(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
サーモアクチュエータは、温度変化に基づいてロッドを前進又は後退させる駆動部品である。即ち、媒体の温度が高い場合に、ロッドが前進する。媒体の温度が低くなると、内蔵されるリターンばねの付勢力によって、ロッドは後退させられる。このようなサーモアクチュエータが搭載される装置として、熱交換デバイスが挙げられる。
【0003】
熱交換デバイスとしての排熱回収装置は、排気ガスの熱を回収する熱回収路と、この熱回収路を迂回するバイパス路とを有している。排気ガスの流路は、排熱回収装置内に設けられているバルブによって切り替えられる。このバルブには、サーモアクチュエータが接続されており、サーモアクチュエータが作動することによってバルブが作動する。サーモアクチュエータは、熱回収路中に配置されている熱交換器に接続されており、熱交換器内を流れる媒体の温度によって作動する(例えば、特許文献1(
図1、
図2)参照。)
【0004】
図13に示されるように、サーモアクチュエータ200は、ケース201と、このケース201の一端に取付けられ媒体の温度を感知する感温部210と、この感温部210のスリーブ212内に収納され感温部210が感知した温度によって前進するアクチュエータロッド203と、このアクチュエータロッド203の先端に設けられアクチュエータロッド203と共に図面左右に移動するロッド204と、このロッド204の先端の外周に設けられロッド204をガイドする軸受205と、ロッド204を後退する方向(図面左方向)に付勢しているリターンばね206とからなる。
【0005】
感温部210内には、ワックス211が収納されている。媒体の温度が高いことにより、ワックス211の温度が高くなると、ワックス211が膨張する。このワックス211の膨張する力によって、スリーブ212が押し潰され、アクチュエータロッド203が前進する。
【0006】
一方、媒体の温度が低いことにより、ワックス211の温度が低くなると、ワックス211が収縮する。この場合は、リターンばね206の力によって、ロッド204及びアクチュエータロッド203が後退させられる。
【0007】
ロッド204は、軸受205でガイドされつつ前進及び後退を繰り返す。前進及び後退を高頻度で繰り返すと、静側の軸受205と移動側のロッド204との間において僅かではあるが摩耗が発生する。スリーブ212とアクチュエータロッド203についても同様である。この摩耗量が一定量に達すると軸受205やスリーブ212を交換する必要がある。
【0008】
しかし、サーモアクチュエータ200の長寿命化が望まれる中、軸受205やスリーブ212の交換頻度を抑えること、即ち、長寿命化が求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、長期間使用することのできるサーモアクチュエータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項
1に係る発明は、排気ガスが導入され、導入された前記排気ガスを2つの流路に分岐する分岐部と、
この分岐部から延びている第1流路と、
前記分岐部から前記第1流路に沿うようにして延びている第2流路と、
この第2流路に取付けられ、前記排気ガスの熱からエネルギを回収する熱交換器と、
前記第1流路又は前記第2流路を開閉可能に設けられ、サーモアクチュエータによって作動されるバルブとからなる熱交換デバイスにおいて、
前記サーモアクチュエータは、筒状のケースと、このケースの一端に取付けられ媒体の温度を感知する感温部と、この感温部内のスリーブに収納され前記感温部が感知した温度によって前進するピストンと、このピストンの先端に配置され前記ピストンが前進することによって前進するロッドと、前記ケース内に収納され前記ロッドを後退する方向に付勢しているリターンばねとからなり、
前記ケース内には、前記ロッドの前進限を規定するストッパが形成され、
前記ロッドの前進限が規定されることにより、前記バルブの開度が規定され、
前記ロッドには、前記ロッドの側面から前記リターンばねの外周まで突出するロッド鍔部が形成され、
前記ケースには、前記ケースの内周面から前記ケースの中心軸に向かって突出する突起部が形成され、
