(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6145955
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】飲食用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20170607BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20170607BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L33/10
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-252109(P2016-252109)
(22)【出願日】2016年12月26日
【審査請求日】2017年1月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏哉
(72)【発明者】
【氏名】鍔田 仁人
(72)【発明者】
【氏名】北村 整一
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
【審査官】
平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−000070(JP,A)
【文献】
特開2005−350483(JP,A)
【文献】
特開2001−321123(JP,A)
【文献】
特開2003−334046(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/40− 5/49
A23L 31/00−33/29
A61K 36/00−36/9068
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カンゾウ属処理物、(B)不発酵茶粉砕末と、(C)大麦茎葉処理物及び(D)難消化性デキストリンから選ばれる少なくとも1種とを含有することを特徴とする飲食用組成物。
【請求項2】
(A)カンゾウ属処理物、(B)不発酵茶粉砕末、(C)大麦茎葉処理物及び(D)難消化性デキストリンを含有することを特徴とする飲食用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食用組成物、及び、カンゾウ属処理物の呈味改善用組成物、に関する。
【背景技術】
【0002】
カンゾウ属(Glycyrrhiza)植物は、マメ科の多年草で、中国北部、ロシア南部、中央アジア、地中海地方などの乾燥地帯に主に自生する。例えば、中国北部などに自生するウラルカンゾウ(G.uralensis)、地中海地方などに広く自生するスペインカンゾウ(G.glabra)などが広く知られている。
【0003】
東洋医学(漢方)の分野では、古くから、カンゾウ属処理物を生薬「甘草」として重用されている。甘草の水溶性エキスなどには、抗潰瘍作用、抗アレルギー作用、鎮咳作用、抗癌作用、抗ウイルス作用及び抗菌作用等の様々な薬理活性があることが知られている。
【0004】
また、カンゾウの水性抽出物は高甘味度甘味料として用いられることが、カンゾウ油性抽出物は酸化防止剤として使用されることが知られている(非特許文献1)。しかしながら、カンゾウには独特の臭いや風味があるものの、これらを改善する具体的な研究はなされていなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】食品衛生学雑誌、Vol.56, 2015, No.5, p.217-227
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、カンゾウ属処理物を含有する飲食用組成物において、その独特の臭いや風味を改善することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願人は、上記課題を鑑みて鋭意検討を行った結果、茶処理物と、大麦茎葉処理物及び水溶性食物繊維から選ばれる少なくとも1種を使用することで、優れたカンゾウ属処理物の呈味改善効果を有することを見出し、本発明に至った。
