特許第6146149号(P6146149)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6146149系統連系インバータ装置、通信装置および電流生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6146149
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】系統連系インバータ装置、通信装置および電流生成方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20170607BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20170607BHJP
   H04B 3/54 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   H02M7/48 R
   H02M7/48 E
   H02J3/38 130
   H04B3/54
【請求項の数】9
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2013-121903(P2013-121903)
(22)【出願日】2013年6月10日
(65)【公開番号】特開2014-239626(P2014-239626A)
(43)【公開日】2014年12月18日
【審査請求日】2016年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】特許業務法人ワンディーIPパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】奥村 俊明
【審査官】 佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−533976(JP,A)
【文献】 特開2012−253406(JP,A)
【文献】 特開2004−140756(JP,A)
【文献】 特開2010−004623(JP,A)
【文献】 特開2012−010444(JP,A)
【文献】 特開2001−327172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02J 3/38
H04B 3/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電電力から発電電流を生成し、前記発電電流を電力系統へ出力するための電流生成部と、
前記電力系統における系統電圧がゼロボルトを示すゼロクロスタイミングを検出するためのゼロクロス検出部と、
前記ゼロクロス検出部により検出された前記ゼロクロスタイミングに基づいて、前記発電電流の目標値を設定するための目標電流設定部と、
前記ゼロクロス検出部により検出された前記ゼロクロスタイミングに基づいてゼロクロス期間を設定するためのゼロクロス期間設定部と、
前記系統電圧、および前記目標値と前記電流生成部により生成された前記発電電流との差に基づいて、前記発電電流を調整するための電流調整部とを備え、
前記電流調整部は、前記ゼロクロス期間設定部により設定された前記ゼロクロス期間において、前記差を前記差より絶対値の小さい同符号の値またはゼロに補正し、補正後の差および前記系統電圧に基づいて前記発電電流を調整する電流安定化処理を行い、
前記ゼロクロス期間設定部は、他の装置により前記電力系統において行われる低速の電力線通信の信号伝送期間が含まれるように前記ゼロクロス期間を設定する、系統連系インバータ装置。
【請求項2】
前記電流調整部は、前記ゼロクロス期間のうち、前記電力系統における電流の絶対値が所定のしきい値より大きくなる期間において前記電流安定化処理を行う、請求項1に記載の系統連系インバータ装置。
【請求項3】
前記系統連系インバータ装置は、さらに、
前記電力系統において行われる低速の電力線通信を開始する旨を示す通信開始情報、および前記電力系統において行われる低速の前記電力線通信に用いられる信号を受信した旨を示す信号受信情報の少なくとも一方を他の装置から受信するための受信部を備え、
前記電流調整部は、前記受信部が前記通信開始情報または前記信号受信情報を他の装置から受信した場合、前記ゼロクロス期間において前記電流安定化処理を行う、請求項1または請求項2に記載の系統連系インバータ装置。
【請求項4】
前記ゼロクロス検出部は、他の装置により前記電力系統において低速の電力線通信が行われている期間、前記ゼロクロスタイミングを推定する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の系統連系インバータ装置。
【請求項5】
前記ゼロクロス検出部は、前記ゼロクロスタイミング以外のタイミングを検出し、検出したタイミングから前記ゼロクロスタイミングを推定する、請求項に記載の系統連系インバータ装置。
【請求項6】
前記ゼロクロス検出部は、前記系統電圧が最大値となるタイミングおよび最小値となるタイミングのいずれか一方から前記ゼロクロスタイミングを推定する、請求項に記載の系統連系インバータ装置。
【請求項7】
前記電流調整部は、前記ゼロクロス検出部により推定された前記ゼロクロスタイミングに基づいて前記系統電圧を推定し、推定した前記系統電圧、および前記差に基づいて前記発電電流を調整する、請求項から請求項のいずれか1項に記載の系統連系インバータ装置。
【請求項8】
前記目標電流設定部は、前記ゼロクロス検出部により推定された前記ゼロクロスタイミングに基づいて前記目標値を設定する、請求項から請求項のいずれか1項に記載の系統連系インバータ装置。
【請求項9】
発電電力から発電電流を生成し、前記発電電流を電力系統へ出力するステップと、
前記電力系統における系統電圧がゼロボルトを示すゼロクロスタイミングを検出するステップと、
検出した前記ゼロクロスタイミングに基づいて、前記発電電流の目標値を設定するステップと、
検出した前記ゼロクロスタイミングに基づいてゼロクロス期間を設定するステップと、
前記系統電圧、および前記目標値と生成した前記発電電流との差に基づいて、前記発電電流を調整するステップとを含み、
前記発電電流を調整するステップにおいては、設定した前記ゼロクロス期間において、前記差を前記差より絶対値の小さい同符号の値またはゼロに補正し、補正後の差および前記系統電圧に基づいて前記発電電流を調整する電流安定化処理を行い、
前記ゼロクロス期間を設定するステップにおいては、他の装置により前記電力系統において行われる低速の電力線通信の信号伝送期間が含まれるように前記ゼロクロス期間を設定する、電流生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、系統連系インバータ装置、通信装置および電流生成方法に関し、特に、発電装置から受ける電力を利用する系統連系インバータ装置、当該系統連系インバータ装置と同じ電力系統に接続された通信装置および電流生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第5055429号公報(特許文献1)には、以下のような、ユーティリティにより送信された外向きメッセージの検出を向上させる方法が開示されている。すなわち、中継器を介して電気ユーティリティと端末装置とが電気配電機構を通信路として互いに通信する通信ネットワークにおいて、電気ユーティリティにより用いられる双方向自動通信システムであって、外向きメッセージが該ユーティリティから端末装置へ送信され、内向きの応答メッセージが端末装置から該ユーティリティへ返送され、それぞれの外向きおよび内向きメッセージは該ユーティリティの電気配電機構を介して送信および受信されるシステムにおいて、中継器がシステムの他の場所から送信された内向きメッセージから外向きメッセージを区別することを可能にする方法である。この方法は、外向きメッセージのプリアンブルを形成する複数のビットを検出し、該検出した複数のビットからビット値を抽出する、検出する段階と、プリアンブル内のあるビット値が期待される位置の信号強度の、該プリアンブル内の別のビット値が期待される位置の信号強度に対する比を計算する段階と、該計算された比が所定値を超えている場合に、該ビットを外向きメッセージの有効なプリアンブルとして受け入れる段階とを有する。そして、検出する段階は、該プリアンブルのビット列に含まれる中間値を検出する段階を有する。
【0003】
外向きメッセージは、具体的には、外向きTWACS(登録商標)(Two-Way Automatic Communications System)メッセージである。外向きTWACSメッセージのプリアンブルは、9ビットのパターン011100100または16進数で0E4を有する。1および0は、ゼロ交差点近くすなわちゼロクロスタイミング近傍でAC波形の第1または第3の半周期にパルスをオンにすることにより表現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5055429号公報
【特許文献2】特表2012−518952号公報
【特許文献3】特開昭54−113835号公報
【特許文献4】特開昭53−61025号公報
【特許文献5】特許第2734067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たとえば、系統連系PCS(Power Conditioning System)は、発電装置において発電された発電電力から発電電流を生成し、生成した発電電流を電力系統へ出力する。系統連系PCSが電力系統へ出力する発電電流すなわち交流電流の品質は、系統連系規程により以下のように定められている。すなわち、交流電流を電力系統へ力率0.95以上で出力すること、および出力電流歪率が総合電流歪率5%以下、かつ各自調波3%以下であることが定められている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された外向きTWACSメッセージ等が電気配電機構を通信路として送受信される場合、系統連系PCSは、AC波形のゼロクロスタイミング近傍において電気配電機構経由でたとえば電流パルスを受信してしまう場合がある。
【0007】
系統連系PCSが電流パルスを受信した場合、たとえば発電電力から発電電流を生成するための制御が当該電流パルスにより乱されることがある。この際、系統連系PCSは、系統連系規程により定められた品質を満たさない低品質の発電電流を電力系統へ出力してしまう。
【0008】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、発電電力から生成した発電電流を電力系統へ出力する構成において、発電電流を生成するための制御を安定化し、発電電流の品質低下を抑制することが可能な系統連系インバータ装置、通信装置および電流生成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる系統連系インバータ装置は、発電電力から発電電流を生成し、上記発電電流を電力系統へ出力するための電流生成部と、上記電力系統における系統電圧がゼロボルトを示すゼロクロスタイミングを検出するためのゼロクロス検出部と、上記ゼロクロス検出部により検出された上記ゼロクロスタイミングに基づいて、上記発電電流の目標値を設定するための目標電流設定部と、上記ゼロクロス検出部により検出された上記ゼロクロスタイミングに基づいてゼロクロス期間を設定するためのゼロクロス期間設定部と、上記系統電圧、および上記目標値と上記電流生成部により生成された上記発電電流との差に基づいて、上記発電電流を調整するための電流調整部とを備え、上記電流調整部は、上記ゼロクロス期間設定部により設定された上記ゼロクロス期間において、上記差を上記差より絶対値の小さい同符号の値またはゼロに補正し、補正後の差および上記系統電圧に基づいて上記発電電流を調整する電流安定化処理を行う。
【0010】
(10)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる通信装置は、電力系統において他の通信装置と低速の電力線通信を行うための電力線通信部と、上記電力線通信が開始される前に、上記電力線通信を開始する旨を示す通信開始情報を、上記電力系統へ電流を供給する系統連系インバータ装置へ送信する送信部とを備える。
【0011】
(12)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる電流生成方法は、発電電力から発電電流を生成し、上記発電電流を電力系統へ出力するステップと、上記電力系統における系統電圧がゼロボルトを示すゼロクロスタイミングを検出するステップと、検出した上記ゼロクロスタイミングに基づいて、上記発電電流の目標値を設定するステップと、検出した上記ゼロクロスタイミングに基づいてゼロクロス期間を設定するステップと、上記系統電圧、および上記目標値と生成した上記発電電流との差に基づいて、上記発電電流を調整するステップとを含み、上記発電電流を調整するステップにおいては、設定した上記ゼロクロス期間において、上記差を上記差より絶対値の小さい同符号の値またはゼロに補正し、補正後の差および上記系統電圧に基づいて上記発電電流を調整する電流安定化処理を行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発電電力から生成した発電電流を電力系統へ出力する構成において、発電電流を生成するための制御を安定化し、発電電流の品質低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る系統連系システム201の構成を示す図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る系統連系システム201における系統連系PCS101の構成を示す図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る系統連系PCS101における測定部2の構成を示す図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る系統連系システム201における子通信装置202の構成を示す図である。