この突起部は、前記鍔部に対して周方向に重なる位置まで突出しており、
前記ストッパは、
前記突起部によって形成されていると共に、
前記バルブが所定の位置に達した時に、前記鍔部が当接する部位に位置していることを特徴とする。
【0015】
請求項
2に係る発明は、排気ガスが導入され、導入された前記排気ガスを2つの流路に分岐する分岐部と、
この分岐部から延びている第1流路と、
前記分岐部から前記第1流路に沿うようにして延びている第2流路と、
この第2流路に取付けられ、前記排気ガスの熱からエネルギを回収する熱交換器と、
前記第1流路又は前記第2流路を開閉可能に設けられ、サーモアクチュエータによって作動されるバルブとからなる熱交換デバイスにおいて、
前記サーモアクチュエータは、筒状のケースと、このケースの一端に取付けられ媒体の温度を感知する感温部と、この感温部内のスリーブに収納され前記感温部が感知した温度によって前進するピストンと、このピストンの先端に配置され前記ピストンが前進することによって前進するロッドと、前記ケース内に収納され前記ロッドを後退する方向に付勢しているリターンばねとからなり、
前記サーモアクチュエータのロッドの中心軸線上には、ストッパが設けられ、
前記ロッドは、前記ストッパに当接することにより、前進限が規定され、
前記ロッドの前進限が規定されることにより、前記バルブの開度が規定されるよう、
前記ストッパは、前記バルブが所定の位置に達したときに、前記ロッドの先端が当接する部位に位置していることを特徴とする。
【0016】
請求項
3に係る発明は、排気ガスが導入され、導入された前記排気ガスを2つの流路に分岐する分岐部と、
この分岐部から延びている第1流路と、
前記分岐部から前記第1流路に沿うようにして延びている第2流路と、
この第2流路に取付けられ、前記排気ガスの熱からエネルギを回収する熱交換器と、
前記第1流路又は前記第2流路を開閉可能に設けられ、サーモアクチュエータによって作動されるバルブとからなる熱交換デバイスにおいて、
前記サーモアクチュエータは、筒状のケースと、このケースの一端に取付けられ媒体の温度を感知する感温部と、この感温部内のスリーブに収納され前記感温部が感知した温度によって前進するピストンと、このピストンの先端に配置され前記ピストンが前進することによって前進するロッドと、前記ケース内に収納され前記ロッドを後退する方向に付勢しているリターンばねとからなり、
前記バルブは、バルブ軸を中心にスイング可能な構成とされ、
前記バルブ軸の端部、且つ、前記バルブ軸の軸心に対してオフセットされた部位には、当接片が設けられ、
前記当接片の軌道上には、ストッパが設けられ、
前記ロッドは、前記当接片が前記ストッパに当接することにより、前進限が規定され、
前記ロッドの前進限が規定されることにより、前記バルブの開度が規定されるよう、
前記ストッパは、前記バルブが所定の位置に達した時に、前記当接片が当接する部位に位置していることを特徴とする。
【0017】
請求項
4に係る発明は、前記感温部には、前記ロッドが前進限に位置している場合に、さらに膨張するワックスを逃がすための逃げ部が取付けられ、
前記逃げ部は、前記感温部に接続され孔が開けられているプレートと、このプレートに接続されている逃げ部ケースと、この逃げ部ケース内に収納され前記プレートの孔を閉じる弁体と、この弁体を前記プレートに向かって付勢しているばねとからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1−4に係る発明では、ケース内には、ロッドの前進限を規定するストッパが形成されている。前進したロッドが所定の位置まで到達すると、ロッドは、ストッパに当接する。当接することにより、ロッドはさらに前進することが妨げられる。これにより、必要以上にロッドが前進することを防止することができる。不要な移動を防止することにより、ロッドが軸受に接触すること及びピストンがスリーブに接触することによる軸受及びスリーブの摩耗を抑制することができる。摩耗を抑制することにより、サーモアクチュエータの長寿命化を図ることができる。
【0019】