【0008】
また、本出願人は、カンゾウ属処理物、茶処理物と、大麦茎葉処理物及び水溶性食物繊維から選ばれる少なくとも1種を使用することにより、優れた抗老化作用を有することを見出し、本発明に至った。
【0009】
本発明の概要は、以下の通りである。
<1>(A)カンゾウ属処理物、(B)茶処理物と、(C)大麦茎葉処理物及び(D)水溶性食物繊維から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする飲食用組成物。
<2>(A)カンゾウ属処理物、(B)茶処理物、(C)大麦茎葉処理物及び(D)水溶性食物繊維を含有することを特徴とする飲食用組成物。
<3>(B)茶処理物と、(C)大麦茎葉処理物及び(D)水溶性食物繊維から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする、カンゾウ属処理物の呈味改善用組成物。
<4>(B)茶処理物、(C)大麦茎葉処理物及び(D)水溶性食物繊維を含有することを特徴とする、カンゾウ属処理物の呈味改善用組成物。
<5>(A)カンゾウ属処理物、(B)茶処理物と、(C)大麦茎葉処理物及び(D)水溶性食物繊維から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする抗老化用組成物。
<6>(A)カンゾウ属処理物、(B)茶処理物、(C)大麦茎葉処理物及び(D)水溶性食物繊維を含有することを特徴とする抗老化用組成物。
<7>(A)カンゾウ属処理物が、カンゾウエキス末、及びカンゾウ粉砕末から選ばれる1種以上であることを特徴とする、<1>〜<6>のいずれかに記載の組成物。
<8>(B)茶処理物が不発酵茶処理物であることを特徴とする、<1>〜<7>のいずれかに記載の組成物。
<9>(D)水溶性食物繊維が難消化性デキストリンであることを特徴とする、<1>〜<8>のいずれかに記載の飲食用組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカンゾウ属処理物を含有する飲食用組成物は、茶処理物と、大麦茎葉処理物及び水溶性食物繊維から選ばれる少なくとも1種を配合することにより、その苦味、渋み、舌触り、粉っぽさ、コク、味の濃さ、口当たり、のどごし、後味が良好となるため、嗜好性の高い飲食用組成物を得ることができる。また、本発明のカンゾウ属処理物を、茶処理物と大麦茎葉処理物及び水溶性食物繊維から選ばれる少なくとも1種とを配合することにより、角化細胞(ケラチノサイト)における炎症抑制作用が向上するため、皮膚における光老化を抑制することができ、抗老化作用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】比較例1〜4、実施例1〜10の官能評価結果を表す図である。
【
図2】比較例5〜8、実施例11〜20の官能評価結果を表す図である。
【
図3】比較例9〜12、実施例21〜30の官能評価結果を表す図である。
【
図4】比較例13、実施例31〜33のヒト表皮角化細胞を用いた評価結果を表す図である。
【
図5】比較例14、実施例34〜36のヒト表皮角化細胞を用いた評価結果を表す図である。
【
図6】比較例15、実施例37〜39のヒト表皮角化細胞を用いた評価結果を表す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の組成物について説明する。なお、本発明は、下記の実施の形態に限定されるものではない。
【0013】
(A)カンゾウ属処理物
