特許第6146116号(P6146116)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6146116
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】非接触給電システム及び袋体システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/10 20160101AFI20170607BHJP
   H02J 50/90 20160101ALI20170607BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20170607BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20170607BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   H02J50/10
   H02J50/90
   H02J7/00 301D
   H02J7/00 P
   H02J7/00 301B
   B60L11/18 C
   B60M7/00 X
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-100739(P2013-100739)
(22)【出願日】2013年5月10日
(65)【公開番号】特開2014-220977(P2014-220977A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】前川 祐司
【審査官】 竹下 翔平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−021886(JP,A)
【文献】 特開2012−196015(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0033227(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00−3/12
7/00−13/00
15/00−15/42
B60M 1/00−7/00
E04H 6/00−6/44
G07B 11/00−17/04
G07F 17/00−17/42
H02J 7/00−7/12
7/34−7/36
50/00−50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に配置された給電コイルを備えており、該給電コイルから該給電コイルの上方に配置される受電コイルに非接触で電力の供給を行う非接触給電システムにおいて、
前記給電コイルが搭載され、膨張又は収縮することによって前記給電コイルの上下方向の位置を調整可能な第1袋体と、
前記給電コイル及び前記第1袋体の双方を覆うように設けられ、膨張することによって前記給電コイルと前記受電コイルとの間の空間を占拠する第2袋体と
を備えることを特徴とする非接触給電システム。
【請求項2】
前記第1袋体に対するガスの給気、前記第2袋体に対するガスの給気、前記第1袋体からのガスの排気、及び前記第2袋体からのガスの排気を個別に行うことが可能な給排気装置を備えることを特徴とする請求項1記載の非接触給電システム。
【請求項3】
前記給排気装置は、前記第1袋体に給気するガスの量及び前記第1袋体から排気するガスの量を調整することにより、前記給電コイルの上下方向の位置を調整することを特徴とする請求項2記載の非接触給電システム。
【請求項4】
前記給排気装置は、前記第1袋体を膨張させる場合には、前記第2袋体に対するガスの給気の開始以後に前記第1袋体に対するガスの給気を開始し、前記第1袋体を収縮させる場合には、前記第1袋体からのガスの排気の開始以後に前記第2袋体からのガスの排気を開始することを特徴とする請求項2又は請求項3記載の非接触給電システム。
【請求項5】
前記第1袋体の周囲に当接し、膨張又は収縮することによって前記給電コイルの水平面内の位置を調整可能な補助袋体を備えることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか
一項に記載の非接触給電システム。
【請求項6】
前記第1袋体が収縮している場合には前記補助袋体を地中に収容し、前記第1袋体が膨張する場合には地中に収容している前記補助袋体を地上に出現させる収容機構を備えることを特徴とする請求項5記載の非接触給電システム。
【請求項7】
受電コイルに非接触で給電を行う給電コイルが搭載され、膨張又は収縮することによって前記給電コイルの上下方向の位置を調整可能な第1袋体と、
前記給電コイル及び前記第1袋体の双方を覆うように設けられ、膨張することによって前記給電コイルと前記受電コイルとの間の空間を占拠する第2袋体と
