(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6146130
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】電力変換装置のゲート駆動電源供給回路
(51)【国際特許分類】
H02M 7/483 20070101AFI20170607BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
H02M7/483
H02M1/08 301A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-107081(P2013-107081)
(22)【出願日】2013年5月21日
(65)【公開番号】特開2014-230357(P2014-230357A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161562
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 朗
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 聡毅
【審査官】
栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−081232(JP,A)
【文献】
特開2008−092651(JP,A)
【文献】
特開2001−052940(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/109969(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/483
H02M 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の直流単電源を直列接続して構成され3個の端子を備えた直流電源と、複数の半導体スイッチ素子と、フライングキャパシタとから構成され、前記直流電源の各端子間電圧と前記フライングキャパシタの電圧とを加算又は減算してマルチレベルの電圧を生成する、いわゆるフライングキャパシタ形電力変換回路で構成された、直流から交流,もしくは交流から直流に電力変換を行う装置に適用する前記半導体スイッチ素子を駆動するゲート駆動回路への電源供給回路であって,前記電源供給回路は電源供給のための絶縁器としてトランスを用いた回路を2個以上直列接続した回路構成とし,前記直列接続した回路の中間回路部を,前記フライングキャパシタの中間電位点,又は主回路直流部の電位が固定された固定電位点に接続することを特徴とする電力変換装置のゲート駆動電源供給回路。
【請求項2】
請求項1に記載された電力変換装置のゲート駆動電源供給回路おいて,前記主回路直流部の固定電位点は,直流部の最高電位点と中間電位点との間の電位点,又は主回路直流部の最低電位点と中間電位点との間の電位点とすることを特徴とする電力変換装置のゲート駆動電源供給回路。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の電力変換装置のゲート駆動電源供給回路において,主回路直流部の中間電位点を基準電位点とし,前記基準電位点からゲート駆動電源供給のための絶縁器としてトランスを用いた回路を2個以上直列接続して各半導体スイッチ素子のゲート駆動回路に電源供給することを特徴とする電力変換装置のゲート駆動電源供給回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータなどの電力変換装置の電力用半導体スイッチ素子を駆動するゲート駆動回路への電源供給回路に関し、特にフライングキャパシタを用いた電力変換回路における場合の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
図8に電力変換回路の代表回路である直流から交流に変換する2レベルのインバータ主回路図を示す。APMが主交流電源、REがダイオードなどで構成される交流を直流に変換する整流回路、Ca、Cbが直流電源相当となる直流中間回路で、一般に大容量のコンデンサで構成される。また、前記直流電圧が前記コンデンサの電圧定格よりも高いときは図に示すようにコンデンサを直列に接続する。ACMがモータなどの負荷、INVが電力用半導体素子で構成する直流−交流変換回路で、電圧と周波数の可変出力が可能である。また、負荷からの回生電力がある場合には、インバータ主回路は交流を直流に変換するコンバータとして動作する。
