(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6145718
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】プレス蝶ナットの緩み止め装置
(51)【国際特許分類】
F16B 39/38 20060101AFI20170607BHJP
F16B 39/22 20060101ALI20170607BHJP
F16B 37/16 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
F16B39/38 A
F16B39/22 C
F16B37/16
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-78751(P2015-78751)
(22)【出願日】2015年3月23日
(65)【公開番号】特開2016-180506(P2016-180506A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2015年11月16日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】598154453
【氏名又は名称】鈴木 康之
(73)【特許権者】
【識別番号】515071649
【氏名又は名称】株式会社テクノクラート
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康之
(72)【発明者】
【氏名】荒 仁
【審査官】
鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−78139(JP,A)
【文献】
特開2006−153167(JP,A)
【文献】
実開昭54−106462(JP,U)
【文献】
実開昭51−143056(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板をプレス加工して形成された蝶ナット体であって、この蝶ナット体は中央にボルト貫通孔を有する凹状の胴部と、その両側に突出する一対の羽片を有する翼部とからなり、前記ボルト貫通孔にボルトの雄ネジが螺合する雌ネジ溝を形成し、この雌ネジ溝の加工開始の起点をいずれか一方の前記翼部の位置に合致させ、前記胴部の上方に前記ボルトの前記雄ネジのピッチに整合するコイル部のピッチを有するコイルバネを配置し、前記コイルバネの一方の前記端部を、前記コイル部の外周より外方の位置で前記コイル部の軸方向と平行に他方の前記端部側に向けて屈曲してスペーサーを被覆し、これを前記雌ネジ溝の前記起点と合致する前記翼部の前記羽片間に挿入して挟持し、さらに一方の前記端部の先端を前記胴部の底面に当接して前記コイルバネを片持支持し、前記蝶ナット体の前記胴部と、前記コイルバネの他方の前記端部との間に間隔を設け、前記コイルバネの他方の前記端部を前記胴部の上側において非接触状態で外方に突出させ、前記コイル部の軸方向と平行に一方の前記端部側に向かうように屈曲し、他方の前記翼部の近傍まで延出して先端を自由端にし、前記コイルバネの他方の前記端部より一方の前記端部まで前記ボルトの前記雄ネジを螺合可能にしてなることを特徴とするプレス蝶ナットの緩み止め装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属板をプレス加工して形成されたプレス蝶ナットの緩みや外れを防止する緩み止め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ナットの緩みを防止するものとして、特許文献1のようにボルトの雄ネジ溝のピッチに整合するコイルバネをナットのバネ収容凹部に収容し、ボルトとナットとが螺合したときのボルトに対するナットの離脱方向への回転に伴いボルトの雄ネジ溝にコイルバネが密着し摩擦力を増加して回転を阻止し、ボルトにナットを一旦締結すればその締結を容易に外すことができないようにするものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−307210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする問題点として、特許文献1による場合は、ナットにボルトの雄ネジ溝に密着するコイルバネを収納する凹部とか、コイルバネの折曲支持部の先端を嵌装保持する取付孔を設けることになり、これらの加工がナットに必要で、しかも、コイルバネの組み付けに手間がかかるなどの問題があった。