加えて、サーモアクチュエータがストッパを有しない場合には、ロッドが所定の量を超えて前進することがある。この場合、サーモアクチュエータによって作動するバルブも所定の量を超えて作動する。このため、サーモアクチュエータがストッパを有しない場合には、バルブを収納するバルブ室は、ロッドの過移動分を見込み大きめに設定する必要がある。
【0020】
この点、本発明によるサーモアクチュエータは、過移動が防止されている。このため、バルブ室を大きめに設定する必要がなく、熱交換デバイスを小型化することができる。
【0022】
特に、請求項
1に係る発明では、ロッドには側面から突出するロッド鍔部が形成されていると共に、ケースにはケースの中心軸に向かって突出する突起部が形成されている。ロッドが前進した際に、ロッド鍔部が突起部に接触することにより、ロッドの前進が規制される。突起部はケースの内周面に沿って形成されるため、ケース内の他の部位に比べて、周方向の断面積を大きくすることができる。周方向の断面積が大きいため、ロッド鍔部との接触面積を大きく確保することができる。ロッド鍔部との接触面積を大きくすることにより、突起部の単位面積当たりに加わる負荷を軽減し、長寿命化を図ることができる。
【0025】
請求項
2に係る発明では、サーモアクチュエータのロッドの中心軸線上には、ストッパが設けられている。前進したロッドが所定の位置まで到達すると、ロッドは、ストッパに当接する。当接することにより、ロッドはさらに前進することが妨げられる。これにより、必要以上にロッドが前進することを防止することができる。不要な移動を防止することにより、ロッドが軸受に接触すること及びピストンがスリーブに接触することによる軸受及びスリーブの摩耗を抑制することができる。摩耗を抑制することにより、サーモアクチュエータの長寿命化を図ることができる。
【0026】
加えて、サーモアクチュエータがストッパを有しない場合には、ロッドが所定の量を超えて前進することがある。この場合、サーモアクチュエータによって作動するバルブも所定の量を超えて作動する。このため、サーモアクチュエータがストッパを有しない場合には、バルブを収納するバルブ室は、ロッドの過移動分を見込み大きめに設定する必要がある。
【0027】
この点、本発明によるサーモアクチュエータは、過移動が防止されている。このため、バルブ室を大きめに設定する必要がなく、熱交換デバイスを小型化することができる。
【0028】
請求項
3に係る発明では、バルブ軸の端部、且つ、バルブ軸の軸心に対してオフセットされた部位には、ピンが設けられ、ピンの軌道上には、ストッパが設けられている。ロッドが前進することにより、バルブ軸が回転しバルブを開閉する。バルブ軸が所定の位置まで回転すると、バルブ軸の端部に設けられているピンが、ストッパに当接する。当接することにより、バルブ軸のスイングが規制され、ロッドはさらに前進することが妨げられる。これにより、必要以上にロッドが前進することを防止することができる。不要な移動を防止することにより、ロッドが軸受に接触すること及びピストンがスリーブに接触することによる軸受及びスリーブの摩耗を抑制することができる。摩耗を抑制することにより、サーモアクチュエータの長寿命化を図ることができる。
【0029】
加えて、サーモアクチュエータがストッパを有しない場合には、ロッドが所定の量を超えて前進することがある。この場合、サーモアクチュエータによって作動するバルブも所定の量を超えて作動する。このため、サーモアクチュエータがストッパを有しない場合には、バルブを収納するバルブ室は、ロッドの過移動分を見込み大きめに設定する必要がある。
【0030】
この点、本発明によるサーモアクチュエータは、過移動が防止されている。このため、バルブ室を大きめに設定する必要がなく、熱交換デバイスを小型化することができる。
【0031】
請求項
4に係る発明では、さらにワックスが膨張すると、この力によって弁体が押し下げられる。弁体が押し下げられることにより、ワックスが逃げ部ケース内に逃げる。これにより、感温部に加わり得る負荷を軽減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、説明中、前後とはロッドの進退方向を基準として前後を指す。即ち、「前」とはロッドの進出方向、「後」とはロッドの後退方向をいう。
<実施例1>
【0034】
実施例1によるサーモアクチュエータが熱交換デバイスとしての排熱回収装置に搭載された例を、図面に基づいて説明する。
