(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される無線通信システムは、当該無線通信システムにおける通信管理装置が各無線通信端末による無線通信の通信品質を監視し、各無線通信端末が接続すべき無線基地局装置を決定することにより、通信端末によるAP切り替えを短時間で実現する。つまり、上記の通信システムでは、通信管理装置が必須である。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、通信管理装置によらずにより短時間で通信端末によるAP切り替えを完了する無線通信システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る無線通信システムは、第一無線基地局と、前記第一無線基地局とネットワークで接続された第二無線基地局とを備える無線通信システムであって、前記第一無線基地局は、第一周波数チャネルとBSSID(Basic Service Set Indentifier)とにより特定される第一通信路上で通信端末との無線通信を行うことができる第一無線通信部と、前記通信端末との前記第一無線通信部を介した無線通信に必要な制御情報を、認証及び接続確立により生成することで、前記通信端末と第一通信リンクを確立する第一確立部と、前記制御情報を含む引継情報を前記第二無線基地局に送信する情報送信部と、前記通信端末による無線通信の周波数チャネルを、前記第一周波数チャネルと異なる第二周波数チャネルに、DFS(Dynamic Frequency Selection)機能により変更する旨を含む切替通知フレームを、前記第一無線通信部を介して前記通信端末に送信する切替送信部とを備え、前記第二無線基地局は、前記第二周波数チャネルと、前記BSSIDとにより特定される第二通信路上で前記通信端末との無線通信を行うことができる第二無線通信部と、前記第一無線基地局から受信した前記引継情報を用いて、前記切替通知フレームを受信した後の前記通信端末と第二通信リンクを確立する第二確立部とを備える。
【0009】
これによれば、無線通信システムは、DFS機能を利用したAP切り替えを通信端末に行わせることができる。具体的には、当該無線通信システムは、第一無線基地局と第二無線基地局との通信路のそれぞれが、互いに異なる周波数チャネルであり、かつ、同一のBSSIDとなるように構成されている。そして、通信端末は、第一無線基地局と接続確立した状態からDFS機能により周波数チャネルだけを変更することで、第二無線基地局と接続確立した状態となることができる。このようにDFS機能によるチャネル変更を用いているので、通信端末が周波数チャネル切り替え後に第二無線基地局と接続確立した状態となる際に、認証、接続確立、又は通信路の存在確認などを行うことなく、AP切り替えを完了することができる。また、当該無線通信システムには、無線基地局又は通信端末の通信状況等を集中的に管理する通信管理装置に相当する装置又は機能は必要とされず、無線基地局と通信端末との機能により実現される。よって、無線通信システムは、通信管理装置によらずにより短時間で通信端末によるAP切り替えを完了することができる。
【0010】
また、前記第一無線基地局は、さらに、前記第一確立部が前記制御情報を生成した後に、前記通信端末による無線通信の状況から定められる条件が成立するか否かを判定する判定部を備え、前記情報送信部は、前記条件が成立すると判定部が判定した場合に前記引継情報を送信し、前記切替送信部は、前記条件が成立すると判定部が判定した場合に前記切替通知フレームを送信するとしてもよい。
【0011】
これによれば、無線通信システムは、通信端末による無線通信の状況に基づいた判定を行い、判定の結果に基づいて通信端末によるAP切り替えを行わせることができる。
【0012】
また、前記判定部は、前記第一無線通信部が前記通信端末から受信する電波の受信信号強度が閾値未満であることを検出した場合に、前記条件が成立すると判定するとしてもよい。
【0013】
これによれば、無線通信システムは、第一無線基地局と接続確立した通信端末が第一無線基地局から離れるように移動したり、第一無線基地局と通信端末との通信路に遮蔽物が存在したりすることで、第一無線基地局が通信端末から受信する受信信号強度が閾値未満になったことを検出した場合に、当該通信端末におけるAP切り替えを行わせることができる。この状況では、AP切り替えを行う方が通信端末による無線通信が良好になると考えられるからである。
【0014】
また、前記第二無線通信部は、さらに、前記通信端末から受信する電波の受信信号強度を検出し、前記判定部は、前記第二無線通信部が検出した受信信号強度が閾値以上であることを検出した場合に、前記条件が成立すると判定するとしてもよい。
【0015】
