【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)文部科学省平成24年度科学技術委託研究事業「日本の特長を活かしたBMIの統合的研究開発」(BMIのための非侵襲脳活動計測装置NIRS−EEGシステムの開発)に係わる委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プローブ部は、計測光を送光または受光する光計測プローブと、電極部を備えた脳波計測プローブとの、少なくともいずれかの前記計測プローブを含む、請求項1に記載の脳機能計測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許第4408878号公報に開示されたような脳機能計測装置では、保持部が被験者の頭部と密着した状態(被験者の頭部を支持する状態)で、装着部材の開口部や保持部の髪避け穴などの小さな隙間から髪避け作業を行わなければならず、髪避け作業が煩雑で時間がかかるという問題点がある。また、上記の脳機能計測装置では、被験者以外の補助者により髪避け作業が実施されることが前提となっており、被験者自身によって髪避けを行うことは困難であるという問題点がある。近年では、たとえば在宅でのリハビリテーションなどで、被験者自身によって脳機能計測を実施することを可能とすることへのニーズが増えつつあり、補助者などによって髪避け作業を行う場合のみならず、被験者自身によって髪避け作業を行えるように髪避け作業を容易化することが望まれている。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、脳機能計測の際の髪避け作業を容易化することが可能な脳機能計測装置および脳機能計測装置用プローブホルダを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面における脳機能計測装置は、被験者の頭部側に位置する一端部で計測を行う計測プローブを含むプローブ部と、被験者の頭部に装着されるとともにプローブ部を保持する保持部とを備え、保持部は、計測プローブの一端部を被験者の頭部側に向けて突出させた状態で、プローブ部の一端部とは反対の他端部側を保持することにより、被験者の頭部から離間した位置に配置されており、保持部は、保持部と被験者の頭部との間から頭髪をかき分けることが可能な所定間隔分だけ被験者の頭部から離間した状態で、かつ、プローブ部の一端部側を外部から頭髪をかき分けることが可能なように露出させた状態で、プローブ部の他端部側を保持するように構成されて
おり、保持部は、複数のプローブ部の他端部側を保持するベース部材と、ベース部材を被験者の頭部から離間した状態で支持する支持部材とを含み、保持部は、ベース部材を支持部材に対して揺動可能に接続する接続部材と、ベース部材を介して複数のプローブ部を被験者の頭部側に向けて押圧する押圧部材とをさらに含む。
【0009】
この発明の第1の局面による脳機能計測装置では、上記のように、計測プローブの一端部を被験者の頭部側に向けて突出させた状態で、プローブ部の一端部とは反対の他端部側を保持することにより、被験者の頭部から離間した位置に配置されるように保持部を構成することによって、保持部を被験者の頭部に装着させてプローブ部(計測プローブ)の一端部を被験者の頭部表面と接触させた状態で、プローブ部の一端部から他端部側の保持位置までの長さ分だけ被験者の頭部表面と保持部とを離間させてスペースを形成することができる。これにより、プローブ部の一端部を被験者の頭部表面と接触させてから、被験者の頭部表面と、保持部との間のスペースで髪避け作業を行うことができる。この場合、髪避け穴などの小さな隙間から髪避け作業を行う必要がなく、たとえば頭部表面と保持部との間の広いスペースで指や棒状の道具を差し込んで頭髪をかき分けることができるので、髪避け作業を容易化することができる。その結果、髪避け作業の作業時間も短縮することができるとともに、被験者の頭部表面と保持部との間にスペースができるので、計測プローブの位置(計測部位)によっては被験者自身でも髪避け作業を行えるようになる。また、保持部を被験者の頭部に装着させてプローブ部の一端部を被験者の頭部表面と接触させた状態で、被験者の頭部表面と保持部との間に、髪避け作業(頭髪のかき分け作業)を行うのに十分な所定間隔分のスペースを確保することができる。これにより、脳機能計測の際の髪避け作業をさらに容易化することができる。
また、複数のプローブ部をベース部材にまとめて保持させ、このベース部材を支持部材によって支持することができるので、たとえば複数のプローブ部の他端部側を個別に保持する場合と比較して、プローブ部の保持構造を簡素化することができる。また、ベース部材に保持された個々のプローブ部の被験者の頭部に対する接触状態にアンバランスがある場合に、押圧部材の押圧力によってベース部材を傾ける(揺動させる)ことができるので、個々のプローブ部が頭部に対して均等に接触するようにベース部材の頭部表面に対する傾きを自動調節することができる。これにより、複数のプローブ部をベース部材に保持させる構成においても、各プローブ部(計測プローブ)の一端部と頭部表面との接触状態を確保することができる。
【0011】
上記第1の局面による脳機能計測装置において、好ましくは、プローブ部は、計測プローブを着脱可能に保持する装着部をさらに含み、装着部は、保持部から被験者の頭部側に向けて突出するように形成されるとともに、装着部の計測プローブが配置される側とは反対の端部側が保持部により保持されるように構成されている。このように構成すれば、計測プローブが装着される装着部によって保持部と被験者の頭部との間のスペースを確保(拡大)することができる。この結果、たとえば保持部と被験者の頭部との間のスペースを確保するために計測プローブの一端部と他端部との間を長大化することなく、従来通りの計測プローブを用いる場合にも、容易に、頭部表面と保持部との間にスペースを形成することができる。
【0014】
上記保持部が接続部材と押圧部材とを含む構成において、好ましくは、接続部材は、両端がベース部材と支持部材とにそれぞれ接続された板状の弾性部材を有する。このように構成すれば、板状の弾性部材の曲げやねじりによって、ベース部材を支持部材に対して揺動させることができる。これにより、ベース部材を支持部材に対して揺動可能に接続する接続部材を備える構成を、極めて簡単な構造によって実現することができる。
【0015】
上記保持部が接続部材と押圧部材とを含む構成において、好ましくは、接続部材は、支持部材とベース部材とを回動可能に接続する関節部を有する。このように構成すれば、関節部の回動によって、ベース部材を支持部材に対して揺動させることができる。これにより、ベース部材を支持部材に対して揺動可能に接続する接続部材を備える構成を容易に実現することができる。また、関節部に1または複数の回動軸を設けるなどによって、所望の揺動(回動)方向にのみ回動し、不所望の揺動(回動)方向には回動しない構成を得ることができるので、不所望の方向への位置ずれを抑制し、被験者の頭部に対するベース部材(すなわち、計測プローブ)の位置合わせを容易に行うことができる。
【0016】