図5図5は、本発明の実施の形態に係る子通信装置202における電力線通信部81の構成を示す図である。
図6図6は、本発明の実施の形態に係る子通信装置202において生成される電流パルスの一例を示す図である。
図7図7は、比較例としての系統連系PCSが生成する交流電流の一例を示す図である。
図8図8は、本発明の実施の形態に係る系統連系PCS101における制御部1の構成を示す図である。
図9図9は、本発明の実施の形態に係る系統連系PCS101の制御部1における電力線通信検出部8の構成を示す図である。
図10図10は、本発明の実施の形態に係る電流パルス検出部61が検出する電流パルスの一例を示す図である。
図11図11は、本発明の実施の形態に係る系統連系PCS101の制御部1における外乱補償部6の構成を示す図である。
図12図12は、本発明の実施の形態に係るゼロクロス検出部71が推定するゼロクロスタイミングの一例を示す図である。
図13図13は、本発明の実施の形態に係るゼロクロス期間設定部4が設定するゼロクロス期間の一例を示す図である。
図14図14は、本発明の実施の形態に係る系統連系PCS101の制御部1における電流調整部5の構成を示す図である。
図15図15は、本発明の実施の形態に係る電流調整部5がインバータ回路33を制御する制御信号を生成する際に用いる三角波比較方式の一例を示す図である。
図16図16は、本発明の実施の形態に係る系統連系PCS101が生成する発電電流の一例を示す図である。
図17図17は、本発明の実施の形態に係る系統連系PCS101が電流安定化処理を行なう際の動作手順を定めたフローチャートである。
図18図18は、本発明の実施の形態に係る系統連系PCS101が検出した電流パルスに基づいて電流安定化処理を行なう際の動作手順を定めたフローチャートである。
図19図19は、本発明の実施の形態に係る系統連系PCS101が子通信装置202から受ける通信開始情報に基づいて電流安定化処理を行なう際の動作手順を定めたフローチャートである。
図20図20は、本発明の実施の形態に係る系統連系PCS101が子通信装置202から受ける信号受信情報に基づいて電流安定化処理を行なう際の動作手順を定めたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0015】
(1)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる系統連系インバータ装置は、発電電力から発電電流を生成し、上記発電電流を電力系統へ出力するための電流生成部と、上記電力系統における系統電圧がゼロボルトを示すゼロクロスタイミングを検出するためのゼロクロス検出部と、上記ゼロクロス検出部により検出された上記ゼロクロスタイミングに基づいて、上記発電電流の目標値を設定するための目標電流設定部と、上記ゼロクロス検出部により検出された上記ゼロクロスタイミングに基づいてゼロクロス期間を設定するためのゼロクロス期間設定部と、上記系統電圧、および上記目標値と上記電流生成部により生成された上記発電電流との差に基づいて、上記発電電流を調整するための電流調整部とを備え、上記電流調整部は、上記ゼロクロス期間設定部により設定された上記ゼロクロス期間において、上記差を上記差より絶対値の小さい同符号の値またはゼロに補正し、補正後の差および上記系統電圧に基づいて上記発電電流を調整する電流安定化処理を行う。
【0016】
このように、ゼロクロス期間において電流安定化処理を行う構成により、たとえばゼロクロス期間において電流パルスを受けて発電電流が目標値から大きく離れた場合においても、発電電流の調整の乱れを小さくすることができるので、発電電流を安定して調整することができる。
【0017】
これにより、ゼロクロス期間において電流パルスを受けて発電電流が目標値から大きく離れた場合においても、低品質の発電電流が電力系統へ出力されることを抑制することができる。
【0018】
また、発電電流を調整するアルゴリズムの変更により電流安定化処理を行うための機能を実装することができるので、品質のよい発電電流を低コストで生成することができる。
【0019】
(2)好ましくは、上記ゼロクロス期間設定部は、他の装置により上記電力系統において行われる低速の電力線通信の信号伝送期間が含まれるように上記ゼロクロス期間を設定する。
【0020】
このように、電流パルスにより発電電流が目標値から大きく離れる信号伝送期間が含まれるようにゼロクロス期間を設定する構成により、ゼロクロス期間以外の期間において発電電流の品質を高めつつ、ゼロクロス期間において低品質の発電電流を電力系統へ出力することを抑制することができるので、発電電流の品質を安定して高めることができる。
【0021】
(3)好ましくは、上記電流調整部は、上記ゼロクロス期間のうち、上記電力系統における電流の絶対値が所定のしきい値より大きくなる期間において上記電流安定化処理を行う。
【0022】
このように、ゼロクロス期間のうち、電流パルスが発生し、発電電流の調整の乱れが発生する可能性が高い状況において電流安定化処理を行う構成により、電流安定化処理を効率よく行うことができる。
【0023】
また、ゼロクロス期間のうち、電流パルスがない期間に電流安定化処理を行うことを避けることができるので、当該期間において、発電電流の目標値への追随性を高めることができる。これにより、品質のよい発電電流を効率的に生成することができる。
【0024】
(4)好ましくは、上記系統連系インバータ装置は、さらに、上記電力系統において行われる低速の電力線通信を開始する旨を示す通信開始情報、および上記電力系統において行われる低速の上記電力線通信に用いられる信号を受信した旨を示す信号受信情報の少なくとも一方を他の装置から受信するための受信部を備え、上記電流調整部は、上記受信部が上記通信開始情報または上記信号受信情報を他の装置から受信した場合、上記ゼロクロス期間において上記電流安定化処理を行う。
【0025】
このように、電力系統において低速の電力線通信が行われ、電流パルスによる発電電流の調整の乱れが発生する可能性が高い状況において電流安定化処理を行う構成により、電流安定化処理を効率よく行うことができる。
【0026】
また、低速の電力線通信による電流パルスがない期間に電流安定化処理を行うことを避けることができるので、当該期間において、発電電流の目標値への追随性を高めることができる。これにより、品質のよい発電電流を効率的に生成することができる。
【0027】
(5)好ましくは、上記ゼロクロス検出部は、他の装置により上記電力系統において低速の電力線通信が行われている期間、上記ゼロクロスタイミングを推定する。
【0028】
このように、ゼロクロスタイミング近傍において低速の電力線通信による歪みを有する系統電圧からゼロクロスタイミングを検出する代わりに、ゼロクロスタイミングを推定する構成により、歪みのない系統電圧から検出されるゼロクロスタイミングからずれたタイミングをゼロクロスタイミングとして検出してしまうことを避けることができる。
【0029】
(6)好ましくは、上記ゼロクロス検出部は、上記ゼロクロスタイミング以外のタイミングを検出し、検出したタイミングから上記ゼロクロスタイミングを推定する。
【0030】
このように、低速の電力線通信による歪みを有する系統電圧から正しく検出することが困難なゼロクロスタイミング、以外のタイミングを検出対象とする構成により、低速の電力線通信による影響を受けずに当該タイミングを検出することができるので、ゼロクロスタイミングの推定精度を向上させることができる。
【0031】
(7)より好ましくは、上記ゼロクロス検出部は、上記系統電圧が最大値となるタイミングおよび最小値となるタイミングのいずれか一方から上記ゼロクロスタイミングを推定する。
【0032】
このように、正確かつ容易に検出することが可能な最大値となるタイミングおよび最小値となるタイミングのいずれか一方からゼロクロスタイミングを推定する構成により、簡易な処理でゼロクロスタイミングの推定精度を向上させることができる。
【0033】
(8)より好ましくは、上記電流調整部は、上記ゼロクロス検出部により推定された上記ゼロクロスタイミングに基づいて上記系統電圧を推定し、推定した上記系統電圧、および上記差に基づいて上記発電電流を調整する。
【0034】
このように、低速の電力線通信による歪みを有する系統電圧の代わりに、推定された系統電圧、および目標値と電流生成部により生成された発電電流との差に基づいて発電電流を調整する構成により、低速の電力線通信による影響を受けずに発電電流を適切に調整することができる。
【0035】
(9)より好ましくは、上記目標電流設定部は、上記ゼロクロス検出部により推定された上記ゼロクロスタイミングに基づいて上記目標値を設定する。
【0036】
このような構成により、低速の電力線通信による歪みを有する系統電圧から検出されたゼロクロスタイミングの代わりに、推定されたゼロクロスタイミングに基づいて適切な目標値を設定することができる。
【0037】
(10)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる通信装置は、電力系統において他の通信装置と低速の電力線通信を行うための電力線通信部と、上記電力線通信が開始される前に、上記電力線通信を開始する旨を示す通信開始情報を、上記電力系統へ電流を供給する系統連系インバータ装置へ送信する送信部とを備える。
【0038】
このように、電流パルスを発生する低速の電力線通信を行うことを系統連系インバータ装置に対して事前に通知する構成により、系統連系インバータ装置では、電流パルスの発生を前もって認識することができるので、電流パルスによる発電電流の調整の乱れを抑制する処理を適切なタイミングで開始することができる。
【0039】
これにより、系統連系インバータ装置において発電電流を安定して調整することができるので、低品質の発電電流を電力系統へ出力することを抑制することができる。
【0040】
(11)好ましくは、上記送信部は、上記電力線通信部が他の通信装置から上記電力線通信に用いられる信号を受信した場合、上記信号を受信した旨を示す信号受信情報を上記系統連系インバータ装置へ送信する。
【0041】
このように、他の通信装置から低速の電力線通信に用いられる信号を受信したことを系統連系インバータ装置に対して通知する構成により、系統連系インバータ装置では、低速の電力線通信が始まったことを認識することができる。
【0042】
(12)上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる電流生成方法は、発電電力から発電電流を生成し、上記発電電流を電力系統へ出力するステップと、上記電力系統における系統電圧がゼロボルトを示すゼロクロスタイミングを検出するステップと、検出した上記ゼロクロスタイミングに基づいて、上記発電電流の目標値を設定するステップと、検出した上記ゼロクロスタイミングに基づいてゼロクロス期間を設定するステップと、上記系統電圧、および上記目標値と生成した上記発電電流との差に基づいて、上記発電電流を調整するステップとを含み、上記発電電流を調整するステップにおいては、設定した上記ゼロクロス期間において、上記差を上記差より絶対値の小さい同符号の値またはゼロに補正し、補正後の差および上記系統電圧に基づいて上記発電電流を調整する電流安定化処理を行う。
【0043】
このように、ゼロクロス期間において電流安定化処理を行う構成により、たとえばゼロクロス期間において電流パルスを受けて発電電流が目標値から大きく離れた場合においても、発電電流の調整の乱れを小さくすることができるので、発電電流を安定して調整することができる。
【0044】
これにより、ゼロクロス期間において電流パルスを受けて発電電流が目標値から大きく離れた場合においても、低品質の発電電流が電力系統へ出力されることを抑制することができる。
【0045】
また、発電電流を調整するアルゴリズムの変更により電流安定化処理を行うための機能を実装することができるので、品質のよい発電電流を低コストで生成することができる。
【0046】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0047】
[構成および基本動作]
図1は、本発明の実施の形態に係る系統連系システム201の構成を示す図である。
【0048】
図1を参照して、系統連系システム201は、発電装置11と、系統連系PCS(系統連系インバータ装置)101と、子通信装置202と、親通信装置212と、低圧トランスT1,T2と、系統電源12とを備える。低圧トランスT1は、1次側コイルL11と、2次側コイルL12とを含む。低圧トランスT2は、1次側コイルL21と、2次側コイルL22とを含む。
【0049】
系統連系PCS101は、たとえば、家屋内および事業所等に設置され、発電装置11から受けた電力を変換し、変換した電力を低圧トランスT1経由で系統電源12へ出力する。
【0050】
この際、系統連系PCS101は、たとえば、変換した電力を分電し、分電した電力を家屋内または事業所に設置された各機器へ供給してもよい。なお、図1では、1つの系統連系PCS101を代表的に示しているが、さらに多数の系統連系PCS101が設けられてもよい。
【0051】
より詳細には、発電装置11は、ここでは、太陽電池モジュール14を含む。太陽電池モジュール14は、たとえば、複数組の太陽電池パネルにより構成される。各組の太陽電池パネルは、たとえば、太陽光を受けると、受けた太陽光のエネルギーを直流電力に変換し、変換した直流電力を電力線PL1,PL2経由で系統連系PCS101へ出力する。
【0052】
なお、太陽電池モジュール14は、たとえば、太陽電池パネルの組間の電流の逆流を防止するための回路および感電の発生を防止するための断路機を含んでもよい。また、発電装置11は、風力発電装置等の他の発電可能な装置であってもよい。
【0053】
