(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記主接点機構収容室の壁には、前記アークを前記主接点側可動接触子の延長方向に駆動するための少なくとも一対のアーク駆動用永久磁石が配置されていることを特徴とする請求項2に記載の電磁接触器。
前記一対のアーク伸長用凹部の各々は、前記主接点側可動接触子と前記主接点側固定接触子の接点周辺に形成され、前記主接点側可動接触子の延長方向と直交する方向に延長していることを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。
前記主接点機構収容室の壁には、前記アークを前記一対のアーク伸長用凹部内に駆動するための少なくとも一対のアーク駆動用永久磁石が配置されていることを特徴とする請求項4に記載の電磁接触器。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る電磁接触器は、
図1乃至
図9に示されている。
図1に示す電磁接触器1は、電流路の開閉を行うものであり、主接点機構2と、主接点機構2の後述する主接点側可動接触子23を駆動する電磁石ユニット3と、主接点側可動接触子23と連動する補助接点機構4と、収容室5とを備えている。
【0010】
収容室5は、角筒状の金属製の接合部材7と、接合部材7の上端部に接合されて接合部材7上側を閉塞するセラミック製の頂板6と、接合部材7の下端部にその上面がシール接合される後述の平板状の磁気ヨーク8と、磁気ヨーク8の下面にシール接合される円筒状の金属製のキャップ9とからなる。そして、収容室5内には、主接点機構2、補助接点機構4、後述する連結軸36、固定鉄心34及び可動プランジャ35が密封状態で収容されるとともに、アーク消弧用のガスが封入されている。以下、本明細書において、
図1及び
図2に矢印で示すように、
図1における上側を「上」、下側を「下」、左側を「左」、右側を「右」、
図2における左側を「前」、右側を「後」として説明する。
【0011】
ここで、主接点機構2は、頂板6に固定された一対の主接点側固定接触子21、22と、これら一対の主接点側固定接触子21,22に接離可能な主接点側可動接触子23とを備えている。各主接点側固定接触子21,22は、導電性金属材料で形成されて収容室5の頂板6に左右方向に所定間隔を離して固定される。そして、左側の主接点側固定接触子21の下端面には接点21aが形成され、右側の主接点側固定接触子22の下端面には、接点22aが形成される。
【0012】
また、主接点側可動接触子23は、導電性金属を材料とした左右方向に長く延びる導電板であり、電磁石ユニット3の後述する可動プランジャ35に固定された連結軸36に上下移動可能に支持される。主接点側可動接触子23の左端側の上面には、左側の主接点側固定接触子21の接点21aに接触する接点23aが形成され、主接点側可動接触子23の右端側の上面には、右側の主接点側固定接触子22の接点22aに接触する接点23bが形成されている。そして、連結軸36の主接点側可動接触子23よりも下側には、フランジ部36aが外方に突出するように形成されている。そして、フランジ部36aと主接点側可動接触子23との間には、主接点側可動接触子23を上方へ付勢する接触スプリング24が設けられている。
【0013】
この主接点機構2は、収容室5内において、主接点機構収容室25内に収容される。主接点機構収容室25内には絶縁体からなる消弧容器10が配置される。消弧容器10は、
図1乃至
図4に示すように、主接点機構2に対し補助接点機構4を隔離し、下側に補助接点機構収容室41を形成する略長方形平板状の隔壁11を備えている。従って、消弧容器10の隔壁11は、主接点機構収容室25と補助接点機構収容室41とを仕切るようになっている。また、消弧容器10は、隔壁11の前縁から立ち上がる前壁12、隔壁11の後縁から立ち上がる後壁13、隔壁11の左縁から立ち上がる左側壁14、及び隔壁11の右縁から立ち上がる右側壁15を有する。前壁12は左側壁14及び右側壁15のそれぞれの前縁に連結され、後壁13は左側壁14及び右側壁15のそれぞれの後縁に連結され、消弧容器10の周囲が閉じた形状になっている。そして、消弧容器10の前壁12、後壁13、左側壁14、及び右側壁15のそれぞれは、
