(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カラー画像層と前記カラー画像層上に形成される特別層との積層によって記録媒体上において指定色を指定濃さで発現させるための情報を記憶する記憶手段であって、前記指定濃さに対する前記カラー画像層の面積率を規定した第1特性と前記指定濃さに対する前記特別層の面積率を規定した第2特性とからなる特性セットを示す情報を記憶する記憶手段と、
前記第1特性に基づいて前記指定濃さに対する前記カラー画像層の面積率を決定し、前記第2特性に基づいて前記指定濃さに対する前記特別層の面積率を決定する面積率決定手段と、
を有し、
前記第1特性及び前記第2特性のうちの少なくとも1つにおいて、面積率が非線形の特性として規定されており、
前記記憶手段は、前記特性セットを示す情報として、前記指定濃さの変化に応じて前記カラー画像層の面積率よりも前記特別層の面積率がより線形的に変化するように構成された特別層優先特性セットを示す情報と、前記指定濃さの変化に応じて前記特別層の面積率よりも前記カラー画像層の面積率がより線形的に変化するように構成されたカラー画像層優先特性セットを示す情報と、を記憶し、
前記面積率決定手段は、前記特別層の効果を優先させる特別層優先モードが選択された場合、前記特別層優先特性セットに基づいて前記カラー画像層の面積率と前記特別層の面積率とを決定し、前記カラー画像層の効果を優先させるカラー画像層優先モードが選択された場合、前記カラー画像層優先特性セットに基づいて前記カラー画像層の面積率と前記特別層の面積率とを決定する、
ことを特徴とする画像処理装置。
少なくとも中間調の範囲においては、前記特別層優先特性セットが規定するカラー画像層の面積率は、前記カラー画像層優先特性セットが規定するカラー画像層の面積率よりも大きく、前記カラー画像層優先特性セットが規定する特別層の面積率は、前記特別層優先特性セットが規定する特別層の面積率よりも小さい、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に、本発明の実施形態に係る画像形成システムの一例を示す。画像形成システム10は、画像処理装置20と画像形成装置30とを含む。
【0019】
画像処理装置20は、画像信号を受けて画像処理を施し、画像処理が施された画像信号を画像形成装置30に出力する。
【0020】
画像形成装置30は、複数の色材を用いて、画像信号に応じた画像を記録媒体としての用紙上に形成する。本実施形態では、色材としてトナーが用いられる。他の色材としてインク等が用いられてもよい。画像形成装置30は、例えば、メタリック色のトナー(メタリックトナー)と、メタリック色以外の複数の基本色のトナー(カラートナー)とを用いて、電子写真プロセスを適用して用紙上に画像を形成する。本実施形態では、メタリックトナーとして、銀色(Silver:Si)トナーや金色(Gold:Go)トナーが用いられる。画像形成装置30は、複数の基本色のトナー層(カラー画像層としてのカラー層)を用紙上に形成し、カラー層上にメタリックトナーからなる層(特別層としてのメタリック層)を形成する。例えば、メタリック感(金属光沢感やキラキラ感)がある青メタリック色や赤メタリック色等のように、メタリックトナーを用いることで発現される特色が指定された場合、画像形成装置30は、メタリックトナーとカラートナーとを用いることで、指定された特色の画像を用紙上に形成する。なお、本実施形態では、基本色として、例えば、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の4色が用いられる。但し、本発明はこの例に限定されるものではなく、5色以上の色が基本色として用いられてもよい。例えば、オレンジ(O)、バイオレット(V)及びグリーン(G)等の色が本実施形態の基本色に含まれてもよい。以下では、CMYKの4色を基本色として説明する。また、メタリック色を記号Sで表す。
【0021】
画像形成装置30は、給紙トレイ31と、画像形成エンジン32と、中間転写ベルト33と、2次転写器34と、定着器35と、搬送路36とを含む。
【0022】