系統連系PCS101は、たとえば、発電装置11から受けた直流電力を電力系統へ供給可能な電力、具体的には電圧202ボルトおよび周波数60ヘルツの交流電力へ変換する。そして、系統連系PCS101は、たとえば、電圧202ボルトおよび周波数60ヘルツの交流電力を電力線PL3,PL4経由で電力系統、具体的には低圧トランスT1へ出力する。
【0054】
すなわち、系統連系PCS101は、発電装置11により発電された電力から生成した交流電力を電力線PL3,PL4経由で電力系統へ売電する。また、系統連系PCS101は、たとえば電力線PL3,PL4、ノードN3,N4および電力線PL9,PL10を介して子通信装置202と接続されている。
【0055】
なお、系統連系PCS101が電力系統へ売電する交流電力の品質は、系統連系規程により以下のように定められている。すなわち、交流電流を電力系統へ力率0.95以上で出力すること、および出力電流歪率が総合電流歪率5%以下、かつ各自調波3%以下であることが、系統連系規程により定められている。
【0056】
また、系統連系PCS101は、たとえば東日本地域に設置される場合、電圧202ボルトおよび周波数50ヘルツの交流電力へ変換してもよい。以下では、交流電力、交流電圧および交流電流の周波数が60ヘルツである場合について説明する。
【0057】
また、電圧202ボルトは、電気事業法施工規則により規定された標準電圧であり、維持すべき値として202±20ボルトが規定される。
【0058】
低圧トランスT1は、たとえば、系統連系PCS101から1次側コイルL11において受けた電圧202ボルトの交流電力すなわち交流電圧を2次側コイルL12において電圧6.6キロボルトの交流電圧へ変換する。
【0059】
そして、低圧トランスT1は、電圧6.6キロボルトの交流電圧を電力線PL5,PL6経由で系統電源12、および電力線PL5,PL6、ノードN5,N6および電力線PL7,PL8経由で低圧トランスT2へ出力する。系統電源12は、具体的には変電所におけるトランスである。
【0060】
低圧トランスT2は、たとえば、低圧トランスT1から1次側コイルL21において受けた電圧6.6キロボルトの交流電圧を2次側コイルL22において電圧202ボルトの交流電圧へ変換する。そして、低圧トランスT2は、電圧202ボルトの交流電圧を電力線PL11,PL12経由で親通信装置212へ出力する。
【0061】
系統連系インバータ装置101は、たとえば発電電力の需給バランスを調整するために変電所と通信を行い、情報をやり取りする。この際、系統連系インバータ装置101は、子通信装置202、および変電所に設置された親通信装置212経由で変電所と通信を行う。
【0062】
より詳細には、系統連系インバータ装置101は、たとえば信号線SL1を介して子通信装置202と通信を行う。なお、系統連系インバータ装置101は、子通信装置202とたとえば無線通信を行ってもよい。
【0063】
子通信装置202は、たとえば、電力線PL9,PL10、電力線PL3,PL4、低圧トランスT1、電力線PL5,PL6、電力線PL7,PL8、低圧トランスT2および電力線PL11,PL12を介して親通信装置212と電力線通信を行う。
【0064】
なお、図1では、1つの子通信装置202を代表的に示しているが、さらに多数の子通信装置202が設けられてもよい。また、図1では、1つの親通信装置212を代表的に示しているが、さらに多数の親通信装置212が設けられてもよい。電力線通信の詳細については後述する。
【0065】
[系統連系PCSの構成]
図2は、本発明の実施の形態に係る系統連系システム201における系統連系PCS101の構成を示す図である。
【0066】
図2を参照して、系統連系PCS101は、制御部1と、測定部2と、通信部(受信部)3と、コンバータ回路31と、キャパシタ32と、インバータ回路(電流生成部)33と、平滑化回路34とを備える。コンバータ回路31は、キャパシタC1と、インダクタL1と、半導体スイッチ素子TS5と、ダイオードD5、D6とを含む。インバータ回路33は、半導体スイッチ素子TS1,TS2,TS3,TS4と、ダイオードD1,D2,D3,D4とを含む。平滑化回路34は、キャパシタC3と、インダクタL2,L3とを含む。
【0067】
系統連系PCS101におけるコンバータ回路31は、発電装置11およびキャパシタ32の間に接続されている。コンバータ回路31は、電力線PL1,PL2経由で発電装置11から受ける直流電圧を半導体スイッチ素子TS5のスイッチングによって昇圧する。
【0068】
より詳細には、コンバータ回路31におけるキャパシタC1は、電力線PL1を介して発電装置11に接続された第1端と、電力線PL2を介して発電装置11に接続された第2端とを有する。
【0069】
キャパシタC1の第1端および第2端は、それぞれ電圧V1および電圧V2を発電装置11から受ける。そして、キャパシタC1は、電圧V1および電圧V2間に含まれる高周波成分すなわち脈動成分であるリプルを減衰させ、リプルを減衰させた直流電圧をインダクタL1、半導体スイッチ素子TS5およびダイオードD5へ出力する。ここで、電圧V1は電圧V2より高い電圧であるものとする。
【0070】
また、キャパシタC1は、発電装置11から受ける直流電力を電気エネルギーとして蓄え、蓄えた電気エネルギーを用いて発電装置11からの直流電力の変動を抑制する。
【0071】
インダクタL1は、キャパシタC1の第1端に接続された第1端と第2端とを有する。半導体スイッチ素子TS5は、ダイオードD5のカソードに接続されるとともにノードN1を介してインダクタL1の第2端に接続されたコレクタと、ダイオードD5のアノードおよびキャパシタC1の第2端に接続されたエミッタと、ゲートとを有する。ダイオードD6は、ノードN1を介してインダクタL1の第2端に接続されたアノードと、カソードとを有する。
【0072】
半導体スイッチ素子TS5は、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。半導体スイッチ素子TS5は、たとえば論理ハイレベルの制御信号S5を制御部1から受けるとオンする。また、半導体スイッチ素子TS5は、たとえば論理ローレベルの制御信号S5を制御部1から受けるとオフする。
【0073】
ダイオードD5は、半導体スイッチ素子TS5に逆電圧が印加されたときに、半導体スイッチ素子TS5のエミッタ側からコレクタ側へ電流を流す。これにより、半導体スイッチ素子TS5が逆電圧によって破壊されることを防ぐことができる。
【0074】
制御部1は、たとえば、半導体スイッチ素子TS5のオン状態およびオフ状態を切替えることにより、発電装置11から受ける電圧を昇圧する。より詳細には、制御部1は、たとえば論理ハイレベルの制御信号S5を半導体スイッチ素子TS5のゲートへ出力する。半導体スイッチ素子TS5は、論理ハイレベルの制御信号S5を制御部1から受けるとオン状態となる。これにより、インダクタL1の第1端から第2端へ電流が流れる。
【0075】
そして、制御部1は、たとえば論理ローレベルの制御信号S5を半導体スイッチ素子TS5のゲートへ出力する。半導体スイッチ素子TS5は、論理ローレベルの制御信号S5を制御部1から受けるとオフ状態となる。これにより、インダクタL1の第1端から第2端へ流れる電流が減少するので、インダクタL1の第1端および第2端間において当該電流の時間変化に応じた起電力ΔVL1が発生する。この際、インダクタL1の第2端において、インダクタL1の第1端における電圧より高い電圧が発生するので、起電力ΔVL1は正の電圧となる。
【0076】
すなわち、インダクタL1の第2端および半導体スイッチ素子TS5のエミッタ間において、発電装置11から受ける電圧(V1−V2)にインダクタL1における起電力ΔVL1を加えた電圧(V1−V2+ΔVL1)が発生する。これにより、コンバータ回路31は、発電装置11から受ける直流電圧を昇圧する。
【0077】
ダイオードD6は、キャパシタ32に蓄積された電荷がインダクタL1および半導体スイッチ素子TS5経由で放電されることを防止する。
【0078】
キャパシタ32は、コンバータ回路31およびインバータ回路33の間に接続されている。キャパシタ32は、インバータ回路33と並列に接続される。
【0079】
具体的には、キャパシタ32は、ダイオードD6のカソードに接続された第1端と、半導体スイッチ素子TS5のエミッタと接続された第2端とを有する。キャパシタ32の第1端および第2端は、それぞれダイオードD6のカソードの電圧Vhおよび電圧V2をコンバータ回路31から受ける。
【0080】
キャパシタ32は、電圧Vhおよび電圧V2間に含まれる高周波成分すなわち脈動成分であるリプルを減衰させ、リプルを減衰させた直流電圧をインバータ回路33へ出力する。
【0081】
また、キャパシタ32は、コンバータ回路31から受ける直流電力を電気エネルギーとして蓄え、蓄えた電気エネルギーを用いてコンバータ回路31からの直流電力の変動を抑制する。
【0082】
インバータ回路33は、キャパシタ32および平滑化回路34の間に接続されている。インバータ回路33は、コンバータ回路31からキャパシタ32を介して直流電力を受けて、受けた直流電力から複数のスイッチ素子のスイッチングを用いて単相の交流電流を生成する。
【0083】
具体的には、インバータ回路33には、半導体スイッチ素子TS1,TS2,TS3,TS4が設けられる。この半導体スイッチ素子TS1,TS2,TS3,TS4は、低圧トランスT1側へ流れる電流を、コンバータ回路31からキャパシタ32を介して供給される直流電圧に応じたスイッチングを行うことにより単相の交流電流を生成する。
【0084】
インバータ回路33における半導体スイッチ素子TS1,TS2,TS3,TS4は、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。
【0085】
半導体スイッチ素子TS1は、ダイオードD1のカソードおよびキャパシタ32の第1端に接続されたコレクタと、ダイオードD1のアノードに接続されるとともにノードN12を介して半導体スイッチ素子TS2に接続されたエミッタと、ゲートとを有する。半導体スイッチ素子TS2は、ダイオードD2のカソードに接続されるとともにノードN12を介して半導体スイッチ素子TS1に接続されたコレクタと、ダイオードD2のアノードおよびキャパシタ32の第2端に接続されたエミッタと、ゲートとを有する。
【0086】
半導体スイッチ素子TS3は、ダイオードD3のカソードおよびキャパシタ32の第1端に接続されたコレクタと、ダイオードD3のアノードに接続されるとともにノードN34を介して半導体スイッチ素子TS4に接続されたエミッタと、ゲートとを有する。半導体スイッチ素子TS4は、ダイオードD4のカソードに接続されるとともにノードN34を介して半導体スイッチ素子TS3に接続されたコレクタと、ダイオードD4のアノードおよびキャパシタ32の第2端に接続されたエミッタと、ゲートとを有する。
【0087】
半導体スイッチ素子TS1,TS2,TS3,TS4は、たとえば論理ハイレベルの制御信号S1,S2,S3,S4を制御部1からそれぞれ受けるとオンする。また、半導体スイッチ素子TS1,TS2,TS3,TS4は、たとえば論理ローレベルの制御信号S1,S2,S3,S4を制御部1からそれぞれ受けるとオフする。
【0088】
ダイオードD1,D2,D3,D4は、半導体スイッチ素子TS1,TS2,TS3,TS4にそれぞれ逆電圧が印加されたときに、半導体スイッチ素子TS1,TS2,TS3,TS4のエミッタ側からコレクタ側へ電流を流す。これにより、半導体スイッチ素子TS1,TS2,TS3,TS4が逆電圧によって破壊されることを防ぐことができる。
【0089】
図3は、本発明の実施の形態に係る系統連系PCS101における測定部2の構成を示す図である。
【0090】
図3を参照して、測定部2は、系統電圧測定部21と、発電電力測定部22と、発電電流測定部23とを含む。
【0091】
系統電圧測定部21は、図示しない電圧検出部を含み、平滑化回路34が出力する電圧(V3−V4)すなわち系統電圧Vpsを検出し、検出結果を示す系統電圧値Mvpsを制御部1へ出力する。
【0092】
発電電力測定部22は、図示しない電圧検出部を含み、コンバータ回路31が発電装置11から受ける電圧(V1−V2)を検出する。また、発電電力測定部22は、図示しない電流検出部を含み、電力線PL1を通して流れる電流I1を検出する。発電電力測定部22は、検出した電圧値および電流値から発電電力を演算し、演算結果を示す発電電力値Mpgを制御部1へ出力する。なお、発電電力測定部22は、電力線PL2を通して流れる電流を検出してもよい。
【0093】
発電電流測定部23は、図示しない電流検出部を含み、平滑化回路34が出力する電流であって電力線PL3を通して流れる発電電流Igを検出し、検出結果を示す発電電流値Migを制御部1へ出力する。なお、発電電流測定部23は、平滑化回路34が出力する電流であって電力線PL4を通して流れる電流を発電電流値Migとして検出してもよい。
【0094】
再び図2を参照して、通信部3は、子通信装置202と信号線SL1経由で通信を行う。より詳細には、通信部3は、子通信装置202から受信した情報を制御部1へ出力する。また、通信部3は、制御部1から受けた情報を子通信装置202へ送信する。
【0095】
具体的には、通信部3は、たとえば子通信装置202から通信開始情報、通信終了情報、信号受信情報または受信完了情報を受信すると、受信した情報を制御部1へ出力する。通信開始情報、通信終了情報、信号受信情報、受信完了情報および子通信装置202の詳細については後述する。
【0096】
制御部1は、測定部2の検出結果および通信部3を介して受けた情報に基づいて制御信号S1,S2,S3,S4を生成し、生成した制御信号S1,S2,S3,S4をインバータ回路33の半導体スイッチ素子TS1,TS2,TS3,TS4のゲートへそれぞれ出力することにより、インバータ回路33を制御する。
【0097】
