【実施例】
【0036】
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
(1)橋梁の構成
本実施例に係る止水構造1が設けられる橋梁100は、
図1に示すように、桁橋であり、その端部には下部構造としての橋台102(本発明に係る一対の橋梁構成体の一方として例示する)が配置されている。また、橋梁100は、橋台102の上部に対向するようにして上部構造としての橋桁103(本発明に係る一対の橋梁構成体の他方として例示する)が配置されている。また、橋梁100は、橋台102から水平方向に所定の間隔を空けて橋脚104が配置されている。橋桁103は、その一端が支承105を介して橋台102に支持されているとともに、その他端が支承105を介して橋脚104に支持されている。そして、橋台102と橋桁103との間は目地部101とされており、この目地部101には橋桁103の温度変化等による伸長を吸収するための隙間が形成されている。止水構造1は、この目地部101に設けられおり、当該目地部101からの漏水を防止するための構造である。
【0037】
なお、
図1において、橋桁103は複数(図中2つ)配置されている。そして、橋桁103,103同士の間にも目地部101は形成されており、この目地部101にも同様に止水構造1が設けられている。本実施例では、橋台102及び橋桁103の間の目地部101に設けられる止水構造を例示して説明する。
【0038】
図2及び
図3に示すように、橋梁100には伸縮装置10が備えられている。伸縮装置10は、一対のジョイント部材11,12を有している。本実施例に係る橋台102及び橋桁103は、目地部101に露出する部分において、ジョイント部材11,12を含む複数の部材が層状に積層されて構成されている。具体的には、橋台102は、鉄筋が配筋されたコンクリート層106が設けられているとともに、その上部には板状のジョイント部材11が取付けられており、これらにより、目地部101に露出する部分において、コンクリート層106とジョイント部材11とが層状に積層された形態となっている。また、橋桁103は、主桁107と、床版108と、路面層109と、が積層されているとともに、路面層109の上部にはジョイント部材11と対をなすジョイント部材12が取付けられている。従って、橋桁103は、目地部101に露出する部分において、主桁107、床版108、路面層109及びジョイント部材12の順に層状に積層された形態となっている。また、ジョイント部材11,12は、目地部101を挟んで相対するように設けられている。
【0039】
ジョイント部材11,12は、
図4に示すように、互いの相対する面が波形のフィンガージョイントである。ジョイント部材11,12には取付孔11A,12Aが形成されている。ジョイント部材11,12は、これら取付孔11A,12Aに、橋台102のコンクリート層106及び橋桁103の路面層109に埋め込まれたボルト13が挿通されてナット14で締結することにより、橋台102及び橋桁103に取付けられる。
【0040】
(2)止水構造の構成
止水構造1は、
図2及び
図3に示すように、弾性シール材2と、シート部材3と、止水材4と、を備えている。
弾性シール材2は、目地部101を挟んで相対する橋台102及び橋桁103の間に液密に配設されている。弾性シール材2は樹脂製であり、目地部101の上部に充填されている。弾性シール材2は弾性体であり、橋梁100の伸縮が発生した場合には、弾性変形してその伸縮を吸収可能となっている。
【0041】
シート部材3は弾性シール材2の下方に配設されている。シート部材3は、橋台102及び橋桁103に架け渡されて取付けられることにより、上部が開放した樋状に形成されている。本実施例では、シート部材3は繊維シートとゴムの複合成形体であり、ジョイント部材11,12と、橋台102のコンクリート層106及び橋桁103の路面層109と、の間に両端が挟持されていることにより橋台102及び橋桁103に取付けられている。橋梁100の伸縮が発生した場合、シート部材3は撓み変形してその伸縮を吸収可能となっている。
【0042】
また、
図2に示すように、シート部材3には水抜きパイプ31が設けられている。水抜きパイプ31は、シート部材3の長手方向に沿って所定間隔で、又は長手方向の勾配の低い側の端部に設けられており、シート部材3の樋状をなす空間に水が溜まった場合にそれを抜くことができる。なお、水抜きパイプ31により抜いた水はそのまま下方に落下させてもよいし、水抜きパイプ31の下部に排水管をさらに接続することによって、水抜きパイプ31により抜いた水を下水設備等に導くようにしてもよい。