【0005】
この発明は、以上のようなことを考慮してなされたもので、ボルトがコイルバネに簡易に螺合され、長期間にわたって振動や外力等が作用することによるナットの緩みを確実に防止することができ、しかも、緩む止めのための加工が少なく製作が容易な緩み止めナットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0007】
請求項1に記載の発明は、金属板をプレス加工して形成された蝶ナット体であって、この蝶ナット体は中央にボルト貫通孔を有する凹状の胴部と、その両側に突出する一対の羽片を有する翼部とからなり、前記ボルト貫通孔にボルトの雄ネジが螺合する雌ネジ溝を形成し、この雌ネジ溝の加工開始の起点をいずれか一方の前記翼部の位置に合致させ、前記胴部の上方に前記ボルトの前記雄ネジのピッチに整合するコイル部のピッチを有するコイルバネを配置し、
前記コイルバネの一方の前記端部を、前記コイル部の外周より外方の位置で前記コイル部の軸方向と平行に他方の前記端部側に向けて屈曲してスペーサーを被覆し、これを前記雌ネジ溝の前記起点と合致する前記翼部の前記羽片間に挿入して挟持し、さらに一方の前記端部の先端を前記胴部の底面に当接して前記コイルバネを片持支持し、前記蝶ナット体の前記胴部と、前記コイルバネの他方の前記端部との間に間隔を設け、前記コイルバネの他方の前記端部を前記胴部の上側において非接触状態で外方に突出させ、前記コイル部の軸方向と平行に一方の前記端部側に向かうように屈曲し、他方の前記翼部の近傍まで延出して先端を自由端にし、前記コイルバネの他方の前記端部より一方の前記端部まで前記ボルトの前記雄ネジを螺合可能にしてなることを特徴とするプレス蝶ナットの緩み止め装置である。
【発明の効果】
【0010】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0011】
請求項1に記載の発明では、金属板をプレス加工して形成された蝶ナット体であって、この蝶ナット体は中央にボルト貫通孔を有する凹状の胴部と、その両側に突出する一対の羽片を有する翼部とからなり、前記ボルト貫通孔にボルトの雄ネジが螺合する雌ネジ溝を形成し、この雌ネジ溝の加工開始の起点をいずれか一方の前記翼部の位置に合致させ、前記胴部の上方に前記ボルトの前記雄ネジのピッチに整合するコイル部のピッチを有するコイルバネを配置し、
前記コイルバネの一方の前記端部を、前記コイル部の外周より外方の位置で前記コイル部の軸方向と平行に他方の前記端部側に向けて屈曲してスペーサーを被覆し、これを前記雌ネジ溝の前記起点と合致する前記翼部の前記羽片間に挿入して挟持し、さらに一方の前記端部の先端を前記胴部の底面に当接して前記コイルバネを片持支持し、前記蝶ナット体の前記胴部と、前記コイルバネの他方の前記端部との間に間隔を設け、前記コイルバネの他方の前記端部を前記胴部の上側において非接触状態で外方に突出させ、前記コイル部の軸方向と平行に一方の前記端部側に向かうように屈曲し、他方の前記翼部の近傍まで延出して先端を自由端にし、前記コイルバネの他方の前記端部より一方の前記端部まで前記ボルトの前記雄ネジを螺合可能にしてなるので、前記ボルトに螺合した前記蝶ナット体の離脱方向への回転に対し、前記ボルトの前記雄ネジに前記コイルバネの前記コイル部が密着して前記蝶ナット体の回転を阻止し、前記ボルトの振動などで、前記ボルトに螺合する前記蝶ナット体の緩みを確実に防止できる。
しかも、スペースの少ないプレス蝶ナットでも、前記コイルバネの一方の前記端部を前記雌ネジ溝の加工開始の前記起点の合致する前記蝶ナット体の前記翼部の前記羽片間で挟持させれば、蝶ナットのデッドスペースを有効活用でき、コンパクトなプレス蝶ナットの緩み止め装置を得ることになる。
また、前記コイルバネを囲むような胴部や、前記コイルバネの他方の前記端部を延出させるために胴部を切欠く必要がなく、前記コイルバネの他方の前記端部側は前記胴部の上方において非接触状態になり、前記コイルバネの他方の前記端部に振動が伝わることがなく、前記ボルトの前記雄ネジに対するコイルバネのコイル部の密着が緩むことを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明のプレス蝶ナットの緩み止め装置における第1の実施形態を示す側面図。
【
図2】この発明のプレス蝶ナットの緩み止め装置における第1の実施形態を示す平面図。
【
