(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の情報提供方法は、光の配列によって情報を表示する情報提供装置を用いて情報を提供する方法であって、表示される光の配列を切り替えることによって、特定の情報を表示する配列を秘匿した状態で表示しておくことができる方法である。
【0018】
本発明において、「光の配列によって情報を表示する」とは、異なる波長の光や異なる輝度の光を並べることよって数字や文字、画像などの情報を表示することを意味している。例えば、ブラウン管や液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ビデオプロジェクタ、LED光源を複数並べて形成したディスプレイなどを用いて数字や文字、画像などの情報を表示することを意味している。また、これらの組み合わせを用いて複数の画像の高速提示も可能である。
また、前記ディスプレイなどのような一般的な表示装置に限らず、複数の光源からの光などによって画像や文字を生成する場合も、本発明における「光の配列によって情報を表示する」という概念に含まれる。例えば、複数本の蛍光灯が並んでいる場合などにおいて、その蛍光灯の一部を消灯し一部を点灯することによって数字や文字、画像を形成できる場合がある。このように複数本の蛍光灯の点灯消灯によって数字や文字、画像などを表示することも、本発明における「光の配列によって情報を表示する」という概念に含まれる。
【0019】
以下の本発明の情報提供方法の説明では、光の配列を表示する方法として、LED光源を複数並べて形成したディスプレイ(以下、単にLEDディスプレイという)を使用した場合を代表として説明する。もちろん、光の配列を表示する方法は、上述したような種々のディスプレイなどを使用できるのはいうまでもない。
【0020】
(本発明の情報提供方法)
本発明の情報提供方法は、提供すべき情報を表示するように光が配列された情報配列と、この情報配列の情報を秘匿するように光が配列された掩蔽配列とを、適宜切り替えて表示する方法である。前記情報配列は、提供すべき情報を表示するように光が配列された情報表示配列がその光の配列の中に含まれている配列である。
【0021】
例えば、LED光源を複数並べて形成したディスプレイ(以下、単にLEDディスプレイという)のLED光源の点滅を制御して、LEDディスプレイに情報配列と掩蔽配列とを高速で切り替えて表示する(例えば、240fps以上)。すると、LEDディスプレイを見ている人は、情報配列全体や掩蔽配列全体、また、情報配列内の情報表示配列を知覚することができない。なぜなら、人の視覚システムでは視細胞の発火によって光を知覚するが、ある光(第1入射光)が眼に入射して視細胞の発火が生じた後、一定期間を経過後でなければ、次の光(第2入射光)が眼に入射しても、第1入射光と第2入射光とを識別することはできないからである。そして、このような状態では、第1入射光と第2入射光とが同時に入射したような状態(言い換えれば光が第1入射光と第2入射光が重なっているような状態)でしか、人の視覚システムは光の輝度や色などを知覚できないからである。
【0022】
なお、本明細書では、「人が光の輝度や色などを知覚できない」とは、神経が感じる刺激としても光の輝度や色の相違などを区別できない状態を意味している。
また、本明細書では、「人が光の輝度や色などを認識できない」とは、神経が感じる刺激のレベルでは光の輝度や色の相違などを区別できているが、人の意識としては、区別できていない状態を意味している。本明細書の定義からすれば、サブリミナル効果を与えるようなレベルは、「人が光の輝度や色などを知覚できる」が、「人が光の輝度や色などを認識できない」レベルに相当する。
【0023】
したがって、上記のごとき周期で情報配列と掩蔽配列とを切り替えて表示した場合には、掩蔽配列を表示する光が表示された後、情報配列が表示されても視細胞の発火が追従できない。すると、人の視覚システムは、情報配列と掩蔽配列とが重なった状態の配列がLEDディスプレイ上に表示されていると知覚する。このため、掩蔽配列および情報配列の表示周期が上記のごとき周期である場合には、LEDディスプレイを見ている人は、実質的には、LEDディスプレイ上に、両画像を重ねたときに形成される画像が表示されているものと認識する。
【0024】
ここで、掩蔽配列が情報配列と同じ配列であって、情報配列の情報表示配列を表示する光の色と、掩蔽配列において情報配列の情報表示配列に相当する配列(情報掩蔽配列)を表示する光の色が、補色の関係にあるとする。例えば、情報表示配列が赤色、情報掩蔽配列が青緑色で表示され、情報配列と掩蔽配列において、情報表示配列と情報掩蔽配列の部分以外の色は、両者の色を合わせた色(灰白色)となるようにする。
【0025】
このような掩蔽配列および情報配列を交互に切り替えて表示した場合、LEDディスプレイを見ている人は、無地の灰白色が表示されているように見える。かかる状態で、LEDディスプレイと眼のあいだで遮光物を振ると、遮光物が眼前に位置してLEDディスプレイからの光が遮られた後、遮光物が眼前から移動して再びLEDディスプレイからの光(再照射光)が眼に入るような状態となる。すると、一旦光の入射が途絶えた視細胞が、再照射光によって発火する状態となる。そして、再照射光によって視細胞が発火した直後にLEDディスプレイからの光が遮られると、視細胞に再照射光だけが入射したような状態となるので、人が再照射光を知覚することができるようになる。したがって、遮光物によって光を遮るタイミングが適切であれば、人が情報配列のみ、または、掩蔽配列のみを知覚できる状態で、LEDディスプレイが放出する光を眼に入射させることができるのである。
【0026】
しかし、遮光物を一回振っただけでは、たとえ適切なタイミングで遮光物によって光を遮ったとしても、情報表示配列や情報掩蔽配列をある程度知覚できても、人が情報表示配列等の情報を認識する状態とはならない。なぜなら、遮光物を一回振ったときに人が知覚認識できる(復号できる)情報表示配列等の情報は、情報表示配列等のごく限られた一部にすぎないからである。
【0027】
そこで、LEDディスプレイと眼のあいだで遮光物を繰り返し振って、人の視界を間欠的に遮れば、視細胞が情報配列の情報表示配列だけ、または、掩蔽配列の情報掩蔽配列だけ、を知覚する状況が繰り返されることになる(
図1参照)。すると、人は、各配列において、情報表示配列や情報掩蔽配列の全体像を明確には認識できないものの、情報表示配列と情報掩蔽配列は同じ位置に形成されるので、両配列を部分的に認識することが繰り返される。すると、部分的に認識される細切れから、情報表示配列や情報掩蔽配列の全体像を人が認識することができるようになる。
【0028】