これによれば、無線通信システムは、第一無線基地局と接続確立した通信端末が第二無線基地局に近づくように移動したり、第二無線基地局と通信端末との通信路に存在していた遮蔽物がなくなったりすることで、第二無線基地局が通信端末から受信する受信信号強度が閾値以上になったことを検出した場合に、当該通信端末によるAP切り替えを行わせることができる。この状況では、AP切り替えを行う方が通信端末による無線通信が良好になると考えられるからである。
【0016】
また、前記制御情報は、前記第一無線基地局と前記通信端末との暗号化された無線通信に用いられ、動的に生成される共有鍵を含み、前記引継情報は、さらに、前記第一無線基地局と前記通信端末との無線通信に用いられるデータフレームに記載されるためのシーケンス番号を含むとしてもよい。
【0017】
これによれば、通信端末は、AP切り替え前に第一無線基地局との間で行っていた暗号化通信を、AP切り替え後に第二無線基地局との間で継続することができる。
【0018】
また、前記切替送信部は、前記切替送信部による前記切替通知フレームの宛先を決定する宛先決定部を有し、前記切替送信部は、前記宛先決定部が決定した前記宛先に前記切替通知フレームをユニキャスト送信するとしてもよい。
【0019】
これによれば、無線通信システムは、AP切り替えを行う通信端末を決定した後、決定された通信端末だけにAP切り替えを行わせることができる。これにより、例えば、第一無線基地局から離れるように移動した通信端末だけ、又は、第一無線基地局との通信路に遮蔽物が存在した通信端末だけにAP切り替えを行わせることができる。
【0020】
また、前記切替送信部は、前記切替通知フレームをブロードキャスト送信するとしてもよい。
【0021】
これによれば、無線通信システムは、第一無線基地局と接続確立している通信端末のすべてにAP切り替えを行わせることができる。これにより、例えば、第一無線基地局を何らかの事情で停止させる場合などに、第一無線基地局と接続確立している通信端末を第二無線基地局へAP切り替えさせることができる。
【0022】
また、前記切替通知フレームは、DFS機能におけるCSA(Channel Switch Announcement)フレームであって、前記第二周波数チャネルのチャネル番号を切替先チャネル番号として含むCSAフレームであるとしてもよい。
【0023】
これによれば、無線通信システムは、汎用技術であるDFS機能におけるCSAフレームを用いてAP切り替えをすることができる。つまり、通信端末は、DFS機能に対応しているものであれば、その他の特別な機能を実装することなく、上記のAP切り替えを行うことができる。
【0024】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る無線通信システムの制御方法は、第一無線基地局と、前記第一無線基地局とネットワークで接続された第二無線基地局とを備える無線通信システムの制御方法であって、前記第一無線基地局は、第一周波数チャネルとBSSID(Basic Service Set Indentifier)とにより特定される第一通信路上で通信端末との無線通信を行うことができる第一無線通信部を備え、前記第二無線基地局は、前記第二周波数チャネルと、前記BSSIDとにより特定される第二通信路上で前記通信端末との無線通信を行うことができる第二無線通信部を備え、前記無線通信システムの制御方法は、前記通信端末との前記第一無線通信部を介した無線通信に必要な制御情報を、認証及び接続確立により生成することで、前記通信端末と第一通信リンクを確立する第一確立ステップと、前記制御情報を含む引継情報を前記第二無線基地局に送信する情報送信ステップと、前記通信端末による無線通信の周波数チャネルを、前記第一周波数チャネルと異なる第二周波数チャネルに、DFS(Dynamic Frequency Selection)機能により変更する旨を含む切替通知フレームを、前記第一無線通信部を介して前記通信端末に送信する切替送信ステップと、前記第一無線基地局から受信した前記引継情報を用いて、前記切替通知フレームを受信した後の前記通信端末と第二通信リンクを確立する第二確立ステップとを含む。
【0025】
これにより、上記の無線通信システムと同様の効果を奏する。
【0026】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るプログラムは、上記に記載の無線通信システムの制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0027】
これにより、上記の無線基地局装置と同様の効果を奏する。
【0028】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る無線基地局装置は、上記に記載の無線通信システムにおける第一無線基地局、又は第二無線基地局を備える。
【0029】
これにより、上記の無線基地局装置と同様の効果を奏する。
【0030】
