【実施例】
【0023】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
(測定方法)
(1)炭素長繊維の重量平均繊維長
複合材料または複合成形品の微小片を、2枚のスライドグラス板間で溶融し、厚さ0.05mm程度のフイルム状とした。マイクロスコープ(キーエンス社製)を使用して、透過光により倍率100倍にて限定視野内に各繊維の重心(長さの中心)が存在する繊維の長さを、100本〜200本を測定して、0.1mm間隔のヒストグラムを作成した。クラスの中央値(Xi)と頻度(fi)から次式により求めた。
X=ΣfiXi
2/ΣfiXi
(2)相対粘度
JIS K6920−2:2009に準じて、25℃の恒温水槽中で、ポリアミド共重合体の98%硫酸の5g/l溶液について、オストワルド粘度計(旭製作所製、4810型)を使用して、溶液の落下秒数と溶媒の落下秒数から求めた。
(3)融点(Tm)
ポリアミド共重合体から、約10mg試験片をアルミパンに採取した。示差走査熱量計(DSC)として、TA instruments社製Q100型DSCを使用し、ISO11357−3に準じて、窒素流動中で20℃/minにて昇温し、ヒートフローのピーク温度を融点とした。
【0024】
成形性や物性評価は次のように行った。
(4)吸湿率
得られた平板成形品から切削して得られた100×12.5×2mmの曲げ試験片13本を、恒温恒湿機(ナガノサイエンス社製 LH21−21M型)を使用し、80℃95%RH下にて200時間放置した後、表面付着水をティッシュペーパーで拭き取り、それぞれ質量を測定し、m1とした。この試験片の中から任意の7本を、100℃に温度調節した真空乾燥機(ヤマト科学社製、角型真空定温乾燥器DP43型)に投入し、160時間乾燥した後、質量を測定し、m2とした。
次式により、80℃95%RH下での吸湿率を求めた。
吸湿率(%)=(m1−m2)×100/m2
【0025】
(5)曲げ特性
(4)にて80℃95%RH下で200H吸湿処理した後、23℃50%RHに調節された試験室で2時間放置した成形品5本(吸湿サンプル)と、吸湿処理後真空乾燥した後、23℃に温度調節された試験室中のデシケータ中で2時間放置された試験片5本(乾燥サンプル)について、ISO178に準拠した3点曲げ試験機(オリエンテック社製テンシロン4L型)を使用して、スパン長80mm、クロスヘッド速度1mm/minによる曲げ強度と曲げ弾性率を測定した。
(6)荷重たわみ温度
(4)にて吸湿処理と真空乾燥処理した成形品3本について、東洋精機社製ヒートデストーションテスターを使用し、ISO75−1,−2に準じて、フラットワイズ方向に1.8MPa荷重下での荷重たわみ温度を求めた。
(7)プリプレグ含浸性
プリプレグの含浸性を、成形品表面の繊維の浮き出し状態から判断した。
○:繊維の浮き出し部分の面積割合が5%未満、×:繊維の浮き出し部分の面積割合が5%以上
【0026】
実施例1〜5
表1に示したポリアミド共重合体を、融点+約30℃に温度調節されたスクリュー式押し出し機のホッパーに投入した。押し出し機内で可塑化後、ダイヘッドより含浸台に溶融樹脂を供給した。一方、表1に示した炭素繊維のロービングを拡張開繊して、押出機のダイヘッドに連結された含浸ダイに導き、炭素繊維が100質量部になる速度で、引き取りローラーを駆動して、含浸ダイから引き抜いた。幅10mm・高さ0.2mmのダイから含浸被覆されたテープ状プリプレグを、引き取りローラーにて賦形して固化した後、枷に巻き取った。
