(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6146257
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】はんだ付けユニット及びはんだ付け方法
(51)【国際特許分類】
B23K 3/02 20060101AFI20170607BHJP
B23K 3/03 20060101ALI20170607BHJP
B23K 3/06 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
B23K3/02 Q
B23K3/03 A
B23K3/06 K
B23K3/02 M
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-219233(P2013-219233)
(22)【出願日】2013年10月22日
(65)【公開番号】特開2015-80795(P2015-80795A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年8月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 英男
【審査官】
奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭49−049159(JP,A)
【文献】
特開2004−209506(JP,A)
【文献】
特開平11−342466(JP,A)
【文献】
特開平02−229669(JP,A)
【文献】
特開平05−343842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00−3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属塊と、
前記金属塊を貫いて設けられ、前記金属塊よりも熱伝導率の小さい物質及び又は前記金属塊よりも比熱が大きい物質からなり、中空部にはんだ線材が挿通されるパイプと、
前記金属塊を加熱するヒーターと、
を具備するはんだ付けユニット。
【請求項2】
前記パイプは、セラミックである、
請求項1に記載のはんだ付けユニット。
【請求項3】
前記パイプは、アルミナである、
請求項2に記載のはんだ付けユニット。
【請求項4】
前記パイプは、前記金属塊を上下方向に貫いており、
前記はんだ線材は、前記パイプ内を下から上へ移送される、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のはんだ付けユニット。
【請求項5】
前記金属塊又は前記ヒーターの温度を検出するセンサーを、さらに具備し、
前記ヒーターは、前記センサーによる検出結果に基づいて加熱が制御される、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のはんだ付けユニット。
【請求項6】
金属塊と、
前記金属塊を上下方向に貫いて設けられ、前記金属塊よりも熱伝導率の小さい物質及び又は前記金属塊よりも比熱が大きい物質からなり、中空部にはんだ線材が挿通されるパイプと、
前記金属塊を加熱するヒーターと、
を有するはんだ付けユニットを使用したはんだ付け方法であって、
前記ヒーターによって前記金属塊を所定温度に加熱する工程と、
前記パイプの下端から前記はんだ線材を供給して、前記パイプの上端部分に溶融はんだを生成する工程と、
前記溶融はんだに実装部品を接触させて、はんだ付けを行う工程と、
を含むはんだ付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付けユニット及びはんだ付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品をはんだ付けする方法として、大きく分けてフロー方式とリフロー方式がある。このうちフロー方式は、はんだを溶かしておいたはんだ槽に、はんだ付け対象の基板や端子を浸すことによってはんだ付けを行う方法である。はんだ槽のタイプには、はんだ液面を波立てる噴流式と、はんだ液面を波立てないディップ式とがある。
【0003】
噴流式のはんだ付け装置は、例えば特許文献1に記載されている。
【0004】
また、小型のはんだ槽を用いたディップ式のはんだ付け装置が、例えば特許文献2、3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2012/143966号