以上のごとく、本発明の情報提供方法によれば、LEDディスプレイなどを用いて、伝達したい情報を普通に表示される配列(例えば映像等)に秘匿した状態で含ませて表示することができる。
しかも、LEDディスプレイ等をから人の眼に入る光を適切に間欠的に遮断するだけで、人が伝達したい情報を取得できる。つまり、特別な器具を使用しなくても、伝達したい情報を人が取得することができる。例えば、人が手などの遮光物を振るだけで、情報配列の情報表示配列等を人が知覚することができるのである。
【0029】
なお、上述したような場合(掩蔽配列と情報配列とが同じ配列であって色などが異なっているだけの場合)等では、情報配列と掩蔽配列は、一方が情報配列となった場合には他方が掩蔽配列となる。
【0030】
また、遮光物によって光が遮られてから再度光が目に入るタイミングと、情報配列と掩蔽配列の表示が切り替わるタイミングとがある程度の確率で合わなければ、情報表示配列等を人が知覚できても、情報表示配列等を人が認識できる状態とならない。
例えば、手などの振り方によって、情報表示配列等が見えたり見えなかったりするので、情報表示配列等を読み取る行為にゲーム性を付与できる。
【0031】
そして、屋外のデジタルサイネージなどのように光の配列で表示される映像が情報表示配列を含むようにしておけば、映像に秘匿されている情報表示配列の情報を不特定多数の人が取得することも可能となる。
すると、秘匿されている情報が有用または興味深い情報であれば、かかる情報が秘匿されている可能性があるデジタルサイネージに対して、人の関心を惹くことができる。
【0032】
また、かかる秘匿されている情報を得るために手などを振っている人がいれば、秘匿されている情報の存在を知らない人であっても、手などを振っている人の行為に関心を示す。すると、関心を示した人がデジタルサイネージを見る動機づけとなるので、デジタルサイネージに人の関心を惹く効果を高めることができる。
【0033】
なお、情報表示配列は、情報表示配列以外の部分(情報背景配列)との境界が認識され易いので、秘匿性を高める場合には、情報背景配列はランダムなテクスチャを持つか、情報表示配列と同じ程度の空間周波数成分を有する画像となっていることが好ましい。とくに、情報表示配列と情報背景配列との境界が、掩蔽配列におけるその位置の色と同じ色もしくは同じ輝度を有する状態となっていることが好ましい。例えば、情報配列および掩蔽配列が画像である場合には、境界の画素における画素値が掩蔽配列におけるその位置の画素値と同じ色や同じ輝度の画素値となっていることが好ましい。
逆に、容易に人が情報表示配列を取得(復号)できるようにする場合には、情報表示配列と情報背景配列の境界のコントラストが高いことが好ましい。
【0034】
(本発明の情報提供装置)
つぎに、上述したような本発明の情報提供方法を実現できる情報提供装置1を説明する。
なお、情報提供装置1において光の配列によって表示される情報は、画像や文字列などがあるが、以下では、光の配列によって表示される情報が画像の場合を代表として説明する。つまり、上述した情報配列が情報画像に相当し、掩蔽配列が掩蔽画像に相当し、情報配列中の情報表示配列は情報像に相当し、掩蔽配列中の情報掩蔽配列は情報掩蔽像に相当する。また、情報配列の情報背景配列が情報背景像に相当し、掩蔽配列の掩蔽背景配列は掩蔽背景像に相当する。
【0035】
図2に示すように、本発明の情報提供装置1は、光の配列によって画像を表示する表示手段20と、この表示手段20に表示すべき情報を供給するデータ形成手段10とを備えている。
【0036】
(表示手段20)
まず、表示手段20は、光の配列によって画像を表示することができる装置である。
表示手段20は、例えば、ブラウン管や液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、ビデオプロジェクタ、LED光源を複数並べて形成したディスプレイなどであるが、上述したように、複数の光源を有するものであれば、表示手段20として使用することが可能である。
【0037】
表示手段20は上記のごときものを使用できるが、LED光源を複数配列した表示画面等を備えておりこの表示画面上に毎秒480フレーム以上の表示速度で画像などを表示することができるものが好ましい。かかる表示速度で画像などを表示できる場合、情報画像と掩蔽画像を交互に表示したときの各画像の表示速度は毎秒240フレーム以上となる。すると、人の目の時間分解能は15〜60Hz程度であるため、人が情報画像と掩蔽画像を個別に認識できない。したがって、情報画像に含まれる情報像を、より確実に人が知覚することができない状態とすることができる。
【0038】
(データ形成手段10)
データ形成手段10は、配列形成部11と、表示タイミング決定部15と、表示データ形成部18と、を備えている。
【0039】
(配列形成部11)
まず、配列形成部11は、表示手段20によって表示するベースとなる画像のデータを生成する情報配列形成機能12と、掩蔽配列形成機能13と、を有している。なお、配列形成部11は、両機能で生成された両画像のデータを表示データ形成部18に送信する機能も有している。
【0040】
(情報配列形成機能12)
この情報配列形成機能12は、提供すべき情報を含んだ情報像が埋め込まれた情報画像のデータ(情報画像データ)を生成する機能である。具体的には、情報配列形成機能12では、図示しない情報供給手段(USBやインターネットなど)から提供される情報を情報像の形で埋め込んだ情報画像に関する情報画像データを生成するものである。
例えば、提供すべき情報が「JPO」という文字の場合には、
図4に示すような情報画像を連続的に表示手段20で表示すると、「JPO」の文字を人が視認できるように、情報配列形成機能12は情報画像データを生成する。
情報画像において、「JPO」の文字などの情報像を人が視認できるようにする方法はとくに限定されない。例えば、情報像と背景の色を変えたり、情報像の輝度と背景の輝度を変えたりするなどの方法を採用することができる。とくに、情報像と背景の色を変えた場合には、両者の色が補色の関係になるようにしておけば、情報像と背景の境界を際立たせることができるので、情報像を人が知覚認識しやすくなる。
【0041】
なお、情報配列形成機能12は、提供すべき情報に関する情報像データだけを生成してもよい。かかる場合には、情報像データには、表示手段20において、どの位置にどのような輝度および色で情報像を表示させるかを特定したデータが含まれていればよい。例えば、
図4に示すような情報画像の場合には、「JPO」の文字の色や輝度、画像内での位置に関するデータが含まれていればよい。
【0042】
(掩蔽配列形成機能13)