図1及び
図2に示すように、接合部材7の内周面に接するような寸法で形成され、前壁12、後壁13、左側壁14、及び右側壁15で囲まれる内部に主接点機構2を収容する。隔壁11の中央部には、連結軸36が挿通可能な貫通孔11aが形成されている。
【0014】
そして、消弧容器10の隔壁11には、当該隔壁11を補助接点機構収容室41側に凹ませてなる、主接点機構2で発生したアークを伸長する左右一対のアーク伸長用凹部16が形成されている。左側のアーク伸長用凹部16は、
図1に示すように、主接点側可動接触子23の接点23aと左側の主接点側固定接触子21の接点21aの周辺、具体的には、両接点23a,21aの下方に形成される。一方、右側のアーク伸長用凹部16は、
図1に示すように、主接点側可動接触子23の接点23bと右側の主接点側固定接触子22の接点22aの周辺、具体的には、両接点23b,22aの下方に形成される。これら左右一対のアーク伸長用凹部16を形成するための一対のアーク伸長用凹部形成用突部17が設けられる。左側のアーク伸長用凹部16は左右方向において接点23a近傍の位置から消弧容器10の左側壁14に至るまで延びており、右側のアーク伸長用凹部16は左右方向において接点23b近傍の位置から消弧容器10の右側壁15に至るまで延びている。各アーク伸長用凹部16の前後方向の幅は、
図7に示すように、主接点側可動接触子23の前後方向の幅よりもやや大きな程度である。各アーク伸長用凹部16の機能については、後に詳細に説明する。
【0015】
また、補助接点機構4は、補助接点機構収容室41内に収容され、複数対(本実施形態にあっては2対)の補助接点側固定接触子48、48及びこれら複数対の補助接点側固定接触子48、48に接離可能な複数(本実施形態にあっては2つ)の補助接点側可動接触子49を有する。この補助接点機構4は、主接点機構2の開閉状態の検知や主接点機構2における主接点側可動接触子23の主接点側固定接触子21,22に対する溶着状態の検知等に用いられる。
【0016】
ここで、複数対の補助接点側固定接触子48,48は、絶縁性の補助固定接触子支持部材42に固定されている。この補助固定接触子支持部材42は、
図3に示すように、一対のアーク伸長用凹部16のそれぞれの前後両側の補助接点機構収容室41に収容された、複数対の補助接点側固定接触子48,48を固定する4つの補助固定接触子支持部42a、42b、42c、42dを有する。これら4つの補助固定接触子支持部42a、42b、42c、42dは、略長方形平板状の底板部42e上に設置される。補助固定接触子支持部材42は、絶縁性の合成樹脂を成形することにより一体に形成される。なお、底板部42eには、連結軸36を挿通可能な貫通孔42fが形成されている。
【0017】
また、複数の補助接点側可動接触子49は補助可動接触子支持部材43に支持されている。補助可動接触子支持部材43は、
図3に示すように、連結軸36に固定された円筒形の中心部43aと、中心部43aから前方向及び後方向にそれぞれ延びる一対の補助可動接触子支持部43b,43bとを備えている。補助可動接触子支持部材43は、左右方向において一対のアーク伸長用凹部16間の補助接点機構収容室41に収容される。そして、複数の補助接点側可動接触子49は、
図3に示すように、主接点側可動接触子23と同一の左右方向に長く延びて一対の補助可動接触子支持部43b,43bに支持されている。各補助接点側可動接触子49は、図示しない付勢スプリングによって常時上方に付勢された状態で各補助可動接触子支持部43b,43bに支持されている。本実施形態の電磁接触器1の場合、前側の補助可動接触子支持部43bに支持された補助接点側可動接触子49は、主接点側可動接触子23と同一の左右方向に長く延び、補助固定接触子支持部42bに固定された補助接点側固定接触子48と、これに左右方向に対向する補助固定接触子支持部42dに固定された補助接点側固定接触子48とに接触する。一方、後側の補助可動接触子支持部43bに支持された補助接点側可動接触子49は、主接点側可動接触子23と同一の左右方向に長く延び、補助固定接触子支持部42aに固定された補助接点側固定接触子48と、これに左右方向に対向する補助固定接触子支持部42cに固定された補助接点側固定接触子48とに接触する。