なお、本発明は、装置として実現できるだけでなく、その装置を構成する処理手段をステップとする方法として実現したり、それらステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現したり、そのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体として実現したり、そのプログラムを示す情報、データ又は信号として実現したりすることもできる。そして、それらプログラム、情報、データ及び信号は、インターネット等の通信ネットワークを介して配信してもよい。
【発明の効果】
【0031】
本発明にかかる無線通信システムは、通信管理装置によらずにより短時間で通信端末によるAP切り替えを完了することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0034】
以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
【0035】
なお、同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0036】
(実施の形態)
本実施の形態において、通信管理装置によらずにより短時間で通信端末によるAP切り替えを完了する無線通信システムなどについて説明する。なお、AP切り替えは、例えば、無線通信端末が移動することで通信リンクを確立していた無線基地局装置から離れ、他の無線基地局装置に近づく場合のハンドオーバの際に行われる。また、2つの無線基地局装置の通信可能エリアに存在する無線通信端末が一方の無線基地局装置と通信リンクを確立している状態において、当該通信リンクの通信品質が悪化した場合にもAP切り替えが行われる。この場合、AP切り替えにより、他方の無線基地局装置と通信リンクを確立することができる。さらに、無線通信端末が通信リンクを確立していた無線基地局装置が故障により停止した場合、又は、当該無線基地局装置が保守者により電源を落とされた場合にもAP切り替えが行われる。
【0037】
本実施の形態において、AP切り替えは、ハンドオーバにより発生するものを想定して説明するが、本発明におけるAP切り替えの要因はハンドオーバだけに限られない。
【0038】
図1は、本実施の形態に係る無線通信システム40のネットワーク構成図である。
【0039】
図1に示されるように、本実施の形態に係る無線通信システム40は、無線基地局装置11と、無線基地局装置12と、LAN(Local Area Network)31と、通信端末35とを備える。
【0040】
無線基地局装置11は、無線通信インタフェースを有する無線基地局装置であり、無線通信可能エリアに存在する通信端末35との間で通信リンク25を確立し、無線通信を行う。通信リンク25は、無線通信の論理的な通信路21(以降、単に「通信路」とも記載する)において確立される。通信路は、無線通信に用いる電波の周波数を示す周波数チャネル(以降、単に「チャネル」とも記載する)と、ネットワークの識別子であるBSSID(Basic Service Set Indentifier)とを含む属性情報により特定される。無線基地局装置11の通信路21の属性情報21Aは、チャネル番号(Ch)が1であり、BSSIDがaaである。なお、BSSIDは、48ビットで表される数値(12桁の16進数で表される数値)であり、「00:00:00:11:11:aa」のように表記されることもある。なお、無線通信は、例えば、IEEE802.11a、b、g、n規格などに適合する無線LANにより実現される。
【0041】
また、無線基地局装置11は、LAN31と接続されており、無線通信に用いられる通信フレーム(通信パケット)の宛先に応じて、当該通信フレームを当該宛先に向けて転送する。具体的には、無線基地局装置11は、通信端末35から、LAN31側の端末(LAN31に接続された端末、又はLAN31に接続されたネットワークに接続された端末)を宛先とする通信フレームを受信したら、当該通信フレームをLAN31へ転送する。また、無線基地局装置11は、LAN31側の端末から、通信端末35を宛先とする通信フレームを受信したら、当該通信フレームを通信端末35に転送する。なお、無線基地局装置11は、第一無線基地局に相当する。
【0042】
無線基地局装置12は、無線基地局装置11と同様に、無線通信インタフェースを有する無線基地局装置である。無線基地局装置12は、通信端末35との間で通信リンク26を確立し、無線通信を行う。無線基地局装置12の通信路22の属性情報22Aは、チャネル番号(Ch)が36であり、BSSIDがaaである。つまり、無線基地局装置11の通信路21と、無線基地局装置12の通信路22とは、互いに異なるチャネルを有し、かつ、同一のBSSIDを有する。なお、無線基地局装置12は、第二無線基地局に相当する。
【0043】
LAN31は、無線基地局装置11と無線基地局装置12との通信に用いられる通信ネットワーク(ローカルエリアネットワーク)である。なお、LAN31は、例えば、IEEE802.3規格などに適合する有線LANにより実現される。
【0044】
