(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6146091
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】蓋材
(51)【国際特許分類】
B65D 77/20 20060101AFI20170607BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20170607BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20170607BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20170607BHJP
B65D 85/72 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
B65D77/20 K
B65D65/40 D
B32B27/00 H
B32B27/20 Z
B65D85/72 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-72936(P2013-72936)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-196123(P2014-196123A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井口 依久乃
(72)【発明者】
【氏名】今井 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】盧 和敬
【審査官】
二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−093315(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0118886(US,A1)
【文献】
特開2010−254377(JP,A)
【文献】
特表2003−507567(JP,A)
【文献】
特開2012−041049(JP,A)
【文献】
特開2006−095832(JP,A)
【文献】
特開2005−349582(JP,A)
【文献】
特開2002−037310(JP,A)
【文献】
特開2010−184454(JP,A)
【文献】
特開2012−017116(JP,A)
【文献】
特開2002−069246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 67/00 − 79/02
B32B 9/00
B32B 27/00 − 27/20
B65B 65/40
B32D 85/72
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層、シーラント層、付着防止層を積層し、被着体に設けられた融着部に融着させて用いられる蓋材であって、
前記シーラント層が平均粒子径1〜100μmの大粒子とそれを固着するバインダーからなり、前記付着防止層が平均粒子径5〜500nmの微粒子とそれを固着するためのバインダーからなっており、
前記付着防止層のバインダーが、無機又は金属アルコキシド類を少なくとも1種以上含有し、
熱シール時、この大粒子が被着体側に突き刺さり被着体樹脂内にめり込まれる
ことを特徴とする蓋材。
【請求項2】
前記シーラント層の大粒子が、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化チタンの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の蓋材。
【請求項3】
前記付着防止層のバインダーと微粒子の固形分比が、1:0.8〜1:0.4であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蓋材。
【請求項4】
前記付着防止層の微粒子が、ジメチルシリル、トリメチルシリル、アルキルシリル、アミノアルキルシリル、メタクリルシリル、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシロキサンの中から少なくとも1種以上の官能基で疎水化表面処理された無機酸化物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓋材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として食品類の包装用容器に適用されるヒートシール蓋材に関する。さらにくわしくは、ヨーグルト、ゼリー、プリン、ジャム、ムースなどの包装用のカップ状容器に使用する蓋材で、その内面に内容物付着防止及びヒートシール性の劣化が少ない蓋材に関する。
【背景技術】
【0002】
カップ状容器に使用される蓋材は、外側から基材/無機蒸着フィルム/シーラント層からなっている。この構成の蓋は、ヨーグルトなどの内容物を充填した容器の上面開口に被せて、蓋周縁部を被着体である容器の上縁フランジ部にシールすることによって、密封された容器を形成する。
