特許第6146158号(P6146158)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6146158-包装袋 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6146158
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】包装袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 30/16 20060101AFI20170607BHJP
   B65D 33/02 20060101ALI20170607BHJP
   B65D 33/38 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   B65D30/16 K
   B65D33/02
   B65D30/16 A
   B65D33/38
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-132579(P2013-132579)
(22)【出願日】2013年6月25日
(65)【公開番号】特開2015-6904(P2015-6904A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2016年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】桃川 公一
(72)【発明者】
【氏名】柳内 幹雄
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−001266(JP,A)
【文献】 特開2003−081359(JP,A)
【文献】 特開平08−192856(JP,A)
【文献】 米国特許第03204760(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 30/16
B65D 33/02
B65D 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁シール部内に未シール部からなり、気体により膨らませた独立充填室を設け、該独立充填室に弱シール部を介して、膨らんでいない未シール部からなる予備室を接続させた包装袋であって、前記弱シール部のヒートシール強さが前記独立充填室を設けた周縁シール部のヒートシール強さの30から70%であり、かつ、前記独立充填室と前記予備室の間の距離が10mm以下であることを特徴とする包装袋。
【請求項2】
前記弱シール部が剥離したときに、前記独立充填室と前記弱シール部と前記予備室を合わせた容積が、前記独立充填室の容積の1.1倍以上あることを特徴とする請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
前記包装袋が、底部にガゼット部を設けたスタンディングパウチであって、前記独立充填室が周縁シールのうちのサイドシール部に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の包装袋。
【請求項4】
前記独立充填室が設けられているサイドシール部と反対側のサイドシール部の上端の隅部に、注ぎ口が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋に関するものである。特に、周縁シール部内に内容物収納部とは別の独立した独立充填室を設けた包装袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
包装袋には、さまざまな機能が要求されている。ひとつには内容物の劣化を防ぐという保護機能があり、また、輸送運搬上の取り扱いを容易にする機能が要求される一方、販売の上でお客様の目を引く、または、贈答用などで美粧性を求められるものもある。
【0003】
この包装袋の形状も各種あり、3方シール袋、4方シール袋、ピロー袋、ガゼット袋などさまざまなものがある。また、底部にガゼット部を設けて、底部を船底型にシールにしたスタンディングパウチもある。
【0004】
このスタンディングパウチは、自立させて陳列させることができて消費者の目に留まりやすいとともに、袋の大きさの割に内容量を多くすることができるので、トイレタリーなどの詰め替え容器として、広く用いられるようになってきた。
【0005】
このようなスタンディングパウチの場合、特にサイズの大きいものでは、包装袋の材質に腰がないと、店頭等での陳列時や卓上使用時に袋の上部が折れ曲がり、見栄えが悪くなったり、自立性を失って倒れたりするという問題点があった。
【0006】
そのため、サイドシール部の一方もしくは双方に、上下方向に延びる長方形状の閉じた輪郭でなる未シール部が形成されて、未シール部にエアを注入し、袋に保形性と自立性を保持させたスタンディングパウチがある(例えば、特許文献1)。
