(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるものや実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることができる。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略や置換又は変更を行うことができる。
【0020】
図1は、本発明の好適な実施形態に係るヘッドアッセンブリを備えたロード/アンロード方式の磁気ディスク装置(HDD装置)の全体構成を概略的に示した図である。
図1より、磁気ディスク装置1は、ハウジング4、スピンドルモータにより軸5を中心にして回転駆動される磁気ディスク6、先端部にヘッド素子7を有するスライダ3が装着されているヘッドアッセンブリ2、このヘッドアッセンブリ2を先端部で支持する支持アーム8から構成されている。
【0021】
支持アーム8の後端部にはボイスコイルモータ(VCM)のコイル部(図示しない)が装着されており、支持アーム8は水平回動軸9を中心にして磁気ディスク6の表面と平行に回動可能となっている。VCMはこのコイル部とこれを覆うマグネット部10とから構成されている。磁気ディスク6のデータ領域の外側から磁気ディスク6の外側に渡ってランプ機構11が設けられており、その傾斜した表面にヘッドアッセンブリ2の最先端に設けられたタブ12が乗り上げてスライダ3を磁気ディスク6から離間させアンロード状態となる。
【0022】
磁気ディスク装置1の動作時(磁気ディスクの高速回転中)に、スライダ3は磁気ディスク6の表面に対向して低浮上量で浮上しておりロード状態にある。一方、非動作時(磁気ディスクの停止中または起動及び停止時の低速回転中)においては、ヘッドアッセンブリ2の先端部のタブ12がランプ機構11上にあるのでスライダ3はアンロード状態にある。
【0023】
図2は、本発明の好適な実施形態に係るヘッドアッセンブリの全体構成を概略的に示した斜視図である。なお、以降、説明の便宜上、図のZ軸正方向をヘッドアッセンブリ2の上面側と呼び、Z軸負方向をヘッドアッセンブリ2の裏面側、または、下面側と呼ぶこととする。スライダ3は、インダクティブ書込みヘッド素子と、巨大磁気抵抗効果(GMR)読出しヘッド素子又はトンネル磁気抵抗効果(TMR)読出しヘッド素子等のMR読出し薄膜磁気ヘッドからなるヘッド素子7をスライダ3の後端(トレーリングエッジ、
図2のY軸正方向側)面に備えている。
【0024】
図2より、ヘッドアッセンブリ2は、その主なる構成要素として、ベースプレート13、ロードビーム14、フレクシャ15、駆動素子16、及びスライダ3を備えている。また、ベースプレート13は支持アーム8の先端部に取り付けられるように構成されている。
【0025】
図2より、ロードビーム14は、ベースプレート13に複数の第一のビーム溶接ポイント17aなどにより固着されている。また、ロードビーム14には、板バネ18が形成されており、スライダ3が情報を書き込む対象である記録媒体のディスク面に対して荷重を与えるよう構成されている。さらに、ロードビーム14は、両サイドに折り曲げ加工部19を施し強度を高めた構造となっている。フレクシャ15は、ロードビーム14に複数の第二のビーム溶接ポイント17bなどにより固着されている。なお、
図2において、スライダ3の姿勢角のピッチ方向はDp、ロール方向はDr、ヨー方向はDyで示してある。
【0026】
図3は、本発明の好適な実施形態に係るヘッドアッセンブリを概略的に示した分解斜視図である。
図4は、本発明の好適な実施形態に係るフレクシャの構成を示した分解斜視図である。なお、
図3では、ヘッドアッセンブリ2をベースプレート13、ロードビーム14、フレクシャ15、駆動素子16、スライダ3に分解した状態を示している。
【0027】
図3より、スライダ3は、フレクシャ15に形成されたスライダ支持板20上に接着固定される。ロードビーム14の先端部近傍の中心線上には支点突起21が一体的に突出形成されており、支点突起21が第1のアウトリガ22aと第2のアウトリガ22bによって支えられたスライダ支持板20に点接触するピボット構造となるような構造を形成している。これにより、スライダ3は、ディスク面のうねりに対応して浮上姿勢をスムーズに追従できるように構成されている。言い換えれば、スライダ支持板20は、スライダ3を支点突起21の周りに回動自在に支持していることとなる。
【0028】
フレクシャ15は、一般的に20μm程度の薄いステンレス鋼板からなる弾性を有するフレクシャ基板24上にコーティングした絶縁層41と、絶縁層41上に銅箔をめっきした素材を用いてヘッド素子配線25a(ヘッド素子配線部)を形成する導体箔25を積層したフレキシブル配線基板で構成されている。ここで、フレクシャ基板24とヘッド素子配線25aを有するフレキシブル配線基板は、エッチングプロセスで外形形状及び配線構成を任意の形状に精密加工することができる。なお、
図4では、本来一体としたフレクシャ15であるが解かりやすく示すため、ステンレス製フレクシャ基板24と絶縁層41上に形成したヘッド素子配線25a(ヘッド素子配線部)を分離して表示した。
【0029】
駆動素子16は、薄膜圧電体素子であり、スライダ支持板20にその平面に沿った回転力を付与する機能を有している。具体的には、駆動素子16は、第1の駆動手段16a(第1の駆動素子)及び第2の駆動手段16b(第2の駆動素子)から構成され、それぞれ第1の駆動素子支持部23a及び第2の駆動素子支持部23b上に接着されて支持されている。なお、第1の駆動素子支持部23a及び第2の駆動素子支持部23bは、フレクシャ15を形成している絶縁層41のみで形成されている。