図4】この発明におけるボルトに対するプレス蝶ナットの回転動作状態を示すもので、(a)はプレス蝶ナットの締め付け方向への回転動作状態の断面図、(b)はプレス蝶ナットの緩み方向への回転動作状態の断面図。
【
図5】この発明のプレス蝶ナットの緩み止め装置における第2の実施形態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明のプレス蝶ナットの緩み止め装置の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
【0016】
この発明の実施の形態を、
図1および
図4に基づいて説明する。
図1はプレス蝶ナットの緩み止め装置を実施した一例を示すもので、符号1で示されるものはプレス蝶ナット体である。
【0017】
前記プレス蝶ナット体1は、鋼板をプレス加工して形成され、中央に凹状の胴部2とその左右両側に一体絞り成形された翼部4とからなり、被締結部材Wに挿入するボルト6に螺合する。
【0018】
前記翼部4は断面U字状に形成され、一対の羽片4a、4aよりなるとともに、前記胴部2は底面2aと周縁2bとを有し、前記底面2aにはボルト貫通孔3を開口し、前記周縁2bは左右両側の前記羽片4a、4aに連結する。
【0019】
前記ボルト貫通孔3に前記ボルト6の雄ねじ6aが螺合する雌ネジ溝3aを形成し、この雌ネジ溝3aの加工開始の起点3bを左右両側の前記翼部4のいずれか一方に合致させる。
【0020】
前記胴部2の上方にコイルバネ7を配置し、このコイルバネ7は前記ボルト6の前記雄ネジ6aのピッチに整合するコイル部7aと、前記コイル部7aの一方の端部7bと、前記コイル部7aの他方の端部7cとを有する。一方の前記端部7bは、前記コイル部7aの外周の外側でコイル部軸方向と平行に屈曲し、他方の前記端部7cは、前記コイル部7aの外周より外側に延出する。前記コイル部7aの一方の前記端部7bには、合成樹脂製よりなる断面円形状のスペーサー71を被覆する。
【0021】
前記コイル部7aのコイル部軸方向と平行な一方の前記端部7bを前記起点3bに合致する前記翼部4の前記羽片4a、4a間に前記スペーサー71を介して挿入し、前記羽片4a、4aをカシメて、一方の前記端部7bを挟持して固定端とし、前記コイル部7aの外周より外側に延出する他方の前記端部7cを自由端とする。
【0022】
前記コイル部7aの一方の前記端部7bの先端は、前記胴部2の前記底面2aに当接させ、前記羽片4a、4aの挟持とともに前記コイルバネ7が傾かないように片持支持し、前記ボルト6を前記蝶ナット体1から前記コイルバネ7まで螺合させる。
【0023】
前記コイル部7aの他方の前記端部7cは、前記胴部2の前記周縁2bより外方に非接触状態で突出させ、前記翼部4の近傍まで延出して先端を自由端にする。
なお、他方の前記端部7cは、前記周縁2bに開口(図示せず)を設け、この開口より前記翼部4の近傍まで延出してもよい。
【0024】
前記被締結物Wを貫挿した前記ボルト6に対して、前記コイルバネ7が前記被締結物Wとは反対側に位置するようにして前記蝶ナット体1をネジ込む。
このとき、前記コイルバネ7の他方の前記端部7cと前記翼部4とを一緒に指で摘むことにより、前記コイルバネ7の前記コイル部7aは、一方の前記端部7bを支点として外方へ広がり、前記ボルト6の前記雄ネジ6aの谷に嵌った前記コイルバネ7の素線の摩擦力が軽減され、前記蝶ナット体1は前記ボルト6の前記雄ネジ6aに円滑にネジ込まれる。
【0025】
そして、前記コイルバネ7の他方の前記端部7cと前記翼部4との摘みを外すと、前記コイルバネ7の素線の弾性力により前記ボルト6の軸中心に向って押さえ付けられ、前記蝶ナット体1と一緒にネジ込まれた前記コイルバネ7は、
図4(a)に示すように、前記ボルト6の前記雄ネジ6aの谷に嵌り込む。
【0026】
また、前記コイル部7aの部分の長さを前記蝶ナット体1の前記雌ネジ溝3aの部分の長さより長くしたので、この長い部分の前記コイル7の前記コイル部7aと前記蝶ナット体1の前記雌ネジ溝3aとが前記ボルト6の前記雄ネジ6aへの螺合によって一体化しており、締結の際に前記蝶ナット体1がガタつくことがない。
【0027】
そして、前記ボルト6の前記雄ネジ6aに対し前記蝶ナット体1をナット離脱方向に回ろうとしても、前記翼部4の前記羽片4a、4aに前記コイルバネ7の一方の前記端部7bが挟持されているため、内径方向に収縮する状態となるように前記コイルバネ7の素線が引っ張られて前記ボルト6の前記雄ネジ6aを締め付け、強力な緩み止め状態にさせる。このため、前記コイルバネ7と一体となった前記蝶ナット体1は前記コイルバネ7の前記コイル部7aで回転が阻止されて緩まなくなる。