【0018】
ここで、各対の補助接点側固定接触子48,48及び各補助接点側可動接触子49は、a接点(ノーマリーオープンタイプの接点)を構成しており、補助接点側可動接触子49は、主接点側可動接触子23が釈放状態で、両端に形成された接点部のそれぞれが一対の補助接点側固定接触子48,48の接点部のそれぞれと下方に所定間隔を保って離間した状態となる。また、補助接点側可動接触子49は、主接点側可動接触子23が投入状態となると、上方に移動し、両端に形成された接点部のそれぞれが一対の補助接点側固定接触子48,48の接点部のそれぞれに、付勢スプリングによる所定の接触力で接触する。
【0019】
なお、各対の補助接点側固定接触子48,48及び各補助接点側可動接触子49は、b接点(ノーマリークローズタイプの接点)としてもよい。また、前方側の補助接点側固定接触子48,48及び補助接点側可動接触子49をa接点とし、後方側の補助接点側固定接触子48,48及び補助接点側可動接触子49をb接点としてもよい。
次に、電磁石ユニット3は、
図1乃至
図3に示すように、側面から見てU字形状の下部磁気ヨーク31を備えている。下部磁気ヨーク31の開放端となる上端には、平板状の磁気ヨーク8が固定され、この磁気ヨーク8の上面に前述の接合部材7の下端部がシール接合される。そして、磁気ヨーク8の中央部に貫通孔8aが形成される。
【0020】
また、磁気ヨーク8の下面の中央部には、貫通孔8aを囲むように有底円筒状のキャップ9がシール接合される。
このキャップ9内には、磁気ヨーク8の貫通孔8aに固定された円柱状の固定鉄心34配置されるとともに、固定鉄心34の下方に可動プランジャ35が上下移動可能に配置される。主接点側可動接触子23を上端側で支持する連結軸36は、固定鉄心34の中心に形成された貫通孔を挿通して、下端部で円柱状の可動プランジャ35に固定される。
【0021】
そして、固定鉄心34には、その下端面から上方に凹む復帰スプリング収容凹部34aが形成されている。また、可動プランジャ35には、その上端面から下方に凹む復帰スプリング用凹部35aが形成されている。復帰スプリング収容凹部34a及び復帰スプリング用凹部35a内には、可動プランジャ35を常時下方に付勢する復帰スプリング37が収容されている。
【0022】
また、キャップ9の外周には、スプール32が配設され、このスプール32の外周には、可動プランジャ35を駆動する励磁コイル33が巻装されている。
また、アークを主接点側可動接触子23の延長方向(左右方向)に駆動するための一対のアーク駆動用永久磁石51,52が、
図1乃至
図3、
図6及び
図7に示すように、消弧容器10の前壁12及び後壁13に対向して配置されている。
【0023】
次に、第1実施形態の電磁接触器1の動作を説明する。
今、一方の主接点側固定接触子21が例えば大電流を供給する電力供給源に接続され、他方の主接点側固定接触子22が負荷装置に接続されているものとする。
この状態で、
図1に示すように、電磁石ユニット3における励磁コイル33が非励磁状態にあって、電磁石ユニット3で可動プランジャ35を上昇させる励磁力を発生していない釈放状態にあるものとする。
【0024】
この釈放状態では、可動プランジャ35が復帰スプリング37によって、下方向に付勢される。このため、可動プランジャ35に連結軸36を介して連結されている主接点機構2の主接点側可動接触子23が、一対の主接点側固定接触子21,22に対して下方に所定距離だけ離間している。このため、一対の主接点側固定接触子21,22の間の電流路が遮断状態にあり、主接点機構2が開いた状態となっている。
【0025】
この釈放状態から、電磁石ユニット3の励磁コイル33に通電すると、電磁石ユニット3で励磁力が発生し、
図5に示すように、可動プランジャ35を復帰スプリング37の付勢力に抗して上方に押し上げる。