上記プローブ部が装着部を含む構成において、好ましくは、保持部は、複数のプローブ部を保持し、装着部は、計測プローブ毎に個別に設けられており、隣接する装着部と互いに間隔を隔てて離間するように保持部に配置されている。このように構成すれば、保持部から頭部側に突出するプローブ部において、隣接する装着部同士の間にスペースを形成することができる。これにより、たとえば複数のプローブ部を保持する共通の(単一の)装着部が隣接するプローブ部の間で隙間なく設けられる場合と比較して、被験者の頭部表面と保持部との間で髪避け作業を行うことが可能なスペースをより多く確保することができる。
【0017】
上記プローブ部が装着部を含む構成において、好ましくは、装着部は、計測プローブを他端部側方向に移動可能に保持するように構成され、プローブ部は、装着部に保持された計測プローブを一端部側に向けて付勢する付勢部材を有する。このように構成すれば、計測プローブの一端部が被験者の頭部表面に接触した際に接触位置がばらついた場合でも、計測プローブを他端部側方向にストロークさせて確実に一端部を被験者の頭部に接触させることができる。すなわち、被験者の頭部の形状は個人差が大きいので、頭部との接触位置に応じて計測プローブを変位させることにより、確実に計測プローブを被験者の頭部に接触させることができる。また、付勢部材によって、被験者が動いた場合や保持部が何らかの障害物に接触した場合などにも計測プローブの接触状態を維持することができる。
【0018】
上記第1の局面による脳機能計測装置において、好ましくは、プローブ部は、被験者の頭部側の一端部に向けて先細り形状を有する。このように構成すれば、被験者の頭部表面近傍(一端部近傍)において計測プローブの一端部の周囲にスペースを形成することができるので、髪避け作業を行うことが可能なスペースをより多く確保することができる。また、頭髪が計測の妨げとならないようにするためには、計測プローブの一端部が接触する計測位置近傍の頭髪を避ける必要があることから、計測位置近傍の髪避け作業をより容易化することができる。
【0019】
上記第1の局面による脳機能計測装置において、好ましくは、プローブ部は、計測光を送光または受光する光計測プローブと、電極部を備えた脳波計測プローブとの、少なくともいずれかの計測プローブを含む。このように構成すれば、光計測プローブを用いる場合には頭髪が計測光を遮るために髪避け作業が必要となり、脳波計測プローブを用いる場合にも電極を確実に接触させるために髪避け作業が必要となるので、髪避け作業を容易化することができる本発明は、光計測プローブや脳波計測プローブを用いる場合に特に有効である。また、脳波計測では頭皮に導電性のジェルを塗布する場合(湿式計測)もあり、そのような塗布作業も容易化することができる。
【0020】
この発明の第2の局面における脳機能計測装置用プローブホルダは、被験者の頭部側に位置する一端部で計測を行う計測プローブが取り付けられる装着部と、被験者の頭部に装着されるとともに、装着部に取り付けられた計測プローブを保持する保持部とを備え、保持部は、計測プローブの一端部を被験者の頭部側に向けて突出させた状態で、計測プローブまたは装着部の一端部とは反対の他端部側を保持することにより、被験者の頭部から離間した位置に配置されており、保持部は、保持部と被験者の頭部との間から頭髪をかき分けることが可能な所定間隔分だけ被験者の頭部から離間した状態で、かつ、プローブ部の一端部側を外部から頭髪をかき分けることが可能なように露出させた状態で、プローブ部の他端部側を保持するように構成されて
おり、保持部は、複数のプローブ部の他端部側を保持するベース部材と、ベース部材を被験者の頭部から離間した状態で支持する支持部材とを含み、保持部は、ベース部材を支持部材に対して揺動可能に接続する接続部材と、ベース部材を介して複数のプローブ部を被験者の頭部側に向けて押圧する押圧部材とをさらに含む。
【0021】
この発明の第2の局面による脳機能計測装置用プローブホルダでは、上記のように、計測プローブの一端部を被験者の頭部側に向けて突出させた状態で、計測プローブまたは装着部の一端部とは反対の他端部側を保持することにより、被験者の頭部から離間した位置に配置されるように保持部を構成することによって、保持部を被験者の頭部に装着させて計測プローブの一端部を被験者の頭部表面と接触させた状態で、計測プローブの一端部から他端部側の保持位置までの長さ分だけ被験者の頭部表面と保持部とを離間させてスペースを形成することができる。これにより、計測プローブの一端部を被験者の頭部表面と接触させてから、被験者の頭部表面と、保持部との間のスペースで髪避け作業を行うことができる。この場合、髪避け穴などの小さな隙間から髪避け作業を行う必要がなく、たとえば頭部表面と保持部との間の広いスペースで指や棒状の道具を差し込んで頭髪をかき分けることができるので、髪避け作業を容易化することができる。その結果、髪避け作業の作業時間も短縮することができるとともに、被験者の頭部表面と保持部との間にスペースができるので、計測プローブの位置(計測部位)によっては被験者自身でも髪避け作業を行えるようになる。また、保持部を被験者の頭部に装着させてプローブ部の一端部を被験者の頭部表面と接触させた状態で、被験者の頭部表面と保持部との間に、髪避け作業(頭髪のかき分け作業)を行うのに十分な所定間隔分のスペースを確保することができる。これにより、脳機能計測の際の髪避け作業をさらに容易化することができる。
また、複数のプローブ部をベース部材にまとめて保持させ、このベース部材を支持部材によって支持することができるので、たとえば複数のプローブ部の他端部側を個別に保持する場合と比較して、プローブ部の保持構造を簡素化することができる。また、ベース部材に保持された個々のプローブ部の被験者の頭部に対する接触状態にアンバランスがある場合に、押圧部材の押圧力によってベース部材を傾ける(揺動させる)ことができるので、個々のプローブ部が頭部に対して均等に接触するようにベース部材の頭部表面に対する傾きを自動調節することができる。これにより、複数のプローブ部をベース部材に保持させる構成においても、各プローブ部(計測プローブ)の一端部と頭部表面との接触状態を確保することができる。
【発明の効果】
【0022】
上記のように、本発明によれば、脳機能計測の際の髪避け作業を容易化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
(第1実施形態)
まず、
図1〜
図8を参照して、本発明の第1実施形態による光計測装置100の全体構成について説明する。第1実施形態では、脳機能計測装置の一例として、計測光を被験体(被験者)に照射して脳機能計測を行う光計測装置に本発明を適用した例について説明する。光計測装置100は、本発明の「脳機能計測装置」の一例である。
【0026】
光計測装置100は、本体部1と、本体部1に接続された複数の計測プローブ2(送光用プローブTPおよび受光用プローブRP)と、計測プローブ2を頭部101の表面上の所定位置に配置するためのホルダ3とを備えている。計測プローブ2は、計測光を送光または受光する光計測プローブである。なお、計測プローブ2は、本発明の「光計測プローブ」の一例である。また、ホルダ3は、本発明の「脳機能計測装置用プローブホルダ」の一例である。
【0027】