【0028】
前記蝶ナット体1を離脱するときには、他方の前記端部7cと前記翼部4とを一緒に指で摘まむと、前記コイルバネ7の前記コイル部7aが外方へ広がり、
図4(b)に示すように、前記ボルト6の前記雄ネジ6aの谷と、前記コイル部7aとの密着を解除して摩擦が無くなり、あるいは軽減するなどで自由に回転を許容するようになるから、前記ボルト6の前記雄ネジ6aを保護しながら簡単に前記蝶ナット体1を回転して前記ボルト6から離脱することができる。
【0029】
次に、第2の実施の形態を、
図5および
図6に基づいて説明する。この実施の形態において第1の実施の形態と同じ構成は同一の符号を付して説明する。
【0030】
この第2の実施の形態では、第1の実施の形態で説明している鋼板をプレス加工して形成された蝶ナット体1において、凹状の胴部8の周縁8bを六角形とし、これに、雌ネジ溝10aを形成した六角ナット10を嵌合する。
【0031】
前記前記六角ナット10は、前記雌ネジ溝10aの加工開始の起点(図示せず)が前記蝶ナット体1の左右両側の前記翼部4のいずれか一方に合致するように嵌合される。
【0032】
前記蝶ナット体1の前記胴部8の前記底面8aに開口した前記ボルト貫通孔9よりボルト(図示せず)を挿通し、これを前記雌ネジ10aに螺合して前記蝶ナット体1が締結される。
【0033】
前記蝶ナット体1の前記雌ネジ溝10aの部分の長さを長くでき、締結の際に前記蝶ナット体1がガタつくことがなく、しかも、安定した締結力を得ることができる。
なお、前記胴部8の前記周縁8bを六角形以外の四角形などにして、これに前記蝶ナット1を嵌合してもよい。
【0034】
なお、前記六角ナット10の上方に配置され、前記ボルトが螺合する前記コイルバネ7については、第1の実施の形態と同一なので説明を省略する。また、第1の実施で形態では、前記コイル部7aの一方の前記端部7bに前記スペーサー71を被覆するが、第2の実施の形態では、前記コイル部7aの一方の前記端部7bを前記翼部4の前記羽片4a、4a間に前記スペーサー71を介さないで挿入し、前記羽片4a、4aをカシメて、一方の前記端部7bを挟持して固定端としている。
【0035】
以上の構成におけるプレス蝶ナットの緩み止め装置では、前記蝶ナット体1の前記ボルト貫通孔3に形成した前記雌ネジ溝3aの加工開始の前記起点3bを前記蝶ナット体1の前記翼部4に合致させるとともに、前記ボルト6の前記雄ネジ6aに密着する前記コイルバネ7の一方の前記端部7bを前記蝶ナット体1の前記翼部4の前記羽片4a、4aで挟持させることにより、前記ボルト6に対する前記蝶ナット体1の緩み止めが確実にでき、製作が容易で緩み止めの対策にかける費用を低減できる。
【0036】
また、前記コイルバネ7の前記一端7bは前記翼部4の前記羽片4a、4aの全長で挟持され、しかも、前記一端7bの先端を前記蝶ナット体1の前記胴部2の前記底面2aに当接させ、前記コイルバネ7が傾かないように片持支持でき、前記ボルト6を前記蝶ナット体1の前記雌ネジ溝3aから前記コイルバネ7まで円滑に螺合できる。
【0037】
さらに、前記コイルバネ7の他方の前記端部7cは前記胴部2の前記周縁2bより外方に非接触状態で突出させ、前記翼部4の近傍まで延出して先端を自由端にするので、前記コイルバネ7の他方の前記端部7cが前記蝶ナット体1に伝わる振動によって前記コイルバネ7が動くことがなく、前記蝶ナット体1の緩みを確実に防止できる。
【0038】
この第1または第2の実施の形態では、前記翼部4の前記羽片4a、4aで挟持された一方の前記端部7bが破損したり、変形されることなく自由に緩み止めを解除することができるために、何回でも使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明は、ボルトに装着されるプレス蝶ナットの振動等による緩み止めが簡単な構造で、容易に作製できるプレス蝶ナットの緩み止め装置である。
【符号の説明】
【0040】
1 蝶ナット体
2 凹状の胴部
2a 底面
2b 周縁
3 ボルト貫通孔
3a 雌ネジ溝
3b 加工開始の起点
4 翼部
4a 羽片
6 ボルト
6a 雄ねじ
7 コイルバネ
7a コイル部
7b 一方の端部(固定端)
7c 他方の端部(自由端)
71 スペーサー
8 胴部
8a 底面
8b 周縁
9 ボルト貫通孔
10 六角ナット
10a 雌ネジ溝
W 被締結部材