カンゾウ属(Glycyrrhiza)は、マメ科の多年草で、中国北部、ロシア南部、中央アジア、地中海地方などの乾燥地帯に主に自生する。本発明においては、Glycyrrhiza acanthocarpa、G.aspera、G.astragalina、G.bucharica、G.echinata(ロシアカンゾウ)、G.eglandulosa、G.foetida、G.foetidissima、G.glabra(スペインカンゾウ)、G.gontscharovii、G.iconica、G.korshinskyi、G.lepidota(アメリカカンゾウ)、G.pallidiflora、G.squamulosa、G.triphylla、G.uralensis(ウラルカンゾウ)、G.yunnanensis、G.inflata(新疆カンゾウ)等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明で使用されるカンゾウ属処理物は、植物体の根及び/又は根茎を適宜加工して使用することができる。加工形態としては、例えば、乾燥粉末、粉砕物及びその乾燥粉末(以下、粉砕物の乾燥粉末のことを「粉砕末」ともいう)、細片化物及びその乾燥粉末(以下、細片化物の乾燥粉末のことを「細片化末」ともいう)、搾汁及びその乾燥粉末(以下、搾汁の乾燥粉末のことを「搾汁末」ともいう)、エキス(抽出物)及びその乾燥粉末(以下、エキスの乾燥粉末のことを「エキス末」ともいう)などが挙げられる。なお、本願明細書で「粉末」と言う場合は、乾燥粉末、粉砕末、細片化末、搾汁末、エキス末を含むものである。本発明においては、市販品を使用してもよく、また当該分野で公知の方法で製造したものを使用することもできる。
【0014】
カンゾウ属処理物のエキスを得る場合、その抽出溶媒は特に限定はされないが、例えば、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなど)、アセトン、酢酸エチルなどが挙げらる。また、その乾燥粉末を得る場合は、例えば減圧乾燥や噴霧乾燥等、当業者が通常用いる方法によりエキスの溶媒を除去することで得ることができる。なお、本発明においては、カンゾウ属処理物の水抽出物を「水性エキス末」とも言い、有機溶媒抽出物を「油性エキス末」とも言う。
【0015】
本発明においては、カンゾウ属処理物の乾燥粉末、粉砕末、搾汁、搾汁末、エキス、エキス末を用いることが好ましく、加工性や安定性の観点から、粉砕末又はエキス末を用いることがより好ましい。
【0016】
カンゾウ属処理物は、高甘味度甘味料や酸化防止剤、漢方として使用されるが、少量でも独特の臭いや苦味、渋味、えぐ味等を感じやすいため、そのままでは摂取しにくい。そのため、カンゾウ属処理物を用いる場合は嗜好性の改善が必要である。
【0017】
本発明の組成物に配合されるカンゾウ属処理物の含有量としては、特に制限はなく、目的や形状、使用対象等の様々な条件に応じて、広範囲でその含有量を適宜設定できる。例えば、0.001〜30質量%、好ましくは0.005〜20質量%、より好ましくは0.01〜10質量%の範囲で選択される。本発明において使用するカンゾウ属処理物は、1種のみを使用しても良いし、2種以上を用いることもできる。但し、カンゾウ属処理物を2種以上含有する場合は、その総量である。
【0018】
(B)茶処理物
本発明で使用される茶処理物は、ツバキ科チャノキ属チャノキ(Camellia sinensis)の葉、すなわち茶葉を由来とするものである。例えば、不発酵茶(緑茶)や、紅茶、白茶、黄茶、青茶(烏龍茶)、黒茶等の発酵茶が挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。不発酵茶としては緑茶が挙げられ、例えば、抹茶、碾茶、煎茶、かぶせ茶、番茶、茎茶、粉茶等がある。
【0019】
本発明で用いる茶処理物は、茶葉の乾燥粉末、粉砕物、粉砕末、細片化物、細片化末、搾汁、搾汁末、エキス、エキス末などが挙げられる。茶葉のエキスを得る場合、その抽出溶媒は特に限定はされないが、例えば、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなど)、アセトンなどの溶媒が挙げられ、好ましくは、水および/またはエタノールなどを使用することができる。また、その乾燥粉末を得る場合は、例えば減圧乾燥や噴霧乾燥等、当業者が通常用いる方法によりエキスの溶媒を除去することで得ることができる。
【0020】
本発明においては、加工性や安定性の観点から、茶処理物の粉末が好ましく使用され、特に、エキス末、粉砕末を用いることが好ましい。また、本発明においては、不発酵茶を用いることが好ましく、不発酵茶のエキス末、粉砕末が特に好ましく、抹茶、碾茶、煎茶、粉茶がとりわけ好ましい。