【0030】
図5aは、本発明の好適な実施形態に係るヘッドアッセンブリが備える第1の駆動手段の平面図である。
図5bは、
図5aにおけるA−A断面を表し、
図5cは、
図5aにおけるB−B断面を表している。なお、第1の駆動手段16aと第2の駆動手段16bの構造は同様のため、ここでは第1の駆動手段16aの構造のみ説明する。第1の駆動手段16aは、薄膜圧電体26の上面側に上部電極27aが形成され、下面側に下部電極27bが形成されて構成されている。この第1の駆動手段16aは、非常に薄くかつ破損しやすい構成であるので補強材として基台28が設けられている。
【0031】
第1の駆動手段16aは、薄膜圧電体26を保護するために素子全体がポリイミド製の絶縁カバー30で覆われている。なお、
図5aのC部、D部では絶縁カバー30が一部除去されている。具体的には、C部では、下部電極27bが露出し第1の電極パッド29aと導通している。D部では、上部電極27aが露出しており第2の電極パッド29bと導通している。これにより、第1の電極パッド29a、第2の電極パッド29bに電圧印加することで第1の駆動手段16aの薄膜圧電体26を伸縮させることができる。薄膜圧電体26の分極方向を矢印で示している。第1の電極パッド29aにマイナス電圧を印加し、第2の電極パッド29bにプラス電圧を印加すれば、薄膜圧電体26は圧電定数d31により圧電膜の面内方向に収縮することになる。なお、第1の駆動手段16aと同様の構造を有する第2の駆動手段16bについては図示しないが、第1の電極パッド29aに相当する第3の電極パッド29cにマイナス電圧を印加し、第2の電極パッドに相当する第4の電極パッド29dにプラス電圧を印加すれば、薄膜圧電体26は圧電定数d31により圧電膜の面内方向に収縮する。
【0032】
図6は、本発明の好適な実施形態に係るヘッドアッセンブリの先端要部を上面側(スライダ側)から見た平面図である。
図7は、本発明の好適な実施形態に係るヘッドアッセンブリの先端要部を裏面側から見た平面図(
図6のヘッドアッセンブリを裏面側から見た平面図)である。なお、説明の便宜上、ロードビーム14は図から除外している。スライダ3は、スライダ支持板20上に接着され、ヘッド電極端子31に対応したヘッド素子配線25a(ヘッド素子配線部)が設置され半田ボールによって接続される。
【0033】
図6において、スライダ支持板20の両側に配置された第1及び第2のアウトリガ22a,22bには一部の第1の折り曲げ部32a、第2の折り曲げ部32bが形成されている。さらに、左右の第1及び第2の折り曲げ部32a,32bのそれぞれの延長方向の交点が支点突起21に一致するように構成されている。また、スライダ支持板20は、第1及び第2のアウトリガ22a,22bの中間位置に設けられた第1の折り曲げ部32a,第2の折り曲げ部32bの作用により支点突起21を中心に回動する構成となっている。
【0034】
スライダ支持板20にはスライダ3を含む回動部分のヨー方向の慣性軸が支点突起21に一致するように設定されたカウンターバランス33が形成されている。また、スライダ支持板20にはスライダ3をディスク上からアンロードする際にスライダ3を持ち上げるためのT型リミッタ部34が形成されておりロードビーム14に形成された孔部35に係合している。なお、通常動作時はT型リミッタ部34と孔部35は隙間を介して接触していない。
【0035】
ヘッド素子配線25a(ヘッド素子配線部)はスライダ3を囲む形で配置され、その端部はスライダ3のヘッド電極端子31に接続されている。このヘッド素子配線25a(ヘッド素子配線部)は第1及び第2のアウトリガ22a,22bが固着されているとともに(
図6のC−C部)、スライダ支持板20から延出した第1の駆動リブ36aと第2の駆動リブ36bにも同様に固着されている(
図6のF−F部)。
【0036】
第1及び第2の駆動手段16a,16bは、第1、第2、第3、第4の電極パッド29a,29b,29c,29dに電圧を印加して駆動される。駆動配線37a(駆動素子配線部)は、第1の駆動手段16aの第1の電極パッド29aと第2の駆動手段16bの第4の電極パッド29dに入力をインプットするように配置され、第2の電極パッド29b、第3の電極パッド29cは、グランド配線37bでフレクシャ基板24に接地される。これにより駆動配線37aに交番駆動信号をインプットすれば、第1の駆動手段16aと第2の駆動手段16bとはお互い逆方向に伸縮運動することになる。
【0037】
図7において、第1の変位伝達部として第1のリンク部39aを設けている。第1のリンク部39aは、は、第1のジョイント40aと第2のジョイント40bの間に連結して配置されており、フレクシャ15のフレクシャ基板24をエッチングプロセスにより除去せず、フレクシャ基板24を含む構成となっている。第1のジョイント40a及び第2のジョイント40bは、フレクシャ15のフレクシャ基板24をエッチング除去したヘッド素子配線25a(ヘッド素子配線部)で形成されており、フレクシャ基板24を含まない構成となっている。第1のジョイント40a及び第2のジョイント40bは、第1のリンク部39aに比較して柔軟な構成(曲げ剛性の低い)となっており、第1の駆動手段16aが伸縮運動したとき、第1のリンク部39aは第2のジョイント40bを中心に微小回動運動するように構成されている。この第1のリンク部39aは、第1の駆動手段16aの駆動力をスライダ支持板20に伝達する役割を担っている。同様に、第2の変位伝達部として第2のリンク部39b設けており、この第2のリンク部39bは、第3のジョイント40cと第4のジョイント40dの間に連結して配置されており、第3及び第4のジョイント40c,40dは第1及び第2のジョイント40a,40bと同じ構造であるので、第2の駆動手段16bが伸縮運動したとき、第2のリンク部39bは第4のジョイント40dを中心に微小回動運動する。この第2のリンク部39bは、第2の駆動手段16bの駆動力をスライダ支持板20に伝達する役割を担っている。
