回転式熱処理炉30は、アルミニウム合金等の被加熱物Wに熱処理を施すための熱処理炉であり、炉本体31と、格納回転体32と、回転駆動装置33と、加熱装置としてのバーナ39と、ファン34と、第一流路35と、第二流路36を備える。
そして、本実施形態に係る回転式熱処理炉30は、特に被加熱物Wに作用させる熱風の循環の向き・方向に特徴を有する。
【0028】
炉本体31は、主に格納回転体32とファン34とを収容し、炉本体31内の熱が外部に逃げ難くなるように断熱処理されている。
炉本体31の内部には、ファン34から格納回転体32まで延びる第一仕切壁37と、炉本体31の壁面から格納回転体32まで延びる第二仕切壁38を備える。この第一仕切壁37及び第二仕切壁38によって、炉本体31の内側が第一ゾーンPと第二ゾーンQに分断されている。ここでいう第一ゾーンPはファン34の吹出口側であって、第二ゾーンQはファン34の吸込口側である。
【0029】
また、第一仕切壁37及び第二仕切壁38は炉床から天井まで延びているので、第一仕切壁37や第二仕切壁38を直接越えて熱風が第一ゾーンPと第二ゾーンQとの間を行き来することはない。
そして、格納室32aに被加熱物Wを搬出入するための搬出入口41を、第一ゾーンPにおける格納回転体32の回転の最下流に位置する部位であって、ファン34の吹出口から離れた炉本体31の壁面に設けた。
【0030】
格納回転体32は、格納室32aが周方向に複数(ここでは八つ)かつ多段状に形成されるとともに中央部には空隙32bが形成されてなり、平面視略ドーナツ状である。この格納回転体32は、炉本体31の内側に第一ゾーンPと第二ゾーンQを跨ぐように(第一仕切壁37と第二仕切壁38との間に)設置され、しかも回転自在に支持される。
詳しくは、格納回転体32は円滑に回転可能なように回転駆動装置33からぶら下がった状態で支持されている。つまり、格納回転体32の上端や下端は炉本体31と接触していないか、接触していても摩擦抵抗が小さい。
【0031】
また格納室32aは、それぞれが略等しい大きさの平面視扇形であって、径方向に延びる側壁32cで周方向が仕切られており、内部に被加熱物Wを格納する。
そして、第一ゾーンPに位置する格納室32aが平面視で六つ、第二ゾーンQに位置する格納室32aが平面視で二つになるように、格納回転体32が第一仕切壁37や第二仕切壁38に対して配置されている。
【0032】
ここで、格納回転体32が回転し、第一仕切壁37の格納回転体32側の部位が格納回転体32の側壁32cの一つの外周側と近接するときに、第二仕切壁38の格納回転体32側の部位が格納回転体32の側壁32cの他の一つの外周側と近接する。
つまり、第一仕切壁37と一つの側壁32cが一連の仕切壁となり、第二仕切壁38と他の一つの側壁32cによっても一連の仕切壁が構成される。この一連の仕切壁によって、炉本体31の内部は第一ゾーンPと第二ゾーンQに分断される。
【0033】
回転駆動装置33は、格納回転体32を回転させる動力源であり、炉本体31に上載される。
本実施形態においては、回転駆動装置33は格納回転体32を平面視反時計回りに回転させる。
一つの格納室32aが搬出入口41の正面となる状態では、回転駆動装置33は停止している。そして、所定時間の経過後に回転駆動装置33は1/8回転だけ格納回転体32を回転させた後、回転を停止する。その後、所定時間が経過するとまた格納回転体32を1/8回転させる。
このように、回転駆動装置33は作動と停止を繰り返して、格納回転体32を断続的に回転させる。
【0034】
ファン34は、炉本体31の内部の端に設けられており、格納回転体32側に、炉本体31内の空気を加熱するバーナ39(炉本体31内の空気を加熱可能なものであれば、バーナ39以外、例えばヒータ等の他の熱源であってもよい)からの熱風を送る。すなわち、ファン34の吹出口が格納回転体32側に、またファン34の吸込口がバーナ39側にそれぞれ向いている。
このファン34としては、軸流ファンやシロッコラジカルファン等を用いることができる。
また、ファン34の吹出口の高さ位置は、格納回転体32の高さ方向略中央となっている。
【0035】
第一流路35は、第一ゾーンPに位置する格納室32aの外周側とファン34の吹出口とを連通する。
そして、第二流路36は第二ゾーンQに位置する格納室32aの外周側とファン34の吸込口とを連通する。
【0036】
このように構成された回転式熱処理炉30における熱風の循環について説明する。