【特許文献2】特開平6−23533号公報
【特許文献3】特開2005−40823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載されたような噴流方式のはんだ付け装置は、はんだ槽に加えて、モーターや噴出ユニットが必要となるので、装置構成が大型化する欠点がある。また、はんだ槽が大きいので発熱が大きく、消費電力も大きくなる欠点がある。
【0007】
特許文献2、3に記載の装置においては、はんだを溶融させるはんだ槽とは別体にはんだ槽に接近及び離間してはんだ槽にはんだ線材を供給するはんだ供給装置が必要となるので、装置構成が大型化する欠点がある。
【0008】
さらに、従来のはんだ付け装置においては、はんだ槽に生じた酸化被膜によってはんだの品質が低下することも懸念される。
【0009】
本発明は、以上の点を考慮してなされたものであり、品質の良いはんだ付けを行うことができる、簡易な構成のはんだ付けユニット及びはんだ付け方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のはんだ付けユニットの一つの態様は、
金属塊と、
前記金属塊を貫いて設けられ、前記金属塊よりも熱伝導率の小さい物質及び又は前記金属塊よりも比熱が大きい物質からなり、中空部にはんだ線材が挿通されるパイプと、
前記金属塊を加熱するヒーターと、
を具備する。
【0011】
本発明のはんだ付け方法の一つの態様は、
金属塊と、
前記金属塊を上下方向に貫いて設けられ、前記金属塊よりも熱伝導率の小さい物質及び又は前記金属塊よりも比熱が大きい物質からなり、中空部にはんだ線材が挿通されるパイプと、
前記金属塊を加熱するヒーターと、
を有するはんだ付けユニットを使用したはんだ付け方法であって、
前記ヒーターによって前記金属塊を所定温度に加熱する工程と、
前記パイプの下端から前記はんだ線材を供給して、前記パイプの上端部分に溶融はんだを生成する工程と、
前記溶融はんだに実装部品を接触させて、はんだ付けを行う工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、品質の良いはんだ付けを行うことができる、簡易な構成のはんだ付けユニット及びはんだ付け方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態に係るはんだ付けユニットの構成を示す斜視図
【
図4】はんだ付けユニットの他の構成例を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係るはんだ付けユニットの構成を示す斜視図である。はんだ付けユニット10は、金属塊20と、金属塊20を上下方向に貫いて設けられたセラミックパイプ30と、金属塊20を加熱するヒーター40と、金属塊20の温度を検出する温度センサー50と、金属塊20をはんだ付け装置の基台(図示せず)に固定する断熱部材60と、を有する。
【0016】
金属塊20は、鉄によって構成されている。但し、金属塊20は、鉄以外の金属によって構成されていてもよい。
【0017】
セラミックパイプ30の上部は、金属塊20の上面から上端が僅かに突出している。これに対して、セラミックパイプ30の下部は金属塊20の下面から大きく突出している。セラミックパイプ30には、はんだ線材31が挿通される。セラミックパイプ30の中空部分の径は、はんだ線材31がセラミックパイプ30内でセラミックパイプ30の内面に接しながら上下動できるように、はんだ線材31の径よりも僅かに大きくされている。セラミックパイプ30から下方に露出したはんだ線材31は、図示しない把持部によって把持されており、はんだ線材31は、この把持部によって所定のタイミングで上方に所定量だけ移動される。
【0018】
また、セラミックパイプ30は、ねじ(
図3A、
図3B)32によって金属塊20に取り外し自在にねじ止めされている。これにより、セラミックパイプ30は金属塊20から取り外して洗浄を行ったり、サイズ変更のための交換を容易に行うことができるようになっている。例えば、はんだ付け対象に応じて、中空部分の径の異なるセラミックパイプ30に容易に変更可能である。
【0019】