図2に示すように、本体部1は、計測プローブ2(送光用プローブTP)に計測光を出力する光出力部11と、計測プローブ2(受光用プローブRP)に入射した計測光を検出する光検出部12とを含む。光出力部11は、たとえば半導体レーザーを光源として備えている。光検出部12は、たとえば光電子増倍管を検出器として備えている。また、本体部1は、光出力部11および光検出部12の動作制御を行う計測制御部13と、各種プログラムを実行して光計測装置100全体の計測動作制御を実行する本体制御部14とを備えている。また、本体部1は、本体制御部14が実行する各種プログラムや、計測の結果得られた計測データを記憶する主記憶部15を収容している。また、光計測装置100は、本体部1と接続された表示部16および操作入力部17を備えている。光計測装置100は、接続可能な総プローブ数がN+M個であり、最大でN個の送光用プローブTPと、最大でM個の受光用プローブRPとを接続可能となっている。第1実施形態では、1つのホルダ3につき、合計8個(送光用プローブTPおよび受光用プローブRPを各4個)の計測プローブ2が取り付けられるように構成されている。
【0028】
複数の計測プローブ2は、機能上、送光用プローブTPと受光用プローブRPとから構成されるが、構成上は、送光用プローブTPも受光用プローブRPも同様である。光計測装置100は、近赤外光の波長領域の計測光を被験体(被験者)の頭部表面上に配置した送光用プローブTPから照射する。そして、被験体内で反射した計測光を頭部表面上に配置した受光用プローブRPに入射させて検出することにより、計測光の強度(受光量)を取得する。
【0029】
ここで、脳活動を反映して、脳内のヘモグロビン量が活性化部位で増大すると、ヘモグロビンによる計測光の吸収量が増大する。このため、取得した計測光の強度に基づいて脳活動に伴うヘモグロビン量の変化を取得することが可能である。なお、ヘモグロビンは酸素と結合したオキシヘモグロビンと、酸素と結合していないデオキシヘモグロビンとに分けられ、互いに吸光特性が異なる。このため、吸光特性の相違を考慮した複数波長(たとえば、780nm、805nmおよび830nmの3波長)の計測光を用いて計測を行い、得られたそれぞれの波長の計測光の強度(受光量)に基づいて、各ヘモグロビン量および総量の算出が行われる。
【0030】
この結果、受光用プローブRPに入射した計測光の強度(受光量)に基づいて脳活動に伴うヘモグロビン量の変化、すなわち血流量の変化や酸素代謝の活性化状態を非侵襲で取得することが可能である。光計測装置は、複数の送光用プローブTPおよび複数の受光用プローブRPを用いて脳領域を複数点(計測チャンネル)で計測することにより、脳のどの領域がどのように活動しているかの2次元分布を取得することが可能となっている。
【0031】
図3に示すように、計測プローブ2は、光ファイバケーブル(以下、光ファイバという)21と、光ファイバ21を保持するファイバヘッド22とを含む。計測プローブ2は、被験者の頭部101側(
図4参照)に位置する一端部(先端部)23で計測を行うように構成されている。すなわち、計測プローブ2の一端部23には、光ファイバ21の一端が露出(図示せず)しており、一端部23で計測光を出射または入射させることが可能である。計測プローブ2は、先端(ファイバヘッド22)で屈曲したL型タイプである。ファイバヘッド22は、光ファイバ21を内側に保持する樹脂製(たとえばPOMなど)の筒状部材である。そして、光ファイバ21は、L字型のファイバヘッド22の内部で屈曲され、ファイバヘッド22から先端側の部分が約90度屈曲している。
【0032】
図4および
図5に示すように、計測プローブ2は、計測プローブ2を頭部101の表面上の所定位置に配置するためのホルダ3に取り付けられている。ホルダ3は、被験者の頭部101側に位置する一端部23で計測を行う計測プローブ2が取り付けられる複数(8個)の装着部31と、被験者の頭部101に装着されるとともに、装着部31に取り付けられた計測プローブ2を保持する保持部32とを備えている。第1実施形態では、8個の装着部31は、それぞれ計測プローブ2が取り付けられることにより、計測プローブ2とともに8個のプローブ部50を構成している。また、保持部32は、支持部材41と、固定部材42と、一対の接続部材43と、一対のベース部材44と、押圧部材45とを含んでいる。そして、8個のプローブ部50(8個の装着部31および各装着部31に取り付けられた8本の計測プローブ2)が、一対のベース部材44にそれぞれ4個ずつ保持されている。なお、接続部材43は、本発明の「弾性部材」の一例である。
【0033】
脳機能計測におけるプローブ配置は、国際10−20法に従って設定されることが多い。国際10−20法では、鼻根と後頭結節とを結ぶ前後基準線と、左右の外耳孔(または耳介前点)を結ぶ左右基準線とを基準として、プローブ位置が決定される。保持部32は、この国際10−20法に従い、頭頂(Cz)から左右基準線に沿って左右に所定距離(左右基準線の20%)だけ離間した左中心部(C3)および右中心部(C4)の位置に計測プローブ2の計測位置が合うように配置されている。そして、第1実施形態では、保持部32(ベース部材44)は、各計測位置で計測プローブ2の一端部23を被験者の頭部101側に向けて突出させた状態で、プローブ部50の一端部23とは反対の他端部50a側を保持することにより、被験者の頭部101から離間した位置に配置される(頭部101から浮いた状態で装着される)ように構成されている。なお、以下では、ホルダ3が装着される頭部を基準として、前頭部側(Y2側)と後頭部側(Y1側)とに向かう前後方向をY方向、右側頭部側(X2側)と左側頭部側(X1)とに向かう左右方向をX方向、頭頂側(Z1方向)と首側(Z2方向)とに向かう上下方向をZ方向という。基本的には、前後基準線がY方向に、左右基準線がX方向にそれぞれ沿うと考えてよい。
【0034】
支持部材41は、被験者の後頭部側から頭頂部側に向かって弧状に延びるように設けられた柱状部材である。支持部材41は、下端(後頭部側)部で固定部材42と接続(図示省略)されている。この固定部材42は、伸縮性を有するバンド状部材(平ゴムなどの弾性繊維)であり、被験者の後頭部から側頭部および前頭(前額)部に渡る環状形状に形成されている。固定部材42は、ホルダ3の装着時に被験者の頭部101によって伸張され、その反力として頭部101(
図4参照)を側方(水平方向)から締め付けることにより、ホルダ3を頭部101に固定するように構成されている。したがって、支持部材41は、固定部材42により支持されている。支持部材41の上端部は頭頂(Cz)の上方位置に配置されるとともに、一対の接続部材43が左右の側頭部側(X方向)に向けて取り付けられている。支持部材41は、これらの一対の接続部材43を介して、一対のベース部材44をそれぞれ被験者の頭部101から離間した状態で支持するように構成されている。
【0035】