また、制御部1は、測定部2の検出結果および通信部3を介して受けた情報に基づいて制御信号S5を生成し、生成した制御信号S5をコンバータ回路31の半導体スイッチ素子TS5のゲートへ出力することにより、コンバータ回路31を制御する。
【0098】
具体的には、制御部1は、インバータ回路33をPWM(Pulse Width Modulation)制御する。
【0099】
制御部1は、たとえば電力系統における交流電圧の周波数である60ヘルツより大きいキャリア周波数Fcおよびデューティ比を設定する。そして、制御部1は、たとえば、キャリア周波数Fcの逆数であるキャリア周期Tc毎に、キャリア周期Tcに当該デューティ比を乗じたオン期間、論理ハイレベルの制御信号を出力し、当該オン期間以外のオフ期間、論理ローレベルの制御信号を出力する。
【0100】
制御部1は、デューティ比を調整することにより、論理ハイレベルの制御信号を出力する時間すなわち制御信号のパルス幅を制御する。
【0101】
制御部1は、周波数60ヘルツの交流電流がインバータ回路33におけるノードN12,N34を介して平滑化回路34へ出力されるように、制御信号S1,S2,S3,S4を、半導体スイッチ素子TS1,TS2,TS3,TS4のゲートへそれぞれ出力する。
【0102】
そして、半導体スイッチ素子TS1,TS2,TS3,TS4は、制御部1から制御信号S1,S2,S3,S4をそれぞれ受けると、デューティ比に応じてキャリア周期Tc毎にオンする。従って、半導体スイッチ素子TS1,TS2,TS3,TS4におけるスイッチングの周波数は、キャリア周波数Fcと一致する。
【0103】
平滑化回路34は、インバータ回路33および低圧トランスT1の間に接続されている。平滑化回路34は、インバータ回路33から受けた交流電流を平滑化し、平滑化した交流電流を低圧トランスT1へ出力する。
【0104】
平滑化回路34におけるインダクタL2は、ノードN12に接続された第1端と、電力線PL3およびキャパシタC3と接続された第2端とを有する。インダクタL3は、ノードN34に接続された第1端と、電力線PL4およびキャパシタC3と接続された第2端とを有する。キャパシタC3は、電力線PL3およびインダクタL2の第2端に接続された第1端と、電力線PL4およびインダクタL3の第2端に接続された第2端とを有する。
【0105】
インダクタL1,L2およびキャパシタC3は、ローパスフィルタを形成し、ノードN12,N34を経由してインバータ回路33から受ける周波数60ヘルツの交流電流に含まれる所定の周波数以上の成分であるノイズを減衰させ、当該ノイズを減衰させた交流電流すなわち発電電流Igを電力線PL3,PL4経由で低圧トランスT1へ出力する。
【0106】
ここで、インダクタL1,L2およびキャパシタC3の回路定数は、たとえば、発電電流Igが系統連系規程に規定される「出力電流歪率が総合電流歪率5%以下、かつ各自調波3%以下であること」を満たすように設定される。
【0107】
[通信装置]
図4は、本発明の実施の形態に係る系統連系システム201における子通信装置202の構成を示す図である。
【0108】
図4を参照して、子通信装置202は、電力線通信部81と、通信制御部82と、装置間通信部(送信部)83とを備える。
【0109】
子通信装置202は、たとえばTWACSの子機である。子通信装置202は、たとえば電力系統において他の通信装置と電力線通信を行う。
【0110】
具体的には、子通信装置202は、電力線および低圧トランスT1,T2を介してTWACSの親機である親通信装置212と通信する。
【0111】
子通信装置202は、たとえば電流を変調することにより生成した電流パルスを信号として親通信装置212へ送信する。また、子通信装置202は、たとえば親通信装置212において生成された電流パルスを検出し、検出した電流パルスを信号として受信する。
【0112】
図4に示す装置間通信部83は、系統連系PCS101と信号線SL1経由で通信を行う。通信制御部82は、装置間通信部83経由で系統連系PCS101から受けた情報に基づいて親通信装置212宛てのメッセージを作成し、作成したメッセージを電力線通信部81へ出力する。
【0113】
また、通信制御部82は、たとえば、親通信装置212との電力線通信を開始する前に、電力線通信を開始する旨を示す通信開始情報を系統連系PCS101へ装置間通信部83経由で送信する。
【0114】
また、通信制御部82は、たとえば、親通信装置212との電力線通信が終了した後、電力線通信が終了した旨を示す通信終了情報を系統連系PCS101へ装置間通信部83経由で送信する。
【0115】
図5は、本発明の実施の形態に係る子通信装置202における電力線通信部81の構成を示す図である。
【0116】
図5を参照して、電力線通信部81は、信号処理部84と、短絡スイッチ85と、インダクタL86とを含む。
【0117】
電力線通信部81は、親通信装置212と電力系統において電力線通信を行う。より詳細には、信号処理部84は、電力線PL9に接続された第1端と、電力線PL10に接続された第2端とを有する。短絡スイッチ85は、電力線PL9を介して信号処理部84の第1端に接続された第1端と、第2端とを有する。インダクタL86は、短絡スイッチ85の第2端に接続された第1端と、電力線PL10を介して信号処理部84の第2端に接続された第2端とを有する。
【0118】
図6は、本発明の実施の形態に係る子通信装置202において生成される電流パルスの一例を示す図である。
【0119】
図6を参照して、横軸は、時間を示し、縦軸は、電圧値および電流値を示す。系統電圧値Mvpsは、測定部2における系統電圧測定部21により測定された系統電圧Vpsの時間変化を示す。電流値Mi9は、たとえば電力線PL9を通して流れる電流I9の測定値の時間変化を示す。
【0120】
図5に示す信号処理部84は、通信制御部82からメッセージを受けると、受けたメッセージに基づいて送信ビットパターンを生成する。信号処理部84は、生成した送信ビットパターンに基づいて短絡スイッチ85をオンする。
【0121】
より詳細には、信号処理部84は、短絡スイッチ85をオンする場合、電力線PL9,PL10経由で受ける系統電圧Vpsがゼロボルトとなるゼロクロスタイミングの近傍であり、かつ当該ゼロクロスタイミングより前のタイミングで短絡スイッチ85をオンする。
【0122】
なお、ゼロクロスタイミングは、系統電圧Vpsが負から正となるタイミングおよび系統電圧Vpsが正から負となるタイミングのいずれのタイミングであってもよい。
【0123】
短絡スイッチ85は、具体的には、逆方向2並列に接続されたサイリスタ等の半導体スイッチである。信号処理部84は、短絡スイッチ85をオン状態へ遷移させることにより、短絡スイッチ85の第1端および第2端間を短絡状態とし、短絡スイッチ85の第1端およびインダクタL86の第2端間に電流を流す。この際、インダクタL86は、短絡スイッチ85の第1端およびインダクタL86の第2端間に流れる電流を制限する。なお、インダクタL86の代わりに抵抗が接続されてもよい。
【0124】
短絡スイッチ85がオン状態へ遷移すると、短絡スイッチ85には、電流が流れる。そして、ゼロクロスタイミングの経過後において、短絡スイッチ85に流れる電流が減少し、当該電流がゼロになると、短絡スイッチ85はオフ状態へ自発的に遷移する。これにより、図6に示すように、ゼロクロスタイミング近傍において電流パルスが生成される。
【0125】
電力線通信部81において生成された電流パルスは、電力線および低圧トランスT1,T2を経由して親通信装置212まで信号として伝送される。
【0126】
信号処理部84は、上記送信ビットパターンに従って複数のゼロクロスタイミング近傍で短絡スイッチ85をオンすることで複数の電流パルスを生成し、生成した複数の電流パルスを親通信装置212へ情報として送信する。
【0127】
なお、子通信装置202から親通信装置212への上り方向の電力線通信の通信速度は、たとえば50ビット毎秒を超えない。具体的には、当該通信速度は、概ね12.5ビット毎秒である。
【0128】
また、信号処理部84は、親通信装置212において生成された電流パルスを受信し、受信した電流パルスに基づいて受信ビットパターンを生成する。これにより、信号処理部84は、親通信装置212から情報を受信する。
【0129】
親通信装置212から子通信装置202への下り方向の電力線通信の通信速度は、たとえば50ビット毎秒を超えない。具体的には、当該通信速度は、概ね25ビット毎秒である。また、たとえば、上り方向の通信では情報が多重化される一方、下り方向の通信では情報が多重化されないため、下り方向のビットレートは、上り方向のビットレートより高い。
【0130】
より詳細には、電流パルスが電力線および低圧トランスT1,T2を通過する際、当該電流パルスに含まれる高周波成分が減衰するため、信号処理部84が電力線および低圧トランスT1,T2経由で受信する電流パルスには低周波成分が多く含まれる。信号処理部84は、たとえばローパスフィルタを用いて電流パルスに含まれる低周波成分を検出する。
【0131】
信号処理部84は、検出した低周波成分から電流パルスを受信したことを認識し、受信した電流パルスから受信ビットパターンを生成するとともに、電流パルスを受信した旨を示す情報を通信制御部82へ出力する。
【0132】
なお、信号処理部84が電流パルスを送信または受信している期間を信号伝送期間と称する。信号処理部84が電流パルスを送信している期間は、たとえば、信号処理部84が短絡スイッチ85をオン状態へ遷移させてから、短絡スイッチ85がオフ状態へ遷移するまでの期間に相当する。
【0133】
また、信号処理部84が電流パルスを受信している期間は、たとえば、信号処理部84が電流パルスに含まれる低周波成分の検出開始時刻から検出終了時刻までの期間に相当する。
【0134】
また、信号処理部84は、生成した受信ビットパターンにおいて、電力線通信の完了を示すビットパターンを検出すると、電力線通信が完了したことを認識し、電力線通信が完了した旨を示す情報を通信制御部82へ出力する。
【0135】
信号処理部84は、当該受信ビットパターンからメッセージを作成し、作成したメッセージを通信制御部82へ出力する。
【0136】
通信制御部82は、信号処理部84から電流パルスを受信した旨を示す情報を受けると、受けた情報を信号受信情報として系統連系PCS101へ装置間通信部83経由で送信する。また、通信制御部82は、信号処理部84から電力線通信が完了した旨を示す情報を受けると、受けた情報を受信完了情報として系統連系PCS101へ装置間通信部83経由で送信する。
【0137】
通信制御部82は、信号処理部84からメッセージを受けると、受けたメッセージの宛名が示す装置へ当該メッセージを装置間通信部83経由で送信する。
【0138】
なお、上記電力線通信は、通信速度が数キロビット毎秒から数メガビット毎秒程度のブロードバンド通信を行うためのPLC(Power Line Communication)と比べて、親通信装置212および子通信装置202間の通信速度は遅い。以下、電力線を経由した親通信装置212および子通信装置202間の上記電力線通信を「低速の電力線通信」とも称する。
【0139】
ブロードバンド通信を行うためのPLCでは、信号を伝送するための搬送波の周波数が高いので、電力線における信号の減衰が大きいため通信距離が短くなってしまう。
【0140】
一方、低速の電力線通信では、伝送される信号の周波数が低いので、電力線における信号の減衰が少ない。また、低速の電力線通信では、ブロードバンド通信を行うためのPLCにおいて用いられる変調方式と異なる変調方式により信号が伝送される。これにより、低速の電力線通信では、伝送速度を落とすことができ、信号伝送において発生する誤りに対する耐性すなわちロバスト性を向上させることができる。
【0141】
また、低速の電力線通信では、親通信装置212および子通信装置202間において、信号を中継するための中継器が存在しない場合でも、数百キロ程度の長距離通信を行うことができる。また、電力線における信号の減衰が少ないので、当該通信の信頼性を向上させることができる。
【0142】
たとえば誘導性を有する低圧トランスT1,T2といったトランスが電力線に接続されている場合、ブロードバンド通信を行うためのPLCに用いられる搬送波の周波数領域ではトランスのインピーダンスが高くなるため、当該搬送波はトランスを通過することができない。したがって、ブロードバンド通信を行うためのPLCでは、トランスを介して通信を行うことができない。
【0143】
一方、低速の電力線通信において伝送される信号の周波数領域ではトランスのインピーダンスが低くなるので、当該信号は、トランスを通過することができる。
【0144】
以上のように、低速の電力線通信では、親通信装置212および子通信装置202間において、電力線の距離およびトランスの存在による制約をほとんど受けることなく通信を行うことができる。
【0145】
[低速の電力線通信により生ずる問題点]
比較例としての系統連系PCSは、発電装置11から受けた直流電力から系統電圧に同期した交流電流を電力系統へ供給する。具体的には、系統連系PCSは、たとえばフィードフォワード制御およびフィードバック制御を行うことにより、発電装置11から受けた直流電力から系統電圧に同期した交流電流を生成する。
【0146】
より詳細には、系統連系PCSは、系統電圧を測定し、測定した系統電圧の周期および位相に基づいてフィードフォワード制御を行い、系統電圧に同期した交流電流を生成する。
【0147】
たとえば、電力線を介して系統連系PCSと接続された通信装置において低速の電力線通信が行われる際、系統連系PCSは、ゼロクロスタイミング近傍が歪んだ系統電圧を測定する場合がある。系統連系PCSおよび当該通信装置を接続する電力線の長さが短いほど、系統連系PCSが測定するゼロクロスタイミング近傍における系統電圧の歪みが大きくなる。
【0148】
このような場合、系統連系PCSは、たとえばゼロクロスタイミング近傍に歪みを有する系統電圧の周期および位相に基づいてフィードフォワード制御を行うため、系統電圧と同期しない交流電流を生成してしまう。
【0149】