ヒーター40としては、電熱線を有するカートリッジヒーターが用いられている。ヒーター40は、発熱部分が金属塊20の内部に位置するように金属塊20に取り付けられている。ヒーター40に電流が流れると、発熱部分が発熱することにより、金属塊20が加熱される。なお、ヒーター40としては、セラミックヒーター等のカートリッジヒーター以外のヒーターを用いてもよい。
【0020】
温度センサー50は、センシング部分が金属塊20の内部に位置するように金属塊20に取り付けられている。温度センサー50によって得られた温度検出結果は、ヒーター40の制御部(図示せず)に送られ、温度検出結果に基づいて金属塊20の温度が所定温度となるようにヒーター40が制御される。この所定温度とは、はんだ線材31を溶融させることができる温度である。
【0021】
断熱部材60は、例えばケイ酸カルシウムによって構成されている。はんだ付け装置の基台(図示せず)に断熱部材60を介して金属塊20を固定したことにより、加熱された金属塊20の熱が基台(図示せず)に伝わることを防止できる。
【0022】
次に、
図3A及び
図3Bを用いて、本実施の形態の動作について説明する。
【0023】
はんだ付けユニット10は、先ず、ヒーター40によって金属塊20を所定温度まで加熱する。次に、
図3Aに示すように、把持部(図示せず)が、セラミックパイプ30の下側からはんだ線材を挿し込み、このはんだ線材31の上端がセラミックパイプ30の上端から表出するまではんだ線材31を押し上げる。すると、セラミックパイプ30の上部位置のはんだ線材31は金属塊20の熱によって溶融して、セラミックパイプ30の上端からは溶融したはんだが表出する。
【0024】
具体的には、
図3Aに示したように、はんだ線材31は、セラミックパイプ30内において、金属塊20の下端よりも上側では溶融した状態となり、金属塊20の下端よりも下側では溶融していない状態となる。これは、セラミックの熱伝導性が非常に低いからである。つまり、金属塊20よりも下側に突き出た部分のセラミックパイプ30は、セラミックの熱伝導性が低いために高温になりにくく、この結果、下側に突き出た部分のセラミックパイプ30内では、はんだ線材31は溶融していないままの線材である。この結果、セラミックパイプ30の下部の中空部部分ははんだ線材31によって塞がれるので、セラミックパイプ30内の上部位置で溶けたはんだがセラミックパイプ30から下方に垂れなくて済む。また、セラミックパイプ30の下部位置のはんだ線材31は、溶融していないので表面張力が発生せず、パイプ30内をスムーズに動かすことができる。この結果、表面張力に起因するパイプ詰まりが生じないので、パイプ径を小径にすることも可能となる。
【0025】
一方で、金属塊20に埋め込まれたセラミックパイプ30内で一度温められて溶けたはんだは、熱伝導率の低いセラミックパイプ30に覆われているので、熱が発散しにくい。この結果、溶融はんだは、冷えにくく、溶解状態が保たれる。つまり、一旦溶融されたセラミックパイプ30の上端付近のはんだは、溶解状態が維持される。実際には、溶融はんだは、
図2に示すように、表面張力によってセラミックパイプ30の先端から上方に膨らんだ状態で表出する。
【0026】
このように、セラミックパイプ30内に溶融はんだが生成されると、搬送装置(図示せず)によって、
図3Bに示すように、基板70に実装された電子部品71の端子72がセラミックパイプ30の上端からパイプ内に浸されるように移動される。これにより、端子72及び基板70にはんだが付着されてはんだ付けがなされる。
【0027】
1つの電子部品のはんだ付けが終了すると、搬送装置はその電子部品をはんだ付けユニット10から離間させ、次の電子部品を取りに行く。このとき、セラミックパイプ30の下方ではんだ線材31を把持している把持部が、はんだ線材31を所定量だけ上方に押し上げる。この押し上げ量(長さ)は、前回のはんだ付けで消費されたはんだが補充される量、すなわちセラミックパイプ30の先端から溶融はんだが表出するまでである。但し、セラミックパイプ30の先端から溶融はんだが僅かに溢れるまではんだ線材31を押し上げてもよい。このようにすれば、前回のはんだ付けで生じた酸化被膜を完全に除去できるようになる。
【0028】
このようにはんだ線材31を押し上げると、前回と同様にセラミックパイプ30の上部位置のはんだは溶融状態となるので、前回と同様にセラミックパイプ30の上端に端子72を浸すことではんだ付けを行う。このように、はんだ線材31を押し上げてセラミックパイプ30の上部位置に溶融はんだを生成する工程と、溶融はんだに次のはんだ付け対象を浸す工程とを繰り返し行うことにより、複数のはんだ付け対象に順次はんだ付けを行う。