接続部材43は、両端がベース部材44と支持部材41とにそれぞれ接続された板状の弾性部材からなる。第1実施形態では、接続部材43は、矩形状(長方形状)の樹脂製の薄板材からなり、たとえばPP(ポリプロピレン)などからなる。接続部材43は、支持部材41の上端部から左右基準線に沿って側頭部側(X方向)へ延びるように設けられている。これにより、接続部材43は、左右基準線に対して上下方向(厚み方向)への曲げ(弾性)変形と、左右基準線回りの前後方向へのねじり(弾性)変形とが可能となっている。一方、接続部材43は、伸張性が小さく引っ張り変形しにくくなるように、厚みに比較して大きい幅を有する。これにより、接続部材43は通常の使用状態で延び(または圧縮)変形することがほとんどなく、接続部材43は、計測プローブ2の計測位置の左右方向(X方向)の位置決め(位置保持)としての機能を有している。接続部材43は、支持部材41の上端部と、ベース部材44の頭頂側端部とに、それぞれネジ部材を用いた締結などによって固定されている。
【0036】
ベース部材44は、
図6に示すように、プローブ部50(装着部31)が挿入される4つの穴部44a(
図8参照)と、挿通穴44bとを一体的に有する樹脂部材(たとえばPOMなど)からなる。
図8に示すように、4つの穴部44aは、等間隔の矩形状(正方形状)に配置されている。これらの穴部44aには、送光用プローブTPと受光用プローブRPとが互いに隣接するように2個ずつ、合計4つの計測プローブ2(プローブ部50)が取り付けられている。これにより、隣接する送光用プローブTPと受光用プローブRPとの間に、合計4箇所の計測位置(計測チャンネル)が形成される。したがって、左右で各4カ所の計測チャンネルが、左中心部(C3)および右中心部(C4)近傍に形成される。
【0037】
図7に示すように、ベース部材44は、穴部44aに挿入された4つのプローブ部50の他端部50aを保持している。これにより、保持部32は、保持部32と被験者の頭部101との間から頭髪をかき分けることが可能な所定間隔D分だけ被験者の頭部101から離間した状態で、プローブ部50の他端部50a側を保持するように構成されている。具体的には、ホルダ3を装着した状態で、ベース部材44と被験者の頭部101との間の所定間隔Dは、装着部31のうち、ベース部材44の下面(頭部側表面)から頭部101側に突出する部分の突出長さL1と、計測プローブ2のうち、装着部31の先端から頭部101側に突出して頭部表面と接触する一端部23までの突出長さL2との合計分に等しい。そして、この間隔Dが、たとえば標準的な指(たとえば平均的な成人男性の第2指)の厚み寸法分だけ少なくとも離間するように、ベース部材44からのプローブ部50の突出長さが設定されている。ただし、後述するように、プローブ部50は、計測プローブ2の一端部23を他端部50a側にストロークさせる調節機構を有しているため、突出長さL2が可変となっている。そのため、少なくとも、装着部31の突出長さL1が、保持部32と被験者の頭部101との間から頭髪をかき分けるのに必要な寸法分に相当する大きさ以上であることが好ましい。
【0038】
また、
図6に示すように、挿通穴44bは、ベース部材44の上面側(頭部101とは反対側)に形成され、ベース部材44を左右基準線の延びる方向に貫通している。
図4に示すように、この挿通穴44bには押圧部材45が挿入される。そのため、ベース部材44は、接続部材43を介して支持部材41に取り付けられるとともに、押圧部材45にも取り付けられている。
【0039】
押圧部材45は、固定部材42と同様、伸縮性を有するバンド状部材(たとえば、平ゴムなどの弾性繊維など)からなる。押圧部材45は、支持部材41の上端の上側から左右基準線に沿って延び、一対のベース部材44の各々の挿通穴44bを通過して、左右両側の側頭部の位置で固定部材42の一対の係止部42aに固定されている。これにより、押圧部材45は、ホルダ3の装着時に頭部101によって伸張され、その反力として、ベース部材44を介して複数のプローブ部50を被験者の頭部101側に向けて押圧する機能を有する。
【0040】
押圧部材45は、
図8に示すように、ベース部材44に設けられた4つのプローブ部50間の中央の位置で、ベース部材44を押圧するように設けられている。より具体的には、押圧部材45は、ベース部材44において、4つのプローブ部50により構成される正方形状の重心Gの位置を中心に押圧するように設けられている。これにより、ホルダ3は、各ベース部材44の4つのプローブ部50(計測プローブ2)の頭部表面に対する接触角度を自動で調節して、それぞれの計測プローブ2の一端部23を頭部表面に均一に密着させるように構成されている。
【0041】
たとえば
図8において、被験者の頭部形状を反映して、ホルダ3の装着時点では後頭部側(Y1側)の2つのプローブ部50(計測プローブ2)のみが頭部表面と接触したとする。この場合、押圧部材45による重心Gへの押圧力によって、ベース部材44が後頭部側(Y1側)の2つのプローブ部50を支点として前頭部側(Y2側)へ回動(左右基準線回り)するモーメントが発生する。このため、接続部材43をねじり変形させながら、前頭部側(Y2側)の2つのプローブ部50(計測プローブ2)が頭部表面と接触するまでベース部材44が回動する。
【0042】
同様に、被験者の頭部101が小さい場合などには、ホルダ3の装着時点で頭頂側(Z1側)の2つのプローブ部50(計測プローブ2)のみが頭部表面と接触することがあり得る。この場合、押圧部材45による重心Gへの押圧力によって、接続部材43を曲げ変形させながら、ベース部材44が頭頂側(Z1側)の2つのプローブ部50を支点として側頭部側(Z2側)へ回動(前後基準線回り)する。この結果、側頭部側(Z2側)の2つのプローブ部50(計測プローブ2)が頭部表面と接触する。このようにして、各プローブ部50の頭部表面に対する均一な接触が確保されるように、ベース部材44の頭部表面に対する角度が自動調節される。
【0043】
次に、プローブ部50の構造について説明する。
【0044】
第1実施形態では、
図3に示すように、プローブ部50は、計測プローブ2と、計測プローブ2を着脱可能に保持する装着部31と、付勢部材51とを含み、これらの各部によって構成される計測プローブ2の接触位置の調節機構(ストローク機構)を有している。装着部31は、ベース部材44(
図6参照)に対して着脱可能に構成されている。また、装着部31は、保持部32(ベース部材44)から被験者の頭部101側に向けて突出するように形成されるとともに、装着部31の計測プローブ2が配置される側とは反対の端部側(上端部31a側)が保持部32(ベース部材44)により保持されるように構成されている。なお、第1実施形態では、装着部31の上端部31aは、プローブ部50全体における他端部50aに一致する。
【0045】
装着部31は、樹脂製(たとえばPOMなど)の円筒状部材であり、内側に計測プローブ2と付勢部材51とを収容するように構成されている。装着部31は、計測プローブ2毎に個別に設けられており、隣接する装着部31と互いに間隔を隔てて離間(
図7および