を備える袋体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、給電側と受電側とを配線(ケーブル)で接続することなく、給電側から受電側への給電を非接触で行うことが可能な非接触給電システムが様々な用途で用いられている。例えば、電気自動車(EV:Electric Vehicle)やハイブリッド自動車(HV:Hybrid Vehicle)等の移動車両に搭載されたバッテリや、家庭用電化製品等の民生用機器に設けられたバッテリを充電するための電力を供給する用途に用いられている。
【0003】
このような非接触給電システムにおいて、電力を非接触で効率的に伝送するには、給電側に設けられる給電コイル(一次側コイル)と、受電側に設けられる受電コイル(二次側コイル)との相対的な位置関係を適切にする必要がある。例えば、上記の電気自動車やハイブリッド自動車等の移動車両に設けられたバッテリを充電する場合には、移動車両の停車位置に応じて、移動車両に設けられた受電コイルと給電コイルとの相対的な位置を適切にする必要がある。
【0004】
以下の特許文献1には、給電コイルと受電コイルとの間に中継デバイスを配置し、給電コイルと受電コイルとの相対位置に応じて中継デバイスを移動させることで、給電コイルと受電コイルとの相対的な位置ずれに起因する伝送効率の低下を防止する非接触給電システムが開示されている。また、以下の特許文献1には、電力伝送の際の送電経路付近における異物を排除する異物排除動作部を設け、給電対象とは異なる異物に起因した電力伝送の際の悪影響を回避する点も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−21886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の非接触給電システムにおいて、電力の長距離伝送(例えば、数十センチメートル〜数メートル程度)を実現するためには、共振器をなすコイル及びコンデンサの定数を工夫して共振器のQ値を大きくする必要があった。また、一般的に、電力を非接触で伝送可能な距離はコイル径の半分程度であるため、長距離伝送を実現するためには大きなコイルを用いる必要がある。
【0007】
しかしながら、Q値が大きな共振器を実現しようとすると、大きなインダクタンスを有するコイルと大容量のコンデンサとが必要になるため、高コストになってしまうという問題がある。また、上述の通り、長距離伝送を実現するには大きなコイルが必要になるため、共振器が大型化してしまうという問題がある。上述した特許文献1に開示された技術を用いれば、給電側から受電側に供給される電力が中継デバイスで中継されるため、さほど大きなコイルを用いなくとも、ある程度の長距離伝送が実現可能であると考えられる。しかしながら、受電コイルに加えて中継デバイスが必要になるためコストが上昇してしまうという問題がある。また、給電コイルと受電コイルとの位置を考慮して中継デバイスを移動させる必要があることから、複雑な制御も必要になるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高コスト及び大型化を招くことなく電力の長距離伝送を実現することが可能な非接触給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の非接触給電システムは、地上に配置された給電コイル(20)を備えており、該給電コイルから該給電コイルの上方に配置される受電コイル(50)に非接触で電力の供給を行う非接触給電システム(1)において、前記給電コイルが搭載され、膨張又は収縮することによって前記給電コイルの上下方向の位置を調整可能な第1袋体(30a)と、前記給電コイル及び前記第1袋体の双方を覆うように設けられ、膨張することによって前記給電コイルと前記受電コイルとの間の空間を占拠する第2袋体(30b)とを備えることを特徴としている。
また、本発明の非接触給電システムは、前記第1袋体に対するガスの給気、前記第2袋体に対するガスの給気、前記第1袋体からのガスの排気、及び前記第2袋体からのガスの排気を個別に行うことが可能な給排気装置(40)を備えることを特徴としている。
また、本発明の非接触給電システムは、前記給排気装置が、前記第1袋体に給気するガスの量及び前記第1袋体から排気するガスの量を微調整することにより、前記給電コイルの上下方向の位置を微調整することを特徴としている。
また、本発明の非接触給電システムは、前記給排気装置が、前記第1袋体を膨張させる場合には、前記第2袋体に対するガスの給気の開始以後に前記第1袋体に対するガスの給気を開始し、前記第1袋体を収縮させる場合には、前記第1袋体からのガスの排気の開始以後に前記第2袋体からのガスの排気を開始することを特徴としている。