【0035】
図1に示されるように、排熱回収装置10(熱交換デバイス10)は、内燃機関において発生した排気ガス(第1熱媒体)が導入される導入口11と、この導入口11に接続されている分岐部12と、この分岐部12に接続され導入口11の下流に延びている第1流路13と、この第1流路13に沿って分岐部12から延びている第2流路14と、この第2流路14の一部を形成し排気ガスの熱を媒体(第2熱媒体)に伝える熱交換器15と、この熱交換器15に接続されているサーモアクチュエータ40と、第1及び第2流路13,14の下流端が接続されているバルブ室17と、このバルブ室17に接続され排気ガスを排出する排出口18とからなる。バルブ室17は、第1又は第2流路13,14内を通過した排気ガスが合流する合流部を兼ねている。
【0036】
バルブ室17には、バルブが収納されている。サーモアクチュエータ40は、バルブのバルブ軸21にリンク機構22を介して接続されている。
【0037】
リンク機構22は、バルブ軸21に一体的に取付けられているプレート24と、このプレート24から延びているピン25と、このピン25に掛けられていると共にサーモアクチュエータ40の先端に取付けられているフック部26と、プレート24に隣接して設けられプレート24を戻し方向に付勢するリンク用リターンばね27とからなる。
【0038】
熱交換器15の側方には、媒体を導入するための媒体導入管31が接続されている。また、熱交換器15には、サーモアクチュエータ40を支持しているアクチュエータ支持部材32が接続されている。アクチュエータ支持部材32には、媒体を排出するための媒体排出管33が接続されている。
【0039】
即ち、媒体は、媒体導入管31から熱交換器15に導入される。導入された媒体は、熱交換器15内において排気ガスの熱を受け、媒体排出管33から排出される。次図においてサーモアクチュエータ40を詳細に説明する。
【0040】
図2に示されるように、サーモアクチュエータ40は、金属製のケース50と、このケース50の一端に接続されていると共に媒体の温度を感知する感温部60と、ケース50内に収納され感温部60が感知した温度によって前進(図面右方向)する棒状のアクチュエータロッド43(ピストン43)と、このアクチュエータロッド43の先端に設けられアクチュエータロッド43と共に図面左右に移動するロッド70と、このロッド70の先端の外周に設けられロッド70をガイドする樹脂製の軸受80と、ロッド70を後退する方向(図面左方向)に付勢しているリターンばね46とからなる。感温部60は、アクチュエータ支持部材(
図1、符号32)の内部に臨み、アクチュエータ支持部材の内部を流れる媒体の温度を感知する。
【0041】
ケース50には、鋼材、ステンレス、アルミニウム等の素材を用いることができる。軸受80には、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン等の素材を用いることができる。
【0042】
ケース50は、円筒状のケース基部51と、このケース基部51の先端からロッド70の中心軸CLに向かって縮径するケース段差部52と、このケース段差部52の先端から軸受80に沿ってさらに延びている小径部53とが一体的に形成されている。
【0043】
感温部60は、ケース50の一端にかしめられている連結フランジ61と、この連結フランジ61の内部に結合されているエレメントケース62と、このエレメントケース62の先端にかしめられているカバー63と、これらのカバー63及びエレメントケース62によって形成されている空間に充填されているワックス64と、このワックス64の内部に配置され可撓性に富むスリーブ65とからなる。スリーブ65の中にはグリース66が充填されている。
【0044】
サーモアクチュエータ40を排熱回収装置(
図1、符号10)に採用する場合には、感温部60はアクチュエータ支持部材(
図1、符号32)に差込まれるようにして支持される。これにより、感温部60の周りに媒体を流すことができ、感温部60は、感温部60周縁の温度を感知することができる。より具体的には、感温部60は、感温部60周縁を流れる媒体の温度を感知することができる。
【0045】