【0003】
このような蓋材には、ヒートシール性、密着性、輸送時の密着性が求められる。また同時に、内容物の非付着性、即ち蓋材の裏面に内容物が付着し難いものが望まれる。
【0004】
蓋材の裏面に内容物が付着すると、蓋材に付着した内容物の棄損による無駄が生じたり、内容物の付着物を取り除くのに手間が掛かるなどの問題が発生する。また、開封時に付着物が飛び散り手や指、衣類あるいは周辺を汚す恐れがあるなどの問題も出る。
【0005】
これらの問題を解決するために、蓋材最内面のヒートシール層を、付着防止効果を有する非イオン界面活性剤、又は、疎水性添加物を添加したポリオレフィンとするものとする提案がなされているが、このような添加剤は、10重量%以下、好ましくは7%以下の配合しかできない程相溶性が小さく、そのため、エージング条件により表面析出量が大きく変動し、安定性に欠けるなどの問題がある。そのため、所望の性能が充分に得られない(特許文献1)。
【0006】
また、蓋材のヒートシール層に、界面活性剤等の非着性添加物を添加せず、最内層に別途付着防止層を形成する提案がなされており、付着防止層として、疎水性酸化物微粒子で三次元網目構造のポーラス構造を作ることで、非常に優れた付着防止効果を示すというものである。しかしながら、この付着防止層は、粒子が細かく、耐熱性の面で劣っており、高温環境における保管時間が長くなることで、疎水性微粒子がヒートシール層であるホットメルト樹脂層に沈み込んでしまい、付着防止効果が消滅してしまう。また、内容物充填工程、特にシール工程において、ヒートシール強度が劣化するため、これらの阻害要因は取り扱いの面で非常に厄介となる(特許文献2)。
【0007】
また、シーラント層の上に付着防止層を設ける提案がある。付着防止層に、2〜7μmと、平均粒径の大きい湿式シリカ粒子を用いることにより、湿式シリカの沈み込みが少なくした。そのため、高温環境や塗布時の乾燥温度が長くなっても付着防止機能を維持できるというものである。しかし、逆にこの粒径が大きいために、付着防止層から脱落してしまい、付着防止の機能にムラが生じやすく、安定しない問題がある。また特許文献2と同じくヒートシール強度が劣化する問題がある(特許文献3)。
【0008】
また、シリコーンエラストマーや含フッ素系エラストマーなどの表面を高度に疎水化処理する提案がなされている。しかしながら、シール温度を高くしなければシール性が発現せず、シール性に乏しく、蓋材やパウチといった容器包装への適応は困難であった(特許文献4)。
【0009】
蓋材に付着防止機能を付与すると、シール性を損なうため、その両立が難しい。また、付着防止層を、シール層と別の層として設けると、付着防止層とシール層の密着性と付着防止機能の両立が難しく、付着防止層のバインダーと微粒子の重量比は非常に重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002‐37310号公報
【特許文献2】特許第4348401号公報
【特許文献3】特許第4668352号公報
【特許文献4】特開2002‐69246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、十分な熱シール性と内容物付着防止性を備え、付着防止機能材料の脱落のない、かつ、ヒートシール性の劣化が少ない安定した内容物付着防止機能を備えた蓋材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、
少なくとも、基材層、シーラント層、付着防止層を積層し、被着体に設けられた融着部に融着させて用いられる蓋材であって、
前記シーラント層が平均粒子径1〜100μmの大粒子とそれを固着するバインダーか
らなり、前記付着防止層が平均粒子径5〜500nmの微粒子とそれを固着するためのバインダーからなっており、
前記付着防止層のバインダーが、無機又は金属アルコキシド類を少なくとも1種以上含有し、
熱シール時、この大粒子が被着体側に突き刺さり被着体樹脂内にめり込まれる
ことを特徴とする蓋材である。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、前記シーラント層の大粒子が、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化チタンの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の蓋材である。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、前記付着防止層のバインダーと微粒子の固形分比が、1:0.8〜1:0.4であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蓋材である。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は