また、本発明の非接触給電システムは、前記第1袋体の周囲に当接し、膨張又は収縮することによって前記給電コイルの水平面内の位置を調整可能な補助袋体(60)を備えることを特徴としている。
また、本発明の非接触給電システムは、前記第1袋体が収縮している場合には前記補助袋体を地中に収容し、前記第1袋体が膨張する場合には地中に収容している前記補助袋体を地上に出現させる収容機構(70)を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第2袋体を膨張させることにより給電コイルと受電コイルとの間の空間を占拠するとともに、第1袋体を膨張させることにより給電コイルを受電コイルに近接させるようにしているため、高コスト及び大型化を招くことなく電力の長距離伝送を実現することが可能であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態による非接触給電システムの要部構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態による非接触給電システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図3】本発明の第1実施形態による非接触給電システムの動作の一例を説明するための側断面図である。
図4】本発明の第2実施形態による非接触給電システムの要部構成を示す側断面図である。
図5】本発明の第2実施形態における補助バルーン及び収容機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による非接触給電システムについて詳細に説明する。
【0013】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態による非接触給電システムの要部構成を示すブロック図である。図1に示す通り、非接触給電システム1は、給電装置10、給電コイル20、内側バルーン30a(第1袋体)、外側バルーン30b(第2袋体)、及び給電用ガス給排気装置40(給排気装置)を備えており、バッテリ53を搭載した移動車両Mに対して非接触で給電を行う。この非接触給電システム1は、例えば給電ステーションや駐車場等に設置され、駐停車した移動車両Mに対して非接触で給電を行う。
【0014】
給電装置10は、電源11、整流回路12、給電回路13、及び給電用制御部14を備えており、移動車両Mに対する非接触給電に適した電力を生成するとともに、移動車両Mに対する非接触給電を行う上で必要となる各種制御(詳細は後述する)を行う。尚、本実施形態では、給電装置10が地上に設置されているものとして説明するが、給電装置10は、地下に設置されていても良く、移動車両Mの上方(例えば、天井)に設置されるものであっても良い。
【0015】
電源11は、出力端が整流回路12の入力端に接続されており、移動車両Mへの給電に必要となる交流電力を整流回路12に供給する。この電源11は、例えば200V又は400V等の三相交流電力、或いは100Vの単相交流電力を供給する系統電源である。整流回路12は、入力端が電源11に接続されるとともに出力端が給電回路13に接続されており、電源11から供給される交流電力を整流して直流電力に変換し、変換した直流電力を給電回路13に出力する。
【0016】
給電回路13は、入力端が整流回路12に接続されるとともに出力端が給電コイル20の両端に接続されており、整流回路12からの直流電力を交流電力に変換し、変換した交流電力を給電コイル20に出力する。具体的に、給電回路13は、給電コイル20とともに給電側共振回路を構成する共振用コンデンサを備えており、給電用制御部14の制御の下で、整流回路12からの直流電力を電源11の交流電力よりも周波数が高い交流電力(高周波電力)に変換して給電コイル20に出力する。
【0017】
給電用制御部14は、給電回路13を制御して移動車両Mに供給すべき電力を生成させるとともに、給電用ガス給排気装置40を制御して内側バルーン30a及び外側バルーン30bを膨張させ或いは収縮させる。ここで、給電用制御部14は、給電用ガス給排気装置40を制御して、内側バルーン30aに給気されるガスの量及び内側バルーン30aから排気されるガスの量を微調整することにより、給電コイル20の上下方向(垂直方向)の位置の微調整を行う。この給電用制御部14は、CPU(中央処理装置)やメモリ等を備えており、予め用意された給電用制御プログラムに基づいて上記の各種制御を行う。
【0018】