給紙トレイ31は、複数枚の用紙を収容するものである。給紙トレイ31に収容された用紙は、給紙トレイ31から一枚ずつ取り出され、2次転写器34及び定着器35を経由して排紙口へと繋がる搬送路36上を順次搬送されるようになっている。
【0023】
画像形成エンジン32は、一例として、メタリック色(S)のトナー像を中間転写ベルト33に形成するS機構、イエロー(Y)のトナー像を中間転写ベルト33に形成するY機構、マゼンダ(M)のトナー像を中間転写ベルト33に形成するM機構、シアン(C)のトナー像を中間転写ベルト33に形成するC機構、及び、ブラック(K)のトナー像を中間転写ベルト33に形成するK機構を含む。一例として、中間転写ベルト33の上流側から順番に、S機構、Y機構、M機構、C機構及びK機構の順番で、各機構が配置されている。画像形成エンジン32は、CMYKS各色の画像信号に応じて像保持体である感光体ドラムを走査露光して感光体ドラム上に静電潜像を形成し、CMYKS各色のトナーを用いて現像することで各色のトナー像を感光体ドラム上に形成し、感光体ドラム上に形成されたトナー像を中間転写ベルト33に重畳して転写する。
【0024】
2次転写器34は、中間転写ベルト33上に重畳形成された各色のトナー像を中間転写ベルト33から用紙へ転写する。定着器35は、加熱ロールによる加熱作用と加圧ロールによる加圧作用とによって、用紙に転写されたトナー像を用紙に定着させる。
【0025】
ここで、画像形成装置30の動作を説明する。青メタリック色や赤メタリック色等の特色が指定された場合、画像形成エンジン32によって、SYMCKの順番で各色のトナー像が中間転写ベルト33に重畳して転写される。そして、2次転写器34によって、中間転写ベルト33から用紙にSYMCKのトナー像が転写される。そして、用紙に転写されたトナー像は、定着器35によって定着させられる。これにより、例えば
図2に示すように、用紙40上にカラー層42が形成され、カラー層42上にメタリック層44が重畳して形成される。カラー層42とメタリック層44とによって、青メタリック色や赤メタリック色等の特色が発現することになる。なお、特色ではなく、カラートナーのみによって発現される色が指定された場合、画像形成装置30は、画像形成エンジン32のS機構を用いずに、YMCKのトナー像を用紙上に転写して定着させる。
【0026】
次に、
図3を参照して、画像処理装置20の構成について説明する。画像処理装置20は、特色情報取得部21と、特色値決定部22と、特色値記憶部23と、色変換部24と、中間調処理部25と、特性データ記憶部26とを含む。
【0027】
画像処理装置20には、一例として、青メタリック色や赤メタリック色等の特色で表される画像信号や、レッド(R)、グリーン(G)及びブルー(B)の組み合わせで表される画像信号(RGB色信号)や、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の組み合わせで表される画像信号(CMYK色信号)が入力される。例えば特色を表す画像信号には、画素毎に特色名と特色の濃さとを示す特色情報が付加されている。特色名は、例えば、青メタリック色や赤メタリック色等の名称である。特色の濃さは、例えば0%〜100%で表される。以下の説明では、特色情報が示す特色名の特色を「指定色」と称し、特色情報が示す特色の濃さを「指定濃さ」と称することとする。
【0028】
特色情報取得部21は、画像信号を受け、当該画像信号から特色情報を取得し、特色情報を特色値決定部22に出力する。
【0029】
特色値決定部22は、指定色と指定濃さとに対応する色信号であって、画像形成装置30に依存しない色空間であるデバイス非依存色空間(例えばL*a*b*色空間)上の色信号(例えばL*a*b*色信号)を決定し、L*a*b*色信号を色変換部24に出力する。例えば、特色毎に、特色の各濃さ(0〜100%)とL*a*b*の各値との対応関係を示す対応情報を予め作成しておき、特色毎の対応情報を、特色値記憶部23に予め記憶させておく。特色値決定部22は、特色値記憶部23に記憶されている対応情報を参照することで、指定色と指定濃さとに対応するL*a*b*色信号を決定する。例えば、指定色が青メタリック色であり、指定濃さが50%の場合、特色値決定部22は、青メタリック色の対応情報を参照することで、指定濃さ50%に対応するL*a*b*色信号を決定する。同様に、指定色が赤メタリック色の場合、特色値決定部22は、赤メタリック色の対応情報を参照することで、指定濃さに対応するL*a*b*色信号を決定する。