【0021】
本発明の組成物に配合される茶処理物の含有量としては、特に制限はなく、目的や形状、使用対象等の様々な条件に応じて、広範囲でその含有量を適宜設定できる。例えば、0.0001〜40質量%、好ましくは0.0005〜30質量%、より好ましくは0.001〜20質量%の範囲で選択される。本発明においては、市販品を使用してもよく、また当該分野で公知の方法で製造したものを使用することもできる。本発明において使用する茶処理物は、1種のみを使用しても良いし、2種以上を用いることもできる。但し、茶処理物を2種以上含有する場合は、その総量である。
【0022】
(C)大麦茎葉処理物
本発明で用いられる大麦茎葉とは、大麦(学名 Hordeum vulgare)から得られる茎及び/又は葉のことを言う。使用できる大麦としては、二条大麦、六条大麦、裸大麦などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。大麦の茎葉は、成熟期前、すなわち、分けつ開始期から出穂前に収穫されたものであることが好ましい。
【0023】
本発明で用いられる大麦茎葉処理物は、大麦茎葉から得られる各種の加工物のことを言う。そのような加工物としては、乾燥粉末、粉砕物、粉砕末、細片化物、細片化末、搾汁、搾汁末、エキス(抽出物)及びエキス末などが挙げられる。大麦茎葉のエキスを得る場合、その抽出溶媒は特に限定はされないが、例えば、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなど)、アセトンなどの溶媒が挙げられ、好ましくは、水および/またはエタノールなどを使用することができる。また、その乾燥粉末を得る場合は、例えば減圧乾燥や噴霧乾燥等、当業者が通常用いる方法によりエキスの溶媒を除去することで得ることができる。
【0024】
本発明においては、加工性や安定性の点から、大麦茎葉の粉末が好ましく使用され、特に、粉砕末又は搾汁末を用いることが好ましい。本発明においては、市販品を使用してもよく、また当該分野で公知の方法で製造したものを使用することもできる。
【0025】
本発明の組成物に配合される大麦茎葉処理物の含有量としては、特に制限はなく、目的や形状、使用対象等の様々な条件に応じて、広範囲でその含有量を適宜設定できる。例えば、1〜70質量%、好ましくは5〜60質量%、より好ましくは10〜50質量%の範囲で選択される。本発明において大麦茎葉処理物を使用する場合は、1種のみを使用しても良いし、2種以上を用いることもできる。但し、大麦茎葉処理物を2種以上含有する場合は、その総量である。
【0026】
(D)水溶性食物繊維
本発明で用いられる水溶性食物繊維とは、人間の消化酵素では消化されない食品中の多糖類を主体とした高分子成分の総体のうち水溶性のものをいう。水溶性食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、グアーガム又はその分解物、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、ラミナリン、フコイジン、カラギーナンなどを用いることができる。本発明においては、カンゾウ属処理物の風味改善や角化細胞における炎症抑制効果の点から、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、グアーガム又はその分解物が好ましく用いられ、難消化性デキストリン、グアーガム又はその分解物をより好ましく用いることができる。本発明においては、市販品を使用してもよく、また当該分野で公知の方法で製造したものを使用することもできる。
【0027】
本発明の組成物に配合される水溶性食物繊維の含有量としては、特に制限はなく、目的や形状、使用対象等の様々な条件に応じて、広範囲でその含有量を適宜設定できる。例えば、本発明の組成物における水溶性食物繊維の含有量は、0.0001〜50質量%、好ましくは0.0005〜40質量%、より好ましくは0.001〜30質量%の範囲で選択される。本発明において水溶性食物繊維を使用する場合は、1種のみを使用しても良いし、2種以上を用いることもできる。但し、水溶性食物繊維を2種以上含有する場合は、その総量である。
