特許第6145912号(P6145912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6145912-開扉補助機構付ラッチ装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6145912
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】開扉補助機構付ラッチ装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/02 20060101AFI20170607BHJP
   E05B 15/10 20060101ALI20170607BHJP
   E05B 65/06 20060101ALI20170607BHJP
   E05C 1/16 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   E06B7/02
   E05B15/10 B
   E05B65/06 C
   E05C1/16 B
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2010-243523(P2010-243523)
(22)【出願日】2010年10月29日
(65)【公開番号】特開2012-97404(P2012-97404A)
(43)【公開日】2012年5月24日
【審査請求日】2013年10月29日
【審判番号】不服2015-20754(P2015-20754/J1)
【審判請求日】2015年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】390037028
【氏名又は名称】美和ロック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078097
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 岳雄
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 勇一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 拓磨
【合議体】
【審判長】 前川 慎喜
【審判官】 赤木 啓二
【審判官】 住田 秀弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−127044(JP,A)
【文献】 特開平11−6348(JP,A)
【文献】 特開2000−110429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
E05C 1/00-21/02
E05F 1/00-13/04
E06B 7/00-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠箱内に反転ラッチ機構と開扉補助杆とを設け、上記反転ラッチ機構を、少なくとも錠箱のフロント板から突出する部分の水平投影形状が平行四辺形の一部をなし、その対角線の交点を中心とする鉛直な第1回動軸の周りを回動可能に支承されたラッチヘッドと、中央部を錠箱の側板に垂直な第2回動軸の周りを回動自在に支承され、一端にラッチヘッドと係合する支持端を形成し、第2回動軸に関し支持端と反対側の他端に操作端を形成した係止レバーとで構成し、一方、上記開扉補助杆を、錠箱のフロント板に垂直な前後方向に移動可能に案内され、斜面を形成した前端部を扉枠側に設けられた鉛直なローラに係合可能に臨ませたものとし、他方、上記係止レバーの内端部と開扉補助杆の内端部との間に、錠箱の側板に平行な平面内を回動可能に支承されたカム体を設け、このカム体に、開扉補助杆の内端部を押しばねを介して押動可能な第1作動部と、係止レバーの操作端と係合して係止レバーを押動する第2作動部とを併設すると共に、カム体の回動軸を通る異形孔に作動軸を通し、この作動軸にレバーハンドル又はノブを一体的に装着したことを特徴とする開扉補助機構付ラッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、開扉補助機構付ラッチ装置(以下単にラッチ装置という)に係り、特に、簡単な構造で室内外の気圧差を解消して扉を円滑に開くことができるラッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気密性の高いマンションやビル等においては、室内における空調機や換気扇の運転によって室内外に気圧差が生じ、通常は室内側が陰圧になることから、開扉するとき大きな力が必要となり、或いは扉の開放が困難になる。
【0003】