【0003】
また、直流−交流変換回路INVの中でSu〜Sw、Sx〜SzがIGBTと逆並列接続されたダイオードとで構成された半導体スイッチ素子である。三相出力の場合、これらが6回路で構成される。GDu〜GDw、GDx〜GDzがIGBTを駆動するためのゲート駆動回路で、CNTが電力変換装置の制御回路である。制御回路CNTは各IGBTのゲート駆動回路にオンオフ指令信号(ゲート駆動信号)を送出する。一般に制御回路が置かれている基準電位側と、IGBT及びそのゲート駆動回路間には電位差があるため、ゲート駆動回路に電源供給を行う場合は、トランスなどの絶縁器が必要となる。
【0004】
図9に商用周波数の低電圧交流電源APからゲート駆動回路へ電源を供給するための回路例を示す。低電圧交流電源APは
図8に示す主交流電源APMから供給される場合が多い。
図9(a)は、低電圧交流電源APからAC/AC変換回路(又はAC/DC/AC変換回路)ACVを介して高周波交流を生成し、絶縁器としての絶縁用高周波トランスHFTを介して絶縁し、ダイオードDとコンデンサCdにより直流に変換して、IGBTSのゲート駆動回路GDに直流電力を供給する方式である。ここで、高周波交流としている理由はトランスHFTの小型化を図るためである。
図9(b)は絶縁器として商用周波数の絶縁トランスCFTを用いた場合の構成で、
図9(a)におけるAC/AC変換回路ACVを省略して、商用周波数のままで絶縁を得る方式である。この構成では絶縁トランスCFTが商用周波数の動作となるため、
図9(a)のトランスHFTに比べて大型になる。
【0005】
一般に200V系や400V系のモータを駆動する装置に適用する高周波トランスHFTや商用周波数のトランスCFTは2kV程度の絶縁耐圧を有するものでよいが、数kVクラスの高圧の装置に適用されているIGBTのゲート駆動回路への電源供給には、10kV以上の絶縁耐圧を有するトランスが必要となる。
【0006】
また、
図8の回路方式を基本回路として高圧回路を構成する場合の例を
図10に示す。本回路例は特許文献1に示されているようにフライングキャパシタ形電力変換回路と呼ばれ、高耐圧の半導体スイッチ素子を適用せずに、低耐圧の半導体スイッチ素子を直列に接続し、さらに半導体スイッチ素子直列回路と並列にフライングキャパシタと呼ばれるコンデンサを接続する構成である。
図10は三相交流出力の場合の構成であるが、各相とも回路構成は同じであるので、U相について説明する。直流単電源DP1、DP2、DN1及びDN2を直列接続した直流電源の正極Pと負極Nとの間に4個の半導体スイッチ素子Su1、Su2、Sx1及びSx2の直列回路が接続される。また、半導体スイッチ素子Su1とSu2との接続点と半導体スイッチ素子Sx1とSx2との接続点との間にはフライングキャパシタと呼ばれるコンデンサCu1とCu2との直列回路が接続される。ここで直流電源の電圧を4Edとした場合、フライングキャパシタ電圧を2×Edとすることで交流出力点Aには、直流電圧の中間電位であるM点電位を基準0とすると2Ed、0、−2Edの3レベルの電位が出力可能となり、本回路は3レベルのインバータとなる。
【0007】
また
図11、12にはゲート駆動電源の構成を示す。
図11はIGBT毎に個別のトランス1台で構成した場合の回路例を、
図12は特許文献2に示されているようなトランスを用いた回路を2個直列接続した場合の回路例を、各々示す。
図11に示す高周波トランスHFT1は低電圧交流電源APと主回路間を、また
図12に示す高周波トランスHFT3は低電圧交流電源APと直流電源のM点電位との間を絶縁するのが目的であるが、一般的に高絶縁耐圧品となる。また
図12において各IGBTのゲート駆動回路へ電源供給するためのトランス群HFT2は、M点の電位を基準として動作するため、必要となる絶縁耐圧は2×Edとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−177951号公報
【特許文献2】特開2006−81232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、数1000Vクラスの高圧の装置では、一般的にゲート駆動回路用電源の絶縁手段として高耐圧のトランスを各IGBT毎に適用しているため、コストアップ要因となる。
特にトランスは高絶縁耐圧品になるほど、1次側と2次側の絶縁距離を大きく確保する必要があるため大型となる。従って、コスト及び体積は、絶縁耐圧値と比例的とはならず、指数的に増加する傾向にあり、コスト及び体積の低減は高圧装置の課題である。
