特許第6146312号(P6146312)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6146312
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】環状カーボネートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 317/36 20060101AFI20170607BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20170607BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20170607BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170607BHJP
【FI】
   C07D317/36
   B01J31/02 102X
   B01J37/04 102
   !C07B61/00 300
【請求項の数】8
【全頁数】66
(21)【出願番号】特願2013-547261(P2013-547261)
(86)(22)【出願日】2012年12月1日
(86)【国際出願番号】JP2012081217
(87)【国際公開番号】WO2013081157
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2015年11月26日
(31)【優先権主張番号】特願2011-265340(P2011-265340)
(32)【優先日】2011年12月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000252300
【氏名又は名称】和光純薬工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青柳 直人
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 剛
【審査官】 谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/031864(WO,A1)
【文献】 特開2010−100539(JP,A)
【文献】 特開昭62−045584(JP,A)
【文献】 Naoto Aoyagi, Yoshio Furusho, Takeshi Endo,Remarkably Efficient Catalysts of Amidine Hydroiodides for the Synthesis of Cyclic Carbonates from Carbon Dioxide and Epoxides under Mild Conditions,Chemistry Letters,2012年 2月25日,Vol.41, No.3,p.240-241
【文献】 KIHARA,N. et al,Catalytic Activity of Various Salts in the Reaction of 2,3-Epoxypropyl Phenyl Ether and Carbon Dioxide under Atmospheric Pressure,Journal of Organic Chemistry,1993年,Vol.58, No.23,p.6198-6202
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 317/22
C07D 317/36
B01J 31/02
B01J 37/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシドと二酸化炭素とを、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN)及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)から選ばれるアミン化合物とヨウ化水素の存在下、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、トルエン、イソプロパノール、酢酸エチル又はこれらの混合溶媒中で反応させるか、あるいは反応系内に溶媒を添加せずに反応させることを特徴とする、環状カーボネートの製造方法。
【請求項2】
前記アミン化合物が、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記反応を、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、トルエン、イソプロパノール、酢酸エチル又はこれらの混合溶媒中で行う、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN)及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)から選ばれるアミン化合物とヨウ化水素とから調製される、プロトンとヨウ素アニオンを有するアミン化合物塩を予め調製する工程を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
20〜60℃で反応させる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
0.09〜0.11MPaで反応させる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記アミン化合物を、前記エポキシド1molに対して2.5〜30mol%用いる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記アミン化合物を、前記エポキシド1molに対して2.5〜10mol%用いる、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばリチウムイオン二次電池の電解液、プラスチック原料等の様々な用途に幅広く利用されている環状カーボネートの製造方法に関する。更に詳しくは、二酸化炭素を用いる環状カーボネートの製造方法に関する。
【0002】
近年、大気中の二酸化炭素は増加の一途を辿っており、地球温暖化の一因として問題視されている。一方で、二酸化炭素を有効活用して機能性材料等に変換できれば、二酸化炭素は無尽蔵に入手できる資源の1つとして捉えることができる。
【0003】
二酸化炭素から合成できる環状カーボネートは、例えばリチウムイオン二次電池の電解液、プラスチック原料等の様々な用途に幅広く利用されていることから、以前よりその合成法が種々検討されている。しかしながら、その合成法のほとんどは、高温(100〜150℃)、高圧(数十気圧)のいずれかあるいは両方の条件を必要とするため、環境負荷低減を考慮した実用化には至っていないのが実状である。具体的には、例えば金属塩である臭化リチウムを用いる方法(例えば非特許文献1等)は、常圧条件ながら高温条件を必要とし、例えば四級アンモニウム塩を用いる方法(例えば非特許文献2等)は、メタルフリー(金属フリー)ながら高温条件に加え高圧条件を必要とする。また、これらの方法以外にも、種々の環状カーボネートの合成法が知られているが(例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6等)、いずれの合成法も高温、高圧のいずれかあるいは両方の条件を必要とする。
【0004】
また、最近では、金属と四級アンモニウム塩の特性を併せ持つ複合触媒が開発され、常温、常圧条件下でのカーボネート反応に利用されている(例えば非特許文献7等)。しかしながら、この複合触媒は、その合成に多工程を要する高価な金属配位型触媒であるため、実用性に難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭47−31981号公報
【特許文献2】特開昭62−45584号公報
【特許文献3】特開平5−202022号公報
【特許文献4】国際公開WO2005/084801号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J. Org. Chem., 1993, 58, 6198-6202.
【非特許文献2】J. Mol. Catal. A: Chem., 2006, 249, 143-148.
【非特許文献3】Adv. Synth. Catal., 2010, 352, 2233-2240.
【非特許文献4】Green Chem., 2012, 14, 209-216.
【非特許文献5】J. Org. Chem., 2003, 68, 6705-6709.
【非特許文献6】Eur. J. Org. Chem., 2004, 3080-3089.
【非特許文献7】Dalton Trans., 2011, 40, 3885-3902.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、二酸化炭素を利用した環状カーボネートの合成法は、古くから種々の方法が知られてはいるものの、これらの方法は、高温、高圧条件が必要である、アルカリ金属等の金属を含む触媒を使用するためその除去工程が必要である、触媒が高価である等、いまだに環境負荷の面で問題点を抱えている。このため、今日においても、環境負荷低減に考慮した環状カーボネートの合成法の確立が求められている状況にある。
【0008】
本発明は、上述した状況に鑑みなされたもので、常温、常圧等の穏和な条件下で反応を行っても、多種多様な環状カーボネートを収率良く製造することができるばかりでなく、環境負荷低減を考慮した実用的な環状カーボネートの製造方法を提供することにある。本発明者らは、このような製造方法について鋭意研究を重ねた結果、エポキシド(オキシラン)と二酸化炭素との反応において、pKaが8以上の第一級乃至第三級アミンであって、モノアミン、環状アミジン及びグアニジンから選ばれるアミン化合物とヨウ化水素を用いることで、上述した目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エポキシドと二酸化炭素とを、pKaが8以上の第一級乃至第三級アミンであって、モノアミン、環状アミジン及びグアニジンから選ばれるアミン化合物とヨウ化水素の存在下で反応させることを特徴とする、環状カーボネートの製造方法の発明である。
【発明の効果】
【0010】
エポキシド(オキシラン)と二酸化炭素との反応によって環状カーボネートを製造するにあたり、pKaが8以上の第一級乃至第三級アミンであって、モノアミン、環状アミジン及びグアニジンから選ばれるアミン化合物とヨウ化水素を用いることで、常温、常圧等の穏和な条件下でも、環状カーボネートを収率良く製造することができるという効果を奏する。
【0011】
本発明において、pKaが8以上の第一級乃至第三級アミンであって、モノアミン、環状アミジン及びグアニジンから選ばれるアミン化合物とヨウ化水素を用いると、上述したような効果が得られる理由は以下のように考えられる。すなわち、pKaが8以上の第一級乃至第三級アミンであって、モノアミン、環状アミジン及びグアニジンから選ばれるアミン化合物(以下、本発明にかかるアミン化合物と略記する場合がある。)とヨウ化水素とから調製される、プロトンとヨウ素アニオンを有するアミン化合物塩(以下、本発明にかかるアミン化合物塩と略記する場合がある。)が、エポキシド(オキシラン)と二酸化炭素との反応における触媒(以下、本発明にかかる触媒と略記する場合がある。)として効果的に作用することにより、常温、常圧等の穏和な条件下でも、収率良く環状カーボネートが製造できるものと考えられる。
【0012】
また、このようなプロトンとヨウ素アニオンを有するアミン化合物塩は、本発明にかかるアミン化合物とヨウ化水素から1ステップで簡便かつ安価に合成することができ、メタルフリー(金属フリー)の触媒でもあるので、該触媒(アミン化合物塩)を用いる本発明の製造方法は、グリーンケミストリーの観点からも有用であり、環境負荷低減を考慮した実用的な製造方法である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の環状カーボネートの製造方法は、エポキシド(オキシラン)と二酸化炭素との反応を、pKaが8以上の第一級乃至第三級アミンであって、モノアミン、環状アミジン及びグアニジンから選ばれるアミン化合物とヨウ化水素の存在下で行うことを特徴とするものである。
【0014】
本発明にかかるアミン化合物とは、少なくとも1つ以上のアミノ基を有するpKaが8以上のアミンであり、複数のアミノ基を有していてもよいし、ヒドロキシル基等の他の官能基を有していてもよい。このようなアミン化合物の具体例としては、例えば下記一般式[1]で示されるモノアミン、下記一般式[2]で示される環状アミジン及び下記一般式[3]で示されるグアニジンから選ばれるものが挙げられる。
【0015】
(式中、Rは、炭素数3〜10の分枝状もしくは環状のアルキル基又は炭素数7〜12のアラルキル基を表し、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基を表す。)
【0016】
(式中、R及びRは、ともに結合して炭素数2〜5のアルキレン鎖を表し、これらと結合している窒素原子と当該窒素原子と結合している炭素原子とともに5〜8員環を形成しており、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基を表すか、あるいはRとRとで環状構造を形成していてもよい。)
【0017】
(式中、Rは、水素原子、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜10の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基又は炭素数7〜12のアラルキル基を表し、R、R10、R11及びR12はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜10の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基を表すか、あるいはRとR、RとR10、R10とR11、R11とR12又はRとR12とで環状構造を形成していてもよい。)
【0018】
一般式[1]におけるRで示される炭素数3〜10の分枝状もしくは環状のアルキル基としては、具体的には、例えばイソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、イソペンチル基、s-ペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、イソヘキシル基、s-ヘキシル基、t-ヘキシル基、ネオヘキシル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、シクロヘキシル基、イソヘプチル基、s-ヘプチル基、t-ヘプチル基、ネオヘプチル基、シクロヘプチル基、イソオクチル基、s-オクチル基、t-オクチル基、ネオオクチル基、2-エチルヘキシル基、シクロオクチル基、イソノニル基、s-ノニル基、t-ノニル基、ネオノニル基、シクロノニル基、イソデシル基、s-デシル基、t-デシル基、ネオデシル基、シクロデシル基、ボルニル基、メンチル基、アダマンチル基、デカヒドロナフチル基等が挙げられ、なかでも、例えばt-ブチル基、t-ペンチル基、t-ヘキシル基等の炭素数4〜6のt-アルキル基、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の炭素数5〜8の環状のアルキル基(シクロアルキル基)が好ましく、そのなかでも、t-ブチル基、シクロヘキシル基がより好ましい。なお、上述の具体例において、s-はsec-体を表し、t-はtert-体を表す。
【0019】
一般式[1]及び[3]におけるR及びRで示される炭素数7〜12のアラルキル基としては、単環式もしくは縮合多環式のいずれであってもよく、具体的には、例えばベンジル基、フェネチル基、メチルベンジル基、フェニルプロピル基、1-メチルフェニルエチル基、フェニルブチル基、2-メチルフェニルプロピル基、テトラヒドロナフチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基等が挙げられ、なかでも、例えばベンジル基等の炭素数7のアラルキル基が好ましい。
【0020】
一般式[1]、[2]及び[3]におけるR、R、R、R、R、R10、R11及びR12で示される炭素数1〜10の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基としては、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、s-ペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、s-ヘキシル基、t-ヘキシル基、ネオヘキシル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、s-ヘプチル基、t-ヘプチル基、ネオヘプチル基、シクロヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、s-オクチル基、t-オクチル基、ネオオクチル基、2-エチルヘキシル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、s-ノニル基、t-ノニル基、ネオノニル基、シクロノニル基、n-デシル基、イソデシル基、s-デシル基、t-デシル基、ネオデシル基、シクロデシル基、ボルニル基、メンチル基、アダマンチル基、デカヒドロナフチル基等が挙げられる。なお、上述の具体例において、n-はnormal-体を表し、s-はsec-体を表し、t-はtert-体を表す。
【0021】
一般式[3]におけるRで示されるヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜10の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基としては、具体的には、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、s-ペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、s-ヘキシル基、t-ヘキシル基、ネオヘキシル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、s-ヘプチル基、t-ヘプチル基、ネオヘプチル基、シクロヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、s-オクチル基、t-オクチル基、ネオオクチル基、2-エチルヘキシル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、s-ノニル基、t-ノニル基、ネオノニル基、シクロノニル基、n-デシル基、イソデシル基、s-デシル基、t-デシル基、ネオデシル基、シクロデシル基、ボルニル基、メンチル基、アダマンチル基、デカヒドロナフチル基等のヘテロ原子を有さない炭素数1〜10の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基、例えばヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシヘプチル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシノニル基、ヒドロキシデシル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基、メトキシペンチル基、メトキシヘキシル基、メトキシヘプチル基、メトキシオクチル基、メトキシノニル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、エトキシブチル基、エトキシペンチル基、エトキシヘキシル基、エトキシヘプチル基、エトキシオクチル基、プロポキシメチル基、プロポキシエチル基、プロポキシブチル基、プロポキシペンチル基、プロポキシヘキシル基、プロポキシヘプチル基、ブトキシメチル基、ブトキシエチル基、ブトキシプロピル基、ブトキシブチル基、ブトキシペンチル基、ブトキシヘキシル基、ペンチルオキシメチル基、ペンチルオキシエチル基、ペンチルオキシプロピル基、ペンチルオキシブチル基、ペンチルオキシペンチル基、ヘキシルオキシメチル基、ヘキシルオキシエチル基、ヘキシルオキシプロピル基、ヘキシルオキシブチル基、ヘプチルオキシメチル基、ヘプチルオキシエチル基、ヘプチルオキシプロピル基、オクチルオキシメチル基、オクチルオキシエチル基、ノニルオキシメチル基、ジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ジメチルアミノプロピル基、ジメチルアミノブチル基、ジメチルアミノペンチル基、ジメチルアミノヘキシル基、ジメチルアミノヘプチル基、ジメチルアミノオクチル基、エチルメチルアミノメチル基、エチルメチルアミノエチル基、エチルメチルアミノプロピル基、エチルメチルアミノブチル基、エチルメチルアミノペンチル基、エチルメチルアミノヘキシル基、エチルメチルアミノヘプチル基、ジエチルアミノメチル基、ジエチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、ジエチルアミノブチル基、ジエチルアミノペンチル基、ジエチルアミノヘキシル基、ジプロピルアミノメチル基、ジプロピルアミノエチル基、ジプロピルアミノプロピル基、ジプロピルアミノブチル基、ジブチルアミノメチル基、ジブチルアミノエチル基等の酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子を有する炭素数1〜10の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基等が挙げられ、なかでも、n-ブチル基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、ヒドロキシエチル基、メトキシエチル基、ジメチルアミノエチル基が好ましく、そのなかでも、n-ブチル基がより好ましい。なお、上述の具体例において、n-はnormal-体を表し、s-はsec-体を表し、t-はtert-体を表す。
【0022】
一般式[2]におけるRとRは、ともに結合して炭素数2〜5のアルキレン鎖を表すとは、RとRとで炭素数2〜5のアルキレン基を形成し、当該アルキレン基と結合している窒素原子と当該窒素原子と結合している炭素原子とともに5〜8員環を形成していることを意味する。このような炭素数2〜5のアルキレン基としては、具体的には、例えばジメチレン基(エチレン基)、トリメチレン基(プロパン-1,3-ジイル基)、テトラメチレン基(ブタン-1,4-ジイル基)、ペンタメチレン基(ペンタン-1,5-ジイル基)等が挙げられ、なかでも、炭素数3のアルキレン基であるトリメチレン基(プロパン-1,3-ジイル基)が好ましい。また、このような5〜8員環の具体例としては、例えば2-イミダゾリン環、1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン環、4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン環等が挙げられ、なかでも、6員環である1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン環が好ましい。
【0023】
一般式[2]におけるRとRとで環状構造を形成していてもよいとは、RとRとで炭素数3〜6のアルキレン基を形成し、当該アルキレン基と結合している窒素原子及び炭素原子とともに5〜8員環を形成していてもよいことを意味する。このような炭素数3〜6のアルキレン基としては、具体的には、例えばトリメチレン基(プロパン-1,3-ジイル基)、テトラメチレン基(ブタン-1,4-ジイル基)、ペンタメチレン基(ペンタン-1,5-ジイル基)等、ヘキサメチレン基(ヘキサン-1,6-ジイル基)等が挙げられ、なかでも、炭素数5のアルキレン基であるペンタメチレン基(ペンタン-1,5-ジイル基)が好ましい。また、このような5〜8員環の具体例としては、例えばピロリジン環、ピペリジン環、ヘキサメチレンイミン環(アゼパン環)、ヘプタメチレンイミン環(アゾカン環)等が挙げられ、なかでも、ピロリジン環、ヘキサメチレンイミン環(アゼパン環)が好ましく、そのなかでも、7員環であるヘキサメチレンイミン環(アゼパン環)がより好ましい。
【0024】
一般式[3]におけるRとR、R10とR11、又はRとR12とで環状構造を形成していてもよいとは、RとR、R10とR11又はRとR12とで炭素数2〜5のアルキレン基を形成し、当該アルキレン基と結合している窒素原子と当該窒素原子と結合している炭素原子とともに5〜8員環を形成していてもよいことを意味する。このような炭素数2〜5のアルキレン基としては、具体的には、例えばジメチレン基(エチレン基)、トリメチレン基(プロパン-1,3-ジイル基)、テトラメチレン基(ブタン-1,4-ジイル基)、ペンタメチレン基(ペンタン-1,5-ジイル基)等が挙げられ、なかでも、炭素数3のアルキレン基であるトリメチレン基(プロパン-1,3-ジイル基)が好ましい。また、このような5〜8員環の具体例としては、例えば2-イミダゾリン環、イミダゾリジン環、1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン環、ヘキサヒドロピリミジン環、4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン環、ヘキサヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン環等が挙げられ、なかでも、1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン環、ヘキサヒドロピリミジン環が好ましい。
【0025】
一般式[3]におけるRとR10又はR11とR12とで環状構造を形成していてもよいとは、RとR10又はR11とR12とで炭素数4〜6のアルキレン基を形成し、当該アルキレン基と結合している窒素原子とともに5〜7員環を形成していてもよいことを意味する。このような炭素数4〜6のアルキレン基としては、具体的には、例えばテトラメチレン基(ブタン-1,4-ジイル基)、ペンタメチレン基(ペンタン-1,5-ジイル基)、ヘキサメチレン基(ヘキサン-1,6-ジイル基)等が挙げられ、なかでも、炭素数5のアルキレン基であるペンタメチレン基(ペンタン-1,5-ジイル基)が好ましい。また、このような5〜7員環の具体例としては、例えばピロリジン環、ピペリジン環、ヘキサメチレンイミン環(アゼパン環)等が挙げられ、なかでも、ピペリジン環が好ましい。
【0026】
一般式[1]において、Rが炭素数7〜12のアラルキル基である場合には、R及びRは、ともに炭素数1〜10の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基であることが好ましい。
【0027】
一般式[2]におけるRとしては、Rとで環状構造を形成しない場合には、炭素数1〜10の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基が好ましく、そのなかでも、メチル基が好ましい。
【0028】
一般式[2]におけるR及びRとしては、RとRとで環状構造を形成しているものが好ましい。
【0029】
一般式[3]で示されるグアニジンとしては、少なくともRが、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数4〜10の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基であるものが好ましく、なかでも、Rが、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数4〜10の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基であって、かつR、R10、R11及びR12のうちの少なくとも1つは、炭素数1〜10の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基であるものがより好ましい。
【0030】
一般式[1]で示されるモノアミンの具体例としては、一例として、モノイソプロピルアミン、モノ-t-ブチルアミン、モノシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ベンジルジメチルアミン等の種々のモノアミンを挙げることができるが、なかでも、より高い収率で環状カーボネートが得られるという点において、下記一般式[1-I]で示されるモノアミンが好ましい。
【0031】
(式中、R1aは、炭素数4〜6のt-アルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を表し、R2aは、水素原子、炭素数4〜6のt-アルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を表す。)
【0032】
一般式[1-I]におけるR1a及びR2aで示される炭素数4〜6のt-アルキル基としては、具体的には、例えばt-ブチル基、t-ペンチル基、t-ヘキシル基等が挙げられ、なかでも、炭素数4のt-アルキル基であるt-ブチル基が好ましい。なお、上述の具体例において、t-はtert-体を表す。
【0033】
一般式[1-I]におけるR1a及びR2aで示される炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、具体的には、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられ、なかでも、炭素数6のシクロアルキル基であるシクロヘキシル基が好ましい。
【0034】
一般式[1-I]で示されるモノアミンの具体例としては、例えばモノ-t-ブチルアミン、ジ-t-ブチルアミン、モノ-t-ペンチルアミン、ジ-t-ペンチルアミン、モノ-t-ヘキシルアミン、ジ-t-ヘキシルアミン、モノシクロペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、モノシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノシクロヘプチルアミン、ジシクロヘプチルアミン、モノシクロオクチルアミン、ジシクロオクチルアミン等が挙げられ、なかでも、更に高い収率で環状カーボネートが得られるという点において、モノ-t-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミンが好ましい。なお、上述の具体例において、t-はtert-体を表す。また、上記一般式[1]及び一般式[1-I]で示されるモノアミンは、市販品、あるいはこの分野で行われる一般的な方法により適宜合成したものを用いればよい。
【0035】
一般式[2]で示される環状アミジンの具体例としては、一例として、1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)等の種々の環状アミジンを挙げることができるが、なかでも、より高い収率で環状カーボネートが得られるという点において、下記一般式[2-I]で示される環状アミジンが好ましい。