【0028】
本発明の組成物における、(A)カンゾウ属処理物と、(B)茶処理物、(C)大麦茎葉、(D)水溶性食物繊維の配合比(質量比)は特に限定されず、目的や使用対象等の条件に応じて適宜設定できるが、例えば(A):(B)+(C)+(D)=1:0.0001〜10000、好ましくは1:0.001〜1000、より好ましくは1:0.01〜100の範囲で選択される。
【0029】
本発明の組成物における、(A)カンゾウ属処理物と(B)茶処理物の配合比(質量比)は特に限定されず、目的や使用対象等の条件に応じて適宜設定できるが、例えば(A):(B)=1:0.0001〜500、好ましくは1:0.0005〜100、より好ましくは1:0.001〜10の範囲で選択される。
【0030】
本発明の組成物における、(A)カンゾウ属処理物と(C)大麦茎葉処理物の配合比(質量比)は特に限定されず、目的や使用対象等の条件に応じて適宜設定できるが、例えば(A):(C)=1:0.0001〜1000、好ましくは1:0.001〜500、より好ましくは1:0.01〜100の範囲で選択される。
【0031】
本発明の組成物における、(A)カンゾウ属処理物と(D)水溶性食物繊維の配合比(質量比)は特に限定されず、目的や使用対象等の条件に応じて適宜設定できるが、例えば(A):(D)=1:0.0001〜1000、好ましくは1:0.001〜500、より好ましくは1:0.01〜100の範囲で選択される。
【0032】
本発明の組成物には、(A)カンゾウ属処理物、(B)茶処理物、(C)大麦茎葉処理物、(D)水溶性食物繊維以外に、その他の成分を含有しても良い。前記のその他の成分としては、例えば、タンパク質、水溶性食物繊維以外の食物繊維、ミネラル類、植物又は植物加工品、藻類、乳酸菌等の微生物等を配合することができる。更に必要に応じて通常食品分野で用いられる、デキストリン、でんぷん等の糖類、オリゴ糖類、甘味料、酸味料、着色料、増粘剤、光沢剤、賦形剤、ビタミン類、栄養補助剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、乳化剤、食品添加物、調味料等を挙げることができる。これらその他の成分の含有量は、本発明の組成物の形態等に応じて適宜選択することができる。
【0033】
本発明の組成物の形態は特に限定されず、任意の形態とすることができる。具体的な形態としては、例えば、粉や顆粒、細粒等の粉末状、タブレット(チュアブル)状、球状、カプセル状、カプレット状、液状等の形状が挙げられる。尚、カプセル状の組成物は、ソフトカプセル及びハードカプセルが含まれる。本発明の組成物は、粉や顆粒、細粒等の粉末状が好ましく、特に、水などと混合し、溶解したり懸濁させたりして使用する粉末飲料とすることにより、組成物としての安定性にも優れるとともに、カプセルや錠剤等と異なり1度に多くの組成物を摂取することができるので好ましい。
【0034】
本発明の組成物は、従来公知の方法により製造することができる。本発明の組成物を製造する際、使用する原料の形態は特に限定されず、組成物の形態に合わせて適宜選択し、使用することができる。例えば、粉や顆粒、細粒等の粉末状の組成物を得る場合、(A)カンゾウ属処理物、(B)茶処理物、(C)大麦茎葉処理物及び(D)水溶性食物繊維は、これらをそのまま使用しても良いし、賦形剤、増量剤等との混合物を使用しても良い。また、カプセル状の組成物を得る場合は、水や食用油等の溶媒にあらかじめ溶解又は分散させたものを使用しても良い。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
[飲食用組成物の官能評価]
1.飲食用組成物の製造
以下の表1〜3に示す配合を有する飲食用組成物を調製した。表1〜3のうち、数値は質量(g)を表わす。カンゾウ属処理物としては、市販のカンゾウ油性エキス末(実施例1〜10、比較例1〜4)、市販のカンゾウ粉砕末(実施例11〜20、比較例5〜8)、市販のカンゾウ水性エキス末(実施例21〜30、比較例9〜12)を用い、茶処理物としては抹茶(株式会社東洋新薬製)を用い、大麦茎葉処理物としては大麦茎葉の粉砕末(株式会社東洋新薬製)を用い、水溶性食物繊維としては市販の難消化性デキストリンを用い、デキストリンは市販のものを用いた。尚、デキストリンは賦形剤として用いたものであり、本評価に関与しない成分である。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