【0010】
図11に示すような3レベル以上のマルチレベルインバータの場合、一般に半導体スイッチ素子数が多くなるため、その数に応じて高絶縁耐圧のトランスが必要となり、さらなるコストアップ要因となる。
また、
図12に示すような構成においては、高周波トランス群HFT2は1次巻線側の電位をM点電位としているが、少なくとも主回路直流電源電圧の1/2以上の電圧2Edに耐える絶縁耐圧を有するものが必要となる。
従って、本発明の課題は、フライングキャパシタ形電力変換回路の半導体スイッチ素子を駆動するゲート駆動回路に供給する電源回路に用いる絶縁器として低耐圧品を適用可能で、小型、低価格を実現できるゲート駆動電源供給回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題を解決するために、第1の発明は、複数個の直流単電源を直列接続して構成され3個の端子を備えた直流電源と、複数の半導体スイッチ素子と、フライングキャパシタとから構成され、前記直流電源の各端子間電圧と前記フライングキャパシタの電圧とを加算又は減算してマルチレベルの電圧を生成する、いわゆるフライングキャパシタ形電力変換回路で構成された、直流から交流、もしくは交流から直流に電力変換を行う装置に適用する前記半導体スイッチ素子を駆動するゲート駆動回路への電源供給回路であって、前記電源供給回路は電源供給のための絶縁器
としてトランスを用いた回路を2個以上直列接続した回路構成とし、前記直列接続した回路の中間回路部を、前記フライングキャパシタの中間電位点、又は主回路直流部の電位が固定された固定電位点に接続する。
【0012】
第2の発明は、第1の発明における電力変換装置のゲート駆動電源供給回路において、主回路直流部の固定電位点は、直流部の最高電位点と中間電位点との間の電位点、又は主回路直流部の最低電位点と中間電位点との間の電位点とする。
【0013】
第3の発明は、第1又は第2の発明における電力変換装置のゲート駆動電源供給回路において、主回路直流部の中間電位点を基準電位点とし、前記基準電位点からゲート駆動電源供給のための絶縁器
としてトランスを用いた回路を2個以上直列接続して各半導体スイッチ素子のゲート駆動回路に電源供給する。
【0014】
上述の発明は、数1000Vクラスの高電圧の電力変換装置において、ゲート駆動電源供給のための絶縁方法として、絶縁器として高耐圧のトランス1台で構成するのではなく、小型で安価な低耐圧のトランスを用いた回路を直列接続することにより実現する。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、高圧の電力変換システムであるフライングキャパシタ形電力変換回路の半導体スイッチ素子を駆動するゲート駆動回路に供給する電源回路に用いる絶縁器として、高耐圧のトランス1台で構成するのではなく、小型で安価な低耐圧のトランスを用いた回路を直列接続し、直列接続回路の中間接続点をフライングキャパシタの中間電位点又は主回路直流部の固定電位点に接続するようにしている。
この結果、小型、低価格を実現できるゲート駆動電源供給回路が実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図8】一般的な3相インバータのシステム図である。
【
図9】従来のゲート駆動回路電源の回路図例である。
【
図10】従来の3レベル高圧インバータの主回路図例である。
【
図11】高圧インバータのおけるゲート駆動電源の従来の回路図例1である。
【
図12】高圧インバータのおけるゲート駆動電源の従来の回路図例2である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の要点は、フライングキャパシタ形電力変換回路の半導体スイッチ素子を駆動するゲート駆動回路に供給する電源回路に用いる絶縁器として、トランスを用いた回路を直列接続し、直列接続回路の中間接続点をフライングキャパシタの中間電位点又は主回路直流部の電位が固定された固定電位点に接続するようにしている点である。
【実施例1】
【0018】