【0030】
色変換部24は、カラーマネジメントシステム(CMS)として機能する。色変換部24は、特色の濃さに応じたL*a*b*色信号を、画像形成装置30に依存する色空間であるデバイス依存色空間上の色信号に変換し、変換後の色信号を中間調処理部25に出力する。例えば、デバイス依存色空間がCMYKSの5色で規定されている場合、色変換部24は、L*a*b*色信号に対して多次元ルックアップテーブルを適用する等して、L*a*b*信号をCMYKS色空間上の信号(CMYKS色信号)に変換し、CMYKS色信号を中間調処理部25に出力する。例えば、色変換部24は、指定濃さ50%のL*a*b*をCMYKS色信号に変換する。
【0031】
なお、本実施形態では、指定濃さに対応するL*a*b*色信号を決定し、その決定したL*a*b*色信号をCMYKS色信号に変換しているが、指定濃さに基づいてCMYKS色信号を直接決定してもよい。例えば、特色毎に、特色の各濃さ(0〜100%)とCMYKS色信号との対応関係を示す対応情報を予め作成しておき、特色毎の対応情報を、図示しない記憶部に記憶させておく。そして、色変換部24は、特色情報取得部21から特色情報を受け、その特色情報が示す指定色の対応情報を参照することで、指定濃さに対応するCMYKS色信号を決定してもよい。
【0032】
中間調処理部25は、色変換部24から出力されたCMYKS色信号に対して中間調処理を施す。本実施形態では、中間調処理部25は、指定濃さに基づいてCMYKS各色の網点面積率(%)を決定する。そして、中間調処理部25は、中間調処理後のC’M’Y’K’S’色信号を画像形成装置30に出力する。なお、中間調処理部25が、面積率決定手段の一例に相当する。
【0033】
例えば、特色の指定濃さに対応するCMYK(カラー層)の面積率を規定したカラー特性(第1特性)と、特色の指定濃さに対応するS(メタリック層)の面積率を規定したメタリック特性(第2特性)とからなる特性セットが予め作成され、その特性セットのデータが、特性データ記憶部26に記憶されている。より具体的には、メタリックトナーの効果を優先させるメタリック優先モード用の特性セットと、カラートナーの効果を優先させるカラー優先モード用の特性セットと、が予め用意されており、メタリック優先モード用特性セットのデータと、カラー優先モード用特性セットのデータとが、特性データ記憶部26に記憶されている。また、指定色毎に、メタリック優先モード用特性セットとカラー優先モード用特性セットとが予め用意されており、指定色毎のメタリック優先モード用特性セットのデータとカラー優先モード用特性セットのデータとが、特性データ記憶部26に記憶されている。例えば、青メタリック色用のメタリック優先モード用特性セットとカラー優先モード用特性セットとが予め用意されており、青メタリック色用の各特性セットのデータが特性データ記憶部26に記憶されている。同様に、赤メタリック色用のメタリック優先モード用特性セットとカラー優先モード用特性セットとが予め用意されており、赤メタリック色用の各特性セットのデータが特性データ記憶部26に記憶されている。
【0034】
中間調処理部25は、メタリック優先モードが選択された場合、指定色のメタリック優先モード用特性セットに基づいてカラー層及びメタリック層の面積率を決定し、カラー優先モードが選択された場合、指定色のカラー優先モード用特性セットに基づいてカラー層及びメタリック層の面積率を決定する。例えば、ユーザが図示しないユーザインターフェースを用いて、メタリック優先モード及びカラー優先モードの中からモードを選択すると、中間調処理部25は、ユーザによって選択されたモードに従ってカラー層及びメタリック層の面積率を決定する。なお、各特性は、ルックアップテーブル(LUT)の形式で規定されていてもよいし、関数によって規定されていてもよい。
【0035】
ここで、
図4から
図6を参照して、中間調処理部25の処理の詳細を説明する。まず、
図4を参照して、標準モード用特性セットについて説明する。標準モードは、メタリックトナーの効果及びカラートナーの効果のいずれも優先させないモードである。