ロッド70は、アクチュエータロッド43の先端が当接しているロッド基部71と、このロッド基部71に一体的に形成され先端にフック部26が取付けられているロッド本体部72と、ロッド基部71から外周に向かって延びリターンばね46の後方の端部を受けているロッド鍔部73とからなる。
【0046】
ロッド基部71は、ロッド本体部72よりも径が大きく形成されている。このことにより、ロッド基部71には、ロッド本体部72に向かって段差部71aが形成されている。
【0047】
軸受80は、ロッド本体部72が内周面に摺接する筒状の筒部81と、この筒部81から外周に向かって延びケース段差部52に当接している抜止め部82とからなる。軸受80の後方の端部81aは、ロッド70の前進限を規定するストッパである。抜止め部82は、前方の面がケース段差部52に接触している。
【0048】
軸受80の外周に沿って、リターンばね46の前方の端部を受けると共に、リターンばね46の径方向への変位を規制するガイド部材48が配置されている。ガイド部材48の一部は、ロッド70(軸受80)の抜止め部82に沿って形成されている。このようなサーモアクチュエータ40の作用を排熱回収装置(
図1、符号10)の作用と共に次図以降において説明する。
【0049】
図3(a)に示されるように、感温部60の周縁には、熱交換器(
図1、符号15)内を流れる媒体が流される。この媒体の温度T1が低い場合には、ワックス64は収縮した状態にある。ワックス64が収縮している場合には、リターンばね46の付勢力によって、ロッド70は後退限に位置している。即ち、感温部60は、感温部60の近傍の温度を感知し、ロッド70を後退限に留まらせている。
【0050】
図3(b)に示されるように、媒体の温度が低い場合には、第1流路13は、バルブ軸21に取付けられているバルブ28によって閉じられている。
【0051】
図1に戻り、第1流路13が閉じられている場合には、導入口11から導入された排気ガスは、第2流路14へ向かって流れる。第2流路14に向かって流れる排気ガスは、熱交換器15内部を流れる媒体との間において熱交換を行う。これによって媒体が温められる。
【0052】
図4(a)に示されるように、媒体が温められることにより、ワックス64が膨張する。ワックス64が膨張すると、スリーブ65が押し潰され、アクチュエータロッド43がリターンばね46の付勢力に抗して前進する。即ち、感温部60が感知した温度によってアクチュエータロッド43が前進する。アクチュエータロッド43と共にロッド70も前進する。
【0053】
媒体の温度がT2に達した場合には、ロッド70の段差部71aが軸受80の端部81aに当接する。これによって、ロッド70が前進することを規制する。
【0054】
図4(b)に示されるように、媒体の温度がT2のとき、バルブ28は、第1流路13を開放している。このときのバルブ28の開放量は、第1流路13を排気ガスが通過するのに必要十分な量である。
【0055】
図1に戻り、第1流路13が開放されると、排気ガスは導入口11の下流に真っ直ぐ取付けられている第1流路13内を流れる。このとき、排気ガスは第2流路14へ流れないので、排気ガスと媒体との間において熱交換は行われない。
【0056】
図4(a)に戻り、ケース50内には、ロッド70の前進限を規定するストッパ(軸受80の端部81a)が形成されている。前進したロッド70が所定の位置まで到達すると、ロッド70は、軸受80の端部81aに当接する。当接することにより、ロッド70はさらに前進することが妨げられる。これにより、必要以上にロッド70が前進することを防止することができる。不要な移動を防止することにより、ロッド70が軸受80に接触することによる軸受80の摩耗、及び、アクチュエータロッド43(ピストン43)がスリーブ65に接触することによるスリーブ65の摩耗を抑制することができる。摩耗を抑制することにより、サーモアクチュエータ40の長寿命化を図ることができる。
【0057】
サーモアクチュエータ40は、ロッド70の過移動が防止されている。このため、バルブ室(
図4(b)、符号17)を大きめに設定する必要がなく、排熱回収装置(
図1、符号10)を小型化することができる。
【0058】