この掩蔽配列形成機能13は、情報画像と切り替えられながら表示手段20に表示される掩蔽画像のデータ(掩蔽画像データ)を生成する機能である。言い換えれば、掩蔽配列形成機能13は、情報画像を秘匿するために表示される掩蔽画像を表示手段20に表示させるための掩蔽画像データを生成する機能である。
掩蔽画像は、情報画像と同じ画像であって、情報画像と重畳させると情報像が視認不能となるように生成された画像とすることが好ましい。
【0043】
具体的には、
図4に示すように、掩蔽画像が表示手段20に表示されると、情報画像における情報像と同じ位置に表示される情報掩蔽像を有するものを掩蔽画像とする。そして、情報画像において、情報像と背景の色を変えて情報像を視認できるようにした場合には、掩蔽画像における情報掩蔽像と情報画像の情報像が重畳したときの色と、掩蔽画像における掩蔽背景像と情報画像の情報背景像が重畳したときの色と、が同じ色(重畳色)となるようにする。この場合、掩蔽画像と情報画像とを交互に同じ周期で表示させれば、表示手段20に表示される画像は重畳色一色だけの画像とすることができるので、情報像をより視認しにくくなる。
【0044】
例えば、情報画像における情報像と情報背景像が補色関係(例えば、赤色と青緑色や、黄色と青紫色など)となっている場合に、掩蔽画像における情報掩蔽像の色と情報画像の情報像の色が補色関係となり、掩蔽画像における掩蔽背景像の色と情報画像の情報背景像の色が補色関係となっていれば、情報像はさらに視認しにくくなる。そして、表示手段20に表示される画像は高速の色相変化であるので、明暗を高速で切り替える場合に比べて(つまり、後述するように輝度を変化させる場合に比べて)、輝度コントラストは生じない。なぜなら、色のみが変化した場合、一定量の光は絶えず目に入射されるため、高速で表示される画像を切り替えている状態で、人の眼に入る光を適切に間欠的に遮断したときに、各配列の明暗のちらつきが目立たなくなるからである。
【0045】
また、情報画像において、情報像の輝度と情報背景像の輝度を変えて情報像を視認できるようにした場合には、掩蔽画像における情報掩蔽像と情報画像の情報像が重畳したときの輝度と、掩蔽画像における掩蔽背景像と情報画像の情報背景像が重畳したときの輝度と、が同じ輝度(重畳輝度)となるようにすればよい。
この場合には、情報画像や掩蔽画像が赤・青・緑などの単色画面であっても、かかる画面内に情報像を埋め込んで秘匿することができる。また、後述するように、バックライトなどの白色の照明であっても情報像の秘匿に使用できる。そして、色の知覚特性の異なる観察者に対しても同じ配列で情報を提示できる。
【0046】
なお、上述したように、情報配列形成機能12が情報像のデータだけ有する情報画像データを生成する場合には、掩蔽配列形成機能13も、情報像と重ねると情報像が視認不能となるように生成された情報掩蔽像のデータだけが含まれるデータを、掩蔽画像データとして生成してもよい。この場合、掩蔽画像データには、表示手段20において、どの位置にどのような輝度および色で情報掩蔽像を表示させるかを特定したデータが含まれていればよい。
【0047】
また、情報像のデータだけを有する情報画像データおよび情報掩蔽像のデータだけを有する掩蔽画像データがそれぞれ生成される場合には、情報配列形成機能12と掩蔽配列形成機能13のいずれかが情報像や情報掩蔽像を埋め込む画像データ(以下、背景画像データという)を表示データ形成部18に供給してもよいし、別途外部から背景画像データを表示データ形成部18に供給するようにしてもよい。
もちろん、情報画像データと掩蔽画像データのいずれかが背景画像データを有している場合には、他方のデータに含まれる情報像または情報掩蔽像を、表示データ形成部18においてその背景画像データに埋め込むようにすればよい。例えば、情報画像データが情報像のデータと背景画像データを有している場合には、この背景画像データに情報掩蔽像を埋め込むようにすればよい。
【0048】
(表示タイミング決定部15)
表示タイミング決定部15は、情報画像および掩蔽画像を表示するタイミングを決定し、そのタイミングに関する情報(タイミング情報)を生成する機能を有している。なお、表示タイミング決定部15は、生成されたタイミング情報を表示データ形成部18に送信する機能も有している。
【0049】
タイミング情報には、表示手段20によって、情報画像と掩蔽画像をどのような周期で切り替えるか、に関する情報が含まれている。
【0050】
なお、情報画像および掩蔽画像の各画像を表示させる周期はとくに限定されない。例えば、情報画像を表示する周期と掩蔽画像を表示する周期が異なっていてもよい。しかし、情報像の秘匿性を高くする上では、情報画像および掩蔽画像を交互に同じ周期で表示させることが好ましい。
【0051】
とくに、情報画像および掩蔽画像を表示させるタイミングは、人が表示手段20を普通に見ている状態において、眼前で、人が自分の手で遮光物を振ったときに、上述したような原理に基づいて、遮光物が眼前に存在しないときに眼に入射される光によって情報画像の情報像や掩蔽画像の情報掩蔽像を人が知覚し得るようになっていることが好ましい。この場合には、特別な器具を使用しなくても、人が自分で手などの遮光物を振るだけで、情報画像の情報像等を人が知覚認識することができる、という利点が得られる。
【0052】
(表示データ形成部18)
表示データ形成部18は、配列形成部11から送信される情報画像データおよび掩蔽画像データと、表示タイミング決定部15から送信されるタイミング情報に基づいて、表示手段20に表示させる表示データを生成するものである。なお、表示データ形成部18は、生成された表示データを表示手段20に送信する機能も有している。
【0053】
表示データ形成部18では、タイミング情報に基づいて、掩蔽画像の減光処理が行われる。具体的には、掩蔽画像を1秒間表示したときの光量をF1とし、掩蔽画像の表示枚数をT1fpsとすると、掩蔽画像を一回表示するときの光量がF1/T1となるように、掩蔽画像データが修正される。
同様に、情報画像の表示枚数がT2fpsの場合には、タイミング情報に基づいて、情報画像を1秒間表示したときの光量をF2とすると、情報画像を一回表示するときの光量がF2/T2となるように、情報画像データが修正される。
【0054】
そして、修正された掩蔽画像データと修正された情報画像データとを組み合わせ、かつ、修正された掩蔽画像データと修正された情報画像データとが所定の順番で表示されるように調整された表示データが生成される。例えば、修正された掩蔽画像データと修正された情報画像データとが交互に表示されるように表示データが生成される。
【0055】