図1に、本発明の第1の実施例を示す。本図は、フライングキャパシタを用いた3レベル3相出力インバータ回路での実施例である。各半導体スイッチ素子のIGBTのゲートには各々ゲート駆動回路が接続されるが、省略してある。各相の構成は同じであるので、U相を中心に説明する。直流単電源DP1、DP2、DN1及びDN2を直列接続した直流電源の正極Pと負極Nとの間に4個の半導体スイッチ素子Su1、Su2、Sx1及びSx2の直列回路が接続される。また、半導体スイッチ素子Su1とSu2との接続点と半導体スイッチ素子Sx1とSx2との接続点との間にはフライングキャパシタと呼ばれるコンデンサCu1とCu2との直列回路が接続される。ここで直流電源の電圧を4Edとした場合、フライングキャパシタ電圧を2×Edとすることで交流出力点Aには、直流電圧の中間電位であるM点電位を基準0とすると2Ed、0、−2Edの3レベルの電位が出力可能となり、本回路は3レベルのインバータとなる。また、負荷からの回生電力が交流出力から直流電源へ回生される時は交流を直流に変換するコンバータとして動作する。直流電源の中間電位点であるM点電位から各ゲート駆動回路への電源供給は高周波トランスTr2を用いた回路と高周波トランスTr3を用いた回路との直列接続回路で実施している。
【0019】
高周波トランスTr3を用いた回路の出力は、各々各半導体スイッチ素子のIGBT駆動用ゲート駆動回路に駆動用電源として接続される。さらに、高周波トランスTr2を用いた回路と高周波トランスTr3を用いた回路との直列接続点(中間回路部)を、固定電位点としての直流電源のM点電位からEd高い電位点E1又はM点電位からEd低い電位点E2、又はコンデンサCu1とCu2との直列回路であるフライングキャパシタの直列回路の中間電位点E3のいずれかに接続する構成である。
【0020】
図2に、直流電源の中間点Mの電位を0とした時の、
図1に示す3レベル出力タイプの変換回路の各ゲート駆動回路用電源における高周波トランスTr2とTr3の1次−2次巻線間に印加される電圧と、高周波トランスTr2を用いた回路と高周波トランスTr3を用いた回路との直列接続点(中間回路部)電圧を示す。
図2から判るように、全ての高周波トランスTr2群とTr3群の1次−2次巻線間に印加される電圧はEdとなるので、この電圧を絶縁保証する耐圧のトランスのみでシステムの構築が可能となる。
【0021】
図3に低電圧交流電源APからゲート駆動回路の電源を生成する回路の簡略構成図を示す。低電圧交流電源APの商用周波数の電圧を高周波の交流電圧に変換するAC/AC変換回路ACVと、低電圧交流電源APと直流電源のM点電位間を絶縁する高周波トランスTr1は
図12に示す従来方式と同様である。本実施例では、
図12における電圧2Edに耐える高絶縁耐圧の高周波トランスHFT2が、電圧Edに耐える低絶縁耐圧の高周波トランスTr2とTr3に置き換えられる。
尚、
図3の回路構成では、絶縁トランスの巻線を直接直列接続した回路例を示したが、各絶縁用高周波トランスTr1〜Tr3を用いた回路は、半導体スイッチを用いたAC/DC変換回路とDC/AC変換回路と絶縁トランスとを組合せても実現可能である。構造的に配線距離が長くなる場合や周波数を変更したい場合に有効である。
【実施例2】
【0022】
図4に、本発明の第2の実施例を示す。フライングキャパシタタイプの電力変換装置で、5レベルの出力が可能な回路での実施例である。以下1相分について説明する。5レベル電力変換回路は、特開2012−182974号公報などで、公知であるので、詳細説明は省略する。実施例1に比べて、フライングキャパシタとしてのコンデンサC1aとC1bの直列接続回路と並列に半導体スイッチ素子S5とS6の直列回路を接続し、半導体スイッチ素子S5とS6との直列回路の直列接続点と直流電源の中間点Mとの間に逆阻止形IGBTS11とS12を逆並列接続して構成した双方向スイッチを用いている点が特徴である。
【0023】
直流電源は、直流単電源DP1、DP2、DN1及びDN2の直列接続回路で構成され、中間点Mの電位を0、各直流単電源の電圧をEd、フライングキャパシタとしてのコンデンサC1aとC1bとの直列回路の電圧をEdとすると、交流端子には5レベルの電圧を出力可能である。
第1の実施例と同様に、各IGBTのゲート駆動回路の動作電位に応じて、
図3に示す高周波トランスTr2とTr3の直列接続点の電位を、固定電位点としての直流単電源DP1とDP2の接続点E1又は直流単電源DN1とDN2の接続点E2、又はフライングキャパシタとしてのコンデンサC1aとC1bの直列接続点E3とすることで、分圧化が可能となる。
【0024】
図5に、直流電源の中間点Mの電位を0とした時の高周波トランスTr2の1次−2次巻線間に印加される電圧、高周波トランスTr3の1次−2次巻線間に印加される電圧、及び高周波トランスTr2とTr3の直列接続点(中間回路部)の電圧を示す。本回路方式の場合、1.5Edに耐えるトランス、Edに耐えるトランス及び0.5Edに耐えるトランスの3種類のトランスが必要となる。従来方式では、全てのゲート駆動回路用電源回路に2Edに耐えるトランスが必要であることと比較すれば、小型低コスト化が可能となる。