図7は、比較例としての系統連系PCSが生成する交流電流の一例を示す図である。
【0150】
図7を参照して、横軸は、時間を示し、縦軸は、電圧値および電流値を示す。系統電圧値Mvrは、測定された系統電圧の時間変化を示す。電流値Mirは、生成された電流の測定値の時間変化を示す。
【0151】
系統連系PCSは、フィードフォワード制御に加えてフィードバック制御を行うことで、生成する交流電流を目標値に近づける。
【0152】
具体的には、系統連系PCSは、たとえば図7に示す系統電圧値Mvrに基づいて、生成すべき交流電流の目標値を設定する。そして、系統連系PCSは、生成した交流電流の測定値と目標値とを比較し、比較結果を用いてフィードバック制御を行う。
【0153】
より詳細には、系統連系PCSは、生成した交流電流の測定値が目標値からずれた場合、このずれに応じたフィードバック制御を行うことにより、生成する交流電流を目標値に近づける。これにより、系統連系PCSは、図7に示す系統電圧値Mvrに同期した交流電流を生成する。
【0154】
しかしながら、たとえば、系統連系PCSと電力線を介して接続された通信装置により低速の電力線通信が行われる際、系統連系PCSは、図7に示す信号伝送期間A,B,Cにおいて大きい電流値Mirを測定する場合がある。
【0155】
系統連系PCSは、信号伝送期間A,B,Cにおいて目標値と大きく異なる電流値Mirを測定すると、生成する交流電流を目標値に近づけるようにフィードバック制御を行い、信号伝送期間A,B,Cに続く各期間Af,Bf,Cfにおいて乱れた交流電流を生成してしまう。
【0156】
上記のように、系統連系PCSと電力線を介して接続された通信装置により低速の電力線通信が行われる際、フィードフォワード制御およびフィードバック制御の安定性が低下し、系統連系PCSが低品質の発電電流を電力系統へ出力してしまう問題がある。
【0157】
これに対して、本発明の実施の形態に係る系統連系PCSでは、以下のような構成および動作により、上記問題を解決する。
【0158】
図8は、本発明の実施の形態に係る系統連系PCS101における制御部1の構成を示す図である。
【0159】
図8を参照して、制御部1は、ゼロクロス期間設定部4と、電流調整部5と、外乱補償部6と、目標電流設定部7と、電力線通信検出部8とを含む。
【0160】
図9は、本発明の実施の形態に係る系統連系PCS101の制御部1における電力線通信検出部8の構成を示す図である。
【0161】
図9を参照して、電力線通信検出部8は、電流パルス検出部61と、電力線通信判断部62と、タイマ部63とを含む。電力線通信検出部8は、電力系統において行われる低速の電力線通信を検出する。
【0162】
図10は、本発明の実施の形態に係る電流パルス検出部61が検出する電流パルスの一例を示す図である。
【0163】
図10を参照して、電流パルス検出部61は、図3に示す測定部2における発電電流測定部23により測定された発電電流値Migに基づいて電流パルスを検出する。
【0164】
具体的には、電流パルス検出部61は、電力系統における電流の絶対値が所定のしきい値より大きくなる期間、電流パルスを検出した旨を示す電流パルス検出情報を電力線通信判断部62およびゼロクロス期間設定部4へ出力する。
【0165】
たとえば、系統連系PCS101と電力線を介して接続された通信装置により低速の電力線通信が行われている場合、ゼロクロスタイミングtz近傍における信号伝送期間において、発電電流値Migの絶対値が大きな値を示す。
【0166】
電流パルス検出部61は、図10に示すように発電電流値Migが正の値であってしきい値Ithより大きくなる期間Tpにおいて、電流パルス検出情報を電力線通信判断部62およびゼロクロス期間設定部4へ出力する。
【0167】
また、電流パルス検出部61は、発電電流値Migが負の値であってしきい値(−Ith)より小さくなる期間において、電流パルス検出情報を電力線通信判断部62およびゼロクロス期間設定部4へ出力する。
【0168】
なお、低速の電力線通信により生ずる電流パルスの最大電流値は、たとえば電力線PL3において過電流が流れていることを示す過電流保護しきい値Imaxより小さい。
【0169】
また、電流パルス検出部61が検出する電流パルスの電流値は、自己の系統連系PCS101および電流パルスを生成する通信装置間を接続する電力線の長さに応じて変化する。具体的には、電流パルス検出部61が検出する子通信装置202からの電流パルスの電流値は、電流パルス検出部61が検出する親通信装置212からの電流パルスの電流値と比べて大きい。
【0170】
したがって、電流パルス検出部61は、たとえば検出対象とする電流パルスに応じてしきい値Ithを適宜設定してもよい。
【0171】
電力線通信判断部62は、電力系統において低速の電力線通信が行われているか否かを判断し、判断結果を示す電力線通信情報を外乱補償部6およびゼロクロス期間設定部4へ出力する。
【0172】
具体的には、たとえば、電力線通信判断部62は、電流パルス検出部61から電流パルス検出情報を受けている期間、電力系統において低速の電力線通信が行われていると判断し、低速の電力線通信が行われている旨を示す電力線通信情報を外乱補償部6およびゼロクロス期間設定部4へ出力する。電力線通信判断部62は、当該期間が満了するとタイマ部63に所定時間をセットし、タイマ部63の動作を開始させる。
【0173】
タイマ部63は、所定時間経過すると、タイマ満了通知を電力線通信判断部62へ出力する。電力線通信判断部62は、タイマ部63の動作を開始させてからタイマ部63からタイマ満了通知を受けるまでに、電流パルス検出部61から新たな電流パルス検出情報を受けなかった場合、電力系統において低速の電力線通信が行われていないと判断し、低速の電力線通信が行われていない旨を示す電力線通信情報を外乱補償部6およびゼロクロス期間設定部4へ出力する。
【0174】
一方、電力線通信判断部62は、タイマ部63の動作を開始させてからタイマ部63からタイマ満了通知を受けるまでに、電流パルス検出部61から電流パルス検出情報を受けた場合、当該電流パルス検出情報を受けている期間が満了するとタイマ部63をリセットし、タイマ部63の動作を開始させる。
【0175】
また、たとえば、電力線通信判断部62は、通信部3から受ける通信開始情報、通信終了情報、信号受信情報および受信完了情報に基づいて、電力系統において低速の電力線通信が行われているか否かを判断し、判断結果を示す電力線通信情報を外乱補償部6およびゼロクロス期間設定部4へ出力する。
【0176】
具体的には、電力線通信判断部62は、通信部3から通信開始情報を受けると、電力系統において低速の電力線通信が行われていると判断し、低速の電力線通信が行われている旨を示す電力線通信情報を外乱補償部6およびゼロクロス期間設定部4へ出力する。
【0177】
また、電力線通信判断部62は、通信部3から通信終了情報を受けると、電力系統における低速の電力線通信が終了したと判断し、低速の電力線通信が行われていない旨を示す電力線通信情報を外乱補償部6およびゼロクロス期間設定部4へ出力する。
【0178】
また、電力線通信判断部62は、通信部3から信号受信情報を受けると、電力系統において低速の電力線通信が行われていると判断し、低速の電力線通信が行われている旨を示す電力線通信情報を外乱補償部6およびゼロクロス期間設定部4へ出力する。この際、電力線通信判断部62は、タイマ部63に所定時間をセットし、タイマ部63の動作を開始させる。
【0179】
電力線通信判断部62は、タイマ部63の動作を開始させてからタイマ部63からタイマ満了通知を受けるまでに、通信部3から新たな信号受信情報を受けなかった場合、電力系統において低速の電力線通信が行われていないと判断し、低速の電力線通信が行われていない旨を示す電力線通信情報を外乱補償部6およびゼロクロス期間設定部4へ出力する。
【0180】
一方、電力線通信判断部62は、タイマ部63の動作を開始させてからタイマ部63からタイマ満了通知を受けるまでに、通信部3から新たな信号受信情報を受けた場合、当該信号受信情報を受けたタイミングでタイマ部63をリセットし、タイマ部63の動作を開始させる。
【0181】
また、電力線通信判断部62は、通信部3から受信完了情報を受けると、電力系統における低速の電力線通信が終了したと判断し、低速の電力線通信が行われていない旨を示す電力線通信情報を外乱補償部6およびゼロクロス期間設定部4へ出力する。
【0182】
図11は、本発明の実施の形態に係る系統連系PCS101の制御部1における外乱補償部6の構成を示す図である。
【0183】
図11を参照して、外乱補償部6は、ゼロクロス検出部71と、外乱補償量算出部(電流調整部)72とを含む。ゼロクロス検出部71は、電力系統における系統電圧がゼロボルトを示すゼロクロスタイミングを検出する。
【0184】
具体的には、ゼロクロス検出部71は、図3に示す測定部2における系統電圧測定部21から系統電圧値Mvpsを受け、受けた系統電圧値Mvpsがゼロボルトを示すタイミングをゼロクロスタイミングとして検出する。
【0185】
たとえば、ゼロクロス検出部71は、系統電圧値Mvpsが負から正へ切替わるタイミングおよび系統電圧値Mvpsが正から負へ切替わるタイミングをゼロクロスタイミングとして検出する。
【0186】
また、ゼロクロス検出部71は、たとえば、自己の系統連系PCS101と電力線を介して接続された通信装置により低速の電力線通信が行われている期間、ゼロクロスタイミングを推定する。
【0187】
具体的には、ゼロクロス検出部71は、たとえば、電力線通信検出部8における電力線通信判断部62から受ける電力線通信情報に基づいて、子通信装置202、親通信装置212または他の通信装置により低速の電力線通信が行われている期間を認識する。
【0188】
たとえば、低速の電力線通信が行われている期間、系統電圧値Mvpsがゼロクロスタイミング近傍で歪みを有する可能性があるため、ゼロクロス検出部71は、系統電圧値Mvpsがゼロボルトを示すタイミングをゼロクロスタイミングとして検出すると、ゼロクロスタイミングを誤って検出してしまう場合がある。
【0189】
そこで、ゼロクロス検出部71は、たとえば、ゼロクロスタイミング以外のタイミングを検出し、検出したタイミングからゼロクロスタイミングを推定する。
【0190】
図12は、本発明の実施の形態に係るゼロクロス検出部71が推定するゼロクロスタイミングの一例を示す図である。
【0191】
図12を参照して、ゼロクロス検出部71は、ゼロクロスタイミング以外のタイミングとして、たとえば系統電圧値Mvpsが最大値となるタイミングおよび最小値となるタイミングのいずれか一方からゼロクロスタイミングを推定する。
【0192】
具体的には、ゼロクロス検出部71は、たとえば、系統電圧値Mvpsが最大値を示すタイミングtaおよび最小値を示すタイミングtbを検出する。この際、ゼロクロス検出部71は、たとえば、系統電圧値Mvpsを微分し、微分した系統電圧値Mvpsがゼロとなるタイミングからタイミングta,tbを検出する。
【0193】
そして、ゼロクロス検出部71は、たとえば、タイミングtbから時間((tb−ta)/2)経過したタイミングtzをゼロクロスタイミングとして推定する。これにより、ゼロクロス検出部71において、ゼロクロスタイミング以外のタイミングta,tbからゼロクロスタイミングtzを推定することができるので、子通信装置202、親通信装置212および他の通信装置が低速の電力線通信を行っている場合においても、ゼロクロスタイミングtzをより正確に推定することができる。
【0194】
なお、ゼロクロス検出部71は、たとえば、タイミングta,tbより過去における最大値となるタイミングまたは最小値となるタイミングからゼロクロスタイミングtzを推定してもよい。この場合、ゼロクロスタイミングtzに近いタイミングta,tbからゼロクロスタイミングtzを検出する場合と比べて精度が落ちることがある。
【0195】
また、ゼロクロス検出部71は、たとえば、低速の電力線通信が開始されるより前に検出したゼロクロスタイミングを用いて、低速の電力線通信が行われている期間におけるゼロクロスタイミングを推定してもよい。
【0196】
具体的には、ゼロクロス検出部71は、たとえば、低速の電力線通信が開始されるより前に検出した複数のゼロクロスタイミングの間隔を平均し、平均した値を用いて低速の電力線通信が行われている期間におけるゼロクロスタイミングを推定する。
【0197】
ゼロクロス検出部71は、たとえば検出したゼロクロスタイミングtzまたは推定したゼロクロスタイミングtzを含めたゼロクロスタイミング検出情報を外乱補償量算出部72、ゼロクロス期間設定部4および目標電流設定部7へ出力する。
【0198】
外乱補償量算出部72は、電流調整部5におけるフィードフォワード制御で用いられる外乱補償量を算出する。より詳細には、外乱補償量算出部72は、ゼロクロス検出部71から受けるゼロクロスタイミング検出情報、図3に示す系統電圧測定部21から受ける系統電圧値Mvpsおよび発電電力測定部22から受ける発電電力値Mpgに基づいて外乱補償量を算出する。
【0199】
具体的には、外乱補償量算出部72は、たとえば系統電圧値Mvpsと同期する外乱補償量を算出する。より詳細には、外乱補償量算出部72は、たとえば発電電力値Mpgから自己の系統連系PCS101において生成可能な交流電力を算出し、算出した交流電力に応じた外乱補償量の振幅を設定する。外乱補償量算出部72は、たとえば系統電圧値Mvpsの時間変化に応じて外乱補償量の振幅を時間変化させることにより、系統電圧値Mvpsと同期する外乱補償量を算出する。
【0200】
また、外乱補償量算出部72は、たとえば、自己の系統連系PCS101と電力線を介して接続された通信装置により低速の電力線通信が行われている期間、ゼロクロス検出部71により推定されたゼロクロスタイミングに基づいて系統電圧を推定する。
【0201】
具体的には、外乱補償量算出部72は、たとえば系統電圧を正弦波で近似することにより系統電圧を推定する。そして、外乱補償量算出部72は、たとえば近似した正弦波を用いて系統電圧と同期する外乱補償量を算出する。
