特許第6146004号(P6146004)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6146004
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】D/A変換回路
(51)【国際特許分類】
   H03M 1/76 20060101AFI20170607BHJP
   H01L 27/10 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   H03M1/76
   H01L27/10 451
【請求項の数】11
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2012-275016(P2012-275016)
(22)【出願日】2012年12月17日
(65)【公開番号】特開2014-120946(P2014-120946A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111763
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100163832
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 直哉
(72)【発明者】
【氏名】浅野 正通
【審査官】 緒方 寿彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−526269(JP,A)
【文献】 特開昭58−133031(JP,A)
【文献】 特開2009−187631(JP,A)
【文献】 特開2005−295226(JP,A)
【文献】 特開2011−155222(JP,A)
【文献】 特開2004−272975(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0076550(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 1/76
H01L 27/10
H01L 27/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された複数の抵抗変化型素子と、
読み出し電圧を発生する電源または書き込み電圧を発生する電源の一方を選択して前記直列接続された複数の抵抗変化型素子の両端に接続する電源スイッチ手段と、
前記直列接続された複数の抵抗変化型素子の各々の両端を選択的に短絡する短絡手段と
前記短絡手段により書き込み対象である抵抗変化型素子以外の各抵抗変化型素子の両端を短絡し、前記電源スイッチ手段により前記書き込み電圧を発生する電源を選択して前記直列接続された複数の抵抗変化型素子の両端に接続し、書き込み対象であるデータに対応した極性の書き込み電圧を前記書き込み対象である抵抗変化型素子の両端に印加するデータ書き込み制御と、前記電源スイッチ手段により前記読み出し電圧を発生する電源を選択して前記直列接続された複数の抵抗変化型素子の両端に接続し、またはこれに加えて前記短絡手段により前記直列接続された複数の抵抗変化型素子における1または複数の抵抗変化型素子の両端を短絡するデータ読み出し制御を行う制御手段と
を具備することを特徴とするD/A変換回路。
【請求項2】
前記抵抗変化型素子は、磁気トンネル接合素子または電界誘起巨大抵抗変化の発生する抵抗素子であることを特徴とする請求項1に記載のD/A変換回路。
【請求項3】
前記制御手段は、各種のデジタル信号値に対応付けて前記直列接続された複数の抵抗変化型素子の抵抗の高/低、短絡の有無を定義したテーブルを具備し、前記データ書き込み制御において前記テーブルに基づいて前記書き込み対象とする抵抗変化型素子と当該抵抗変化型素子についての前記書き込み対象であるデータを決定し、前記データ読み出し制御において前記テーブルに基づいて前記短絡手段により短絡する抵抗変化型素子を決定することを特徴とする請求項1または2に記載のD/A変換回路。
【請求項4】
前記制御手段は、変換対象とするデジタル信号値を所定方向に順次変化させつつ、前記データ書き込み制御と前記データ読み出し制御を交互に繰り返し、前記データ書き込み制御では、前記複数の抵抗変化型素子のうち、直前のデータ読み出し制御において短絡し、かつ、今回のデータ書き込み制御において抵抗値の高/低の設定を行う抵抗変化型素子と、前回のデータ書き込み制御と今回のデータ書き込み制御とで設定する抵抗値の高/低が異なる抵抗変化型素子を選択し、この選択した抵抗変化型素子についてのみ前記書き込み電圧の印加を行うことを特徴とする請求項3に記載のD/A変換回路。
【請求項5】
前記制御手段は、前記複数の抵抗変化型素子の全部または一部である複数の抵抗変化型素子を書き込み対象とし、前記複数の抵抗変化型素子における書き込み対象でない抵抗変化型素子の両端を短絡し、前記直列接続された複数の抵抗変化型素子の両端に書き込み電圧を印加することにより前記書き込み対象に対するデータ書き込みを一括して行うことを特徴とする請求項1または2に記載のD/A変換回路。
【請求項6】
直列接続された複数の抵抗変化型素子と、
読み出し電圧を発生する電源を選択して前記直列接続された複数の抵抗変化型素子の両端に接続し、または書き込み電圧を発生する電源を選択して前記直列接続された複数の抵抗変化型素子のうち任意のものの両端に接続する電源スイッチ手段と、
前記直列接続された複数の抵抗変化型素子の各々の両端を選択的に短絡する短絡手段と、
前記短絡手段により書き込み対象である抵抗変化型素子以外の各抵抗変化型素子の両端を短絡し、前記電源スイッチ手段により前記書き込み電圧を発生する電源を前記書き込み対象である抵抗変化型素子の両端に接続し、前記書き込み対象である抵抗変化型素子に書き込み対象であるデータに対応した極性の書き込み電圧を印加するデータ書き込み制御と、前記電源スイッチ手段により前記読み出し電圧を発生する電源を選択して前記直列接続された複数の抵抗変化型素子の両端に接続し、またはこれに加えて前記短絡手段により前記直列接続された複数の抵抗変化型素子における1または複数の抵抗変化型素子の両端を短絡するデータ読み出し制御を行う制御手段と
を具備することを特徴とするD/A変換回路。
【請求項7】
前記抵抗変化型素子は、磁気トンネル接合素子または電界誘起巨大抵抗変化の発生する抵抗素子であることを特徴とする請求項6に記載のD/A変換回路。
【請求項8】
前記制御手段は、各種のデジタル信号値に対応付けて前記直列接続された複数の抵抗変化型素子の抵抗の高/低、短絡の有無を定義したテーブルを具備し、前記データ書き込み制御において前記テーブルに基づいて前記書き込み対象とする抵抗変化型素子と当該抵抗変化型素子についての前記書き込み対象であるデータを決定し、前記データ読み出し制御において前記テーブルに基づいて前記短絡手段により短絡する抵抗変化型素子を決定することを特徴とする請求項6または7に記載のD/A変換回路。
【請求項9】
前記制御手段は、変換対象とするデジタル信号値を所定方向に順次変化させつつ、前記データ書き込み制御と前記データ読み出し制御を交互に繰り返し、前記データ書き込み制御では、前記複数の抵抗変化型素子のうち、直前のデータ読み出し制御において短絡し、かつ、今回のデータ書き込み制御において抵抗値の高/低の設定を行う抵抗変化型素子と、前回のデータ書き込み制御と今回のデータ書き込み制御とで設定する抵抗値の高/低が異なる抵抗変化型素子を選択し、この選択した抵抗変化型素子についてのみ前記書き込み電圧の印加を行うことを特徴とする請求項8に記載のD/A変換回路。
【請求項10】
前記制御手段は、前記複数の抵抗変化型素子の全部または一部である複数の抵抗変化型素子を書き込み対象とし、前記複数の抵抗変化型素子における書き込み対象でない抵抗変化型素子の両端を短絡し、前記直列接続された複数の抵抗変化型素子の両端に書き込み電圧を印加することにより前記書き込み対象に対するデータ書き込みを一括して行うことを特徴とする請求項6または7に記載のD/A変換回路。
【請求項11】