通信端末35は、無線通信インタフェースを有する無線通信端末である。通信端末35は、無線基地局装置11との間で通信リンク25を確立し、又は、無線基地局装置12との間で通信リンク26を確立し、無線通信を行う。通信端末35は、通信リンク25及び無線基地局装置11、又は、通信リンク25及び無線基地局装置12を介して、LAN31側の端末と通信することができる。
【0045】
本実施の形態において、通信端末35が無線基地局装置11との間で通信リンク25を確立し、その後、ハンドオーバにより、無線基地局装置12との間で通信リンク26を確立した状態になる場合の処理について説明する。本実施の形態に係る無線通信システムによれば、通信管理装置によらずにより短時間で通信端末によるAP切り替えを完了することができる。なお、通信端末35がハンドオーバする前に通信リンクを確立した無線基地局装置をハンドオーバ元基地局と、通信端末35がハンドオーバした後に通信リンクを確立した無線基地局装置をハンドオーバ先基地局と、それぞれ記述することがある。
【0046】
図2は、本実施の形態に係る無線基地局装置11のハードウェア構成図である。
【0047】
図2に示されるように、無線基地局装置11は、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、記憶装置104と、WNIC(Wireless Network Interface Card)105と、NIC(Network Interface Card)106とを備える。なお、本実施の形態に係る無線基地局装置12は、無線基地局装置11と同様のハードウェア構成を有する。
【0048】
CPU101は、ROM102に格納された制御プログラムを実行するプロセッサである。
【0049】
ROM102は、制御プログラム等を保持する読み出し専用記憶領域である。
【0050】
RAM103は、CPU101が制御プログラムを実行するときに使用するワークエリアとして用いられる揮発性の記憶領域である。
【0051】
記憶装置104は、制御プログラム、又は、画像データなどを保持する不揮発性の記憶領域である。
【0052】
WNIC105は、通信端末35との間で無線通信を行う無線通信インタフェースである。なお、WNIC105は、例えば、IEEE802.11a、b、g、n規格等に適合する無線LANの通信インタフェースである。
【0053】
NIC106は、LAN31へ通信データを送信する、又は、LAN31から通信データを受信する通信インタフェースである。なお、NIC106は、IEEE802.3規格等に適合する有線LANインタフェースであってもよいし、IEEE802.11a、b、g、n規格等に適合する無線LANインタフェースであってもよい。なお、NIC106は、WNIC105を用いて実現されてもよい。
【0054】
なお、上記の通り、本実施の形態に係る無線基地局装置12は、無線基地局装置11と同様のハードウェア構成を有するので、無線基地局装置12についての詳細な説明は省略する。
【0055】
図3は、本実施の形態に係る無線基地局装置11及び無線基地局装置12の機能ブロック図である。
【0056】
図3に示されるように、無線基地局装置11は、無線通信部111と、確立部112と、判定部113と、情報送信部114と、切替送信部115とを備える。また、無線基地局装置12は、無線通信部121と、確立部122とを備える。
【0057】
無線通信部111は、通信路21を用いて通信端末35との無線通信を行うことができる。上記のとおり、通信路21は、チャネルが1であり、BSSIDがaaである。なお、無線通信部111が第一無線通信部に相当し、通信路21が第一通信路に相当し、通信路21のチャネルが第一周波数チャネルに相当する。また、無線通信部111は、WNIC105等により実現される。
【0058】
確立部112は、無線通信部111を介して通信端末35との認証及び接続確立を行うことで、通信端末35との無線通信に必要な制御情報を生成し、通信リンク25を確立する。具体的には、確立部112は、通信端末35との間で認証(Authentication)及び接続確立(Association)を行うことで、通信端末35との通信に必要な制御情報を生成する。制御情報は、具体的には、IEEE802.11認証情報、及び、暗号化のために利用されるWPA(Wi−Fi Protected Access)又はWPA2における鍵情報(PMK(Pairwise Master Key))などに相当する。なお、確立部112が通信リンク25を確立した後、通信リンクが存在している状態のことを、「接続確立した状態」とよぶこともある。
【0059】
判定部113は、確立部112が制御情報を生成した後に、通信端末35による無線基地局装置11から無線基地局装置12への接続切り替えのための条件(以降、無線基地局切替条件ともよぶ)が成立するか否かを判定する。無線基地局切替条件は、通信端末35が無線基地局装置11と接続確立した状態において、無線基地局装置11よりも無線基地局装置12に接続確立したほうが、高品質な、又は高速な通信ができることを示す条件である。なお、判定部113は、本発明に必須の構成要素ではない。