加えて、ロッド70には段差部71aが形成されていると共に、軸受80の端部81aによってストッパが形成されている。ロッド70が前進した際に、段差部71aが軸受80の端部81aに接触することにより、ロッド70の前進が規制される。軸受80の端部81aをロッド70のストッパとして利用するため、部品点数を増加することなくロッド70の前進限を規定することができる。
【0059】
さらに、軸受80には、外周方向に向かって延びる抜止め部82が形成され、この抜止め部82の前側の面がケース50(段差部52)に当接している。これにより、ロッド70が軸受80に接触した際に、後方から前方に向かって加わる力を抜止め部82によって受けることができる。これにより、軸受80の軸方向への変位を防止し、更に確実にロッド70の移動を規制することができる。
【0060】
図4(b)も参照して、ロッド70の前進量は、バルブ28の回転量に合わせて設定されている。即ち、バルブ28が必要十分に開いた位置でロッド70の前進が規制される。このことにより、バルブ28も所定の位置まで移動することにより止められる。
【0061】
ここで、サーモアクチュエータ40がストッパを有しない場合には、ロッド70が所定の量を超えて前進することがある。この場合、サーモアクチュエータ40によって作動するバルブ28も所定の量を超えて作動する。このため、サーモアクチュエータ40がストッパを有しない場合には、バルブ28を収納するバルブ室17は、ロッド70の過移動分を見込み大きめに設定する必要がある。
この点、本発明によるサーモアクチュエータ40は、過移動が防止されている。このため、バルブ室17を大きめに設定する必要がなく、排熱回収装置10を小型化することができる。
<実施例2>
【0062】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図5は実施例2のサーモアクチュエータの断面構成を示し、上記
図2に対応させて表している。
【0063】
図5に示されるように、実施例2によるサーモアクチュエータ40Aは、実施例1のサーモアクチュエータに比べて、ストッパ及びロッド鍔部を変更した。即ち、ロッド70Aには、ロッド70A(ロッド基部71A)の側面からリターンばね46の外周まで突出するロッド鍔部73Aが形成されている。
【0064】
また、ケース50Aには、ケース50Aの内周面からケース50Aの中心軸CLに向かって突出する突起部55Aが形成されている。この突起部55Aは、ロッド鍔部73Aに対して周方向に重なる位置まで突出している。即ち、ロッド鍔部73Aが当接可能な位置まで突起部55Aが突出しており、この突起部55Aによってストッパが形成されている。ロッド70Aが所定量前進すると、ロッド鍔部73Aが突起部55Aに接触し、ロッド70Aの前進が規制される。
【0065】
突起部55Aは、ケース50Aに一体的に形成してもよいし、別体によって形成してもよい。このようなサーモアクチュエータ40Aにおいても、ロッド70Aの不要な移動を防止することにより、ロッド70Aが軸受80に接触することによる軸受80の摩耗、及び、アクチュエータロッド43(ピストン43)がスリーブ65に接触することによるスリーブ65の摩耗を抑制することができる。
【0066】
加えて、突起部55Aはケース50Aの内周面に沿って形成されるため、ケース50A内の他の部位に比べて、周方向の断面積を大きくすることができる。周方向の断面積が大きいため、ロッド鍔部73Aとの接触面積を大きく確保することができる。ロッド鍔部73Aとの接触面積を大きくすることにより、突起部55Aの単位面積当たりに加わる負荷を軽減し、長寿命化を図ることができる。
【0067】
さらに、実施例1の場合には、軸受としての最低限の長さを確保する必要があり、この点においてストッパを形成する場所が制限される。これに比べ、突起部55Aは、軸方向において配置の自由度が高い。このため、突起部55Aの突出量をより自由に設定することができる。
<実施例3>
【0068】
次に、本発明の実施例3を図面に基づいて説明する。
図6は実施例3のサーモアクチュエータの断面構成を示し、上記
図2に対応させて表している。
【0069】
図6に示されるように、実施例3によるサーモアクチュエータ40Bは、実施例1のサーモアクチュエータに比べて、ガイド部材を変更した。
【0070】