【0038】
なお、ヘッドアッセンブリ2のベースプレート13やロードビーム14は、各図においてY軸方向に平行な中心軸に対して線対称としてある。また、第1の変位伝達部である第1のリンク部39aと、第2の変位伝達部である第2のリンク部39b、第1のジョイント40a及び第2のジョイント40bと第3のジョイント40c及び第4のジョイント40d、第1の駆動手段16aと第2の駆動手段16bなどの構造についても同様に各図においてY軸方向に平行な中心軸に対して線対称となっている。
【0039】
図6、
図7において、第1の駆動手段16aと第2のジョイント40b及びフレクシャ基板24とを分離する第1の分離溝44aが設けられており、さらにこの第1の分離溝44aは薄膜圧電体26の長手方向(図中Y軸方向)の長さに相当する範囲に沿って形成される。この第1の分離溝44aにより薄膜圧電体26の変位を、ヘッド素子配線25a(ヘッド素子配線部)を含む第2のジョイント40bとフレクシャ基板24の拘束から解放されて変位を最大化できる。なお、ヘッドアッセンブリ2はY軸に平行な対称軸に線対称な形状であるので、
図6より第2の分離溝44bについても同様である。
【0040】
フレクシャ15は、厚さ18μmのステンレス材の上にポリイミドなどの絶縁層41を形成し、その上に導体箔25をエッチング加工することでヘッド素子配線25aが形成されている。さらに配線の絶縁または保護の目的でポリイミドなどの配線カバー42で覆う構成となっている。フレクシャ15は、必要とする機構的な機能をステンレス製のフレクシャ基板24を任意形状にエッチング加工することにより確保している。
図6(
図7)に示したフレクシャ15の構成をいくつかの断面毎に
図8a〜
図8cを用いて示した。
図8aは
図6におけるC−C断面、
図8bは
図6におけるD−D断面、
図8cは
図6におけるF−F断面を示す断面図である。
図8aより、第1のアウトリガ22aは、フレクシャ基板24で構成され、スライダ支持板20に連結して配置されている。この第1のアウトリガ22a上に絶縁層41が形成され、その上に導体箔25によりヘッド素子配線25aが形成され、ヘッド素子配線25aを覆うように配線カバー42が形成されている。
図8bより、ヘッド素子配線25aの裏面側にあるフレクシャ基板24がエッチングプロセスにより取り除かれ、スライダ支持板20、第1のアウトリガ22a、及びヘッド素子配線25aは分離されている。
図8cより、スライダ支持板20から延出したフレクシャ基板24である第1の駆動リブ36aとヘッド素子配線25aの一部分が固着されている。一方、第1のアウトリガ22aとヘッド素子配線25aは分離されている。
【0041】
図9aは、本発明の好適な実施形態に係るヘッドアッセンブリにおいて、第1の駆動手段のフレクシャに接着した部分を拡大した断面図(
図6におけるE−E断面)である。第1の駆動手段16aは、第1の駆動素子支持部23a上に接着されている。第1の駆動素子支持部23aは、本体支持部231と、第1の補強部51aと、第2の補強部52aと、第1の緩衝部55aと、第2の緩衝部56aと、を有する。本体支持部231は、第1の駆動手段16aの直下に位置し、絶縁層41のみから構成されている。この本体支持部231は、第1の駆動手段16aが接着される主要部分を構成している。第1の補強部51aは、第1の駆動手段16aのヘッドアッセンブリ先端側(スライダ3側)に配置され、第1の駆動手段16aにおける一方端の一部を支持している。言い換えれば、第1の駆動手段16aは、ヘッドアッセンブリ先端側が第1の補強部51aにオーバーラップした状態で本体支持部231に接着されている。これは、第1の駆動手段16aの薄膜圧電体26の変位を確実に第1の補強部51aに伝達するためである。この第1の補強部51aは、フレクシャ基板24を残して形成されており、フレクシャ基板24と、絶縁層41と、導体箔25で構成されている。第2の補強部52aは、第1の駆動手段16aのヘッドアッセンブリ後端側(ベースプレート13側)に配置され、第1の駆動手段16aにおける他方端の一部を支持している。言い換えれば、第1の駆動手段16aは、ヘッドアッセンブリ後端側が第2の補強部52aにオーバーラップした状態で本体支持部231に接着されている。この第2の補強部52aは、フレクシャ15のフレクシャ基板24を残して形成されており、フレクシャ基板24と、絶縁層41と、導体箔25で構成されている。このように構成される第1及び第2の補強部51a,52aは、第1の駆動手段16aの両端に位置している。より具体的には、第1の駆動手段16aのヘッドアッセンブリ先端側の端部は、鉛直方向から見て、本体支持部231及び第1の補強部51aと重なるように位置し、第1の駆動手段16aのヘッドアッセンブリ後端側の端部は、本体支持部231及び第2の補強部52aと重なるように位置していることとなる。第1の緩衝部55aは、第1のリンク部39aで構成された第1の変位伝達部と第1の補強部51aの間に配置されており、一方端が第1のリンク部39aに接続され、他方端が第1の補強部51aに接続されている。つまり、第1の緩衝部55aは、第1の補強部51aよりもさらにヘッドアッセンブリ先端側に配置されており、第1の補強部51aと第1のリンク部39aを連結している。この第1の緩衝部55aは、フレクシャ15のフレクシャ基板24をエッチング除去して形成されており、絶縁層41と、導体箔25で構成されている。ここで、第1のリンク部39aは、フレクシャ15のフレクシャ基板24を残して形成されており、フレクシャ基板24と、絶縁層41と、導体箔25であるヘッド素子配線25aで構成されている。これにより、第1の緩衝部55aは、第1の補強部51a及び第1のリンク部39aで構成された第1の変位伝達部よりも曲げ剛性の低い構成となっている。