2.官能評価
(1)サンプルの調製
上記表1〜3に記載の比較例1〜12及び実施例1〜30のサンプルについて、各サンプル5.5gを、水150mLと混合して各試験サンプルを得た。
【0041】
(2)サンプルの評価
被験者として、健常な成人6名を無作為に選出した。これらの被験者6名に対し、下記表4の評価項目について、アンケートを実施し、官能評価を行った。具体的には、例えば、実施例1〜10、比較例1〜4の評価は比較例2を基準(5点)として他のサンプルを比較し、それぞれ1〜9点の点数をつけた。同様に、実施例11〜20、比較例5〜8の評価は比較例6を基準とし、実施例21〜30、比較例9〜12の評価は比較例10を基準としてそれぞれ比較を行い、点数をつけた。
【0042】
【表4】
【0043】
各サンプルについて、被験者の点数の平均点を算出し、使用したカンゾウ属処理物毎に基準としたサンプル(比較例2,6,10)との差を算出した。結果を
図1〜3のグラフに示す。
【0044】
(3)考察
賦形剤であるデキストリンを除く成分(カンゾウ油性エキス末、カンゾウ粉砕末、カンゾウ水性エキス末、抹茶、大麦茎葉の粉砕末、難消化性デキストリン)を用いた場合について、嗜好性の評価結果を考察した。
【0045】
図1は、カンゾウ属処理物としてカンゾウ油性エキス末を使用した場合の結果を示すものである。
図1に示すように、カンゾウ油性エキス末のみを含有する比較例1は、カンゾウ油性エキス末と抹茶を含有する比較例2と比べて、いずれの項目も低い値であった。また、カンゾウ油性エキス末に大麦茎葉の粉砕末、難消化性デキストリンのいずれかを組み合わせた比較例3、4は、比較例1と比べると改善は見られるものの、比較例2と同程度であった。一方、カンゾウ油性エキス末、抹茶と、大麦茎葉の粉砕末又は難消化性デキストリンのうち少なくとも1種を含有する実施例1〜9は、比較例1や比較例2〜4の組成物と比較して、いずれの項目も優れたものであった。特に、臭いの改善がなされるのみでなく、苦味、渋み、舌触り、粉っぽさ、味の濃さ、のどごし、後味で高い評価となり、嗜好性に優れた組成物が得られることがわかった。さらに、カンゾウ油性エキス末、抹茶、大麦茎葉の粉砕物及び難消化性デキストリンを配合した実施例10は、比較例1及び比較例2〜4と比較して、全ての項目でさらに高い評価であり、実施例1〜9と比較しても全ての項目で高い評価であった。これら4成分を配合することで、より一層嗜好性に優れた組成物が得られることがわかった。
【0046】
図2は、カンゾウ属処理物としてカンゾウ粉砕末を使用した場合の結果を示すものである。
図2に示すように、カンゾウ粉砕末のみを含有する比較例5は、カンゾウ粉砕末と抹茶を含有する比較例6と比べて、いずれの項目も低い値であった。また、カンゾウ粉砕末に大麦茎葉の粉砕末、難消化性デキストリンのいずれかを組み合わせた比較例7、8は、比較例5と比べると改善は見られるものの、比較例6と同程度であった。一方、カンゾウ粉砕末、抹茶と、大麦茎葉の粉砕末又は難消化性デキストリンのうち少なくとも1種を含有する実施例11〜19は、比較例5や比較例6〜8の組成物と比較して、いずれの項目も優れたものであった。特に、臭いの改善がなされるのみでなく、舌触り、コク、味の濃さ、のどごし、後味で高い評価となり、嗜好性に優れた組成物が得られることがわかった。さらに、カンゾウ粉砕末、抹茶、大麦茎葉の粉砕物及び難消化性デキストリンを配合した実施例20は、比較例5及び比較例6〜8と比較して、全ての項目でさらに高い評価であり、実施例11〜19と比較しても全ての項目で高い評価であった。これら4成分を配合することで、より一層嗜好性に優れた組成物が得られることがわかった。
【0047】
図3は、カンゾウ属処理物としてカンゾウ水性エキス末を使用した場合の結果を示すものである。