【0007】
公知文献を以下に示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−12800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のスタンディングパウチのように、シール部に未シール部を形成し、未シール部に気体を注入した独立充填室を設けた場合、周囲の温度の上昇により、独立充填室の中の気体が膨張し、シール部を剥離させて外気と連通させ、中の気体が逃げてしまうことがある。
【0010】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたもので、周縁シール部に設けられた独立充填室の中に充填された気体が、周囲の温度が上昇して膨張しても、周縁シール部を剥離させて独立充填室を外気と連通させることがなく、中に充填された気体を逃がしてしまうことのない包装袋を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は係る課題に鑑みなされたものであり、請求項1の発明は、周縁シール部内に未シール部からなり、気体により膨らませた独立充填室を設け、該独立充填室に弱シール部を介して、膨らんでいない未シール部からなる予備室を接続させた包装袋であって、前記
弱シール部のヒートシール強さが前記独立充填室を設けた周縁シール部のヒートシール強さの30から70%であり、かつ、前記独立充填室と前記予備室の間の距離が10mm以下であることを特徴とする包装袋である。
【0012】
本発明の請求項2の発明は、前記弱シール部が剥離したときに、前記独立充填室と前記弱シール部と前記予備室を合わせた容積が、前記独立充填室の容積の1.1倍以上あることを特徴とする請求項1に記載の包装袋である。
【0013】
本発明の請求項3の発明は、前記包装袋が、底部にガゼット部を設けたスタンディングパウチであって、前記独立充填室が周縁シールのうちのサイドシール部に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の包装袋である。
【0014】
本発明の請求項4の発明は、前記独立充填室が設けられているサイドシール部と反対側のサイドシール部の上端の隅部に、注ぎ口が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の包装袋である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の包装袋は、周縁シール部に設けられた独立充填室の中に充填された気体が、周囲の温度が上昇して膨張しても、周縁シール部を剥離させて独立充填室を外気と連通させることがなく、中に充填された気体を逃がしてしまって、独立充填室がしぼんでしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の包装袋の一例を模式的に平面で示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態につき説明する。
図1は、本発明の包装袋の一例を模式的に平面で示した説明図である。
【0018】
本例の包装袋100は、表裏2枚のフィルムが重ね合わされ、底部に2つ折りした底部材1を、表裏2枚のフィルムの間に、折り部を上にして差し込みガゼット部を設け、ガゼット部を船底型にシールして底シール部を設けたスタンディングパウチである。
【0019】
図1のように、一方のサイドシール部2aの上部の一隅には、注ぎ口となる口栓3が取り付けられていて、他方のサイドシール部2b内には、シール部で囲まれた上下方向に細長い未シール部からなっていて、内容物収納部とは別の独立した独立充填室4が設けられている。
【0020】
そして、独立充填室4には、弱シール部5を介して予備室6が接続されている。独立充填室4は、空気や窒素ガスなどの気体が充填されていて膨らみ、腰のあまりない包装材料で包装袋が形成されていても、保形性や自立性を保持するようになっている。また、取っ手として用いて、包装袋を掴んで持つときに持ちやすくなっている。
【0021】
また、注ぎ口となる口栓3が設けられたサイドシール部2aの反対側のサイドシール部2b内に独立充填室4が設けられているので、独立充填室4を取っ手として用いる場合に、独立充填室4を持って、注ぎ口より液体の内容物を注ぎだしやすい。
【0022】
予備室6も未シール部からなっているが、ここには、気体は充填されていないで、膨らんでいない。そして、予備室6と独立充填室4の間には、独立充填室4に充填された気体が予備室6に行かないように弱シール部5が設けられている。
【0023】
弱シール部5のヒートシール強さ(JIS Z0238、以下同様)は、独立充填室4を設けたサイドシール部2bのヒートシール強さの30から70%になるように設けられている。
【0024】