図4(a)において、横軸は特色の濃さ(%)を示し、縦軸は網点面積率(%)を示す。
図4(a)中のカラー特性50は、指定濃さに対するCMYK(カラー層)の面積率を規定しており、メタリック特性52は、指定濃さに対するS(メタリック層)の面積率を規定している。カラー特性50及びメタリック特性52のいずれにおいても、指定濃さの変化に応じて網点面積率が線形的に変化している。また、同じ指定濃さであっても、カラー層の面積率はメタリック層の面積率よりも大きくなっている。なお、CMYK4色の面積率をまとめて1つのカラー特性50によって表しているが、CMYK毎にカラー特性50が規定されている。従って、シアン(C)用のカラー特性50、マゼンダ(M)用のカラー特性50、イエロー(Y)用のカラー特性50、ブラック(K)用のカラー特性50、及び、メタリック(S)用のメタリック特性52が、それぞれ規定されている。
【0036】
標準モード用特性セット(カラー特性50及びメタリック特性52)によって中間調処理が行われると、カラー特性50に基づいて指定濃さに応じたカラー層の面積率が決定され、メタリック特性52に基づいて指定濃さに応じたメタリック層の面積率が決定される。そして、画像形成装置30は、中間調処理後のC’M’Y’K’S’色信号に基づいて、用紙上に画像を形成する。
【0037】
図4(b)に、標準モードの実行によって用紙上に形成された画像の色相を示す。
図4(b)において、横軸はa*を示し、縦軸はb*を示す。
図4(b)中の理想色相特性54は、理想的な色相の変化を示しており、a*の変化に対してb*が線形的に変化している。例えば、理想色相特性54は、元々の画像信号(例えば画像処理装置20に入力された画像信号)が表す画像の色相を示している。一方、
図4(b)中の色相特性56は、標準モード用特性セットによって生成されたC’M’Y’K’S’色信号に基づく画像の色相変化を示している。色相特性56では、中間調においてb*の値が理想色相特性54よりも大きくなり、色相が大きくずれている。すなわち、標準モード用特性セットによって中間調処理を行うと、中間調における色再現性が大きく低下することになる。標準モードでは、カラー層上に形成されたメタリック層の影響によって、カラー層が過度に遮蔽されてメタリック感が強調されるため、色再現性が大きく低下することになる。
【0038】
次に、
図5を参照して、メタリック優先モード用特性セットについて説明する。
図5(a)中のカラー特性60(第1特性)は、指定濃さに対するCMYK(カラー層)の面積率を規定し、メタリック特性62(第2特性)は、指定濃さに対するS(メタリック層)の面積率を規定している。比較対象として、
図5(a)には、標準モード用特性セットにおけるカラー特性50が示されている。メタリック特性62は、
図4(a)に示すメタリック特性52と同じ特性を示しており、メタリック特性62においては、指定濃さの変化に応じてメタリック層の面積率が線形的に変化している。一方、カラー層の面積率を規定するカラー特性60においては、指定濃さの変化に応じてカラー層の面積率が非線形的に変化している。例えば、カラー特性60は、高次曲線の関数で規定されている。本実施形態では、少なくとも中間調の範囲において、カラー特性60によって規定されるカラー層の面積率は、標準モード用特性セットのカラー特性50によって規定されるカラー層の面積率よりも大きくなっている。このように、メタリック優先モード用特性セットにおいては、メタリック層の面積率を標準モード用特性セットにおける面積率に維持しつつ、カラー層の面積率を標準モード用特性セットにおける面積率よりも大きくしている。また、同じ指定濃さであっても、カラー層の面積率はメタリック層の面積率よりも大きくなっている。なお、
図4(a)と同様に、CMYK4色の面積率をまとめて1つのカラー特性60によって表しているが、CMYK毎にカラー特性60が規定されている。従って、シアン(C)用のカラー特性60、マゼンダ(M)用のカラー特性60、イエロー(Y)用のカラー特性60、ブラック(K)用のカラー特性60、及び、メタリック(S)用のメタリック特性62が、それぞれ規定されており、各特性のデータが特性データ記憶部26に記憶されている。また、指定色毎にメタリック優先モード用特性セットが用意されており、指定色毎のメタリック優先モード用特性セットのデータが特性データ記憶部26に記憶されている。