【0060】
無線基地局切替条件は、例えば、無線通信部111が通信端末35から受信する電波の受信信号強度を用いて定められる。つまり、判定部113は、確立部112が制御情報を生成した後に、無線通信部111が通信端末35から受信する電波の受信信号強度を監視し、その受信信号強度が閾値未満であることを検出した場合に無線基地局切替条件が成立すると判定する。また、無線基地局切替条件は、無線基地局装置12が通信端末35から受信する電波の受信強度を用いて定められてもよい。つまり、判定部113は、無線基地局装置12の無線通信部121が受信する通信端末35からの電波の受信信号強度が閾値以上であることを検出した場合に無線基地局切替条件が成立すると判定するとしてもよい。なお、無線基地局装置12で観測した通信端末35からの電波の受信信号強度が閾値以上であるか否かの判断は、無線基地局装置12が当該受信信号強度を無線基地局装置11に送信した後で無線基地局装置11が行うようにすればよい。また、当該受信信号強度を観測した無線基地局装置12が行って、その判断結果を無線基地局装置11に通知してもよい。
【0061】
情報送信部114は、無線基地局切替条件が成立すると判定部113が判定した場合に、制御情報を含む引継情報を無線基地局装置12に送信する。引継情報とは、制御情報のほかにシーケンス番号を含む。引継情報については、後で詳しく説明する。
【0062】
切替送信部115は、無線基地局切替条件が成立すると判定部113が判定した場合に、DFS(Dynamic Frequency Selection)機能における切替通知フレームであって、通信端末35による無線通信の周波数チャネルを、無線基地局装置12の通信路22の周波数チャネルに変更する旨を含む切替通知フレームを、無線通信部111を介して送信する。なお、切替通知フレームは、CSA(Channel Switch Announcement)フレームを用いて実現される。なお、CSAフレームの送信は、宛先となる端末を指定するユニキャスト送信でもよいし、全端末を宛先とするブロードキャスト送信であってもよい。上記のそれぞれの送信を用いる場合の利用例について、後で詳細に説明する。
【0063】
なお、確立部112、判定部113、情報送信部114、及び切替送信部115のそれぞれは、CPU101、ROM102、RAM103、記憶装置104、WNIC105、又はNIC106などにより実現される。
【0064】
無線通信部121は、通信路22を用いて通信端末35との無線通信を行うことができる。上記のとおり、通信路22は、チャネルが36であり、BSSIDがaaである。なお、無線通信部121が第二無線通信部に相当し、通信路22が第二通信路に相当し、通信路22のチャネルが第二周波数チャネルに相当する。また、無線通信部121は、WNIC等により実現される。なお、無線通信部121は、WNIC等により実現される。
【0065】
確立部122は、無線基地局装置11から受信した引継情報を用いて、切替通知フレームを受信した後の通信端末35と接続を確立した状態、つまり、通信リンク26を確立した状態になる。なお、確立部122は、CPU、ROM、RAM、記憶装置、WNIC、又はNICなどにより実現される。
【0066】
ここで、DFS機能の一般的な説明を示す。DFS機能とは、一般に無線基地局装置と当該無線基地局装置に接続確立している通信端末とを備える通信システムにおいて、無線基地局装置と通信端末とが、その接続に使用している通信路のチャネルを変更する機能のことである。DFS機能は、例えば、情報通信と異なる用途の電波(例えば、気象レーダの電波)と当該情報通信の電波とが、同一の周波数帯域を使用することとなっている場合に用いられる。この場合、無線基地局装置は気象レーダが送信する電波を受信するか否かを監視する。そして、気象レーダの電波を検出した場合に、通信端末との接続に使用している通信路のチャネルを変更する旨を含む管理フレームであるCSAフレームを通信端末に送信し、その後、新しいチャネルに移る。CSAフレームは、具体的には、無線基地局装置が新たに使用するチャネルのチャネル番号を含む。上記のCSAフレームを受信した通信端末は、当該CSAフレームに含まれるチャネル番号を取得し、自身の通信路のチャネルを、取得したチャネル番号に変更する。チャネルを変更する際に、通信端末は、認証若しくは接続確立、又は、当該チャネル番号の新たな通信路が存在することを確認するためのビーコンの受信などの動作を行わずに、新たなチャネルでの通信を開始する。DFS機能は、例えば、IEEE802.11h規格において定められている。
【0067】
図4Aは、本実施の形態に係るCSAフレーム401に含まれる情報の説明図である。
図4Aに示されるCSAフレーム401は、無線基地局装置11の切替送信部115が送信するCSAフレームの一例である。CSAフレーム401は、切替先チャネル番号411を含む。