【0036】
(式中、mは、1〜4の整数を表し、nは、1〜4の整数を表す。)
【0037】
一般式[2-I]におけるmとしては、通常1〜4の整数を表し、好ましくは2である。
【0038】
一般式[2-I]におけるnとしては、通常1〜4の整数を表し、好ましくは1又は3であり、より好ましくは3である。
【0039】
一般式[2-I]で示される環状アミジンの具体例としては、例えば1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)等が挙げられ、なかでも、更に高い収率で環状カーボネートが得られるという点において、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)が好ましい。また、上記一般式[2]及び一般式[2-I]で示される環状アミジンは、市販品、あるいはこの分野で行われる一般的な方法により適宜合成したものを用いればよい。
【0040】
一般式[3]で示されるグアニジンの具体例としては、一例として、グアニジン、1-(1-n-ブチル)グアニジン、1-(1-n-ブチル)-3-メチルグアニジン、1-(1-n-ブチル)-2,3-ジメチルグアニジン、1-(1-n-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン、2-(1-n-ブチル)-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-(1-n-オクチル)グアニジン、1,1-ジシクロヘキシルグアニジン、1-ベンジルグアニジン、1-(2-ヒドロキシエチル)グアニジン、1-(2-メトキシエチル)グアニジン、1-(2-ジメチルアミノエチル)グアニジン、1-ベンジル-2,3,3-トリメチルグアニジン、1-(2-ジメチルアミノエチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン等の種々のグアニジンを挙げることができるが、なかでも、より高い収率で環状カーボネートが得られるという点において、1-(1-n-ブチル)グアニジン、1-(1-n-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン、1-ベンジル-2,3,3-トリメチルグアニジンが好ましい。なお、上述の具体例において、n-はnormal-体を表す。また、上記一般式[3]で示されるグアニジンは、市販品、あるいはこの分野で行われる一般的な方法により適宜合成したものを用いればよい。
【0041】
上述の一般式[1]で示されるモノアミン、一般式[2]で示される環状アミジン及び一般式[3]で示されるグアニジンから選ばれるアミン化合物のなかでも、一般式[1]で示されるモノアミン及び一般式[2]で示される環状アミジンから選ばれるものが好ましく、そのなかでも、一般式[1-I]で示されるモノアミン及び一般式[2-I]で示される環状アミジンから選ばれるものがより好ましい。
【0042】
本発明にかかるヨウ化水素は、ヨウ化水素ガス等の気体状態のもの、ヨウ化水素酸等のヨウ化水素ガスを水等の液体(溶媒)に溶解させた溶液状態のもの等が挙げられるが、供給形態や由来等に関して特に制限はない。また、ヨウ化水素酸のような水溶液の状態のものについても、水溶液中における含有量(濃度)に特に制限はない。ヨウ化水素酸の具体例としては、例えばヨウ化水素酸については市販されている57%の水溶液等が挙げられる。
【0043】
上でも少し述べたが、本発明において、pKaが8以上の第一級乃至第三級アミンであって、モノアミン、環状アミジン及びグアニジンから選ばれるアミン化合物とヨウ化水素を用いる理由は以下のとおりである。すなわち、本発明者らは、二酸化炭素を利用した環状カーボネートの製造方法について鋭意検討を重ねた結果、本発明にかかるアミン化合物とヨウ化水素とから調製される、プロトンとヨウ素アニオンを有するアミン化合物塩が、エポキシド(オキシラン)と二酸化炭素との反応における触媒として効果的に作用することを見出した。本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)は、常温、常圧等の穏和な条件下でも、該触媒(アミン化合物塩)における適度な塩基性度を有するアミンに結合したプロトンが、エポキシド(オキシラン)の酸素原子に対して金属配位子と同様の配位作用を有し、なおかつ該触媒(アミン化合物塩)におけるヨウ素アニオンがエポキシド(オキシラン)を効果的に開環させる作用を有しているため、常温、常圧等の穏和な条件下でも、収率良く環状カーボネートが製造できるものと考えられる。
【0044】
本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)において、プロトンは適度な塩基性度を有するアミンに結合している必要があるので、本発明にかかるアミン化合物のpKaは8以上であるが、なかでも、当該アミン化合物のpKaは10以上であることが好ましい。pKaが10以上のアミン化合物を用いれば、更に高い収率で環状カーボネートを製造することができる。
【0045】
本発明に用いられるpKaが8以上の第一級乃至第三級アミンであって、モノアミン、環状アミジン及びグアニジンから選ばれるものとヨウ化水素とから調製される、プロトンとヨウ素アニオンを有するアミン化合物塩(本発明にかかる触媒)の具体例としては、例えば下記一般式[1']で示される、pKaが8以上のモノアミンとヨウ化水素との塩、下記一般式[2']で示される、pKaが8以上の環状アミジンとヨウ化水素との塩、あるいは下記一般式[3']で示される、pKaが8以上のグアニジンとヨウ化水素との塩から選ばれるものが挙げられる。
【0046】
(式中、R、R及びRは上記に同じ。)
【0047】
(式中、R、R、R及びRは上記に同じ。)
【0048】
(式中、R、R、R10、R11及びR12は上記に同じ。)
【0049】
一般式[1']で示される、pKaが8以上のモノアミンとヨウ化水素との塩の具体例としては、一例として、モノイソプロピルアミン ヨウ化水素塩、モノ-t-ブチルアミン ヨウ化水素塩、モノシクロヘキシルアミン ヨウ化水素塩、ジシクロヘキシルアミン ヨウ化水素塩、ベンジルジメチルアミン ヨウ化水素塩等の種々のモノアミンヨウ化水素塩を挙げることができるが、なかでも、より高い収率で環状カーボネートが得られるという点において、下記一般式[1'-I]で示されるモノアミンヨウ化水素塩が好ましい。
【0050】
(式中、R1a及びR2aは上記に同じ。)
【0051】
一般式[1'-I]で示されるモノアミンヨウ化水素塩の具体例としては、例えばモノ-t-ブチルアミン ヨウ化水素塩、ジ-t-ブチルアミン ヨウ化水素塩、モノ-t-ペンチルアミン ヨウ化水素塩、ジ-t-ペンチルアミン ヨウ化水素塩、モノ-t-ヘキシルアミン ヨウ化水素塩、ジ-t-ヘキシルアミン ヨウ化水素塩、モノシクロペンチルアミン ヨウ化水素塩、ジシクロペンチルアミン ヨウ化水素塩、モノシクロヘキシルアミン ヨウ化水素塩、ジシクロヘキシルアミン ヨウ化水素塩、モノシクロヘプチルアミン ヨウ化水素塩、ジシクロヘプチルアミン ヨウ化水素塩、モノシクロオクチルアミン ヨウ化水素塩、ジシクロオクチルアミン ヨウ化水素塩等が挙げられ、なかでも、更に高い収率で環状カーボネートが得られるという点において、モノ-t-ブチルアミン ヨウ化水素塩、ジシクロヘキシルアミン ヨウ化水素塩が好ましい。なお、上述の具体例において、t-はtert-体を表す。
【0052】
一般式[2']で示される、pKaが8以上の環状アミジンとヨウ化水素との塩の具体例としては、一例として、-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン ヨウ化水素塩、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン ヨウ化水素塩、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN) ヨウ化水素塩、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU) ヨウ化水素塩等の種々の環状アミジンヨウ化水素塩を挙げることができるが、なかでも、より高い収率で環状カーボネートが得られるという点において、下記一般式[2'-I]で示される環状アミジンヨウ化水素塩が好ましい。
【0053】
(式中、m及びnは上記に同じ。)
【0054】
一般式[2'-I]で示される環状アミジンヨウ化水素塩の具体例としては、例えば1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN) ヨウ化水素塩、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU) ヨウ化水素塩等が挙げられ、なかでも、更に高い収率で環状カーボネートが得られるという点において、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU) ヨウ化水素塩が好ましい。
【0055】
一般式[3']で示される、pKaが8以上のグアニジンとヨウ化水素との塩の具体例としては、一例として、グアニジン ヨウ化水素塩、1-(1-n-ブチル)グアニジン ヨウ化水素塩、1-(1-n-ブチル)-3-メチルグアニジン ヨウ化水素塩、1-(1-n-ブチル)-2,3-ジメチルグアニジン ヨウ化水素塩、1-(1-n-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン ヨウ化水素塩、2-(1-n-ブチル)-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン ヨウ化水素塩、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン ヨウ化水素塩、1-(1-n-オクチル)グアニジン ヨウ化水素塩、1,1-ジシクロヘキシルグアニジン ヨウ化水素塩、1-ベンジルグアニジン ヨウ化水素塩、1-(2-ヒドロキシエチル)グアニジン ヨウ化水素塩、1-(2-メトキシエチル)グアニジン ヨウ化水素塩、1-(2-ジメチルアミノエチル)グアニジン ヨウ化水素塩、1-ベンジル-2,3,3-トリメチルグアニジン ヨウ化水素塩、1-(2-ジメチルアミノエチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン ヨウ化水素塩等の種々のグアニジンヨウ化水素塩を挙げることができるが、なかでも、より高い収率で環状カーボネートが得られるという点において、1-(1-n-ブチル)グアニジン ヨウ化水素塩、1-(1-n-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン ヨウ化水素塩、1-ベンジル-2,3,3-トリメチルグアニジン ヨウ化水素塩が好ましい。なお、上述の具体例において、n-はnormal-体を表す。
【0056】
上述の一般式[1']で示されるモノアミンヨウ化水素塩、一般式[2']で示される環状アミジンヨウ化水素塩、あるいは一般式[3']で示されるグアニジンヨウ化水素塩から選ばれる本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)のなかでも、一般式[1']で示されるモノアミンヨウ化水素塩及び一般式[2']で示される環状アミジンヨウ化水素塩から選ばれるものが好ましく、そのなかでも、一般式[1'-I]で示されるモノアミンヨウ化水素塩及び一般式[2'-I]で示される環状アミジンヨウ化水素塩から選ばれるものがより好ましい。
【0057】
本発明においては、エポキシド(オキシラン)と二酸化炭素との反応系内に、pKaが8以上の第一級乃至第三級アミンであって、モノアミン、環状アミジン及びグアニジンから選ばれるアミン化合物とヨウ化水素を共存させることで、本発明にかかるアミン化合物とヨウ化水素とから、プロトンとヨウ素アニオンを有するアミン化合物の塩である本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)が生成していればよいが、該反応系内で本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)を用時調製するようにしてもよいし、別系内で本発明にかかるアミン化合物とヨウ化水素とを反応させて、本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)をあらかじめ調製し、このように調製して単離した該触媒(アミン化合物塩)をエポキシド(オキシラン)と二酸化炭素との反応系内に共存させるようにしてもよい。すなわち、本発明においては、エポキシド(オキシラン)と二酸化炭素との反応を、本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)を調製する反応と同一系内で行って1ポットで反応させるようにしてもよいし、本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)を別系内であらかじめ調製する反応(工程)を行って該触媒(アミン化合物塩)を単離しておき、単離した該触媒(アミン化合物塩)を用いてエポキシド(オキシラン)と二酸化炭素とを反応させるようにしてもよい。したがって、本発明にかかるアミン化合物とヨウ化水素から調製される本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)の存在下で、エポキシド(オキシラン)と二酸化炭素を反応させることも、「pKaが8以上の第一級乃至第三級アミンであって、モノアミン、環状アミジン及びグアニジンから選ばれるアミン化合物とヨウ化水素の存在下で反応させる」と表現される範囲内に含まれるものとする。なお、本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)の調製方法については後述する。
【0058】
本発明においては、別系内で本発明にかかるアミン化合物とヨウ化水素とを反応させて、本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)をあらかじめ調製して単離しておき、これを触媒として用いることが好ましい。エポキシド(オキシラン)と二酸化炭素との反応系内に、本発明にかかるアミン化合物とヨウ化水素を共存させる場合において、ヨウ化水素源としてヨウ化水素酸を用いると、共存する水がエポキシド(オキシラン)と反応して予期しない副反応を引き起こすおそれがあり、その一方で、ヨウ化水素源としてヨウ化水素ガスを用いることもできるが、ヨウ化水素ガスは常温で気体状態であるので、その取り扱いには注意を要するためである。言い換えれば、別系内で本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)をあらかじめ調製して単離しておく方法は、本発明をより容易に行うことができるのである。すなわち、本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)は、本発明にかかるアミン化合物と、取り扱いが容易なヨウ化水素酸とを反応させる、いわゆる1ステップで簡便かつ安価な合成方法であらかじめ調製できる。また、この調製方法により得られるアミン化合物塩(本発明にかかる触媒)は、固体状態のものがほとんどであるので、反応系内から容易に単離することができる。
【0059】
本発明にかかる触媒であるアミン化合物塩は、用時調製するにしろ、あらかじめ調製して単離しておくにしろ、本発明にかかるアミン化合物とヨウ化水素から1ステップで合成でき、なおかつこれを触媒として用いれば、常温、常圧等の穏和な条件下でも、合成に多工程を要する高価な金属配位型触媒と同等以上の収率で環状カーボネートを製造することができるという点で有用である。また、本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)は、メタルフリー(金属フリー)の触媒でもあるので、メタル(金属)の除去工程を必要とせず、グリーンケミストリーの観点からも有用である。特に最近では、製品の精密化が進んでおり、不純物としてメタル(金属)をたとえ微量でも含んでいる材料は好まれない傾向にある。このため、メタル(金属)の除去工程を必要としない本発明の製造方法は、上述したような材料となり得る環状カーボネートを製造する上で非常に有用である。
【0060】
本発明にかかる触媒であるアミン化合物塩は、例えばシリカ、アルミナ等の担体に担持されているものであってもよいし、重合体(ポリマー)中に組み込まれているもの、すなわち、高分子化されているものであってもよい。このようなアミン化合物塩は、反応系内からの環状カーボネートの単離工程において、生成物である環状カーボネートとの分離が容易であるという利点を有している上、回収、再利用が可能であるという利点も有しているため、グリーンケミストリーの観点から有用な、環境負荷低減を考慮した実用的な触媒である。
【0061】
本発明にかかる二酸化炭素は、環状カーボネートを製造するための原料として用いられる。当該二酸化炭素は、工業的には、電力、ガス等の生産によって副生する二酸化炭素を回収、精製等することにより製造されるが、供給形態や由来等に関して特に制限はない。また、二酸化炭素の純度については、必ずしも高純度である必要はなく、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス等で希釈されていてもよい。ただし、二酸化炭素の純度が低いと反応容積が大きくなる傾向にあるので、二酸化炭素は高純度であることが好ましい。二酸化炭素の純度としては、95%以上、なかでも、99%以上であることが好ましい。
【0062】
本発明にかかるエポキシド(オキシラン)は、上述の二酸化炭素と同様に、環状カーボネートを製造するための原料として用いられる。当該エポキシド(オキシラン)は、通常この分野で用いられるものであれば特に限定されず、少なくともオキシラン環を1つ有していればよく、2つ以上のオキシラン環を有していてもよいし、エーテル基、アシル基等の他の官能基を有していてもよい。当該エポキシド(オキシラン)の具体例としては、例えば下記一般式[4]で示されるエポキシド(オキシラン)又は下記一般式[5]で示されるエポキシド(オキシラン)から選ばれるものが挙げられる。
【0063】
(式中、A、A、A及びAはそれぞれ独立して、水素原子又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜20の1価の炭化水素基を表す。なお、AとA、AとA又はAとAとで環状構造を形成していてもよい。)
【0064】
(式中、A、A、A、A、A及びA10はそれぞれ独立して、水素原子又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜20の1価の炭化水素基を表し、Tは、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基を表す。なお、AとA、AとA、AとA10又はAとA10とで環状構造を形成していてもよい。)
【0065】
一般式[4]及び[5]におけるA、A、A、A、A、A、A、A、A及びA10で示される1価の炭化水素基としては、具体的には、例えばアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
【0066】
一般式[4]及び[5]におけるA、A、A、A、A、A、A、A、A及びA10で示される、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜20の1価の炭化水素基におけるヘテロ原子の具体例としては、例えば酸素原子、硫黄原子、例えばフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0067】
一般式[4]及び[5]におけるA、A、A、A、A、A、A、A、A及びA10で示される1価の炭化水素基がアルキル基である場合の具体例、すなわち、一般式[4]及び[5]におけるA、A、A、A、A、A、A、A、A及びA10で示されるヘテロ原子を有していてもよいアルキル基としては、直鎖状、分枝状もしくは環状のいずれであってもよい。当該アルキル基がヘテロ原子を有さない場合の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、s-ペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、s-ヘキシル基、t-ヘキシル基、ネオヘキシル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、s-ヘプチル基、t-ヘプチル基、ネオヘプチル基、シクロヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、s-オクチル基、t-オクチル基、ネオオクチル基、2-エチルヘキシル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、s-ノニル基、t-ノニル基、ネオノニル基、シクロノニル基、n-デシル基、イソデシル基、s-デシル基、t-デシル基、ネオデシル基、シクロデシル基、n-ウンデシル基、シクロウンデシル基、n-ドデシル基、シクロドデシル基、n-トリデシル基、シクロトリデシル基、n-テトラデシル基、シクロテトラデシル基、n-ペンタデシル基、シクロペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、シクロヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、シクロヘプタデシル基、n-オクタデシル基、シクロオクタデシル基、n-ノナデシル基、シクロノナデシル基、n-イコシル基、シクロイコシル基、ボルニル基、メンチル基、アダマンチル基、メチルアダマンチル基、デカヒドロナフチル基等の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられ、なかでも、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、s-ペンチル基、t-ペンチル基、ネオペンチル基、2-メチルブチル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、s-ヘキシル基、t-ヘキシル基、ネオヘキシル基、2-メチルペンチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、1-エチルブチル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、s-ヘプチル基、t-ヘプチル基、ネオヘプチル基、シクロヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、s-オクチル基、t-オクチル基、ネオオクチル基、2-エチルヘキシル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、s-ノニル基、t-ノニル基、ネオノニル基、シクロノニル基、n-デシル基、イソデシル基、s-デシル基、t-デシル基、ネオデシル基、シクロデシル基、ボルニル基、メンチル基、アダマンチル基、デカヒドロナフチル基等の炭素数1〜10の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基が好ましい。なお、上述の具体例において、n-はnormal-体を表し、s-はsec-体を表し、t-はtert-体を表す。
【0068】
また、上述のA、A、A、A、A、A、A、A、A及びA10で示されるヘテロ原子を有していてもよいアルキル基がヘテロ原子を有する場合の具体例としては、例えばメトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基、メトキシペンチル基、メトキシヘキシル基、メトキシヘプチル基、メトキシオクチル基、メトキシノニル基、メトキシデシル基、メトキシウンデシル基、メトキシドデシル基、メトキシトリデシル基、メトキシテトラデシル基、メトキシペンタデシル基、メトキシヘキサデシル基、メトキシヘプタデシル基、メトキシオクタデシル基、メトキシノナデシル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、エトキシブチル基、エトキシペンチル基、エトキシヘキシル基、エトキシヘプチル基、エトキシオクチル基、エトキシノニル基、エトキシデシル基、エトキシウンデシル基、エトキシドデシル基、エトキシトリデシル基、エトキシテトラデシル基、エトキシペンタデシル基、エトキシヘキサデシル基、エトキシヘプタデシル基、エトキシオクタデシル基、プロポキシメチル基、プロポキシエチル基、プロポキシプロピル基、プロポキシブチル基、プロポキシペンチル基、プロポキシヘキシル基、プロポキシヘプチル基、プロポキシオクチル基、プロポキシノニル基、プロポキシデシル基、プロポキシウンデシル基、プロポキシドデシル基、プロポキシトリデシル基、プロポキシテトラデシル基、プロポキシペンタデシル基、プロポキシヘキサデシル基、プロポキシヘプタデシル基、ブトキシメチル基、ブトキシエチル基、ブトキシプロピル基、ブトキシブチル基、ブトキシペンチル基、ブトキシヘキシル基、ブトキシヘプチル基、ブトキシオクチル基、ブトキシノニル基、ブトキシデシル基、ブトキシウンデシル基、ブトキシドデシル基、ブトキシトリデシル基、ブトキシテトラデシル基、ブトキシペンタデシル基、ブトキシヘキサデシル基、ペンチルオキシメチル基、ペンチルオキシエチル基、ペンチルオキシプロピル基、ペンチルオキシブチル基、ペンチルオキシペンチル基、ペンチルオキシヘキシル基、ペンチルオキシヘプチル基、ペンチルオキシオクチル基、ペンチルオキシノニル基、ペンチルオキシデシル基、ペンチルオキシウンデシル基、ペンチルオキシドデシル基、ペンチルオキシトリデシル基、ペンチルオキシテトラデシル基、ペンチルオキシペンタデシル基、ヘキシルオキシメチル基、ヘキシルオキシエチル基、ヘキシルオキシプロピル基、ヘキシルオキシブチル基、ヘキシルオキシペンチル基、ヘキシルオキシヘキシル基、ヘキシルオキシヘプチル基、ヘキシルオキシオクチル基、ヘキシルオキシノニル基、ヘキシルオキシデシル基、ヘキシルオキシウンデシル基、ヘキシルオキシドデシル基、ヘキシルオキシトリデシル基、ヘキシルオキシテトラデシル基、ヘプチルオキシメチル基、ヘプチルオキシエチル基、ヘプチルオキシプロピル基、ヘプチルオキシブチル基、ヘプチルオキシペンチル基、ヘプチルオキシヘキシル基、ヘプチルオキシヘプチル基、ヘプチルオキシオクチル基、ヘプチルオキシノニル基、ヘプチルオキシデシル基、ヘプチルオキシウンデシル基、ヘプチルオキシドデシル基、ヘプチルオキシトリデシル基、オクチルオキシメチル基、オクチルオキシエチル基、オクチルオキシプロピル基、オクチルオキシブチル基、オクチルオキシペンチル基、オクチルオキシヘキシル基、オクチルオキシヘプチル基、オクチルオキシオクチル基、オクチルオキシノニル基、オクチルオキシデシル基、オクチルオキシウンデシル基、オクチルオキシドデシル基、ノニルオキシメチル基、ノニルオキシエチル基、ノニルオキシプロピル基、ノニルオキシブチル基、ノニルオキシペンチル基、ノニルオキシヘキシル基、ノニルオキシヘプチル基、ノニルオキシオクチル基、ノニルオキシノニル基、ノニルオキシデシル基、ノニルオキシウンデシル基、デシルオキシメチル基、デシルオキシエチル基、デシルオキシプロピル基、デシルオキシブチル基、デシルオキシペンチル基、デシルオキシヘキシル基、デシルオキシヘプチル基、デシルオキシオクチル基、デシルオキシノニル基、デシルオキシデシル基、ウンデシルオキシメチル基、ウンデシルオキシエチル基、ウンデシルオキシプロピル基、ウンデシルオキシブチル基、ウンデシルオキシペンチル基、ウンデシルオキシヘキシル基、ウンデシルオキシヘプチル基、ウンデシルオキシオクチル基、ウンデシルオキシノニル基、ドデシルオキシメチル基、ドデシルオキシエチル基、ドデシルオキシプロピル基、ドデシルオキシブチル基、ドデシルオキシペンチル基、ドデシルオキシヘキシル基、ドデシルオキシヘプチル基、ドデシルオキシオクチル基、トリデシルオキシメチル基、トリデシルオキシエチル基、トリデシルオキシプロピル基、トリデシルオキシブチル基、トリデシルオキシペンチル基、トリデシルオキシヘキシル基、トリデシルオキシヘプチル基、テトラデシルオキシメチル基、テトラデシルオキシエチル基、テトラデシルオキシプロピル基、テトラデシルオキシブチル基、テトラデシルオキシペンチル基、テトラデシルオキシヘキシル基、ペンタデシルオキシメチル基、ペンタデシルオキシエチル基、ペンタデシルオキシプロピル基、ペンタデシルオキシブチル基、ペンタデシルオキシペンチル基、ヘキサデシルオキシメチル基、ヘキサデシルオキシエチル基、ヘキサデシルオキシプロピル基、ヘキサデシルオキシブチル基、ヘプタデシルオキシメチル基、ヘプタデシルオキシエチル基、ヘプタデシルオキシプロピル基、オクタデシルオキシメチル基、オクタデシルオキシエチル基、ノナデシルオキシメチル基等のエーテル基(酸素原子)を有する炭素数2〜20のアルキル基、例えばホルミルオキシメチル基、ホルミルオキシエチル基、ホルミルオキシプロピル基、アセトキシメチル基(アセチルオキシメチル基)、アセトキシエチル基(アセチルオキシエチル基)、アセトキシプロピル基(アセチルオキシプロピル基)、プロピオニルオキシメチル基、プロピオニルオキシエチル基、プロピオニルオキシプロピル基、ブチリルオキシメチル基、ブチリルオキシエチル基、ブチリルオキシプロピル基、バレリルオキシメチル基(ペンタノイルオキシメチル基)、バレリルオキシエチル基(ペンタノイルオキシエチル基)、バレリルオキシプロピル基(ペンタノイルオキシプロピル基)、カプロイルオキシメチル基(ヘキサノイルオキシメチル基)、カプロイルオキシエチル基(ヘキサノイルオキシエチル基)、カプロイルオキシプロピル基(ヘキサノイルオキシプロピル基)、エナントイルオキシメチル基(ヘプタノイルオキシメチル基)、エナントイルオキシエチル基(ヘプタノイルオキシエチル基)、エナントイルオキシプロピル基(ヘプタノイルオキシプロピル基)等のカルボニルオキシ基(酸素原子)を有する炭素数2〜20のアルキル基、例えばパーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、パーフルオロデシル基、パーフルオロウンデシル基、パーフルオロドデシル基、パーフルオロトリデシル基、パーフルオロテトラデシル基、パーフルオロペンタデシル基、パーフルオロヘキサデシル基、パーフルオロヘプタデシル基、パーフルオロオクタデシル基、パーフルオロノナデシル基、パーフルオロイコシル基等のフルオロ基(フッ素原子)を有する炭素数1〜20のアルキル基等が挙げられ、なかでも、例えばメトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基、メトキシペンチル基、メトキシヘキシル基、メトキシヘプチル基、メトキシオクチル基、メトキシノニル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、エトキシブチル基、エトキシペンチル基、エトキシヘキシル基、エトキシヘプチル基、エトキシオクチル基、プロポキシメチル基、プロポキシエチル基、プロポキシプロピル基、プロポキシブチル基、プロポキシペンチル基、プロポキシヘキシル基、プロポキシヘプチル基、ブトキシメチル基、ブトキシエチル基、ブトキシプロピル基、ブトキシブチル基、ブトキシペンチル基、ブトキシヘキシル基、ペンチルオキシメチル基、ペンチルオキシエチル基、ペンチルオキシプロピル基、ペンチルオキシブチル基、ペンチルオキシペンチル基、ヘキシルオキシメチル基、ヘキシルオキシエチル基、ヘキシルオキシプロピル基、ヘキシルオキシブチル基、ヘプチルオキシメチル基、ヘプチルオキシエチル基、ヘプチルオキシプロピル基、オクチルオキシメチル基、オクチルオキシエチル基、ノニルオキシメチル基等のエーテル基(酸素原子)を有する炭素数2〜10の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基、例えばホルミルオキシメチル基、ホルミルオキシエチル基、ホルミルオキシプロピル基、アセトキシメチル基(アセチルオキシメチル基)、アセトキシエチル基(アセチルオキシエチル基)、アセトキシプロピル基(アセチルオキシプロピル基)、プロピオニルオキシメチル基、プロピオニルオキシエチル基、プロピオニルオキシプロピル基、ブチリルオキシメチル基、ブチリルオキシエチル基、ブチリルオキシプロピル基、バレリルオキシメチル基(ペンタノイルオキシメチル基)、バレリルオキシエチル基(ペンタノイルオキシエチル基)、バレリルオキシプロピル基(ペンタノイルオキシプロピル基)、カプロイルオキシメチル基(ヘキサノイルオキシメチル基)、カプロイルオキシエチル基(ヘキサノイルオキシエチル基)、カプロイルオキシプロピル基(ヘキサノイルオキシプロピル基)、エナントイルオキシメチル基(ヘプタノイルオキシメチル基)、エナントイルオキシエチル基(ヘプタノイルオキシエチル基)、エナントイルオキシプロピル基(ヘプタノイルオキシプロピル基)等のカルボニルオキシ基(酸素原子)を有する炭素数2〜10の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基、例えばパーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、パーフルオロデシル基等のフルオロ基(フッ素原子)を有する炭素数1〜10の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルキル基が好ましい。なお、上述の具体例において、アルキル基は、normal-体に限定されず、sec-体、tert-体、イソ体、ネオ体等の分枝状もしくはシクロ体のような環状のアルキル基であってもよい。