図3に示すように、カンゾウ水性エキス末のみを含有する比較例9は、カンゾウ水性エキス末と抹茶を含有する比較例10と比べて、いずれの項目も低い値であった。また、カンゾウ水性エキス末に大麦茎葉の粉砕末、難消化性デキストリンのいずれかを組み合わせた比較例11、12は、比較例9と比べると改善は見られるものの、比較例10と同程度であった。一方、カンゾウ水性エキス末、抹茶と、大麦茎葉の粉砕末又は難消化性デキストリンのうち少なくとも1種を含有する実施例21〜29は、比較例9や比較例10〜12の組成物と比較して、いずれの項目も優れたものであった。特に、臭いの改善がなされるのみでなく、苦味、渋み粉っぽさで高い評価となり、嗜好性に優れた組成物が得られることがわかった。さらに、カンゾウ水性エキス末、抹茶、大麦茎葉の粉砕物及び難消化性デキストリンを配合した実施例30は、比較例9及び比較例10〜12と比較して、全ての項目でさらに高い評価であり、実施例21〜29と比較しても全ての項目で高い評価であった。これら4成分を配合することで、より一層嗜好性に優れた組成物が得られることがわかった。
【0048】
以上の結果より、(A)カンゾウ属処理物を単独で用いた組成物(組成物I)は、カンゾウ属処理物独特の臭いや味を有し、単独では嗜好性が悪いものであった。(A)カンゾウ属処理物と、(B)茶処理物、(C)大麦茎葉処理物、(D)水溶性食物繊維のうち1種を含有する組成物(組成物II)は、組成物Iと比較すると、カンゾウ属処理物独特の臭いや味について改善は見られたものの、十分とは言えないものであった。一方、(A)カンゾウ属処理物、(B)茶処理物と、(C)大麦茎葉処理物又は(D)水溶性食物繊維のうち1種を含有する本発明の組成物(組成物III)は、組成物IやIIと比較して、カンゾウ属処理物独特の臭いや味を効果的に改善することができ、嗜好性に優れた組成物となることがわかった。さらに、(A)カンゾウ属処理物、(B)茶処理物、(C)大麦茎葉処理物及び(D)水溶性食物繊維を含有する本発明の組成物(組成物IV)は、組成物IIIと比較して、より一層嗜好性に優れた組成物となることがわかった。
【0049】
[ケラチノサイトにおける抗老化作用の評価]
ヒト表皮角化細胞(HaCaT)を用いて本願発明の飲食用組成物の有効性を評価した。
【0050】
カンゾウ属処理物としては、市販のカンゾウ油性エキス末、カンゾウ粉砕末、カンゾウ水性エキス末のいずれかを用い、茶処理物としては抹茶(株式会社東洋新薬製)を用い、大麦茎葉処理物としては大麦若葉粉砕末(株式会社東洋新薬製)を用い、水溶性食物繊維としては市販の難消化性デキストリンを用いた。
【0051】
(1)37℃、5%CO
2インキュベーター(アステック社製)内で、75cm
2フラスコ(AGCテクノグラス社製)を用いて、HaCaTを10%FBS(JBS社製)-DMEM(Sigma社製)により培養した。
(2)トリプシン(Sigma社製)処理により浮遊させた細胞を、75cm
2フラスコから96well plateの各wellに1.0×10
5cells/mLの細胞密度で100μLずつ播種した。
(3)37℃、5%CO
2インキュベーター内で24時間前培養した。
(4)カンゾウ油性エキス末は10mgを0.1mLのDMSO(和光純薬社製)に溶解したのち、0.9mLの10%FBS-DMEMまたはDPBSを加えて10mg/mLのカンゾウ油性エキス末溶液を作製した。
(5)カンゾウ水性エキス末、カンゾウ粉砕末は0.9mLの10%FBS-DMEMまたはDPBSに溶解、懸濁したのち、0.1mLのDMSOを加えて10mg/mLのそれぞれの溶液を作製した。
(6)その他のサンプルは10%FBS-DMEMまたはDPBSに溶解、懸濁して10mg/mLのそれぞれの溶液を作製した。
(7)下記の表5のようにそれぞれを混合し、2000μg/mLのサンプル含有培地またはDPBSを作製し、さらにこれを10倍、100倍希釈して200、20μg/mLのサンプル含有培地またはDPBSを作製した。なお、表5の数値は配合量(質量%)を示す。
【0052】
【表5】
【0053】
(8)各wellより培地を除去後、DPBSを50μLと所定濃度に調製したサンプル含有DPBSを50μLずつ添加し、終濃度を1000、100、10μg/mLとした。