即ち、リターンばね46の径方向への変位を規制するガイド部材48Bが、ケース50の他端から一端に向かって、リターンばね46の内周に沿って延びている。このようなガイド部材48Bと、段差部71aとは、周方向において重なっており、ガイド部材48Bの後方の端部48aによってストッパが形成されている。ロッド70が所定量前進すると、段差部71aがガイド部材48Bの端部48a(ストッパ48a)に接触し、ロッド70の前進が規制される。
【0071】
ガイド部材48Bの後方の端部48aは、軸受80の後端に沿って中心軸CLに向かって折り曲げられていることが望ましい。ロッド70がガイド部材48Bの端部48aに接触した際に、後方から前方に向かって加わる力を抜止め部82によって受けることができるからである。これにより、軸受80及びガイド部材48Bの軸方向への変位を防止し、更に確実にロッド70の移動を規制することができる。軸受80の長さがガイド部材48Bの端部48aの位置に合わせて延ばされる必要がある。即ち、ストッパを形成する位置に合わせて、ガイド部材48B及び軸受80の両方を略同じ位置まで延ばしておく。
【0072】
このようなサーモアクチュエータ40Bにおいても、ロッド70の不要な移動を防止することにより、ロッド70が軸受80に接触することによる軸受80の摩耗、及び、アクチュエータロッド43(ピストン43)がスリーブ65に接触することによるスリーブ65の摩耗を抑制することができる。
【0073】
さらに、ガイド部材48Bの端部48aをロッド70のストッパとして利用するため、部品点数を増加することなくロッド70の前進限を規定することができる。
<実施例4>
【0074】
次に、本発明の実施例4を図面に基づいて説明する。
図7は実施例4のサーモアクチュエータの断面構成を示し、上記
図2に対応させて表している。
【0075】
図7に示されるように、実施例4によるサーモアクチュエータ40Cは、実施例1のサーモアクチュエータに比べて、ケースの形状を変更した。
【0076】
即ち、ケース50Cの他端には、周方向においてロッド70に重なる位置まで折り曲げられているベンド部56Cが形成され、このベンド部56Cによってストッパが形成されている。ロッド70の先端が、ベンド部56Cに当接することにより、ロッド70は前進を規制される。
【0077】
このようなサーモアクチュエータ40Cにおいても、ロッド70の不要な移動を防止することにより、ロッド70が軸受80に接触することによる軸受80の摩耗、及び、アクチュエータロッド43(ピストン43)がスリーブ65に接触することによるスリーブ65の摩耗を抑制することができる。
【0078】
加えて、ケース50Cの端部をロッド70のストッパとして利用するため、部品点数を増加することなくロッド70の前進限を規定することができる。また、ロッド70が先端までケース50Cによって覆われているため、ロッド70を保護することができる。
<実施例5>
【0079】
次に、本発明の実施例5を図面に基づいて説明する。
図8(a)は実施例5のサーモアクチュエータの断面構成を示し、上記
図2に対応させて表している。
【0080】
図8(a)に示されるように、実施例5によるサーモアクチュエータ40Dは、実施例1のサーモアクチュエータに、ワックスの逃げ部を追加した。
【0081】
即ち、感温部60には、ロッド70が前進限に位置している場合に、さらに膨張するワックス64を逃がすための逃げ部90が取付けられている。
【0082】
逃げ部90は、感温部60(エレメントケース62)に接続され孔91aが開けられているプレート91と、このプレート91に接続されている逃げ部ケース92と、この逃げ部ケース92内に収納されプレート91の孔91aを閉じる弁体100と、この弁体100をプレート91に向かって付勢しているばね94とからなる。即ち、プレート91は弁座であり、逃げ部ケース92は弁箱である。
【0083】
弁体100は、外周にシール101が取り付けられている円盤形状の弁基部102と、この弁基部102に一体的に形成さればね94の内周に延びているガイド部104とからなる。
【0084】
逃げ部90のばね94のばね定数は、ケース50内のリターンばね46のばね定数よりも大きい。このことと、プレート91の孔91aの径が小さいことにより、弁体100よりも先にロッド70が変位する。