【0069】
一般式[4]及び[5]におけるA、A、A、A、A、A、A、A、A及びA10で示される1価の炭化水素基がアルケニル基である場合の具体例、すなわち、一般式[4]及び[5]におけるA、A、A、A、A、A、A、A、A及びA10で示されるヘテロ原子を有していてもよいアルケニル基としては、直鎖状、分枝状もしくは環状のいずれであってもよい。当該アルケニル基がヘテロ原子を有さない場合の具体例としては、例えばビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基等の炭素数2〜20のアルケニル基が挙げられ、なかでも、例えばビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基等の炭素数2〜10の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルケニル基が好ましい。また、上記アルケニル基がヘテロ原子を有する場合の具体例としては、例えばビニルオキシメチル基、ビニルオキシエチル基、ビニルオキシプロピル基、プロペニルオキシメチル基、プロペニルオキシエチル基、プロペニルオキシプロピル基、ブテニルオキシメチル基、ブテニルオキシエチル基、ブテニルオキシプロピル基、ペンテニルオキシメチル基、ペンテニルオキシエチル基、ペンテニルオキシプロピル基、ヘキセニルオキシメチル基、ヘキセニルオキシエチル基、ヘキセニルオキシプロピル基等のエーテル基(酸素原子)を有する炭素数3〜20のアルケニル基、例えばアクリロイルオキシメチル基、アクリロイルオキシエチル基、アクリロイルオキシプロピル基、メタクリロイルオキシメチル基、メタクリロイルオキシエチル基、メタクリロイルオキシプロピル基、クロトノイルオキシメチル基、クロトノイルオキシエチル基、クロトノイルオキシプロピル基、チグロイルオキシメチル基、チグロイルオキシエチル基、チグロイルオキシプロピル基、アンゲロイルオキシメチル基、アンゲロイルオキシエチル基、アンゲロイルオキシプロピル基、セネシオイルオキシメチル基、セネシオイルオキシエチル基、セネシオイルオキシプロピル基、ソルボイルオキシメチル基、ソルボイルオキシエチル基、ソルボイルオキシプロピル基等のカルボニルオキシ基(酸素原子)を有する炭素数4〜20のアルケニル基、例えばパーフルオロビニル基、パーフルオロプロペニル基、パーフルオロブテニル基、パーフルオロペンテニル基、パーフルオロヘキセニル基、パーフルオロヘプテニル基、パーフルオロオクテニル基、パーフルオロノネニル基、パーフルオロデセニル基、パーフルオロウンデセニル基、パーフルオロドデセニル基、パーフルオロトリデセニル基、パーフルオロテトラデセニル基、パーフルオロペンタデセニル基、パーフルオロヘキサデセニル基、パーフルオロヘプタデセニル基、パーフルオロオクタデセニル基、パーフルオロノナデセニル基、パーフルオロイコセニル基等のフルオロ基(フッ素原子)を有する炭素数2〜20のアルケニル基等が挙げられ、なかでも、例えばビニルオキシメチル基、ビニルオキシエチル基、ビニルオキシプロピル基、プロペニルオキシメチル基、プロペニルオキシエチル基、プロペニルオキシプロピル基、ブテニルオキシメチル基、ブテニルオキシエチル基、ブテニルオキシプロピル基、ペンテニルオキシメチル基、ペンテニルオキシエチル基、ペンテニルオキシプロピル基、ヘキセニルオキシメチル基、ヘキセニルオキシエチル基、ヘキセニルオキシプロピル基等のエーテル基(酸素原子)を有する炭素数3〜10の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルケニル基、例えばアクリロイルオキシメチル基、アクリロイルオキシエチル基、アクリロイルオキシプロピル基、メタクリロイルオキシメチル基、メタクリロイルオキシエチル基、メタクリロイルオキシプロピル基、クロトノイルオキシメチル基、クロトノイルオキシエチル基、クロトノイルオキシプロピル基、チグロイルオキシメチル基、チグロイルオキシエチル基、チグロイルオキシプロピル基、アンゲロイルオキシメチル基、アンゲロイルオキシエチル基、アンゲロイルオキシプロピル基、セネシオイルオキシメチル基、セネシオイルオキシエチル基、セネシオイルオキシプロピル基、ソルボイルオキシメチル基、ソルボイルオキシエチル基、ソルボイルオキシプロピル基等のカルボニルオキシ基(酸素原子)を有する炭素数4〜10の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルケニル基、例えばパーフルオロビニル基、パーフルオロプロペニル基、パーフルオロブテニル基、パーフルオロペンテニル基、パーフルオロヘキセニル基、パーフルオロヘプテニル基、パーフルオロオクテニル基、パーフルオロノネニル基、パーフルオロデセニル基等のフルオロ基(フッ素原子)を有する炭素数2〜10の直鎖状、分枝状もしくは環状のアルケニル基が好ましい。なお、上述の具体例において、アルキル基及びアルケニル基は、normal-体に限定されず、sec-体、tert-体、イソ体、ネオ体等の分枝状もしくはシクロ体のような環状のアルケニル基であってもよい。また、アルケニル基における二重結合の位置は1位に限定されず、例えば2位、3位、ω位等の1位とは異なる位置に二重結合を有するアルケニル基であってもよい。
【0070】
一般式[4]及び[5]におけるA、A、A、A、A、A、A、A、A及びA10で示される1価の炭化水素基がアリール基である場合の具体例、すなわち、一般式[4]及び[5]におけるA、A、A、A、A、A、A、A、A及びA10で示されるヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜20のアリール基の具体例としては、単環式、縮合多環式のいずれであってもよい。当該アリール基がヘテロ原子を有さない場合の具体例としては、例えばフェニル基、ナフチル基、アズレニル基、ビフェニリル基、インダセニル基、アセナフチレニル基、フェナントリル基、アントリル基(アントラセニル基)等の炭素数6〜14のアリール基が挙げられ、なかでも、例えばフェニル基等の炭素数6のアリール基が好ましい。また、上記アリール基がヘテロ原子を有する場合の具体例としては、例えばパーフルオロフェニル基、パーフルオロナフチル基、パーフルオロアズレニル基、パーフルオロビフェニリル基、パーフルオロインダセニル基、パーフルオロアセナフチレニル基、パーフルオロフェナントリル基、パーフルオロアントリル基(パーフルオロアントラセニル基)等のフルオロ基(フッ素原子)を有する炭素数6〜14のアリール基等が挙げられ、なかでも、例えばパーフルオロフェニル基等のフルオロ基(フッ素原子)を有する炭素数6のアリール基が好ましい。
【0071】
一般式[4]及び[5]におけるA、A、A、A、A、A、A、A、A及びA10で示される1価の炭化水素基がアラルキル基である場合の具体例、すなわち、一般式[4]及び[5]におけるA、A、A、A、A、A、A、A、A及びA10で示されるヘテロ原子を有していてもよいアラルキル基としては、単環式、縮合多環式のいずれであってもよい。当該アラルキル基がヘテロ原子を有さない場合の具体例としては、例えばベンジル基、フェネチル基、メチルベンジル基、フェニルプロピル基、1-メチルフェニルエチル基、フェニルブチル基、2-メチルフェニルプロピル基、テトラヒドロナフチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、インデニル基、フルオレニル基等の炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられ、なかでも、例えばベンジル基、フェネチル基、メチルベンジル基、フェニルプロピル基、1-メチルフェニルエチル基、フェニルブチル基、2-メチルフェニルプロピル基、テトラヒドロナフチル基、ナフチルメチル基、ナフチルエチル基、インデニル基、フルオレニル基等の炭素数7〜14のアラルキル基が好ましい。また、上記アラルキル基がヘテロ原子を有する場合の具体例としては、例えばフェニルオキシメチル基、フェニルオキシエチル基、フェニルオキシプロピル基、ベンジルオキシメチル基、ベンジルオキシエチル基、ベンジルオキシプロピル基、フェネチルオキシメチル基、フェネチルオキシエチル基、フェネチルオキシプロピル基、ナフチルオキシメチル基、ナフチルオキシエチル基、ナフチルオキシプロピル基、フリル基、ピラニル基、チエニル基、クロメニル基、クロマニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基等の酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有する炭素数7〜20のアラルキル基等が挙げられ、なかでも、例えばフェニルオキシメチル基、フェニルオキシエチル基、フェニルオキシプロピル基、ベンジルオキシメチル基、ベンジルオキシエチル基、ベンジルオキシプロピル基、フェネチルオキシメチル基、フェネチルオキシエチル基、フェネチルオキシプロピル基、ナフチルオキシメチル基、ナフチルオキシエチル基、ナフチルオキシプロピル基、フリル基、ピラニル基、チエニル基、クロメニル基、クロマニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基等の酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有する炭素数7〜14のアラルキル基が好ましい。
【0072】
一般式[5]におけるTで示される2価の炭化水素基としては、具体的には、例えばアルキレン基(アルカンジイル基)、アルケニレン基、アリーレン基、アラルキレン基等が挙げられる。
【0073】
一般式[5]におけるTで示される、ヘテロ原子を有していてもよい炭素数1〜20の2価の炭化水素基におけるヘテロ原子の具体例としては、例えば酸素原子、硫黄原子、例えばフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
【0074】
一般式[5]におけるTで示される2価の炭化水素基がアルキレン基(アルカンジイル基)である場合の具体例、すなわち、一般式[5]におけるTで示されるヘテロ原子を有していてもよいアルキレン基(アルカンジイル基)の具体例としては、直鎖状、分枝状もしくは環状のいずれであってもよい。当該アルキレン基(アルカンジイル基)がヘテロ原子を有さない場合の具体例としては、例えばメチレン基(メタンジイル基)、エチレン基(エタン-1,2-ジイル基)、プロピレン基(プロパン-1,2-ジイル基)、トリメチレン基(プロパン-1,3-ジイル基)、テトラメチレン基(ブタン-1,4-ジイル基)、ペンタメチレン基(ペンタン-1,5-ジイル基)、ヘキサメチレン基(ヘキサン-1,6-ジイル基)、ヘプタメチレン基(ヘプタン-1,7-ジイル基)、オクタメチレン基(オクタン-1,8-ジイル基)、ノナメチレン基(ノナン-1,9-ジイル基)、デカメチレン基(デカン-1,10-ジイル基)、ウンデカメチレン基(ウンデカン-1,11-ジイル基)、ドデカメチレン基(ドデカン-1,12-ジイル基)、トリデカメチレン基(トリデカン-1,13-ジイル基)、テトラデカメチレン基(テトラデカン-1,14-ジイル基)、ペンタデカメチレン基(ペンタデカン-1,15-ジイル基)、ヘキサデカメチレン基(ヘキサデカン-1,16-ジイル基)、ヘプタデカメチレン基(ヘプタデカン-1,17-ジイル基)、オクタデカメチレン基(オクタデカン-1,18-ジイル基)、ノナデカメチレン基(ノナデカン-1,19-ジイル基)、イコサメチレン基(イコサン-1,20-ジイル基)等の炭素数1〜20のアルキレン基(アルカンジイル基)が挙げられる。また、上記アルキレン基(アルカンジイル基)がヘテロ原子を有する場合の具体例としては、例えばメチレンビス(オキシメチル)基、メチレンビス(オキシエチル)基、メチレンビス(オキシプロピル)基、メチレンビス(オキシブチル)基、メチレンビス(オキシペンチル)基、エチレンビス(オキシメチル)基、エチレンビス(オキシエチル)基、エチレンビス(オキシプロピル)基、エチレンビス(オキシブチル)基、エチレンビス(オキシペンチル)基、トリメチレンビス(オキシメチル)基、トリメチレンビス(オキシエチル)基、トリメチレンビス(オキシプロピル)基、トリメチレンビス(オキシブチル)基、トリメチレンビス(オキシペンチル)基、テトラメチレンビス(オキシメチル)基、テトラメチレンビス(オキシエチル)基、テトラメチレンビス(オキシプロピル)基、テトラメチレンビス(オキシブチル)基、テトラメチレンビス(オキシペンチル)基、ペンタメチレンビス(オキシメチル)基、ペンタメチレンビス(オキシエチル)基、ペンタメチレンビス(オキシプロピル)基、ペンタメチレンビス(オキシブチル)基、ペンタメチレンビス(オキシペンチル)基等のエーテル基(酸素原子)を有する炭素数3〜20のアルキレン基(アルカンジイル基)等が挙げられる。なお、上述の具体例において、アルキレン基(アルカンジイル基)は、normal-体に限定されず、sec-体、tert-体、イソ体、ネオ体等の分枝状もしくはシクロ体のような環状のアルキレン基(アルカンジイル基)であってもよい。
【0075】
一般式[5]におけるTで示される2価の炭化水素基がアルケニレン基である場合の具体例、すなわち、一般式[5]におけるTで示されるヘテロ原子を有していてもよいアルケニレン基としては、直鎖状、分枝状もしくは環状のいずれであってもよい。当該アルケニレン基がヘテロ原子を有さない場合の具体例としては、例えばビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基、ノネニレン基、デセニレン基、ウンデセニレン基、ドデセニレン基、トリデセニレン基、テトラデセニレン基、ペンタデセニレン基、ヘキサデセニレン基、ヘプタデセニレン基、オクタデセニレン基、ノナデセニレン基、イコセニレン基等の炭素数2〜20のアルケニレン基が挙げられる。また、上記アルケニレン基がヘテロ原子を有する場合の具体例としては、例えばパーフルオロビニレン基、パーフルオロプロペニレン基、パーフルオロブテニレン基、パーフルオロペンテニレン基、パーフルオロヘキセニレン基、パーフルオロヘプテニレン基、パーフルオロオクテニレン基、パーフルオロノネニレン基、パーフルオロデセニレン基、パーフルオロウンデセニレン基、パーフルオロドデセニレン基、パーフルオロトリデセニレン基、パーフルオロテトラデセニレン基、パーフルオロペンタデセニレン基、パーフルオロヘキサデセニレン基、パーフルオロヘプタデセニレン基、パーフルオロオクタデセニレン基、パーフルオロノナデセニレン基、パーフルオロイコセニレン基等のフルオロ基(フッ素原子)を有する炭素数2〜20のアルケニレン基等が挙げられる。なお、上述の具体例において、アルケニレン基は、normal-体に限定されず、sec-体、tert-体、イソ体、ネオ体等の分枝状もしくはシクロ体のような環状のアルケニレン基であってもよい。また、アルケニレン基における二重結合の位置は1位に限定されず、例えば2位、3位、ω位等の1位とは異なる位置に二重結合を有するアルケニレン基であってもよい。
【0076】
一般式[5]におけるTで示される2価の炭化水素基がアリーレン基である場合の具体例、すなわち、一般式[5]におけるTで示されるヘテロ原子を有していてもよいアリーレン基の具体例としては、単環式、縮合多環式のいずれであってもよい。当該アリーレン基がヘテロ原子を有さない場合の具体例としては、例えばフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基等の炭素数6〜12のアリーレン基が挙げられる。また、上記アリーレン基がヘテロ原子を有する場合の具体例としては、例えばパーフルオロフェニレン基、パーフルオロナフチレン基、パーフルオロビフェニレン基等のフルオロ基(フッ素原子)を有する炭素数6〜12のアリーレン基等が挙げられる。
【0077】
一般式[5]におけるTで示される2価の炭化水素基がアラルキレン基である場合の具体例、すなわち、一般式[5]におけるTで示されるヘテロ原子を有していてもよいアラルキレン基の具体例としては、単環式、縮合多環式のいずれであってもよい。当該アラルキレン基がヘテロ原子を有さない場合の具体例としては、例えばベンジレン基、フェネチレン基、フェニルプロピレン基、フェニルブチレン基、テトラヒドロナフチレン基、ナフチルメチレン基、ナフチルエチレン基等の炭素数7〜20のアラルキレン基が挙げられる。また、上記アラルキレン基がヘテロ原子を有する場合の具体例としては、例えばメチレンビス(フェノキシメチル)基、メチレンビス(フェノキシエチル)基、メチレンビス(フェノキシプロピル)基、エチレンビス(フェノキシメチル)基、エチレンビス(フェノキシエチル)基、エチレンビス(フェノキシプロピル)基、ジメチルメチレンビス(フェノキシメチル)基、ジメチルメチレンビス(フェノキシエチル)基、ジパーフルオロメチルメチレンビス(フェノキシメチル)基、ジパーフルオロメチルメチレンビス(フェノキシエチル)基、トリメチレンビス(フェノキシメチル)基、トリメチレンビス(フェノキシエチル)基、テトラメチレンビス(フェノキシメチル)基、テトラメチレンビス(フェノキシエチル)基、ペンタメチレンビス(フェノキシメチル)基、シクロペンタンジイルビス(フェノキシメチル)基、ヘキサメチレンビス(フェノキシエチル)基、シクロヘキサンジイルビス(フェノキシメチル)基等の酸素原子、フッ素原子等のヘテロ原子を有する炭素数15〜20のアラルキレン基等が挙げられる。
【0078】
一般式[4]及び[5]におけるAとA、AとA、AとA、AとA、AとA、AとA10、AとA10とで環状構造を形成していてもよいとは、A〜A10並びにこれらのAと結合している炭素原子とともに炭素数3〜10の環状構造(5〜12員環)を形成していてもよいことを意味する。このような炭素数3〜10の環状構造(5〜12員環)の具体例としては、例えばシクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロノナン環、シクロデカン環、シクロウンデカン環、シクロドデカン環等が挙げられる。なお、上述の具体例はあくまで一例であって、ここで例示される具体例に限定されず、単環、多環、スピロ環、架橋環、これらの環に更にアルキル基等の置換基が置換したものも含まれる。
【0079】
一般式[4]で示されるエポキシド(オキシラン)の具体例としては、例えばメチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ペンチルグリシジルエーテル、ヘキシルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ナフチルグリシジルエーテル等の下記式で示されるものが挙げられる。なお、下記式で示されるエポキシド(オキシラン)は、あくまで具体例の一例であって、ここで例示される具体例に限定されない。
【0080】
【0081】
一般式[5]で示されるエポキシド(オキシラン)の具体例としては、例えば1,2-ビス(グリシジルオキシ)エタン{1,2-エチレングリコールジグリシジルエーテル}、1,3-ビス(グリシジルオキシ)プロパン{1,3-プロピレングリコールジグリシジルエーテル}、1,4-ビス(グリシジルオキシ)ブタン{1,4-ブチレングリコールジグリシジルエーテル}、1,5-ビス(グリシジルオキシ)ペンタン{1,5-ペンチレングリコールジグリシジルエーテル}、1,6-ビス(グリシジルオキシ)ヘキサン{1,6-ヘキシレングリコールジグリシジルエーテル}、ビス(4-グリシジルオキシフェニル)メタン{ビスフェノールFジグリシジルエーテル}、1,1-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)エタン{ビスフェノールEジグリシジルエーテル}、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン{ビスフェノールAジグリシジルエーテル}、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン{ビスフェノールAFジグリシジルエーテル}、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)ブタン{ビスフェノールBジグリシジルエーテル}、1,1-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)シクロヘキサン{ビスフェノールZジグリシジルエーテル}等の下記式で示されるものが挙げられる。なお、下記式で示されるエポキシド(オキシラン)は、あくまで具体例の一例であって、ここで例示される具体例に限定されない。
【0082】
【0083】
上記一般式[4]及び[5]で示されるエポキシド(オキシラン)は、市販品、あるいはこの分野で行われる一般的な方法により適宜合成したものを用いればよい。
【0084】
本発明の製造方法は、種々のエポキシド(オキシラン)に適用できるので、生成物である環状カーボネートの構造は限定されるものではないが、当該環状カーボネートの具体例としては、例えば上記一般式[4]で示されるエポキシド(オキシラン)から生成する環状カーボネートとして、下記一般式[6]で示されるもの、あるいは上記一般式[5]で示されるエポキシド(オキシラン)から生成する環状カーボネートとして、下記一般式[7]で示されるものが挙げられる。
【0085】
(式中、A、A、A及びAは上記に同じ。)
【0086】
(式中、A、A、A、A、A、A10及びTは上記に同じ。)
【0087】
一般式[6]で示される環状カーボネートの具体例としては、例えば(メトキシメチル)エチレンカーボネート、(エトキシメチル)エチレンカーボネート、(プロポキシメチル)エチレンカーボネート、(ブトキシメチル)エチレンカーボネート、(ペンチルオキシメチル)エチレンカーボネート、(ヘキシルオキシメチル)エチレンカーボネート、(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルメタクリレート、(フェニル)エチレンカーボネート、(フェノキシメチル)エチレンカーボネート、(ナフチルオキシメチル)エチレンカーボネート等の下記式で示されるものが挙げられる。なお、上下記式で示される環状カーボネートは、あくまで具体例の一例であって、ここで例示される具体例に限定されない。
【0088】
【0089】
一般式[7]で示される環状カーボネートの具体例としては、例えば1,2-エチレンジオキシビス[(メチル)エチレンカーボネート]、1,3-プロピレンジオキシビス[(メチル)エチレンカーボネート]、1,4-ブチレンジオキシビス[(メチル)エチレンカーボネート]、1,5-ペンチレンジオキシビス[(メチル)エチレンカーボネート]、1,6-ヘキシレンジオキシビス[(メチル)エチレンカーボネート]、メチレンビス[(p-フェノキシメチル)エチレンカーボネート]{ビスフェノールFジグリシジルエーテル ビスカーボネート}、1,1-エチレンビス[(p-フェノキシメチル)エチレンカーボネート]{ビスフェノールEジグリシジルエーテル ビスカーボネート}、2,2-プロピレンビス[(p-フェノキシメチル)エチレンカーボネート]{ビスフェノールAジグリシジルエーテル ビスカーボネート}、2,2-ヘキサフルオロプロピレンビス[(p-フェノキシメチル)エチレンカーボネート]{ビスフェノールAFジグリシジルエーテル ビスカーボネート}、2,2-ブチレンビス[(p-フェノキシメチル)エチレンカーボネート]{ビスフェノールBジグリシジルエーテル ビスカーボネート}、1,1-シクロヘキシレンビス[(p-フェノキシメチル)エチレンカーボネート]{ビスフェノールZジグリシジルエーテル ビスカーボネート}等の下記式で示されるものが挙げられる。なお、下記式で示される環状カーボネートは、あくまで具体例の一例であって、ここで例示される具体例に限定されない。
【0090】
【0091】
原料であるエポキシド(オキシラン)、二酸化炭素、本発明にかかるアミン化合物及びヨウ化水素の反応系内への投入順序は、特に限定されない。例えば反応系内に、エポキシド(オキシラン)、本発明にかかるアミン化合物及びヨウ化水素を順次投入し、これらが投入された反応系内に二酸化炭素ガスを吹き込む方法や、本発明にかかるアミン化合物及びヨウ化水素を反応させて、本発明にかかる触媒を得たのち、反応系内にエポキシド(オキシラン)及び当該本発明にかかる触媒を順次投入し、これらが投入された反応系内に二酸化炭素ガスを吹き込む方法等が挙げられる。
【0092】
本発明の製造方法は、以下に示す条件下で行うことが望ましい。
【0093】
本発明にかかる二酸化炭素の使用量は、実用的な量であれば特に制限されず、例えばエポキシド(オキシラン)のmol数に対して、通常0.9当量以上、好ましくは0.95当量以上、より好ましくは1.0当量以上であり、特に上限はないが、経済的理由から、20当量以下が好ましい。
【0094】
本発明にかかるアミン化合物の使用量は、エポキシド(オキシラン)1molに対して、通常0.1〜30mol%、好ましくは0.5〜20mol%である。なお、当該アミンの使用量が極めて少ない場合には、環状カーボネートの収率が低下する傾向にある。
【0095】
本発明にかかるヨウ化水素の使用量は、エポキシド(オキシラン)1molに対して、通常0.1〜30mol%、好ましくは0.5〜20mol%である。なお、当該臭化水素又はヨウ化水素の使用量が極めて少ない場合には、環状カーボネートの収率が低下する傾向にある。
【0096】
本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)の使用量は、エポキシド(オキシラン)1molに対して、通常0.1〜30mol%、好ましくは0.5〜20mol%である。尚、当該触媒(アミン化合物塩)の使用量が極めて少ない場合には、環状カーボネートの収率が低下する傾向にある。
【0097】
本発明の製造方法は、反応系内に有機溶媒を添加した有機溶媒中で行ってもよいし、有機溶媒を添加しない系で行ってもよい。有機溶媒を添加しない系で反応を行うとは、原料であるエポキシド(オキシラン)及び生成物である環状カーボネートが溶媒としての機能を兼ねている。
【0098】
上記有機溶媒の具体例としては、原料であるエポキシド(オキシラン)と二酸化炭素、並びに生成物である環状カーボネート等に悪影響を及ぼさない溶媒であればよく、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばジクロロメタン、トリクロロメタン(クロロホルム)、テトラクロロメタン(四塩化炭素)等のハロゲン系溶媒、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、例えば2-プロパノン(アセトン)、2-ブタノン(エチルメチルケトン)、4-メチル-2-ペンタノン(メチルイソブチルケトン)等のケトン系溶媒、例えば酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸s-ブチル、酢酸t-ブチル、酪酸エチル、酪酸イソアミル等のエステル系溶媒、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリジノン(N-メチルピロリドン)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(ジメチルエチレン尿素)等のアミド系溶媒、例えばイソプロパノール、t-ブタノール、2-メトキシエタノール等のアルコール系溶媒、例えばアセトニトリル等のニトリル系溶媒等が挙げられる。上述した具体例には、極性有機溶媒、非極性有機溶媒、プロトン性有機溶媒、非プロトン性有機溶媒等の多種多様の有機溶媒が含まれるが、上記有機溶媒は、本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)の有機溶媒に対する溶解度を考慮して適宜選択することが望ましい。例えば本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)として、モノ-t-ブチルアミン ヨウ化水素塩又はジシクロヘキシルアミン ヨウ化水素塩を使用する場合には、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリジノン(N-メチルピロリドン)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(ジメチルエチレン尿素)等のアミド系溶媒を選択することが好ましく、本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)として、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU) ヨウ化水素塩を使用する場合には、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸s-ブチル、酢酸t-ブチル、酪酸エチル、酪酸イソアミル等のエステル系溶媒を選択することが好ましい。なお、上述の具体例において、n-はnormal-体を表し、s-はsec-体を表し、t-はtert-体を表す。