30%より弱くすると、独立充填室4に気体を充填するときに、あるいは、独立充填室4を掴んで包装袋100を持つときに、弱シール部5が剥離して、独立充填室4と予備室6が連通してしまい、独立充填室4の機能を損ねてしまう恐れがある。
【0025】
70%より強くすると、周囲の温度が上がり、中の気体が膨張したときに、弱シール部5が剥離する前に、サイドシール部2bの他の部分が剥離して、独立充填室4の中の気体が逃げてしまう恐れがある。
【0026】
また、独立充填室4と予備室6の間の距離Xが10mm以下になるように設けられている。あまりこの距離X(弱シール部5の幅)を狭くすることは、安定して一定の幅でヒートシールするのが難しく、3mm以上にすることが好ましい。
【0027】
また、距離Xが10mmより長いと、弱シール部5が剥離して、独立充填室4と予備室6が連通する前に、サイドシール部2bの他の部分が剥離して、独立充填室4の中の気体が逃げてしまう恐れがある。
【0028】
そして、弱シール部5が剥離したときに、独立充填室4と弱シール部5と予備室6を合わせて膨らんだときの容積が、独立充填室4の膨らんだ容積の1.1倍以上であることが好ましい。
【0029】
この容積があれば、独立充填室4の中の気体が温度上昇により膨張しても、独立充填室4と弱シール部5と予備室6で収納することができ、サイドシール部2bの他の部分が剥離して、独立充填室4の中の気体が逃げてしまう恐れがない。
【0030】
また、独立充填室4と弱シール部5と予備室6を合わせて膨らんだときの容積があまり大きいと、独立充填室4と予備室6が連通したときに、この部分があまり膨らむことができなくなるので、独立充填室4の膨らんだ容積の1.2倍以下であることが好ましい。
【0031】
このようになっているので、包装袋100は、周囲の温度が夏場の倉庫のように、50℃を超えるようなところで保管された場合でも、弱シール部5が剥離することで、独立充填室4の中の気体が、独立充填室4と弱シール部5と予備室6の中にとどまり、逃げてしまうことがなく、包装袋の保形性や自立性を保持し、また、独立充填室4を取っ手として用いて、包装袋を掴んで持つことができる。
【0032】
本例の包装袋100の表裏のフィルムや底部材1としては、基材フィルムとシーラント層が積層された積層フィルムが好ましく用いられる。基材フィルムとしては、ナイロン、ポリエチレンテフタレート、あるいは、ポリプロピレンなどの延伸フィルムや、無延伸フィルムが用いられる。また、これらを組み合わせて用いることが出来る。
【0033】
更には、バリア層として、アルミニウム箔を設けてもよい。また、アルミニウムなどの金属や、アルミナ、または、シリカなどの無機物の蒸着層を設けてもよい。これらを、単層または多層で用いてもよい。
【0034】
シーラント層としては、熱可塑性樹脂で熱溶着が可能な低密度ポリエチレンフィルム、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム、未延伸ポリプロピレンフィルムなどを用いることが
できる。
【0035】
また、必要に応じて絵柄印刷層を設けることができる。絵柄印刷層を設ける印刷方式は、特に限定するものではないが、通常、グラビア印刷、あるいは、フレキソ印刷が用いられる。
【0036】
本例の包装袋100は、以下の様にスタンディングパウチの製袋機を利用して製袋することができる。
【0037】
独立充填室4と弱シール部5と予備室6の部分を未シール部としてサイドシール部2bに設けて、また、口栓3を取り付ける隅部と、内容物充填口となる天シール部に未シール部分を残してシールし、全体を抜き加工により打ち抜き外形を形成させる。
【0038】
次に、弱シール部5をサイドシール部2bのヒートシール強さより弱くシールして設け、独立充填室4に気体などを、図示しない注入孔などから加圧して吹き込み、口栓3をシールして取り付け、天シール部の未シール部分から内容物を充填してシールすることによって、内容物が充填された包装袋100が製袋される。
【実施例】
【0039】
以下に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0040】
<実施例1>
二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム12μm、二軸延伸ナイロンフィルム15μm、アルミニウム箔9μm、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを順次2液硬化型ウレタン系接着剤を用いて、ドライラミネーション法によって貼り合わせて、表裏のフィルムと底部材1用の積層フィルムを作成した。尚、表裏のフィルムの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムの厚さは180μm、底部材1の直鎖状低密度ポリエチレンフィルムの厚さは60μmで作成した。
【0041】
