(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0018】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。
【0019】
本実施形態の燃料噴射弁は、コモンレール(図示せず)から供給される高圧燃料を、圧縮着火式内燃機関(以下、内燃機関という。図示せず)の燃焼室に噴射するものである。
【0020】
図1〜
図4に示すように、燃料噴射弁は、インジェクタボデー1、ノズル2、制御弁機構3、ピエゾ素子積層体4、変位伝達機構5、リテーニングナット6を、主要構成要素として備えている。
【0021】
略有底円筒状のインジェクタボデー1には、コモンレールから供給される高圧燃料が流通する高圧燃料通路11、図示しない燃料タンクに接続されて常に低圧になっている低圧燃料通路12、ピエゾ素子積層体4および変位伝達機構5が収納される収納室13が形成されている。
【0022】
ノズル2は、略有底円筒状のノズルボデー21、ノズルボデー21に摺動自在に挿入される略円柱状のノズルニードル22、ノズルニードル22を閉弁向きに付勢するノズルスプリング23、およびノズルシリンダ24を備えている。
【0023】
ノズルボデー21には、高圧燃料を内燃機関の燃焼室に噴出させる噴孔211が形成され、ノズルニードル22の先端部(すなわち、噴孔側端部)がノズルボデー21に接離することにより噴孔211が開閉されるようになっている。
【0024】
ノズルボデー21内には、コモンレールから高圧燃料が常時供給される燃料溜まり室25が形成され、コモンレールからの高圧燃料は燃料溜まり室25を介して噴孔211に向かって流れるようになっている。
【0025】
円筒状のノズルシリンダ24は、ノズルスプリング23によって後述する中間ボデー31に押し付けられ、ノズルニードル22の後端部(すなわち、反噴孔側端部)がノズルシリンダ24に摺動自在に挿入されている。
【0026】
このノズルシリンダ24内には、内部の燃料圧力が高圧と低圧に切り替えられる制御室26が形成されている。そして、ノズルニードル22は、制御室26内の燃料圧力により閉弁向きに付勢されるとともに、燃料溜まり室25の燃料圧力により開弁向きに付勢される。
【0027】
制御室26の圧力を制御する制御弁機構3は、中間ボデー31、排出弁32、制御プレート33、およびプレートスプリング34を備えている。
【0028】
円板状の中間ボデー31は、インジェクタボデー1とノズルボデー21に挟持されている。なお、インジェクタボデー1とノズルボデー21との間に中間ボデー31を挟持して、インジェクタボデー1とリテーニングナット6とを螺合させることにより、燃料噴射弁の構成要素が一体化されている。
【0029】
中間ボデー31におけるインジェクタボデー1側の収容室側シート面311は、収容室13に露出している。中間ボデー31におけるノズルボデー21側の制御室側シート面312は、燃料溜まり室25および制御室26に露出している。
【0030】
また、中間ボデー31には、インジェクタボデー1の高圧燃料通路11とノズルボデー21内の燃料溜まり室25とを連通させる高圧燃料通路313、高圧燃料通路313と制御室26とを連通させる高圧供給通路314、および収納室13と制御室26とを連通させる排出通路315が形成されている。
【0031】
そして、制御室側シート面312に、ノズルスプリング23によってノズルシリンダ24が押し付けられている。
【0032】
制御室26内には、円板状の制御プレート33、および制御プレート33を中間ボデー31側に向かって付勢するプレートスプリング34が配置されている。
【0033】
ノズルシリンダ24には、制御室26を区画する内壁面にストッパ面241が形成されている。そして、制御プレート33は、このストッパ面241と制御室側シート面312との間で往復変位するようになっている。
【0034】
なお、制御プレート33がストッパ面241に当接した状態では、制御プレート33により制御室26は2つの空間に分離される。具体的には、中間ボデー31側の空間である中間ボデー側制御室26aと、ノズルニードル2側の空間であるニードル側制御室26bとに分離される。以下、必要に応じて、制御室26と、中間ボデー側制御室26aと、ニードル側制御室26bを、使い分ける。
【0035】
制御プレート33の径方向中心部には、制御プレート33の軸方向に貫通する連通孔331が形成されている。
【0036】
そして、制御プレート33が制御室側シート面312に当接することにより、高圧供給通路314が閉塞されて、高圧燃料通路313と制御室26との連通が遮断されるようになっている。また、制御プレート33が制御室側シート面312に当接した状態のとき、連通孔331と排出通路315は連通している。
【0037】