図8参照)するようにベース部材44に配置されている。装着部31の外径は、ベース部材44の穴部44aの内径と略同寸法となっている。装着部31は、側面部に形成されたプローブ取付穴31bと、先端に形成された開口部(図示せず)と、上端面に形成されたねじ穴31cとを有する。プローブ取付穴31bは、L型の計測プローブ2を挿入することが可能なように、装着部31の側面部に大きく開口している。装着部31の先端の開口部には、プローブ取付穴31bから挿入された計測プローブ2の一端部23が挿入され、一端部23が先端(下端)に向けて突出(露出)する。そのため、開口部は一端部23の形状に対応した円形状となっている。また、装着部31は、計測プローブ2を他端部50a(上端部31a)側方向に移動(ストローク)可能に保持するように構成されている。装着部31の開口部は、計測プローブ2が軸方向(円筒状の装着部31の中心軸方向)にストロークするためのガイドとしても機能する。
【0046】
また、装着部31の上端面のねじ穴31cは、
図6に示すように、装着部31をベース部材44の穴部44aに挿入した状態で、装着部31を図示しないカバーにネジ固定するために設けられている。そして、この図示しないカバーをベース部材44にネジ固定することにより、装着部31をベース部材44に固定することが可能である。なお、装着部31の上端部の外周縁部には、全周に渡って形成された環状の係合溝31d(
図3参照)も形成されている。装着部31をベース部材44の穴部44aに挿入した状態で、クリップやCリングなどの固定具(図示せず)を係合溝31dに係合させて装着部31をベース部材44に簡易的に固定することも可能である。
【0047】
付勢部材51は、
図3に示すように、圧縮コイルバネからなり、装着部31の内部において、下端部が計測プローブ2と接するとともに、上端部が装着部31の内側上面と接するように設けられている。これにより、付勢部材51は、装着部31に保持された計測プローブ2を一端部23側に向けて付勢するように構成されている。ホルダ3の装着時に、一端部23が被験者の頭部101に対して押圧されると、計測プローブ2が付勢部材51を圧縮しながら装着部31内で他端部50a側へ相対移動する。これにより、プローブ部50は、被験者の頭部101の形状に合わせて計測プローブ2が軸方向にストローク可能となっているとともに、付勢部材51の一端部23側への付勢力によって一端部23と頭部表面との接触状態を維持するように構成されている。このため、上記した一端部23の突出長さL2は、付勢部材51の付勢力と、頭部101側から計測プローブ2へ加わる反力とが釣り合う状態の長さとなる。
【0048】
ここで、計測プローブ2の一端部23は、先端に向けて外径が小さくなる先細形状を有しており、第1実施形態では、プローブ部50が、被験者の頭部101側の一端部23に向かう先細り形状を有する。すなわち、プローブ部50の全体の外形形状を見ると、装着部31の先端部分の外径が段階的に縮小しており、装着部31の先端部分から突出する計測プローブ2の一端部23が、さらに先細形状となっている。この結果、
図7に示すように、ベース部材44において隣接するプローブ部50との間のスペースが、頭部表面に近づくほど(一端部23側ほど)大きくなっている。
【0049】
次に、計測プローブ2の取付、ホルダ3の装着および髪避け作業について説明する。
【0050】
第1実施形態では、ホルダ3に計測プローブ2を予め取り付けた状態で、ホルダ3が被験者の頭部101に装着される。そして、ホルダ3の装着後に髪避け作業が行われる。したがって、第1実施形態によるホルダ3は、ホルダの装着後、髪避け作業を行った後に計測プローブをホルダに取り付ける従来の構成とは装着方法が異なる。
【0051】
ホルダ3の装着の際には、まず、ホルダ3への計測プローブ2の取り付けが行われる。具体的には、ベース部材44に固定された装着部31内に、計測プローブ2を挿入し、計測プローブ2を付勢するように付勢部材51を取り付ける。これにより、保持部32(ベース部材44)に保持されたプローブ部50が構成される。なお、装着部31をベース部材44に取り付ける前にプローブ部50を組み立てて、組み立てたプローブ部50をベース部材44(保持部32)に固定してもよい。一対のベース部材44に各4個、合計8個のプローブ部50を保持させることにより、ホルダ3の準備が整う。
【0052】
次に、ホルダ3を被験者の頭部101に装着する。ホルダ3は、支持部材41の上端が頭頂(Cz)に配置され、各ベース部材44が左右基準線に沿う(側頭部側に配置される)ように前後左右の位置を合わせた上で、固定部材42によって被験者の頭部101に固定される。この際、押圧部材45によってベース部材44が頭部101側に押圧されることにより、接続部材43を曲げおよびねじれ変形させながら、被験者の頭部101に対するベース部材44の角度が自動調節される。
【0053】
この結果、一対のベース部材44の合計8個のプローブ部50(一端部23)が、すべて被験者の頭部表面と接触する。このようにしてホルダ3が被験者の頭部101に装着された状態で、被験者の頭部101と保持部32(ベース部材44)との間には、所定間隔D(
図7参照)分のスペースが形成される。なお、被験者の頭部形状に応じて計測プローブ2がプローブ部50(装着部31)内でストロークするので、頭部101とベース部材44との間の間隔Dは、位置によって僅かに異なる。
【0054】
その後、髪避け作業が行われる。すなわち、被験者の頭部101とベース部材44との間に指または棒状の道具を差し込んで、計測プローブ2の一端部23が頭部表面(頭皮)に確実に接触するように、頭髪がかき分けられる。第1実施形態では、8つのプローブ部50が左中心部(C3)および右中心部(C4)近傍の手の届く範囲に配置されるので、被験者自身が計測位置の頭部表面とベース部材44との間に指などを差し込んで髪避け作業を行うことが、十分に可能である。したがって、ホルダの装着後に被験者以外の補助者によって髪避け作業および計測プローブ2の取付作業を行う必要があった従来構成とは異なり、たとえば在宅などで、被験者自身が単独で、計測プローブ2の取り付け、ホルダ3の装着および髪避け作業までを全て実施することが可能である。これにより、第1実施形態では、ホルダ3の装着に引き続く、光計測装置100による脳機能計測までを、被験者自身が単独で実施可能となっている。
【0055】
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0056】
すなわち、第1実施形態では、上記のように、計測プローブ2の一端部23を被験者の頭部101側に向けて突出させた状態で、プローブ部50の一端部23とは反対の他端部50a側を保持することにより、被験者の頭部101から離間した位置に配置されるように保持部32を構成することによって、保持部32を頭部101に装着させてプローブ部50(計測プローブ2)の一端部23を被験者の頭部表面と接触させた状態で、プローブ部50の一端部23から他端部50a側の保持位置までの長さ分(L1+L2分)だけ被験者の頭部表面と保持部32とを離間させてスペースを形成することができる。これにより、プローブ部50の(計測プローブ2の)一端部23を被験者の頭部表面と接触させてから、頭部表面と、保持部32との間のスペースで髪避け作業を行うことができる。この場合、頭部表面と保持部32との間の広いスペースで指や棒状の道具を差し込んで頭髪をかき分けることができるので、髪避け作業を容易化することができる。その結果、髪避け作業の作業時間も短縮することができる。また、被験者の頭部表面と保持部32との間にスペースができるので、左中心部(C3)および右中心部(C4)を計測する第1実施形態のように、計測プローブ2の位置(計測部位)によっては被験者自身でも髪避け作業を行えるようになる。