【0068】
切替先チャネル番号411は、無線基地局装置12の通信路22のチャネル番号が書き込まれる。本実施の形態におけるネットワーク構成(
図1)では、「36」が書き込まれる。
【0069】
図4Bは、本実施の形態に係る引継情報の説明図である。
【0070】
図4Bに示されるように、引継情報421は、制御情報431、及びシーケンス番号432を含む。
【0071】
制御情報431は、確立部112が認証及び接続確立によって生成した制御情報が書き込まれる。
【0072】
シーケンス番号432は、通信端末35とのデータ通信に用いられる連番が書き込まれる。一般に、無線通信におけるデータフレームには、当該データフレームの新旧(先後)を識別可能な連番が付される。シーケンス番号432には、無線基地局装置11における最新の連番が書き込まれる。なお、IEEE802.11において、上記の連番は、「シーケンス制御」フィールドに書き込まれる情報に該当する。
【0073】
図5Aは、本実施の形態に係る無線基地局装置11のフローチャートである。
図5Bは、本実施の形態に係る無線基地局装置12のフローチャートである。
図6は、本実施の形態に係る通信端末のフローチャートである。
図7は、本実施の形態に係る無線通信システムによる通信を示すシーケンス図である。これらを参照しながら、無線通信システム40の動作を説明する。なお、これらの図面において、通信端末のことを「STA」と、無線基地局装置のことを「AP」と記述する。以降の図においても、同様の記述を用いることがある。
【0074】
図5Aを参照しながら本実施の形態に係る無線基地局装置11の処理を説明する。
【0075】
ステップS500において、無線基地局装置11は、無線基地局装置12の属性情報22Aを無線基地局装置12からLAN31経由で取得する。なお、無線基地局装置11が、属性情報22Aを取得する方法には、さまざまな方法がある。例えば、無線基地局装置11が無線基地局装置12に対して属性情報22Aを要求する信号を送信し、当該信号に応じて無線基地局装置12が送信する属性情報22Aを無線基地局装置11が取得する方法がある。また、無線基地局装置12が自発的に無線基地局装置11へ属性情報22Aを送信し、送信された属性情報22Aを無線基地局装置11が受信する方法でもよい。
【0076】
ステップS501において、確立部112は、通信端末35との認証(Authentication)及び接続確立(Association)により、制御情報を生成する。上記の認証及び接続確立は、
図7におけるAuthentication701及びAssociation702にそれぞれ相当する。そして、Authentication701及びAssociation702が完了したら、無線基地局装置11は、通信端末35との間で通信リンク25を確立し、通信端末35と通信可能703となる。
【0077】
ステップS502において、判定部113は、通信端末35による無線基地局装置11から無線基地局装置12への接続切り替えのための条件(無線基地局切替条件)が成立するか否かを判定する。そして、無線基地局切替条件が成立すると判定部113が判定した場合、ステップS503を実行する。一方、無線基地局切替条件が成立しないと判定部113が判定した場合、再びステップS502を実行する。つまり、無線基地局切替条件が成立するまでステップS502の判定を繰り返す。上記の判定は、
図7における判定704に相当する。
【0078】
ステップS503において、情報送信部114は引継情報を無線基地局装置12に送信する。これは、
図7における引継情報705に相当する。
【0079】
ステップS504において、無線基地局装置11の切替送信部115は、無線基地局装置12の通信路22のチャネル番号を含むCSAフレームを通信端末35に送信する。これは、
図7におけるCSAフレーム706に相当する。
【0080】
図5Bを参照しながら本実施の形態に係る無線基地局装置12の処理を説明する。
【0081】
ステップS521において、確立部122は、無線基地局装置11の情報送信部114が送信した引継情報を受信する。これは
図7における引継情報705に相当する。
【0082】
ステップS522において、確立部122は、ステップS521で受信した引継情報に含まれる制御情報を用いて、通信端末35との接続を確立した状態になる。これは、
図7における、通信可能712に相当する。
【0083】
ステップS523において、無線通信部121は、引継情報に含まれるシーケンス番号を用いて通信端末35との通信を開始する。具体的には、無線通信部121は、通信リンク26を介して通信端末35との無線通信において送信するデータフレームのシーケンス番号のフィールドに引継情報に含まれていたシーケンス番号を記載する。このように、シーケンス番号を無線基地局装置11から無線基地局装置12に伝達することで、それまで無線基地局装置11(無線通信部111)と通信端末35が行っていた通信を引き継いで、無線基地局装置12(無線通信部121)と通信端末35とで行うことができる。