【0099】
上記有機溶媒は、そのうちの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0100】
上記有機溶媒の使用量は、実用的な量であれば特に制限されず、例えばエポキシド(オキシラン)1mmolに対して、通常0.01〜500mL、好ましくは0.1〜100mLである。
【0101】
本発明における反応時の温度(反応温度)は、原料であるエポキシド(オキシラン)と二酸化炭素とが効率よく反応し、環状カーボネートが収率よく得られる温度に設定することが望ましい。本発明は、常温、常圧のような穏和な条件下でも収率よく環状カーボネートが得られることを特徴とするものであるから、このような望ましい反応温度のなかでも、例えば通常0〜65℃、好ましくは20〜60℃、より好ましくは40〜60℃で反応を行うことが望ましい。
【0102】
本発明における反応時の圧力は、原料であるエポキシド(オキシラン)と二酸化炭素とが効率よく反応し、環状カーボネートが収率よく得られる圧力に設定することが望ましい。本発明は、常温、常圧のような穏和な条件下でも収率よく環状カーボネートが得られることを特徴とするものであるから、このような望ましい圧力のなかでも、例えば0.09〜0.11MPaで反応を行うことが望ましい。
【0103】
上述した反応温度、圧力は、従来の製造方法では達成することが困難であった反応条件である。本発明の製造方法は、従来の製造方法で求められるような高温、高圧条件を必要としないため、従来の製造方法と比較して、温度維持に必要な熱エネルギーが少なくてよい、高強度の耐圧容器を必要としない等の工業的規模の生産に適した有利な効果を奏する。
【0104】
本発明における反応時間は、エポキシド(オキシラン)と本発明にかかるアミン化合物の種類、エポキシド(オキシラン)に対する二酸化炭素の使用量、エポキシド(オキシラン)に対する本発明にかかるアミン化合物とヨウ化水素の使用量、有機溶媒の添加の有無、その種類及びその使用量、反応温度、並びに反応時の圧力等に影響を受ける場合がある。このため、望ましい反応時間は、一概に言えるものではないが、例えば通常0.1〜120時間、好ましくは1〜72時間である。
【0105】
本発明の製造方法によって得られた環状カーボネートは、通常この分野で行われる一般的な後処理操作及び精製操作により単離することができる。単離方法の具体例としては、例えば必要に応じて、反応系内の有機溶媒を留去した後、得られた残渣について、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等を行うことにより、環状カーボネートを単離することができる。また、必要に応じて、得られた残渣について抽出操作を行い、不純物を除去した後に、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等を行うことによっても、環状カーボネートを単離できる。
【0106】
別系内で本発明にかかるアミン化合物とヨウ化水素を反応させて、本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)をあらかじめ調製する場合の本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)の調製方法について以下に示す。
【0107】
本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)の調製方法としては、主に3つの調製方法が挙げられる。具体的には、〔1〕本発明にかかるアミン化合物とヨウ化水素酸を反応させる方法、〔2〕例えば本発明にかかるアミン化合物の塩酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩等の本発明にかかるアミン化合物の塩と、例えばヨウ化ナトリウム等のアルカリ金属ヨウ化物塩とを反応させてアニオン交換させる方法、〔3〕チオ尿素誘導体とヨウ化アルキルを反応させてイソチオ尿素塩とした後、モノ又はジアミンと反応させる方法が挙げられる。
【0108】
〔1〕本発明にかかるアミン化合物とヨウ化水素酸を反応させる場合における本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)の調製は、一般的な中和反応に準じて行えばよい。調製方法の具体例としては、例えば本発明にかかるアミン化合物を含む反応系内に、当該アミン化合物に対して、ヨウ化水素換算で、通常0.9〜5.0当量、好ましくは1.0〜3.0当量のヨウ化水素酸を反応させればよい。なお、目的物である本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)は、常温で固体状態である場合が多く、また、反応系内にはヨウ化水素酸由来の水を含むことから、調製は、水と相溶性のある有機溶媒中で行うことが望ましい。
【0109】
本発明にかかるアミン化合物の具体例としては、上述したように、例えば上記一般式[1]で示されるモノアミン、上記一般式[2]で示される環状アミジン及び上記一般式[3]で示されるグアニジンから選ばれるものが挙げられる。
【0110】
ヨウ化水素酸は、例えば市販されている57%ヨウ化水素酸を適宜用いればよい。
【0111】
上述の〔1〕の調製方法において、上記水と相溶性のある有機溶媒の具体例としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、例えば2-プロパノン(アセトン)、2-ブタノン(エチルメチルケトン)等のケトン系溶媒、例えばアセトニトリル等のニトリル系溶媒等が挙げられる。また、上記有機溶媒は、そのうちの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0112】
上述の〔1〕の調製方法において、上記水と相溶性のある有機溶媒の使用量は、実用的な量であれば特に制限されず、例えばpKaが8以上の第一級乃至第三級アミン1mmolに対して、通常0.01〜500mL、好ましくは0.1〜100mLである。
【0113】
上述の〔1〕の調製方法における反応時の温度(反応温度)は、本発明にかかるアミン化合物とヨウ化水素酸とが反応する温度であれば特に制限されず、例えば通常0〜100℃、好ましくは10〜50℃である。
【0114】
上述の〔1〕の調製方法における反応時の圧力は、本発明にかかるアミン化合物とヨウ化水素酸とが反応する圧力であれば特に制限されず、例えば0.09〜0.11MPaである。
【0115】
上述の〔1〕の調製方法における反応時間は、本発明にかかるアミン化合物の種類、本発明にかかるアミン化合物に対するヨウ化水素酸の使用量、有機溶媒の種類及びその使用量、反応温度、並びに反応時の圧力等に影響を受ける場合がある。このため、望ましい反応時間は、一概に言えるものではないが、例えば通常0.1〜120時間、好ましくは1〜60時間である。
【0116】
上述の〔1〕の調製方法によって得られた本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)は、通常この分野で行われる一般的な後処理操作及び精製操作により単離することができる。単離方法の具体例としては、例えば反応系内の、水と相溶性のある有機溶媒とヨウ化水素酸由来の水を留去した後、得られた残渣を真空乾燥することにより、本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)を単離することができる。また、必要に応じて、得られた残渣について、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等を行うことによっても、本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)を単離できる。
【0117】
〔2〕本発明にかかるアミン化合物の塩と、アルカリ金属ヨウ化物塩を反応させてアニオン交換させる場合における本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)の調製は、一般的なアニオン交換反応に準じて行えばよい。調製方法の具体例としては、例えば本発明にかかるアミン化合物の塩を含む反応系内に、当該アミン化合物の塩に対して、通常0.9〜3.0当量、好ましくは0.95〜2.0当量のアルカリ金属ヨウ化物塩を反応させればよい。なお、原料である本発明にかかるアミン化合物の塩及びアルカリ金属ヨウ化物塩、並びに目的物である本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)は、常温で固体状態である場合が多いことから、調製は、有機溶媒中で行うことが望ましい。
【0118】
アルカリ金属ヨウ化物塩と反応させてアニオン交換させるために用いられる、本発明にかかるアミン化合物の塩の具体例としては、一例として、モノイソプロピルアミン 塩化水素塩、モノイソプロピルアミン 酢酸塩、モノイソプロピルアミン トリフルオロメタンスルホン酸塩、モノ-t-ブチルアミン 塩化水素塩、モノ-t-ブチルアミン 酢酸塩、モノ-t-ブチルアミン トリフルオロメタンスルホン酸塩、モノシクロヘキシルアミン 塩化水素塩、モノシクロヘキシルアミン 酢酸塩、モノシクロヘキシルアミン トリフルオロメタンスルホン酸塩、ジシクロヘキシルアミン 塩化水素塩、ジシクロヘキシルアミン 酢酸塩、ジシクロヘキシルアミン トリフルオロメタンスルホン酸塩、ベンジルジメチルアミン 塩化水素塩、ベンジルジメチルアミン 酢酸塩、ベンジルジメチルアミン トリフルオロメタンスルホン酸塩等の一般式[1]で示されるモノアミンに由来する塩化水素塩、酢酸塩又はトリフルオロメタンスルホン酸塩、例えば1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン 塩化水素塩、1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン 酢酸塩、1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン トリフルオロメタンスルホン酸塩、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン 塩化水素塩、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン 酢酸塩、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン トリフルオロメタンスルホン酸塩、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN) 塩化水素塩、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN) 酢酸塩、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN) トリフルオロメタンスルホン酸塩、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU) 塩化水素塩、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU) 酢酸塩、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU) トリフルオロメタンスルホン酸塩等の一般式[2]で示される環状アミジンに由来する塩化水素塩、酢酸塩又はトリフルオロメタンスルホン酸塩、例えばグアニジン 塩化水素塩、グアニジン 酢酸塩、グアニジン トリフルオロメタンスルホン酸塩、1-(1-n-ブチル)グアニジン 塩化水素塩、1-(1-n-ブチル)グアニジン 酢酸塩、1-(1-n-ブチル)グアニジン トリフルオロメタンスルホン酸塩、1-(1-n-ブチル)-3-メチルグアニジン 塩化水素塩、1-(1-n-ブチル)-3-メチルグアニジン 酢酸塩、1-(1-n-ブチル)-3-メチルグアニジン トリフルオロメタンスルホン酸塩、1-(1-n-ブチル)-2,3-ジメチルグアニジン 塩化水素塩、1-(1-n-ブチル)-2,3-ジメチルグアニジン 酢酸塩、1-(1-n-ブチル)-2,3-ジメチルグアニジン トリフルオロメタンスルホン酸塩、1-(1-n-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン 塩化水素塩、1-(1-n-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン 酢酸塩、1-(1-n-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン トリフルオロメタンスルホン酸塩、2-(1-n-ブチル)-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン 塩化水素塩、2-(1-n-ブチル)-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン 酢酸塩、2-(1-n-ブチル)-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン トリフルオロメタンスルホン酸塩、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン 塩化水素塩、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン 酢酸塩、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン トリフルオロメタンスルホン酸塩、1-(1-n-オクチル)グアニジン 塩化水素塩、1-(1-n-オクチル)グアニジン 酢酸塩、1-(1-n-オクチル)グアニジン トリフルオロメタンスルホン酸塩、1,1-ジシクロヘキシルグアニジン 塩化水素塩、1,1-ジシクロヘキシルグアニジン 酢酸塩、1,1-ジシクロヘキシルグアニジン トリフルオロメタンスルホン酸塩、1-ベンジルグアニジン 塩化水素塩、1-ベンジルグアニジン 酢酸塩、1-ベンジルグアニジン トリフルオロメタンスルホン酸塩、1-(2-ヒドロキシエチル)グアニジン 塩化水素塩、1-(2-ヒドロキシエチル)グアニジン 酢酸塩、1-(2-ヒドロキシエチル)グアニジン トリフルオロメタンスルホン酸塩、1-(2-メトキシエチル)グアニジン 塩化水素塩、1-(2-メトキシエチル)グアニジン 酢酸塩、1-(2-メトキシエチル)グアニジン トリフルオロメタンスルホン酸塩、1-(2-ジメチルアミノエチル)グアニジン 塩化水素塩、1-(2-ジメチルアミノエチル)グアニジン 酢酸塩、1-(2-ジメチルアミノエチル)グアニジン トリフルオロメタンスルホン酸塩、1-ベンジル-2,3,3-トリメチルグアニジン 塩化水素塩、1-ベンジル-2,3,3-トリメチルグアニジン 酢酸塩、1-ベンジル-2,3,3-トリメチルグアニジン トリフルオロメタンスルホン酸塩、1-(2-ジメチルアミノエチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン 塩化水素塩、1-(2-ジメチルアミノエチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン 酢酸塩、1-(2-ジメチルアミノエチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン トリフルオロメタンスルホン酸塩等の一般式[3]で示されるグアニジンに由来する塩化水素塩、酢酸塩又はトリフルオロメタンスルホン酸塩等が挙げられる。なお、上述の具体例で示される本発明にかかるアミン化合物の塩は、あくまで具体例の一例であって、ここで例示される具体例に限定されない。また、上述の具体例において、n-はnormal-体を表し、t-はtert-体を表す。なお、上記本発明にかかるアミン化合物の塩は、市販品、あるいはこの分野で行われる一般的な方法により適宜合成したものを用いればよい。
【0119】
アルカリ金属ヨウ化物塩の具体例としては、例えばヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム等が挙げられる。また、上記アルカリ金属ヨウ化物塩は、市販品を用いればよい。
【0120】
上述の〔2〕の調製方法において、上記有機溶媒の具体例としては、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、例えば2-プロパノン(アセトン)、2-ブタノン(エチルメチルケトン)、4-メチル-2-ペンタノン(メチルイソブチルケトン)等のケトン系溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノール、2-メトキシエタノール等のアルコール系溶媒、例えばアセトニトリル等のニトリル系溶媒等が挙げられる。なお、上述の具体例において、t-はtert-体を表す。また、上記有機溶媒は、そのうちの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0121】
上述の〔2〕の調製方法において、上記有機溶媒の使用量は、実用的な量であれば特に制限されず、例えばpKaが8以上の第一級乃至第三級アミンの塩1mmolに対して、通常0.01〜500mL、好ましくは0.1〜100mLである。
【0122】
上述の〔2〕の調製方法における反応時の温度(反応温度)は、本発明にかかるアミン化合物の塩と、アルカリ金属ヨウ化物塩とが反応する温度であれば特に制限されず、例えば通常0〜150℃、好ましくは10〜100℃である。
【0123】
上述の〔2〕の調製方法における反応時の圧力は、本発明にかかるアミン化合物の塩と、アルカリ金属ヨウ化物塩とが反応する圧力であれば特に制限されず、例えば0.09〜0.11MPaである。
【0124】
上述の〔2〕の調製方法における反応時間は、本発明にかかるアミン化合物の塩の種類、本発明にかかるアミン化合物の塩に対するアルカリ金属ヨウ化物塩の使用量、有機溶媒の種類及びその使用量、反応温度、並びに反応時の圧力等に影響を受ける場合がある。このため、望ましい反応時間は、一概に言えるものではないが、例えば通常0.1〜120時間、好ましくは1〜60時間である。
【0125】
上述の〔2〕の調製方法によって得られた本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)は、通常この分野で行われる一般的な後処理操作及び精製操作により単離することができる。単離方法の具体例としては、例えば反応系内の有機溶媒を留去した後、抽出操作を行い、次いで抽出液中の抽出溶媒を留去して得られた残渣を真空乾燥することにより、本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)を単離することができる。また、必要に応じて、得られた残渣について、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等を行うことによっても、本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)を単離できる。
【0126】
〔3〕チオ尿素誘導体とヨウ化アルキルを反応させてイソチオ尿素塩とした後、モノ又はジアミンと反応させる調製方法は、本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)のうち、一般式[3']で示される、pKaが8以上のグアニジンとヨウ化水素との塩を調製する場合に用いられる。調製は、通常この分野で行われる方法に準じて行えばよい。調製方法の具体例としては、例えばチオ尿素誘導体を含む反応系内に、チオ尿素誘導体に対して、通常0.9〜3.0当量、好ましくは0.95〜2.0当量のヨウ化アルキルを反応させてイソチオ尿素塩とした後、当該イソチオ尿素塩に対して、通常0.9〜3.0当量、好ましくは0.95〜2.0当量のモノ又はジアミンを反応させればよい。なお、中間体であるイソチオ尿素塩、並びに目的物である本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)は、常温で固体状態である場合が多いことから、調製は、有機溶媒中で行うことが望ましい。
【0127】
チオ尿素誘導体の具体例としては、例えばチオ尿素、N-メチルチオ尿素、N,N-ジメチルチオ尿素、N,N,N-トリメチルチオ尿素、N,N,N,N-テトラメチルチオ尿素等が挙げられる。なお、上述の具体例で示されるチオ尿素誘導体は、あくまで具体例の一例であって、ここで例示される具体例に限定されない。また、上記チオ尿素誘導体は、市販品を用いればよい。
【0128】
ヨウ化アルキルの具体例としては、例えばヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル等のヨウ化アルキル等が挙げられる。また、上記ヨウ化アルキルは、市販品を用いればよい。
【0129】
モノ又はジアミンの具体例としては、例えばモノ又はジn-ブチルアミン、モノ又はジn-オクチルアミン、モノ又はジシクロヘキシルアミン、モノ又はジベンジルアミン、モノ又はビス(2-ヒドロキシエチル)アミン、モノ又はビス(2-メトキシエチル)アミン、モノ又はビス(2-ジメチルアミノエチル)アミン等が挙げられる。なお、上述の具体例で示されるモノ又はジアミンは、あくまで具体例の一例であって、ここで例示される具体例に限定されない。また、上述の具体例において、n-はnormal-体を表す。なお、上記モノ又はジアミンは、市販品を用いればよい。
【0130】
上述の〔3〕の調製方法のうちの中間体であるイソチオ尿素塩を合成する反応において、有機溶媒の具体例としては、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばジクロロメタン、トリクロロメタン(クロロホルム)、テトラクロロメタン(四塩化炭素)等のハロゲン系溶媒、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノール、2-メトキシエタノール等のアルコール系溶媒、例えばアセトニトリル等のニトリル系溶媒等が挙げられる。なお、上述の具体例において、t-はtert-体を表す。また、上記有機溶媒は、そのうちの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0131】
上述の〔3〕の調製方法のうちの中間体であるイソチオ尿素塩を合成する反応において、上記有機溶媒の使用量は、実用的な量であれば特に制限されず、例えばチオ尿素誘導体1mmolに対して、通常0.01〜500mL、好ましくは0.1〜100mLである。
【0132】
上述の〔3〕の調製方法のうちの目的物である本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)を合成する反応において、有機溶媒の具体例としては、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、例えばベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばジクロロメタン、トリクロロメタン(クロロホルム)、テトラクロロメタン(四塩化炭素)等のハロゲン系溶媒、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、例えばアセトニトリル等のニトリル系溶媒等が挙げられる。なお、上述の具体例において、t-はtert-体を表す。また、上記有機溶媒は、そのうちの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0133】
上述の〔3〕の調製方法のうちの目的物である本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)を合成する反応において、上記有機溶媒の使用量は、実用的な量であれば特に制限されず、例えばイソチオ尿素塩1mmolに対して、通常0.01〜500mL、好ましくは0.1〜100mLである。
【0134】
上述の〔3〕の調製方法のうちの中間体であるイソチオ尿素塩を合成する反応における反応時の温度(反応温度)は、チオ尿素誘導体とヨウ化アルキルとが反応する温度であれば特に制限されず、例えば通常0〜100℃、好ましくは10〜80℃である。
【0135】
上述の〔3〕の調製方法のうちの目的物である本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)を合成する反応における反応時の温度(反応温度)は、イソチオ尿素塩とモノ又はジアミンとが反応する温度であれば特に制限されず、例えば通常0〜100℃、好ましくは10〜80℃である。
【0136】
上述の〔3〕の調製方法のうちの中間体であるイソチオ尿素塩を合成する反応における反応時の圧力は、チオ尿素誘導体とヨウ化アルキルとが反応する圧力であれば特に制限されず、例えば0.09〜0.11MPaである。
【0137】
上述の〔3〕の調製方法のうちの目的物である本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)を合成する反応における反応時の圧力は、イソチオ尿素塩とモノ又はジアミンとが反応する圧力であれば特に制限されず、例えば0.09〜0.11MPaである。
【0138】
上述の〔3〕の調製方法のうちの中間体であるイソチオ尿素塩を合成する反応における反応時間は、チオ尿素誘導体の種類、チオ尿素誘導体に対するヨウ化アルキルの使用量、有機溶媒の種類及びその使用量、反応温度、並びに反応時の圧力等に影響を受ける場合がある。このため、望ましい反応時間は、一概に言えるものではないが、例えば通常0.1〜120時間、好ましくは1〜60時間である。
【0139】
上述の〔3〕の調製方法のうちの目的物である本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)を合成する反応における反応時間は、イソチオ尿素塩の種類、イソチオ尿素塩に対するモノ又はジアミンの使用量、有機溶媒の種類及びその使用量、反応温度、並びに反応時の圧力等に影響を受ける場合がある。このため、望ましい反応時間は、一概に言えるものではないが、例えば通常0.1〜60時間、好ましくは1〜30時間である。
【0140】
上述の〔3〕の調製方法のうちの中間体であるイソチオ尿素塩を合成する反応によって得られたイソチオ尿素塩は、通常この分野で行われる一般的な後処理操作及び精製操作により単離することができる。単離方法の具体例としては、例えば未反応のヨウ化アルキル及び反応系内の有機溶媒を留去した後、得られた残渣を真空乾燥することにより、イソチオ尿素塩を単離することができる。また、必要に応じて、得られた残渣について、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等を行うことによっても、イソチオ尿素塩を単離できる。
【0141】
上述の〔3〕の調製方法のうちの目的物である本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)を合成する反応によって得られた本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)は、通常この分野で行われる一般的な後処理操作及び精製操作により単離することができる。単離方法の具体例としては、例えば未反応のモノ又はジアミン及び反応系内の有機溶媒を留去した後、得られた残渣を真空乾燥することにより、本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)を単離することができる。また、必要に応じて、得られた残渣について、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等を行うことによっても、本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)を単離できる。
【0142】
本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)の調製方法として、3つの調製方法について述べたが、本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)が得られる限りにおいては、その調製方法は特に限定されず、上述した製法以外の方法により調製してもよい。
【0143】
本発明においては、反応を促進させる目的で、高活性の水素原子を有する化合物を反応時に共存させておいてもよい。高活性の水素原子を有する化合物とは、原料であるエポキシド(オキシラン)の酸素原子と水素結合することが可能な、エポキシドの酸素原子と水素結合し得る水素原子を有する化合物を意味する。より具体的には、当該化合物は、分子内に、ヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基、チオカルボキシル基、1級もしくは2級アミノ基、1級もしくは2級アミド基、スルホ基、ウレイレン基、チオウレイレン基及びヒドロキシボリル基のうちの少なくとも1つの基を有するものである。
【0144】
分子内にヒドロキシル基を有する化合物の具体例としては、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、パーフルオロメタノール、パーフルオロエタノール、パーフルオロ-n-プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、パーフルオロイソプロパノール、メトキシメタノール、メトキシエタノール、エトキシメタノール、エトキシエタノール等の脂肪族アルコール、例えばフェノール、4-メチルフェノール、4-メトキシフェノール、4-ニトロフェノール、2,2'-ビフェノール、2-ヒドロキシピリジン、3-ヒドロキシピリジン等の芳香族アルコール等が挙げられる。なお、上述の具体例において、n-はnormal-体を表し、s-はsec-体を表し、t-はtert-体を表す。
【0145】
分子内にカルボキシル基を有する化合物の具体例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸等の脂肪族モノカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、例えば乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、例えばアコニット酸等の脂肪族トリカルボン酸、例えばピルビン酸等の脂肪族オキソカルボン酸、例えば安息香酸等の芳香族モノカルボン酸、例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、例えばサリチル酸、没食子酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸、例えばメリト酸等の芳香族ヘキサカルボン酸等が挙げられる。なお、本発明においては、分子内に、1つ以上のヒドロキシル基を有するカルボン酸は、カルボキシル基の数にかかわらず、ヒドロキシカルボン酸と称する。
【0146】
分子内にチオール基を有する化合物の具体例としては、例えばメタンチオール、エタンチオール、n-プロパンチオール、イソプロパンチオール、n-ブタンチオール、イソブタンチオール、s-ブタンチオール、t-ブタンチオール等の脂肪族チオール、例えばチオフェノール等の芳香族チオール等が挙げられる。なお、上述の具体例において、n-はnormal-体を表し、s-はsec-体を表し、t-はtert-体を表す。