なお、情報像のデータだけを情報画像データとした場合であって、情報像のデータと別に背景画像データが表示データ形成部18に供給される場合には、表示データ形成部18では、タイミング情報に基づいて、上述したような背景画像の減光処理を行った上で、情報像を背景画像に埋め込んで表示データを生成する処理が行われる。具体的には、減光処理されたT1枚の背景画像が連続的に表示されるように表示データを生成し、その際に、特定の背景画像に情報像を埋め込む処理が行われる。つまり、タイミング情報に含まれている情報画像を表示する周期ごとに、背景画像に情報像が埋め込まれて、表示データが形成される。なお、情報像のデータと別に背景画像データが供給される場合には、掩蔽画像が背景画像と情報掩蔽像の両方を含んでいる場合も該当する。この場合には、情報像を背景画像に埋め込む処理として、特定の掩蔽画像について、掩蔽画像の情報掩蔽像を情報像に置換する処理が行われる。
【0056】
また、情報掩蔽像のデータだけを掩蔽画像データとして場合であって、情報掩蔽像のデータと別に背景画像データが表示データ形成部18に供給される場合には、表示データ形成部18では、タイミング情報に基づいて、上述したような背景画像の減光処理を行った上で、情報掩蔽像を背景画像に埋め込んで表示データを生成する処理が行われる。具体的には、減光処理されたT1枚の背景画像が連続的に表示されるように表示データを生成し、その際に、特定の背景画像に情報掩蔽像を埋め込む処理が行われる。つまり、タイミング情報に含まれている掩蔽画像を表示する周期ごとに、背景画像に情報掩蔽像が埋め込まれて、表示データが形成される。なお、情報掩蔽像のデータと別に背景画像データが供給される場合には、情報画像が背景画像と情報像の両方を含んでいる場合も該当する。この場合には、情報掩蔽像を背景画像に埋め込む処理として、特定の情報画像について、情報画像の情報像を情報掩蔽像に置換する処理が行われる。
【0057】
さらに、表示データ形成部18は、表示手段20が1秒間に表示するデータ量を1単位として表示データを生成して、1単位ごとに表示データを表示手段20に供給してもよいし、所定の周期、つまり、情報画像と掩蔽画像とを所定の順番に連続的に表示手段20に供給してもよい。また、1単位は、1秒間に表示するデータ量に限られず、1/60ないし1/120秒間に表示するデータ量を1単位として形成してもよい。
【0058】
(本発明の作用効果)
つぎに、本発明の情報提供装置1を用いて、本発明の情報提供方法を実施した場合の作用効果を説明する。
なお、以下では、無地の背景に、文字情報「JPO」を情報像として埋め込んだ場合を説明する。
【0059】
まず、本発明の情報提供装置1のデータ形成手段10に対して、提供したい情報、つまり、文字情報「JPO」が供給される。
すると、
図3に示すように、データ形成手段10の情報配列形成機能12によって、情報画像Aを表示する情報画像データが生成される(
図4(A)参照)。この情報画像データには、無地の背景に、背景と識別できる状態で「JPO」の文字が情報像A1として埋め込まれる。
一方、データ形成手段10の掩蔽配列形成機能13では、情報画像Aに基づいて、掩蔽画像Bを表示する掩蔽画像データが生成される(
図4(B)参照)。この掩蔽画像データは、無地の背景に、背景と識別できる状態で「JPO」の文字が情報掩蔽像B1として埋め込まれる。この掩蔽画像Bでは、背景は情報画像Aの背景色と同じ色に調整され、情報掩蔽像B1の色は、情報像A1と重ねて表示されたときに情報掩蔽像B1が背景色と同色となるように調整される。
【0060】
一方、データ形成手段10の表示タイミング決定部15では、情報画像Aと掩蔽画像Bとを切り替えて表示する切替周期が決定され、タイミング情報が生成される。この切替周期は、情報画像Aと掩蔽画像Bを切り替えて表示手段20に表示したときに、情報画像Aの情報像A1、つまり、「JPO」の文字を人が視認できない状態となるように調整される。例えば、切替周期は、240fps以上に設定される。
【0061】
情報配列形成機能12および掩蔽配列形成機能13から情報画像データおよび掩蔽画像データが表示データ形成部18に供給され、表示タイミング決定部15からタイミング情報に供給されると、表示データが形成される。
具体的には、表示タイミング決定部15では、情報画像データに含まれる情報画像および掩蔽画像データに含まれる掩蔽画像について減光処理が行われて、修正した情報画像データおよび修正した掩蔽画像データが生成される。そして、この修正した情報画像データに基づいて所定の周期で情報画像Aが表示手段20に表示され、それ以外のタイミングでは、修正した掩蔽画像データに基づいて掩蔽画像Bが表示手段20に表示されるように、表示データが形成される。
【0062】
そして、表示データが表示手段20に送信されると、表示データに基づいて情報画像Aおよび掩蔽画像Bが表示手段20に表示されるが、情報画像Aと掩蔽画像Bとが交互に高速で切り替わりながら表示されるので、表示手段20を見た人には、情報画像Aと掩蔽画像Bが同時に重なって表示されているように認識される。つまり、人には、表示手段20に無地一色の画像が表示されているように認識される(
図4(C))。
【0063】
ここで、表示データに基づいて両画像が交互に高速で切り替わりながら表示されている表示手段20を人が見ている状態で、
図1に示すように、人の眼の前で遮光物を振ると、瞬間的かつ間欠的に、表示手段20から人の眼に入射される光が遮断される。例えば、人の眼の前で指の間を開いた手などを振ると、瞬間的かつ間欠的に、表示手段20から人の眼に入射される光が遮断される。
【0064】
例えば、
図5に示すように、あるタイミング1では、表示手段20の画像のある領域(領域a)から人の眼に入射される光が遮断されたとする。遮光物は人の眼の前で動いているので、タイミング1の直後のタイミング2では、タイミング1では光が遮断されていた領域aからの光が人の眼に入射される状態となる。そして、タイミング2の直後のタイミング3では、再び領域aからの光が遮断される。つまり、タイミング3において、表示手段20に表示された掩蔽画像Bを表示する光が人の眼に入射されない状態となる。すると、タイミング2で領域aから眼に入射した光を人が知覚できるから、表示手段20の情報像A1である「JPO」の文字の配列の一部を人が知覚することになる(
図5のタイミング2の図参照)。
【0065】
上記のごとき状況において、情報像A1である「JPO」の文字の配列の一部を人が知覚しても、「JPO」の文字の配列の一部であることまでは認識することは困難である。しかし、上述した状況、つまり、「JPO」の文字の配列の一部を人が知覚できる状況が繰り返されれば、人は、各配列において、「JPO」の文字の全体像を明確には認識できないものの、何らかの文字の配列の存在を認識することができるようになる。
【0066】