排出弁32は、収納室13内に配置され、収容室側シート面311と接離して収納室13と排出通路315との間を開閉するようになっている。
【0038】
ピエゾ素子積層体4は、ピエゾ素子が多数積層されて構成され、電荷の充放電により伸縮するようになっている。
【0039】
伝達手段としての変位伝達機構5は、第1シリンダ51、第2シリンダ52、第1ピストン53、第2ピストン54、ピエゾスプリング55、およびピストンスプリング56を備えている。なお、第1シリンダ51および第2シリンダ52は、本発明のシリンダを構成している。
【0040】
円筒状の第1シリンダ51内には、円柱状空間の第1シリンダ孔511が形成されている。
【0041】
この第1シリンダ孔511の空間のうち、第2シリンダ52と第1ピストン53との間で、且つ第2ピストン54の外周側の空間は、燃料が充填された油密室57になっている。
【0042】
円筒状の第2シリンダ52内には、第1シリンダ孔511よりも小径の円柱状空間である第2シリンダ孔521が形成されている。
【0043】
そして、ピエゾスプリング55により、第1シリンダ51が第2シリンダ52に向かって付勢され、第1シリンダ51の端面が第2シリンダ52の端面に押し付けられている。
【0044】
有底円筒状の第1ピストン53は、第1ピストン53と第1シリンダ51との間に配置されたピエゾスプリング55により、ピエゾ素子積層体4に向かって付勢されている。これにより、ピエゾ素子積層体4に予荷重が与えられるとともに、ピエゾ素子積層体4の伸縮に伴って第1ピストン53がピエゾ素子積層体4と一体的に作動するようになっている。また、第1ピストン53は、第1シリンダ孔511に摺動自在に挿入されている。
【0045】
第1ピストン53内には、円柱状空間の第1ピストン孔531が形成されている。この第1ピストン孔531は、油密室57側が開口部になっている。
【0046】
第1ピストン孔531の一部は、第2ピストン54が摺動する摺動部になっており、第1ピストン孔531の残部は、ピストンスプリング56が配置されたスプリング室532になっている。このスプリング室532は、第1ピストン53に形成された連通孔533により、収納室13に連通されている。また、第1ピストン53における開口部側の第1ピストン端面534は、油密室57に露出している。
【0047】
段付き円柱状の第2ピストン54は、第1ピストン53よりも小径で、第1ピストン孔531に摺動自在に挿入される第2ピストン大径部541と、第2ピストン大径部541よりも小径で、第2シリンダ孔521に摺動自在に挿入される第2ピストン小径部542とを備えている。
【0048】
第2ピストン大径部541と第2ピストン小径部542との境界部である第2ピストン段差面543は、油密室57に露出している。
【0049】
第2ピストン小径部542の先端側は、第2シリンダ孔521から突出して収納室13内に位置している。そして、第2ピストン小径部542の先端部には、排出弁32が装着されている。
【0050】
第2ピストン54は、ピストンスプリング56により収容室側シート面311に向かって付勢されている。
【0051】
次に、上記燃料噴射弁の作動を説明する。まず、
図1、
図2に示すニードル閉弁状態のとき、すなわち排出弁32が収容室側シート面311に当接しているときに、ピエゾ素子積層体4に電荷が充電されると、ピエゾ素子積層体4が伸長する。それに伴い、第1ピストン53がピエゾ素子積層体4から遠ざかる向きに駆動され、第1ピストン53により油密室57の圧力が高められる。
【0052】
また、高圧化された油密室57の圧力が、第2ピストン段差面543に作用し、第2ピストン54および排出弁32がピエゾ素子積層体4側に向かって駆動される。このように、本実施形態の燃料噴射弁は、ピエゾ素子積層体4の伸長に伴う第1ピストン53の移動向きと第2ピストン54の移動向きが逆向きとなり、且つピエゾ素子積層体4の伸長に伴い排出弁32が収容室側シート面311から離れる向きに駆動されるようになっている。
【0053】
そして、排出弁32の移動により、排出弁32が収容室側シート面311から離れて排出通路315が開かれると、排出通路315の燃料が収納室13に流出して排出通路315および中間ボデー側制御室26aの圧力が下がる。これにより、中間ボデー側制御室26aの圧力にて制御プレート33がノズルニードル2側に向かって付勢される力よりも、ニードル側制御室26bの圧力にて制御プレート33が中間ボデー31側に向かって付勢される力の方が大きくなるため、制御プレート33が中間ボデー31側に向かって移動する。
【0054】
そして、
図3、
図4に示すように、制御プレート33が制御室側シート面312に当接し、制御プレート33により高圧供給通路314が閉塞されて、高圧燃料通路11と制御室26との連通が遮断される。また、制御室26の燃料が、連通孔331および排出通路315を介して収納室13に流出し、制御室26の圧力が下がる。これにより、ノズルニードル22を閉弁向きに付勢する力が小さくなるため、ノズルニードル22が開弁向きに移動し、噴孔211から燃料が噴射される。