、前記付着防止層の微粒子が、ジメチルシリル、トリメチルシリル、アルキルシリル、アミノアルキルシリル、メタクリルシリル、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシロキサンの中から少なくとも1種以上の官能基で疎水化表面処理された無機酸化物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓋材である。
【発明の効果】
【0016】
本発明では付着防止層のバインダーと微粒子の重量比を調整し、付着防止層とシール層の密着性を損なうことがないのみでなく、シーランの層に大粒子を加えたことで、熱シール時、この大粒子が被着体側に突き刺さり被着体樹脂内にめり込む投錨効果によって物理的な力を発現させる構造を作りだすことが可能となり、投錨効果十分な熱シール強度と内容物付着防止性を備え、付着防止機能材料の脱落のない、安定した内容物付着防止機能を備えることができた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の蓋材における層構成の一例を示した、充填・シール前の蓋材の断面概念図である。
【
図2】本発明における蓋材の付着防止層部分の詳細断面概念図である。
【
図3】本発明の蓋材を使用して容器本体に熱シールした状態の熱シール部における断面を示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本願発明を図面により詳細に説明する。
図1は本発明における蓋材20の層構成の一例を示す断面図で、蓋材20は、外側から基材層1、バリア層2、シーラント層3が積層されている。最内層には、内容物の付着を防止する付着防止層4が形成されている。
【0019】
基材層1は紙、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの延伸オレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロースアセテート、セロファンなどの単体、あるいは、これらの積層体などが使用できる。そして、これらの単体、あるいは、これらの積層体の表面あるいは内側には、印刷・蒸着、金属箔貼り合わせなどの2次加工を施し、意匠性を付与してもよい。
【0020】
バリア層は、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの延伸オレフィン樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル樹脂フィルム、セルロースアセテートフィルム、セロファンフィルムなどのフィルム表面に、アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウムなどを蒸着したもの、又は、その金属箔などである。このバリア層2は、内容物の浸透を阻害する、内容物の酸化劣化を防止する、水分の揮発を抑える、内容物の光劣化防止などの役目がある。
【0021】
シーラント層3は、被着体とのシール性が求められ、被着体の材質に合わせ、ヒートシール性が得られる様に、適宜選定できる。溶剤に溶解しコーティングするラッカータイプの樹脂系材料を用いる場合は、成分としては、ポリアクリレート樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、スチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体及びそれらの複合材料を用いる。ホットメルトタイプやポリオレフィンタイプのヒートシール層を設けてもかまわない。
【0022】
このシーラント層3は、被着体8と容易に融着し、落下などの衝撃や、積載における加圧、保管時の高温などの環境においても安定してシール性を保持して密封でき、内容物を使用する時は、容易に剥離して開封できる役目がある。
【0023】
図2は、付着防止層4部分の詳細な断面を示しており、シーラント層3に含まれた大粒子5は、シーラント樹脂に混合してコーティングされ、シーラント層3を介し、バリア層2、基材1に固着されている。その大粒子5によって凹凸構造を形成している。
【0024】
シーラント層3は、平均粒子径1〜100μmの大粒子とそれを固着するバインダーからなっており、付着防止層4が平均粒子径5〜500nmの微粒子とそれを固着するためのバインダーからなっている。
【0025】
シーラント層3の大粒子は、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、酸化珪素、酸化アルミニウム、二酸化チタンの少なくとも1種を含んでいる。
【0026】
付着防止層4の微粒子6は疎水性であり、ジメチルシリル、トリメチルシリル、アルキ
ルシリル、アミノアルキルシリル、メタクリルシリル、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシロキサンの中から少なくとも1種以上の有機官能基で疎水化表面処理された無機酸化物が使用できる。無機酸化物としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウムなどから、1種又は複数種類を組み合わせて使用する。官能基としては、特に、トリメチルシリル基やジメチルポリシロキサン基を有した疎水性としたシリカ微粒子が好ましい。