【0043】
止水材4は、止水機能を有するスポンジ状の弾性体であり、シート部材3の樋状をなす部分の空間に配設されている。本実施例において、止水材4は、ウレタン製で、その内部に多数の独立気泡が形成されたスポンジ状に形成されている。独立気泡体とは、内部に気泡が存在するが、気泡同士が繋がっていない、気泡同士が壁で仕切られている気泡体である。このため、止水材4は、それ自体が水を吸収しにくくなっているとともに、水の透過率が従来の連泡スポンジよりも小さいので、止水機能を発揮することができるものである。また、止水材4は圧縮変形と復元が可能であり、橋梁100の伸縮が発生した場合には、それを吸収することができるとともに、それに伴って弾性変形した弾性シール材2の下方への膨出も吸収可能となっている。
【0044】
また、
図5に示すように、止水材4には、目地部101に沿って延びる導水路41と、上面から導水路41に貫通し、導水路41の延伸方向に沿って延びるスリット状の連通路42と、が形成されている。これにより、止水材4の上方に水が溜まった場合には、それを連通路42と導水路41を介して排出することができる。導水路41により導かれた水は、導水路41の長手方向端部にて開放されて排出される。なお、この導水路41を水抜きパイプ31と連通するように延ばして形成することにより、導水路41の水が水抜きパイプ31を介して排出されるようにしてもよい。
【0045】
また、本実施例では、止水材4には、溝43,43が形成されている。溝43は、止水材4のシート部材3と対向する面に、目地部101に沿って延びるように形成されている。これにより、止水材4とシート部材3との間に浸入した水を排出することができる。溝43,43により導かれた水は、溝43の長手方向端部にて開放されて排出されるが、この溝43と水抜きパイプ31とを連通する溝を更に形成することにより、溝43の水が水抜きパイプ31を介して排出されるようにすることもできる。
更に、本実施例では、導水路41及び溝43,43には、導水部材5,5,5が配設されている。導水部材5はグラスファイバーを束ねて構成されており、水はその繊維間を通って流通する。
【0046】
(3)止水構造の施工方法
次に、上記構成の止水構造1の施工方法について説明する。
最初に、
図6に示すように、橋梁構成体としての橋台102及び橋桁103の目地部101に露出する部分の上部を切り欠き状に設けておくとともにジョイント部材11,12を取付けるためのボルトを設けておく。本実施例において、この切り欠きは、橋台102のコンクリート層106の打設及び橋桁103の路面層109の敷設の際に、切り欠き形状に設けた型枠を用いて形成される。また、橋台102側のボルトは、コンクリートの打設前に予めコンクリートアンカーボルトを配置することにより設けられている。なお、このボルトは、コンクリートの打設後に打ち込む様式のボルトであってもよい。橋桁103側のボルトは、路面層109の敷設前に、溶接により床版108に予め取付けられており、これにより、床版108上に敷設された路面層109を貫通して突出するように設けられる。なお、このボルトは、床版108を貫通するように配設してもよい。さらに、これらのボルトの締結方法は、コンクリート層106や床版108側にナットを設けておき、ジョイント部材11,12の上方からボルトを差し込む形態など、如何様な形態であってもよい。
【0047】
そして、一対の橋梁構成体としての橋台102及び橋桁103を連結するようにしてシート部材3を架け渡し、シート部材3を取付ける(シート部材取付工程)。このとき、シート部材3に形成された孔にボルト13を挿通するようにして取付ける。
【0048】
次に、
図7に示すように、シート部材3の樋状をなす部分の空間に、予めスポンジ状に形成された止水材4を配設する(止水材配設工程)。このとき、止水材4は、樋状をなす空間の大きさよりも大きく形成されたものを用い、これを圧縮して配設する。また、本実施例では、導水部材5を導水路41及び溝43に予め挿通、配設しておいてから止水材4を配設するようにしている。
【0049】
そして、
図8に示すように、ジョイント部材11,12をボルト13に挿通してナット14にて締結する。これにより、シート部材3がジョイント部材11,12と、橋台102のコンクリート層106及び橋桁103の路面層109と、の間に挟持される。