【0057】
また、第1実施形態では、上記のように、保持部32と被験者の頭部101との間から頭髪をかき分けることが可能な所定間隔D分だけ被験者の頭部101から離間した状態で、プローブ部50の他端部50a側を保持するように保持部32を構成する。これにより、保持部32を頭部101に装着させた状態で、頭部表面と保持部32との間に、髪避け作業(頭髪のかき分け作業)を行うのに十分な所定間隔D分のスペースを確保することができる。これにより、脳機能計測の際の髪避け作業をさらに容易化することができる。
【0058】
また、第1実施形態では、上記のように、保持部32から頭部101側に向けて突出するように装着部31を設けるとともに、装着部31の計測プローブ2が配置される側とは反対の上端部31a側が保持部32により保持されるように装着部31を構成する。これにより、計測プローブ2が装着される装着部31によって保持部32と被験者の頭部101との間のスペースを確保(拡大)することができる。この結果、従来通りの計測プローブ2を用いる場合にも、容易に、頭部表面と保持部32との間にスペースを形成することができる。
【0059】
また、第1実施形態では、上記のように、複数のプローブ部50の他端部50a側を保持するベース部材44と、ベース部材44を被験者の頭部101から離間した状態で支持する支持部材41とを保持部32に設ける。これにより、複数のプローブ部50をベース部材44にまとめて保持させ、このベース部材44を支持部材41によって支持することができるので、プローブ部50の保持構造を簡素化することができる。
【0060】
また、第1実施形態では、上記のように、ベース部材44を支持部材41に対して揺動可能に接続する接続部材43と、ベース部材44を介して複数のプローブ部50を被験者の頭部101側に向けて押圧する押圧部材45とを保持部32に設ける。これにより、ベース部材44に保持された個々のプローブ部50の頭部101に対する接触状態にアンバランスがある場合に、押圧部材45の押圧力によってベース部材44を傾ける(揺動させる)ことができるので、個々のプローブ部50が頭部101に対して均等に接触するようにベース部材44の頭部表面に対する傾きを自動調節することができる。この結果、複数のプローブ部50をベース部材44に保持させる構成においても、各プローブ部50(計測プローブ2)の一端部23と頭部表面との接触状態を確保することができる。
【0061】
また、第1実施形態では、上記のように、接続部材43を、両端がベース部材44と支持部材41とにそれぞれ接続された板状の弾性部材により構成する。これにより、板状の弾性部材の曲げやねじりによって、ベース部材44を支持部材41に対して揺動させることができる。これにより、ベース部材44を支持部材41に対して揺動可能に接続する接続部材43を備える構成を、極めて簡単な構造によって実現することができる。
【0062】
また、第1実施形態では、上記のように、複数の装着部31を計測プローブ2毎に個別に設けるとともに、隣接する装着部31と互いに間隔を隔てて離間するようにそれぞれの装着部31を保持部32に配置する。これにより、隣接する装着部31同士の間にスペースを形成することができるので、被験者の頭部表面と保持部32との間で髪避け作業を行うことが可能なスペースをより多く確保することができる。
【0063】
また、第1実施形態では、上記のように、計測プローブ2を他端部50a側方向に移動可能に保持するように装着部31を構成するとともに、装着部31に保持された計測プローブ2を一端部23側に向けて付勢する付勢部材51をプローブ部50に設ける。これにより、計測プローブ2の一端部23が被験者の頭部表面に接触した際に接触位置がばらついた場合でも、計測プローブ2を他端部50a側方向にストロークさせて確実に一端部23を被験者の頭部に接触させることができる。また、付勢部材51によって、被験者が動いた場合や保持部32が何らかの障害物に接触した場合などにも計測プローブ2の接触状態を維持することができる。
【0064】
また、第1実施形態では、上記のように、プローブ部50全体を、被験者の頭部101側の一端部23に向かう先細り形状に形成する。これにより、被験者の頭部表面近傍(一端部23近傍)において計測プローブ2の一端部23の周囲にスペースを形成することができるので、髪避け作業を行うことが可能なスペースをより多く確保することができる。また、頭髪が計測の妨げとならないようにするためには、計測プローブ2の一端部23が接触する計測位置近傍の頭髪を避ける必要があることから、計測位置近傍の髪避け作業をより容易化することができる。
【0065】
また、第1実施形態では、上記のように、計測光を送光または受光する光計測プローブ2をプローブ部50に設ける。光計測プローブ2を用いる場合には頭髪が計測光を遮るために髪避け作業が必要となるので、髪避け作業を容易化することができる第1実施形態により光計測装置100は、光計測プローブ2を用いる場合に特に有効である。
【0066】
(第2実施形態)
次に、
図1、
図2、
図4、
図9および
図10を参照して、本発明の第2実施形態による光計測装置のホルダについて説明する。第2実施形態では、板状の弾性部材からなる接続部材を介して支持部材とベース部材とを接続した上記第1実施形態とは異なり、関節部からなる接続部材を介して支持部材とベース部材とを接続するように構成した例について説明する。なお、第2実施形態の光計測装置において、ホルダ以外の構成は上記第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。また、ホルダについて、上記第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0067】
図9および
図10に示すように、第2実施形態による光計測装置200(
図1および
図2参照)のホルダ103(保持部132)の接続部材143は、支持部材141とベース部材144とを回動可能に接続する関節部からなる。なお、接続部材143は、本発明の「関節部」の一例である。また、光計測装置200は、本発明の「脳機能計測装置」の一例である。また、ホルダ103は、本発明の「脳機能計測装置用プローブホルダ」の一例である。
【0068】
具体的には、接続部材143は、樹脂製(たとえばPOM)の構造体であり、第1回動軸161を介して支持部材141と接続されているとともに、第2回動軸162を介してベース部材144と接続されている。
【0069】
第1回動軸161は、支持部材141の上端部において左右(X方向両側)に張り出すように形成された軸受部146に取り付けられている。また、接続部材143の支持部材141側端部は、第1回動軸161を介して支持部材141に回動可能に支持されている。この第1回動軸161は、Y方向(前後基準線の延びる方向)に沿って配置されている。このため、接続部材143(およびベース部材144)は、前後基準線に沿う第1回動軸161回りに、上下方向(Z方向)に回動可能に支持されている。この第1回動軸161は、上記第1実施形態における接続部材43(