【0147】
分子内にチオカルボキシル基を有する化合物の具体例としては、例えばチオギ酸、チオ酢酸、チオプロピオン酸、チオ酪酸、チオ吉草酸、チオカプロン酸等の脂肪族チオカルボン酸、例えばチオ安息香酸等の芳香族チオカルボン酸等が挙げられる。
【0148】
分子内に1級もしくは2級アミノ基を有する化合物の具体例としては、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エタノールアミン等の脂肪族1級アミン、例えばアニリン等の芳香族1級アミン、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン等の脂肪族2級アミン、例えばジフェニルアミン等の芳香族2級アミン等が挙げられる。
【0149】
分子内に1級もしくは2級アミド基を有する化合物の具体例としては、例えばホルムアミド、アセトアミド、プロパンアミド等の1級アミド、例えばN-メチルホルムアミド、N-エチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-エチルアセトアミド、N-メチルプロパンアミド、N-エチルプロパンアミド等の2級アミド等が挙げられる。
【0150】
分子内にスルホ基を有する化合物の具体例としては、例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の脂肪族スルホン酸、例えばベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の芳香族スルホン酸等が挙げられる。
【0151】
分子内にウレイレン基を有する化合物の具体例としては、例えば1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-3-フェニル-2-尿素等が挙げられる。
【0152】
分子内にチオウレイレン基を有する化合物の具体例としては、例えば1-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-3-フェニル-2-チオ尿素等が挙げられる。
【0153】
分子内にヒドロキシボリル基を有する化合物の具体例としては、例えばメチルボロン酸、エチルボロン酸、プロピルボロン酸、ブチルボロン酸、プロペニルボロン酸、フェニルボロン酸、2-チオフェンボロン酸等が挙げられる。
【0154】
高活性の水素原子を有する化合物は、単量体のみならず、重合体(ポリマー)も使用することができる。このような重合体は、構造中にエポキシドの酸素原子と水素結合し得る水素原子を含む構造(官能基)を有している。
【0155】
このような重合体の具体例としては、例えば4-ヒドロキシスチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド等の、分子内にビニル基とエポキシドの酸素原子と水素結合し得る水素原子を含む構造(官能基)を有する化合物に由来するモノマー単位からなる単独重合体又はこれらの共重合体、例えば4-ヒドロキシスチレンに由来するモノマー単位とスチレンに由来するモノマー単位からなる共重合体、(メタ)アクリル酸に由来するモノマー単位とメタアクリル酸エステルに由来するモノマー単位からなる共重合体等の、分子内にビニル基とエポキシドの酸素原子と水素結合し得る水素原子を含む構造(官能基)を有する化合物に由来するモノマー単位と、分子内にビニル基を有しかつエポキシドの酸素原子と水素結合し得る水素原子を含む構造(官能基)を有さない化合物に由来するモノマー単位からなる共重合体等が挙げられる。
【0156】
上記高活性の水素原子を有する化合物は、そのうちの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0157】
高活性の水素原子を有する化合物を用いると、反応が促進する理由は以下のとおりである。すなわち、高活性の水素原子を有する化合物は、エポキシド(オキシラン)の酸素原子に対して金属配位子と同様の配位作用を有するため、より効果的にエポキシド(オキシラン)のプロトン化が起こり易くなり、本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)におけるヨウ素アニオンによるエポキシド(オキシラン)の開環を進行させ易くしているものと考えられる。
【実施例】
【0158】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の例中にある%は、特記しない限り重量基準(w/w%)である。
【0159】
合成例1 イソプロピルアミン ヨウ化水素塩[1'-A]の合成
イソプロピルアミン236mg(4mmol;和光純薬工業株式会社製)の1,4-ジオキサン8mL溶液に、25℃中、55%ヨウ化水素酸水溶液1mL(ca.7.3mmol;関東化学株式会社製)を1分かけて滴下した後、更に25℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を60℃で4時間真空乾燥することにより、淡黄色結晶のイソプロピルアミン ヨウ化水素塩741mg(収率:99%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):1.57(d,6H,J=6.4Hz,CH(C),3.86(quin,1H,J=6.4Hz,C(CH),7.16(brs,3H,N).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):21.1(C(),45.9((CH).
【0160】
合成例2 t-ブチルアミン ヨウ化水素塩[1'-B]の合成
t-ブチルアミン293mg(4mmol;和光純薬工業株式会社製)の1,4-ジオキサン8mL溶液に、25℃中、55%ヨウ化水素酸水溶液1mL(ca.7.3mmol;関東化学株式会社製)を1分かけて滴下した後、更に25℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を60℃で4時間真空乾燥することにより、無色結晶のt-ブチルアミン ヨウ化水素塩805mg(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):1.27(s,9H,C(C),7.78(brs,3H,N).
13C-NMR(100MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):27.1(C(),51.2((CH).
【0161】
合成例3 シクロヘキシルアミン ヨウ化水素塩[1'-C]の合成
シクロヘキシルアミン397mg(4mmol;和光純薬工業株式会社製)の1,4-ジオキサン8mL溶液に、25℃中、55%ヨウ化水素酸水溶液1mL(ca.7.3mmol;関東化学株式会社製)を1分かけて滴下した後、更に25℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を60℃で4時間真空乾燥することにより、無色結晶のシクロヘキシルアミン ヨウ化水素塩910mg(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):1.02-1.15(m,1H,C),1.18-1.33(m,4H,C),1.54-1.63(m,1H,C),1.66-1.77(m,2H,C),1.83-1.91(m,2H,C),2.93-3.04(m,1H,NC),7.69(brs,3H,N).
13C-NMR(100MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):23.7(),24.5(),30.3(),49.3(NH).
【0162】
合成例4 ジシクロヘキシルアミン ヨウ化水素塩[1'-D]の合成
ジシクロヘキシルアミン725mg(4mmol;東京化成工業株式会社製)の1,4-ジオキサン8mL溶液に、25℃中、55%ヨウ化水素酸水溶液1mL(ca.7.3mmol;関東化学株式会社製)を1分かけて滴下した後、更に25℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を60℃で4時間真空乾燥することにより、無色結晶のジシクロヘキシルアミン ヨウ化水素塩1.24g(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):1.03-1.16(m,2H,C),1.18-1.36(m,8H,C),1.57-1.66(m,2H,C),1.72-1.81(m,4H,C),1.94-2.05(m,4H,C),3.07-3.21(m,2H,NC),8.09(brs,2H,N).
13C-NMR(100MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):23.8(),24.8(),28.9(),52.2(NH).
【0163】
合成例5 1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン ヨウ化水素塩[2'-A]の合成
1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン393mg(4mmol)の1,4-ジオキサン8mL溶液に、25℃中、55%ヨウ化水素酸水溶液1mL(ca.7.3mmol;関東化学株式会社製)を1分かけて滴下した後、更に25℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を60℃で4時間真空乾燥することにより、暗褐色油状物の1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン ヨウ化水素塩901mg(収率:>99%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):2.17(quin,2H,J=6.0Hz,CHCH),3.39(s,3H,NC),3.50-3.57(m,4H,CCH),8.35(d,1H,J=6.0Hz,N=C-N),9.22(brs,1H,N).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):18.4(CHCH),36.8(N),42.7(HN),46.2(CH),152.0(N=-N).
【0164】
合成例6 1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン ヨウ化水素塩[2'-B]の合成
1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン449mg(4mmol;和光純薬工業株式会社製)の1,4-ジオキサン8mL溶液に、25℃中、55%ヨウ化水素酸水溶液1mL(ca.7.3mmol;関東化学株式会社製)を1分かけて滴下した後、更に25℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を60℃で4時間真空乾燥することにより、淡橙色結晶の1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン ヨウ化水素塩962mg(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):2.16(quin,2H,J=6.0Hz,CHCH),2.54(s,3H,CC),3.25(s,3H,NC),3.47-3.52(m,2H,CHNC),3.56(t,2H,J=6.0Hz,HNC),9.41(brs,1H,N).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):18.4(CHCH),19.4(C),38.0(N),39.9(HN),48.4(CH),161.0(N=-N).
【0165】
合成例7 1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン ヨウ化水素塩[2'-C]の合成
1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン497mg(4mmol;東京化成工業株式会社製)の1,4-ジオキサン8mL溶液に、25℃中、55%ヨウ化水素酸水溶液1mL(ca.7.3mmol;関東化学株式会社製)を1分かけて滴下した後、更に25℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を60℃で4時間真空乾燥することにより、淡黄色結晶の1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン ヨウ化水素塩1.01g(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):2.16(quin,2H,J=6.0Hz,NCHCHNH),2.24(quin,2H,J=7.6Hz,NCHCHC),3.19(t,2H,J=7.6Hz,NCCHCHC),3.51-3.58(m,4H,NCCHNH),3.79(t,2H,J=7.6Hz,NCCHCHC),9.45(brs,1H,N).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):18.6(NCHCHNH),19.4(NCHCHC),30.7(NCHCHC),37.8(NCHCHNH),42.8(NCHCHNH),53.7(NCHCHC),164.4(N=-N).
【0166】
合成例8 1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン ヨウ化水素塩[2'-D]の合成
1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン609mg(4mmol;東京化成工業株式会社製)の1,4-ジオキサン8mL溶液に、25℃中、55%ヨウ化水素酸水溶液1mL(ca.7.3mmol;関東化学株式会社製)を1分かけて滴下した後、更に25℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を60℃で4時間真空乾燥することにより、淡黄色結晶の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン ヨウ化水素塩1.10g(収率:98%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):1.73-1.86(m,6H,NCHCHC),2.12(quin,2H,J=6.0Hz,NCHCHNH),2.98-3.04(m,2H,NCHCHCHCHC),3.46-3.52(m,2H,NCCHCHNH),3.60-3.66(m,4H,CNCHCHNH),9.48(brs,1H,N).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):19.2(NCHCHNH),23.7(NCHCHCHCHC),26.5(NCHCHCHCHC),28.7(NCHCHCHCHC),32.7(NCHCHCHCHC),37.7(NCHCHNH),48.8(NCHCHNH),54.7(NCHCHCHCHC),166.0(N=-N).
【0167】
合成例9 S-メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素塩の合成
チオ尿素7.61g(100mmol;アルドリッチ社製)の乾燥エタノール100mLの懸濁液に、室温中、ヨウ化メチル17.0g(120mmol;関東化学株式会社製)を加えた後、更に室温で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、無色粉末のS-メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素塩21.8g(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):2.58(s,3H,C),8.89(s,4H,N).
13C-NMR(100MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):13.4(),171.1(N=-N).
【0168】
合成例10 1-(1-ブチル)グアニジン ヨウ化水素塩[3'-A]の合成
n-ブチルアミン731mg(10mmol;和光純薬工業株式会社製)の乾燥テトラヒドロフラン10mL溶液に、25℃中、合成例9で得られたS-メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素塩21.8gのうちの2.18g(10mmol)を加えた後、更に25℃で6時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、淡黄色油状物の1-(1-ブチル)グアニジン ヨウ化水素塩2.44g(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):0.89(t,3H,J=7.2Hz,C),1.30(sext,2H,J=7.3Hz,CCH),1.45(quin,2H,J=7.3Hz,NCH),3.10(t,2H,J=7.2Hz,NCCH),7.38(brs,5H,N).
13C-NMR(100MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):13.5(),19.2(CH),30.5(NCH),40.5(NCH),156.6(N=-N).
【0169】
合成例11 N'-メチル-S-メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素塩の合成
N-メチルチオ尿素9.02g(100mmol;東京化成工業株式会社製)の乾燥エタノール100mLの懸濁液に、室温中、ヨウ化メチル17.0g(120mmol;関東化学株式会社製)を加えた後、更に室温で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、無色粉末のN'-メチル-S-メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素塩23.2g(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):2.61(s,3H,SC),2.91(s,3H,NC),9.11(s,3H,N).
13C-NMR(100MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):14.1(S),31.1(N),168.3(N=-N).
【0170】
合成例12 1-(1-ブチル)-3-メチルグアニジン ヨウ化水素塩[3'-B]の合成
n-ブチルアミン731mg(10mmol;和光純薬工業株式会社製)の乾燥テトラヒドロフラン10mL溶液に、25℃中、合成例11で得られたN'-メチル-S-メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素塩23.2gのうちの2.32g(10mmol)を加えた後、更に25℃で6時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、無色結晶の1-(1-ブチル)-3-メチルグアニジン ヨウ化水素塩2.57g(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):0.89(t,3H,J=7.3Hz,C),1.30(sext,2H,J=7.3Hz,CCH),1.45(quin,2H,J=7.3Hz,NCH),2.70(s,3H,NC),3.10(t,2H,J=7.3Hz,NCCH),7.24(brs,4H,N).
13C-NMR(100MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):13.5(),19.2(CH),28.0(N),30.5(NCH),40.6(NCH),156.1(N=-N).
【0171】
合成例13 N,N'-ジメチル-S-メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素塩の合成
N,N'-ジメチルチオ尿素10.4g(100mmol;東京化成工業株式会社製)の乾燥エタノール100mLの懸濁液に、室温中、ヨウ化メチル17.0g(120mmol;関東化学株式会社製)を加えた後、更に室温で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、無色粉末のN,N'-ジメチル-S-メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素塩24.6g(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):2.65(s,3H,SC),2.93(s,3H,NC),2.96(s,3H,NC),8.71(s,1H,N),8.99(s,1H,N).
13C-NMR(100MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):13.6(S),30.6(N),30.8(N),168.1(N=-N).
【0172】
合成例14 1-(1-ブチル)-2,3-ジメチルグアニジン ヨウ化水素塩[3'-C]の合成
n-ブチルアミン731mg(10mmol;和光純薬工業株式会社製)の乾燥テトラヒドロフラン10mL溶液に、25℃中、合成例13で得られたN,N'-ジメチル-S-メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素塩24.6gのうちの2.46g(10mmol)を加えた後、更に25℃で6時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、無色結晶の1-(1-ブチル)-2,3-ジメチルグアニジン ヨウ化水素塩2.71g(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):0.89(t,3H,J=7.4Hz,C),1.30(sext,2H,J=7.4Hz,CCH),1.48(quin,2H,J=7.4Hz,NCH),2.74(s,3H,NC),2.76(s,3H,NC),3.12(q,2H,J=7.2Hz,NCCH),7.28(t,1H,J=5.6Hz,CH),7.38(q,2H,J=4.4Hz,CH).
13C-NMR(100MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):13.6(),19.3(CH),28.1(N),30.5(NCH),40.7(NCH),155.2(N=-N).
【0173】
合成例15 N,N',N'-トリメチル-S-メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素塩の合成
トリメチルチオ尿素23.7g(200mmol;東京化成工業株式会社製)の乾燥エタノール200mL溶液に、室温中、ヨウ化メチル34.1g(240mmol;関東化学株式会社製)を加えた後、更に室温で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、赤色油状物のN,N',N'-トリメチル-S-メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素塩52.0g(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):2.70(s,3H,SC),3.33(d,3H,J=5.2Hz,NHC),3.54(s,6H,N(C),8.99(s,1H,N).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):17.1(S),33.5(N),43.7(N(),168.9(N=-N).
【0174】
合成例16 1-(1-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン ヨウ化水素塩[3'-D]の合成
合成例15で得られたN,N',N'-トリメチル-S-メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素塩52.0gのうちの2.60g(10mmol)の乾燥テトラヒドロフラン10mL溶液に、25℃中、n-ブチルアミン731mg(10mmol;和光純薬工業株式会社製)を加えた後、更に25℃で6時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、淡黄色油状物の1-(1-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン ヨウ化水素塩2.85g(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):0.94(t,3H,J=7.2Hz,C),1.38(sext,2H,J=7.2Hz,CCH),1.71(quin,2H,J=7.2Hz,NCH),3.04(d,3H,J=4.8Hz,NHC),3.13(s,6H,(NC),3.35(q,2H,J=6.8Hz,NCCH),6.72(brs,1H,CH),7.10(brs,1H,CH).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):13.6(),19.8(CH),31.3(N),31.8(NCH),40.6(N(),44.5(NCH),159.5(N=-N).
【0175】
合成例17 N,N,N',N'-テトラメチル-S-メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素塩の合成
テトラメチルチオ尿素6.61g(50mmol;東京化成工業株式会社製)の乾燥エタノール50mL溶液に、室温中、ヨウ化メチル8.52g(60mmol;関東化学株式会社製)を加えた後、更に室温で24時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、淡黄色結晶のN,N,N',N'-テトラメチル-S-メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素塩13.7g(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):2.75(s,3H,SC),3.46(s,12H,NC).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):18.4(S),45.2(N),176.9(N=-N).
【0176】
合成例18 2-(1-ブチル)-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン ヨウ化水素塩[3'-E]の合成
n-ブチルアミン731mg(10mmol;和光純薬工業株式会社製)の乾燥テトラヒドロフラン10mL溶液に、25℃中、合成例17で得られたN,N,N',N'-テトラメチル-S-メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素塩13.7gのうちの2.74g(10mmol)を加えた後、更に25℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、無色油状物の2-(1-ブチル)-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン ヨウ化水素塩3.01g(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):0.94(t,3H,J=7.6Hz,C),1.37(sext,2H,J=7.6Hz,CCH),1.74(quin,2H,J=7.6Hz,NCH),3.04(brs,6H,N(C),3.17(brs,6H,(NC),3.25(dq,2H,J=6.8,1.6Hz,NCCH),7.54(brs,1H,N).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):13.4(),19.7(CH),31.8(NCH),40.2(N),41.1(N),44.7(NCH),160.9(N=-N).
【0177】
合成例19 1-(1-オクチル)グアニジン ヨウ化水素塩[3'-F]の合成
n-オクチルアミン1.29g(10mmol;アルドリッチ社製)の乾燥テトラヒドロフラン10mL溶液に、25℃中、合成例9で得られたS-メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素塩21.8gのうちの2.18g(10mmol)を加えた後、更に25℃で6時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、無色油状物の1-(1-オクチル)グアニジン ヨウ化水素塩3.01g(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):0.86(t,3H,J=6.8Hz,C),1.24-1.31(m,10H,(CCH),1.46(quin,2H,J=6.8Hz,NCH),3.09(q,2H,J=6.5Hz,NCCH),6.31-7.50(br,5H,N).
13C-NMR(100MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):14.0(),22.1(CH),26.0,28.4,28.5,28.6,31.2(5×),40.8(N),156.6(N=-N).
【0178】
合成例20 1,1-ジシクロヘキシルグアニジン ヨウ化水素塩[3'-G]の合成
ジシクロヘキシルアミン1.81g(10mmol;東京化成工業株式会社製)の乾燥テトラヒドロフラン10mL溶液に、25℃中、合成例9で得られたS-メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素塩21.8gのうちの2.18g(10mmol)を加えた後、更に25℃で6時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、無色粉末の1,1-ジシクロヘキシルグアニジン ヨウ化水素塩3.51g(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):1.03-1.16(m,2H,C),1.19-1.36(m,8H,4×C),1.56-1.65(m,2H,C),1.72-1.80(m,4H,2×C),1.95-2.03(m,4H,2×C),3.10-3.20(m,2H,2×C),5.37-8.90(br,3H,N).
13C-NMR(100MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):23.8(4×(CHCH)),24.8(2×(CHCHCH)),28.9(4×(CH)),52.2(2×H),162.8(N=-N).