そして、遮光物によって光が遮断されるタイミングと情報画像Aと掩蔽画像Bと切り替わる周期とが同期していなければ、情報画像Aの情報像A1または掩蔽画像Bの情報掩蔽像B1においてどの部分が見えるか、また、どのタイミングでどの部分が見えるかは、刻々と変化する。すると、情報像A1および情報掩蔽像B1である「JPO」の文字の配列の各部が、ランダムに細切れのように繰り返し知覚されるので、細切れのように認識される「JPO」の文字から、「JPO」の文字の全体像を人が認識できるようになるのである。
【0067】
また、遮光物によって光が遮られてから再度光が目に入るタイミングが、情報画像Aと掩蔽画像Bとが切り替わるタイミングとある程度の確率で合わなければ、情報像A1または情報掩蔽像B1を人が知覚できても、「JPO」の文字を人が認識できる状態とならない。例えば、手などの振り方によって、「JPO」の文字が見えたり見えなかったりするので、「JPO」の文字(つまり秘匿されている情報)を読み取る行為にゲーム性を付与することができる。
【0068】
(複数セットを利用する場合)
なお、上記例では、一つの情報画像Aと一つの掩蔽画像Bのセットを繰り返して表示する場合を説明したが、かかる一対の情報画像と掩蔽画像からなる複数のセットを適宜切り替えて表示させてもよい。この場合には、セット毎に切替周期が異なりしかもその周期が大きく異なれば、複数の異なる情報を秘匿させた場合に、遮光の方法によって、特定の情報だけを認識できる状態とすることができる。
【0069】
(ダミー配列形成機能)
図2に示すように、配列形成部11にダミー配列形成機能14を設けて、ダミー画像を形成するようにしてもよい。
【0070】
上述したように、掩蔽画像と情報画像とが重畳したときに重畳色または重畳輝度となるように掩蔽画像を形成し、この2画像を交互に表示手段20に表示させたとする。すると、表示手段20を見ていた人が顔を動かすなどの偶発的な動作を行ったときに、情報画像の情報像や掩蔽画像の情報掩蔽像が偶然に知覚されてしまう可能性がある。しかし、ダミー画像を形成して、掩蔽画像と情報画像を表示するタイミングの間にダミー画像が表示されるようにすれば、かかる問題を防ぐことができる。
【0071】
ダミー画像は、例えば、
図4(C)の表示画像Cと同じ画像である無地一色の画像を使用することができるが、掩蔽画像の情報像および掩蔽画像における情報掩蔽像が表示される位置に、情報像および情報掩蔽像と異なる像を有するものであればよく、とくに限定されない。
【0072】
なお、ダミー画像を表示させる場合には、表示タイミング決定部15は、掩蔽画像と情報画像を表示するタイミングの間にダミー画像が表示されるようにタイミング情報を生成するのは、いうまでもない。
【0073】
(遮光する方法について)
遮光物によって光を遮る方法は、眼前で手指を振る方法だけでなく、様々な方法を採用することができる。例えば、団扇や扇子にスリット(
図6参照)を形成しておいて、これを人が眼前で揺り動かしても同様な効果が得られる。また、扇風機の羽根などのように、機械的に遮光物を移動させても、同様な効果が得ることができる。機械的に遮光物を移動させた場合には、遮光物が光を遮る周期を一定に保つことができるので、確実に情報を得ることができるというメリットがあり、人が手や団扇などを移動させる場合には確実に情報を見ることができない代わりに情報を見ることにゲーム性を付与できるというメリットがある。
【0074】
(補色を利用した場合の例)
情報画像における情報像と情報背景像とが、補色関係となっている場合の例を、
図7、
図8に基づいて説明する。
【0075】
図7に示すように、情報画像の背景をグレーとし「JPO」の文字部分を赤色とし、一方、掩蔽画像の背景はグレーとし、「JPO」の文字部分は赤と補色関係のシアンとする。かかる情報画像と掩蔽画像とを高速で切替て表示手段20で表示すると、「JPO」部分について、人が赤とシアンが重なった状態かつ両者を区別できないような状況となる。すると、人は「JPO」部分もグレーであるように認識するので、「JPO」部分はグレーとなって背景にとけこんで潜像化し、人が表示手段20を見ても「JPO」の文字を認識できない。かかる状態で、
図1に示すように、眼前で手指を振りながら人が表示手段20を見ると、背景はグレーのままであるが、「JPO」部分は赤とシアンとグレーが切り替わりながら知覚されるので、「JPO」部分を、人がグレーの背景に重なった残像として認識される。
【0076】
なお、上記例のような場合では、グレー一色のダミー画像を、情報画像および掩蔽画像とともに高速で順番に切り替えて繰り返し表示すると、「JPO」部分がグレーとなっている比率が高くなるので、「JPO」部分を潜像化しやすくなる。すると、「JPO」部分の秘匿性を高くすることができる。
【0077】
また、「JPO」の文字ごとに色を変えたり文字を複数の色によって縞模様にしたりすれば、「JPO」の部分部分を認識しても、全体像を把握しにくくなるので、「JPO」部分の秘匿性を高くすることができる。
【0078】
さらに、情報画像において、情報背景像と色を代えて情報像を表示する場合において、以下のように画像を表示すれば、情報画像や掩蔽画像の減光処理を行わなくてもよくなる。つまり、情報画像および掩蔽画像を一定の光量で表示しても、情報像を秘匿化することができる。この方法の場合には、減光処理が不要となるので、情報画像を表示手段20に表示させるための処理が容易になり、本発明の情報提供装置1の構成を簡素化することができる。
【0079】
例えば、背景の色を、R(赤)→G(緑)→B(青)→R→G→Bの順で発光させ、かつ、情報像の色をG→B→R→G→B→Rの順に発光させる。すると、各タイミングでは、情報像が情報背景像とはっきりと識別できる状態で表示できるし、表示手段20を普通に見た状態では、白色の画像が表示されているようにしか見えない状態とすることができる。
なお、この場合には、一の画像に対して他の2つの画像が掩蔽画像として機能することになる。つまり、背景の色がRかつ情報像の色がGの画像を情報画像とすると、背景の色がGかつ情報像の色がBの画像と背景の色がBかつ情報像の色がRの画像が掩蔽画像に相当する。また、背景の色がGかつ情報像の色がBの画像を情報画像とすると、背景の色がRかつ情報像の色がGの画像と背景の色がBかつ情報像の色がRの画像が掩蔽画像に相当する。このように、一枚の情報画像に対して、複数枚の掩蔽画像を使用してもよい。
【0080】
さらに、
図8に示すように、情報像の色を順次と変化させるようにした上で(パターン1〜3)、その背景の色を、情報像の色を全て重ねたときの重畳色としておく(パターン5参照)。すると、遮光するタイミングによって、内部に複数の色で形成される情報像、例えば、虹色の情報像が形成されるので(パターン4参照)、表示手段20に表示される画像を見る楽しみが増える。