テープ状プリプレグを間隔300mm・幅150mmのバー間に10層となるように配列し、巻き上げた。これを、融点より約30℃高い温度に温度調節したヒートプレスの200×200mmの面盤間に配置し、5分間、約5MPa加圧した。その後、面盤と共に取り出し、水冷却回路が配置された冷却盤間に移動し、5MPaに加圧保持した状態で50℃以下まで冷却した。その後、面盤を開放して、炭素繊維が一軸配向した厚さ約2mmの炭素繊維強化ポリアミド共重合体の成形板を得た。成形板から繊維軸方向に100mm×12.5mmのテストピースを切削した。得られたテストピースについて、吸水率、曲げ特性、荷重たわみ温度を評価した。
実施例品は、吸湿時の保持率を80%以上保持している。
【0027】
実施例6
実施例1と同様に樹脂を含浸し、含浸ダイから引き抜き、引き取りローラーにて賦形して固化したテープを、35mmにカットして得られた短冊状プリプレグを短冊状のプリプレグテープを200mm×200mmの平板状の型内にランダムにばらまき供給した。型を280℃まで加熱した後、圧縮し、3分間保持後、型を150℃まで冷却して、炭素繊維がランダム配向したプリプレグシートを得た。このプリプレグシートを、予め遠赤外線ヒータにて280℃まで予熱し、圧縮成形機(神藤金属工業所製、50t)に取り付け、予め180℃に温度調節した210mm×210mmのキャビティを有する金型に供給し、30MPaにて3分間圧縮成形し、厚さ約2mmの平板成形品を得た。
圧縮成形により得られた平板成形品の中央部から100mm×12.5mmのテストピースを切削した。得られたテストピースについて、実施例1と同様に吸湿率、曲げ特性、荷重たわみ温度を評価した。
繊維をランダム配向した実施例6では、異方性が殆どなく、吸湿後も405MPaと高い曲げ強度を示している。
【0028】
比較例1〜3
ポリアミド共重合体を表2に示したように変更した以外は、実施例1と全く同様にプリプレグテープを作製した後、成形板を成形し、繊維軸方向にテストピースを切削した。得られた試験片について,実施例と全く同様に物性を評価した。得られた試験データを表2に合わせて示した。
【0029】
比較例4
短冊状プリプレグの長さを6.5mmにした以外は、実施例6と全く同様に、ランダム配向した成形板を成形し、平板から切削して得られたテストピースについて、同様に評価した結果を表2に示した。
実施例6と比較して、繊維の補強効果が十分でなく曲げ強度は、乾燥状態でも330MPaと構造材としては不十分である。
【0030】
実験に使用した原料と記号
PA1:デカメチレンテレフタルアミド/ウンデカンアミド=60/40(モル比)共重合体(東洋紡試作品、Tm 250℃、相対粘度2.4)
PA2:デカメチレンテレフタルアミド/ウンデカンアミド=20/80(モル比)共重合体(東洋紡試作品,Tm 215℃、相対粘度 2.4)
PA3:デカメチレンテレフタルアミド/ウンデカンアミド=80/20(モル比)共重合体(東洋紡試作品、Tm 290℃、相対粘度 2.4)
PA4:ノナメチレンテレフタルアミド/ωーラウリルラクタム=60/40(モル比)共重合体(東洋紡試作品、Tm 242℃、相対粘度2.5)
PA5:ポリアミド6 T802(東洋紡製,相対粘度2.5)
PA6:ポリウンデカンアミド(東洋紡試作品、Tm 190℃、相対粘度2.5)
PA7:ポリデカメチレンテレフタルアミド(東洋紡試作品、Tm 306℃、相対粘度2.5)
炭素繊維:帝人社製東邦テナックス IMS40(単繊維径6.4μm、6000フィラメント)
MW5000:タルク (林化成製、ミクロンホワイト)平均粒径 4μm
CAV102:モンタン酸カルシュウム塩(クラリアント製)
【0031】
上記ポリアミドの東洋紡試作品は、国際公開WO2011/074536パンフレットに記載の方法に基づき、適宜原料モノマーを選択することで重合した。
【0032】
【表1】
【0033】
繊維を一軸配向した実施例1〜5は、構造材としての高い強度や耐熱性を保持し、かつ吸湿率が低く、吸湿時の強度保持率が高い。
【0034】
【表2】