【0179】
合成例21 1-ベンジルグアニジン ヨウ化水素塩[3'-H]の合成
ベンジルアミン10.7g(10mmol;東京化成工業株式会社製)の乾燥テトラヒドロフラン10mL溶液に、25℃中、合成例9で得られたS-メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素塩21.8gのうちの2.18g(10mmol)を加えた後、更に25℃で6時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、無色結晶の1-ベンジルグアニジン ヨウ化水素塩2.78g(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):4.37(s,2H,C),6.54-8.12(m,5H,N),7.31(t,3H,J=7.0Hz,Ar),7.39(t,2H,J=7.0Hz,Ar).
13C-NMR(100MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):44.1(),127.3,127.6,128.7,137.1(Ar),156.7(N=-N).
【0180】
合成例22 1-(2-ヒドロキシエチル)グアニジン ヨウ化水素塩[3'-I]の合成
エタノールアミン611mg(10mmol;東京化成工業株式会社製)の乾燥テトラヒドロフラン10mL溶液に、25℃中、合成例9で得られたS-メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素塩21.8gのうちの2.18g(10mmol)を加えた後、更に25℃で6時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、淡黄色結晶の1-(2-ヒドロキシエチル)グアニジン ヨウ化水素塩2.26g(収率:98%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):3.16(t,2H,J=5.2Hz,NHC),3.42(brs,1H,O),3.48(t,2H,J=5.6Hz,HOC),6.14-7.61(br,5H,N).
13C-NMR(100MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):43.5(NH),59.2(HO),157.0(N=-N).
【0181】
合成例23 1-(2-メトキシエチル)グアニジン ヨウ化水素塩[3'-J]の合成
O-メチルエタノールアミン751mg(10mmol;アルドリッチ社製)の乾燥テトラヒドロフラン10mL溶液に、25℃中、合成例9で得られたS-メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素塩21.8gのうちの2.18g(10mmol)を加えた後、更に25℃で6時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、無色透明油状物の1-(2-メトキシエチル)グアニジン ヨウ化水素塩2.45g(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):3.29(s,3H,C),3.30(t,2H,J=4.8Hz,NHC),3.43(t,2H,J=4.8Hz,CHOC),6.62-7.75(br,5H,N).
13C-NMR(100MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):41.2(NH),58.6(O),70.4(CH),157.4(N=-N).
【0182】
合成例24 1-(N,N-ジメチルアミノエチル)グアニジン ヨウ化水素塩[3'-K]の合成
N,N-ジメチルエチレンジアミン882mg(10mmol;東京化成工業株式会社製)の乾燥テトラヒドロフラン10mL溶液に、25℃中、合成例9で得られたS-メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素塩21.8gのうちの2.18g(10mmol)を加えた後、更に25℃で6時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、淡黄色油状物の1-(N,N-ジメチルアミノエチル)グアニジン ヨウ化水素塩2.59g(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):2.18(s,6H,N(C),2.39(t,2H,J=6.0Hz,(CHNC),3.19(br,2H,CHOC),6.56-7.62(br,5H,N).
13C-NMR(100MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):38.8(NH),44.8(N(),57.2((CH),156.9(N=-N).
【0183】
合成例25 1-ベンジル-2,3,3-トリメチルグアニジン ヨウ化水素塩[3'-L]の合成
ベンジルアミン1.07g(10mmol;東京化成工業株式会社製)の乾燥テトラヒドロフラン10mL溶液に、25℃中、合成例15で得られたN,N',N'-トリメチル-S-メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素塩52.0gのうちの2.60g(10mmol)を加えた後、更に25℃で6時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、淡黄色油状物の1-ベンジル-2,3,3-トリメチルグアニジン ヨウ化水素塩3.26g(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):2.81(s,3H,NC),2.95(s,6H,N(C),4.43(s,2H,C),7.29-7.43(m,5H,Ar),7.56(s,1H,N),7.90(s,1H,N).
13C-NMR(100MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):30.7(N),39.3(N(,46.9(),127.4,127.6,128.6,137.6(Ar),159.4(N=-N).
【0184】
合成例26 1-(N,N-ジメチルアミノエチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン ヨウ化水素塩[3'-M]の合成
N,N-ジメチルエチレンジアミン882mg(10mmol;東京化成工業株式会社製)の乾燥テトラヒドロフラン10mL溶液に、25℃中、合成例15で得られたN,N',N'-トリメチル-S-メチルイソチオ尿素 ヨウ化水素塩52.0gのうちの2.60g(10mmol)を加えた後、更に25℃で6時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、黄色油状物の1-(N,N-ジメチルアミノエチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン ヨウ化水素塩3.01g(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):2.35(s,6H,N(C),2.62(t,2H,J=4.8Hz,(CHNC),2.94(d,3H,J=4.4Hz,=NC),3.13(s,6H,=CN(C),3.45(t,2H,J=4.8Hz,NHC),7.59(s,1H,N),9.96(s,1H,N).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):31.8(=N),40.5(=CN(),41.3(NH),44.9(N(),60.5((CH),160.4(N=-N).
【0185】
合成例27 7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン ヨウ化水素塩[3'-N]の合成
7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン307mg(2mmol;アルドリッチ社製)の1,4-ジオキサン4mL溶液に、25℃中、55%ヨウ化水素酸水溶液0.5mL(ca.3.7mmol;関東化学株式会社製)を1分かけて滴下した後、更に25℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を60℃で4時間真空乾燥することにより、暗褐色結晶の7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン ヨウ化水素塩561mg(収率:>99%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):2.07(quin,2H,J=6.0Hz,NCHCHNCH),2.15(quin,2H,J=6.0Hz,HNCHCHN),3.26(s,3H,NCH),3.41-3.50(m,6H,CNCCHNCH),3.51-3.56(m,2H,HNCCHCHN),7.14(brs,1H,N).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):20.5(NCHCHNCH),21.0(HNCHCHN),38.6(N),39.7(HNCHCHN),47.2(HNCHCHN),48.0(NCHCHNCH),48.8(NCHCHNCH),150.8(N=-N).
【0186】
合成例28 グアニジン ヨウ化水素塩[3'-O]の合成
グアニジン塩酸塩1.91g(20mmol;和光純薬工業株式会社製)のメタノール4mLとアセトン6mLの混合溶液に、ヨウ化ナトリウム3.00g(20mmol;関東化学株式会社製)のメタノール4mLとアセトン6mLの混合溶液を加えた後、更に70℃で12時間加熱還流して反応させた。反応終了後、冷却した反応液をろ過し、塩化ナトリウム残渣をアセトンで洗浄した。洗浄液とろ液を合わせ、合わせた溶液を濃縮し溶媒を留去後、濃縮残渣をアセトンで抽出し不溶物を除去した。当該アセトン溶液を濃縮し溶媒を留去することで得られた残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、無色結晶のグアニジン ヨウ化水素塩3.74g(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):6.94(s,6H,3NC),Cyclohexane as standard of integral intensity:1.40ppm(s,12H,6C).
13C-NMR(100MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):157.8(N=-N).
【0187】
比較合成例1 アニリン ヨウ化水素塩[10'-A]の合成
アニリン373mg(4mmol;アルドリッチ社製)の1,4-ジオキサン8mL溶液に、25℃中、55%ヨウ化水素酸水溶液1mL(ca.7.3mmol;関東化学株式会社製)を1分かけて滴下した後、更に25℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を40℃で4時間真空乾燥することにより、淡黄色結晶のアニリン ヨウ化水素塩885mg(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):7.38(d,2H,J=7.2Hz,Ar),7.44(t,1H,J=7.2Hz,Ar),7.54(t,1H,J=7.2Hz,Ar),9.76(brs,2H,N).
13C-NMR(100MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):123.1(Ar),128.2(Ar),129.9(Ar),131.6(Ar).
【0188】
比較合成例2 ジシクロヘキシルアミン 塩化水素塩[10'-B]の合成
ジシクロヘキシルアミン725mg(4mmol;東京化成工業株式会社製)の1,4-ジオキサン8mL溶液に、25℃中、35%塩化水素酸水溶液1mL(ca.12mmol;和光純薬工業株式会社製)を1分かけて滴下した後、更に25℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を60℃で4時間真空乾燥することにより、無色結晶のジシクロヘキシルアミン 塩化水素塩854mg(収率:98%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDOD,25℃)δ(ppm):1.16-1.45(m,10H,C),1.68-1.76(m,2H,C),1.81-1.92(m,4H,C),2.04-2.15(m,4H,C),3.15-3.24(m,2H,NC).
13C-NMR(100MHz,CDOD,25℃)δ(ppm):25.5(),26.1(),30.5(),54.5(NH).
【0189】
比較合成例3 ジシクロヘキシルアミン 臭化水素塩[10'-C]の合成
ジシクロヘキシルアミン725mg(4mmol;東京化成工業株式会社製)の1,4-ジオキサン8mL溶液に、25℃中、47%臭化水素酸水溶液1mL(ca.8.8mmol;和光純薬工業株式会社製)を1分かけて滴下した後、更に25℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を60℃で4時間真空乾燥することにより、無色結晶のジシクロヘキシルアミン 臭化水素塩1.05g(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,80℃)δ(ppm):1.04-1.18(m,2H,C),1.21-1.47(m,8H,C),1.57-1.66(m,2H,C),1.72-1.81(m,4H,C),1.99-2.08(m,4H,C),3.06-3.18(m,2H,NC),8.32(brs,2H,N).
13C-NMR(100MHz,DMSO-d,80℃)δ(ppm):23.5(),24.4(),28.4(),51.9(NH),52.8(NH).
【0190】
比較合成例4 ヨウ化 N,N-ジメチルジシクロヘキシルアンモニウム[10'-D]の合成
N-メチルジシクロヘキシルアミン781mg(4mmol;東京化成工業株式会社製)の乾燥ジクロロメタン8mL溶液に、25℃中、ヨウ化メチル1.14g(8mmol;関東化学株式会社製)を1分かけて滴下した後、更に25℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を60℃で4時間真空乾燥することにより、無色結晶のヨウ化 N,N-ジメチルジシクロヘキシルアンモニウム1.36g(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):1.16-1.29(m,2H,C),1.44-1.77(m,10H,C),1.97-2.05(m,4H,C),2.22-2.30(m,4H,C),3.09(s,6H,C),3.63-3.71(m,2H,NC).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):24.6(),25.2(),26.4(),44.8(),70.6(NH).
【0191】
比較合成例5 ピリジン ヨウ化水素塩[10'-E]の合成
ピリジン316mg(4mmol;関東化学株式会社製)の1,4-ジオキサン8mL溶液に、25℃中、55%ヨウ化水素酸水溶液1mL(ca.7.3mmol;関東化学株式会社製)を1分かけて滴下した後、更に25℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を40℃で4時間真空乾燥することにより、無色結晶のピリジン ヨウ化水素塩828mg(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):7.10(brs,1H,N),8.11(dd,2H,J=7.6,6.4Hz,Ar),8.65(t,1H,J=7.6Hz,Ar),8.97(dd,2H,J=6.4,1.6Hz,Ar).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):127.3(Ar),142.1(Ar),146.5(Ar).
【0192】
比較合成例6 1-メチルイミダゾール ヨウ化水素塩[20'-A]の合成
1-メチルイミダゾール324mg(4mmol;東京化成工業株式会社製)の1,4-ジオキサン8mL溶液に、25℃中、55%ヨウ化水素酸水溶液1mL(ca.7.3mmol;関東化学株式会社製)を1分かけて滴下した後、更に25℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を40℃で4時間真空乾燥することにより、光沢黒色結晶の1-メチルイミダゾール ヨウ化水素塩842mg(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):3.88(s,3H,NC),7.69(brs,1H,C),7.72(brs,1H,C),9.08(s,1H,NCN).
13C-NMR(100MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):35.5(N),119.7(HNHCH),123.1(CHHCH),135.8(NHN).
【0193】
比較合成例7 N,N-ジメチル-N'-オクチルアセトアミジン ヨウ化水素塩[20'-B]の合成
N,N-ジメチル-N'-オクチルアセトアミジン793mg(4mmol)の1,4-ジオキサン8mL溶液に、25℃中、55%ヨウ化水素酸水溶液1mL(ca.7.3mmol;関東化学株式会社製)を1分かけて滴下した後、更に25℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を60℃で4時間真空乾燥することにより、薄茶色結晶のN,N-ジメチル-N'-オクチルアセトアミジン ヨウ化水素塩1.28g(収率:98%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):0.88(t,3H,J=7.2Hz,CH),1.22-1.39(m,10H,CCH),1.70(quin,2H,J=7.2Hz,HNCH),2.39(s,3H,CC),3.36(s,3H,NC),3.46(s,3H,NC),3.48-3.56(m,2H,HNCCH),8.43(brs,1H,N).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):13.9(C),15.8(CH),22.4(CH),26.5(HNCHCH),29.0(CHCHCH),30.2(HNCHCHCH),31.6(HNCH),42.2(CHCH),42.8(N,(),44.7(HN),163.0(N=-N).
【0194】
比較合成例8 1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン 塩化水素塩[20'-C]の合成
1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン393mg(4mmol)の1,4-ジオキサン8mL溶液に、25℃中、35%塩化水素酸水溶液1mL(ca.12mmol;和光純薬工業株式会社製)を1分かけて滴下した後、更に25℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を60℃で4時間真空乾燥することにより、無色結晶の1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン 塩化水素塩541mg(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):2.12(quin,2H,J=6.0Hz,CHCH),3.38(s,3H,NC),3.43-3.53(m,4H,CCH),8.48(d,1H,J=6.0Hz,N=C-N),10.6(brs,1H,N).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):17.9(CHCH),36.1(N),41.5(HN),45.1(CH),151.8(N=-N).
【0195】
比較合成例9 1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン 臭化水素塩[20'-D]の合成
1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン393mg(4mmol)の1,4-ジオキサン8mL溶液に、25℃中、47%臭化水素酸水溶液1mL(ca.8.8mmol;和光純薬工業株式会社製)を1分かけて滴下した後、更に25℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を60℃で4時間真空乾燥することにより、淡黄色油状物の1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン 臭化水素塩721mg(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):2.16(quin,2H,J=6.0Hz,CHCH),3.41(s,3H,NC),3.47-3.53(m,2H,NHCHCHNCH),3.55(t,2H,J=6.0Hz,NHCCHCHNCH),8.42(d,1H,J=6.0Hz,N=C-N),9.80(brs,1H,N).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):17.8(CHCH),36.1(N),41.7(HN),45.3(CH),151.4(N=-N).
【0196】
比較合成例10 1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン トリフルオロメタンスルホン酸塩[20'-E]の合成
1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン196mg(2mmol)の乾燥ジクロロメタン4mL溶液に、25℃中、トリフルオロメタンスルホン酸300mg(2mmol;東京化成工業株式会社製)の乾燥ジクロロメタン6mL溶液を10分かけて滴下した後、更に25℃で6時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、無色固体の1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン トリフルオロメタンスルホン酸塩491mg(収率:99%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):1.92(quin,2H,J=6.0Hz,CHCH),3.13(s,3H,NC),3.23(t,2H,J=6.0Hz,NHCHCHNCH),3.33(t,2H,J=6.0Hz,NHCCHCHNCH),3.01-3.53(brs,1H,N),8.11(s,1H,N=C-N).
13C-NMR(100MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):18.0(CHCH),36.2(N),41.1(HN),44.9(CH),115.9,119.1,122.3,125.5(),152.1(N=-N).
【0197】
比較合成例11 1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン 塩化水素塩[20'-F]の合成
1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン609mg(4mmol;東京化成工業株式会社製)の1,4-ジオキサン8mL溶液に、25℃中、35%塩化水素酸水溶液1mL(ca.12mmol;和光純薬工業株式会社製)を1分かけて滴下した後、更に25℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を60℃で4時間真空乾燥することにより、無色結晶の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン 塩化水素塩757mg(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):1.68-1.83(m,6H,NCHCHC),2.06(quin,2H,J=4.8Hz,NCHCHNH),2.96-3.03(m,2H,NCHCHCHCHC),3.43-3.49(m,2H,NCCHCHNH),3.51-3.59(m,4H,CNCHCHNH),11.2(brs,1H,N).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):19.5(NCHCHNH),24.0(NCHCHCHCHC),26.8(NCHCHCHCHC),28.9(NCHCHCHCHC),32.2(NCHCHCHCHC),37.9(NCHCHNH),48.7(NCHCHNH),54.5(NCHCHCHCHC),166.2(N=-N).
【0198】
比較合成例12 1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン 臭化水素塩[20'-G]の合成
1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン609mg(4mmol;東京化成工業株式会社製)の1,4-ジオキサン8mL溶液に、25℃中、47%臭化水素酸水溶液1mL(ca.8.8mmol;;和光純薬工業株式会社製)を1分かけて滴下した後、更に25℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を60℃で4時間真空乾燥することにより、無色結晶の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン 臭化水素塩887mg(収率:95%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):1.70-1.84(m,6H,NCHCHC),2.09(quin,2H,J=5.6Hz,NCHCHNH),2.99-3.06(m,2H,NCHCHCHCHC),3.45-3.50(m,2H,NCCHCHNH),3.54-3.62(m,4H,CNCHCHNH),10.5(brs,1H,N).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):19.4(NCHCHNH),23.8(NCHCHCHCHC),26.7(NCHCHCHCHC),28.9(NCHCHCHCHC),32.3(NCHCHCHCHC),37.8(NCHCHNH),48.8(NCHCHNH),54.6(NCHCHCHCHC),166.1(N=-N).
【0199】
比較合成例13 1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン 酢酸塩[20'-H]の合成
1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン609mg(4mmol;東京化成工業株式会社製)の乾燥ジクロロメタン20mL溶液に、25℃中、酢酸240μL(4.2mmol;和光純薬工業株式会社製)を滴下した後、更に25℃で2時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を60℃で4時間真空乾燥することにより、無色結晶の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン 酢酸塩851mg(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):1.67-1.81(m,6H,NCHCHC),1.98(s,3H,OCOC),2.04(quin,2H,J=6.0Hz,NCHCHNH),2.83-2.88(m,2H,NCHCHCHCHC),3.43(t,2H,J=5.6Hz,NCCHCHNH),3.49-3.56(m,4H,CNCHCHNH).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):19.0(NCHCHNH),23.4,23.5(NCHCHCHCHC,OCO),26.3(NCHCHCHCHC),28.4(NCHCHCHCHC),31.3(NCHCHCHCHC),37.4(NCHCHNH),47.9(NCHCHNH),53.5(NCHCHCHCHC),165.3(N=-N),176.4(C=O).
【0200】
比較合成例14 1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン トリフルオロメタンスルホン酸塩[20'-I]の合成
1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン305mg(2mmol;東京化成工業株式会社製)の乾燥ジクロロメタン4mL溶液に、25℃中、トリフルオロメタンスルホン酸300mg(2mmol;東京化成工業株式会社製)の乾燥ジクロロメタン6mL溶液を10分かけて滴下した後、更に25℃で6時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、無色シロップ状の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン トリフルオロメタンスルホン酸塩559mg(収率:92%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):1.66-1.87(m,6H,NCHCHC),2.06(quin,2H,J=6.0Hz,NCHCHNH),2.65-2.81(m,2H,NCHCHCHCHC),3.39(t,2H,J=6.0Hz,NCCHCHNH),3.49-3.70(m,4H,CNCHCHNH).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):19.2(NCHCHNH),23.6(NCHCHCHCHC),26.3(NCHCHCHCHC),28.7(NCHCHCHCHC),32.7(NCHCHCHCHC),38.2(NCHCHNH),48.5(NCHCHNH),54.4(NCHCHCHCHC),115.6,118.8,122.0,125.1(),166.0(N=-N).
【0201】
比較合成例15 2-(1-ブチル)-1,1,3,3-テトラメチルグアニジンの合成
合成例18と同様の方法で得た2-(1-ブチル)-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン ヨウ化水素塩1.50g(5mmol)に、25℃中、40%水酸化ナトリウム水溶液5mL及びジクロロメタン10mLを加えた後、25℃で10分間激しく攪拌して反応させた。反応終了後、反応液を有機層と水層に分液し、次いで水層をジクロロメタン10mLで2回抽出、分液した際の有機層と抽出した際の有機層を合わせ、合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後の有機層を濃縮し溶媒を留去することで得られた残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、無色液体の2-(1-ブチル)-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン853mg(収率:>99%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):0.90(t,3H,J=7.2Hz,C),1.34(sext,2H,J=7.2Hz,CCH),1.50(quin,2H,J=7.6Hz,NCH),2.64(s,6H,N(C),2.74(s,3H,N(C),3.25(t,2H,J=6.8Hz,NCCH).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):14.0(),20.5(CH),35.0(NCH),38.8(N),39.6(N),49.3(NCH),159.9(N=-N).
【0202】
比較合成例16 1-(1-ブチル)-1,2,2,3,3-ペンタメチルグアニジン ヨウ化物塩[30'-A]の合成
比較合成例15で得られた2-(1-ブチル)-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン853mgのうちの171mg(1mmol)の乾燥ジクロロメタン2mL溶液に、25℃中、ヨウ化メチル284mg(2mmol;関東化学株式会社製)を加えた後、更に25℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣にジエチルエーテルを加えて結晶を析出させた。次いで再度溶媒を留去することで得られた残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、淡黄色結晶の1-(1-ブチル)-1,2,2,3,3-ペンタメチルグアニジン ヨウ化物塩314mg(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):0.95(t,3H,J=7.2Hz,C),1.27-1.43(m,2H,CCH),1.51-1.74(m,2H,NCH),3.06(s,6H,NC),3.10(brs,6H,NC),3.15(brs,3H,NC),3.21-3.29(m,2H,NCCH).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):13.6(),19.8(CH),29.5(NCH),39.0(N),40.8(N),41.1(N),41.5(N),52.6(NCH),163.2(N=-N).
【0203】
比較合成例17 1-(1-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジンの合成
合成例16と同様の方法で得た1-(1-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン ヨウ化水素塩1.43g(5mmol)に、25℃中、40%水酸化ナトリウム水溶液5mL及びジクロロメタン10mLを加えた後、25℃で10分間激しく攪拌して反応させた。反応終了後、反応液を有機層と水層に分液し、次いで水層をジクロロメタン10mLで2回抽出、分液した際の有機層と抽出した際の有機層を合わせ、合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後の有機層を濃縮し溶媒を留去することで得られた残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、無色液体の1-(1-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン782mg(収率:>99%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):0.93(t,3H,J=7.2Hz,C),1.36(sext,2H,J=7.2Hz,CCH),1.50(quin,2H,J=7.6Hz,NCH),2.68(s,6H,N(C),2.83(s,3H,NC),3.05(t,2H,J=7.2Hz,NCCH),7.30(s,1H,N).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):13.7(),20.0(CH),33.5(NCH),39.4(N),45.0(NCH),159.6(N=-N).
【0204】
比較合成例18 1-(1-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン 塩化水素塩[30'-B]の合成
比較合成例17で得られた1-(1-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン782mgのうちの315mg(2mmol)の1,4-ジオキサン4mL溶液に、25℃中、35%塩化水素酸水溶液1mL(ca.12mmol;和光純薬工業株式会社製)を10分かけて滴下した後、更に25℃で12時間攪拌して反応させた。反応終了後、溶媒を留去することで得られた残渣をジエチルエーテルで洗浄し、当該残渣を40℃で12時間真空乾燥することにより、無色油状物の1-(1-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン 塩化水素塩389mg(収率:100%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):0.92(t,3H,J=7.2Hz,C),1.36(sext,2H,J=7.2Hz,CCH),1.68(quin,2H,J=7.6Hz,NCH),3.00(d,3H,J=4.4Hz,NHC),3.07(s,6H,N(C),3.24-3.32(m,2H,NCCH),7.87(brs,1H,N),8.17(brs,1H,N).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):13.5(),19.8(CH),31.0(N),31.7(NCH),39.9(N(),44.4(NCH),159.8(N=-N).