各々トランジスタのソースまたはドレインとなる複数の拡散領域と、これら複数の拡散領域の各間を各々横切る複数のゲート電極とにより構成された、直列接続された複数のトランジスタと、
前記複数のトランジスタの各々に並列接続され、かつ、互いに直列接続された複数の抵抗変化型素子を含む回路であって、
前記複数の拡散領域の上方において前記ゲート電極に沿って延びる複数の第1メタル層配線と、
前記複数のゲート電極の延在方向における第1の位置において、前記複数のゲート電極のうちの奇数番目の各ゲート電極を跨ぎ、各ゲート電極の両側の2本の第1メタル層配線と各々重なるものと、前記複数のゲート電極の延在方向における第2の位置において、前記複数のゲート電極のうちの偶数番目の各ゲート電極を跨ぎ、各ゲート電極の両側の2本の第1メタル層配線と各々重なるものとからなる複数の第2メタル層配線とを有し、
前記複数の拡散領域における偶数番目の拡散領域では、前記第1の位置における第1メタル層配線と第2メタル層配線との重複箇所に前記抵抗変化型素子が介挿されるとともに、前記第2の位置における第1メタル層配線と第2メタル層配線との重複箇所において第2メタル層配線、第1メタル層配線および拡散領域が接続され、奇数番目の拡散領域では、前記第2の位置における第1メタル層配線と第2メタル層配線との重複箇所に前記抵抗変化型素子が介挿されるとともに、前記第1の位置における第1メタル層配線と第2メタル層配線との重複箇所において第2メタル層配線、第1メタル層配線および活性領域が接続された回路を含み、
前記複数のトランジスタのON/OFF制御および前記直列接続された複数の抵抗変化型素子に与える電圧の制御により前記複数の抵抗変化型素子の抵抗値の高/低の設定および短絡の有無の設定を行うことを特徴とするD/A変換回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、抵抗変化型素子を利用したD/A変換回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図21は、従来の出力可変型レギュレータの構成を示す回路図である。図21において、分圧回路200は、オペアンプ100の出力信号Voutをオペアンプ100のマイナス入力端子に帰還する回路である。この分圧回路200は、オペアンプ100の帰還率をデジタル信号に応じて変化させるD/A変換回路として機能する。オペアンプ100のプラス入力端子には基準電圧VREFが与えられる。
【0003】
図21に示すように、分圧回路200は、オペアンプ100の出力端子と基準電源との間に直列に介挿された複数の固定抵抗Raと、この複数の固定抵抗Raにおける隣り合った抵抗間の各ノードNk(k=0〜n)とオペアンプ100のマイナス入力端子との間に各々介挿された選択トランジスタSWk(k=0〜n)とを有している。ここで、選択トランジスタSWk(k=0〜n)の各ゲートには選択信号SIGk(k=0〜n)が供給される。
【0004】
この出力可変レギュレータでは、選択信号SIGk(k=0〜n)のいずれか1つである選択信号SIGkがHレベルとされ、この選択信号SIGkに対応した選択トランジスタSWkがONになると、この選択トランジスタSWkを介してノードNkの電圧がオペアンプ100のマイナス入力端子に帰還される。そして、出力可変型レギュレータでは、このように分圧回路200を介してマイナス入力端子に帰還される電圧が基準電圧VREFとなるように、オペアンプ100の出力電圧Voutの負帰還制御が行われる。
【0005】
ここで、分圧回路200の帰還量は、ノードNk(k=0〜n)のうち選択トランジスタSWk(k=0〜n)により選択されるノードの位置により定まる。従って、選択信号SIGk(k=0〜n)を変化させることにより分圧回路200の帰還量を変化させ、オペアンプ100の出力電圧Voutを調整することが可能である。この出力可変型レギュレータは、高精度に出力電圧を調整することができるため、微調整用のトリミングにも良く用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−187631号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ISSCC Digest of Technical Papers,pp.258、Feb.2010.
【非特許文献2】非特許文献 電子情報通信学会 信学技報ICICE Technical Report ICD2010−7 p35〜p40
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図21の分圧回路200では、固定抵抗Raを抵抗値のばらつきの少ないポリシリコン等により構成する。そして、分圧回路200により高精度のD/A変換を行うためには、この固定抵抗Raを多数使用する必要があり、これらの固有抵抗Raの所要面積が非常に大きくなる問題がある。例えば、図21において、VP=7V、VREF=2.0V、出力電圧を5.0Vに設定する場合には、抵抗値10KΩの固有抵抗を50個用いて、3:2の比、すなわち、50個の固有抵抗Raを30個と20個に分割するノードを選択すれば、Vout=5.0VのときにVIN=2.0Vとなり、Voutが5.0Vに設定される。そして、出力電圧Voutの微妙な調整が可能である。すなわち、VINとしてフィードバックするノードを図21において例えば固有抵抗1個分だけ上にずらすと、分割点の上側の抵抗個数は29、下側の抵抗個数は21となるので、VINがVREFと同じ2.0VになるVoutは、Vout=2.0V×(29+21)/21=4.76Vとなる。以上のように、多くの固定抵抗を使用すると、出力電圧VOUTを高精度に調整することができる。しかし、50個もの多くの固有抵抗を使用すると、その所要面積が大きくなる問題がある。
【0009】
固有抵抗の所要面積を大きくすることができない場合には、D/A変換の精度を犠牲にせざるを得ない。図22は、この発明の実施形態との対比を容易にするため、図21の構成におけるnを6とした場合について、固有抵抗間の各ノードN0〜N6における分圧比を示したものである。また、図23図22に示す各分圧比を昇順に並べ、それらの各分圧比にデジタル信号値1〜7を割り当ててグラフ化したものである。この例のように、n=6の場合、7種類の分圧比が実現され、分解能は7となる。このように従来のA/D変換回路は、抵抗の数が少ないとD/A変換の精度が低くなり、高精度でのD/A変換を行うためには多数の固有抵抗を使用する必要があり、そのための所要面積が嵩むという問題があった。
【0010】
この発明は以上説明した事情に鑑みてなされたものであり、高精度で面積の小さなD/A変換回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、直列接続された複数の抵抗変化型素子と、前記直列接続された複数の抵抗変化型素子の両端と電源との間に介挿された電源スイッチ手段と、前記直列接続された複数の抵抗変化型素子の各々の両端を選択的に短絡する短絡手段とを具備することを特徴とするD/A変換回路を提供する。
【0012】
この発明によれば、直列接続された複数の抵抗変化型素子に対し、電源スイッチを介して電源から電圧を与え、かつ、短絡手段により所望の抵抗変化型素子以外のものの両端を短絡することにより、所望の抵抗変化型素子の抵抗値の高/低を任意に設定することができる。従って、複数の抵抗変化型素子の抵抗値の高/低、短絡の有無を任意に設定し、この複数の抵抗変化型素子により多彩なアナログ信号を発生することができる。従って、この発明によれば、小さい面積で高精度のD/A変換回路を実現することができる。
【0013】
好ましい態様において、前記電源スイッチ手段は、読み出し電圧を発生する電源または書き込み電圧を発生する電源の一方を選択して前記直列接続された複数の抵抗変化型素子の両端に接続する。
【0014】
他の好ましい態様において、前記電源スイッチ手段は、読み出し電圧を発生する電源を選択して前記直列接続された複数の抵抗変化型素子の両端に接続し、または書き込み電圧を発生する電源を選択して前記直列接続された複数の抵抗変化型素子のうち任意のものの両端に接続する。