【0027】
疎水性シリカからなる微粒子6の粒径は、平均一次粒子径で、500nm以下のものが使用できる。疎水性シリカ微粒子の粒径が500nmより大きい場合、疎水性微粒子が大きすぎて、付着防止層から脱落しやすくなるなどの問題が出てくる。
【0028】
付着防止層4のバインダー7は、1種以上の金属アルコキシド、及び、その加水分解物と水/アルコール混合溶媒、シランカップリング剤を主剤をとする水溶液を用いることができる。
【0029】
金属アルコキシドは、M(OR)
nで示される。Mは金属原子である。Mの例としては、Li、Na、Cu、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、B、Al、Ga、Y、Si、Ge、Pb、P、Sb、Ta、W、La、Nd、Tiなどが挙げられる。nはMの原子価である。Rは低級アルキル基、例えば炭素数が1〜4のアルキル基を示す。
【0030】
アルキコシド類の具体例としては、メチルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン、アルミニウムプロポキシド、チタンイソプロポキシド、亜鉛t‐ブトキシド、亜鉛n−ブトキシド、カルシウムエトキシド、鉄エトキシド、バナジウムイソプロポキシド、錫t−ブトキシド、リチウムエトキシド、ベリリウムエトキシド、ホウ素エトキシド、燐エトキシド、燐メトキシド、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド等が挙げられる。実際に使用する金属アルコキシドとしては、テトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウム、あるいはその混合物を用いることが好ましい。
【0031】
シーラント層及び付着防止層の積層方法としては特に限定されず、グラビアコーティング、ロールコーティング、ドクターブレードコーティング、ダイコーティング、バーコート、スプレーコーティングなどの公知の方法を用いることができる。
【0032】
付着防止層4中の微粒子6は非常に小さく二次凝集力が強いため、バインダー7と微粒子6の重量比を1:0.8〜1:0.4とすることで、ポーラスな構造を付与できるだけでなく、同時に付着防止層内の凝集力、及びシーラント層との密着を強くすることができる。また、大粒子5が被着体8側にめり込んで、さらに付着防止層4は表面がナノオーダーのポーラス構造をとっているために、大小混合した投錨状態の構造になり、シール強度は十分に確保されることになる。
【0033】
被着体7は、シーラントとのシール性と一般的には、融着部の材料として、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなどを用いる。シールする融着部以外の容器外層部分は、装飾も兼ねて、多層にしたり、印刷が施されていてもかまわない。また、バリヤ性を向上するような素材を積層してもよい。
【実施例1】
【0035】
基材層1として厚み52.3グラム/m
2の模造紙と,厚み16μmのアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルムを、ドライラミネ―トの方法で貼り合わせた。
その貼り合わせた積層体である。蒸着フィルム2はアルミニウム蒸着ポリエチレンテレフ
タレートフィルムであり、ポリエチレンテレフタレートフィルム側に、ポリエステル樹脂とイソシアネート硬化剤によるプライマー層をコーティングした。
【0036】
その後さらに、ポリアクリレートを主成分とするラッカータイプ樹脂とメタクリル樹脂からなる平均粒子径が1μmの大粒子5を混合しシーラント層3を形成した。ラッカー樹脂のみの厚みは0.5μmとし、1μmの大粒子はラッカー樹脂から頭が出て凹凸構造となっている。
【0037】
その後、付着防止層4として、バインダーとして、0.1規定の塩酸溶液にて加水分解させたテトラエトキシシランSi(OC
2H
5)
4の加水分解液と、アルコールで分散させた平均粒径が12nmのジメチルポリシロキサン基で疎水化処理されたシルカ微粒子6を、バインダーと微粒子6を重量比1:0.5の比率で充分に混合させ、塗液の固形分が10%となるように調整し、シーラント層3の上にコートして、蓋材を作製した。
【実施例2】
【0038】
シーラント層3用の塗液の、大粒子の平均粒子径が20μmである粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の蓋材を作製した。
【実施例3】
【0039】
シーラント層3用の塗液の、大粒子の平均粒子径が50μmである粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の蓋材を作製した。
【実施例4】
【0040】
シーラント層3用の塗液の、大粒子の平均粒子径が400μmである粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例4の蓋材を作製した。
【実施例5】
【0041】
付着防止層4用の塗液の、バインダーと微粒子6との比率を重量比1:0.8とした以外は、実施例2と同様にして、実施例5の蓋材を作製した。