このように、可動プランジャ35が上昇することにより、可動プランジャ35に連結軸36を介して連結されている主接点側可動接触子23も上昇し、主接点側可動接触子23の両接点23a,23bが、一対の主接点側固定接触子21,22の両接点21a,22aに対して接触スプリング24の接触圧で接触する。
【0026】
このため、電力供給源の大電流が、一方の主接点側固定接触子21、主接点側可動接触子23、他方の主接点側固定接触子22を通じて負荷装置に供給され、主接点機構2が閉じた状態となる。
また、主接点機構2が開いた状態から閉じた状態になると、補助接点機構4の各補助接点側可動接触子49は、各対の補助接点側固定接触子48,48に接触し、各対の補助接点側固定接触子48,48の間に電流が流れることになる。
【0027】
そして、主接点機構2が閉じた状態から、負荷装置への電流供給を遮断する場合には、電磁石ユニット3の励磁コイル33への通電を停止する。
励磁コイル33への通電を停止すると、電磁石ユニット3で可動プランジャ35を上方に移動させる励磁力がなくなることにより、可動プランジャ35が復帰スプリング37の付勢力によって下降する。
【0028】
この可動プランジャ35が下降することにより、連結軸36を介して連結された主接点側可動接触子23が下降する。これに応じて接触スプリング24で接触圧を与えているときには、主接点側可動接触子23が、一対の主接点側固定接触子21,22に接触している。その後、接触スプリング24の接触圧がなくなった時点で、主接点側可動接触子23が一対の主接点側固定接触子21,22から下方に離間する開極開始状態となる。
このような開極開始状態となると、主接点側可動接触子23の両接点23a,23bと、一対の主接点側固定接触子21,22の両接点21a,22aとの間にアークが発生し、アークによって電流の通電状態が継続されることになる。
このアークは、次のように消弧される。
【0029】
図7に示すように、アークを主接点側可動接触子23の延長方向(左右方向)に駆動するための一対のアーク駆動用永久磁石51,52が、消弧容器10の前壁12及び後壁13に対向して配置されている。そして、後壁13に配置されたアーク駆動用永久磁石52のN極から前壁12に配置されたアーク駆動用永久磁石51のS極に向けて鎖線の矢印Aで示す方向に磁力線が向いている。この磁力線がアークに作用し、フレミング左手の法則により、主接点側可動接触子23の接点23aと、一方の主接点側固定接触子21の接点21aとの間に発生したアーク(以下、左アークという)は実線に矢印Bで示す左方向に駆動される。一方、主接点側可動接触子23の接点23bと、他方の主接点側固定接触子22の接点22aとの間に発生したアーク(以下、右アークという)は実線に矢印Bで示す右方向に駆動される。すると、左アークは、
図8に示すように、消弧容器10の左側壁に衝突して実線の矢印で示すように下側に伸長し、左側のアーク伸長用凹部16の底壁を経由して主接点側可動接触子23に戻り、最終的に消弧される。一方、右アークは、
図8に示すように、消弧容器10の右側壁に衝突して実線の矢印で示すように下側に伸長し、右側のアーク伸長用凹部16の底壁を経由して主接点側可動接触子23に戻り、最終的に消弧される。なお、左アーク及び右アークは、それぞれ消弧容器10の左側壁あるいは右側壁に衝突した際に、
図9の実線で示すように(
図9には右アークの流れのみ図示)、前後に分かれて前壁12及び後壁13に衝突する。そして、左アーク及び右アークは、その後、実線の矢印で示すように、下側に伸長し、消弧容器10の隔壁11に衝突してから中央に延びてアーク伸長用凹部16内を延び、主接点側可動接触子23に戻り、消弧される。
【0030】
ここで、各アーク伸長用凹部16は、主接点機構収容室25と補助接点機構収容室41とを仕切る隔壁11を補助接点機構収容室41側に凹ませてなるので、主接点機構収容室25及び補助接点機構収容室41を配列した方向(上下方向)の大きさを大きくすることなくアークの伸長スペースを大きくすることができる。このため、主接点機構2に流れる電流が大電流の場合でも、アークの遮断を適切に行うことができる。