【0055】
このとき、ピエゾ素子積層体4の長さの変化量は、第1ピストン端面534と第2ピストン段差面543の受圧面積比分拡大されて、第2ピストン54および排出弁32に伝達される。
【0056】
一方、
図3、
図4に示すニードル開弁状態のとき、すなわち排出弁32が収容室側シート面311から離れているときに、ピエゾ素子積層体4の電荷を放電させると、ピエゾ素子積層体4が収縮する。それに伴い、ピエゾスプリング55に付勢される第1ピストン53は、ピエゾ素子積層体4に追従して、ピエゾ素子積層体4側に向かって移動し、油密室57の圧力が低下する。
【0057】
したがって、第2ピストン54および排出弁32は、ピストンスプリング56の付勢力により、中間ボデー31側に向かって移動する。このように、本実施形態の燃料噴射弁は、ピエゾ素子積層体4の収縮に伴う第1ピストン53の移動向きと第2ピストン54の移動向きが逆向きとなる。
【0058】
この排出弁32の移動により、排出弁32が収容室側シート面311に当接して排出通路315が閉じられると、排出通路315の燃料の流出が止まり、排出通路315と制御室26が同圧になる。これにより、制御室26の圧力にて制御プレート33が中間ボデー31側に向かって付勢される力よりも、排出通路315および高圧供給通路314の圧力にて制御プレート33がノズルニードル2側に向かって付勢される力の方が大きくなるため、制御プレート33がノズルニードル2側に向かって移動する。
【0059】
そして、制御プレート33がストッパ面241に当接し、高圧供給通路314から中間ボデー側制御室26aに流入した高圧燃料は、連通孔331を介してニードル側制御室26bに流入する。
【0060】
このように、ニードル側制御室26bに高圧燃料が流入することにより、ノズルニードル2が閉弁向きに移動し、噴孔211が閉じられて燃料噴射が終了する。
【0061】
本実施形態では、変位伝達機構5により、ピエゾ素子積層体4の伸長に伴う第1ピストン53の移動向きと第2ピストン54の移動向きが逆向きとなるようにし、電荷の充電によるピエゾ素子積層体4の伸長に伴って排出弁32が収容室側シート面311から離れる向きに駆動されるようにしているため、排出弁32を収納室13に配置することができる。
【0062】
したがって、従来のようにピエゾ素子積層体4の伸縮を排出弁32に伝達する手段の一部であるロッド部を排出通路315内に配置する必要がなくなり、排出通路315の断面積を小さくすることができる。
【0063】
その結果、排出弁32の受圧面積を小さくすることができ、小さなエネルギで排出弁32を駆動することができる。
【0064】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、変位伝達機構5の構成を一部変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0065】
図5に示すように、第2ピストン54は、第2ピストン大径部541が第1シリンダ孔511に摺動自在に挿入されている。第2ピストン大径部541の内側には、第1ピストン53が摺動自在に挿入される第2ピストン孔544が形成されている。この第2ピストン孔544は、ピエゾ素子積層体4側が開口部になっている。
【0066】
第2ピストン孔544のうち、第2ピストン大径部541の底部内壁面と第1ピストン端面534との間は、燃料が充填された第1油密室571になっている。また、第1シリンダ孔511の空間のうち、第2シリンダ52と第2ピストン段差面543との間の空間は、燃料が充填された第2油密室572になっている。
【0067】
そして、第1油密室571と第2油密室572は、第2ピストン54に形成された油密室連通孔545により連通されている。なお、第1油密室571と第2油密室572は、本発明の油密室を構成している。
【0068】
上記構成において、
図5に示すニードル閉弁状態のとき、すなわち排出弁32が収容室側シート面311に当接しているときに、ピエゾ素子積層体4に電荷が充電されると、ピエゾ素子積層体4が伸長する。それに伴い、第1ピストン53がピエゾ素子積層体4から遠ざかる向きに駆動され、第1ピストン53により第1油密室571および第2油密室572の圧力が高められる。
【0069】
また、高圧化された第2油密室572の圧力が、第2ピストン段差面543に作用し、第2ピストン54および排出弁32がピエゾ素子積層体4側に向かって駆動される。すなわち、ピエゾ素子積層体4の伸長に伴う第1ピストン53の移動向きと第2ピストン54の移動向きが逆向きとなり、且つピエゾ素子積層体4の伸長に伴い排出弁32が収容室側シート面311から離れる向きに駆動される。
【0070】