給電コイル20は、ソレノイド型コイルであり、給電回路13から供給される高周波電力に応じた磁界を発生することによって移動車両Mに対して非接触で給電を行う。この給電コイル20は、両端が給電回路13の出力端に接続されており、露出した状態或いはプラスチック等の非磁性かつ非導電性材料によってモールドされた状態で内側バルーン30a上にコイル軸が略水平となるように搭載されている。尚、コイル形式がサーキュラー型の場合は、コイル軸は略垂直となるように搭載されている。
【0019】
内側バルーン30aは、ゴム等の伸縮自在な弾性材を膜状に形成した一種の風船であり、給電コイル20の上下方向の位置を調整するために設けられる。具体的に、内側バルーン30aは、その中央上部に給電コイル20が搭載された状態で地面に設置されており、給電用ガス給排気装置40によるガスの給気又は排気が行われることにより膨張又は収縮する。内側バルーン30aの膨張により給電コイル20が上方向に移動し、内側バルーン30aの収縮により給電コイル20が下方向に移動する。尚、内側バルーン30aの平面視形状は任意であるが、例えば円形又は矩形形状である。
【0020】
外側バルーン30bは、ゴム等の伸縮自在かつ非磁性かつ非導電性の弾性材を膜状に形成し、上面中央部(後述する受電コイル50に接する部分およびその周囲の、そこを透過する磁束が影響を受けると非接触給電の効率が大きく低下する領域)以外の部分にアルミニウム粉や銅粉等の常磁性体からなる粉体を付着させた一種の風船である。上面中央部は、磁束に対する透過性能と伸縮性能とを併せ持っており、常磁性体からなる粉体が混合・付着している残りの部分は、磁束の漏れを低減する性能と伸縮性能とを併せ持っている。この外側バルーン30bは、給電コイル20と移動車両Mに設けられた受電コイル50との間の空間への異物侵入を防止するとともに、給電コイル20端面(上面)以外の部位から放射される磁束(漏れ磁束)を低減するために設けられる。
【0021】
外側バルーン30bは、給電コイル20及び内側バルーン30aの双方を覆う(内包する)状態で地面に設置されており、給電用ガス給排気装置40によるガスの給気又は排気が行われることにより膨張又は収縮する。外側バルーン30bが膨張すると、給電コイル20と受電コイル50との間の空間が外側バルーン30bによって占拠された状態になる。尚、外側バルーン30bの平面視形状は、内側バルーン30aと同様に任意であるが、例えば円形又は矩形形状である。
【0022】
給電用ガス給排気装置40は、給電用制御部14の制御の下で、内側バルーン30a及び外側バルーン30bに対するガスの給排気を行う。この給電用ガス給排気装置40は、内側バルーン30aに対するガスの給気、外側バルーン30bに対するガスの給気、内側バルーン30aからのガスの排気、及び外側バルーン30bからのガスの排気を個別に行うことが可能である。このため、内側バルーン30a及び外側バルーン30bを容易に膨張又は収縮させることができる。給電用ガス給排気装置40は、図1に示す通り、内側バルーン30aに連通する給排気管と外側バルーン30bに連通する給排気管とを備えており、これら給排気管を介して内側バルーン30a及び外側バルーン30bに対するガスの給排気を行う。
【0023】
移動車両Mは、運転者によって運転されて道路上を走行する自動車であり、例えば動力発生源として走行モータを備える電気自動車やハイブリッド自動車である。この移動車両Mは、図1に示す通り、受電コイル50、受電回路51、充電回路52、バッテリ53、及び受電用制御部54を備える。尚、図1では省略しているが、移動車両Mは、エンジン、上記走行モータ、操作ハンドル、及びブレーキ等の走行に必要な構成を備えている。
【0024】
受電コイル50は、ソレノイド型コイルであり、給電コイル20との間で高効率で非接触給電が可能となる姿勢で移動車両Mの底部に設けられている。この受電コイル50は、両端が受電回路51の入力端に接続されており、給電コイル20の磁界が作用すると電磁誘導によって起電力を発生し、発生した起電力を受電回路51に出力する。給電コイル20と受電コイル50の大きさ、形状は、高効率な非接触給電が可能であれば、同一であっても異なっていてもよい。
【0025】
受電回路51は、入力端が受電コイル50の両端に接続されるとともに出力端が充電回路52の入力端に接続されており、受電コイル50から供給された交流電力を直流電力に変換し、変換した直流電力を充電回路52に出力する。この受電回路51は、受電コイル50とともに受電側共振回路を構成する共振用コンデンサを備えている。尚、受電回路51の共振用コンデンサの静電容量は、受電側共振回路の共振周波数が前述した給電側共振回路の共振周波数と同一周波数になるように設定されている。
【0026】