【0039】
そして、メタリック優先モードが選択されると、中間調処理部25は、指定色のカラー特性60に基づいて指定濃さに応じたカラー層(CMYK)の面積率を決定し、指定色のメタリック特性62に基づいて指定濃さに応じたメタリック層(S)の面積率を決定する。そして、中間調処理部25は、中間調処理後のC’M’Y’K’S’色信号を画像形成装置30に出力する。画像形成装置30は、中間調処理後のC’M’Y’K’S’色信号に基づいて、用紙上に画像を形成する。
【0040】
図5(b)に、用紙上に形成された画像の色相を示す。
図5(b)中の理想色相特性54は、
図4(b)と同様に、理想的な色相の変化を示している。一方、
図5(b)中の色相特性64は、メタリック優先モード用特性セットによって生成されたC’M’Y’K’S’色信号に基づく画像の色相変化を示している。色相特性64では、中間調において、
図4(b)中の色相特性56よりも、理想色相特性54からの色相のずれが小さくなっている。すなわち、メタリック優先モード用特性セットによって中間調処理を行うと、標準モード用特性セットによって中間調処理を行う場合と比べて、色再現性の低下が軽減される。
【0041】
メタリック優先モードでは、メタリック層の面積率を標準モードにおける面積率に維持しているので、このままカラー層の面積率を指定濃さに対して線形的に変化させると、
図4(b)中の色相特性56と同様に、色相が理想から大きくずれることになる。そこで、本実施形態では、カラー層の面積率を指定濃さに対して非線形的に変化させ、カラー層の面積率を標準モード用特性セットにおける面積率よりも大きくしている。これにより、カラー層の量が増えてカラー層の効果が増大するので、メタリック層の面積率を標準モードと同じにしても、カラー層がメタリック層によって過度に遮蔽されることがなく、理想からの色相のずれが軽減することになる。すなわち、メタリック層の面積率を標準モードにおける面積率に維持している分、カラー層の面積率を大きくしてカラー層の効果を増大させることで、カラー層がメタリック層によって過度に遮蔽されることを防ぎ、理想からの色相のずれ(色再現性の低下)を軽減している。また、メタリック優先モードでは、メタリック層の面積率が標準モードにおける面積率と同じになるので、標準モードと同程度のメタリック感が実現される。従って、メタリック優先モードでは、標準モードと同程度のメタリック感が実現されるとともに、標準モードよりも、理想からの色相のずれ(色再現性の低下)が軽減される。
【0042】
次に、
図6を参照して、カラー優先モード用特性セットについて説明する。
図6(a)中のカラー特性70は、指定濃さに対するCMYK(カラー層)の面積率を規定し、メタリック特性72は、指定濃さに対するS(メタリック層)の面積率を規定している。比較対象として、
図6(a)中には、標準モード用特性セットにおけるメタリック特性52が示されている。カラー特性70は、
図4(a)に示すカラー特性50と同じ特性を示しており、カラー特性70においては、指定濃さの変化に応じてカラー層の面積率が線形的に変化している。一方、メタリック層の面積率を規定するメタリック特性72においては、指定濃さの変化に応じてメタリック層の面積率が非線形的に変化している。例えば、メタリック特性72は、高次曲線の関数で規定されている。本実施形態では、少なくとも中間調の範囲において、メタリック特性72によって規定されているメタリック層の面積率は、標準モード用特性セットのメタリック特性52によって規定されるメタリック層の面積率よりも小さくなっている。このように、カラー優先モード用特性セットにおいては、カラー層の面積率を標準モード用特性セットにおける面積率に維持しつつ、メタリック層の面積率を標準モード用特性セットにおける面積率よりも小さくしている。また、同じ指定濃さであっても、カラー層の面積率はメタリック層の面積率よりも大きくなっている。なお、