【0202】
具体的には、外乱補償量算出部72は、たとえばゼロクロスタイミング検出情報から得られる推定された複数のゼロクロスタイミングから系統電圧の周期および位相を算出する。外乱補償量算出部72は、たとえば算出した周期および位相を、系統電圧を近似する正弦波の周期および位相にそれぞれ設定する。
【0203】
また、外乱補償量算出部72は、たとえば系統電圧値Mvpsの最大値および最小値に基づいて、系統電圧を近似する正弦波の振幅を設定する。
【0204】
外乱補償量算出部72は、たとえば上記周期、上記位相および上記振幅を有する正弦波を用いて系統電圧を推定し、推定した系統電圧と同期する外乱補償量を算出する。これにより、低速の電力線通信が行われることにより系統電圧値Mvpsのゼロクロスタイミング近傍において歪みが含まれる場合においても、外乱補償量算出部72では、より正確な系統電圧を推定し、推定した系統電圧に基づいて外乱補償量をより正確に算出することができる。
【0205】
外乱補償量算出部72は、算出した外乱補償量を電流調整部5へ出力する。
【0206】
図13は、本発明の実施の形態に係るゼロクロス期間設定部4が設定するゼロクロス期間の一例を示す図である。
【0207】
図13を参照して、縦軸は電圧を示し、横軸は時間を示す。図8に示すゼロクロス期間設定部4は、図11に示す外乱補償部6におけるゼロクロス検出部71から受けるゼロクロスタイミング検出情報に基づいてゼロクロス期間Dzcを設定する。
【0208】
具体的には、ゼロクロス期間設定部4は、たとえばゼロクロスタイミング検出情報から得られる複数のゼロクロスタイミングのうち、系統電圧が負から正へ切替わる際のゼロクロスタイミングに基づいてゼロクロス期間Dzcを設定する。
【0209】
より詳細には、ゼロクロス期間設定部4は、たとえば周期Tを有する系統電圧Vpsが(n−1)周目からn週目に切替わるタイミング(0+(n−1)×T)から時間T1後のタイミングts[2n]をゼロクロス期間Dzc[2n]の開始タイミングに設定する。ここで、nは正の整数を示す。
【0210】
ゼロクロス期間設定部4は、たとえば系統電圧Vpsがn周目から(n+1)週目に切替わるタイミング(0+n×T)から時間T2後のタイミングte[2n+1]をゼロクロス期間Dzc[2n]の終了タイミングに設定する。
【0211】
また、ゼロクロス期間設定部4は、ゼロクロス期間Dzc[2n]より1周期前のゼロクロス期間Dzc[2n−2]について、たとえば系統電圧Vpsが図示しない(n−2)周目から(n−1)週目に切替わるタイミング(0+(n−2)×T)から時間T1後のタイミングts[2n−2]をゼロクロス期間Dzc[2n−2]の開始タイミングに設定する。
【0212】
ゼロクロス期間設定部4は、たとえば系統電圧Vpsが(n−1)周目からn週目に切替わるタイミング(0+(n−1)×T)から時間T2後のタイミングte[2n−1]をゼロクロス期間Dzc[2n−2]の終了タイミングに設定する。
【0213】
また、ゼロクロス期間設定部4は、ゼロクロス期間Dzc[2n]より半周期前のゼロクロス期間Dzc[2n−1]について、ゼロクロス期間Dzc[2n−2]の開始タイミングts[2n−2]および終了タイミングte[2n−1]をそれぞれ半周期(T/2)後ろへずらすことによりゼロクロス期間Dzc[2n−1]の開始タイミングts[2n−1]および終了タイミングte[2n]を設定する。ここで用いられる周期Tは、たとえば各ゼロクロスタイミングの間隔を平均することにより算出される。
【0214】
すなわち、ゼロクロス期間設定部4は、系統電圧が負から正へ切替わる際のゼロクロスタイミングおよび系統電圧が正から負へ切替わる際のゼロクロスタイミングの両方において、ゼロクロスタイミングより時間(T−T1)前のタイミングから時間T2後のタイミングまでをゼロクロス期間Dzcに設定する。
【0215】
なお、ゼロクロス期間設定部4は、ゼロクロス期間Dzc[2n−2],Dzc[2n]と半周期ずれるゼロクロス期間Dzc[2n−1]については、たとえば系統電圧が正から負へ切替わる際のゼロクロスタイミングに基づいて設定してもよい。この場合、周期Tを算出することなくゼロクロス期間Dzcを設定することができる。
【0216】
また、ゼロクロス期間設定部4は、信号伝送期間に基づいて時間T1,T2を設定する。具体的には、低速の電力線通信が行われるときの信号伝送期間の開始タイミングおよび終了タイミングとゼロクロスタイミングとの各時間差は概ね一定であるので、ゼロクロス期間設定部4は、当該開始タイミングおよび当該終了タイミングがゼロクロス期間Dzcに含まれるように時間T1,T2を設定する。
【0217】
すなわち、ゼロクロス期間設定部4は、ゼロクロス期間Dzcに信号伝送期間が含まれるように時間T1,T2を設定する。
【0218】
ゼロクロス期間設定部4は、たとえば、設定したゼロクロス期間Dzcの間、ゼロクロス期間であることを示す論理ハイレベルのゼロクロス期間信号を電流調整部5へ出力し、ゼロクロス期間Dzc以外の間、論理ローレベルのゼロクロス期間信号を電流調整部5へ出力する。
【0219】
また、ゼロクロス期間設定部4は、たとえば、設定したゼロクロス期間Dzcのうち、電力線通信検出部8における電流パルス検出部61から電流パルス検出情報を受ける期間において、論理ハイレベルのゼロクロス期間信号を電流調整部5へ出力し、当該期間以外、論理ローレベルのゼロクロス期間信号を電流調整部5へ出力してもよい。
【0220】
また、ゼロクロス期間設定部4は、たとえば、電力線通信検出部8における電力線通信判断部62から受ける電力線通信情報に基づいて、子通信装置202、親通信装置212または他の通信装置により低速の電力線通信が行われている期間を認識する。
【0221】
具体的には、ゼロクロス期間設定部4は、たとえば、低速の電力線通信が行われている旨を示す電力線通信情報を電力線通信判断部62から受けてから、低速の電力線通信が行われていない旨を示す電力線通信情報を電力線通信判断部62から受けるまでの期間を、低速の電力線通信が行われている期間として認識する。
【0222】
そして、ゼロクロス期間設定部4は、たとえば、低速の電力線通信が行われている期間のうち、設定したゼロクロス期間Dzcにおいて、ゼロクロス期間であることを示す論理ハイレベルのゼロクロス期間信号を電流調整部5へ出力する。また、ゼロクロス期間設定部4は、低速の電力線通信が行われている期間のうちゼロクロス期間Dzc以外の間、および低速の電力線通信が行われていない期間、論理ローレベルのゼロクロス期間信号を電流調整部5へ出力する。
【0223】
なお、ゼロクロス期間設定部4は、時間に基づいてゼロクロス期間Dzcを設定する構成であるとしたが、これに限定するものではない。ゼロクロス期間設定部4は、たとえば位相に基づいてゼロクロス期間Dzcを設定してもよい。
【0224】
具体的には、ゼロクロス期間設定部4は、たとえば、時間T1およびT2の代わりに位相φ1=2π×T1/Tおよびφ2=2π×T2/Tをそれぞれ設定し、設定した位相φ1,φ2およびゼロクロスタイミングに対応する位相に基づいてゼロクロス期間の開始位相角および終了位相角を設定してもよい。
【0225】
目標電流設定部7は、外乱補償部6におけるゼロクロス検出部71から受けたゼロクロスタイミング検出情報、および測定部2における発電電力測定部22から受けた発電電力値Mpgに基づいて、自己の系統連系PCS101が電力系統へ出力すべき発電電流Igの目標値I*を設定する。
【0226】
より詳細には、目標電流設定部7は、たとえば、自己の系統連系PCS101が出力すべき発電電流Igを正弦波で近似する。具体的には、目標電流設定部7は、たとえばゼロクロスタイミング検出情報に含まれるゼロクロスタイミングtzに基づいて、正弦波に設定すべき周期および位相を算出し、算出した周期および位相を正弦波の周期および位相にそれぞれ設定する。また、目標電流設定部7は、たとえば発電電力値Mpgから自己の系統連系PCS101が生成可能な電流を算出し、算出した電流から正弦波の振幅を設定する。
【0227】
目標電流設定部7は、たとえば上記周期、上記位相および上記振幅が設定された正弦波を用いて各タイミングにおける発電電流Igの目標値I*を設定し、設定した目標値I*を電流調整部5へ出力する。
【0228】
図14は、本発明の実施の形態に係る系統連系PCS101の制御部1における電流調整部5の構成を示す図である。
【0229】
図14を参照して、電流調整部5は、減算器41と、偏差補正部42と、フィードバックゲイン演算部43と、加算器44と、総合制御部45と、三角波比較部46と、三角波生成部47とを含む。
【0230】
電流調整部5は、たとえば系統電圧Vpsに基づいてフィードフォワード制御を行う。具体的には、電流調整部5は、図11に示す外乱補償部6における外乱補償量算出部72から受ける外乱補償量に基づいてフィードフォワード制御を行う。
【0231】
また、電流調整部5は、フィードフォワード制御を行うとともに、図8に示す目標電流設定部7から受けた目標値I*と図3に示す測定部2における発電電流測定部23から受けた発電電流値Migとの差に基づいてフィードバック制御を行う。
【0232】
電流調整部5は、フィードフォワード制御およびフィードバック制御を行うことにより、自己の系統連系PCS101が生成する発電電流Igを調整する。
【0233】
また、電流調整部5は、図8に示すゼロクロス期間設定部4により設定されたゼロクロス期間Dzcにおいて、フィードバック制御の影響度を下げることにより、インバータ回路33において生成される発電電流の電流安定化処理を行う。
【0234】
より詳細には、減算器41は、目標値I*と発電電流値Migとの差、すなわち目標値I*に対する発電電流値Migの偏差eを算出し、算出した偏差eを偏差補正部42へ出力する。
【0235】
偏差補正部42は、ゼロクロス期間Dzcにおいて、減算器41から受けた偏差eを補正する。より詳細には、偏差補正部42は、ゼロクロス期間設定部4から受けるゼロクロス期間信号に基づいて、減算器41から受けた偏差eを補正する。具体的には、偏差補正部42は、ゼロクロス期間信号が論理ハイレベルを示す間、たとえば偏差eの値を偏差eの絶対値より絶対値の小さい同符号の値またはゼロに補正する。
【0236】
言い換えると、偏差補正部42は、ゼロクロス期間信号が論理ハイレベルを示す間、たとえば偏差eの値を(K×e)の値に補正する。ここで、Kの範囲は0≦K<1である。
【0237】
すなわち、偏差補正部42は、ゼロクロス期間信号が論理ハイレベルを示す間、上記のように補正した偏差eをフィードバックゲイン演算部43へ出力する。
【0238】
また、偏差補正部42は、ゼロクロス期間信号が論理ローレベルを示す間、たとえば減算器41から受けた偏差eをそのままフィードバックゲイン演算部43へ出力する。
【0239】
フィードバックゲイン演算部43は、偏差補正部42から受ける偏差eに基づいて、フィードバック制御のゲインを演算する。より詳細には、フィードバックゲイン演算部43は、外乱補償部6によって電圧に基づいて算出された外乱補償量と比較可能なフィードバック制御のゲインを、電流に基づいて算出された偏差eから演算する。
【0240】
具体的には、フィードバックゲイン演算部43は、偏差eに倍率を乗じた値をフィードバック制御のゲインの比例項として演算する。また、フィードバックゲイン演算部43は、偏差eを所定時間積分した値に倍率を乗じた値をフィードバック制御のゲインの積分項として演算する。
【0241】
フィードバックゲイン演算部43は、比例項および積分項を合計した値をフィードバック制御のゲインとして加算器44へ出力する。これにより、電流調整部5においてPI制御が行われる。
【0242】
なお、フィードバックゲイン演算部43は、偏差eを時間微分した微分項をフィードバック制御のゲインに含めてもよい。これにより、電流調整部5においてPID制御が行われる。
【0243】
加算器44は、フィードバックゲイン演算部43から受けるゲインと、外乱補償部6における外乱補償量算出部72から受ける外乱補償量とを加算し、加算結果である総合制御量を総合制御部45へ出力する。
【0244】
図15は、本発明の実施の形態に係る電流調整部5がインバータ回路33を制御する制御信号を生成する際に用いる三角波比較方式の一例を示す図である。
【0245】
図15を参照して、三角波生成部47は、たとえば、自己の系統連系PCS101が電力系統の周波数である60ヘルツより大きいキャリア周波数Fcの三角波TWを生成する。三角波TWは、たとえば半導体スイッチ素子TS1,TS2,TS3,TS4毎に生成される。
【0246】
三角波比較部46は、三角波生成部47において半導体スイッチ素子TS1,TS2,TS3,TS4毎に生成された三角波TWを用いてインバータ回路33における半導体スイッチ素子TS1,TS2,TS3,TS4を制御するための制御信号S1,S2,S3,S4をそれぞれ生成する。
【0247】
具体的には、三角波比較部46は、たとえば、図15に示すように、半導体スイッチ素子TS1に対応する三角波TWのレベルが三角波しきい値Th1より大きいという条件を満たす場合、論理ハイレベルの制御信号S1を生成し、また、当該条件を満たさない場合、論理ローレベルの制御信号S1を生成する。
【0248】
三角波比較部46は、半導体スイッチ素子TS2,TS3,TS4に対応する三角波TWおよび三角波しきい値Th2,Th3,Th4に基づいて制御信号S2,S3,S4をそれぞれ生成する。三角波比較部46は、生成した制御信号S1,S2,S3,S4をインバータ回路33における半導体スイッチ素子TS1,TS2,TS3,TS4へそれぞれ出力する。
【0249】
総合制御部45は、加算器44から受ける総合制御量に基づいてインバータ回路33をPWM制御する。具体的には、総合制御部45は、加算器44から受ける総合制御量に基づいて三角波しきい値Th1,Th2,Th3,Th4のレベルを調整することにより、三角波比較部46が論理ハイレベルの制御信号を出力する時間すなわち制御信号S1,S2,S3,S4のパルス幅をそれぞれ制御する。