上記した内外気圧差による扉開放の困難性を克服するため、後記特許文献1、2に記載された回避補助機構は、扉内にその自由側端縁に垂直な方向に移動可能に案内されたラッチボルト様の開扉補助杆を設け、その先端に形成された斜面を扉枠側に設けたローラに弾圧させることにより、斜面とローラとの間に生じる楔作用を利用して扉を強制的に少し開け、その隙間から空気を室内に流入させることにより室内外の気圧差を解消するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4034216号公報
【特許文献2】特開2005−127044
【特許文献3】特許第2641098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した構成の開扉補助機構は、開扉補助杆の操作時扉のデッドボルトやラッチボルトが予め扉枠のストライク孔から抜去されていなければならないので、必然的にラッチボルトやデッドボルトを操作するハンドルやノブの他に、開扉補助杆用の操作部材を独立に設ける必要がある。
【0006】
すると、ラッチ装置などの構成が複雑になり見栄えが悪くなるばかりでなく、操作が煩雑となり、先に開扉補助杆用の操作部材を操作した場合には開扉補助機構が作動しなくなる、等未だ改良の余地がある。
【0007】
そこで、この発明は、ハンドルやノブの操作のみで開扉補助機構を作動させることができる開扉補助機構付ラッチ装置を提供し、以て上記した種々の不都合を解消することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、錠箱内に反転ラッチ機構と開扉補助杆とを設け、上記反転ラッチ機構を、少なくとも錠箱のフロント板から突出する部分の水平投影形状が平行四辺形の一部をなし、その対角線の交点を中心とする鉛直な第1回動軸の周りを回動可能に支承されたラッチヘッドと、中央部を錠箱の側板に垂直な第2回動軸の周りを回動自在に支承され、一端にラッチヘッドと係合する支持端を形成し、第2回動軸に関し支持端と反対側の他端に操作端を形成した係止レバーとで構成し、一方、上記開扉補助杆を、錠箱のフロント板に垂直な前後方向に移動可能に案内され、斜面を形成した前端部を扉枠側に設けられた鉛直なローラに係合可能に臨ませたものとし、他方、上記係止レバーの内端部と開扉補助杆の内端部との間に、錠箱の側板に平行な平面内を回動可能に支承されたカム体を設け、このカム体に、開扉補助杆の内端部を押しばねを介して押動可能な第1作動部と、係止レバーの操作端と係合して係止レバーを押動する第2作動部とを併設すると共に、カム体の回動軸を通る異形孔に作動軸を通し、この作動軸にレバーハンドル又はノブを一体的に装着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成されたこの発明によるラッチ装置は、開扉時、ノブやハンドルを握ってカム体を回すと、その第2作動部が係止レバーを回動させてラッチヘッドを自由にする一方、第1作動部が押しばねを介して開扉補助杆をフロント板から突出させ、その前端の斜面が扉枠側のローラと係合して扉を少し開ける。
【0010】
したがって、従来の開扉補助装置のようにまずデッドボルトやラッチボルトをストライク孔から抜去し、次いで開扉補助杆用の操作部材を操作するという2動作をカム体の1動作で済ますことができる、という所期の効果を奏する。
【0011】
また、開扉補助杆を押しばねを介して押動するようにしたので、反転ラッチの解放のタイミングと、開扉補助杆の作動タイミングがずれても機構に無理な力が掛らない、等種々の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明によるラッチ装置の一部断面側面図で、待機時を示す。
図2図1のII−II線による断面図。
図3】本発明によるラッチ装置の一部断面側面図で、開扉のためハンドルを少し回した状態を示す。
図4図3のIV−IV線による断面図。
図5】本発明によるラッチ装置の一部断面側面図で、開扉のためハンドルを一杯に回した状態を示す。
図6図5のVI−VI線による断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
錠箱内に反転ラッチ機構と開扉補助杆とこれらを制御するカム体を設け、開扉時、カム体の一動作により開扉補助杆と反転ラッチの両方の作動を制御するようにし、ハンドルやノブの一動作によりこれらをタイミング良く操作できるようにした。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して説明する。
図1において符号1は錠箱を示し、この錠箱1内には全体を符号2で示す反転ラッチ機構と、同じく全体を符号3で示す開扉補助杆が設けられている。
【0015】
上記反転ラッチ機構2は周知であるから、前記特許文献3を参照して簡単に説明すると、ラッチ機構2は、特許文献の第2図に示すように、少なくとも錠箱のフロント板から突出する部分の水平投影形状が平行四辺形の一部をなすラッチヘッド(1)を有する。
【0016】