図4参照)の上下方向(厚み方向)への曲げ(弾性)変形に対応する動作を可能とする機能を有する。
【0070】
接続部材143とベース部材144とを接続する第2回動軸162は、接続部材143とベース部材144との接続部分を貫通するように、X方向(左右基準線の延びる方向)に沿って延びるように設けられている。なお、第2回動軸162の両端には抜止部163が設けられており、接続部材143とベース部材144との接続部分が第2回動軸162の端部から抜け落ちるのを防止している。これにより、ベース部材144は、接続部材143により、左右基準線に沿う第2回動軸162回りに前後方向(Y方向)に回動可能に支持されている。この第2回動軸162は、上記第1実施形態における接続部材43(
図4参照)の前後方向へのねじり(弾性)変形に対応する動作を可能とする機能を有する。
【0071】
なお、第2実施形態の接続部材143は、樹脂製の構造体として構成されているため、引っ張り方向(左右基準線に沿った方向)への変形は生じない。このため、接続部材143は、計測プローブ2の計測位置の左右方向(X方向)の位置決め(位置保持)としての機能を有している。同様に、支持部材141、接続部材143およびベース部材144がそれぞれ対応する第1回動軸161および第2回動軸162を介して連結されているので、第2実施形態では、たとえば前後方向(Y方向)への変位などの2つの回動軸回りの回動以外による計測位置ずれは生じない。このため、第2実施形態の接続部材143では、計測位置の位置決め(位置保持)精度をさらに向上させることが可能である。
【0072】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0073】
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0074】
第2実施形態では、上記のように、支持部材141とベース部材144とを回動可能に接続する関節部からなる接続部材143を設ける。これにより、接続部材143(関節部)の回動によってベース部材144を支持部材141に対して揺動させることができるので、ベース部材144を支持部材141に対して揺動可能に接続する接続部材143を備える構成を容易に実現することができる。また、接続部材143に複数(2つ)の第1回動軸161および第2回動軸162を設けることによって、所望の揺動(回動)方向にのみ回動し、不所望の揺動(回動)方向には回動しない構成を得ることができる。この結果、被験者の頭部101に対するベース部材144(すなわち、計測プローブ2)の位置合わせを容易に行うことができる。
【0075】
なお、第2実施形態においても、頭部表面と保持部32(ベース部材144)との間に所定間隔D(
図7と同様)の広いスペースが形成され、指や棒状の道具を差し込んで頭髪をかき分けることができるので、髪避け作業を容易化することができる。その結果、髪避け作業の作業時間も短縮することができる。
【0076】
第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0077】
(第3実施形態)
次に、
図1、
図2、
図8、
図11および
図12を参照して、本発明の第3実施形態による光計測装置について説明する。第3実施形態では、光計測プローブからなる計測プローブをベース部材に取り付けるように構成した上記第1実施形態の構成に加えて、さらに電極部を備えた脳波計測プローブをベース部材に取付可能に構成した例について説明する。なお、ホルダについて、上記第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0078】
図11に示すように、第3実施形態による光計測装置300(
図1および
図2参照)のホルダ203の保持部232は、光計測プローブからなる計測プローブ2を有するプローブ部50と、脳波計測プローブからなる計測プローブ102を有するプローブ部250とをそれぞれ保持するベース部材244を含んでいる。なお、計測プローブ102は、本発明の「脳波計測プローブ」の一例である。また、光計測装置300は、本発明の「脳機能計測装置」の一例である。また、ホルダ203は、本発明の「脳機能計測装置用プローブホルダ」の一例である。
【0079】
図12に示すように、プローブ部250は、ベース部材244において正方形状に配置された4つのプローブ部50に囲まれるように、4つのプローブ部50間の中央の位置(
図8の重心Gの位置に相当)に配置されている。プローブ部250は、計測プローブ102と、計測プローブ102が取り付けられる装着部231と、付勢部材251とを含む。また、プローブ部250は、プローブ部50と同様に、これらの各部によって構成される計測プローブ102の接触位置の調節機構(ストローク機構)を有している。
【0080】
装着部231は、ベース部材244に対して着脱可能に構成された樹脂製(たとえばPOMなど)の円筒状部材である。また、装着部231は、保持部232(ベース部材244)から被験者の頭部101側に向けて突出するように形成されるとともに、装着部231の上端部233がベース部材244により保持されている。なお、装着部231の上端部233は、プローブ部250全体における他端部252に一致する。
【0081】
計測プローブ102は、一端部223が装着部231の先端の開口部から頭部101側に突出した状態で、装着部231の内部に収容されている。計測プローブ102の一端部223は、脳波計測用の電極部であり、頭部表面と接触して脳波(脳内電気活動)検出を行うことが可能なように構成されている。なお、一端部223は、本発明の「電極部」の一例である。
【0082】
付勢部材251は、圧縮コイルバネからなり、装着部231に保持された計測プローブ102を一端部223側に向けて付勢するように構成されている。これにより、プローブ部250は、プローブ部50と同様に、被験者の頭部101の形状に合わせて計測プローブ102が他端部252側にストローク可能となっているとともに、付勢部材251の一端部223側への付勢力によって一端部223と頭部表面との接触状態を維持するように構成されている。
【0083】
ホルダ203が被験者に装着される際には、頭部表面に対するプローブ部50およびプローブ部250の接触が確保されるように、ベース部材244の頭部表面に対する角度調節が自動で行われる点は、上記第1実施形態と同様である。ホルダ203の装着後は、プローブ部250に対しても、一端部223を頭部表面と接触させるための髪避け作業が実施される。また、脳波計測では頭皮に導電性のジェルを塗布する場合(湿式計測)もある。この場合には、髪避け作業の後で、計測位置(一端部223と頭部表面と接触位置)に導電性ジェルを塗布する塗布作業も実施される。第3実施形態では、頭部表面と保持部232(ベース部材244)との間に所定間隔Dの広いスペースが形成されるので、髪避け作業だけでなく、塗布作業も容易に実施することが可能となっている。
【0084】
このような構成により、第3実施形態による光計測装置300(