【0250】
これにより、インバータ回路33において、制御信号S1,S2,S3,S4のパルス幅に応じた電流が生成される。すなわち、総合制御部45は、総合制御量に基づいて三角波しきい値Th1,Th2,Th3,Th4のレベルを調整することにより、インバータ回路33において生成される発電電流を調整する。なお、三角波比較部46が論理ハイレベルの制御信号を出力する時間とキャリア周期Tcとの比がデューティ比となる。
【0251】
また、総合制御部45は、加算器44から受ける総合制御量に基づいてコンバータ回路31を制御する。より詳細には、総合制御部45は、総合制御量に応じた電流がインバータ回路33において生成可能となるように発電装置11から受ける電圧を昇圧するための制御信号S5を生成し、生成した制御信号S5を半導体スイッチ素子TS5へ出力する。
【0252】
図16は、本発明の実施の形態に係る系統連系PCS101が生成する発電電流の一例を示す図である。
【0253】
図16を参照して、横軸は、時間を示し、縦軸は、電圧値および電流値を示す。系統電圧値Mvpsは、図2に示す系統電圧測定部21により測定された系統電圧Vpsの時間変化を示す。また、発電電流値Migは、図2に示す発電電流測定部23により測定される発電電流Igの測定値の時間変化を示す。
【0254】
系統連系PCS101は、系統電圧値Mvpsおよび発電電流値Migに基づいてフィードフォワード制御およびフィードバック制御を行うことで、品質の高い発電電流Igを生成する。
【0255】
具体的には、系統連系PCS101における偏差補正部42は、ゼロクロス期間Dzcにおいて、偏差eの値を(K×e)に相当する値に補正し、フィードバック制御の影響度を下げることにより、インバータ回路33において生成される発電電流Igの電流安定化処理を行う。
【0256】
これにより、たとえば、図16に示すようにゼロクロス期間Dzcにおいて低速の電力線通信により大きな発電電流Igが流れる場合においても、ゼロクロス期間Dzcに続く期間において発電電流Igが乱れてしまうことを抑制することができる。
【0257】
また、低速の電力線通信により、ゼロクロス期間Dzcにおける系統電圧値Mvpsに歪みが含まれる場合であっても、電流調整部5は、系統電圧Vpsと同期する外乱補償量を外乱補償部6から受けることができるので、適切な外乱補償量に基づいてフィードフォワード制御を行うことができる。
【0258】
これにより、たとえば図16に示すように、系統電圧Vpsと同期した発電電流Igを生成することができる。
【0259】
[系統連系PCSの動作]
次に、本発明の実施の形態に係る系統連系PCS101における電流調整部が電流安定化処理を行なう際の動作について説明する。
【0260】
図17は、本発明の実施の形態に係る系統連系PCS101が電流安定化処理を行なう際の動作手順を定めたフローチャートである。系統連系システム201における系統連系PCS101および子通信装置202の各々は、シーケンスの各ステップを含むプログラムを図示しないメモリから読み出して実行する。これらのプログラムは、外部からインストールすることができる。これらのインストールされるプログラムは、たとえば記録媒体に格納された状態で流通する。
【0261】
図17を参照して、まず、インバータ回路33は、コンバータ回路31およびキャパシタ32を経由して発電装置11から受けた発電電力から発電電流Igを生成し、発電電流Igを電力系統へ出力する(ステップS102)。
【0262】
次に、ゼロクロス検出部71は、電力系統における系統電圧Vpsがゼロボルトを示すゼロクロスタイミングtzを検出する(ステップS104)。
【0263】
次に、目標電流設定部7は、ゼロクロス検出部71により検出されたゼロクロスタイミングtzおよび発電電力値Mpgに基づいて、自己の系統連系PCS101が電力系統へ出力すべき発電電流Igの目標値I*を設定する(ステップS106)。
【0264】
次に、ゼロクロス期間設定部4は、ゼロクロス検出部71により検出されたゼロクロスタイミングtzに基づいてゼロクロス期間Dzcを設定する(ステップS108)。
【0265】
次に、ゼロクロス期間設定部4は、設定したゼロクロス期間Dzcにおいて論理ハイレベルのゼロクロス期間信号を電流調整部5へ出力する(ステップS110でYES)。
【0266】
次に、電流調整部5は、論理ハイレベルのゼロクロス期間信号をゼロクロス期間設定部4から受けると、系統電圧値Mvpsおよび補正後の偏差eに基づいて発電電流Igを調整する電流安定化処理を行う(ステップS112)。
【0267】
次に、インバータ回路33は、コンバータ回路31およびキャパシタ32を経由して発電装置11から受けた発電電力から、調整した値の発電電流Igを生成し、発電電流Igを電力系統へ引き続き出力する(ステップS102)。
【0268】
一方、ゼロクロス期間設定部4は、設定したゼロクロス期間Dzc以外の期間において論理ローレベルのゼロクロス期間信号を電流調整部5へ出力する(ステップS110でNO)。
【0269】
次に、電流調整部5は、論理ローレベルのゼロクロス期間信号をゼロクロス期間設定部4から受けると、系統電圧値Mvpsおよび偏差eに基づいて発電電流Igを調整する(ステップS114)。
【0270】
次に、インバータ回路33は、コンバータ回路31およびキャパシタ32を経由して発電装置11から受けた発電電力から、調整した値の発電電流Igを生成し、発電電流Igを電力系統へ引き続き出力する(ステップS102)。
【0271】
図17に示す動作では、電流調整部5は、ステップS112において、論理ハイレベルのゼロクロス期間信号をゼロクロス期間設定部4から受けると、電流安定化処理を行う。
【0272】
これにより、低速の電力線通信により大きな発電電流Igが流れる可能性が高いゼロクロス期間Dzcにおいて電流安定化処理が行われるので、発電電流Igが乱れてしまうことを抑制することができる。
【0273】
なお、上記ステップS106およびステップS108の順番が入れ替わってもよい。すなわち、系統連系PCS101は、たとえば、ステップS108を行った後、ステップS106を行ってもよい。
【0274】
図18は、本発明の実施の形態に係る系統連系PCS101が検出した電流パルスに基づいて電流安定化処理を行なう際の動作手順を定めたフローチャートである。
【0275】
図18を参照して、ステップS202〜S208の動作は、図17に示すフローチャートにおけるステップS102〜S108の動作と同様であるため、ここでは詳細な説明は繰り返さない。
【0276】
次に、ゼロクロス期間設定部4は、設定したゼロクロス期間Dzcにおいて(ステップS210でYES)、電流パルス検出部61から電流パルス検出情報を受けている期間、論理ハイレベルのゼロクロス期間信号を電流調整部5へ出力する(ステップS212でYES)。
【0277】
次に、電流調整部5は、論理ハイレベルのゼロクロス期間信号をゼロクロス期間設定部4から受けると、系統電圧値Mvpsおよび補正後の偏差eに基づいて発電電流Igを調整する電流安定化処理を行う(ステップS214)。
【0278】
次に、インバータ回路33は、コンバータ回路31およびキャパシタ32を経由して発電装置11から受けた発電電力から、調整した値の発電電流Igを生成し、発電電流Igを電力系統へ引き続き出力する(ステップS202)。
【0279】
一方、ゼロクロス期間設定部4は、設定したゼロクロス期間Dzc以外の期間、および設定したゼロクロス期間Dzcのうち電流パルス検出部61から電流パルス検出情報を受けていない期間、論理ローレベルのゼロクロス期間信号を電流調整部5へ出力する(ステップS210でNOまたはステップS212でNO)。
【0280】
次に、電流調整部5は、論理ローレベルのゼロクロス期間信号をゼロクロス期間設定部4から受けると、系統電圧値Mvpsおよび偏差eに基づいて発電電流Igを調整する(ステップS216)。
【0281】
次に、インバータ回路33は、コンバータ回路31およびキャパシタ32を経由して発電装置11から受けた発電電力から、調整した値の発電電流Igを生成し、発電電流Igを電力系統へ引き続き出力する(ステップS202)。
【0282】
図18に示す動作では、電流調整部5は、ステップS214において、電流パルス検出部61により電流パルス検出情報が出力されている期間、電流安定化処理を行う。
【0283】
これにより、電流パルス検出部61から電流パルス検出情報が出力されていない期間においてフィードバック制御の影響度を無意味に下げてしまうことを避けることができるので、当該期間における発電電流Igの目標値I*への追随性を高めることができる。
【0284】
図19は、本発明の実施の形態に係る系統連系PCS101が子通信装置202から受ける通信開始情報に基づいて電流安定化処理を行なう際の動作手順を定めたフローチャートである。
【0285】
図19を参照して、ステップS302〜S308の動作は、図17に示すフローチャートにおけるステップS102〜S108の動作と同様であるため、ここでは詳細な説明は繰り返さない。
【0286】
次に、ゼロクロス期間設定部4は、通信部3から通信開始情報を受けると、子通信装置202により上り方向の低速の電力線通信が行われることを認識し(ステップS310でYES)、設定したゼロクロス期間Dzcにおいて、論理ハイレベルのゼロクロス期間信号を電流調整部5へ出力する(ステップS312でYES)。
【0287】
次に、電流調整部5は、論理ハイレベルのゼロクロス期間信号をゼロクロス期間設定部4から受けると、系統電圧値Mvpsおよび補正後の偏差eに基づいて発電電流Igを調整する電流安定化処理を行う(ステップS314)。
【0288】
次に、インバータ回路33は、コンバータ回路31およびキャパシタ32を経由して発電装置11から受けた発電電力から、調整した値の発電電流Igを生成し、発電電流Igを電力系統へ引き続き出力する(ステップS302)。
【0289】
一方、設定したゼロクロス期間Dzc以外の期間において論理ローレベルのゼロクロス期間信号を電流調整部5へ出力する(ステップS312でNO)。
【0290】
次に、電流調整部5は、論理ローレベルのゼロクロス期間信号をゼロクロス期間設定部4から受けると、系統電圧値Mvpsおよび偏差eに基づいて発電電流Igを調整する(ステップS316)。
【0291】
次に、インバータ回路33は、コンバータ回路31およびキャパシタ32を経由して発電装置11から受けた発電電力から、調整した値の発電電流Igを生成し、発電電流Igを電力系統へ引き続き出力する(ステップS302)。
【0292】
また、ゼロクロス期間設定部4は、通信部3から通信開始情報を受けるまでは、子通信装置202が上り方向の低速の電力線通信を行っていないことを認識し、論理ローレベルのゼロクロス期間信号を電流調整部5へ出力する(ステップS310でNO)。
【0293】
次に、電流調整部5は、論理ローレベルのゼロクロス期間信号をゼロクロス期間設定部4から受けると、系統電圧値Mvpsおよび偏差eに基づいて発電電流Igを調整する(ステップS316)。
【0294】
次に、インバータ回路33は、コンバータ回路31およびキャパシタ32を経由して発電装置11から受けた発電電力から、調整した値の発電電流Igを生成し、発電電流Igを電力系統へ引き続き出力する(ステップS302)。
【0295】
図19に示す動作では、電流調整部5は、ステップS314において、子通信装置202により上り方向の低速の電力線通信が開始され、かつ論理ハイレベルのゼロクロス期間信号をゼロクロス期間設定部4から受けたとき、電流安定化処理を行う。
【0296】
これにより、子通信装置202により上り方向の低速の電力線通信が行われない期間にフィードバック制御の影響度を無意味に下げてしまうことを避けることができるので、当該期間における発電電流Igの目標値I*への追随性を高めることができる。
【0297】
図20は、本発明の実施の形態に係る系統連系PCS101が子通信装置202から受ける信号受信情報に基づいて電流安定化処理を行なう際の動作手順を定めたフローチャートである。
【0298】
図20を参照して、ステップS402〜S408の動作は、図17に示すフローチャートにおけるステップS102〜S108の動作と同様であるため、ここでは詳細な説明は繰り返さない。
【0299】
次に、ゼロクロス期間設定部4は、通信部3から信号受信情報を受けると、子通信装置202が下り方向の低速の電力線通信による電流パルスを受信したことを認識し(ステップS410でYES)、設定したゼロクロス期間Dzcにおいて、論理ハイレベルのゼロクロス期間信号を電流調整部5へ出力する(ステップS412でYES)。
【0300】
次に、電流調整部5は、論理ハイレベルのゼロクロス期間信号をゼロクロス期間設定部4から受けると、系統電圧値Mvpsおよび補正後の偏差eに基づいて発電電流Igを調整する電流安定化処理を行う(ステップS414)。
【0301】
次に、インバータ回路33は、コンバータ回路31およびキャパシタ32を経由して発電装置11から受けた発電電力から、調整した値の発電電流Igを生成し、発電電流Igを電力系統へ引き続き出力する(ステップS412)。
【0302】
一方、ゼロクロス期間設定部4は、設定したゼロクロス期間Dzc以外の期間において論理ローレベルのゼロクロス期間信号を電流調整部5へ出力する(ステップS412でNO)。
【0303】
次に、電流調整部5は、論理ローレベルのゼロクロス期間信号をゼロクロス期間設定部4から受けると、系統電圧値Mvpsおよび偏差eに基づいて発電電流Igを調整する(ステップS416)。
【0304】
次に、インバータ回路33は、コンバータ回路31およびキャパシタ32を経由して発電装置11から受けた発電電力から、調整した値の発電電流Igを生成し、発電電流Igを電力系統へ引き続き出力する(ステップS402)。
【0305】
また、ゼロクロス期間設定部4は、通信部3から信号受信情報を受けるまでは、子通信装置202が下り方向の低速の電力線通信による電流パルスを受信していないことを認識し、論理ローレベルのゼロクロス期間信号を電流調整部5へ出力する(ステップS410でNO)。