まず、ファン34からの熱風が第一流路35を介して格納回転体32に送られる。
その熱風は第一ゾーンPに位置する格納室32aの外周側から略水平に空隙32b側へ送られる。
さらにその熱風は空隙32b側から略水平に第二ゾーンQに位置する格納室32aの外周側へ送られる。
そして、熱風は第二流路36を介してファン34まで戻る。
【0037】
ここで、第一流路35や第二流路36の全域で熱風が略水平に送られるというのではなく、格納室32aを熱風が通過するときに、外周側から空隙32b側、あるいは空隙32b側から外周側までの間においては熱風が略水平に流れるということである。
【0038】
このとき、第二ゾーンQに位置する格納室32aの数(ここでは二つ)よりも第一ゾーンPに位置する格納室32aの数(ここでは六つ)が多いので、第一ゾーンPに位置する格納室32aのそれぞれに流入する熱風の風量及び風速よりも第二ゾーンQに位置する格納室32aのそれぞれに流入する熱風の風量及び風速が増大する。
つまり、第二ゾーンQが、被加熱物Wを加熱して昇温させる加熱ゾーンとなり、第一ゾーンPが、その昇温した状態を保つ均熱ゾーンとなる。
【0039】
以上のように構成された回転式熱処理炉30によれば、径方向に延びる側壁32cで格納室32aが仕切られ、炉本体31の内側を第一ゾーンPと第二ゾーンQに分断する、ファン34から格納回転体32まで延びる第一仕切壁37,及び炉本体31の壁面から格納回転体32まで延びる第二仕切壁38と、第一ゾーンPに位置する格納室32aの外周側とファン34の吹出口とを連通する第一流路35と、第二ゾーンQに位置する格納室32aの外周側とファン34の吸込口とを連通する第二流路36を備えるので、熱風が第一ゾーンPに位置する格納室32aの外周側から略水平に空隙32b側に送られ、さらにその熱風が空隙32b側から略水平に第二ゾーンQに位置する格納室32aの外周側へ送られる。
つまり、格納室32aに対して略水平に熱風を送るので、格納回転体32の中央部の上方や下方に熱風の流路となるスペースが不要である。その結果、高さ方向について格納室32aの数を減らすことなく炉本体31の高さを低くすることができる。よって、回転駆動装置33やファン34といった最低限の部材を取外すだけで、他は分解せずに炉本体31を輸送可能となる。
【0040】
また、第一ゾーンPから第二ゾーンQに熱風を送るので、従来例では必要であったファン34からの熱風を第一ゾーンPと第二ゾーンQに分配するための格納回転体32中央部の固定式内筒が不要になり、回転炉床の構造を単純化可能である。また、ファン34も容量が大きなものを選択する必要がない。
しかも、炉本体31の高さが低く炉本体31の体積が小さいことで熱損失が少なくなるので、省エネにつながる。
また、第一ゾーンPに位置する格納室32aには温度低下していない熱風が供給されるので、この複数の格納室32aにおいて温度ばらつきが少ない。
【0041】
また、第二ゾーンQに位置する格納室32aの数よりも第一ゾーンPに位置する格納室32aの数が多くなるように第一仕切壁37及び第二仕切壁38を配置したので、第一ゾーンPに位置する格納室32aのそれぞれに流入する熱風の風量及び風速よりも第二ゾーンQに位置する格納室32aのそれぞれに流入する熱風の風量及び風速が増大する。これにより、第二ゾーンQにおける熱伝達率が上がるので、第二ゾーンQの位置する格納室32a内の被加熱物Wを急速昇温することができる。
【0042】
しかも、格納室32aに被加熱物Wを搬出入するための搬出入口41を、第一ゾーンPにおける格納回転体32の回転の最下流に位置する炉本体31の壁面に設けたので、搬出入口41から漏れる熱量を抑制することができる。
すなわち、第一ゾーンPでは第二ゾーンQに比較して熱風の風量及び風速が低いので、被加熱物Wの搬出入時における搬出入口41からの熱損失を抑制できる。
【0043】
なお、本実施形態において、第一ゾーンPに位置する格納室32aの数を平面視で六つ、第二ゾーンQに位置する格納室32aの数を平面視で二つとしたが、これに限られるものではなく、第二ゾーンQに位置する格納室32aの数よりも第一ゾーンPに位置する格納室32aの数が多ければよい。
このように第二ゾーンQに位置する格納室32aの数よりも第一ゾーンPに位置する格納室32aの数を多くすることで実質的に絞りを設けたが、壁を設けてそこに孔を形成することでノズル構造(絞り)としてもよい。