【0015】
これらの態様は、任意の抵抗変化型素子に所望の書き込み電圧を印加する動作と、直列接続された複数の抵抗変化型素子の両端に読み出し電圧を印加する動作が可能である。
【0016】
他の好ましい態様において、D/A変換回路は、前記短絡手段、前記電源スイッチ手段および前記書き込み電圧を発生する電源を制御する制御手段を具備し、前記制御手段は、前記短絡手段により書き込み対象である抵抗変化型素子以外の各抵抗変化型素子の両端を短絡し、前記電源スイッチ手段により前記書き込み電圧を発生する電源を選択して前記直列接続された複数の抵抗変化型素子の両端に接続し、書き込み対象であるデータに対応した極性の書き込み電圧を前記書き込み対象である抵抗変化型素子の両端に印加するデータ書き込み制御を行う。
【0017】
この態様によれば、所望の抵抗変化型素子に所望の極性の書き込み電圧を印加することができるので、複数の抵抗変化型素子の抵抗値の高/低の組み合わせの種類を多数にすることができる。
【0018】
他の好ましい態様において、前記制御手段は、前記電源スイッチ手段により前記読み出し電圧を発生する電源を選択して前記直列接続された複数の抵抗変化型素子の両端に接続し、またはこれに加えて前記短絡手段により前記直列接続された複数の抵抗変化型素子における1または複数の抵抗変化型素子の両端を短絡するデータ読み出し制御を行う。
【0019】
この態様によれば、複数の抵抗変化型素子の抵抗値の高/低の組み合わせの種類を多数にすることに加えて、各抵抗変化型素子の短絡の有無も任意に設定することができるので、複数の抵抗変化型素子の状態の組み合わせを飛躍的に増加させることができる。
【0020】
好ましい態様において、前記制御手段は、各種のデジタル信号値に対応付けて前記直列接続された複数の抵抗変化型素子の抵抗の高/低、短絡の有無を定義したテーブルを具備し、前記データ書き込み制御において前記テーブルに基づいて前記書き込み対象とする抵抗変化型素子と当該抵抗変化型素子についての前記書き込み対象であるデータを決定し、前記データ読み出し制御において前記テーブルに基づいて前記短絡手段により短絡する抵抗変化型素子を決定する。
【0021】
この態様によれば、所望のデジタル値に応じて、複数の抵抗変化型素子の抵抗の高/低、短絡の有無を適切に設定することができる。
【0022】
好ましい態様において、前記制御手段は、変換対象とするデジタル信号値を所定方向に順次変化させつつ、前記データ書き込み制御と前記データ読み出し制御を交互に繰り返し、前記データ書き込み制御では、前記複数の抵抗変化型素子のうち、直前のデータ読み出し制御において短絡し、かつ、今回のデータ書き込み制御において抵抗値の高/低の設定を行う抵抗変化型素子と、前回のデータ書き込み制御と今回のデータ書き込み制御とで設定する抵抗値の高/低が異なる抵抗変化型素子を選択し、この選択した抵抗変化型素子についてのみ前記書き込み電圧の印加を行う。
【0023】
この態様によれば、データ書き込み制御の対象となる抵抗変化型素子の数を減らすことができるので、D/A変換の所要時間を短くすることができる。
【0024】
他の好ましい態様において、前記制御手段は、前記複数の抵抗変化型素子の全部または一部である複数の抵抗変化型素子を書き込み対象とし、前記複数の抵抗変化型素子における書き込み対象でない抵抗変化型素子の両端を短絡し、前記直列接続された複数の抵抗変化型素子の両端に書き込み電圧を印加することにより前記書き込み対象に対するデータ書き込みを一括して行う。
【0025】
この態様によれば、抵抗変化型素子に対するデータ書き込みの所要時間を減らし、D/A変換の所要時間を減らすことができる。
【0026】
好ましい態様において、D/A変換回路は、各々トランジスタのソースまたはドレインとなる複数の拡散領域と、これら複数の拡散領域の各間を各々横切る複数のゲート電極とにより構成された、直列接続された複数のトランジスタと、前記複数のトランジスタの各々に並列接続され、かつ、互いに直列接続された複数の抵抗変化型素子を含む回路であって、前記複数の拡散領域の上方において前記ゲート電極に沿って延びる複数の第1メタル層配線と、前記複数のゲート電極の延在方向における第1の位置において、前記複数のゲート電極のうちの奇数番目の各ゲート電極を跨ぎ、各ゲート電極の両側の2本の第1メタル層配線と各々重なるものと、前記複数のゲート電極の延在方向における第2の位置において、前記複数のゲート電極のうちの偶数番目の各ゲート電極を跨ぎ、各ゲート電極の両側の2本の第1メタル層配線と各々重なるものとからなる複数の第2メタル層配線とを有し、前記複数の拡散領域における偶数番目の拡散領域では、前記第1の位置における第1メタル層配線と第2メタル層配線との重複箇所に前記抵抗変化型素子が介挿されるとともに、前記第2の位置における第1メタル層配線と第2メタル層配線との重複箇所において第2メタル層配線、第1メタル層配線および拡散領域が接続され、奇数番目の拡散領域では、前記第2の位置における第1メタル層配線と第2メタル層配線との重複箇所に前記抵抗変化型素子が介挿されるとともに、前記第1の位置における第1メタル層配線と第2メタル層配線との重複箇所において第2メタル層配線、第1メタル層配線および活性領域が接続された回路を含み、前記複数のトランジスタのON/OFF制御および前記直列接続された複数の抵抗変化型素子に与える電圧の制御により前記複数の抵抗変化型素子の抵抗値の高/低の設定および短絡の有無の設定を行う。
【0027】
この態様によれば、複数のトランジスタの隣り合う2つのトランジスタ間でソースまたはドレインとなる拡散領域を共用することができ、かつ、複数の抵抗変化型素子を複数の拡散領域に1個ずつ配置し、しかも、その配置位置を第1の位置、第2の位置、第1の位置、〜という具合に交互に変化させることができる。従って、小さなスペースに複数のトランジスタと複数の抵抗変化型素子をレイアウトすることができ、高精度で小面積のD/A変換回路を実現することができる。
【0028】
以上の諸態様において、前記抵抗変化型素子は、磁気トンネル接合素子であってもよく、電界誘起巨大抵抗変化の発生する抵抗素子であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】この発明の第1実施形態であるD/A変換回路を構成を示す回路図である。
図2】同実施形態において用いるMTJ素子の構成および動作を説明する図である。
図3】同MTJ素子を用いたメモリセルのレイアウト例を示す断面図である。
図4】同MTJ素子を用いたメモリセルの動作条件を示す図である。
図5】同D/A変換回路の動作を示すタイムチャートである。
図6】比較例であるD/A変換回路の動作を示す図である。
図7】同D/A変換回路のデジタル信号値と分圧比の関係を例示する図である。
図8】同実施形態の動作を示す図である。
図9】同実施形態の動作を示す図である。
図10】同実施形態の動作を示す図である。
図11】同実施形態の動作を示す図である。
図12】同実施形態によるD/A変換回路のデジタル信号値と分圧比の関係を示す図である。
図13】この発明の第2実施形態であるD/A変換回路を含むA/D変換回路の構成を示す回路図である。
図14】同D/A変換回路の動作を示すタイムチャートである。
図15】同D/A変換回路の一括書き込みの動作を示すタイムチャートである。
図16】この発明の第3実施形態であるD/A変換回路を含むA/D変換回路の構成を示す回路図である。
図17】この発明の第4実施形態であるD/A変換回路の分圧回路のレイアウト例を示す平面図である。
図18図17のA−A’線断面図である。
図19図17のB−B’線断面図である。
図20図17のC−C’線断面図である。
図21】従来のD/A変換回路を用いた電圧可変コンバータの構成を示す回路図である。
図22】同D/A変換回路の動作を示す図である。