【0081】
また、情報画像において、情報像と情報背景像を同じ色で表示させる一方、両者の位相を変化させてもよい。この場合には、文字と背景が同じ色であっても、光源の点滅の位相をずらして、情報背景像が暗(明)のときに情報像が明(暗)となるように表示手段20に画像を表示させば、情報像と情報背景像の色を変えた場合と同様の効果を得ることができる。
【0082】
(輝度を利用した場合の例)
情報画像における情報像と情報背景像の輝度差がある場合の例を、
図9に基づいて説明する。
【0083】
図9に示すように、情報画像の背景を黒(つまり低輝度)とし、「29」の数字の部分を白色(高輝度)とし(パターン2)、一方、掩蔽画像の背景は白とし、「29」の文字部分は黒とする(パターン1)。かかる情報画像と掩蔽画像とを高速で切替て表示手段20で表示すると、「29」の部分について、人は「29」の部分がグレー(中間輝度)であるように認識し、同様に、背景部分もグレー(中間輝度)と認識するので、「29」の部分が背景にとけこんで潜像化し、人が表示手段20を見ても「29」の数字を認識できなくなる(
図10のパターン5)。かかる状態で、
図1に示すように、眼前で手指を振りながら人が表示手段20を見ると、「29」の部分だけでなく背景部分も白と黒とグレーが切り替わりながら知覚される。しかし、「29」の部分と背景と相補的に現れる。つまり、「29」の一部が白と知覚されるとその近傍の背景は黒に知覚され(
図10のパターン4)、逆に、「29」の一部が黒と知覚されるとその近傍の背景は白に知覚される(
図10のパターン3)。したがって、「29」の数字の部分と背景との境界とがどの状態でも明確に知覚されるので、「29」の数字全体を人が認識することができるのである。
【0084】
また、情報画像における情報像と情報背景像の輝度差をつけた場合には、赤・青・緑の単色画面であっても画面内に情報を秘匿できるし、白色の照明用バックライトであっても情報の秘匿に使用できる。また、色の知覚特性の異なる観察者に対しても同じ配列で情報を提示できるという利点が得られる。
【0085】
(広告照明の例)
また、上記例では、表示手段20からの光が直接的に人の眼に入る場合を説明したが、ビデオプロジェクタなどを使用して、表示手段20からの光が間接的に眼に入るような場合でも、同様の効果を得ることができる。
例えば、昼間に広告看板に対してプロジェクタから情報画像などを照射した場合でも、広告看板を見ている人が、眼前で手を振るなどすれば、プロジェクタから画像が照射されている部分だけが明滅して、その明滅によって人が情報を認識することができる。
【0086】
(他の実施形態の情報提供装置1Bについて)
上述した情報提供装置1では、表示手段に画像が表示される場合を説明した。しかし、上述したように、表示手段として、複数本の蛍光灯を並べた天井や、液晶ディスプレイのバックライトなどを使用することができる。以下では、かかる表示手段40を使用する情報提供装置1Bについて説明する。
【0087】
(表示手段40)
図11に示すように、情報提供装置1Bの表示手段40は、天井照明や、液晶ディスプレイのバックライトなどであり、複数の蛍光灯や複数のLED光源などが配列されたものである。つまり、表示手段40の光源は、通常は、人の眼に連続して光を入射できるように点灯されているものであり、高速で点滅させたり高速で光の位相や色を変化させたりすることができるものである。かかる表示手段40を構成する光源はとくに限定されないが、例えば、インバータ蛍光灯やLED照明などを表示手段40の光源として使用することができる。
なお、情報提供装置1Bの表示手段40の例としては、複数本の蛍光灯を並べた天井や、液晶ディスプレイのバックライト、行灯看板の照明、看板等に光を照射して照らすための照明等を挙げることができるが、とくに限定されない。
【0088】
(データ形成手段30)
図11に示すように、データ形成手段30は、情報提供装置1のデータ形成手段10と同様に、配列形成部31と、表示タイミング決定部35と、表示データ形成部38と、を備えている。また、配列形成部31は、情報配列形成機能32を備えている。
【0089】
(情報配列形成機能32)
情報配列形成機能32は、提供すべき情報が表示する情報表示配列を形成する情報配列データを生成する機能である。情報配列形成機能32は、表示手段40の光源がどのように配列されているかに関する情報を記憶しており、この情報に基づいて情報配列データを生成する。
情報配列形成機能32において生成される情報配列データには、例えば、表示手段40に情報表示配列を表示させるために点灯または消灯させる光源の位置を指示するデータや、情報を表示させるために各光源の光量や光の位相や色を指示するデータが含まれている。なお、上記消灯の概念には、完全に光源から光が放出されない状態だけでなく、光源から放出される光が少なくなっている状態(つまり減光されている状態)も含まれている。
【0090】
例えば、提供すべき情報が「29」という数字であって、表示手段40の光源が「88」という数字が形成されるように並べられた棒状の蛍光灯の場合には、
図13(C)に示すように、一部の蛍光灯を点灯し他の蛍光灯を消灯するように指示する情報配列データが生成される。なお、情報配列形成機能32は、生成されたタイミング情報を表示データ形成部38に送信する機能も有している。
【0091】
(表示タイミング決定部35)
表示タイミング決定部35は、提供すべき情報を表示する配列で表示手段40を点灯させるタイミングを決定し、そのタイミングに関する情報(タイミング情報)を生成する機能を有している。なお、表示タイミング決定部35は、生成されたタイミング情報を表示データ形成部38に送信する機能も有している。
【0092】
タイミング情報には、表示手段40によって情報表示配列を1秒間に何回表示するか、に関する情報が含まれている。言い換えれば、タイミング情報には、情報表示配列をどれぐらいの周期で表示させるか、に関する情報が含まれている。
【0093】
なお、情報表示配列を表示させる周期はとくに限定されないが、人が眼前で遮光物を振ったときに、上述したような原理に基づいて、遮光物が眼前に存在しないときに眼に入射される光によって情報表示配列を人が知覚し得るようになっていることが好ましい。この場合には、特別な器具を使用しなくても、人が手などの遮光物を振るだけで、情報表示配列を人が知覚認識することができる、という利点が得られる。
【0094】
(表示データ形成部38)
表示データ形成部38は、配列形成部31から送信される情報配列データと、表示タイミング決定部35から送信されるタイミング情報に基づいて、表示手段40の点灯を制御する表示データを生成するものである。