【0042】
また、第2の緩衝部56aは、フレクシャの本体部15aと第2の補強部52aとの間に配置されており、一方端がフレクシャの本体部15aに接続され、他方端が第2の補強部52aに接続されている。つまり、第2の緩衝部56aは、第2の補強部52aよりもさらにヘッドアッセンブリ後端側に配置されており、第2の補強部52aとフレクシャの本体部15aを連結している。この第2の緩衝部56aは、フレクシャ15のフレクシャ基板24をエッチング除去して形成されており、絶縁層41と、導体箔25で構成されている。ここで、フレクシャの本体部15aは、フレクシャ15のフレクシャ基板24を残して形成されており、フレクシャ基板24と、絶縁層41と、導体箔25である駆動配線37a及びグランド配線37b(駆動素子配線部)で構成されている。これにより、第2の緩衝部56aは、第2の補強部52a及びフレクシャの本体部15aよりも曲げ剛性の低い構成となっている。
【0043】
本実施形態では、第1の緩衝部55aの導体箔25と第1の補強部51aの導体箔25は、第1の変位伝達部である第1のリンク部39aの導体箔25であるヘッド素子配線25a(ヘッド素子配線部)の一部を延伸して構成されている。つまり、第1の緩衝部55aの導体箔25は、ヘッド素子7に信号を伝達するヘッド素子配線25a(ヘッド素子配線部)で構成されていることとなる。また、第1のリンク部39aのフレクシャ基板24及び第1の補強部51aのフレクシャ基板24は、ヘッド素子配線25a(ヘッド素子配線部)を部分的に補強する補強板としての役割を果たすこととなる。また、本実施形態では、第2の緩衝部56aの導体箔25と第2の補強部52aの導体箔25は、フレクシャの本体部15aの導体箔25である駆動配線37a及びグランド配線37b(駆動素子配線)で一体的に構成されている。つまり、第2の緩衝部56aの導体箔25は、第1の駆動手段16aに信号を伝達する駆動配線37a及びグランド配線37b(駆動素子配線部)で構成されていることとなる。また、フレクシャの本体部15aのフレクシャ基板24及び第2の補強部52aのフレクシャ基板24は、駆動配線37a及びグランド配線37b(駆動素子配線部)を部分的に補強する補強板としての役割を果たすこととなる。なお、第1の緩衝部55aの導体箔25と第1の補強部51aの導体箔25の少なくともいずれか一つは、ヘッド素子配線25aと電気的に接続されていない独立したダミー配線で構成されてもよい。また、第2の緩衝部56aの導体箔25と第2の補強部52aの導体箔25の少なくともいずれか一つは、駆動配線37a及びグランド配線37b(駆動素子配線)と電気的に接続されていない独立したダミー配線を追加して設けてもよい。
【0044】
また、本実施形態では、第1の緩衝部55aの第1の補強部51a及び第1のリンク部39aで構成された第1の変位伝達部との連結方向(図示Y軸方向)における長さと、第2の緩衝部56aの第2の補強部52a及びフレクシャの本体部15aとの連結方向(図示Y軸方向)における長さは等しくなっている。つまり、第1の緩衝部55aと第2の緩衝部56aの第1の駆動手段16aの薄膜圧電体26の長辺方向の長さが等しくなっている。さらに、本実施形態では、第1の緩衝部55aの第1の駆動手段16aに対する離間距離は、第2の緩衝部56aの第1の駆動手段16aに対する離間距離と等しくなっており、第1の緩衝部55aと第2の緩衝部56aはともに絶縁層41と、導体箔25で構成されている。つまり、第1の緩衝部55aと第2の緩衝部56aは、第1の駆動手段16aの中心に対して点対称もしくは中心線に対して線対称の形状をなし、且つ、同一の構造を有している。
【0045】
図9bは、本発明の好適な実施形態に係るヘッドアッセンブリにおいて、第2の駆動手段のフレクシャに接着した部分を拡大した断面図である。第2の駆動手段16bは、第2の駆動素子支持部23b上に接着されている。第2の駆動手段16bは、第1の駆動手段16aと同様の構造であるため、第2の駆動素子支持部23bも第1の駆動素子支持部23aと同様の構造となる。すなわち、第2の駆動素子支持部23bは、本体支持部232と、第3の補強部51bと、第4の補強部52bと、第3の緩衝部55bと、第4の緩衝部56bと、を有する。本体支持部232は、第2の駆動手段16bの直下に位置し、絶縁層41のみから構成されている。この本体支持部232は、第2の駆動手段16bが接着される主要部分を構成している。第3の補強部51bは、第2の駆動手段16bのヘッドアッセンブリ先端側(スライダ3側)に配置され、第2の駆動手段16bにおける一方端の一部を支持している。言い換えれば、第2の駆動手段16bは、ヘッドアッセンブリ先端側が第3の補強部51bにオーバーラップした状態で本体支持部232に接着されている。これは、第2の駆動手段16bの薄膜圧電体26の変位を確実に第3の補強部51bに伝達するためである。この第3の補強部51bは、フレクシャ基板24を残して形成されており、フレクシャ基板24と、絶縁層41と、導体箔25で構成されている。第4の補強部52bは、第2の駆動手段16bのヘッドアッセンブリ後端側(ベースプレート13側)に配置され、第2の駆動手段16bにおける他方端の一部を支持している。