【0205】
比較合成例19 1-(1-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン トリフルオロメタンスルホン酸塩[30'-C]の合成
比較合成例17で得られた1-(1-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン782mgのうちの315mg(2mmol)の乾燥ジエチルエーテル4mL溶液に、0℃中、トリフルオロメタンスルホン酸300mg(2mmol;東京化成工業株式会社製)を10分かけて滴下した後、更に25℃で6時間攪拌して反応させた。反応終了後、反応液をイオン液体層と有機層(ジエチルエーテル層)に分液し、次いでイオン液体層をジエチルエーテルで洗浄、洗浄後のイオン液体層を40℃で12時間真空乾燥することにより、無色油状物の1-(1-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン トリフルオロメタンスルホン酸塩598mg(収率:97%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):0.92(t,3H,J=7.2Hz,C),1.35(sext,2H,J=7.2Hz,CCH),1.61(quin,2H,J=7.2Hz,NCH),2.95(d,3H,J=4.4Hz,NHC),3.00(s,6H,N(C),3.22(q,2H,J=6.8Hz,NCCH),6.48(brs,1H,N),6.74(brs,1H,N).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):13.5(),19.7(CH),30.8(N),31.5(NCH),39.2(N(),44.4(NCH),118.8(),121.9(),160.0(N=-N).
【0206】
実施例1〜6、並びに比較例1〜6 種々のモノアミン触媒を用いた環状カーボネートの合成
種々のモノアミン触媒0.05mmolの有機溶媒0.2mL溶液(又は懸濁液)に、25℃中、フェニルグリシジルエーテル150mg(1mmol;和光純薬工業株式会社製)を加えた後、二酸化炭素ガスを充填した風船で反応系を密閉して二酸化炭素ガス雰囲気下(0.1MPa)とし、同雰囲気下、25℃で24時間攪拌して反応させた。次いで反応液を少量抜き取った後、抜き取った反応液を重クロロホルムで希釈し、重クロロホルムに含まれるテトラメチルシランを基準として反応液を分析し、生成した(フェノキシメチル)エチレンカーボネートの収率を算出した。分析の結果、副生成物はほとんど確認されず(5%以下)、生成したカーボネート以外は未反応の原料であった。これらの結果を表1に示す。なお、表中、モノアミン触媒における[1'-A]はイソプロピルアミン ヨウ化水素塩を表し、[1'-B]はt-ブチルアミン ヨウ化水素塩を表し、[1'-C]はシクロヘキシルアミン ヨウ化水素塩を表し、[1'-D]はジシクロヘキシルアミン ヨウ化水素塩を表し、[10'-A]はアニリン ヨウ化水素塩を表し、[10'-B]はジシクロヘキシルアミン 塩化水素塩を表し、[10'-C]はジシクロヘキシルアミン 臭化水素塩を表し、[10'-D]はヨウ化 N,N-ジメチルジシクロヘキシルアンモニウムを表し、TBAIはヨウ化 テトラn-ブチルアンモニウム表す。また、表中、有機溶媒におけるNMPは1-メチル-2-ピロリジノン(N-メチルピロリドン)を表し、DMAcはN,N-ジメチルアセトアミドを表し、DMFはN,N-ジメチルホルムアミドを表す。なお、上述の実施例において、n-はnormal-体を表し、t-はtert-体を表す。
【0207】
【表1】
【0208】
表1の結果から明らかなように、種々のモノアミン塩(モノアミン触媒)を用いて反応を行ったところ、モノアミン触媒[1'-A]〜[1'-D]のなかでは、ジシクロヘキシルアミン ヨウ化水素塩[1'-D]を用いた場合に、副生成物がほとんど確認されずに、最も高い収率で(フェノキシメチル)エチレンカーボネートを得た(実施例4)。これは、アルキル基の嵩高さが小さくなるにつれて収率が減少していることから(実施例1〜4)、嵩高いジシクロヘキシル基が副反応を抑制し、かつヨウ素イオンの脱離能も高めているためと予想される。一方で、アニリン ヨウ化水素塩[10'-A]を用いた場合には、全く反応が進行しなかった(比較例1)。アニリンは嵩高いアミンの1つであるのにも関わらず、反応が全く進行しなかったのは、アミンの塩基性度(アニリンのpKa=4.6)が反応に影響しているものと予想される。すなわち、アミンとしての塩基性をほとんど持たないアミンのヨウ化水素塩では、反応が進行しないものと考えられる。また、ジシクロヘキシルアミン 塩化水素塩[10'-B]及びジシクロヘキシルアミン 臭化水素塩[10'-C]を用いた場合には、ほとんど反応が進行しなかった(比較例2及び3)。嵩高いジシクロヘキシルアミンを用いているのにも関わらす、反応がほとんど進行しなかったのは、モノアミン触媒のカウンターアニオンがヨウ素アニオンでなかったことが影響しているものと予想される。このように、常温、常圧条件下でのカーボネート反応においては、多種多様なアニオン種のなかでも、ヨウ素アニオンが大きな効果を有し、モノアミン触媒のカウンターアニオンは、ヨウ素アニオンであることが重要であることが判った。更に、プロトン源を全く持たないヨウ化 N,N-ジメチルジシクロヘキシルアンモニウム[10'-D]及びヨウ化 テトラn-ブチルアンモニウムを用いた場合には、ほとんど反応が進行しなかった(比較例4及び5)。このように、常温、常圧条件下で収率よく環状カーボネートを得るには、モノアミン触媒は、少なくとも1つ以上のプロトン源が必要であることが判った。更にまた、置換基を持たないヨウ化アンモニウムでは、ほとんど反応が進行しなかった(比較例6)。このように、適度な塩基性度と嵩高いアミンのヨウ化水素塩が、常温、常圧等の穏和な条件下で環状カーボネートを製造するための効果的な触媒であることが判った。
【0209】
実施例7〜10、並びに比較例7〜11 種々のアミジン触媒又は芳香族複素環アミン触媒を用いた環状カーボネートの合成
種々のアミジン触媒又は芳香族複素環アミン触媒0.05mmolの有機溶媒0.2mL溶液(又は懸濁液)に、25℃中、フェニルグリシジルエーテル150mg(1mmol;和光純薬工業株式会社製)を加えた後、二酸化炭素ガスを充填した風船で反応系を密閉して二酸化炭素ガス雰囲気下(0.1MPa)とし、同雰囲気下、25℃で24時間攪拌して反応させた。次いで反応液を少量抜き取った後、抜き取った反応液を重クロロホルムで希釈し、重クロロホルムに含まれるテトラメチルシランを基準として反応液を分析し、生成した(フェノキシメチル)エチレンカーボネートの収率を算出した。分析の結果、副生成物はほとんど確認されず(5%以下)、生成したカーボネート以外は未反応の原料であった。これらの結果を表2に示す。なお、表中、アミジン触媒又は芳香族複素環アミン触媒における[2'-A]は1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン ヨウ化水素塩を表し、[2'-B]は1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン ヨウ化水素塩を表し、[2'-C]は1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン ヨウ化水素塩を表し、[2'-D]は1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン ヨウ化水素塩を表し、[10'-E]はピリジン ヨウ化水素塩を表し、[20'-A]は1-メチルイミダゾール ヨウ化水素塩を表し、[20'-B]はN,N-ジメチル-N'-オクチルアセトアミジン ヨウ化水素塩を表す。また、表中、有機溶媒におけるMTHFは2-メチルテトラヒドロフランを表し、NMPは1-メチル-2-ピロリジノン(N-メチルピロリドン)を表し、THFはテトラヒドロフランを表す。
【0210】
【表2】
【0211】
表2の結果から明らかなように、種々のアミジン又は芳香族複素環アミンのヨウ化水素塩(アミジン触媒又は芳香族複素環アミン触媒)を用いて反応を行ったところ、極限構造を有する環状のアミジン触媒を用いた場合に、極限構造を有さないモノアミン触媒を用いた場合(実施例1〜6)よりも、高収率で(フェノキシメチル)エチレンカーボネートが得られた(実施例7〜10)。特に1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン ヨウ化水素塩[2'-C]又は1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン ヨウ化水素塩[2'-D]を用いた場合には、常温、常圧条件下で定量的に反応した(実施例9及び10)。一方、芳香族複素環アミン塩であるピリジン ヨウ化水素塩や、芳香族複素環アミジン塩である1-メチルイミダゾール ヨウ化水素塩を用いた場合には、ほとんど反応が進行しなかった(比較例7及び8)。これは、比較例1でも述べたように、アミンの塩基性度が反応に影響し、塩基性に乏しいアミン(ピリジンのpKa=5.2、1-メチルイミダゾールのpKa=7.4)は、ほとんど触媒能がないことが窺える。また、鎖状のアミジンであるN,N-ジメチル-N'-オクチルアセトアミジン ヨウ化水素塩を用いた場合には、常温、常圧条件下では高収率で反応を進行させることができなかった(比較例9)。このように、常温、常圧条件下で収率よく環状カーボネートを得るには、アミジン触媒は、環状構造であることが重要であることが判った。更に、ヨウ化水素のみを用いた場合又はヨウ素のみを用いた場合には、全く反応が進行しないことを確認した(比較例10及び11)。このように、常温、常圧条件下でのカーボネート反応においては、pKaが8以上のアミンを用いることが必要であり、特にpKaが10以上のアミンを用いることが望ましい。その条件を満たすもののなかでも、環状のアミジン構造を有するヨウ化水素塩が非常に有効であることを明らかにした。
【0212】
実施例11〜14、並びに比較例12〜21 カーボネート反応における環状アミジン触媒のアニオン効果
種々の環状アミジン触媒0.05mmolの有機溶媒0.2mL溶液(又は懸濁液)に、25℃中、フェニルグリシジルエーテル150mg(1mmol;和光純薬工業株式会社製)を加えた後、二酸化炭素ガスを充填した風船で反応系を密閉して二酸化炭素ガス雰囲気下(0.1MPa)とし、同雰囲気下、25℃で24時間攪拌して反応させた。次いで反応液を少量抜き取った後、抜き取った反応液を重クロロホルムで希釈し、重クロロホルムに含まれるテトラメチルシランを基準として反応液を分析し、生成した(フェノキシメチル)エチレンカーボネートの収率を算出した。分析の結果、副生成物はほとんど確認されず(5%以下)、生成したカーボネート以外は未反応の原料であった。これらの結果を表3に示す。なお、表中、環状アミジン触媒における[2'-A]は1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン ヨウ化水素塩を表し、[2'-D]は1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン ヨウ化水素塩を表し、[20'-C]は1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン 塩化水素塩を表し、[20'-D]は1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン 臭化水素塩を表し、[20'-E]は1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン トリフルオロメタンスルホン酸塩を表し、[20'-F]は1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン 塩化水素塩を表し、[20'-G]は1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン 臭化水素塩を表し、[20'-H]は1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン 酢酸塩を表し、[20'-I]は1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン トリフルオロメタンスルホン酸塩を表す。また、表中、有機溶媒におけるNMPは1-メチル-2-ピロリジノン(N-メチルピロリドン)を表し、MTHFは2-メチルテトラヒドロフランを表す。
【0213】
【表3】
【0214】
表2において、代表的な環状アミジンである1-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジンのヨウ化水素塩[2'-A]と、表2において最も収率の高い1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン ヨウ化水素塩[2'-D]について、アニオン部位の異なる誘導体を合成し、アニオン部位のカーボネート反応への影響を検討した。表3の結果から明らかなように、アニオン部位をヨウ素アニオンから塩素アニオン、臭素アニオン、トリフルオロメタンスルホネートアニオン(トリフラートアニオン)又はアセテートアニオンに代えた環状アミジン触媒では反応性が著しく低下し、溶媒として、2-メチルテトラヒドロフラン、1-メチル-2-ピロリジノン(N-メチルピロリドン)のいずれを用いた場合でも、目的とする環状カーボネートはほとんど得られなかった(比較例12〜21)。このように、常温、常圧条件下でのカーボネート反応においては、多種多様なアニオン種のなかでも、ヨウ素アニオンが大きな効果を有することを明らかにした。
【0215】
実施例15〜27 カーボネート反応における環状アミジン触媒の溶媒効果
表4に示す量の1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン ヨウ化水素塩の有機溶媒0.2mL溶液(又は懸濁液)に、25℃中、フェニルグリシジルエーテル150mg(1mmol;和光純薬工業株式会社製)を加えた後、二酸化炭素ガスを充填した風船で反応系を密閉して二酸化炭素ガス雰囲気下(0.1MPa)とし、同雰囲気下、25℃で24時間攪拌して反応させた。次いで反応液を少量抜き取った後、抜き取った反応液を重クロロホルムで希釈し、重クロロホルムに含まれるテトラメチルシランを基準として反応液を分析し、生成した(フェノキシメチル)エチレンカーボネートの収率を算出した。分析の結果、副生成物はほとんど確認されず(5%以下)、生成したカーボネート以外は未反応の原料であった。これらの結果を表4に示す。なお、表中、有機溶媒におけるMTHFは2-メチルテトラヒドロフランを表し、NMPは1-メチル-2-ピロリジノン(N-メチルピロリドン)を表し、THFはテトラヒドロフランを表し、CPMEはシクロペンチルメチルエーテルを表す。
【0216】
【表4】
【0217】
表4の結果から明らかなように、例えばトルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばシクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、例えば2-プロパノン(アセトン)等のケトン系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、1-メチル-2-ピロリジノン(N-メチルピロリドン)等のアミド系溶媒、例えばイソプロパノール、t-ブタノール、2-メトキシエタノール等のアルコール系溶媒等の種々の有機溶媒中で反応を行っても、収率よく反応が進行することが判った。特に芳香族炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒では、定量的に反応が進行することが判った。
【0218】
実施例28〜36 アミジン触媒[2'-D]を用いた種々のエポキシド(オキシラン)のカーボネート反応
1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン ヨウ化水素塩14.0mg(0.05mmol)の有機溶媒0.2mL溶液(又は懸濁液)に、25℃中、表5に示す量の種々のエポキシド(オキシラン)を加えた後、二酸化炭素ガスを充填した風船で反応系を密閉して二酸化炭素ガス雰囲気下(0.1MPa)とし、同雰囲気下、25℃で24時間攪拌して反応させた。次いで反応液を少量抜き取った後、抜き取った反応液を重クロロホルムで希釈し、重クロロホルムに含まれるテトラメチルシランを基準として反応液を分析し、生成した種々のカーボネートの収率を算出した。分析の結果、副生成物はほとんど確認されず(5%以下)、生成したカーボネート以外は未反応の原料であった。これらの結果を表5に示す。なお、表中、エポキシド(オキシラン)における[4-A]はフェニルグリシジルエーテルを表し、[4-B]はn-ブチルグリシジルエーテルを表し、[4-C]はグリシジルメタクリレートを表し、[4-D]はスチレンオキシドを表し、[5-A]は2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン{ビスフェノールAジグリシジルエーテル}を表す。また、表中、有機溶媒におけるTHFはテトラヒドロフランを表し、NMPは1-メチル-2-ピロリジノン(N-メチルピロリドン)を表し、MTHFは2-メチルテトラヒドロフランを表す。なお、上述の実施例において、n-はnormal-体を表す。
【0219】
【表5】
【0220】
表2において最も収率の高い1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン ヨウ化水素塩[2'-D]を触媒として、種々のエポキシドに対する反応性について検討した。表5の結果から明らかなように、モノエポキシド体、ビスエポキシド体のいずれでも、対応するカーボネートが収率よく得られた。また、実施例30では、反応をテトラヒドロフラン中で行ったが、エポキシド[5-A]から得られる環状カーボネート[7-A](2,2-プロピレンビス[(p-フェノキシメチル)エチレンカーボネート]{ビスフェノールAジグリシジルエーテル ビスカーボネート})が、反応途中に析出して攪拌できなくなった。このため、実施例31では、高極性溶媒の1-メチル-2-ピロリジノン(N-メチルピロリドン)を用いて検討したところ、カーボネート[7-A]は析出しなくなったが、反応性が低下した。この問題は、1-メチル-2-ピロリジノン(N-メチルピロリドン)を低極性の溶媒と混合させることで解決し、カーボネート[7-A]を反応途中で析出させることなく、収率を向上させることに成功した(実施例32及び33)。また、バルク反応では、テトラヒドロフラン中で反応を行うよりも反応性が向上し(実施例34)、特にエポキシド[4-C]を用いた反応では、副生成物が生成することなく、定量的に反応が進行した(実施例35)。これらの結果から、有機溶媒を代えたり、混合溶媒系やバルク系等の条件を使い分けることで、様々なエポキシド(オキシラン)から環状カーボネートを製造できることが判った。
【0221】
実施例37 アミジン触媒[2'-D]を用いた常温、常圧条件下での(フェノキシメチル)エチレンカーボネートの単離合成
フェニルグリシジルエーテル3.00g(20mmol;和光純薬工業株式会社製)のテトラヒドロフラン3.6mL/1-メチル-2-ピロリジノン(N-メチルピロリドン)0.4mL混合溶液に、25℃中、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン ヨウ化水素塩280mg(1mmol)を加えた後、二酸化炭素ガスを充填した風船で反応系を密閉して二酸化炭素ガス雰囲気下(0.1MPa)とし、同雰囲気下、25℃で48時間攪拌して反応させた。反応終了後、反応液にN,N-ジメチルホルムアミド3mLを加えた後、該反応液を水80mL中に投入し、結晶を析出させた。析出した結晶をろ取し、次いでろ取した結晶を水で洗浄した後、該結晶を80℃で12時間真空乾燥することにより、無色結晶の(フェノキシメチル)エチレンカーボネート3.76g(収率:96.9%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。なお、24時間反応させた際のフェニルグリシジルエーテルの転化率は86%であった。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):4.20(dd,1H,J=11.2,4.8Hz,PhOC),4.28(dd,1H,J=11.2,2.4Hz,PhOC),4.39(dd,1H,J=8.4,6.4Hz,OCHCO),4.64(dd,1H,J=8.4,8.4Hz,OCHCO),5.12-5.19(m,1H,OCCHO),6.94-7.03(m,3H,Ar),7.28-7.35(m,2H,Ar).
13C-NMR(100MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):66.0(OCHO),67.4(OHCHO),74.8(PhO),114.6(Ar),121.2(Ar),129.6(Ar),154.9(Ar),157.9(=O).
【0222】
本実施例は、表4における実施例17の20倍の反応スケールであるが、反応性はほとんど低下していない。メタルフリー(金属フリー)かつ安価な触媒である1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン ヨウ化水素塩を用いると、目的とするカーボネートが定量的に得られたことから、本カーボネート反応が実用的な反応であることを実証した。
【0223】
実施例38 アミジン触媒[2'-D]を用いた常温、常圧条件下での(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルメタクリレートの単離合成
グリシジルメタクリレート2.84g(20mmol;アルドリッチ社製)に、25℃中、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン ヨウ化水素塩280mg(1mmol)を加えた後、二酸化炭素ガスを充填した風船で反応系を密閉して二酸化炭素ガス雰囲気下(0.1MPa)とし、同雰囲気下、25℃で48時間攪拌して反応させた。反応終了後、反応液をメチルt-ブチルエーテル20mLと水10mLで分液し、更に水層をメチルt-ブチルエーテル10mLで2回抽出、分液した際の有機層と抽出した際の有機層を合わせ、合わせた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。乾燥後の有機層を濃縮し溶媒を留去することで得られた残渣を40℃で6時間真空乾燥することにより、淡黄色油状物の(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルメタクリレート3.63g(収率:97.6%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。なお、24時間反応させた際のグリシジルメタクリレートの転化率は78.4%であった。また、上述の実施例において、t-はtert-体を表す。
H-NMR(400MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):1.96(t,3H,J=1.6Hz,C),4.34(dd,1H,J=12.4,4.0Hz,OCHCO),4.36(dd,1H,J=8.8,5.2Hz,CO),4.39(dd,1H,J=8.4,3.2Hz,OCHCO),4.64(dd,1H,J=8.8,8.8Hz,CO),4.98-5.04(m,1H,OCCHO),5.67(quin,1H,J=1.6Hz,C=CH),6.15-6.17(m,1H,C=CH).
13C-NMR(100MHz,CDCl,25℃)δ(ppm):18.1(),63.4(OCHO),66.0(OHCHO),73.8(CO),127.2(C=),135.0(=CH),154.5(),166.6().