なお、表示タイミング決定部35は、生成された表示データを表示手段40に送信する機能も有している。
また、表示タイミング決定部35は、生成した表示データに基づいて、直接表示手段40の作動(つまり点灯)を制御してもよい。
【0095】
表示データ形成部38は、表示手段40の光源がどのように配列されているかに関する情報を記憶しており、情報配列データとタイミング情報と基づいて、どのタイミングでどの光源を点灯または消灯させるかを指示する表示データを生成する。また、光源から放出される光の位相や色を変化させて情報表示配列を形成する場合には、どのタイミングでどの光源をどの位相または色で点灯させるかを指示する表示データが生成される。
【0096】
(本発明の情報提供装置1Bの作用効果)
つぎに、本発明の情報提供装置1Bを用いて、本発明の情報提供方法を実施した場合の作用効果を説明する。
なお、以下では、表示手段40として、光源が「88」という数字が形成されるように並べられた棒状の蛍光灯の場合であって、提供すべき情報が「29」という数字である場合を説明する。
【0097】
まず、本発明の情報提供装置1Bのデータ形成手段10に対して、提供したい情報、つまり、数字情報「29」が供給される。
すると、
図12に示すように、データ形成手段31の情報配列形成機能32によって、数字情報「29」を表示手段40に情報表示配列を表示させる情報配列データが生成される。つまり、表示手段40を構成する複数の光源のうち、数字情報「29」を形成するために、どの光源を点灯または消灯させるかが決定され、情報配列データが生成される。
【0098】
一方、データ形成手段30の表示タイミング決定部35では、情報表示配列が表示されるように表示手段40を点灯させるタイミングを決定し、タイミング情報が生成される。この周期は、情報表示配列が表示手段20に表示されたときに、情報表示配列、つまり、「29」の数字を人が視認できない状態となるように調整される。
【0099】
情報配列データおよびタイミング情報が形成されると、情報配列形成機能32から情報配列データが表示データ形成部18に供給され、表示タイミング決定部15からタイミング情報に供給されると、表示データが形成される。
具体的には、表示タイミング決定部15では、表示手段40の個別の光源について、情報表示配列を表示させるために、どのタイミングでどの光源を点灯または消灯させるかに関するデータが生成され、このデータが表示データとして表示手段40に送信される。
【0100】
そして、表示データが表示手段40に送信されると、表示データに基づいて表示手段40が点灯される。具体的には、表示手段40の全ての光源が点灯した状態(掩蔽状態)と、情報表示配列で点灯した状態(情報表示状態)とが高速で切り替わるように、表示手段40が点灯される。すると、表示手段40の全ての光源は、高速で掩蔽状態と情報表示状態とを切り替えて表示するように、高速で点滅する。すると、光源の点滅が非常に高速であり、しかも、情報配列で点灯される期間が非常に短時間であるので、人には、表示手段40の各蛍光灯は連続して点灯しているように認識される。
【0101】
ここで、
図13(A)に示すように、人が表示手段40を見て、人の眼の前で遮光物、例えば、人の眼の前で指の間を開いた手などを振ると、表示手段40の情報配列である「29」の数字の細切れの残像によって、情報配列である「29」の文字の配列の全体像を人が認識できるようになる。
【0102】
以上のごとく、本発明の情報提供装置1Bによれば、上記したように高速で点滅させたり高速で光の位相や色を変化させたりすることができるものであれば、一般的な照明器具を表示手段40として使用できるので、特別な表示手段を使用しなくても、情報を提供することができる。
【0103】
なお、上記例では、光源が「88」という数字が形成されるように並べられた棒状の蛍光灯を例示したが、もちろん、LED光源などの点光源が複数配列されている照明であっても、同様に機能させることができるのは、いうまでもない。
【0104】
また、上記例では、掩蔽状態と情報表示状態とが切り替わるときに、表示手段40の全ての光源が高速で点滅する場合を説明した。しかし、掩蔽状態および情報表示状態の両方の状態で点灯した状態である光源は、連続点灯するようにして、両状態で点灯消灯の状態が変化する光源のみを高速(例えば、120Hz以上)で点滅させてもよい。この場合には、点滅している光源の数を少なくすることができるので、ちらつきを抑えることができる。
【0105】
(ダミー点灯)
上述したよう、情報提供装置1Bでは、掩蔽状態および情報表示状態が高速で切り替わる場合を説明したが、状態の切り替わりに伴うちらつきを抑える上では、ダミー点灯させてもよい。ダミー点灯とは、全ての光源を一定の期間連続して点灯させることを意味している。ダミー点灯期間は連続して光源が光を照射するので、その期間は全くちらつきがない状態とすることができる。したがって、掩蔽状態および情報表示状態を高速で切り替えながら点灯している状態において、ダミー点灯すれば、表示手段40のちらつきを低減することができる。
例えば、行灯看板やフィルムなどの透過型のポスターの照明等を、情報提供装置1Bの表示手段40とした場合には、ダミー点灯させれば、その間は安定した状態で看板やポスターが照らしだされる。すると、看板の文字やポスターの印刷などを見やすくなる効果が得られる。
かかるダミー点灯させるためのデータは、表示データ形成部38で生成してもよいが、ダミー点灯させるためのデータを生成するためのダミー配列形成機能34を配列形成部31が有していてもよい。
【0106】
(液晶ディスプレイのバックライトの例)
また、液晶ディスプレイでは、通常、バックライトを常時点灯した状態で、液晶セルを作動させることによって画像を表示する構成としている。つまり、バックライトは、照明器具として機能させているだけである。すると、このバックライトに、複数の点光源を複数配列したものを採用すれば、バックライトは実質的にLEDディスプレイと同様の構造を有することとなる。
【0107】
そこで、液晶ディスプレイのバックライトを、情報提供装置1Bの表示手段40と同様に作動させれば、液晶ディスプレイによって通常の画像を表示させながら、液晶ディスプレイから放出されるバックライトからの光に、情報(
図14では「JPO」の文字)を秘匿しておくことができる(
図14参照)。
つまり、液晶ディスプレイによって通常の画像を表示させた状態でも、液晶ディスプレイを見た状態で、人の眼の前で指の間を開いた手などを振れば、バックライトからの光に含まれている情報を細切れの残像として人が認識できるようになる。
【0108】
なお、液晶ディスプレイのバックライトに使用する場合には、液晶セルのアドレシング周波数に比べて、掩蔽状態(つまり全てのライトが点いた状態)と情報表示状態を切り替える周波数を高くする必要がある。