言い換えれば、第2の駆動手段16bは、ヘッドアッセンブリ後端側が第4の補強部52bにオーバーラップした状態で本体支持部232に接着されている。この第4の補強部52bは、フレクシャ15のフレクシャ基板24を残して形成されており、フレクシャ基板24と、絶縁層41と、導体箔25で構成されている。このように構成される第3及び第4の補強部51b,52bは、第2の駆動手段16bの両端に位置している。より具体的には、第2の駆動手段16bのヘッドアッセンブリ先端側の端部は、鉛直方向から見て、本体支持部232及び第3の補強部51bと重なるように位置し、第2の駆動手段16bのヘッドアッセンブリ後端側の端部は、本体支持部232及び第4の補強部52bと重なるように位置していることとなる。第3の緩衝部55bは、第3の補強部51bと第2のリンク部39bで構成された第2の変位伝達部の間に配置されており、一方端が第2のリンク部39bに接続され、他方端が第3の補強部51bに接続されている。つまり、第3の緩衝部55bは、第3の補強部51bよりもさらにヘッドアッセンブリ先端側に配置されており、第3の補強部51bと第2のリンク部39bを連結している。この第3の緩衝部55bは、フレクシャ15のフレクシャ基板24をエッチング除去して形成されており、絶縁層41と、導体箔25で構成されている。ここで、第2の変位伝達部である第2のリンク部39bは、フレクシャ15のフレクシャ基板24を残して形成されており、フレクシャ基板24と、絶縁層41と、導体箔25であるヘッド素子配線25aで構成されている。これにより、第3の緩衝部55bは、第3の補強部51b及び第2のリンク部39bで構成された第2の変位伝達部よりも剛性の低い構成となっている。
【0046】
また、第4の緩衝部56bは、フレクシャの本体部15aと第4の補強部52bとの間に配置されており、一方端がフレクシャの本体部15aに接続され、他方端が第4の補強部52bに接続されている。つまり、第4の緩衝部56bは、第4の補強部52bよりもさらにヘッドアッセンブリ後端側に配置されており、第4の補強部52bとフレクシャの本体部15aを連結している。この第4の緩衝部56bは、フレクシャ15のフレクシャ基板24をエッチング除去して形成されており、絶縁層41と、導体箔25で構成されている。ここで、フレクシャの本体部15aは、フレクシャ15のフレクシャ基板24を残して形成されており、フレクシャ基板24と、絶縁層41と、導体箔25である駆動配線37a及びグランド配線37b(駆動素子配線部)で構成されている。これにより、第4の緩衝部56bは、第4の補強部52b及びフレクシャの本体部15aよりも剛性の低い構成となっている。
【0047】
本実施形態では、第3の緩衝部55bの導体箔25と第3の補強部51bの導体箔25は、第2の変位伝達部である第2のリンク部39bの導体箔25であるヘッド素子配線25a(ヘッド素子配線部)の一部を延伸して構成されている。つまり、第3の緩衝部55bの導体箔25は、ヘッド素子7に信号を伝達するヘッド素子配線25a(ヘッド素子配線部)で構成されていることとなる。また、第2のリンク部39bのフレクシャ基板24及び第3の補強部51bのフレクシャ基板24は、ヘッド素子配線25a(ヘッド素子配線部)を部分的に補強する補強板としての役割を果たすこととなる。また、本実施形態では、第4の緩衝部56bの導体箔25と第4の補強部52bの導体箔25は、フレクシャの本体部15aの導体箔25である駆動配線37a及びグランド配線37b(駆動素子配線)で一体的に構成されている。つまり、第4の緩衝部56bの導体箔25は、第2の駆動手段16bに信号を伝達する駆動配線37a及びグランド配線37b(駆動素子配線部)で構成されていることとなる。また、フレクシャの本体部15aのフレクシャ基板24及び第4の補強部52bのフレクシャ基板24は、駆動配線37a及びグランド配線37b(駆動素子配線部)を部分的に補強する補強板としての役割を果たすこととなる。なお、第3の緩衝部55bの導体箔25と第3の補強部51bの導体箔25の少なくともいずれか一つは、ヘッド素子配線25aと電気的に接続されていない独立したダミー配線で構成されてもよい。また、第4の緩衝部56bの導体箔25と第4の補強部52bの導体箔25の少なくともいずれか一つは、駆動配線37a及びグランド配線37b(駆動素子配線)と電気的に接続されていない独立したダミー配線を追加して設けてもよい。
【0048】
また、本実施形態では、第3の緩衝部55bの第3の補強部51b及び第2のリンク部39bで構成された第2の変位伝達部との連結方向(図示Y軸方向)における長さと、第4の緩衝部56bの第4の補強部52b及びフレクシャの本体部15aとの連結方向(図示Y軸方向)における長さは等しくなっている。つまり、第3の緩衝部55bと第4の緩衝部56bの第2の駆動手段16bの薄膜圧電体26の長辺方向の長さが等しくなっている。さらに、本実施形態では、第3の緩衝部55bの第2の駆動手段16bに対する離間距離は、第4の緩衝部56bの第2の駆動手段16bに対する離間距離と等しくなっており、第3の緩衝部55bと第4の緩衝部56bはともに絶縁層41と、導体箔25で構成されている。つまり、第3の緩衝部55bと第4の緩衝部56bは、第2の駆動手段16bの中心に対して点対称の形状であり、中心線に対して線対称の形状をなしており、且つ、同一の構造を有している。
【0049】
なお、第1の変位伝達部は、第1の駆動リブ36aで構成してもよい。このとき、第1の変位伝達部である駆動リブ36aは、