【0044】
また、搬出入口41を、第一ゾーンPにおける格納回転体32の回転の最下流に位置する炉本体31の壁面に設けたが、この位置に限られるものではない。
【0045】
また、図3に示すように、搬出入口41の格納回転体32の回転上流側に、搬出入口41に相対向する格納室32aへの熱風の流入を抑制する整流板42を設けてもよい。これにより、被加熱物Wの搬出入時に搬出入口41からの熱損失をさらに抑制可能で、搬出入口41まわりのダクト構造が不要となる。
さらに、熱風の流量や流速を制御するために第一流路35において整流板42を適宜配置してもよい。
【0046】
また、第二仕切壁38を炉本体31の壁面から格納回転体32側に突出して設けたが、これに限られるものではなく、側壁32cの一つとともに一連の仕切壁を構成して炉本体31の内側を第一ゾーンPと第二ゾーンQに分断するできるものであればよい。
【0047】
また、格納回転体32をつり下げ式としたが、これに限られるものではない。
【0048】
なお、本実施形態では、バーナ39などの加熱装置により加熱された空気を、炉本体31の内部の端に設けられたファン34で熱風として、第一流路35を介して格納回転体32に送り、さらに第一ゾーンPに位置する格納室32aから第二ゾーンQに位置する格納室32aに送るようにしたが、格納回転体32の中央部に形成された空隙32bに、バーナ39などの加熱装置とは異なる熱源によって空隙32b側から第二ゾーンQへ送られる熱風の温度を上昇させる昇温装置を設置することもできる。より具体的には、例えば、図6乃至図8に示すように、昇温装置として、格納回転体32の中央部に形成された空隙32bに沿って、熱供給管50を設置して格納回転体32の内部に直接、熱風を取り入れるようにしてもよい。
【0049】
熱供給管50は上下に延びる筒体で、図7及び図8に示すように、第二ゾーンQ側の周面だけに開口部51が複数形成され、第一ゾーンPから空隙32bに流入する熱風の温度よりも高温の気体を炉本体31の外部から熱供給管50を通じて第二ゾーンQ側へ供給するようにしている。ここでは、略矩形状の開口部51が左右方向に4か所,上下方向に5段の計20か所設けられ、いずれも第二ゾーンQ側、すなわち、第一仕切壁37と第二仕切壁38で仕切られた狭い方の領域(第二流路36側の領域)側だけに設けられている。なお、開口部51にシャッターや弁などを設けて開口部51の開度を変えることで開口部51から排出される熱風の量を調整するようにしてもよい。これによれば、第二ゾーンQにおける雰囲気温度を所望の温度に設定する制御を容易に行うことができる。
【0050】
また、熱供給管50は回転式熱処理炉30とは別で外部に位置する溶体化炉60に接続されていて、溶体化炉60から排出される排ガスの熱による熱風が熱供給管50を介して、回転式熱処理炉30の格納回転体32に取り込まれるようにしてある。
【0051】
図9に、熱供給管50を設置しない場合および熱供給管50を設置した場合における、第一ゾーンPおよび第二ゾーンQの雰囲気温度と被加熱物Wの温度変化の一例を示す。
図示するように、熱供給管50を設置した場合には、第二ゾーンQにおける雰囲気温度を、第一ゾーンPにおける雰囲気温度よりも高めることができる。
本実施形態における第二ゾーンQの雰囲気温度は、熱供給管50を設置しない場合には、約143〜153度(℃)であるが、熱供給管50を設置した場合には、約155〜165度(℃)にすることができた。
これにより、熱供給管50を設置しない場合に比べて熱供給管50を設置した場合には、第二ゾーンQに位置する格納室32a内の被加熱物Wをより急速に昇温することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 回転式熱処理炉
11 炉本体
12 格納回転体
12a 格納室
12b 中央部
20 回転式熱処理炉
22a 格納室
24 ファン
30 回転式熱処理炉
31 炉本体
32 格納回転体
32a 格納室
32b 空隙
32c 側壁
33 回転駆動装置
34 ファン
35 第一流路
36 第二流路
37 第一仕切壁
38 第二仕切壁
39 バーナ
41 搬出入口
42 整流板
50 熱供給管
51 開口部
60 溶体化炉
C チャンバー
P 第一ゾーン
Q 第二ゾーン
W 被加熱物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9