図23】同D/A変換回路のデジタル信号値と分圧比の関係を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。以下説明する各実施形態において、トランジスタは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor;金属−酸化膜−半導体構造の電界効果トランジスタ)である。
【0031】
<第1実施形態>
図1はこの発明の第1実施形態であるD/A変換回路の構成を示す回路図である。図1に示すように、本実施形態によるD/A変換回路は、分圧回路301と制御回路302とを有する。
【0032】
分圧回路301は、変換対象であるデジタル信号に応じた分圧比で電源VDDおよびVSS間の電圧を分圧することによりアナログ電圧VOUTを出力する回路である。本実施形態の特徴は、この分圧回路301により実現される分圧比の種類の多さにある。多彩な分圧比での分圧が可能な分圧回路301は、高い分解能でのD/A変換を可能にする。
【0033】
この分圧回路301において、抵抗変化型素子Rk(k=0〜7)は直列接続されている。この直列接続された抵抗変化型素子Rk(k=0〜7)の両端は、読み出しトランジスタSG0およびSG1を各々介して高電位電源VDDおよび低電位電源VSSに各々接続されている。ここで、読み出しトランジスタSG0およびSG1の各ゲートには選択信号SEL0およびSEL1が各々与えられる。
【0034】
短絡用トランジスタTk(k=0〜7)は、抵抗変化型素子Rk(k=0〜7)の各々の両端間を短絡するためのトランジスタである。これらの短絡用トランジスタTk(k=0〜7)の各ゲートには、短絡指示信号PASk(k=0〜7)が各々与えられる。
【0035】
読み出しトランジスタSG0および抵抗変化型素子R0間のノードN0と、抵抗変化型素子RkおよびRk+1間のノードNk+1(k=0〜6)と、抵抗変化型素子R7および読み出しトランジスタSG1間のノードN8には、書き込みトランジスタSWk(k=0〜8)のドレインが各々接続されている。これらの書き込みトランジスタSWk(k=0〜8)は、抵抗変化型素子Rk(k=0〜7)の各抵抗値の高/低の設定のために設けられたトランジスタであり、各々のゲートには選択信号SIGk(k=0〜8)が各々与えられる。そして、書き込みトランジスタSW0、SW2、SW4、SW6およびSW8の各ソースは、書き込み電圧VDLを発生する電源に接続されている。また、書き込みトランジスタSW1、SW3、SW5およびSW7の各ソースは、書き込み電圧VSLを発生する電源に接続されている。そして、分圧回路301において、ノードN4がアナログ電圧出力ノードとなっている。
【0036】
以上の分圧回路301において、D/A変換の動作では、読み出しトランジスタSG0およびSG1はON、書き込みトランジスタSWk(k=0〜8)はOFFとされる。そして、抵抗変化型素子Rk(k=0〜7)のうち任意のものの両端を短絡トランジスタTk(k=0〜7)により短絡することができる。従って、この分圧回路301では、アナログ電圧出力ノードN4および電源VDD間の抵抗値とアナログ電圧出力ノードN4および電源VSS間の抵抗値の組み合わせを多彩に変化させることができ、多彩な分圧比を実現することができる。
【0037】
さらに本実施形態では、分圧回路301を構成するための抵抗素子として、固定抵抗ではなく、抵抗変化型素子Rk(k=0〜7)を使用している。この抵抗変化型素子は、ある方向に電流を流すことにより高抵抗とし、その逆方向に電流を流すことにより低抵抗とすることができる素子である。そして、本実施形態による分圧回路301では、抵抗変化型素子Rk(k=0〜7)の任意のものを選択し、所望の方向の電流を流すための手段として、読み出しトランジスタSG0、SG1、短絡用トランジスタTk(k=0〜7)に加えて、書き込みトランジスタSWk(k=0〜8)が設けられている。従って、本実施形態における分圧回路301では、固定抵抗を使用する場合に比べて、著しく多くの種類の分圧比を実現し、D/A変換の分解能を飛躍的に向上させることができる。ここに本実施形態の最大の特徴がある。
【0038】
本実施形態において、抵抗変化型素子Rk(k=0〜7)の任意のものを選択して、所望の方向の電流を流すための制御は次の通りである。例えば抵抗変化型素子R2に電流を流す場合、短絡用トランジスタT2をOFF、短絡用トランジスタT0、T1、T3〜T7をONとし、抵抗変化型素子R2以外の抵抗変化型素子R0、R1、R3〜R7の両端を短絡する。また、読み出しトランジスタSG0およびSG1をOFFとして、電源VDDおよびVSSから抵抗変化型素子Rk(k=0〜7)を切り離す。そして、抵抗変化型素子R2の両端に接続された書き込みトランジスタSW2およびSW3のみをONとし、他の書き込みトランジスタSW0、SW1、SW4〜SW8をOFFとする。これにより抵抗変化型素子R2のみが書き込み電圧VDLおよびVSLを発生する各電源に接続された状態となる。この状態において、書き込みトランジスタSW2およびSW3を介して所望の極性の書き込み電圧VDL−VSLを抵抗変化型素子R2に印加するのである。これにより抵抗変化型素子R2の抵抗値の高/低の設定を行うことができる。抵抗変化型素子R2以外の抵抗変化型素子R0、R1、R3〜R7についても同様な方法により抵抗値の高/低の設定が可能である。
【0039】
次に分圧回路301を構成する抵抗変化型素子の具体例について説明する。本実施形態における抵抗変化型素子Rk(k=0〜7)は例えばMTJ(Magnetic Tunnel Junction;磁気トンネル接合)素子である。図2(a)および(b)は、このMTJ素子の構成と動作を示す図である。図2(a)および(b)に示すように、MTJ素子は、磁気の方向が一定のピン層と、トンネルバリア膜と、磁気の方向が変化するフリー層とからなる。図2(a)に示すように、フリー層からピン層に向かう方向の電流を流すと、フリー層の磁化方向がピン層と同一となり、MTJ素子は低抵抗となり、データ“0”を記憶した状態となる。逆に、図2(b)に示すように、ピン層からフリー層に向かう方向の電流を流すと、フリー層の磁化方向がピン層と反対になり、MTJ素子は高抵抗となり、データ“1”を記憶した状態になる。
【0040】
このMTJ素子は、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory;磁気抵抗RAM)等の不揮発性メモリのメモリセルに利用される(特許文献1、非特許文献1参照)。MTJ素子によりメモリセルを構成する場合には、図2(a)および(b)に例示するように、MTJ素子を選択するためのスイッチとして、トランジスタTsがMTJ素子に直列接続される。図2(c)に、上記MTJ素子R1とトランジスタTsが接続された等価回路を示す。
【0041】
図3は、図2(a)および(b)に示すようなメモリセルにより構成されたメモリアレイの断面構造を例示する図である。図3に示す例では、半導体基板に図2(a)および(b)に示す選択用のトランジスタTsが形成されている。各トランジスタTsのゲートには選択電圧WLが与えられる。また、トランジスタTsのソースは、ソース電圧SLを供給するための第2層メタル配線2Mに接続されている。また、トランジスタTsのドレインは、コンタクトホールCSを介してMTJ素子のピン層に接続され、このMTJ素子のフリー層はスルーホールV1を介して書き込み電圧BLを供給するための第2層メタル配線2Mに接続されている。なお、このメモリセルは例えば非特許文献2に開示されている。図4はこのメモリセルの動作条件を示す図である。まず、抵抗変化型素子R1に対するデータ書き込みについて説明する。抵抗変化型素子R1に“0”を書き込む場合、ビット線BLを1.2V、ソース線SLを0Vとし、選択電圧WLを1.2Vとする。この状態では、抵抗変化型素子R1の両端に約0.6Vの電圧が印加され、ビット線BLからソース線SLに約49μAの電流が流れる。この結果、抵抗変化型素子R1は低抵抗になり、データ“0”を記憶した状態となる。抵抗変化型素子R1に“1”を書き込む場合は、ビット線BLを0V、ソース線SLを1.2Vとし、選択電圧WLを1.2Vとする。この結果、ソース線SLからビット線BLに約49μAの電流が流れる。これにより抵抗変化型素子R1は高抵抗に変化し、データ“1”を記憶した状態となる。データ読み出しでは、ビット線BLを0.15V、ソース線SLを0V、選択電圧WLを1.2Vとする。ここで、抵抗変化型素子R1がデータ“0”を記憶しており、低抵抗である場合、ビット線BLからソース線SLに向けて15μAの電流が流れる。一方、抵抗変化型素子R1がデータ“1”を記憶しており、高抵抗である場合、ビット線BLからソース線SLに向けて10μAの電流が流れる。従って、データ“0”の読み出し時に流れる電流15μAと、データ“1”の読み出し時に流れる電流10μAとの間の閾値(例えば12.5μA)を発生し、データ読み出し時にビット線BLからソース線SLに向けて流れる電流をこの閾値と比較することにより、抵抗変化型素子R1に記憶されているデータが“0”か“1”を判定することができる。