【0224】
本実施例は、表5における実施例35の20倍の反応スケールであるが、反応性はほとんど低下していない。反応が定量的に進行するため、精製操作を行わなくても分液操作だけで生成物を単離することができた。25℃、1気圧等の穏和な条件下で反応が進行するため、グリシジルメタクリレートのような重合性の高いエポキシド(オキシラン)でもポリマー副生成物を生じずに、カーボネートのみを得ることができた。また、アミジン塩によるグリシジルメタクリレートの二重結合へのマイケル付加、オキシラン環への開環付加、エステル基の分解等も見られないことから、本カーボネート反応は、化学選択的な二酸化炭素挿入反応として優れていることを見出した。
【0225】
実施例39〜43、並びに比較例22〜25 種々のグアニジン触媒を用いた環状カーボネートの合成
種々のグアニジン触媒0.05mmolの有機溶媒0.2mL溶液(又は懸濁液)に、25℃中、フェニルグリシジルエーテル150mg(1mmol;和光純薬工業株式会社製)を加えた後、二酸化炭素ガスを充填した風船で反応系を密閉して二酸化炭素ガス雰囲気下(0.1MPa)とし、同雰囲気下、25℃で24時間攪拌して反応させた。次いで反応液を少量抜き取った後、抜き取った反応液を重クロロホルムで希釈し、重クロロホルムに含まれるテトラメチルシランを基準として反応液を分析し、生成した(フェノキシメチル)エチレンカーボネートの収率を算出した。分析の結果、副生成物はほとんど確認されず(5%以下)、生成したカーボネート以外は未反応の原料であった。これらの結果を表6に示す。なお、表中、グアニジン触媒における[3'-A]は1-(1-ブチル)グアニジン ヨウ化水素塩を表し、[3'-B]は1-(1-ブチル)-3-メチルグアニジン ヨウ化水素塩を表し、[3'-C]は1-(1-ブチル)-2,3-ジメチルグアニジン ヨウ化水素塩を表し、[3'-D]は1-(1-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン ヨウ化水素塩を表し、[3'-E]は2-(1-ブチル)-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン ヨウ化水素塩を表し、[30'-A]は1-(1-ブチル)-1,2,2,3,3-ペンタメチルグアニジン ヨウ化物塩を表し、TBAIはヨウ化 テトラn-ブチルアンモニウムを表す。また、表中、有機溶媒におけるNMPは1-メチル-2-ピロリジノン(N-メチルピロリドン)を表し、MTHFは2-メチルテトラヒドロフランを表す。なお、上述の実施例において、n-はnormal-体を表す。
【0226】
【表6】
【0227】
表6の結果から明らかなように、種々のグアニジンのヨウ化水素塩(グアニジン触媒)を用いて反応を行ったところ、グアニジン触媒[3'-A]〜[3'-E]のプロトン源の数に関わらず、収率よくカーボネートが得られた(実施例39〜43)。また、表6には記載していないが、実施例40及び41の方法において、グアニジン触媒の使用量を10mol%に変えると、両実施例ともに92%の収率で(フェノキシメチル)エチレンカーボネートが得られた。一方で、プロトン源を全く持たないグアニジン触媒[30'-A]はほとんど反応が進行しないことが判った(比較例22)。すなわち、常温、常圧条件下で収率よくカーボネートを得るには、グアニジン触媒は、少なくとも1つ以上のプロトン源が必要であることを見出した。これは、グアニジン触媒[30'-A]と同じくプロトン源を持たないヨウ化 テトラn-ブチルアンモニウムを用いた場合に、反応がほとんど進行しなかったことからも明らかである(比較例23)。また、最も汎用的に用いられる金属塩(金属触媒)である臭化リチウムを用いた場合でも、常温、常圧条件下では、カーボネート反応はほとんど進行しなかった(比較例24及び25)。このように、プロトン源を少なくとも1つ以上有するグアニジンのヨウ化水素塩は、常温、常圧等の穏和な条件下で環状カーボネートを製造するための効果的な触媒であることが判った。
【0228】
実施例44〜50 カーボネート反応におけるグアニジン触媒の溶媒効果
種々のグアニジン触媒0.05mmolの有機溶媒0.2mL溶液(又は懸濁液)に、25℃中、フェニルグリシジルエーテル150mg(1mmol;和光純薬工業株式会社製)を加えた後、二酸化炭素ガスを充填した風船で反応系を密閉して二酸化炭素ガス雰囲気下(0.1MPa)とし、同雰囲気下、25℃で24時間攪拌して反応させた。次いで反応液を少量抜き取った後、抜き取った反応液を重クロロホルムで希釈し、重クロロホルムに含まれるテトラメチルシランを基準として反応液を分析し、生成した(フェノキシメチル)エチレンカーボネートの収率を算出した。分析の結果、副生成物はほとんど確認されず(5%以下)、生成したカーボネート以外は未反応の原料であった。これらの結果を表7に示す。なお、表中、グアニジン触媒における[3'-A]は1-(1-ブチル)グアニジン ヨウ化水素塩を表し、[3'-D]は1-(1-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン ヨウ化水素塩を表す。また、表中、有機溶媒におけるDMIは1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(ジメチルエチレン尿素)を表し、DMAcはN,N-ジメチルアセトアミドを表し、DMFはN,N-ジメチルホルムアミドを表し、MTBEはメチルt-ブチルエーテルを表す。なお、上述の実施例において、t-はtert-体を表す。
【0229】
【表7】
【0230】
表7の結果から明らかなように、例えば1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(ジメチルエチレン尿素)、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、例えばイソプロパノール等のアルコール系溶媒、例えばメチルt-ブチルエーテル等のエーテル系溶媒、例えばトルエン等の芳香族炭化水素系溶媒等の種々の有機溶媒中で反応を行っても、収率よく反応が進行することが判った。
【0231】
実施例51及び52、並びに比較例26〜28 カーボネート反応におけるグアニジン触媒のアニオン効果
種々のグアニジン触媒0.05mmolの有機溶媒0.2mL溶液(又は懸濁液)に、25℃中、フェニルグリシジルエーテル150mg(1mmol;和光純薬工業株式会社製)を加えた後、二酸化炭素ガスを充填した風船で反応系を密閉して二酸化炭素ガス雰囲気下(0.1MPa)とし、同雰囲気下、25℃で24時間攪拌して反応させた。次いで反応液を少量抜き取った後、抜き取った反応液を重クロロホルムで希釈し、重クロロホルムに含まれるテトラメチルシランを基準として反応液を分析し、生成した(フェノキシメチル)エチレンカーボネートの収率を算出した。分析の結果、副生成物はほとんど確認されず(5%以下)、生成したカーボネート以外は未反応の原料であった。これらの結果を表8に示す。なお、表中、グアニジン触媒における[3'-D]は1-(1-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン ヨウ化水素塩を表し、[30'-B]は1-(1-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン 塩化水素塩を表し、[30'-C]は1-(1-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン トリフルオロメタンスルホン酸塩を表す。また、表中、有機溶媒におけるMTHFは2-メチルテトラヒドロフランを表す。
【0232】
【表8】
【0233】
表6において最も収率の高い1-(1-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン ヨウ化水素塩[3'-D]について、アニオン部位の異なる誘導体を合成し、アニオン部位のカーボネート反応への影響を検討した。表8の結果から明らかなように、アニオン部位をヨウ素アニオンから塩素アニオンに代えたグアニジン触媒では反応性が著しく低下し(比較例26及び28)、トリフルオロメタンスルホネートアニオン(トリフラートアニオン)に代えたグアニジン触媒では全く反応が進行しなかった(比較例27)。2-メチルテトラヒドロフラン、2-プロパノン(アセトン)いずれの溶媒系においても同様の結果が得られた。これは、原子半径が大きく負電荷が分散されるアニオンの脱離能の大きさが、エポキシド(オキシラン)に対する二酸化炭素挿入反応を促進していると考えられる。このように、常温、常圧条件下でのカーボネート反応においては、多種多様なアニオン種のなかでも、ヨウ素アニオンが大きな効果を有することを明らかにした。
【0234】
実施例53〜61 カーボネート反応におけるグアニジン触媒の置換基効果
種々のグアニジン触媒0.05mmolの有機溶媒0.2mL溶液(又は懸濁液)に、25℃中、フェニルグリシジルエーテル150mg(1mmol;和光純薬工業株式会社製)を加えた後、二酸化炭素ガスを充填した風船で反応系を密閉して二酸化炭素ガス雰囲気下(0.1MPa)とし、同雰囲気下、25℃で24時間攪拌して反応させた。次いで反応液を少量抜き取った後、抜き取った反応液を重クロロホルムで希釈し、重クロロホルムに含まれるテトラメチルシランを基準として反応液を分析し、生成した(フェノキシメチル)エチレンカーボネートの収率を算出した。分析の結果、副生成物はほとんど確認されず(5%以下)、生成したカーボネート以外は未反応の原料であった。これらの結果を表9に示す。なお、表中、グアニジン触媒における[3'-F]は1-(1-オクチル)グアニジン ヨウ化水素塩を表し、[3'-G]は1,1-ジシクロヘキシルグアニジン ヨウ化水素塩を表し、[3'-H]は1-ベンジルグアニジン ヨウ化水素塩を表し、[3'-I]は1-(2-ヒドロキシエチル)グアニジン ヨウ化水素塩を表し、[3'-J]は1-(2-メトキシエチル)グアニジン ヨウ化水素塩を表し、[3'-K]は1-(N,N-ジメチルアミノエチル)グアニジン ヨウ化水素塩を表し、[3'-L]は1-ベンジル-2,3,3-トリメチルグアニジン ヨウ化水素塩を表し、[3'-M]は1-(N,N-ジメチルアミノエチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン ヨウ化水素塩を表し、[3'-N]は7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン ヨウ化水素塩を表す。また、表中、有機溶媒におけるNMPは1-メチル-2-ピロリジノン(N-メチルピロリドン)を表し、MTHFは2-メチルテトラヒドロフランを表す。
【0235】
【表9】
【0236】
表9の結果から明らかなように、まず、プロトン源を4つ以上有するグアニジンのヨウ化水素塩(グアニジン触媒)を用いて反応を行ったところ、1-(1-ブチル)グアニジン ヨウ化水素塩[3'-A]よりも長いアルキル鎖を有するグアニジン触媒[3'-F]や非常に嵩高いジシクロヘキシル基を有するグアニジン触媒[3'-G]を用いた場合でも、収率よく反応が進行した(実施例53及び54)。更に、ヒドロキシル基等の他の官能基を含むグアニジン触媒[3'-I]〜[3'-K]を用いた場合でも反応は進行し、特にグアニジン触媒[3'-J]及び[3'-K]は、グアニジン触媒[3'-A]よりも高い反応性を示した(実施例56〜58)。次にプロトン源を2つ有するグアニジンのヨウ化水素塩(グアニジン触媒)を用いて反応を行ったところ、1-(1-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン ヨウ化水素塩[3'-D]と同等以上の反応性を示し、特にベンジル基を有するグアニジン触媒[3'-L]を用いた場合には、2-メチルテトラヒドロフラン中で定量的に反応が進行することが判った。本実施例で用いたグアニジン触媒は、グアニジン触媒[3'-A]や[3'-D]から容易に合成することができる。これらの結果から、本グアニジン触媒は、多くのアミン類から容易に種々の誘導体を合成することができるという大きな特徴を有し、例えば担体への担持や高分子化による再利用反応への応用が期待できる。
【0237】
実施例62〜68 グアニジン触媒[3'-A]を用いた種々のエポキシド(オキシラン)のカーボネート反応
1-(1-ブチル)グアニジン ヨウ化水素塩12.0mg(0.05mmol)の有機溶媒0.2mL溶液(又は懸濁液)に、25℃中、表10に示す量の種々のエポキシド(オキシラン)を加えた後、二酸化炭素ガスを充填した風船で反応系を密閉して二酸化炭素ガス雰囲気下(0.1MPa)とし、同雰囲気下、25℃又は45℃で24時間攪拌して反応させた。次いで反応液を少量抜き取った後、抜き取った反応液を重クロロホルムで希釈し、重クロロホルムに含まれるテトラメチルシランを基準として反応液を分析し、生成した種々のカーボネートの収率を算出した。分析の結果、副生成物はほとんど確認されず(5%以下)、生成したカーボネート以外は未反応の原料であった。これらの結果を表10に示す。なお、表中、エポキシド(オキシラン)における[4-A]はフェニルグリシジルエーテルを表し、[4-B]はn-ブチルグリシジルエーテルを表し、[4-C]はグリシジルメタクリレートを表し、[5-A]は2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン{ビスフェノールAジグリシジルエーテル}を表し、[5-B]は1,4-ビス(グリシジルオキシ)ブタン{1,4-ブチレングリコールジグリシジルエーテル}を表す。また、表中、有機溶媒におけるNMPは1-メチル-2-ピロリジノン(N-メチルピロリドン)を表す。なお、上述の実施例において、n-はnormal-体を表す。
【0238】
【表10】
【0239】
1-(1-ブチル)グアニジン ヨウ化水素塩[3'-A]を触媒として、種々のエポキシドに対する反応性について検討した。表10の結果から明らかなように、モノエポキシド体、ビスエポキシド体のいずれでも、対応する環状カーボネートが収率よく得られた。特にメタクリル基を有するエポキシド(オキシラン)との反応は、アミン塩による二重結合へのマイケル付加、オキシラン環への開環付加、エステル基の分解等の様々な副反応が予想されるが、グアニジン触媒[3'-A]は活性水素を多く持つのにも関わらず、(2-オキソ-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルメタクリレート[6-C]のみが選択的に高収率で得られた(実施例64)。これは、グアニジン触媒[3'-A]のグアニジニウムカチオンが3つの極限構造を持ち、極度に安定化しているためと考えられる。また、常温(25℃)でも収率よく環状カーボネートが得られるが、反応温度を45℃に上げるだけで、常圧下で定量的に環状カーボネートが得られた(実施例67及び68)。これらの結果から、グアニジン触媒[3'-A]は、様々なエポキシド(オキシラン)に適用できることが判った。
【0240】
実施例69〜76 グアニジン触媒[3'-D]を用いた種々のエポキシド(オキシラン)のカーボネート反応
1-(1-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン ヨウ化水素塩14.0mg(0.05mmol)の有機溶媒0.2mL溶液(又は懸濁液)に、25℃中、表11に示す量の種々のエポキシド(オキシラン)を加えた後、二酸化炭素ガスを充填した風船で反応系を密閉して二酸化炭素ガス雰囲気下(0.1MPa)とし、同雰囲気下、25℃又は45℃で24時間攪拌して反応させた。次いで反応液を少量抜き取った後、抜き取った反応液を重クロロホルムで希釈し、重クロロホルムに含まれるテトラメチルシランを基準として反応液を分析し、生成したカーボネートの収率を算出した。分析の結果、副生成物はほとんど確認されず(5%以下)、生成した種々のカーボネート以外は未反応の原料であった。これらの結果を表11に示す。なお、表中、エポキシド(オキシラン)における[4-A]はフェニルグリシジルエーテルを表し、[4-B]はn-ブチルグリシジルエーテルを表し、[4-C]はグリシジルメタクリレートを表し、[5-A]は2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン{ビスフェノールAジグリシジルエーテル}を表し、[5-B]は1,4-ビス(グリシジルオキシ)ブタン{1,4-ブチレングリコールジグリシジルエーテル}を表す。また、表中、有機溶媒におけるMTHFは2-メチルテトラヒドロフランを表し、MTBEはメチルt-ブチルエーテルを表し、NMPは1-メチル-2-ピロリジノン(N-メチルピロリドン)を表す。なお、上述の実施例において、n-はnormal-体を表し、t-はtert-体を表す。
【0241】
【表11】
【0242】
1-(1-ブチル)-2,3,3-トリメチルグアニジン ヨウ化水素塩[3'-D]を触媒として、種々のエポキシドに対する反応性について検討した。表11の結果から明らかなように、グアニジン触媒[3'-A]と同様にモノエポキシド体、ビスエポキシド体のいずれでも、対応する環状カーボネートが収率よく得られた。また、常温(25℃)でも収率よくカーボネートが得られるが、反応温度を45℃に上げるだけで、常圧下で定量的に環状カーボネートが得られた(実施例74及び75)。更に、グアニジン触媒[3'-D]は、無溶媒でも反応が進行し、むしろ有機溶媒中で反応させるよりも反応性が増大した(実施例76)。これらの結果から、グアニジン触媒[3'-D]は、様々なエポキシド(オキシラン)に適用できることが判った。
【0243】
実施例77及び78 グアニジン触媒[3'-O]を用いた種々のエポキシド(オキシラン)のカーボネート反応
グアニジン ヨウ化水素塩[3'-O]9.3mg(0.05mmol)の有機溶媒0.2mL溶液(又は懸濁液)に、25℃中、表12に示す量の種々のエポキシド(オキシラン)を加えた後、二酸化炭素ガスを充填した風船で反応系を密閉して二酸化炭素ガス雰囲気下(0.1MPa)とし、同雰囲気下、45℃で24時間攪拌して反応させた。次いで反応液を少量抜き取った後、抜き取った反応液を重クロロホルムで希釈し、重クロロホルムに含まれるテトラメチルシランを基準として反応液を分析し、生成した種々のカーボネートの収率を算出した。分析の結果、副生成物はほとんど確認されず(5%以下)、生成したカーボネート以外は未反応の原料であった。これらの結果を表12に示す。なお、表中、エポキシド(オキシラン)における[4-A]はフェニルグリシジルエーテルを表し、[5-A]は2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン{ビスフェノールAジグリシジルエーテル}を表す。また、表中、有機溶媒におけるNMPは1-メチル-2-ピロリジノン(N-メチルピロリドン)を表す。
【0244】
【表12】
【0245】
グアニジン ヨウ化水素塩[3'-O]を触媒として、種々のエポキシドに対する反応性について検討した。表12の結果から明らかなように、グアニジン触媒[3'-A]及び[3'-D]と同様に、45℃で反応を行うことで、モノエポキシド体、ビスエポキシド体のいずれでも、対応する環状カーボネートが定量的に得られた。これらの結果から、グアニジン触媒[3'-O]も、様々なエポキシド(オキシラン)に適用できることが判った。
【0246】
実施例79 グアニジン触媒[3'-O]を用いた常温、常圧条件下での(フェノキシメチル)エチレンカーボネートの単離合成
フェニルグリシジルエーテル6.01g(40mmol;和光純薬工業株式会社製)の1-メチル-2-ピロリジノン(N-メチルピロリドン)4mL溶液に、25℃中、グアニジン ヨウ化水素塩374mg(2mmol)を加えた後、二酸化炭素ガスを充填した風船で反応系を密閉して二酸化炭素ガス雰囲気下(0.1MPa)とし、同雰囲気下、45℃で48時間攪拌して反応させた。反応終了後、反応液に2-プロパノン(アセトン)5mLを加えた後、該反応液を水80mL中に投入し、結晶を析出させた。析出した結晶をろ取し、次いでろ取した結晶を水で洗浄した後、該結晶を80℃で12時間真空乾燥することにより、無色結晶の(フェノキシメチル)エチレンカーボネート7.75g(収率:99.7%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。なお、24時間反応させた際のフェニルグリシジルエーテルの転化率は65%であった。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):4.20(dd,1H,J=11.2,4.8Hz,PhOC),4.28(dd,1H,J=11.2,2.4Hz,PhOC),4.39(dd,1H,J=8.4,6.4Hz,OCHCO),4.64(dd,1H,J=8.4,8.4Hz,OCHCO),5.12-5.19(m,1H,OCCHO),6.94-7.02(m,3H,Ar),7.28-7.35(m,2H,Ar).
13C-NMR(100MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):66.0(OCHO),67.4(OHCHO),74.8(PhO),114.6(Ar),121.2(Ar),129.6(Ar),154.9(Ar),157.9(=O).
【0247】
本実施例は、表12における実施例77と同様の反応であるが、反応スケールが40倍であるため、反応時間が長くなった。しかしながら、反応が定量的に進行するため、精製操作を行わなくても反応液を水中に投じるだけで生成物を単離することができた。メタルフリー(金属フリー)かつ安価な触媒であるグアニジン ヨウ化水素塩を用いると、45℃、1気圧等の穏和な条件下で反応が進行し、目的とする環状カーボネートが定量的に得られたことから、本カーボネート反応が実用的な反応であることを実証した。
【0248】
実施例80 グアニジン触媒[3'-A]を用いた常温、常圧条件下での2,2-プロピレンビス[(p-フェノキシメチル)エチレンカーボネート]{ビスフェノールAジグリシジルエーテル ビスカーボネート}の単離合成
2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン{ビスフェノールAジグリシジルエーテル}3.40g(10mmol;新日鐵化学株式会社製)の1-メチル-2-ピロリジノン(N-メチルピロリドン)4mL溶液に、25℃中、1-(1-ブチル)グアニジン ヨウ化水素塩243mg(1mmol)を加えた後、二酸化炭素ガスを充填した風船で反応系を密閉して二酸化炭素ガス雰囲気下(0.1MPa)とし、同雰囲気下、45℃で48時間攪拌して反応させた。反応終了後、反応液を水80mL中に投入し、結晶を析出させた。析出した結晶をろ取し、次いでろ取した結晶を水で洗浄した後、該結晶を80℃で12時間真空乾燥することにより、無色結晶の2,2-プロピレンビス[(p-フェノキシメチル)エチレンカーボネート]{ビスフェノールAジグリシジルエーテル ビスカーボネート}4.25g(収率:99.3%)を得た。以下にH-NMR及び13C-NMRの測定結果を示す。なお、24時間反応させた際の2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン{ビスフェノールAジグリシジルエーテル}の転化率は62%であった。
H-NMR(400MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):1.58(s,6H,C(C),4.16(dd,2H,J=11.6,4.4Hz,2×(PhOC)),4.24(dd,2H,J=11.2,2.4Hz,2×(PhOC)),4.38(dd,2H,J=8.0,6.0Hz,2×(OCHCO)),4.64(dd,2H,J=8.8,8.8Hz,2×(OCHCO)),5.10-5.17(m,2H,2×(OCCHO)),6.85(d,4H,J=8.8Hz,Ar),7.12(d,4H,J=8.8Hz,Ar).
13C-NMR(100MHz,DMSO-d,25℃)δ(ppm):30.7(C(),41.3((CH),66.0(OCHO),67.4(OHCHO),74.8(PhO),114.0(Ar),127.5(Ar),143.3(Ar),154.9(Ar),155.7(=O).
【0249】
本実施例は、表10における実施例68と同様の反応であるが、反応スケールが20倍であるため、反応時間が長くなった。しかしながら、反応が定量的に進行するため、精製操作を行わなくても反応液を水中に投じるだけで生成物を単離することができた。生成物である2,2-プロピレンビス[(p-フェノキシメチル)エチレンカーボネート]{ビスフェノールAジグリシジルエーテル ビスカーボネート}は、工業的に重要な高機能性モノマーであるが、原料である2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン{ビスフェノールAジグリシジルエーテル}と同様に結晶性が高いために、バルクでは扱えず、穏和な条件でのカーボネート合成は成功していなかった。本実施例では、45℃、1気圧等の穏和な条件下で、2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン{ビスフェノールAジグリシジルエーテル}のカーボネート反応が定量的に進行することを見出した。
【0250】
比較例29〜36 種々の金属塩を用いた環状カーボネートの合成
種々の金属塩0.05mmolの有機溶媒0.2mL溶液(又は懸濁液)に、25℃中、フェニルグリシジルエーテル150mg(1mmol;和光純薬工業株式会社製)を加えた後、二酸化炭素ガスを充填した風船で反応系を密閉して二酸化炭素ガス雰囲気下(0.1MPa)とし、同雰囲気下、25℃で24時間攪拌して反応させた。次いで反応液を少量抜き取った後、抜き取った反応液を重クロロホルムで希釈し、重クロロホルムに含まれるテトラメチルシランを基準として反応液を分析し、生成した(フェノキシメチル)エチレンカーボネートの収率を算出した。分析の結果、副生成物はほとんど確認されず(5%以下)、生成したカーボネート以外は未反応の原料であった。これらの結果を表13に示す。なお、表中、有機溶媒におけるNMPは1-メチル-2-ピロリジノン(N-メチルピロリドン)を表し、MTHFは2-メチルテトラヒドロフランを表す。
【0251】
【表13】
【0252】
種々の金属塩を触媒として、エポキシドに対する反応性について検討した。表13の結果から明らかなように、金属塩を用いた場合には、総じて反応性が低く、反応系内でヨウ素アニオンが生じると考えられるヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムを用いた場合では、生成物である(フェノキシメチル)エチレンカーボネートの収率が10%台にとどまる結果となった。また、アルミナに担持したフッ化カリウムやヨウ化銅ではほとんど反応が進行せず、高価なヨウ化セシウムを用いた場合でも、生成物である(フェノキシメチル)エチレンカーボネートの収率は28%であった。これらの結果から、金属塩を触媒として用いる反応は、常温、常圧等の穏和な条件下でのカーボネートの合成には適していないことが判った。
【0253】
比較例37 金属塩とアミジンを触媒として用いた環状カーボネートの合成
臭化リチウム0.05mmolと1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン0.05mmolの1-メチル-2-ピロリジノン(N-メチルピロリドン)0.2mL溶液に、25℃中、フェニルグリシジルエーテル150mg(1mmol;和光純薬工業株式会社製)を加えた後、二酸化炭素ガスを充填した風船で反応系を密閉して二酸化炭素ガス雰囲気下(0.1MPa)とし、同雰囲気下、25℃で24時間攪拌して反応させた。次いで反応液を少量抜き取った後、抜き取った反応液を重クロロホルムで希釈し、重クロロホルムに含まれるテトラメチルシランを基準として反応液を分析し、生成した(フェノキシメチル)エチレンカーボネートの収率を算出した。分析の結果、生成した(フェノキシメチル)エチレンカーボネートの収率は31%であった。また、副生成物はほとんど確認されず(5%以下)、生成したカーボネート以外は未反応の原料であった。
【0254】
1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンには、二酸化炭素を取り込む機能があるため、表13に示す金属塩を単独で用いた場合と比較して、反応性は高いことが窺える。しかしながら、常温、常圧等の穏和な条件下では、カーボネートの収率は低く、工業的利用という観点からは十分ではなかった。
【0255】
以上の結果から、第一級乃至第三級アミンのなかでもpKaが8以上のアミンであって、モノアミン、環状アミジン及びグアニジンから選ばれるアミン化合物とヨウ化水素とを組み合わせた、本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)が、常温、常圧等の穏和な条件下でも、カーボネート反応が効率的に進行することを明らかにした。すなわち、第一級乃至第三級アミンであれば、いずれのアミンでもよいというわけではないし、アニオン成分も何でもよいというわけではないのである。言い換えれば、特定の組み合わせのみからなる触媒(アミン化合物塩)が、カーボネート反応を効率的に進行させることができるのである。このような触媒(アミン化合物塩)を用いる本発明は、常温、常圧等の穏和な条件下でも、高収率で環状カーボネートを製造できることを明らかにした。また、本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)は、メタルフリー(金属フリー)の触媒(アミン化合物塩)でもあるので、本発明にかかる触媒(アミン化合物塩)を用いる本発明は、グリーンケミストリーの観点からも有用であり、環境負荷低減を考慮した実用的な製造方法であることを明らかにした。
【産業上の利用可能性】
【0256】
本発明の製造方法は、例えばリチウムイオン二次電池の電解液、プラスチック原料等の多用途に幅広く利用されている環状カーボネートを、エポキシド(オキシラン)と二酸化炭素との反応によって製造するにあたり、常温、常圧等の穏和な条件下で当該環状カーボネート収率よく製造することを可能にするものである。更に、本発明の製造方法は、環境負荷低減を考慮した上で、環状カーボネートを実用的に製造することを可能にするものである。