図4(a)と同様に、CMYK4色の面積率をまとめて1つのカラー特性70によって表しているが、CMYK毎にカラー特性70が規定されている。従って、シアン(C)用のカラー特性70、マゼンダ(M)用のカラー特性70、イエロー(Y)用のカラー特性70、ブラック(K)用のカラー特性70、及び、メタリック(S)用のメタリック特性72が、それぞれ規定されており、各特性のデータが特性データ記憶部26に記憶されている。また、指定色毎にカラー優先モード用特性セットが用意されており、指定色毎のカラー優先モード用特性セットのデータが特性データ記憶部26に記憶されている。
【0043】
そして、カラー優先モードが選択されると、中間調処理部25は、指定色のカラー特性70に基づいて指定濃さに応じたカラー層(CMYK)の面積率を決定し、指定色のメタリック特性72に基づいて指定濃さに応じたメタリック層(S)の面積率を決定する。そして、中間調処理部25は、中間調処理後のC’M’Y’K’S’色信号を画像形成装置30に出力する。画像形成装置30は、中間調処理後のC’M’Y’K’S’色信号に基づいて、用紙上に画像を形成する。
【0044】
図6(b)に、用紙上に形成された画像の色相を示す。
図6(b)中の理想色相特性54は、
図4(b)と同様に、理想的な色相の変化を示している。一方、
図6(b)中の色相特性74は、カラー優先モード用特性セットによって生成されたC’M’Y’K’S’色信号に基づく画像の色相変化を示している。色相特性74では、中間調において、
図4(b)中の色相特性56よりも、理想色相特性54からの色相のずれが小さくなっている。すなわち、カラー優先モード用特性セットによって中間調処理を行うと、標準モード用特性セットによって中間調処理を行う場合と比べて、色再現性の低下が軽減される。さらに、色相特性74では、
図5(b)中の色相特性64と比較しても、理想色相特性54からの色相のずれが小さくなっている。従って、カラー優先モード用特性セットによって中間調処理を行うと、メタリック優先モード用特性セットによって中間調処理を行う場合と比べて、色再現性の低下が軽減される。
【0045】
カラー優先モードでは、カラー層の面積率を標準モードにおける面積率に維持しているので、このままメタリック層の面積率を指定濃さに対して線形的に変化させると、
図4(b)中の色相特性56と同様に、色相が理想から大きくずれることになる。そこで、本実施形態では、メタリック層の面積率を指定濃さに対して非線形的に変化させ、メタリック層の面積率を標準モード用特性セットにおける面積率よりも小さくしている。これにより、メタリック層の量が減少してメタリック層の効果が軽減するので、カラー層の面積率を標準モードと同じにしても、カラー層がメタリック層によって過度に遮蔽されることなく、理想からの色相のずれが軽減することになる。すなわち、カラー層の面積率を標準モードにおける面積率に維持している分、メタリック層の面積率を小さくしてメタリック層の量を減らすことで、カラー層がメタリック層によって過度に遮蔽されることを防ぎ、理想からの色相のずれ(色再現性の低下)を軽減している。
【0046】
なお、カラー特性及びメタリック特性の両方において、指定濃さの変化に応じて面積率を非線形的に変化させてもよい。具体的には、
図5(a)に示すメタリック優先モードのカラー特性60と、
図6(a)に示すカラー優先モードのメタリック特性72とを組み合わせた特性セットを用意しておき、その特性セットのデータを特性データ記憶部26に記憶させておいてもよい。この場合、カラー層の面積率が標準モードよりも大きくなり、メタリック層の面積率が標準モードよりも小さくなるので、カラー層がメタリック層によって過度に遮蔽されることが防止され、理想からの色相のずれが軽減される。
【0047】
図5(a)及び
図6(a)に示す特性の具体的な数値は一例であり、他の値が用いられてもよい。また、ユーザが、メタリック優先モード及びカラー優先モードの各特性を定義してもよい。
【0048】
次に、
図7に示すフローチャートを参照して、画像形成システム10の動作について説明する。まず、画像処理装置20が画像信号を受けると、特色情報取得部21は、当該画像信号から画素毎の特色情報を取得する(S01)。特色値決定部22は、特色情報が示す指定色と指定濃さとに対応するL*a*b*色信号を決定し(S02)、色変換部24は、L*a*b*色信号をCMYKS色信号に変換する(S03)。そして、中間調処理部25は、指定色の特性セットに基づき、選択されたモードに応じた中間調処理を行うことでC’M’Y’K’S’色信号を生成し(S04)、C’M’Y’K’S’色信号を画像形成装置30に出力する(S05)。例えば、ユーザが図示しないユーザインターフェースを用いてメタリック優先モードを選択し、指定色が青メタリック色の場合、中間調処理部25は、青メタリック色用のメタリック優先モード用特性セット(