(9)96well plateの蓋をはずし、UVB(Philips社製)を20mJ/cm
2照射した(980mW/cm
2、20秒)。
(10)DPBSあるいは被験物質含有DPBSを除去後、10%FBS-DMEMを50μLとサンプル含有培地を50μL添加し、終濃度を1000、100、10μg/mLとして、37℃、5%CO
2インキュベーター内で18時間培養した。
(11)DPBSにて一回洗浄した後、無血清DMEM培地にて30倍希釈したCell Counting Kit-8(同仁化学社製)を150μL/well添加した。37℃、5% CO
2インキュベーター内に静置し適度に発色させた後、450nmにおける吸光度を測定した。
(12)(11)で得られた吸光度データを基にコントロールに対する各サンプルの吸光度(% of control)を算出した(式1)。
[式1]
(13)使用したカンゾウ属処理物毎に、各比較例を1とした場合の各実施例の相対値を算出した。具体的には、実施例31〜33は比較例13を1とした場合の相対値、実施例34〜36は比較例14を1とした場合の相対値、実施例37〜39は比較例15を1とした場合の相対値である。数値は大きいほどケラチノサイトにおける炎症抑制作用が優れていることを示す。結果を
図4〜6に示す。
【0054】
図4〜6より、カンゾウ油性エキス末、カンゾウ粉砕末、カンゾウ水性エキス末末のいずれかと抹茶とを含有する組成物(比較例13〜15)と比較して、カンゾウ属処理物、抹茶と、大麦茎葉の粉砕末又は難消化性デキストリンのいずれかを含有する実施例31,32,34,35,37及び38は1.1倍以上と高い数値を示した。特に、カンゾウ属処理物、抹茶、大麦茎葉の粉砕末及び難消化性デキストリンを含有する実施例33,36及び39は比較例13〜15と比べて1.2倍以上と高い値を示した。
【0055】
以上より、本発明の組成物は、カンゾウ属処理物、茶処理物と大麦茎葉処理物、水溶性食物繊維のいずれかを使用することにより、カンゾウ属処理物、茶処理物のみを含有する組成物と比較してケラチノサイトにおける炎症抑制作用を高めることができるため、抗老化作用を高める効果を有することが確認された。さらに、カンゾウ属処理物、抹茶、大麦茎葉の粉砕末及び難消化性デキストリンの4成分を含有することにより、より一層抗老化作用を高める効果を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、茶処理物と、大麦茎葉処理物及び水溶性食物繊維から選ばれる少なくとも1種を含有することにより、カンゾウ属処理物の呈味を改善することができるため、嗜好性の高い飲食用組成物を提供することができる。また、本発明によれば、カンゾウ属処理物、茶処理物と、大麦茎葉処理物及び水溶性食物繊維から選ばれる少なくとも1種を含有することにより、角化細胞(ケラチノサイト)における炎症抑制作用が向上するため、皮膚における光老化を抑制することができるため、抗老化用組成物を提供することができる。
【要約】
【課題】
カンゾウ属処理物、茶処理物と、大麦茎葉処理物及び水溶性食物繊維から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする飲食用組成物を提供することを目的とする。また、茶処理物と、大麦茎葉処理物及び水溶性食物繊維から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする、カンゾウ属処理物の呈味改善用組成物を提供することを目的とする。また、カンゾウ属処理物、茶処理物と、大麦茎葉処理物及び水溶性食物繊維から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする抗老化用組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
(A)カンゾウ属処理物、(B)茶処理物と、(C)大麦茎葉処理物及び(D)水溶性食物繊維から選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする飲食用組成物。
【選択図】
なし