【0042】
以上が本実施形態において抵抗変化型素子Rk(k=0〜7)として用いられるMTJ素子の概要である。図1に示す例において、抵抗変化型素子Rk(k=0〜7)は、電源VDD側がフリー層、電源VSS側がピン層となっている。
【0043】
なお、抵抗変化型素子Rk(k=0〜7)としては、MTJ素子の他、ReRAM(Resistance Random Access Memory;抵抗変化型RAM)のメモリセルに用いられるCER(Colossal Electro−Resistance;電界誘起巨大抵抗変化)抵抗素子を利用してもよい。
【0044】
図1において、制御回路302は、選択信号SEL0、SEL1、SIGk(k=0〜8)、短絡指示信号PASk(k=0〜7)を発生するとともに、書き込み電圧VDLおよびVSLを制御することにより、D/A変換対象であるデジタル信号に基づいて分圧回路301の分圧比を制御する回路である。本実施形態において、制御回路302が行う分圧比の制御は、2つの制御からなる。第1の制御は、デジタル信号値に対応した分圧比での分圧を行うのに使用する抵抗変化型素子を選択し、その抵抗変化型素子に適切な書き込み電圧を与えて、抵抗値の高/低の設定を行うデータ書き込み制御である。本実施形態では、この抵抗変化型素子に対して抵抗値の高/低の設定を行う制御をデータ書き込みと呼ぶ。抵抗変化型素子にピン層からフリー層に向かう電流を流してその抵抗変化型素子の抵抗値を高くすることはデータ“1”の書き込みである。また、抵抗変化型素子にフリー層からピン層に向かう電流を流してその抵抗変化型素子の抵抗値を低くすることはデータ“0”の書き込みである。第2の制御は、抵抗変化型素子Rk(k=0〜7)を電源VDDおよびVSS間に接続し、必要であればこれに加えてデジタル信号に対応した分圧比での分圧に使用する抵抗変化型素子以外の抵抗変化型素子の両端を短絡し、分圧回路301にD/A変換を行わせるデータ読み出し制御である。
【0045】
本実施形態において、制御回路302は、各抵抗変化型素子Rk(k=0〜7)の各々を高抵抗にするか、低抵抗にするか、それとも両端を短絡するかをデジタル信号値に対応付けて定義したテーブル302Tを記憶している。制御回路302は、データ書き込み制御において、テーブル302Tを参照することにより、変換対象であるデジタル信号値から高抵抗にすべき抵抗変化型素子と低抵抗にすべき抵抗変化型素子とを求め、それらの抵抗変化型素子の抵抗値の高/低を設定する制御を行う。また、制御回路302は、データ読み出し制御において、テーブル302Tを参照することにより、変換対象であるデジタル信号値から両端を短絡すべき抵抗変化型素子を求め、それらの抵抗変化型素子の両端を短絡する制御を行う。
以上が本実施形態の構成である。
【0046】
次に本実施形態の動作を説明する。図5は本実施形態におけるデータ書き込み制御の動作を例示するタイムチャートである。この例では、抵抗変化型素子R0〜R7にそれぞれデータ“0”、“0”、“1”、“1”、“0”、“0”、“0”、“1”を書き込んでいる。
【0047】
データ書き込み制御において、制御回路302は、選択信号SEL0、SEL1をLレベルとして、読み出しトランジスタSG0およびSG1をOFFさせ、抵抗変化型素子Rk(k=0〜7)を電源VDDおよびVSSから切り離す。そして、抵抗変化型素子R0にデータ“0”を書く場合、制御回路302は、書き込み電圧VDLとして例えば1Vを、書き込み電圧VSLとして0Vを電源に出力させる。そして、制御回路302は、選択信号SIG0、SIG1をHレベル、他の選択信号SIG2〜SIG8をLレベルとして、書き込みトランジスタSW0およびSW1のみをONさせ、抵抗変化型素子R0の両端に書き込み電圧VDLおよびVSLを発生する電源を接続する。また、同時に、短絡指示信号PAS0をLレベル、その他の短絡指示信号PAS1〜PAS7をHレベルとし、書き込み対象である抵抗変化型素子R0以外の抵抗変化型素子R1〜R7の両端を短絡用トランジスタT1〜T7により各々短絡する。
【0048】
このように設定することで、抵抗変化型素子R0のフリー層(ノードN0)に書き込み電圧VDL=1V、ピン層(ノードN1)に書き込み電圧VSL=0Vが印加される。この結果、抵抗変化型素子R0にフリー層からピン層に向かう電流が流れ、抵抗変化型素子R0の抵抗が低くなり、データ“0”が書き込まれた状態となる。
【0049】
次に、抵抗変化型素子R1にデータ“0”を書き込む場合、制御回路302は、書き込み電圧VDLを0V、書き込み電圧VSLを1Vとし、選択信号SIG1およびSIG2のみをHレベルとし、他の選択信号SIG0、SIG3〜SIG8をLレベルとし、短絡指示信号PAS1のみをLレベルとし、他の短絡指示信号PAS0、PAS2〜PAS7をHレベルとする。
【0050】
このように設定することで、抵抗変化型素子R1のフリー層(ノードN1)に書き込み電圧VSL=1V、ピン層(ノードN2)に書き込み電圧VDL=0Vが印加される。この結果、抵抗変化型素子R1にフリー層からピン層に向かう電流が流れ、抵抗変化型素子R1の抵抗が低くなり、データ“0”が書き込まれた状態となる。
【0051】
次に、抵抗変化型素子R2に“1”を書き込む場合、制御回路302は、書き込み電圧VDLを0V、書き込み電圧VSLを1Vとし、選択信号SIG2およびSIG3のみをHレベルとし、他の選択信号SIG0、SIG1、SIG4〜SIG8をLレベルとし、短絡指示信号PAS2のみをLレベルとし、他の短絡指示信号PAS0、PAS1、PAS3〜PAS7をHレベルとする。
【0052】
このように設定することで、抵抗変化型素子R2のフリー層(ノードN2)に書き込み電圧VDL=0V、ピン層(ノードN3)に書き込み電圧VSL=1Vが印加される。この結果、抵抗変化型素子R2にピン層からフリー層に向かう電流が流れ、抵抗変化型素子R2の抵抗が高くなり、データ“1”が書き込まれた状態となる。
同様にして、制御回路302は、抵抗変化型素子R3〜R7にそれぞれ指定したデータを書き込む。
【0053】
図5では、抵抗変化型素子R0からR7まで順次データ書き込みを行ったが、各抵抗変化型素子に対するデータ書き込みの順番はこれに限定されるものではない。また、抵抗変化型素子Rk(k=0〜7)の全てではなく、一部の抵抗変化型素子のみにデータ書き込みを行うことも可能である。例えば図1に示すテーブル302Tにおいて、変換対象であるデジタル信号値が「1」から「2」に変わった場合、抵抗変化型素子R3を高抵抗(“1”)から低抵抗(“0”)に書き換えるだけでよい。そこで、この書き換えが必要な抵抗変化型素子R3に対するデータ書き込みのみを行うのである。このような制御を可能にするため、D/A変換の対象であるデジタル信号値を記憶するラッチを制御回路302内に設け、D/A変換の際には、前回のD/A変換の対象のデジタル信号値に対応付けられた情報と今回のD/A変換の対象のデジタル信号値に対応付けられた情報とをテーブル302Tから読み出し、両情報を比較することにより、今回のD/A変換においてデータ書き込みを行う抵抗変化型素子を決定すればよい。
【0054】