充電回路52は、入力端が受電回路51の出力端に接続されるとともに出力端がバッテリ53の入力端に接続されており、受電回路51からの電力(直流電力)をバッテリ53に充電する。バッテリ53は、移動車両Mに搭載された再充電が可能な電池(例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の二次電池)であり、図示しない走行モータ等に電力を供給する。受電用制御部54は、CPUやメモリ等を備えており、予め用意された受電用制御プログラムに基づいて充電回路52を制御する。
【0027】
次に、上記構成における非接触給電システム1の動作について説明する。図2は、本発明の第1実施形態による非接触給電システムの動作の一例を示すフローチャートであり、図3は、同動作を説明するための側断面図である。尚、以下では、最初に非給電時における移動車両M及び給電装置10の動作を簡単に説明し、次いで給電装置10から移動車両Mに対して非接触で給電する給電時の動作について説明する。
【0028】
非給電時(例えば、運転者による移動車両Mの通常運転時)に、移動車両Mでは、充電回路52を停止させる制御が受電用制御部54によって行われる。これに対し、非給電時(つまり、給電対象である移動車両Mが駐停車位置に駐停車していない時)に、給電装置10では、給電回路13を停止させるとともに、内側バルーン30a及び外側バルーン30bが完全に収縮するようにガスを給電用ガス給排気装置40に排気させる制御が給電用制御部14によって行われる。
【0029】
その後、運転者が移動車両Mを運転し、給電コイル20が設置された場所まで移動車両Mを移動させて停車させると、給電コイル20の設置位置が受電用制御部54によって把握される。尚、給電コイル20の設置位置を把握する方法としては、例えば不図示の音波センサ或いは光センサ等の位置センサの出力から把握する方法が挙げられる。把握した給電コイル20の設置位置から、移動車両Mの受電コイル50が、給電コイル20の上方に配置されたことを検知すると、充電回路52にバッテリ53を充電させる制御が受電用制御部54によって開始される。
【0030】
他方、給電装置10の給電用制御部14においても、移動車両Mと同じく不図示の音波センサ或いは光センサ等の位置センサの出力から移動車両Mの位置が給電用制御部14によって把握される。把握した移動車両Mの位置から、給電コイル20の上方に移動車両Mの受電コイル50が配置されたことを検知すると、まず外側バルーン30bが完全に膨張するまで給電用ガス給排気装置40にガスを給気させる制御が給電用制御部14によって行われる(ステップS11)。つまり、図3(a)に示す通り、完全に収縮した状態にある内側バルーン30a及び外側バルーン30bのうち、外側バルーン30bのみを完全に膨張させる制御が行われる。
【0031】
この制御が行われることにより、図3(b)に示す通り、内側バルーン30aは完全に収縮した状態にあるものの、外側バルーン30bは完全に膨張した状態になり、給電コイル20と受電コイル50との間の空間が完全に膨張した外側バルーン30bによって占拠される。つまり、外側バルーン30bは、膨張することによって移動車両Mの底面から露出する受電コイル50の下面及び側面に当接するように受電コイル50を覆う。これにより、給電コイル20と受電コイル50との間の空間への異物の侵入が防止される。
【0032】
次に、給電用ガス給排気装置40から内側バルーン30aにガスを給気させて、内側バルーン30aを膨張させる制御が給電用制御部14によって行われる(ステップS12)。つまり、図3(b)に示す通り、完全に膨張した状態にある外側バルーン30bに内包されている完全に収縮した状態にある内側バルーン30aを膨張させる制御が行われる。尚、内側バルーン30aを膨張させる場合には、内側バルーン30aの膨張に合わせて、内側バルーン30aに給気したガスの分だけ、外側バルーン30bからガスを排気しても良い。
【0033】
この制御が行われることにより、図3(c)に示す通り、外側バルーン30b内において内側バルーン30aが膨張した状態になり、内側バルーン30aに搭載されている給電コイル20が上方向に移動する。これにより、外側バルーン30bによる給電コイル20と受電コイル50との間の空間への異物の侵入が防止されたまま、給電コイル20は受電コイル50に近接して配置される。
【0034】
次いで、給電用制御部14によって給電用ガス給排気装置40が制御され、受電コイル50に対する給電コイル20の位置が微調整される(ステップS13)。具体的には、給電用制御部14の制御の下で、内側バルーン30aに給気されるガスの量及び内側バルーン30aから排気されるガスの量が給電用ガス給排気装置40によって微調整され、これにより給電コイル20の上下方向の位置が微調整される。ここで、給電コイル20の上下方向の位置は、例えば移動車両Mへの給電量が増加するように微調整される。尚、給電コイル20の位置を微調整する必要がなければ、ステップS13を省略しても良い。
【0035】