図1参照)は、光計測プローブからなる計測プローブ2を用いた脳機能計測(光計測)に加えて、脳波計測プローブからなる計測プローブ102を用いた脳機能計測(脳波計測)を同時に並行して実行することが可能なように構成されている。このような機能を実現するため、光計測装置300は、光出力部11および光検出部12に加えて、計測プローブ102が接続されて信号検出を行う脳波検出部(図示せず)を本体部301(
図2参照)に内蔵している。ただし、脳波検出を行うための装置構成自体は公知のものを採用可能であるので、説明は省略する。また、光計測装置300の本体部301に脳波検出部を設ける構成のほか、たとえば外部の(外付けの)脳波検出ユニット(図示せず)と本体部1とを接続して、脳機能(脳波)計測を行う構成を採用してもよい。
【0085】
第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0086】
第3実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0087】
第3実施形態では、上記のように、計測光を送光または受光する光計測用の計測プローブ2を有するプローブ部50と、電極部を備えた脳波計測用の計測プローブ102を有するプローブ部250との両方を設ける。これにより、光計測プローブを用いる場合には頭髪が計測光を遮るために髪避け作業が必要となり、脳波計測プローブを用いる場合にも電極を確実に接触させるために髪避け作業が必要となるので、頭部表面と保持部232(ベース部材244)との間に所定間隔Dの広いスペースが形成される第3実施形態の光計測装置300によって、それぞれの計測に伴う髪避け作業を容易化することができる。また、脳波計測では、導電性ジェルの塗布作業も容易化することができる。
【0088】
第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0089】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0090】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、脳機能計測装置として、光計測プローブを備えた光計測装置の例を示し、上記第3実施形態では、脳機能計測装置として、光計測プローブに加えて脳波計測プローブをさらに備え、光計測のみならず脳波計測も行うことが可能な光計測装置の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、光計測プローブを備えることなく、脳波計測プローブのみを備える脳波計を脳機能計測装置として用いてもよい。
【0091】
また、上記第1〜第3実施形態では、ベース部材に4つのプローブ部50(光計測用のプローブ部)を設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ベース部材に取り付けられるプローブ部50は、4つ以外の2つ、3つ、6つ以上でもよい。プローブ数に対してチャンネル数を多くするためには、送光用プローブと受光用プローブとが同数の偶数個が好ましい。また、上記第3実施形態では、4つの光計測用のプローブ部50と、1つの脳波計測用のプローブ部250とを設けた例を示したが、脳波計測用のプローブ部250を2つ以上設けてもよい。ベース部材に設けるプローブ部の数は、測定を行う脳領域の範囲に応じて決定すればよい。
【0092】
また、上記第1〜第3実施形態では、ベース部材に4つのプローブ部50(光計測用のプローブ部)を等間隔の矩形状に配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ベース部材に取り付けられるプローブ部50の配置は、矩形状(正方形状)でなくてもよい。ただし、プローブ数に対してチャンネル数を多くするためには、送光用プローブと受光用プローブとが互い違いに隣接するように等間隔の矩形状(格子状)に配列するのが好ましい。
【0093】
また、上記第1〜第3実施形態では、プローブ部が取り付けられる一対のベース部材を被験者の左中心部(C3)および右中心部(C4)の位置に配置するように保持部を構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ベース部材(すなわち計測プローブ)は、C3およびC4以外の位置に配置されてもよく、測定対象となる脳領域に対応した位置に配置されればよい。
【0094】
また、上記第1〜第3実施形態では、プローブ部が取り付けられる一対(2つ)のベース部材を保持部に設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ベース部材を1つだけ設けてもよいし、3つ以上のベース部材を設けてもよい。また、ベース部材を設けずに、たとえば支持部材にプローブ部を取り付けてもよい。
【0095】
また、上記第1〜第3実施形態では、プローブ部の他端部(すなわち、装着部の上端部)を保持部(ベース部材)が保持するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、プローブ部のうち、他端部側を保持するように保持部が構成されていればよい。すなわち、保持部によるプローブ部の保持位置が、少なくとも被験者の頭部から離間した側(他端部側)に位置すればよく、これにより保持部と被験者の頭部との間を離間させてスペースを形成することが可能である。そのため、たとえばプローブ部の中央近傍の他端部側の位置を保持するように保持部を構成してもよい。
【0096】
また、上記第1〜第3実施形態では、計測プローブを装着部に取り付けることによって構成されたプローブ部を保持部(ベース部材)により保持するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、装着部を設けることなく、計測プローブ自体の他端部側を直接保持するように、保持部(ベース部材)を構成してもよい。このように、プローブ部は、計測プローブのみから構成されてもよい。
【0097】
また、上記第1〜第3実施形態では、接続部材を介してベース部材を支持部材に接続した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ベース部材を支持部材に直接取り付けてもよい。
【0098】
また、上記第1〜第3実施形態では、押圧部材がベース部材に矩形状に配置された4つのプローブ部50の重心Gの位置を中心にベース部材を押圧するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。押圧部材は、重心Gを通る位置を押圧するのが好ましいが、プローブ部50の間の位置であれば、押圧位置が重心から僅かにずれていても問題ない。また、プローブ部50がたとえば3つの場合には、他のプローブ部とのバランスをとるための脚部をベース部材に設けて、頭部表面に対する接触点数が矩形状の4点になるようにし、その4点の重心位置を押圧部材により押圧するように構成してもよい。
【0099】
また、上記第1〜第3実施形態では、プローブ部に装着部と付勢部材とを設けて、計測プローブを他端部側にストローク可能に構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、計測プローブを装着部に固定してもよい。