【0050】
最後に、
図9に示すように、ゴムの液状体2’をジョイント部材11,12の隙間から流し込む。この液状体2’が硬化することにより弾性シール材2となり、止水材4の上方に配設される(弾性シール材配設工程)。液状体2’は、止水材4の上方及びジョイント部材11,12の隙間に充填され、硬化して弾性シール材2となって目地部101に液密に配置される。
【0051】
なお、既存の橋梁に上記構成の止水構造1を設ける場合には、最初に、既存のジョイント部材を取り外す。このとき、必要であれは、目地部101に露出する部分の上部のコンクリートを削っておく。その後、上述の方法で切り欠き及びボルトを設けて上記構成の止水構造1に用いられるジョイント部材11,12を取付け可能に設ける。また、既存のジョイント部材の取り外しのときに、目地部101に露出する部分の上部のコンクリートを削り取ることにより上述の切り欠きを形成し、その後、ジョイント部材取付用のアンカーボルトを打ち込むようにしてもよい。
これらの方法により、既存の橋梁にも本実施例の止水構造1を取付けることができる。
【0052】
(4)実施例の作用及び効果
本実施例の止水構造1は、目地部101を挟んで相対する橋台102と橋桁103との間に液密に配設される弾性シール材2と、弾性シール材2の下方に配設され、橋台102と橋桁103に架け渡されて取付けられることにより上部が開放した樋状に形成されたシート部材3と、シート部材3の樋状をなす部分の空間に配設される止水材4と、を備えている。これにより、弾性シール材2が劣化した際の弾性シール材2からの漏水は止水材4によって受けられ、止水材4が劣化した際の止水材4からの漏水はシート部材3によって受けられる。このため、従来と比較して止水性に優れた止水構造となっている。
【0053】
また、止水材4は、止水機能を有するスポンジ状の弾性体であり、目地部101に沿って延びる導水路41と、止水材4の上面から導水路41に貫通する連通路42と、を有している。このため、万一弾性シール材2からの漏水が発生し、その水を止水材4で受ける場合であっても、止水材4で受けた水を好適に排出することができ、止水構造1内に水が溜まるのを抑制することができる。
【0054】
また、本実施例に係る止水構造1は、弾性シール材2は弾性変形可能であり、シート部材3は撓み変形可能であり、止水材4は圧縮変形と復元が可能である。これにより、橋梁100の伸縮が発生した場合にこれを好適に吸収することができる。また、止水構造1が目地部101に設けられていることにより、橋梁100の上方で発生した騒音が目地部101を介して橋梁100の下方に伝播するのを防止することができる。さらに、止水構造1は、地震等の外力による橋梁100の揺れに対する防振効果や、揺れにより変位した橋梁端部同士が直接衝突するのを防止して衝撃を緩和し、破損を防止する効果等も奏する。
【0055】
また、本実施例では、一対の橋梁構成体としての橋台102及び橋桁103は、目地部101に露出する部分において、それぞれ複数の部材が層状に積層されてなり、シート部材3は、その端部がそれら層状をなす部材間に挟持されていることにより橋台102及び橋桁103に取付けられているので、シート部材3を容易かつ確実に橋台102及び橋桁103に取付けることができる。
【0056】
また、本実施例では、橋台102及び橋桁103の上部には、層状に積層され、目地部を挟んで相対する一対のジョイント部材11,12が設けられており、シート部材3の端部は、ジョイント部材11,12と他の層状をなす部材との間に挟持されているので、シート部材3をより容易かつ確実に橋台102及び橋桁103に取付けることができる。
【0057】
また、本実施例の止水構造1の施工方法によると、一対の橋梁構成体としての橋台102及び橋桁103を連結するようにしてシート部材3を架け渡し、シート部材3を取付けるシート部材取付工程と、シート部材3の樋状をなす部分の空間に止水材4を配設する止水材配設工程と、止水材4の上方に弾性シール材2を配設する弾性シール材配設工程と、を含んでいる。これにより、止水性に優れた止水構造を容易に施工することができる。
【0058】
また、本実施例では、弾性シール材配設工程において、硬化することにより弾性シール材2となる液状体2’を目地部101の上部であるジョイント部材11,12の隙間から注入することにより弾性シール材2を配設するようにしたので、目地部101の形状に沿った弾性シール材2を施工現場で容易に形成して配設することができる。