以上の動作が終了すると、給電装置10の給電回路13が給電用制御部14によって制御されて給電動作が開始される。これにより、給電コイル20から移動車両Mの受電コイル50に対して非接触で電力が供給される(ステップS14)。非接触での給電が行われると、移動車両Mでは、受電用制御部54が、バッテリ53の充電状態を監視しながら充電回路52を制御することによりバッテリ53の充電を行う。
【0036】
受電用制御部54は、バッテリ53が満充電状態となったことを検知すると、充電回路52を停止させる制御を行うとともに、図示しない表示器等(例えば、運転席に設けられたバッテリ53の充電状態を示す表示器)に対して、バッテリ53が満充電状態になった旨を通知する。かかる通知により、運転者は、バッテリ53が満充電状態となったことを認識することができる。
【0037】
給電装置10の給電用制御部14は、非接触での給電が行われている間、給電が終了したか否かを判断する(ステップS15)。ここで、給電が終了したか否かの判断は、例えば移動車両Mへの給電量が急激に低下したか否かに基づいて行うことが可能である。給電が終了していないと判断した場合(ステップS15の判断結果が「NO」の場合)には、給電用制御部14は、給電回路13を制御して非接触での給電を継続させる(ステップS14)。これに対し、給電が終了したと判断した場合(ステップS15の判断結果が「YES」の場合)には、給電用制御部14は、給電回路13を制御して給電動作を停止させる。
【0038】
給電動作が停止すると、内側バルーン30aに給気されたガスを給電用ガス給排気装置40に排気させて、内側バルーン30aを収縮させる制御が給電用制御部14によって行われる(ステップS16)。続いて、外側バルーン30bに給気されたガスを給電用ガス給排気装置40に排気させて、外側バルーン30bを収縮させる制御が給電用制御部14によって行われる(ステップS17)。内側バルーン30a及び外側バルーン30bが収縮すると、図3(a)に示す状態になり、運転者は移動車両Mを運転して、給電コイル20の設置場所から移動することが可能になる。
【0039】
以上の通り、本実施形態では、内側バルーン30aと外側バルーン30bとを設け、外側バルーン30bを膨張させることにより給電コイル20と受電コイル50との間の空間への異物の侵入を防止するとともに、内側バルーン30aを膨張させることにより給電コイル20を受電コイル50に近接させるようにしている。これにより、給電コイル20と受電コイル50との間に異物が存在せず、且つ給電コイル20と受電コイル50とが近接した状態で給電を行うことができるため、高コスト及び大型化を招くことなく電力の長距離伝送を実現することが可能である。また、給電コイル20から放射される漏れ磁束の漏洩(外側バルーン30b外への漏洩)を遮断することもできる。
【0040】
〔第2実施形態〕
図4は、本発明の第2実施形態による非接触給電システムの要部構成を示す側断面図である。尚、本実施形態の非接触給電システムの全体構成は、図1に示す非接触給電システム1とほぼ同様である。図4に示す通り、本実施形態の非接触給電システムは、外側バルーン30bの内部(但し、内側バルーン30aの外部)に、複数の補助バルーン60(補助袋体)と複数の収容機構70とを追加した構成である。
【0041】
図5は、本発明の第2実施形態における補助バルーン及び収容機構を示す図であって、(a),(b)はこれらの配置を示す平面図であり、(c)はこれらの外観を示す斜視図である。補助バルーン60及び収容機構70は、例えば図5(a),(b)に示す通り、内側バルーン30aを中心として内側バルーン30aの周囲の3箇所又は4箇所に等間隔をもって配置される。図5(a)に示す例では、3つの補助バルーン60が、内側バルーン30aの異なる3箇所にそれぞれ当接しており、図5(b)に示す例では、4つの補助バルーン60が、内側バルーン30aの異なる4箇所にそれぞれ当接している。
【0042】
補助バルーン60は、前述した内側バルーン30aと同様に、ゴム等の伸縮自在な弾性材を膜状に形成した一種の風船であり、給電コイル20の水平面内の位置を調整するために設けられる。つまり、補助バルーン60が膨張又は収縮することにより、当接している内側バルーン30aの水平面内の位置が調整され、これにより内側バルーン30aに搭載されている給電コイル20の水平面内における位置が調整される。
【0043】
収容機構70は、補助バルーン60を地中に収容し、或いは地中に収容している補助バルーン60を地上に出現させるものである。具体的に、収容機構70は、給電用制御部14の制御の下で、内側バルーン30aが収縮している場合には補助バルーン60を地中に収容し、内側バルーン30aが膨張する場合には補助バルーン60を地上に出現させる。この収容機構70は、収容孔71及びフラップ72を備える。