この積層フィルムを用いて、図1の形状で、高さが282.5mm、幅が178.0mmで、容量が900mLのスタンディングパウチを作成した。このときのサイドシール部2bのヒートシール強さ(JIS Z0238)は100N/15mmで、弱シール部5のヒートシール強さは、30N/15mmで行った。
【0042】
また、独立充填室4と予備室6の間の距離Xは3mmとした。そして、弱シール部5が剥離したときに、独立充填室4と弱シール部5と予備室6を合わせて膨らんだときの容積が、独立充填室4の膨らんだ容積の1.1倍になるようにした。尚、独立充填室4の容量を15mLにして、室温23℃で空気を注入した。また、内容物として水900mLを充填した。以上のようにして、実施例1の包装袋を作成した。
【0043】
<実施例2>
独立充填室4と予備室6の間の距離Xを10mmとした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の包装袋を作成した。
【0044】
<実施例3>
サイドシール部2bのヒートシール強さ100N/15mmに対し、弱シール部5のヒートシール強さを、70N/15mmとした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の包装袋を作成した。
【0045】
<実施例4>
サイドシール部2bのヒートシール強さ100N/15mmに対し、弱シール部5のヒートシール強さを、70N/15mmとし、独立充填室4と予備室6の間の距離Xを10mmとした以外は、実施例1と同様にして、実施例4の包装袋を作成した。
【0046】
以下に本発明の比較例について説明する。
【0047】
<比較例1>
サイドシール部2bのヒートシール強さ100N/15mmに対し、弱シール部5のヒートシール強さを、20N/15mmとした以外は、実施例1と同様にして、比較例1の包装袋を作成した。
【0048】
<比較例2>
サイドシール部2bのヒートシール強さ100N/15mmに対し、弱シール部5のヒートシール強さを20N/15mmとし、独立充填室4と予備室6の間の距離Xを10mmとした以外は、実施例1と同様にして、比較例2の包装袋を作成した。
【0049】
<比較例3>
サイドシール部2bのヒートシール強さ100N/15mmに対し、弱シール部5のヒートシール強さを30N/15mmとし、独立充填室4と予備室6の間の距離Xを12mmとした以外は、実施例1と同様にして、比較例3の包装袋を作成した。
【0050】
<比較例4>
サイドシール部2bのヒートシール強さ100N/15mmに対し、弱シール部5のヒートシール強さを70N/15mmとし、独立充填室4と予備室6の間の距離Xを12mmとした以外は、実施例1と同様にして、比較例4の包装袋を作成した。
【0051】
<比較例5>
サイドシール部2bのヒートシール強さ100N/15mmに対し、弱シール部5のヒートシール強さを80N/15mmとし、独立充填室4と予備室6の間の距離Xを3mmとした以外は、実施例1と同様にして、比較例5の包装袋を作成した。
【0052】
<比較例6>
サイドシール部2bのヒートシール強さ100N/15mmに対し、弱シール部5のヒートシール強さを80N/15mmとし、独立充填室4と予備室6の間の距離Xを10mmとした以外は、実施例1と同様にして、比較例6の包装袋を作成した。
【0053】
<比較例7>
弱シール部5と予備室6を設けずに、独立充填室4だけ設けて、独立充填室4の容量を15mLにして、空気を注入した。それ以外は、実施例1と同様にして、比較例7の包装袋を作成した。
【0054】
以上のようにして作製した実施例、比較例の包装袋について、下記のように比較評価した。
【0055】
<評価方法>
水を充填した実施例、比較例の包装袋を50℃の恒温槽に保存し、24時間後、独立充填室4の状態を観察し、評価した。その結果を表1に記す。
【0056】
【表1】
<比較結果>
実施例1から4の包装袋は、高温で保存すると、弱シール部5が剥離して、独立充填室4の空気が、包装袋の外に逃げることなく、独立充填室4と弱シール部5と予備室6が一体となって、空気で膨らんでいて、問題なく使用できることがわかった。
【0057】
一方、比較例1と2の包装袋は、独立充填室4に空気を充填するときに弱シール部5が剥離してしまい、その時点では、充分な膨らみが得られなかった。また、比較例3から6の包装袋ではサイドシール部2bが先に剥離してしまい、独立充填室4がしぼんでしまった。
【0058】
また、弱シール部5と予備室6を設けなかった比較例7の従来の包装袋では、サイドシール部2bが剥離してしまい、独立充填室4がしぼんでしまった。
【0059】
以上のように本発明の包装袋は、倉庫などで周囲の温度が上昇して、独立充填室内の空気が膨張しても、弱シール部が剥離して、圧力を予備室6に逃がすので、サイドシール部2bが剥離して独立充填室がしぼんでしまうことがない。
【符号の説明】
【0060】
100・・・包装袋
1・・・底部材
2a、2b・・・サイドシール部
3・・・口栓
4・・・独立充填室
5・・・弱シール部
6・・・予備室
X・・・距離
図1