データ書き込み制御を終えると、制御回路302は、データ読み出し制御を行う。このデータ読み出し制御の動作は図示していないが、次のような動作となる。まず、制御回路302は、選択信号SEL0およびSEL1をHレベルとすることにより、読み出しトランジスタSG0およびSG1をONとし、直列接続された抵抗変化型素子Rk(k=0〜7)の両端を電源VDDおよびVSSに接続する。次に抵抗変化型素子Rk(k=0〜7)のうち、デジタル信号に対応した分圧比での分圧に使用する抵抗変化型素子以外の抵抗変化型素子の両端を短絡する。具体的には、短絡指示信号PASk(k=0〜7)のうち分圧の動作に使用しない抵抗変化型素子(例えばRk’とする)の両端間に介挿された短絡用トランジスタPASk’のゲートに対する短絡指示信号PASk’をHレベルとし、当該短絡用トランジスタPASk’をONさせる。この結果、分圧動作に使用する抵抗変化型素子に電流が流れて、電源VDDおよびVSS間の抵抗値に対するノードN4および電源VSS間の抵抗値の比、すなわち、分圧比により定まるアナログ電圧VOUTがノードN4から出力される。
【0055】
次に本実施形態によるD/A変換回路の分解能について説明する。
まず、比較のため、図1に示すD/A変換回路において、抵抗変化型素子Rk(k=0〜7)を固定抵抗に置き換えた場合のD/A変換の分解能を説明する。
【0056】
この場合、分圧回路の上段(ノードN4および電源VDD間)の抵抗R0〜R3、下段(ノードN4および電源VSS間)の抵抗R4〜R7のうち分圧動作に用いるもの(すなわち、両端を短絡しないもの)の個数を各種変えることにより、各種の分圧比を実現することができる。図6において、分圧比番号は、上段の4個の抵抗のうち両端を短絡しない抵抗、下段の4個の抵抗のうち両端を短絡しない抵抗を各種変えた分圧回路の各種の構成に対応付けた番号である。また、図6において、例えば分圧比番号1の列を見ると、抵抗R0、R4に対応した各欄には“R”が記載され、抵抗R1〜R3、R5〜R7に対応した欄は空欄となっている。これは、分圧比番号1に対応した分圧回路の構成では、抵抗R0、R4以外の抵抗の両端が短絡されており、抵抗R0、R4のみが分圧動作に使用されることを示している。この場合、分圧回路において、上段の抵抗群の合成抵抗はRとなり、下段の抵抗群の合成抵抗はRとなるため、分圧比は、R/(R+R)=0.50となる。他の分圧比番号に対応した構成についても同様の方法により分圧比を算出することができる。
【0057】
図6において、分圧比番号1〜4は、上段において抵抗R0のみが選択された場合、分圧比番号5〜8は抵抗R0およびR1が選択された場合(すなわち、抵抗R0およびR1が直列に接続される)、分圧比番号9〜12は抵抗R0、R1およびR2が選択された場合、分圧比番号13〜16は抵抗R0〜R3が選択された場合であり、これらの各場合において、下段の抵抗R4〜R7の選択の態様を4通り(1個のみ選択〜4個選択)に変化させている。
【0058】
このように図6では分圧回路により構成される分圧回路の種類(分圧比番号の数)は16通りあるが、分圧比番号1、6、11、16に対応した各分圧比はいずれも0.50となる。また、分圧比番号2、8に対応した各分圧比はいずれも0.67である。また、分圧比番号5、14に対応した各分圧比はいずれも0.33である。従って、実現される分圧比の種類は11通りとなる。
【0059】
図7図1に示す分圧回路により実現される11通りの分圧比を昇順に並べ、それらのデジタル信号値1〜11を対応付けてグラフ化したものである。このように上段に4個の抵抗を有し、下段に4個の抵抗を有する分圧回路では、11通りのデジタル信号値をアナログ電圧により表現することができる。この場合の分解能は11となる。
【0060】
これに対し、本実施形態では、分圧回路301が抵抗変化型素子により構成されており、分圧処理に用いる抵抗変化型素子の抵抗値を2通りに変化させることができる。従って、固定抵抗により構成された分圧回路に比べて、実現可能な分圧比の種類を著しく増加させることができる。
【0061】
図8図11は、本実施形態(図1)における分圧回路301において、上段の抵抗R0〜R3、下段の抵抗R4〜R7のうち分圧に使用するもの(両端を短絡しないもの)を各種変えるともに、分圧に使用する抵抗変化型素子の抵抗値の高/低を各種変えることにより実現される各種の分圧回路構成と、それらにより得られる分圧比を示すものである。図8において、分圧比番号5に対応した列を見ると、抵抗変化型素子R0、R6に対応した各欄には“R”が記載され、抵抗変化型素子R4、R5に対応した欄には“2R”が記載され、抵抗変化型素子R1〜R3、R7に対応した欄は空欄となっている。この場合、分圧比番号5に対応した欄に“R”が記載された抵抗変化型素子R0、R6はデータ“0”が書き込まれており、非特許文献1に基づき推測すると、その抵抗値は5kΩ(Rとする)である。また、分圧比番号5に対応した欄に“2R”が記載された抵抗変化型素子R4、R5はデータ“1”が書き込まれており、非特許文献1に基づき推測すると、その抵抗値は10kΩ(R=5kΩである場合、2Rとなる)である。そして、分圧比番号5に対応した欄に空欄となっている抵抗変化型素子R1〜R3、R7は、各々の両端が短絡されている。この分圧比番号5に対応した分圧回路構成では、上段の合成抵抗はR、下段の合成抵抗は5Rなので、分圧比は5R/(R+5R)≒0.83となる。他の分圧比番号に対応した構成についても同様である。
【0062】
図8図11において、分圧比番号1〜8は上段の合成抵抗がRとなる場合、分圧比番号9〜16は上段の合成抵抗が2Rとなる場合、分圧比番号17〜24は上段の合成抵抗が3Rとなる場合、分圧比番号25〜32は上段の合成抵抗が4Rとなる場合、分圧比番号33〜40は上段の合成抵抗が5Rとなる場合、分圧比番号41〜48は上段の合成抵抗が6Rとなる場合、分圧比番号49〜56は上段の合成抵抗が7Rとなる場合、分圧比番号57〜64は上段の合成抵抗が8Rとなる場合である。そして、図8図11では、これらの各場合において、下段の合成抵抗をRから8Rまでの8通りに変化させている。このように本実施形態において分圧回路301により構成可能な分圧回路の種類は64通りとなる。しかし、これらの分圧回路の中には分圧比の重複するものが含まれている。それらの分圧比の重複した分圧回路を削除すると、本実施形態による分圧回路301により実現可能な分圧比の種類は41通りとなる。
【0063】
図12は本実施形態による分圧回路301により実現される41通りの分圧比を昇順に並べ、それらにデジタル信号値1〜41を対応付けてグラフ化したものである。このように上段に4個の抵抗変化型素子を有し、下段に4個の抵抗変化型素子を有する分圧回路では、41通りのデジタル信号値をアナログ電圧により表現することができる。この場合の分解能は41となる。
このように本実施形態によれば、例えば分圧回路301の上段の抵抗変化型素子を4個、下段の抵抗変化型素子を4個とした場合に、分解能を41とすることができ、固定抵抗を利用した分圧回路の分解能11に比較して、分解能を飛躍的に増大させることができる。すなわち、同じ抵抗素子数で、約4倍の高精度を実現することができ、短絡用トランジスタ等の素子増加を考慮しても、大幅な面積縮小を実現することができる。このように本実施形態によれば、小さな面積で高精度のD/A変換回路を構成することができる。
【0064】
<第2実施形態>
図13はこの発明の第2実施形態であるA/D変換回路の構成を示す回路図である。このA/D変換回路は、上記第1実施形態によるD/A変換回路を利用した回路である。図13に示すように、このA/D変換回路は、上記第1実施形態における分圧回路301と、制御回路302Aと、オペアンプ100とを有する。ここで、オペアンプ100は、A/D変換対象であるアナログ信号VINと分圧回路301が出力するアナログ電圧VREFとを比較し、比較結果を示す信号DETを出力する。制御回路302Aは、デジタル信号値を順次変化させる制御を行いつつそのデジタル信号値に対応したアナログ電圧VREFを分圧回路301に出力させるための制御を行い、アナログ信号VINと一致するアナログ電圧VREFを分圧回路301に出力させるデジタル信号値を探索し、探索結果であるデジタル信号値をA/D変換結果であるデジタル信号DOとして出力する回路である。さらに詳述すると、制御回路302Aは、図12に示すデジタル信号値1〜41に対応した各アナログ電圧VREFを、例えばデジタル信号値1に対応したものから順に分圧回路301に発生させる制御を行う。そして、アナログ電圧VREFがアナログ信号VINと一致し、オペアンプ100の出力信号DETが反転したとき、その時点においてD/A変換の対象となっているデジタル信号値をA/D変換結果であるデジタル信号DOとして出力する。