【0044】
収容孔71は、補助バルーン60を地中に収容するために地表面に形成された平面視形状が矩形形状である孔である。フラップ72は、収容孔71の平面視形状と同じ形状にされた平板状の部材であり、一端を軸として揺動可能に構成されている。このフラップ72は、補助バルーン60を地中に収容する場合には倒れた状態にされ、補助バルーン60を地上に出現させる場合には直立状態にされる。尚、フラップ72が倒れた状態にされると、収容孔71はフラップ72で覆われた状態になる。
【0045】
フラップ72の一面(倒れた状態にされたときに、収容孔71の底面を向く面)には、補助バルーン60が取り付けられており、フラップ72の内部には、補助バルーン60に連通する給排気路73が形成されている。給排気路73は、補助バルーン60に給気されるとともに補助バルーン60から排気されるガスの流路である。尚、このガスは、例えば給電用ガス給排気装置40から給気され、或いは給電用ガス給排気装置40に向けて排気される。
【0046】
次に、本実施形態による非接触給電システムの動作について説明する。尚、本実施形態による非接触給電システムにおいても、基本的には図2のフローチャートに従った動作が行われる。つまり、外側バルーン30bを膨張させる動作(ステップS11)、内側バルーン30aを膨張させる動作(ステップS12)、及びコイルの位置を調整する動作(ステップS13)が順に行われた後に、非接触での給電が行われる(ステップS14)。
【0047】
但し、外側バルーン30bを膨張させる動作が行われている間は、フラップ72は倒れた状態にされているが、内側バルーン30aを膨張させるとき(ステップS12が開始させるとき)に、フラップ72を直立状態にさせる制御が行われる。そして、ステップS13のコイルの位置を調整する動作が行われるときに、内側バルーン30a(給電コイル20)の水平面内の位置を調整する動作も行われる。
【0048】
つまり、補助バルーン60を膨張させて補助バルーン60の各々を内側バルーン30aに当接させた状態にし、この状態で補助バルーン60を膨張又は収縮させると、図5(a),(b)に矢印で示す力が内側バルーン30aに作用する。すると、作用する力の合力によって内側バルーン30aの水平面内の位置が調整され、これにより給電コイル20の水平面内の位置が調整される。尚、内側バルーン30aの水平面内の位置は、例えば移動車両Mへの給電量が増加するように調整される。
【0049】
そして、給電が終了すると、内側バルーン30aを収縮させる動作(ステップS16)、及び外側バルーン30bを収縮させる動作(ステップS17)が順に行われる。但し、内側バルーン30aを収縮させるときに補助バルーン60も収縮させ、内側バルーン30aが収縮した後に、フラップ72を倒れた状態にして、補助バルーン60を収容孔71に収容する動作が行われる。
【0050】
以上の通り、本実施形態においても、内側バルーン30aと外側バルーン30bとを設け、外側バルーン30bを膨張させることにより給電コイル20と受電コイル50との間の空間への異物の侵入を防止するとともに、内側バルーン30aを膨張させることにより給電コイル20を受電コイル50に近接させるようにしている。このため、第1実施形態と同様に、高コスト及び大型化を招くことなく電力の長距離伝送を実現することが可能であり、給電コイル20から放射される漏れ磁束の漏洩を遮断することもできる。
【0051】
また、本実施形態においては、補助バルーン60を設けて、内側バルーン30a(給電コイル20)の水平面内における位置を調整するようにしている。これにより、給電コイル20と受電コイル50との水平面内における位置ずれが生じた状態で移動車両Mが駐停車したとしても、効率の良く電力を伝送することができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態による非接触給電システムについて説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、外側バルーン30bを膨張させた後に内側バルーン30aを膨張させ、内側バルーン30aを収縮させた後に外側バルーン30bを収縮させる例について説明した。しかしながら、内側バルーン30a及び外側バルーン30bの膨張・収縮のさせ方はこれに限らず、任意の方法を用いることができる。
【0053】
更に、上記実施形態では、非接触給電する方法として磁界共鳴方式を採用したが、電磁誘導方式を採用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…非接触給電システム、20…給電コイル、30a…内側バルーン、30b…外側バルーン、40…給電用ガス給排気装置、50…受電コイル、60…補助バルーン、70…収容機構
図1
図2
図3
図4
図5