【0084】
図6を参照しながら本実施の形態に係る通信端末35の処理を説明する。
【0085】
ステップS601において、通信端末35は、無線基地局装置11との認証及び接続確立を行う。上記の認証及び接続確立は、
図7におけるAuthentication701及びAssociation702にそれぞれ相当する。そして、Authentication701及びAssociation702が完了したら、通信端末35は、無線基地局装置11との間で通信リンク25を確立し、無線基地局装置11と通信可能703となる。
【0086】
ステップS602において、通信端末35は、無線基地局装置11からのCSAフレーム(
図7におけるCSAフレーム706)の受信待ち状態となる。通信端末35は、CSAフレーム706を受信したらステップS603を実行する。
【0087】
ステップS603において、通信端末35は、CSAフレームに含まれる切替先チャネル番号を取得する。
【0088】
ステップS604において、通信端末35は、ステップS603で取得した切替先チャネル番号に、チャネル切り替え711を行う。これにより、通信端末35は、無線通信端末12の通信路22に通信リンク26を確立した状態となり、無線基地局装置12と通信可能712となる。
【0089】
ステップS604において、通信端末35は、無線基地局装置12との間で認証及び接続確立を行うことなく、また、通信路の存在を確認するためにビーコンの受信をすることもなく、無線基地局装置12との通信が可能な状態になる。その理由は、ステップS604におけるチャネル切り替え711がDFS機能により実現されたからである。DFS機能は本来、無線基地局装置が自身の通信路のチャネルを切り替えるために用いられるものである。そのため、無線基地局装置は、チャネル切り替え前に通信端末との間で認証及び接続確立により生成した制御情報を有したまま、CSAフレームを送信した後に切替先のチャネルの使用を開始する。通信端末は、すでに当該無線基地局装置との間で生成した制御情報を有しており、この制御情報を用いてチャネル切り替え後にも当該無線基地局装置との通信を継続できる。また、通信端末は、切替先のチャネルに当該無線基地局装置による通信路が提供されることがDFS機能により取り決められているので、通信路の存在を確認することなく通信可能な状態になる。
【0090】
以下では、上記のように行われる通信端末によるAP切り替えを利用した、複数の通信端末を含む無線通信システムでのAP切り替えについて説明する。
【0091】
図8は、本実施の形態に係る通信端末によるAP切り替えの第一の利用例の説明図である。
図8に示される無線通信システム41は、無線基地局装置11と、無線基地局装置12と、LAN31と、通信端末35a〜35cとを備える。そして、
図8では、3台の通信端末すべてがAP切り替えを行う場合を示している。
【0092】
図8において、通信端末35a〜35cは、当初、無線基地局装置11との間でそれぞれ通信リンク25a〜25cを確立している。この状態において、無線基地局装置11は、全端末を宛先とするブロードキャスト送信によってCSAフレーム801(
図7におけるCSAフレーム706に相当する)を送信する。
【0093】
CSAフレーム801を受信した通信端末35a〜35cのそれぞれは、
図6に示される接続切り替え処理を実行することで無線基地局装置12への接続切り替えを行う。その結果、通信端末35a〜35cは、無線基地局装置12との間でそれぞれ通信リンク26a〜26cを確立する。なお、通信リンク26a〜26cを確立する際に、認証、接続確立、又は、通信路の確認などを行うことなく、通信可能状態となる。
【0094】
このようにすることで、無線基地局装置11との接続を確立している通信端末のすべてを、無線基地局装置12との接続を確立した状態に切り替えることができる。
【0095】
図9は、本実施の形態に係る通信端末によるAP切り替えの第二の利用例の説明図である。
【0096】
図9に示される無線通信システム42は、無線基地局装置11と、無線基地局装置12と、LAN31と、通信端末35a〜35cとを備える。そして、
図9では、3台の通信端末のうちの1台だけがAP切り替えを行う場合を示している。
【0097】
図9において、当初、通信端末35a〜35cは、無線基地局装置11との間でそれぞれ通信リンク25a〜25cを確立している。この状態において、無線基地局装置11は、通信端末35aを宛先とするユニキャスト送信によってCSAフレーム901(
図7におけるCSAフレーム706に相当する)を送信する。
【0098】
CSAフレーム901を受信した通信端末35aは、
図6に示される接続切り替え処理を実行することで無線基地局装置12への接続切り替えを行う。その結果、通信端末35aは、無線基地局装置12との間で通信リンク26aを確立する。なお、通信端末35aは通信リンク26aを確立する際に、認証、接続確立、又は、通信路の確認などを行うことなく、通信可能状態となる。