【0059】
なお、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例では、止水材4に、目地部101に沿って延びる1つの導水路41を形成するようにしたが、これに限定されず、例えば、
図10に示すように、複数(
図10中2つ)の導水路41を形成するようにしてもよい。
また、上記実施例では、導水路41及び溝43に導水部材5を挿通、配設するようにしたが、これに限定されず、例えば、導水路及び溝の少なくとも一方に導水部材を設けない形態としてもよい。また、複数の導水路又は溝が形成されている場合には、それぞれの導水路又は溝について、導水部材を設けたり、設けなかったりなど、適宜設定してもよい。
【0060】
また、上記実施例では、止水材4に形成される連通路42として、導水路41の延伸方向に沿って延びるスリット状の連通路42を例示したが、これに限定されず、例えば、
図11に示すように、導水路41の延伸方向に沿って複数の貫通孔が並んで形成されている形態の連通路42としてもよい。また、
図12に示すように、連通路42の上部に集水溝44が設けられているようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施例では、シート部材3を、目地部101に露出する部分において層状に形成された橋梁構成体(橋台102、橋桁103)の層状をなす部分に挟持させて取付けるようにしたが、これに限定されず、例えば、
図13に示すように、目地部101の隙間空間を形成する橋梁構成体102,103の側壁部に取付けるようにしてもよい。この場合、シート部材3の取付け方法としては、例えば、押さえ板110でシート部材3の端部を押さえるようにして取付けたり、接着して取付けたり、これらを組み合わせて取付けたりする方法などが挙げられる。
【0062】
また、
図14に示すように、目地部101の隙間空間を形成する橋梁構成体102,103の側壁部に、溶接、ボルト止め等によりブラケット111を取付け、このブラケット111を介して、橋梁構成体102,103の側壁部にシート部材3を取付けるようにしてもよい。
図14において、橋梁構成体102,103の側壁部の目地部101に露出する部分には鋼板112が配設されており、この鋼板112にブラケット111が取付けられている。このような構成により、シート部材3の取付け箇所が腐食等により補修を要する場合であっても、ブラケット111を交換するという方法で、容易に補修することができる。なお、この場合のシート部材3の取付け方法としては、上述の押さえ板110をボルト止めする方法や、接着、これらの組合せた方法等を採用することができる。更に、
図14に示すようなシート部材の取付形態は、既存のシート部材が
図13に示すような方法で取付けられている場合、その取付箇所が補修を要する場合にも適用することができる。
【0063】
また、上記実施例では、止水材配設工程において、止水部材4を配設したのち、ジョイント部材11,12を取付けるようにしたが、これに限定されず、例えば、ジョイント部材11,12を取付けた後に、ジョイント部材11,12の隙間から止水材4を挿入することにより止水材4を配設するようしてもよい。
また、上記実施例では、止水部材配設工程において、予めスポンジ状に形成された止水材4を配設するようにしたが、これに限定されず、例えば、
図15に示すように、硬化することにより止水材4となる液状体4’を目地部101に注入することにより止水材4を配設するようにしてもよい。この場合、液状体を注入する前に型部材41’,42’,43’を配置しておくことにより、導水路41及び連通路42を容易に形成することができる。また、型部材41’,43’の代わりに、導水部材5を配置しておくことにより、導水部材5が挿通された導水路41や溝43を容易に形成することができる。なお、この注入は、
図15に示すように、目地部101の上方からであってもよいし、目地部101の下方から(水抜きパイプ31から)であってもよい。
【0064】
また、上記実施例では、弾性シール材配設工程において、硬化することにより弾性シール材2となる樹脂の液状体2’をジョイント部材11,12の隙間から流し込むようにして弾性シール材2を配設するようにしたが、これに限定されず、例えば、予め成形された弾性シール材2を配設するようにしてもよい。