図5(a)に示すカラー特性60及びメタリック特性62)に基づいて、指定濃さに対するカラー層及びメタリック層の面積率を決定する。一方、ユーザによってカラー優先モードが選択され、指定色が青メタリック色の場合、中間調処理部25は、青メタリック色用のカラー優先モード用特性セット(
図6(a)に示すカラー特性70及びメタリック特性72)に基づいて、指定濃さに対するカラー層及びメタリック層の面積率を決定する。そして、画像形成装置30は、中間調処理後のC’M’Y’K’S’色信号に基づいて用紙上に画像を形成する(S06)。
【0049】
次に、
図8を参照して、実施例及び参考例の評価について説明する。実施例1ではメタリック優先モードが実行され、実施例2ではカラー優先モードが実行され、参考例では標準モードが実行されている。参考例(標準モード)では、カラー層がメタリック層によって過度に遮蔽されるので、
図4(b)に示すように、色相が理想から大きくずれ、色相の統一感が低下する(色再現性が低下する)。
【0050】
一方、実施例1(メタリック優先モード)では、カラー層の面積率を参考例(標準モード)よりも大きくしてカラー層の量を増やしているので、カラー層がメタリック層によって過度に遮蔽されることがない。そのため、理想からの色相のずれ(色再現性の低下)は、参考例よりも小さくなる。また、メタリック層の面積率を参考例と同じにしているので、参考例と同程度のメタリック感が得られる。
【0051】
また、実施例2(カラー優先モード)では、メタリック層の面積率を参考例(標準モード)よりも小さくしてメタリック層の量を減らしているので、カラー層がメタリック層によって過度に遮蔽されることがない。そのため、理想からの色相のずれ(色再現性の低下)は、参考例よりも小さくなる。また、メタリック層の面積率を実施例1(メタリック優先モード)よりも小さくしているので、カラー層に対するメタリック層の遮蔽効果が、実施例1よりも更に軽減される。その結果、理想からの色相のずれが、実施例1よりも小さくなる。一方、実施例2では、実施例1及び参考例と比較して、メタリック層の面積率を小さくしているので、メタリック層の効果が軽減し、メタリック感が弱くなる。
【0052】
以上のように、メタリック優先モードでは、メタリック感の低下を防止しつつ、参考例と比較して、色再現性の低下が軽減される。また、カラー優先モードでは、メタリック感の低下を軽減しつつ、色再現性の低下がより軽減される。このように、本実施形態によると、参考例と比較して、色再現性の低下を軽減しつつ、各モードに応じたメタリック感が得られる。
【0053】
図9に、実施例及び参考例によって形成された画像の一例を示す。画像信号100は画像処理装置20に入力された画像信号である。画像110は、画像信号100に基づいて、参考例(標準モード)によって用紙上に形成された画像である。画像120は、画像信号100に基づいて、実施例1又は実施例2によって用紙上に形成された画像である。参考例に係る画像110では、中間調において、画像信号100が表す画像からの色相のずれが大きくなる。一方、実施例1,2に係る画像120では、参考例に係る画像110と比較して、画像信号100が表す画像からの色相のずれが小さくなっている。このように、実施例1,2によると、参考例と比べて、色相のずれが小さくなり、色再現性の低下が防止又は軽減される。
【0054】
なお、画像処理装置20は、一例としてハードウェア資源とソフトウェアとの協働により実現される。具体的には、画像処理装置20は、図示しないCPU等のプロセッサを備えている。当該プロセッサが、図示しない記憶装置に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、特色情報取得部21、特色値決定部22、色変換部24及び中間調処理部25のそれぞれの機能が実現される。上記プログラムは、CDやDVD等の記憶媒体を経由して、又は、ネットワーク等の通信手段を経由して、記憶装置に記憶される。