図8cに示してあるように、スライダ支持板20の一部を延出したフレクシャ基板24と、絶縁層41と、導体箔25で構成されている。このとき、第1の変位伝達部である第1の駆動リブ36aと第1の補強部51aの間に配置された第1のジョイント40aは、第1の緩衝部55aと看做すことができる構成である。すなわち、フレクシャ15のフレクシャ基板24をエッチング除去したヘッド素子配線25a(ヘッド素子配線部)で形成されており、第1の緩衝部55aである第1のジョイント40aは、第1の変位伝達部である第1の駆動リブ36aと第1の補強部51aに比べて曲げ剛性の低い構成である。なお、第2の変位伝達部についても同様に、第2の駆動リブ36bで構成してもよい。
【0050】
図10は、本発明の好適な実施形態に係るヘッドアッセンブリにおいて、動作時の第1の駆動手段を拡大した断面図である。
図10では、第1の駆動手段16aの動作状態として、第1の電極パッド29aにプラス電圧を印加し、第2の電極パッド29bにマイナス電圧を印加した状態を示してある。すなわち、第1の駆動手段16aの薄膜圧電体26は、電圧印加により伸長している状態である。薄膜圧電体26は伸長する一方で、薄膜圧電体26の下面側にある第1の駆動素子支持部23aは伸長しないため、変位差から第1の駆動手段16aの上面側(図中Z軸正方向)に凸となるように湾曲し、反りを生じる。このとき、第1の補強部51aと第2の補強部52aは、第1の駆動手段16aに一体的に固定連結しているため、第1の駆動手段16aの湾曲に沿って変位する。
【0051】
上述したように、第1の緩衝部55aは、フレクシャ基板24をエッチング除去した構成となっており、フレクシャ基板24を含む構成となっている第1の補強部51a及び第1のリンク部39aで構成された第1の変位伝達部と比較してその断面方向で柔軟な構成となっている。したがって、第1の駆動手段16aの湾曲により発生するモーメント(
図10中−M)は、第1の緩衝部55aと第2の緩衝部56aに生じる反対方向のモーメント(M)で釣り合う。第1及び第2の緩衝部55a,56aは、曲げ剛性が小さいので反対方向に生じるモーメントMは、第1及び第2の緩衝部55a,56aの曲げ剛性が小さいほど緩和軽減される。また、第1及び第2の緩衝部55a,56aの曲げ剛性が等しいとき、第1の緩衝部55aの一方端に連結している第1のリンク部39aに加わる鉛直方向の反力(F)は極めて小さくなる。上述のように、第1の変位伝達部である第1のリンク部39aは、スライダ支持板20と機械的に連結しており、そのスライダ支持板20は、上面側に接着固定されたスライダ3がディスク面のうねりに対応して浮上姿勢をスムーズに追従できるように、下面側でロードビーム14に設けられた支点突起21と点接触するピボット構造となるよう形成されている。したがって、第1のリンク部39aの反力(F)小さくすることで鉛直方向の変位や不要な振動を低減し、ロードビーム14のスウェイモードなどの共振を励起することを抑制することができ不要な振動が低減される。さらに、スライダ3を含めた回動部が構成されているフレクシャ15の先端部の共振を励起することを抑制することができ、スライダ3の浮上姿勢の安定化した制御が可能となる。
【0052】
同様に、第1及び第2の緩衝部55a,56aの曲げ剛性が等しいとき、第2の緩衝部56aの一方端に連結しているフレクシャの本体部15aに加わる鉛直方向の反力も(F)も極めて小さくなる。フレクシャの本体部15aは、フレクシャ15の一部分として構成されており、第2のビーム溶接ポイント17bが設けられている。フレクシャの本体部15aは、この第2のビーム溶接ポイント17bによりロードビーム14に固着されている。したがって、フレクシャの本体部15aの反力(F)を小さくすることで、ロードビーム14のスウェイモードなどの共振を励起することを抑制することができ、不要な振動が低減される。なお、第1の緩衝部55aと第2の緩衝部56aの曲げ剛性が等しくない場合は,鉛直方向の反力(F)が生じる。したがって、第1及び第2の緩衝部55a,56aの曲げ剛性がより小さく且つ、その曲げ剛性が等しいとき反力(F)が最も小さくできる。
【0053】
なお、ロードビーム14の中心線に線対称となるよう配置され、それぞれが同様の構造を有する第2の駆動手段16b、第3の補強部51b、第3の緩衝部55b、第2の変位伝達部である第2のリンク部39b、第4の補強部52b、及び第4の緩衝部56bについては図示しないが、上述のように、第1の駆動手段16aと第2の駆動手段16bは、お互い逆方向に伸縮運動することでスライダ3を回動するような構成としているため、動作時の第2の駆動手段16bの湾曲方向は、第1の駆動手段16aとは逆方向になる。すなわち、第1の駆動手段16aが、伸長して上面側に凸となるように湾曲している場合では、第2の駆動手段16bは下面側に凸となるように湾曲し、第2の駆動手段16bの湾曲により発生する鉛直方向の反力(F)は、第1の駆動手段16aと逆方向になり、ヘッドアッセンブリ2の中心線に対して左右非対称となることから、第1の駆動手段16aと第2の駆動手段16bの湾曲により発生する鉛直方向の反力(F)を軽減することは、ロードビーム14のスウェイモードや1次及び2次ねじれモードなどの共振を励起することを効率的に抑制することができる。また、第1のリンク部39aと第2のリンク部39bは、それぞれ第1の駆動手段16aと第2の駆動手段16bと機械的に連結しているので、第1の駆動手段16aと第2の駆動手段16bの湾曲に沿って互いに逆方向へ変位しようとする。すなわち、第1のリンク部39aと第2のリンク部に加わる反力(F)が逆方向となることから、第1の緩衝部55a及び第3の緩衝部55bの作用により、第1の駆動手段16a及び第2の駆動手段16bの湾曲により発生する第1の変位伝達部である第1のリンク部39a及び第2の変位伝達部である第2のリンク部39bの鉛直方向の変位や反力(F)を軽減することは、ロードビーム14のスウェイモードや1次及び2次ねじれモードなどの共振や、スライダ3を含めた回動部が構成されているフレクシャ15の先端部の共振を励起することを効率的に抑制することができ、スライダ3の浮上姿勢の安定化した制御を効果的に行うことができる。