【0099】
このようにすることで、無線基地局装置11との接続を確立している通信端末のうち指定した1つを、無線基地局装置12との接続を確立した状態に切り替えることができる。これを利用すれば、通信端末それぞれの位置に応じて最適な無線基地局装置に接続を切り替えることができる。また、通信端末を周囲の無線基地局装置と接続させることで無線基地局装置間の負荷分散を行うことも可能となる。
【0100】
なお、通信端末によるAP切り替え先の無線基地局装置を決定するには、さまざまな方法がある。例えば、無線基地局装置11等が、自装置の位置情報を他の無線基地局装置との間で共有するようにしておいて、通信端末が移動している場合では、近隣の各無線基地局装置との距離又は電波状況などと各無線基地局装置から受信する電波の受信信号強度に基づいて、最適な無線基地局装置を切り替え先の無線基地局装置として決定するようにしてもよい。
【0101】
以上のように、本実施の形態に係る無線基地局装置によれば、無線通信システムは、DFS機能を利用したAP切り替えを通信端末に行わせることができる。具体的には、当該無線通信システムは、第一無線基地局と第二無線基地局との通信路のそれぞれが、互いに異なる周波数チャネルであり、かつ、同一のBSSIDとなるように構成されている。そして、通信端末は、第一無線基地局と接続確立した状態からDFS機能により周波数チャネルだけを変更することで、第二無線基地局と接続確立した状態となることができる。このようにDFS機能によるチャネル変更を用いているので、通信端末が周波数チャネル切り替え後に第二無線基地局と接続確立した状態となる際に、認証、接続確立、又は通信路の存在確認などを行うことなく、AP切り替えを完了することができる。また、当該無線通信システムには、無線基地局又は通信端末の通信状況等を集中的に管理する通信管理装置に相当する装置又は機能は必要とされず、無線基地局と通信端末との機能により実現される。よって、無線通信システムは、通信管理装置によらずにより短時間で通信端末によるAP切り替えを完了することができる。
【0102】
また、無線通信システムは、通信端末による無線通信の状況に基づいた判定を行い、判定の結果に基づいて通信端末によるAP切り替えを行わせることができる。
【0103】
また、無線通信システムは、第一無線基地局と接続確立した通信端末が第一無線基地局から離れるように移動したり、第一無線基地局と通信端末との通信路に遮蔽物が存在したりすることで、第一無線基地局が通信端末から受信する受信信号強度が閾値未満になったことを検出した場合に、当該通信端末におけるAP切り替えを行わせることができる。この状況では、AP切り替えを行う方が通信端末による無線通信が良好になると考えられるからである。
【0104】
また、無線通信システムは、第一無線基地局と接続確立した通信端末が第二無線基地局に近づくように移動したり、第二無線基地局と通信端末との通信路に存在していた遮蔽物がなくなったりすることで、第二無線基地局が通信端末から受信する受信信号強度が閾値以上になったことを検出した場合に、当該通信端末によるAP切り替えを行わせることができる。この状況では、AP切り替えを行う方が通信端末による無線通信が良好になると考えられるからである。
【0105】
また、通信端末は、AP切り替え前に第一無線基地局との間で行っていた暗号化通信を、AP切り替え後に第二無線基地局との間で継続することができる。
【0106】
また、無線通信システムは、AP切り替えを行う通信端末を決定した後、決定された通信端末だけにAP切り替えを行わせることができる。これにより、例えば、第一無線基地局から離れるように移動した通信端末だけ、又は、第一無線基地局との通信路に遮蔽物が存在した通信端末だけにAP切り替えを行わせることができる。
【0107】
また、無線通信システムは、第一無線基地局と接続確立している通信端末のすべてにAP切り替えを行わせることができる。これにより、例えば、第一無線基地局を何らかの事情で停止させる場合などに、第一無線基地局と接続確立している通信端末を第二無線基地局へAP切り替えさせることができる。
【0108】
また、無線通信システムは、汎用技術であるDFS機能におけるCSAフレームを用いてAP切り替えをすることができる。つまり、通信端末は、DFS機能に対応しているものであれば、その他の特別な機能を実装することなく、上記のAP切り替えを行うことができる。
【0109】
以上、本発明の無線通信システムについて、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0110】
例えば、実施の形態では無線基地局装置は1対(2つ)の前提で説明したが、現実の無線通信システムでは、3つ以上の無線基地局装置が存在する場合が考えられる。この場合も、あらかじめ無線基地局ごとに使用する周波数チャネルが重複しないように割り振っておけば、これまで述べてきた実施の形態を適用することが可能である。