【実施例3】
【0025】
図6に、本発明の第3の実施例を示す。フライングキャパシタタイプの電力変換装置で、7レベルの出力が可能な回路での実施例である。以下1相分について説明する。7レベル電力変換回路は、特願2012−004723で、同出願人が出願済であるので、詳細説明は省略する。主回路は、実施例2の回路構成を7レベル動作が可能なように拡張した回路構成である。直流単電源DP1〜DP3及びDN1〜DN3直列接続した直流電源と並列に、半導体スイッチ素子S1a〜S1d、S2〜S5及びS6a〜S6dの直列回路が接続される。
【0026】
さらに、半導体スイッチ素子S3とS4との直列回路と並列に第1のフライングキャパシタとしてのコンデンサC1が、半導体スイッチ素子S2〜S5の直列回路と並列に第2のフライングキャパシタとしてのコンデンサC2aとC2bとの直列回路が、コンデンサC2aとC2bとの直列回路と並列に半導体スイッチ素子S7〜S10の直列回路が、半導体スイッチ素子S8とS9との直列回路と並列に第3のフライングキャパシタとしてのコンデンサS3が、半導体スイッチ素子S8とS9との直列接続点と直流電源の中間点Mとの間には逆阻止形IGBTS11とS12を逆並列接続した双方向スイッチが、各々接続される。
【0027】
直流電源は、直流単電源DP1〜DP3、DN1〜DN3の直列回路で構成され、中間点Mの電位を0、各直流単電源の電圧をEd、フライングキャパシタとしてのコンデンサC1とC3の電圧を各々Ed、C2aとC2bとの直列回路の電圧を2Edとすると、交流端子には7レベルの電圧を出力可能である。
第1及び第2の実施例と同様に、各IGBTのゲート駆動回路の動作電位に応じて、
図3に示す高周波トランスTr2とTr3の直列接続点の電位を、固定電位点としての直流単電源DP2とDP3の接続点E1又は直流単電源DN1とDN2の接続点E2、又はフライングキャパシタとしてのコンデンサC2aとC2bの直列接続点E3とすることで、分圧化が可能となる。
【0028】
図7に、直流電源の中間点Mの電位を0とした時の高周波トランスTr2の1次−2次巻線間に印加される電圧、高周波トランスTr3の1次−2次巻線間に印加される電圧、及び高周波トランスTr2とTr3との直列接続点(中間回路部)の電圧を示す。本回路方式の場合、2Edに耐えるトランス及びEdに耐えるトランスの2種類のトランスが必要となる。従来方式では、全てのゲート駆動回路用電源回路に3Edに耐えるトランスが必要であることと比較すれば、小型低コスト化が可能となる。
【0029】
尚、本実施例では、3レベル、5レベル及び7レベル出力のフライングキャパシタ形電力変換回路について説明したが、さらにレベル数の多い電力変換回路についても、適用可能である。また、高周波トランスTr2とTr3との直列接続点(中間回路部)を接続する直流電源の固定電位点は直流単電源DP1とDP2との直列接続点又は直流単電源DN2とDN3との直列接続点としても同様の効果が得られる。
また、トランスを用いた回路の直列接続数を2個以上に増やして、各直列接続部をフライングキャパシタの中間電位点又は直流電源の固定電位点に接続しても、同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、二つの直流単電源を直列接続した3端子の直流電源を入力としたマルチレベルの電圧を出力するフライングキャパシタ形電力変換回路を用いる高電圧の電動機駆動装置、系統連系用電力変換装置などへの適用が可能である。
【符号の説明】
【0031】
DP1〜DP3、DN1〜DN3・・・直流単電源 ACM・・・モータ
APM・・・主交流電源 AP・・・低電圧交流電源
RE・・・整流回路 INV・・・直流−交流変換回路
ACV・・・AC/AC変換回路
CFT・・・商用周波数トランス
HFT、HFT1〜HFT3、Tr1〜Tr3・・・高周波トランス
D・・・ダイオード
GD、GDu〜GDw、GDx〜GDz・・・ゲート駆動回路
CNT・・・制御回路
Cu1、Cu2、Cv1、Cv2、Cw1、Cw2、C1a、C1b・・・コンデンサ
C1、C2a、C2b、C3、Ca、Cb、Cd・・・コンデンサ
S、Su1、Su2、Sv1、Sv2、Sw1、Sw2・・・半導体スイッチ素子
Sx1、Sx2、Sy1、Sy2、Sz1、Sz2・・・半導体スイッチ素子
S1a〜S1d、S2、S3、S4、S4a〜S4c、S5・・・半導体スイッチ素子
S6a〜S6d、S7〜S10・・・半導体スイッチ素子
S11、S12・・・逆阻止形IGBT