【0065】
図14は本実施形態の動作を示すタイムチャートである。本実施形態において、制御回路302Aは、デジタル信号値を1、2、3、4、…と順次カウントしつつ、デジタル信号値に対応したアナログ電圧VREFを分圧回路301に発生させるための制御、すなわち、第1実施形態において説明したデータ書き込み制御とデータ読み出し制御とを行う。このため、本実施形態では、図14に示すように、データ書き込み制御とデータ読み出し制御が交互に繰り返されることとなる。そして、本実施形態において、データ書き込み制御では、抵抗変化型素子R0〜R7の中から、直前のデータ読み出し制御において短絡し、かつ、今回のデータ書き込み制御において抵抗値の高/低の設定を行う抵抗変化型素子と、前回のデータ書き込み制御と今回のデータ書き込み制御とで設定する抵抗値の高/低が異なる抵抗変化型素子を選択し、この選択した抵抗変化型素子のみをデータ書き込みの対象とする。
【0066】
図14において、最も左側に図示された最初のサイクルでは、抵抗変化型素子R0のみをデータ書き込みの対象とし、この抵抗変化型素子R0にデータ“0”を書き込んでいる。すなわち、書き込み電圧VDLを1V、書き込み電圧VSLを0Vとし、選択信号SEL0およびSEL1をLレベルとし、選択信号SIG0およびSIG1のみをHレベルとし、短絡指示信号PAS0のみをLレベルとして、抵抗変化型素子R0にデータ“0”を書き込んでいる。
【0067】
次のサイクルでは、選択信号SEL0およびSEL1をHレベル、選択信号SIG0〜SIG8をLレベル、短絡指示信号PAS0〜PAS7をデジタル信号値により定まるレベルとしてデータ読み出し制御を行っている。この場合、前サイクルにおいて抵抗変化型素子R0に対するデータ書き込みを行っているので、この抵抗変化型素子R0は、変換対象であるデジタル信号値に対応した分圧比を得るために使用する抵抗変化型素子である。従って、データ読み出し制御において、抵抗変化型素子R0に対する短絡指示信号PAS0はLレベルとなる。他の抵抗変化型素子R1〜R7に対する短絡指示信号PAS1〜PAS7(図14ではハッチングの施された信号)がいかなるレベルとなるかは、その時点における変換対象のデジタル信号値により定まる。
【0068】
次のサイクルでは、書き込み電圧VDLを0V、書き込み電圧VSLを1Vとし、選択信号SEL0およびSEL1をLレベルとし、選択信号SIG1およびSIG2のみをHレベルとし、短絡指示信号PAS1のみをLレベルとして、抵抗変化型素子R1にデータ“0”を書き込んでいる。
【0069】
次のサイクルでは、データ読み出し制御を行っている。この場合、前サイクルにおいて抵抗変化型素子R1に対するデータ書き込みを行っているので、この抵抗変化型素子R1は、変換対象であるデジタル信号値に対応した分圧比を得るために使用する抵抗変化型素子である。従って、データ読み出し制御において、抵抗変化型素子R1に対する短絡指示信号PAS1はLレベルとなる。他の抵抗変化型素子R0、R2〜R7に対する短絡指示信号PAS0、PAS2〜PAS7(図14ではハッチングの施された信号)がいかなるレベルとなるかは、その時点における変換対象のデジタル信号値により定まる。
以下同様である。
【0070】
このように、デジタル信号値を順次変化させつつ、前回のデータ書き込み時と比べて、抵抗値の高/低、短絡の有無の変化した抵抗変化型素子のみを対象としたデータ書き込み制御とデータ読み出し制御とが交互に行われる。この結果、分圧回路301の出力するアナログ電圧VREFが順次増加する。そして、VREF=VINとなってオペアンプ302Aの出力信号DETが反転したとき、制御回路302Aは、デジタル信号値のカウントアップを停止し、その時点におけるデジタル信号をA/D変換結果であるデジタル信号DOとして出力する。
【0071】
なお、図14に示す例では、各データ書き込み制御において、1個の抵抗変化型素子に対するデータ書き込みのみを行っているが、複数の抵抗変化型素子のデータ書き込みが必要な場合は、1つのデータ書き込み制御において複数回のデータ書き込みを行うことになる。
【0072】
本実施形態では、デジタル信号値を最小値からアップカウントしつつD/A変換結果VREFがアナログ信号VINと一致するまでD/A変換を行う。このため、アナログ信号VINの信号値によっては、D/A変換の回数が多くなり、A/D変換結果D0が得られるまでの所要時間が長くなることが懸念される。しかし、抵抗変化型素子に対するデータ書き込みもデータ読み出しも10ns、すなわち、100MHzの高速で実行可能であり、A/D変換の高速化を妨げるものではない。
【0073】
本実施形態によるD/A変換回路は、分圧回路301を構成する全ての抵抗変化型素子にデータの一括書き込みをする機能を備えている。図15は、この一括書き込みの動作を示すタイムチャートである。全ての抵抗変化型素子R0〜R7にデータ“0”を書く場合には、VDD=3V、VSS=0Vとし、選択信号SEL0およびSEL1をHレベル、選択信号SIG0〜SIG8をLレベル、短絡指示信号PAS0〜PAS7をLレベルとする。この結果、ノードN0とノードN8の間に3Vが印加され、全ての抵抗変化型素子R0〜R7のフリー層からピン層へ電流が流れ、全ての抵抗変化型素子にデータ“0”が書き込まれる。また、全ての抵抗変化型素子にデータ“1”を書き込む場合は、VDD=0V、VSS=3Vとして、同様な選択を行えば良い。
【0074】
ここで、VDD=3Vとしているのは、直列接続された複数の抵抗変化型素子の各々に電流を流すのに必要な電圧を印加するためである。非特許文献1には記載されていないが、一般に、印加電圧(電流)と書き込み時間には相関があり、MRAMの場合は、電流を流すほど、高速に書き込みを行うことができる。計算上は、0.6V×抵抗8段=4.8Vの電圧を印加すれば、10nsの高速書き込みをすることができるが、かなりの高電圧を必要とするため、ここでは、制御が容易な3Vを印加している。そのため、書き込み時間は遅くなるが、8素子に一括してデータを書き込めるメリットの方が大きい。
【0075】
また、図示はしないが、一括ではなく、一部の複数の抵抗変化型素子を選択してデータを書き込むことも可能である。例えば、短絡指示信号PAS0〜PAS3をLレベル、短絡指示信号PAS4〜PAS7をHレベルとすると、抵抗変化型素子R0〜R3までの一括書き込みを行うことができる。
なお、この一括書き込みの機能を上記第1実施形態のD/A変換回路に設けてもよい。
【0076】
<第3実施形態>
図16はこの発明の第3実施形態であるD/A変換回路の構成を示す回路図である。このD/A変換回路は、分圧回路311と制御回路312とを有する。分圧回路311は、上記第1実施形態の分圧回路301から書き込みトランジスタSWk(k=1〜7)を削除した構成となっている。制御回路312は、変換対象であるデジタル信号に対応した分圧比での分圧を分圧回路311に行わせるためのデータ書き込み制御とデータ読み出し制御を行う回路である。本実施形態におけるデータ書き込み制御は上記第1実施形態において行われたデータ書き込み制御と異なる。すなわち、本実施形態におけるデータ書き込み制御では、書き込み対象である抵抗変化型素子Rkに対応した短絡用トランジスタTkのみをOFFさせ、書き込みトランジスタSW0およびSW8をONさせ、データ“0”書き込みの場合はVDL=1V、VSL=0Vとし、データ“1”書き込みの場合はVDL=0V、VSL=1Vとする。
【0077】
また、全ての抵抗変化型素子Rk(k=0〜7)に一括書き込みを行う場合は、短絡指示信号PAS0〜7をLレベルとして、データ“0”書き込みの場合は、VDL=1V、VSL=0Vとし、データ“1”書き込みの場合はVDL=0V、VSL=1Vとする。