【0029】
以上説明したように、本実施の形態によれば、はんだ付けユニット10は、金属塊20と、金属塊20を上下方向に貫いて設けられたセラミックパイプ30と、金属塊20を加熱するヒーター40と、を有することにより、はんだ付けの品質が良い、簡易な構成のはんだ付けユニット10を実現できる。詳細には、本実施の形態の構成によれば、以下の効果を得ることができる。
【0030】
パイプ30先端の少量のはんだのみ溶かすので、はんだを溶融させるための熱量が少なく済む。よって、周囲に熱の影響を及ぼさない。また、はんだ線材31を利用し、はんだ線材31の先端のみを溶融させるので、加熱部の構成が簡単になる。加熱、断熱の部品点数が減り、周辺装置への熱の影響を軽減できるので、装置全体のコストを抑えることができる。
【0031】
単にパイプ30にはんだ線材31を送り込めばよいので、はんだ材料を供給するための装置を簡素化できる。
【0032】
空気に触れる溶融はんだは、パイプ30先端のみなので、酸化被膜の生成が最小限に抑えられる。また、はんだ線材31を押し込むことによってはんだを供給しているので、常に新しいはんだが供給される。この結果、はんだの劣化がないのではんだ付けの品質を向上させることができる。
【0033】
はんだ付けの際、溶融したはんだは基板70側に移動するので、パイプ30の先端には少量の溶融はんだしか残らない。この結果、パイプ30の先端の溶融はんだ側に基板70の銅が移ることがほぼなくなる。
【0034】
はんだ槽を用いないので、酸化被膜がはんだに溶け込んだり、不純物が混入することがなくなるので、はんだ付けの品質を向上させることができる。
【0035】
はんだ線材31をはんだ付けを行う生産数量に合わせて購入すればよいので、初期コストを少なく押さえることができる。
【0036】
清掃は、金属塊20からセラミックパイプ30を取り外して行えばよいため、簡単である。
【0037】
なお、上述の実施の形態では、セラミックパイプ30を用いた場合について述べたが、パイプの材質はセラミックに限らず、要は、金属塊20よりも熱伝導率の小さい物質及び又は金属塊20よりも比熱が大きい物質を用いればよい。
【0038】
簡単に説明する。比熱とは、物質の単位質量に対する熱容量、すなわち、単位質量の物質の温度を一度上げるのに必要な熱量である。熱伝導率とは、熱伝導で、熱の流れに垂直な単位面積を通って単位時間に流れる熱量を、単位長さあたりの温度差(温度勾配)で割った値である。熱伝導率は、物質の熱伝導のし易さを示し、熱伝導度とも呼ばれる。
【0039】
代表的な物質の比熱と熱伝導率とを、表1に示す。
【表1】
【0040】
金属塊20として鉄を用いた場合には、パイプ30の材料は、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素、石英ガラスのいずれかとすることが好ましい。特に、アルミナは、機械的強度、電気絶縁性、高周波損失性、熱伝導率、耐熱性、耐摩耗性、耐食性が良好なので、好適である。
【0041】
また、金属塊20に取り付けるパイプ30は1本に限らず、
図4に示すように、2本のセラミックパイプ81、82を設けてもよく、3本以上のパイプを設けてもよい。金属塊20に複数のパイプを取り付けた場合、それらの径は同じでもよく、異なっていてもよい。因みに、
図4では、温度センサーが内蔵された温度調整機能付のヒーター90が金属塊20に取り付けられている。
【0042】
さらに、パイプ30は円筒状のものに限らず、
図5に示すように、先端がラッパ状のものを用いてもよい。このようなパイプ30を用いれば、はんだ付け対象の端子72の太さがパイプ径よりも太くてもパイプ30の先端に端子を浸すことができるようになる。
【0043】
また、上述の実施の形態では、基板70側を移動させたが、本発明のはんだ付けユニットは非常に小型なので、はんだ付けユニット10側を移動させることも可能である。
【0044】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、はんだ線材を用いたはんだ付けユニット及びはんだ付け方法に適用し得る。
【符号の説明】
【0046】
10 はんだ付けユニット
20 金属塊
30、81、82 セラミックパイプ
31 はんだ線材
40、90 ヒーター
50 温度センサー
60 断熱部材