【0054】
以上のように、本実施形態に係るヘッドアッセンブリ2においては、第1の駆動素子支持部23aは、第1の駆動手段16aの両端に位置する第1及び第2の補強部51a,52aと、第1の補強部51aと第1のリンク部39aで構成された第1の変位伝達部を連結し、第1の補強部51a及び第1のリンク部39aで構成された第1の変位伝達部よりも曲げ剛性の低い第1の緩衝部55aと、第2の補強部52aとフレクシャの本体部15aを連結し、第2の補強部52a及びフレクシャの本体部15aよりも曲げ剛性の低い第2の緩衝部56aと、を有し、第2の駆動素子支持部23bは、第2の駆動手段16bの両端に位置する第3及び第4の補強部51b,52bと、第3の補強部51bと第2のリンク部39bで構成された第2の変位伝達部を連結し、第3の補強部51b及び第2のリンク部39bで構成された第2の変位伝達部よりも曲げ剛性の低い第3の緩衝部55bと、第4の補強部52bとフレクシャの本体部15aを連結し、第4の補強部52b及びフレクシャの本体部15aよりも曲げ剛性の低い第4の緩衝部56bと、を有している。そのため、曲げ剛性の低い第1〜第4の緩衝部55a,56a,55b,56bによって、動作時における第1及び第2の駆動手段16a,16bの反りによる鉛直方向の反力が低減される。したがって、第1及び第2の駆動手段16a,16bの鉛直方向の反力を低減することで不要な共振を抑制することができる。また、第1及び第2の駆動手段16a,16bの鉛直方向の反りによる反力(F)を低減することで、第1及び第2の駆動手段16a,16bの変位が平面方向に伝達されてヘッド素子7の変位量を増幅させることができる。その結果、効率的にヘッド素子7の変位量を得ることが可能となる。
【0055】
また、本実施形態に係るヘッドアッセンブリ2においては、第1の緩衝部55aと第3の緩衝部55bは、ヘッド素子7に信号を伝達するヘッド素子配線25a(ヘッド素子配線部)で構成され、第2の緩衝部56aと第4の緩衝部56bは、第1の駆動手段16aと第2の駆動手段16bに信号を伝達する駆動配線37a(駆動素子配線部)とグランド配線37bで構成され、第1の補強部51a及び第1のリンク部39aで構成された第1の変位伝達部と、第3の補強部51b及び第2のリンク部39bで構成された第2の変位伝達部は、ヘッド素子配線25a(ヘッド素子配線部)を部分的に補強する補強板を有し、第2の補強部52aと第4の補強部52bは、駆動配線37a(駆動素子配線部)を部分的に補強する補強板を有している。そのため、第1及び第2の駆動手段16a,16bの反りによる鉛直方向の反力を曲げ剛性の低い第1〜第4の緩衝部55a,56a,55b,56bで吸収して、第1及び第2の駆動手段16a,16bの鉛直方向の反りによる反力を低減することで、不要な共振を抑制することができるとともに駆動素子の変形を効率よく伝達するので、ヘッド素子7の変位量を増幅させることができる。また、第1〜第4の緩衝部55a,56a,55b,56bは、ヘッド素子配線25a(ヘッド素子配線部)及び駆動配線37a(駆動素子配線部)の形成時に一括的に加工形成することが可能であるため、新たな工程を追加することなく、不要な共振を抑制することができるとともに、ヘッド素子7の変位量を増幅させることができる。
【0056】
さらに、本実施形態に係るヘッドアッセンブリ2においては、第1の緩衝部55aの第1の補強部51aと第1のリンク部39aで構成された第1の変位伝達部との連結方向における長さは、第2の緩衝部56aの第2の補強部52aとフレクシャの本体部15aとの連結方向における長さと等しく、第3の緩衝部55bの第3の補強部51bと第2のリンク部39bで構成された第2の変位伝達部との連結方向における長さは、第4の緩衝部56bの第4の補強部52bとフレクシャの本体部15aとの連結方向における長さと等しい。そのため、第1の緩衝部55a、第2の緩衝部56a、第3の緩衝部55b及び第4の緩衝部56bの曲げ剛性が等しくなる。これによって第1及び第2の駆動手段16a,16bの反りによる鉛直方向の反力を低減することができる。したがって、不要な共振を一層抑制することができるとともにヘッド素子7の変位量をさらに一層増幅させることができる。
【0057】
またさらには、本実施形態に係るヘッドアッセンブリ2においては、第1の緩衝部55aと第2の緩衝部56aは、第1の駆動手段16aの中心に対して点対称もしくは中心線に対して線対称の形状及び同一の構造を有し、第3の緩衝部55bと第4の緩衝部56bは、第2の駆動手段16bの中心に対して点対称もしくは中心線に対して線対称の形状及び同一の構造を有している。そのため、第1及び第2の駆動手段16a,16bの反りによる鉛直方向の反力が第1及び第2のリンク部39a,39bで構成された第1及び第2の変位伝達部とフレクシャの本体部15aに均等に加わることとなり、効率的に反力を低減することができる。したがって、不要な共振を一層抑制することができるとともにヘッド素子7の変位量を一層増幅させることができる。
【0058】
以下、本実施形態によって、動作時における薄膜圧電素子の湾曲による反りの反力を低減して不要な共振を抑制し、効率的にヘッド素子の変位量を得ることができることを実施例1と比較例1とによって具体的に示す。実施例1として、本実施形態に係るヘッドアッセンブリ2を用いた。実施例1においては、第1〜第4の緩衝部55a,56a,55b,56bの薄膜圧電体26の長辺方向(