【0085】
図8(b)に示されるように、温度が上昇しワックス64が膨張すると、まずロッド70が前進する。ロッド70は、所定の量だけ前進すると軸受80の端部81aによって前進を規制される。
【0086】
図8(c)に示されるように、さらにワックス64が膨張すると、この力によって弁体100が押し下げられる。弁体100が押し下げられることにより、ワックス64が逃げ部ケース92内に逃げる。これにより、感温部60に加わり得る負荷を軽減することができる。
<実施例6>
【0087】
次に、実施例6による排熱回収装置を図面に基づいて説明する。
図9は実施例6の排熱回収装置の側面構成を示している。
図1と共通の構成要素については、符号を流用し、詳細な説明を省略する。
【0088】
図9に示されるように、排熱回収装置110は、バルブ室17の側方からロッド70の中心軸CL上に第2のピン111(ストッパ111)を伸ばしている。
【0089】
フック部26が第2のピン111に当接することにより、ロッド70の前進を規制することができる。このような排熱回収装置110においても、本発明所定の効果を得ることができる。特に、第2のピン111がロッド70の中心軸CL上に配置されていることにより、ロッド70に曲げモーメントを発生させずに、ロッド70の前進を規制することができる。
<実施例7>
【0090】
次に、実施例7による排熱回収装置を図面に基づいて説明する。
図10は実施例7の排熱回収装置の側面構成を示し、
図9に対応させて表している。
【0091】
図10に示されるように、排熱回収装置120は、プレート24に一体的に第3のピン121(当接片121)が立てられていると共に、バルブ室17の側方から第3のピン121の軌道上にバー122(ストッパ122)を延ばしている。
【0092】
ロッド70が前進することにより、プレート24が回転する。プレート24と共に第3のピン121が回転する。ロッド70が所定の量だけ前進し、第3のピン121が所定の量だけ回転すると、第3のピン121はバー122に当接する。これにより、第3のピン121の回転が規制され、ロッド70の前進が規制される。このような排熱回収装置120においても、本発明所定の効果を得ることができる。
<実施例8>
【0093】
次に、実施例8による排熱回収装置を図面に基づいて説明する。
図11は実施例8の排熱回収装置の断面構成を示し、
図3(b)に対応させて表している。
【0094】
図11に示されるように、排熱回収装置130のバルブ28には、ストッパ131が取り付けられている。ストッパ131は、バルブ28が所定量スイングすることによりバルブ室17の内壁17aに当接する。これにより、バルブ28はスイングを規制される。このような排熱回収装置130においても、本発明所定の効果を得ることができる。
<実施例9>
【0095】
次に、実施例9による排熱回収装置を図面に基づいて説明する。
図12は実施例9の排熱回収装置の断面構成を示し、
図11に対応させて表している。
【0096】
図12に示されるように、排熱回収装置140のバルブ室17の内壁17aには、バルブ28の軌道上に、ストッパ141が設けられている。バルブ28は、所定量スイングすることにより、ストッパ141に当接する。これにより、バルブ28はスイングを規制される。このような排熱回収装置140においても、本発明所定の効果を得ることができる。
【0097】
尚、本発明のサーモアクチュエータは、実施の形態では排熱回収装置に適用したが、EGR(Exhaust Gas Recirculation)クーラやコージェネレーションシステム、熱電発電装置への適用も可能であり、排熱回収装置以外の熱交換デバイスにも搭載可能である。
【0098】
また、サーモアクチュエータは、ワックスの膨張によってロッドが前進するスリーブ式の他、ダイヤフラムの変位によってロッドが前進するダイヤフラム式にも採用することができる。サーモアクチュエータの形式としては、これらのものに限られない。
【0099】
さらに、必要に応じて各実施例間において、構成を組み合わせることもできる。例えば、ガイド部材の端部をストッパとする発明に、逃げ部を追加することができる。組み合わせの例は、これに限られない。