また、一部の複数の抵抗変化型素子に対する一括書き込みも可能である。例えば短絡指示信号PAS1、PAS3、PAS5、PAS7をLレベルとし、その他の短絡指示信号をHレベルにすれば、抵抗変化型素子R1、R3、R5、R7にデータ“0”または“1”の一括書き込みを行うことができる。
【0078】
本実施形態においても上記第1実施形態と同様な効果が得られる。また、本実施形態では、書き込みトランジスタSWk(k=1〜7)が不要なので、その分だけ素子数を減らし、D/A変換回路の所要面積を減らすことができる。
【0079】
<第4実施形態>
本実施形態は、上記第1〜第3実施形態における分圧回路の構成に関するものである。図17は分圧回路を構成する各素子のレイアウトを示す平面図である。また、図18図17のA−A’線断面図、図19図17のB−B’線断面図、図20図17のC−C’線断面図である。
【0080】
図17に示すように、半導体基板上に形成された複数の矩形状の活性領域(トランジスタのソースまたはドレインとなる拡散領域)の各間を短絡指示信号PAS0、PAS1、〜を伝送する多結晶シリコン層配線が水平方向に横切っている。この短絡指示信号PAS0、PAS1、〜を伝送する多結晶シリコン層配線は、短絡用トランジスタT0、T1、〜のゲートとなっており、活性領域はこれらのトランジスタのソースまたはドレインとなっている。短絡用トランジスタT0、T1、〜は、直列接続されており、互いに隣接するもの同士がソースまたはドレインとなる活性領域ACTを共有している。
【0081】
このD/A変換回路は、複数の抵抗変化型素子R0、R1、〜を有している。図17において、各々水平方向(ゲート電極の延在方向)に延びた複数の第1メタル層配線1Mと、各々垂直方向(ゲート電極を跨ぐ方向)に延びた複数の第2メタル層配線2Mは、これらの抵抗変化型素子R0、R1、〜を直列接続するとともに、各抵抗変化型素子をトランジスタT0、T1、〜の各々に並列接続する役割を果たしている。
【0082】
第1メタル層配線1Mは、トランジスタT0、T1、〜のソースまたはドレインである活性領域の上層において、ゲート電極の延在方向に活性領域ACTの左端から右端まで各々延びている。
【0083】
第2メタル層配線2Mには、ゲート電極の延在方向において第1の位置(活性領域ACTの左端)にあるものと第2の位置(活性領域ACTの右端)にあるものとがある。第1の位置にある第2メタル層配線2Mは、複数のゲート電極のうちの奇数番目の各ゲート電極を跨ぎ、そのゲート電極の両側の2本の第1メタル層配線1Mと各々重なる。また、第2の位置にある第2メタル層配線2Mは、複数のゲート電極のうちの偶数番目の各ゲート電極を跨ぎ、各ゲート電極の両側の2本の第1メタル層配線1Mと各々重なる。
【0084】
抵抗変化型素子R0、R1、〜は、複数の活性領域ACTの各々の上方に配置されている。さらに詳述すると、図17において、上から偶数番目の活性領域ACTでは、第1の位置(活性領域ACTの左端)における第1メタル層配線1Mと第2メタル層配線2Mとの重複箇所に抵抗変化型素子(図示の例ではR0、R2、R4)が介挿されている。また、奇数番目の活性領域ACTでは、第2の位置における第1メタル層配線1Mと第2メタル層配線2Mとの重複箇所に抵抗変化型素子(図示の例ではR1、R3)が介挿されている。
【0085】
また、図17において、上から偶数番目の活性領域ACTでは、第2の位置(活性領域ACT)における第1メタル層配線1Mと第2メタル層配線2Mとの重複箇所において第2メタル層配線2M、第1メタル層配線1Mおよび活性領域ACTが接続されている。また、奇数番目の活性領域ACTでは、第1の位置における第1メタル層配線1Mと第2メタル層配線2Mとの重複箇所において第2メタル層配線2M、第1メタル層配線1Mおよび活性領域ACTが接続されている。
【0086】
次に図18図19を参照し、抵抗変化型素子R0、R1、〜と、第1メタル層配線1Mと、第2メタル層配線2Mと、活性領域ACTとの接続関係について説明する。
【0087】
図19および図20における左右方向は、図17における上下方向と一致している。図19において、トランジスタT0のゲートの左側の活性領域ACTは、図17では、トランジスタT0のゲートの上隣にある。このトランジスタT0のゲートの上隣の活性領域ACTは、コンタクトホールCS、第1メタル層配線1MおよびスルーホールV1を介して図17の短絡用トランジスタT0のゲートを跨ぐ第2メタル層配線2Mの上端部分に接続されている。そして、この第2メタル層配線2Mの下端部分は、図19に示すように、スルーホールV2を介して抵抗変化型素子R0のフリー層に接続される。この抵抗変化型素子R1のピン層は第1メタル層配線1Mの左端の上に載っている。この第1メタル層配線1Mは、図17では上から2番目の第1メタル層配線1Mである。この第1メタル層配線1Mの右端は、図18に示すように、コンタクトホールCSを介して図17におけるトランジスタT0のゲートの下隣の活性領域ACT(すなわち、図17において上から2番目の活性領域ACT)に接続される。このように抵抗変化型素子R0は、トランジスタT0に並列接続されている。
【0088】
トランジスタT0のゲートの下隣の活性領域ACT(図17において上から2番目の活性領域ACT)に接続された第1メタル層配線1Mの右端部分は、図18に示すように、スルーホールV1を介して第2メタル層配線2Mに接続される。この第2メタル層配線2Mは、図17において上から2番目の第2メタル層配線であり、図20において最も左側に図示された第2メタル層配線2Mである。この第2メタル層配線2Mは、トランジスタT1のゲート電極を跨ぐ。そして、この第2メタル層配線2Mの端部は、図20に示すように、スルーホールV2を介して抵抗変化型素子R1のフリー層に接続される。この抵抗変化型素子R1のピン層は第1メタル層配線1Mの右端の上に載っている。この第1メタル層配線1Mは、図17では上から3番目の第1メタル層配線1Mである。この第1メタル層配線1Mの左端は、コンタクトホールCSを介して図17におけるトランジスタT1のゲートの下隣の活性領域ACTに接続される。このように抵抗変化型素子R1は、トランジスタT1に並列接続されている。
【0089】
以下同様であり、抵抗変化型素子R2、R3、〜は、トランジスタT2、T3、〜に各々並列接続されている。
【0090】
以上のように、本実施形態では、複数のトランジスタの隣り合う2つのトランジスタ間でソースまたはドレインとなる活性領域ACTを共用することができ、かつ、複数の抵抗変化型素子を複数の活性領域に1個ずつ配置し、しかも、その配置位置を第1の位置、第2の位置、第1の位置、〜という具合に交互に変化させている。従って、小さなスペースに複数のトランジスタと複数の抵抗変化型素子をレイアウトすることができ、高精度で小面積のD/A変換回路を実現することができる。
【0091】
<他の実施形態>
以上、この発明の第1〜第4実施形態を説明したが、この発明には他にも実施形態が考えられる。例えば上記各実施形態では、抵抗変化型素子からなる分圧回路をD/A変換回路としたが、D/A変換回路の構成は分圧回路に限定されるものではない。例えば複数の抵抗変化型素子を直列接続した合成抵抗と、これに電流を流し込む定電流源とを設け、デジタル信号値に応じて、各抵抗変化型素子の抵抗値の高/低、短絡の有無を設定し、その際の合成抵抗の電圧降下をデジタル信号値に対応したアナログ信号として出力するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0092】
301,311……分圧回路、302,302A,312……制御回路、Rk(k=0〜7)……抵抗変化型素子、SWk(k=0〜8)……書き込みトランジスタ、SG0,SG1……読み出しトランジスタ、Tk(k=0〜7)……短絡用トランジスタ、100……オペアンプ。
図1
図2
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