【0109】
(本発明の情報提供方法による情報提供例)
上述したような本発明の情報提供方法によって情報を提供する事例として、以下のような場面を想定することができる。
【0110】
例えば、本発明の情報提供方法を利用すれば、デジタルサイネージを使った広告にクーポンコードを埋め込むことも可能となる。すると、多くの電子広告が存在する中で,その広告に対する観視者の視聴時間を長くすることができる。つまり、広告を注意して見た人にだけクーポンコードを提供できるので、クーポンコードを得るために広告に対する観視者の視聴時間を長くすることができる。
【0111】
また、テレビや電車などでクイズを提供した場合に、本発明の情報提供方法を利用すれば、クイズの回答がほしい人にだけに回答を伝えることが可能となる。クイズの回答は人によって回答を知りたくなるまでの時間に差があるが、本発明の情報提供方法を利用すれば、各個人がそれぞれ回答を得たいときに回答を得ることができる。すると、これまで自分が回答を出す前に回答が表示されることが多いためクイズなどへの関心が低かった人や、逆に、回答の提示が遅く間延びするためクイズなどへの関心が低かった人等の関心を得ることができる。例えば、LEDディスプレイであれば、本発明の情報提供装置1を利用することでかかる構成を実現できるし、液晶TVなどであれば、本発明の情報提供装置1Bを利用して、バックライト変調を行うことによってかかる構成を実現することができる。
【0112】
また、上述したクイズ提供と同様の方法で、現在テレビなどにおいて採用されているテロップなどによって提供されていた情報を提供することもできる。すると、LEDディスプレイや液晶TVの映像を見ている人が多数いた場合、かかる情報を見たくない人はその情報が入らないし、情報を得たい人は自分の意志で情報を取得することができる。
【0113】
さらに、上述したようなクイズ提供と同様の方法で、野球場の大画面スクリーンに他球場の試合結果を表示することが可能となる。
そして、自販機広告や街角の広告などを手を振ってみると別の情報が見えるようにすると、広告や自動販売機への誘導効果も期待することができる。とくに、広告をしているメーカー等がスポンサーとなっているスポーツチーム等の試合結果が広告に現れるようにしたりすれば、広告や自動販売機への誘導効果を高くすることができる。
【0114】
さらに、ホテルなどであれば、本発明の情報提供装置1Bを利用すれば、フロアや客室の照明に部屋番号を秘匿しておくことも可能となる。また、公共施設のフロア等の照明に本発明の情報提供装置1Bを利用すれば、入口や出口などを表示する矢印などを照明に秘匿しておくことができる。
【0115】
(高速表示の提示画像の混合による秘匿化)
情報画像と掩蔽画像、ダミー画像を複数の列などに分割して、各画像の分割された各列の情報(画像)を組み合わせて、複数の画像を構成してもよい。例えば、画像Aを、情報画像の3n列、掩蔽画像の(3n+1)列、ダミー画像の(3n+2)列で構成する。一方、画像Bを、情報画像の(3n+1)列、掩蔽画像の(3n+2)列、ダミー画像の3n列で構成する。さらに、画像Cを、情報画像の(3n+2)列、掩蔽画像の3n列、ダミー画像の(3n+1)列で構成する。すると、各画像A、B、Cの見かけは明暗が入り乱れたパターンとなるため、そのままでは情報画像を視認できないようにできる。一方、各画像A、B、Cを表示手段の画面に切り替えて表示し、部分遮蔽物を通してその画面を観察すれば、情報画像等に含まれる文字部分の輪郭を視認できるようになる。
なお、情報画像等を分割する「列」とは水平方向に分割した「列」でもよいし、垂直方向に分割した「列」でもよく、とくに限定されない。
また、各画像において、情報画像等の各列を分割する方法はとくに限定されず、各列の幅が全ての画像で同じになるように分割しなくてもよく、ランダムな幅に分割してもよい。また、各画像を分割した列を組み合わせて画像を形成するときに、各列を並べる順番も規則的に並べなくてもよく、ランダムにならべてもよい。
さらに、情報画像等の分割は、列ごとに行わなくてもよく、適当な形状(例えば四角形など)に分割して、細切れ状態としてもよい。
【実施例】
【0116】
本発明の情報提供方法によって、情報を埋め込んだ画像を表示手段に表示させた場合において、人が埋め込んだ情報を視認できることを確認した。
【0117】
実験では、LED光源を複数有するLEDパネルに、情報を埋め込んだ2つの画像を交互に切り替えて表示させ、その状態で手を振りながら観察することで情報を視認できることを確認した。
さらに、通常のビデオカメラ(60フレーム毎秒)で表示画面を撮影した場合には白色画面にしか撮影されないが、ビデオの前で手を振りながら撮影すると埋め込まれた文字の輪郭が再現されることをした。
なお、表示した画像は、背景画像(灰白色)に、補色関係にある2色(シアンと赤)で形成された文字を埋め込んで、情報画像(情報像:シアン、背景像:灰白色)および掩蔽画像(情報掩蔽像:赤、掩蔽背景像:灰白色)を形成した。
【0118】
画像の表示には、アビックス株式会社らが開発したハイスピードLED表示システム(HS・CyberVision)を使用した。このシステムでは、LEDパネルとして、毎秒480フレーム(480fps)で高速に画像を切り替えながら表示できるものを採用している。
本実験では、このシステムを使用することによって、毎秒240フレームの速度で情報画像と掩蔽画像を交互に表示した。
【0119】
まず、情報画像と掩蔽画像を毎秒240フレームの速度で切り替えて表示した場合には、人が眼前で手を振ることによって、文字を認識することが可能であった。
【0120】
つぎに、上述したような切替周期で情報画像と掩蔽画像を交互に表示させた場合、光を遮断する周期を変化させた場合に復号される画像のコントラストを測定した。
図15に示すように、98〜140Hzの間であれば、人が両画像に埋め込まれている文字情報を認識する上で必要なコントラストが復号画像に再現されていることが確認できる。
また、98〜135Hzとすれば、復号画像のコントラストが向上し、98〜110Hzの間、または、130〜135Hzの間は、さらにコントラストが向上し、かつ、この周波数の間はほぼ同等のコントラストが維持されることが確認できる。
さらに、110〜130Hzでは、周波数が120Hzに近づくに従ってコントラストが急激に向上し、とくに、118〜123Hzではコントラストが非常に高い状態となることが分かる。
【0121】
以上の結果より、切替周期と光を遮断する周期とを非同期とすれば、画像に埋めこまれている文字情報を認識することができ、しかも、光を遮断する周期を適切に設定すれば、非常に高い情報認識率で情報を認識できることが確認できた。