図9中のY軸方向)の長さL1を0.145mmとした。第1〜第4の緩衝部55a,56a,55b,56bは、絶縁層41と導体箔25及び配線カバー42で構成し、第1〜第4の補強部51a,52a,51b,52bと、第1の変位伝達部である第1のリンク部39aと第2の変位伝達部である第2のリンク部39b、及びフレクシャの本体部15aは、フレクシャ基板24と絶縁層41と導体箔25及び配線カバー42で構成した。第1及び第2の緩衝部55a,56aと第1及び第2の補強部51a,52aの絶縁層41の幅(
図9中のX軸方向)は、第1の駆動手段16aを接着維持する第1の駆動素子支持部23aの本体支持部231と同じ幅となるように構成し、導体箔25の幅は、第1の駆動手段16aを構成している薄膜圧電体26と同じ幅で構成した。同様に、第3及び第4の緩衝部55b,56bと第3及び第4の補強部51b,52bの絶縁層41の幅(
図9中のX軸方向)は、第2の駆動手段16bを接着維持する第2の駆動素子支持部23bの本体支持部232と同じ幅で構成し、導体箔25の幅は、第2の駆動手段16bの薄膜圧電体26と同じ幅で構成した。また、第1〜第4の補強部51a,52a,51b,52bのフレクシャ基板24の幅は、それぞれの補強部を構成している絶縁層41と同じ幅で構成した。なお、第1の緩衝部55aと第3の緩衝部55bを構成する導体箔25は、ヘッド素子配線25a(ヘッド素子配線部)の一部を延伸して構成したが、薄膜圧電体26とは電気的に接続していない。また、第2の緩衝部56aと第4の緩衝部56bを構成する導体箔25は、駆動配線37a及びグランド配線37b(駆動素子配線部)で構成した。
【0059】
比較例1として、実施例1と特性比較をするために、本実施形態に係るヘッドアッセンブリ2において、第1〜第4の緩衝部55a,56a,55b,56bの下面側のフレクシャ基板24をエッチングプロセスにより除去せずに残したヘッドアッセンブリを用いた。すなわち、第1〜第4の緩衝部55a,56a,55b,56bは、フレクシャ基板24と、導体箔25と、絶縁層41及び配線カバー42で構成したものである。言い換えれば、第1の変位伝達部である第1のリンク部39aと第1の緩衝部55aと第1の補強部51aは、同じ断面構成を有して一体化しており、第1の緩衝部55aと第1の補強部51aを設けず、第1のリンク部39aの一部を延伸して第1の駆動手段16aを支持していると看做すことができる。第2の補強部52aと第2の緩衝部56aとフレクシャの本体部15aは、同じ断面構成を有して一体化しており、第2の補強部52aと第2の緩衝部56aを設けず、フレクシャの本体部15aを延伸して第1の駆動手段16aを支持していると看做すことができる構成である。同様に、第2の変位伝達部である第2のリンク部39bと第3の緩衝部55bと第3の補強部51bは、同じ断面構成を有して一体化しており、第3の緩衝部55bと第3の補強部51bを設けず、第2のリンク部39bの一部を延伸して第2の駆動手段16bを支持していると看做すことができ、第4の補強部52bと第4の緩衝部56bとフレクシャの本体部15aは、同じ断面構成を有して一体化しており、第4の補強部52bと第4の緩衝部56bを設けず、フレクシャの本体部15aを延伸して第1の駆動手段16bを支持していると看做すことができる構成である。
【0060】
図11は、実施例1のヘッドアッセンブリ及び比較例1のヘッドアセンブリの第1及び第2の駆動手段の動作時における周波数応答特性を示す図である。第1及び第2の駆動手段16a,16bによりスライダ3を微小変位させるときの反力が、ロードビーム14の共振周波数での共振を励起し、
図11中に示すようなロードビーム14の横揺れ(スウェイ)モードによる共振点のfr1が現れる。また、
図11中のfr2は、スライダ3のヨー方向の共振点の1つである。ここで、第1及び第2の駆動手段16a,16bによりスライダ3を回動駆動する機構によって、ヘッド素子7の位置を微小調整する場合、その共振のピークゲインは小さい方が望ましい。比較例1の場合、スウェイモードによる共振点のfr1のピークが24.2kHz付近で約13dB、スライダ3のヨー方向の共振点の1つであるfr2のピークが27.3kHz付近で約13dBあるが、実施例1ではfr1及びfr2のピークがなくなり、抑制されていることがわかる。つまり、実施例1では、第1及び第2の駆動手段16a,16bの動作時におけるロードビーム14で励起されたスウェイモードによる共振振動と、スライダ3とスライダ支持基板20を含めた回動部構成されているフレクシャ15の先端部の共振振動が、第1〜第4の緩衝部55a,56a,55b,56bにより大きく抑制されたことが確認できた。
【0061】
このとき、駆動信号として、±1.0Vの電圧を印加したときの実施例1におけるヘッド素子7のヘッドアッセンブリ2の中心軸に垂直な方向(
図2におけるX軸方向)のヘッド変位量x1は、5.9[nm/V]、比較例1におけるヘッド変位量は、5.4[nm/V]であった。このことは、第1及び第3の緩衝部55a,55bが、第1及び第2の変位伝達部である第1及び第2のリンク部39a,39bと第1及び第3の補強部51a,51bより曲げ剛性が低い構成のため第1及び第2の駆動手段16a,16bの湾曲による反力を、第1及び第2の緩衝部55a,55bが変形することで吸収し、第1及び第2の駆動手段16a,16bの伸縮により発生する力が効率よくヘッドアッセンブリ2の平面方向に作用し、ヘッド変位量を増幅させることができることを確認できた。