【0306】
次に、電流調整部5は、論理ローレベルのゼロクロス期間信号をゼロクロス期間設定部4から受けると、系統電圧値Mvpsおよび偏差eに基づいて発電電流Igを調整する(ステップS416)。
【0307】
次に、インバータ回路33は、コンバータ回路31およびキャパシタ32を経由して発電装置11から受けた発電電力から、調整した値の発電電流Igを生成し、発電電流Igを電力系統へ引き続き出力する(ステップS402)。
【0308】
図20に示す動作では、電流調整部5は、ステップS414において、子通信装置202が下り方向の低速の電力線通信による電流パルスを受信し、かつ論理ハイレベルのゼロクロス期間信号をゼロクロス期間設定部4から受けたとき、電流安定化処理を行う。
【0309】
これにより、電力系統において下り方向の低速の電力線通信による電流パルスがない期間にフィードバック制御の影響度を無意味に下げてしまうことを避けることができるので、当該期間における発電電流Igの目標値I*への追随性を高めることができる。
【0310】
なお、本発明の実施の形態に係る系統連系PCS101は、低速の電力線通信を行うための子通信装置202と通信を行う通信部3を備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。系統連系PCS101は、通信部3の代わりに、通信部3の機能および子通信装置202の機能を有する中継部を備える構成であってもよい。
【0311】
これにより、子通信装置202の機能を系統連系PCS101におけるMCU(Micro Controller Unit)に含めることができるので、一体で制御をすることができる。
【0312】
また、中継部を備える系統連系PCS101は、電力系統における電流、具体的には、ノードN3および低圧トランスT1間における電力線PL3を通して流れる電流を発電電流値Migとして計測してもよい。
【0313】
電力系統のインピーダンスは小さいので、低速の電力線通信時において、ノードN3および低圧トランスT1間における電力線PL3を通して流れる電流パルスの大きさは、ノードN3および平滑化回路34間における電力線PL3を通して電流パルスより大きい。
【0314】
したがって、中継部を備える系統連系PCS101は、ノードN3および低圧トランスT1間における電力線PL3を通して流れる電流を発電電流値Migとして計測することにより、大きい電流パルスを検出することができるので、電流パルスを精度よく検出することができる。
【0315】
ところで、特許文献1に記載された外向きTWACSメッセージ等が電力系統における電力線を通信路として送受信される場合、系統連系PCSは、系統電圧のゼロクロスタイミング近傍において電力線経由でたとえば電流パルスを受信してしまう場合がある。
【0316】
系統連系PCSが電流パルスを受信した場合、たとえば、発電電力から発電電流を生成するためのフィードフォワード制御およびフィードバック制御が当該電流パルスにより乱されることがある。この際、系統連系PCSは、系統連系規程により定められた品質を満たさない低品質の発電電流を電力系統へ出力してしまう場合がある。
【0317】
これに対して、本発明の実施の形態に係る系統連系インバータ装置では、インバータ回路33は、発電電力から発電電流Igを生成し、発電電流Igを電力系統へ出力する。ゼロクロス検出部71は、電力系統における系統電圧値Mvpsがゼロボルトを示すゼロクロスタイミングtzを検出する。目標電流設定部7は、ゼロクロス検出部71により検出されたゼロクロスタイミングtzに基づいて、発電電流Igの目標値I*を設定する。ゼロクロス期間設定部4は、ゼロクロスタイミングtzに基づいてゼロクロス期間Dzcを設定する。電流調整部5は、系統電圧値Mvps、および目標値I*に対するインバータ回路33により生成された電流の測定値である発電電流値Migの偏差eに基づいて、発電電流Igを調整する。そして、電流調整部5は、ゼロクロス期間設定部4により設定されたゼロクロス期間Dzcにおいて、偏差eを偏差eより絶対値の小さい同符号の値またはゼロに補正し、補正後の偏差eおよび系統電圧値Mvpsに基づいて発電電流Igを調整する電流安定化処理を行う。
【0318】
このように、ゼロクロス期間Dzcにおいて電流安定化処理を行う構成により、たとえばゼロクロス期間Dzcにおいて電流パルスを受けて偏差eの絶対値が増大した場合においても、発電電流Igの調整の乱れを小さくすることができるので、発電電流Igを安定して調整することができる。
【0319】
これにより、ゼロクロス期間Dzcにおいて電流パルスを受けて偏差eの絶対値が増大した場合においても、低品質の発電電流Igが電力系統へ出力されることを抑制することができる。
【0320】
また、発電電流Igを調整するアルゴリズムの変更により電流安定化処理を行うための機能を実装することができるので、品質のよい発電電流Igを低コストで生成することができる。
【0321】
また、本発明の実施の形態に係る系統連系インバータ装置では、ゼロクロス期間設定部4は、子通信装置202、親通信装置212および他の通信装置により電力系統において行われる低速の電力線通信の信号伝送期間が含まれるようにゼロクロス期間Dzcを設定する。
【0322】
このように、電流パルスにより偏差eの絶対値が増大する信号伝送期間が含まれるようにゼロクロス期間Dzcを設定する構成により、ゼロクロス期間Dzc以外の期間において発電電流Igの品質を高めつつ、ゼロクロス期間Dzcにおいて低品質の発電電流Igを電力系統へ出力することを抑制することができるので、発電電流Igの品質を安定して高めることができる。
【0323】
また、本発明の実施の形態に係る系統連系インバータ装置では、電流調整部5は、ゼロクロス期間Dzcのうち、ノードN3および低圧トランスT1間における電力線PL3を通して流れる電流、または平滑化回路34およびノードN3間における電力線PL3を通して流れる電流を発電電流値Migとして計測し、発電電流値Migの絶対値が所定のしきい値より大きくなる期間において電流安定化処理を行う。
【0324】
このように、ゼロクロス期間Dzcのうち、電流パルスが発生し、発電電流Igの調整の乱れが発生する可能性が高い状況において電流安定化処理を行う構成により、電流安定化処理を効率よく行うことができる。
【0325】
また、ゼロクロス期間Dzcのうち、電流パルスがない期間に電流安定化処理を行うことを避けることができるので、当該期間において、発電電流Igの目標値I*への追随性を高めることができる。これにより、品質のよい発電電流Igを効率的に生成することができる。
【0326】
また、本発明の実施の形態に係る系統連系インバータ装置では、通信部3は、電力系統において行われる低速の電力線通信を開始する旨を示す通信開始情報、および電力系統において行われる低速の電力線通信に用いられる信号を受信した旨を示す信号受信情報の少なくとも一方を子通信装置202から受信する。電流調整部5は、通信部3が通信開始情報または信号受信情報を子通信装置202から受信した場合、ゼロクロス期間Dzcにおいて電流安定化処理を行う。
【0327】
このように、電力系統において低速の電力線通信が行われ、電流パルスによる発電電流Igの調整の乱れが発生する可能性が高い状況において電流安定化処理を行う構成により、電流安定化処理を効率よく行うことができる。
【0328】
また、低速の電力線通信による電流パルスがない期間に電流安定化処理を行うことを避けることができるので、当該期間において、発電電流Igの目標値I*への追随性を高めることができる。これにより、品質のよい発電電流Igを効率的に生成することができる。
【0329】
また、本発明の実施の形態に係る系統連系インバータ装置では、ゼロクロス検出部71は、子通信装置202、親通信装置212および他の通信装置の少なくともいずれか1つにより電力系統において低速の電力線通信が行われている期間、ゼロクロスタイミングtzを推定する。
【0330】
このように、ゼロクロスタイミングtz近傍において低速の電力線通信による歪みを有する系統電圧値Mvpsからゼロクロスタイミングtzを検出する代わりに、ゼロクロスタイミングtzを推定する構成により、歪みのない系統電圧値Mvpsから検出されるゼロクロスタイミングtzからずれたタイミングをゼロクロスタイミングtzとして検出してしまうことを避けることができる。
【0331】
また、本発明の実施の形態に係る系統連系インバータ装置では、ゼロクロス検出部71は、ゼロクロスタイミングtz以外のタイミングを検出し、検出したタイミングからゼロクロスタイミングtzを推定する。
【0332】
このように、低速の電力線通信による歪みを有する系統電圧値Mvpsから正しく検出することが困難なゼロクロスタイミングtz、以外のタイミングを検出対象とする構成により、低速の電力線通信による影響を受けずに当該タイミングを検出することができるので、ゼロクロスタイミングtzの推定精度を向上させることができる。
【0333】
また、本発明の実施の形態に係る系統連系インバータ装置では、ゼロクロス検出部71は、系統電圧値Mvpsが最大値となるタイミングおよび最小値となるタイミングのいずれか一方からゼロクロスタイミングtzを推定する。
【0334】
このように、正確かつ容易に検出することが可能な最大値となるタイミングおよび最小値となるタイミングのいずれか一方からゼロクロスタイミングtzを推定する構成により、簡易な処理でゼロクロスタイミングtzの推定精度を向上させることができる。
【0335】
また、本発明の実施の形態に係る系統連系インバータ装置では、外乱補償量算出部72は、ゼロクロス検出部71により推定されたゼロクロスタイミングtzに基づいて系統電圧Vpsを推定する。電流調整部5は、外乱補償量算出部72により推定された系統電圧Vps、および偏差eに基づいて発電電流Igを調整する。
【0336】
このように、低速の電力線通信による歪みを有する系統電圧値Mvpsの代わりに、推定された系統電圧Vps、および偏差eに基づいて発電電流Igを調整する構成により、低速の電力線通信による影響を受けずに発電電流Igを適切に調整することができる。
【0337】
また、本発明の実施の形態に係る系統連系インバータ装置では、目標電流設定部7は、ゼロクロス検出部71により推定されたゼロクロスタイミングtzに基づいて目標値I*を設定する。
【0338】
このような構成により、低速の電力線通信による歪みを有する系統電圧値Mvpsから検出されたゼロクロスタイミングtzの代わりに、推定されたゼロクロスタイミングtzに基づいて適切な目標値I*を設定することができる。
【0339】
また、本発明の実施の形態に係る通信装置では、電力線通信部81は、電力系統において親通信装置212および他の通信装置と低速の電力線通信を行う。装置間通信部83は、低速の電力線通信が開始される前に、低速の電力線通信を開始する旨を示す通信開始情報を、電力系統へ電流を供給する系統連系PCS101へ送信する。
【0340】
このように、電流パルスを発生する低速の電力線通信を行うことを系統連系PCS101に対して事前に通知する構成により、系統連系PCS101では、電流パルスの発生を前もって認識することができるので、電流パルスによる発電電流Igの調整の乱れを抑制する処理を適切なタイミングで開始することができる。
【0341】
これにより、系統連系PCS101において発電電流Igを安定して調整することができるので、低品質の発電電流Igを電力系統へ出力することを抑制することができる。
【0342】
また、本発明の実施の形態に係る通信装置では、装置間通信部83は、電力線通信部81が親通信装置212または他の通信装置から低速の電力線通信に用いられる信号を受信した場合、当該信号を受信した旨を示す信号受信情報を系統連系PCS101へ送信する。
【0343】
このように、他の通信装置から低速の電力線通信に用いられる信号を受信したことを系統連系PCS101に対して通知する構成により、系統連系PCS101では、低速の電力線通信が始まったことを認識することができる。
【0344】
なお、本発明の実施の形態に係る系統連系PCS101は、コンバータ部31およびキャパシタ32を備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。系統連系PCS101は、コンバータ部31およびキャパシタ32を備えずに、コンバータ部およびキャパシタを有するコンバータ装置から受けた電力から発電電流を生成し、当該発電電流を電力系統へ出力する構成であってもよい。
【0345】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0346】
1 制御部
2 測定部
3 通信部(受信部)
4 ゼロクロス期間設定部
5 電流調整部
6 外乱補償部
7 目標電流設定部
8 電力線通信検出部
11 発電装置
12 系統電源
14 太陽電池モジュール
21 系統電圧測定部
22 発電電力測定部
23 発電電流測定部
31 コンバータ回路
32 キャパシタ
33 インバータ回路(電流生成部)
34 平滑化回路
41 減算器
42 偏差補正部
43 フィードバックゲイン演算部
44 加算器
45 総合制御部
46 三角波比較部
47 三角波生成部
61 電流パルス検出部
62 電力線通信判断部
63 タイマ部
71 ゼロクロス検出部
72 外乱補償量算出部(電流調整部)
81 電力線通信部
82 通信制御部
83 装置間通信部(送信部)
84 信号処理部
85 短絡スイッチ
101 系統連系PCS(系統連系インバータ装置)
201 系統連系システム
202 子通信装置
212 親通信装置
C1,C3 キャパシタ
D1,D2,D3,D4,D5,D6 ダイオード
T1,T2 低圧トランス
TS1,TS2,TS3,TS4,TS5 半導体スイッチ素子
L1,L2,L3,L86 インダクタ
図1
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