【実施例6】
【0042】
付着防止層4用の塗液の、バインダーと微粒子6との比率を重量比1:0.6とした以外は、実施例2と同様にして、実施例6の蓋材を作製した。
【実施例7】
【0043】
付着防止層4用の塗液の、バインダーと微粒子6との比率を重量比1:0.4とした以外は、実施例2と同様にして、実施例7の蓋材を作製した。
【0044】
<比較例1>
シーラント層3用の塗液の、大粒子の平均粒子径が0.5μmである粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の蓋材を作製した。
【0045】
<比較例2>
シーラント層3用の塗液の、大粒子の平均粒子径が600μmである粒子を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の蓋材を作製した。
【0046】
<比較例3>
付着防止層4用の塗液の、バインダーと微粒子6との比率を重量比1:0.2とした以外は、実施例2と同様にして、比較例3の蓋材を作製した。
【0047】
<比較例4>
付着防止層4用の塗液の、バインダーと微粒子6との比率を重量比1:1.0とした以外は、実施例2と同様にして、比較例4の蓋材を作製した。
【0048】
<比較例5>
大粒子を使用しなかった以外は、実施例2と同様にして、比較例5の蓋材を作製した。
【0049】
以上のように、シーラント層3の大粒子5の径を0.5μm、1μm、20μm、50μm、100μm、500μmに変化させ、6種類の大粒子5を用いた場合と、微粒子6とバインダー7の重量比率を、1:0.2、1:0.4、1:0.6、1:0.8、1:1.0の11種類の蓋材に関し、付着防止性及びシール強度について評価した。
【0050】
評価方法に関しては以下に示す。
【0051】
<付着防止>
付着防止評価は、
液滴には、40度傾斜させた台に、蓋材の付着防止層を上にして蓋材を貼り付け、その傾斜した蓋材の付着防止層の上に、ヨーグルト(ダノンジャパン社製ダノンビオプレーン加糖)を、約0.5mlを、傾斜面の2cm上から滴下し、液滴の付着状態を目視にて観察評価した。その時の評価基準は、
◎:液滴の付着なし(付着防止効果が認められる)
○:わずかな付着はするが、液滴の大半は付着せず(付着防止効果が認められる)
×:液滴の付着あり(付着防止効果が認められない)
とした。
【0052】
<耐磨耗性>
学振試験機(JIS K5701‐1に準拠)を用い、200g荷重のSUS製の磨擦子を付着防止層の表面に押しあて、100往復し、大粒子の脱落を50〜100倍の光学顕微鏡にて観察した。
【0053】
<ヒートシール性>
ヒートシール性の評価は、
ヒートシール条件:温度210℃、シール圧力0.2MPa、シール時間3.0秒とし、ポリスチレン樹脂で幅12mmの長方形に成形された断片を、容器本体の代用としてヒートシールし、引っ張り試験機で、300mm/分の剥離速度で、剥離角度90度で剥離し、その剥離強度を測定した。付着防止層の塗工前と塗工後の剥離強度を比較し、評価確認した。その時の評価基準は、
◎:付着防止層なしに比較し、剥離強度80%以上(付着防止層が無い場合と同等)
○:付着防止層なしに比較し、剥離強度60%以上
△:付着防止層なしに比較し、剥離強度30%以上だが、被着体との剥離強度は30グラム/(12mm幅)以上
×:付着防止層なしに比較し、剥離強度60%未満で、被着体との剥離強度は30グラム/(12mm幅)以下(シール性なし)
とした。
【0054】
シーラント層3用の塗液の、大粒子の平均粒子径を変化させた場合の付着防止性及びシール強度に対する評価結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
表1の結果からシーラント層に付与する大粒子は、1〜100μmでシール強度が良好
であることが分かる。一方、600μmではその大きさが大きすぎ、0.5μmではその大きさが小さすぎ、共にヒートシール性が低下する。
【0056】
付着防止層4用の塗液の、バインダーと微粒子6との比率を変化させた場合の付着防止性及びシール強度に対する評価結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
表2の結果より、疎水性微粒子が対バインダー重量比で、1:0.4以上で良好なヨーグルト非付着性が確保できるが、疎水性微粒子の量が減り、1:0.2では、ヨーグルト非付着性が落ち込む。また、1:1になると微粒子リッチになり膜強度が悪くなる。
【0058】
本発明の蓋材は、以上のようなもので、また、蓋を剥離した時、内容物が多量に蓋材内面に付着しない。そのため内容物を有効に使用できると共に、容器使用後、内容物の残留が少なく、廃棄する場合にも、簡単な水洗浄で容易に分別廃棄できるので、消費者への負担も少ないなどのメリットも大きい。また、シール強度も十分得られているので輸送時の蓋のはがれなどなくなる。
【符号の説明】
【0059】
1・・・基材層
2・・・バリア層
3・・・シーラント層
4・・・付着防止層
5・・・大粒子
6・・・微粒子
7・・・バインダー
8・・・被着体
20・・・蓋材