そして、この排出弁32の移動により、排出弁32が収容室側シート面311から離れて排出通路315が開かれる。
【0071】
一方、ニードル開弁状態のとき、すなわち排出弁32が収容室側シート面311から離れているときに、ピエゾ素子積層体4の電荷を放電させると、ピエゾ素子積層体4が収縮する。それに伴い、ピエゾスプリング55に付勢される第1ピストン53は、ピエゾ素子積層体4に追従して、ピエゾ素子積層体4側に向かって移動し、第1油密室571および第2油密室572の圧力が低下する。
【0072】
したがって、第2ピストン54および排出弁32は、ピストンスプリング56の付勢力により、中間ボデー31側に向かって移動する。このように、本実施形態の燃料噴射弁は、ピエゾ素子積層体4の収縮に伴う第1ピストン53の移動向きと第2ピストン54の移動向きが逆向きとなる。
【0073】
そして、この排出弁32の移動により、排出弁32が収容室側シート面311に当接して排出通路315が閉じられる。
【0074】
本実施形態によると、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0075】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、変位伝達機構5の構成を一部変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0076】
図6に示すように、第1シリンダ51内には、第1ピストン53が摺動自在に挿入される円柱状空間の第1シリンダ孔511、第2ピストン大径部541が摺動自在に挿入される円柱状空間の第3シリンダ孔512、および第3シリンダ孔512よりも第2シリンダ52側に位置して燃料が充填された第2油密室572が形成されている。
【0077】
第1シリンダ孔511は、ピエゾ素子積層体4側が開口部になっている。そして、第1シリンダ孔511のうち、第1シリンダ51の底部内壁面と第1ピストン端面534との間は、燃料が充填された第1油密室571になっている。
【0078】
この第1油密室571と第2油密室572は、第1シリンダ51に形成された油密室連通孔513により連通されている。なお、第1油密室571と第2油密室572は、本発明の油密室を構成している。
【0079】
第3シリンダ孔512は、第2シリンダ52側が開口部になっている。そして、第3シリンダ孔512の一部は、第2ピストン大径部541が摺動する摺動部になっており、第1ピストン孔531の残部はピストンスプリング56が配置されたスプリング室514になっている。このスプリング室514は、第1シリンダ51に形成された連通孔515により、収納室13に連通されている。
【0080】
第2ピストン54は、第2ピストン大径部541の端面からスプリング室514の底部に向かって延びる突起部546を備えている。この突起部546がスプリング室514の底部に当接することにより、第2ピストン54のリフト量が規定される。
【0081】
上記構成において、
図6に示すニードル閉弁状態のとき、すなわち排出弁32が収容室側シート面311に当接しているときに、ピエゾ素子積層体4に電荷が充電されると、ピエゾ素子積層体4が伸長する。それに伴い、第1ピストン53がピエゾ素子積層体4から遠ざかる向きに駆動され、第1ピストン53により第1油密室571および第2油密室572の圧力が高められる。
【0082】
また、高圧化された第2油密室572の圧力が、第2ピストン段差面543に作用し、第2ピストン54および排出弁32がピエゾ素子積層体4側に向かって駆動される。すなわち、ピエゾ素子積層体4の伸長に伴う第1ピストン53の移動向きと第2ピストン54の移動向きが逆向きとなり、且つピエゾ素子積層体4の伸長に伴い排出弁32が収容室側シート面311から離れる向きに駆動される。
【0083】
そして、この排出弁32の移動により、排出弁32が収容室側シート面311から離れて排出通路315が開かれる。
【0084】
一方、ニードル開弁状態のとき、すなわち排出弁32が収容室側シート面311から離れているときに、ピエゾ素子積層体4の電荷を放電させると、ピエゾ素子積層体4が収縮する。それに伴い、ピエゾスプリング55に付勢される第1ピストン53は、ピエゾ素子積層体4に追従して、ピエゾ素子積層体4側に向かって移動し、第1油密室571および第2油密室572の圧力が低下する。
【0085】
したがって、第2ピストン54および排出弁32は、ピストンスプリング56の付勢力により、中間ボデー31側に向かって移動する。このように、本実施形態の燃料噴射弁は、ピエゾ素子積層体4の収縮に伴う第1ピストン53の移動向きと第2ピストン54の移動向きが逆向きとなる。
【0086】
そして、この排出弁32の移動により、排出弁32が収容室側シート面311に当接して排出通路315が閉じられる。
【0087】