なお、括弧を付した符号、或いは括弧内の符号は、特許文献3の図面の符号を示す(以下同じ)。
【0017】
そして、同図に示すように、ラッチヘッド(1)は、平行四辺形の対角線の交点を中心とする鉛直な第1回動軸(5:本願明細書に添付した図1では符号4)の周りを回動自在に支承されている。
【0018】
上記のように構成された所謂反転ラッチ機構のラッチヘッド2aは、特許文献3の第2図及び第3図に示すように、斜面(1a、1b)が扉の回動するにつれストライク孔の開口端縁との係合の態様が変わり、係止面と斜面とが入れ替わる。
【0019】
本願明細書に添付した図1に戻って、この図面において符号5、5はそれぞれ係止レバーを示し、図1における一対の係止レバー5、5は、夫々その中央部を錠箱の側板に垂直な第2回動軸6の周りを回動自在に支承されている。
【0020】
また、上記係止レバー5、5は連動機構7によって相互に連携され、係止レバー5、5の中間にある図示しない水平面に関し面対称に回動する。
【0021】
更にまた、各係止レバー5の前端部(図1で左端部)のラッチヘッド2a側の隅部は支持端8が割り当てられている。
【0022】
加えて、上記係止レバー5、5はねじりコイルばね9の弾力により、上記一通の支持端8、8が相互に近接する方向に付勢されている。
【0023】
また、各係止レバー5の第2回動軸6に関し支持端8と反対側の端部は操作端11となっている。
【0024】
そして、図1に示す待機時、すなわち、閉扉時にはこれらの操作端11、11はカム体12の付番しない平面部に当接しており、この状態では、一対の係止レバー5、5の支持端8、8が相互に近接する方向に付勢され、これらが夫々ラッチヘッド2aの側面に形成された図示しない溝に係合して、ラッチヘッド2aの第1回動軸周りの角度位置を保つ。
【0025】
一方、図2図4及び図6に示すように、図示の実施例における開扉補助杆3は中空の枠体であり、錠箱の側面及び付番しない案内機構により、フロント板14に垂直な前後方向(図で左右方向)に移動可能に案内されている。
【0026】
そして、図2に示すよう、傾斜面15を形成した前端部を扉枠16側に設けられた鉛直なローラ17に係合可能に臨ませている。
【0027】
他方、図1に示すように、係止レバー15の内端部と開扉補助杆3の内端部との間に前記カム体12が設けられている。
【0028】
図示の実施例におけるカム体12は、錠箱の側面に対する投影が側面の一部を弦によって切欠いた厚板ブロック下方にアーム状の第1作動部18を一体に接続した形状である。
【0029】
この第1作動部18は、図5に示すようにカム体12が時計方向に回動したとき、図2及び図6に示すように、圧縮コイルばね19を介して開扉補助杆3を前方に押し出す。
【0030】
また、図1に示すカム体の平面部と円周面との接続部が係止レバーの操作端11を制御する第2作動部となっている。
【0031】
更にまた、図1に示すように、カム体12にはその中心軸に沿って異形孔21(図示の実施例では方形孔)が形成されており、この異形孔21を通る図示しない操作軸の一端部及び/又は両端には、図示しないレバーハンドル、或いはノブが装着される。なお、図2において符号Dは扉を示す。
【0032】
上記のように構成されたこの発明によるラッチ装置は、図1及び図2に示す閉扉状態からハンドル又はノブを操作してカム体12を開扉方向(図で時計方向)に回動させると、図3及び図4に示すように、開扉補助杆の傾斜面15がローラ17に当接する以前に、カム体12が少し時計方向に回動する。
【0033】
そのため、係止レバーの上方の操作端11がカム体の平面部から離間する一方、下方の操作端11がカム体12の平面部と円周部の接続部によって上方に押し上げられ、一対の係止レバーレバー5、5は、連動して、前端部が少し拡開する。
【0034】
つまり、この時点において係止レバーの支持端8との図示しない係止溝との係合が解け、ラッチヘッド2aが自由になる。
【0035】
更にハンドル又はノブを操作してカム体12を時計方向に一杯に回動させると、図5及び図6に示すように、開扉補助杆13の傾斜面15がローラ17に乗り上がるので、ローラ17が開扉補助杆13に及ぼす反力により扉Dが少し開き(図4参照)、その隙間から空気が室内に流入して気圧差が解消され、以後軽く扉が開く。
【0036】
なお、扉が開放方向に付勢された後5との係合を解くことにすると、ラッチヘッド2aと係止レバーの支持端8との間に抉りが生じるので、ラッチヘッドの解放後に扉を開放方向に付勢する図示の実施例の方が好ましい。
【符号の説明】
【0037】
1 錠箱
2 ラッチ機構
3 開扉補助杆
4 第1回動軸
5 係止レバー
6 第2回動軸
7 連動機構
8 支持端
9 ねじりコイルばね
11 操作端
12 カム体
14 フロント板
15 傾斜面
16 扉枠
17 ローラ
18 第1作動部
19 圧縮コイルばね
21 異形孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6