本実施形態によると、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0088】
また、突起部546がスプリング室514の底部に当接することにより、第2ピストン54のリフト量が規定されるため、排出弁32が排出通路315を閉じた状態から排出通路315を開くまでの時間、すなわち閉弁応答時間のばらつきを少なくすることができる。
【0089】
さらに、第1ピストン53は、第1ピストン孔531(
図2参照)を備えていないため、加工が容易である。
【0090】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態は、変位伝達機構5の構成を一部変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0091】
図7に示すように、第1シリンダ51の第1シリンダ孔511には、第1ピストン53および第2ピストン54の第2ピストン大径部541が摺動自在に挿入されている。そして、第1ピストン53と第2ピストン大径部541との間に油密室57が形成され、油密室57にピストンスプリング56が配置されている。
【0092】
第1シリンダ孔511の空間のうち、第2ピストン大径部541よりも第2シリンダ52側の空間は、第1シリンダ51に形成された連通孔516により、収納室13に連通されている。
【0093】
第2シリンダ52内には、第2ピストン小径部542よりも大径の円柱状空間である第2シリンダ貫通孔522が形成されている。そして、第2ピストン小径部542の先端側は、第2シリンダ貫通孔522内に位置し、第2ピストン小径部542の先端部に排出弁32が装着されている。
【0094】
上記構成において、本実施形態では、
図7に示すニードル閉弁状態、すなわち排出弁32が収容室側シート面311に当接している状態は、ピエゾ素子積層体4が伸長した状態で保持される。
【0095】
そして、この状態からピエゾ素子積層体4の電荷を放電させると、ピエゾ素子積層体4が収縮する。それに伴い、ピエゾスプリング55に付勢される第1ピストン53は、ピエゾ素子積層体4に追従して、ピエゾ素子積層体4側に向かって移動し、油密室57の圧力が低下する。
【0096】
この油密室57の圧力低下により、第2ピストン54および排出弁32がピエゾ素子積層体4側に向かって移動し、排出弁32が収容室側シート面311から離れて排出通路315が開かれる。
【0097】
そして、排出通路315が開かれると、排出通路315の燃料が連通孔516や第2シリンダ貫通孔522を介して収納室13に流出し、ノズルニードル2が開弁向きに移動し、噴孔211が開かれて燃料が噴射される。
【0098】
一方、ニードル開弁状態のとき、すなわち排出弁32が収容室側シート面311から離れているときに、ピエゾ素子積層体4に電荷が充電されると、ピエゾ素子積層体4が伸長する。それに伴い、第1ピストン53がピエゾ素子積層体4から遠ざかる向きに駆動され、第1ピストン53により油密室57の圧力が高められる。
【0099】
この高圧化された油密室57の圧力が第2ピストン大径部541に作用し、第2ピストン54および排出弁32は中間ボデー31側に向かって移動し、排出弁32が収容室側シート面311に当接する。
【0100】
そして、排出通路315が閉じられると、排出通路315の燃料の流出が止まり、ノズルニードル2が閉弁向きに移動し、噴孔211が閉じられて燃料噴射が終了する。
【0101】
本実施形態によると、電荷の充電によるピエゾ素子積層体4の伸長に伴って排出弁32が収容室側シート面311に当接する位置まで駆動されるため、排出弁32を収納室13に配置することができる。
【0102】
したがって、従来のようにピエゾ素子積層体4の伸縮を排出弁32に伝達する手段の一部であるロッド部を排出通路315内に配置する必要がなくなり、排出通路315の断面積を小さくすることができる。
【0103】
その結果、排出弁32の受圧面積を小さくすることができ、小さなエネルギで排出弁32を駆動することができる。
【0104】
なお、本実施形態では、変位伝達機構5を廃止し、ピエゾ素子積層体4にて排出弁32を直接駆動するようにしてもよい。
【0105】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0106】
また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。
【0107】
また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0108】
また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。
【0109】
また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。