【0031】
また、左側のアーク伸長用凹部16は、主接点側可動接触子23の接点23aと左側の主接点側固定接触子21の接点21aの周辺に形成され、右側のアーク伸長用凹部16は、主接点側可動接触子23の接点23bと右側の主接点側固定接触子22の接点22aの周辺に形成される。このため、左アーク及び右アークを適切に伸長することができる。
また、アークを主接点側可動接触子23の延長方向(左右方向)に駆動するための一対のアーク駆動用永久磁石51,52を、消弧容器10の前壁12及び後壁13に対向して配置する。そして、後壁13に配置されたアーク駆動用永久磁石52のN極から前壁12に配置されたアーク駆動用永久磁石51のS極に向けて磁力線を向くようにしている。このため、左アークを左側のアーク伸長用凹部16に向けて左方向に駆動し、右アークを右側のアーク伸長用凹部16に向けて右方向に適切に駆動することができる。
【0032】
なお、左側及び右側のアーク伸長用凹部16のそれぞれを、隔壁11を補助接点機構収容室41側に凹ませて形成すると、各アーク伸長用凹部16を形成する分だけ補助接点機構収容室41内の広さが小さくなる。これにより、補助接点機構4を補助接点機構収容室41内に収容できないおそれがある。
【0033】
この問題を解消するために、補助可動接触子支持部材43は、左右方向において一対のアーク伸長用凹部16間の補助接点機構収容室41に収容されるよう構成される。また、複数の補助接点側可動接触子49は、主接点側可動接触子23と同一の左右方向に長く延びて補助可動接触子支持部材43に支持されている。さらに、補助固定接触子支持部材42は、一対のアーク伸長用凹部16のそれぞれの前後両側の補助接点機構収容室41に収容された、複数対の補助接点側固定接触子48を固定する4つの補助固定接触子支持部42a、42b、42c、42dを有する。これにより、一対の左側及び右側のアーク伸長用凹部16を消弧容器10の隔壁11を補助接点機構収容室41側に凹ませて形成しても、補助接点機構4を補助接点機構収容室41内に適切に収容することができる。
以上のように、左アーク及び右アークが消弧され、更に、可動プランジャ35の釈放動作が終了すると、開極終了となる。
【0034】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る電磁接触器を
図10乃至
図21を参照して説明する。
図10乃至
図21において、
図1乃至
図9に示す部材と同一の部材については同一の符号を付し、その説明を省略することがある。
本発明の第2実施形態に係る電磁接触器は、その基本構造は
図1乃至
図9に示す第1実施形態に係る電磁接触器1と同様であるが、左側及び右側のアーク伸長用凹部16の各々の形状及び補助接点機構4の形状が相違している。
【0035】
即ち、第2実施形態に係る電磁接触器1における左側のアーク伸長用凹部16は、
図10に示すように、主接点側可動接触子23の接点23aと左側の主接点側固定接触子21の接点21aの周辺、具体的には、両接点23a,21aの下方に形成され、左右方向において接点23a近傍の位置から消弧容器10の左側壁14に至るまで延びている。一方、右側のアーク伸長用凹部16は、
図10に示すように、主接点側可動接触子23の接点23bと右側の主接点側固定接触子22の接点22aの周辺、具体的には、両接点23b,22aの下方に形成され、左右方向において接点23b近傍の位置から消弧容器10の右側壁15に至るまで延びている。これら点は、第1実施形態に係る電磁接触器1における左側及び右側のアーク伸長用凹部16の各々と同様である。
【0036】
しかし、第2実施形態に係る電磁接触器1における左側のアーク伸長用凹部16は、
図10乃至
図13に示すように、主接点側可動接触子23の延長方向と直交する方向に延長している。すなわち左側のアーク伸長用凹部16は、前後方向において消弧容器10の前壁12から後壁13に至るまで延びている。また、第2実施形態に係る電磁接触器1における右側のアーク伸長用凹部16は、主接点側可動接触子23の延長方向と直交する方向に延長している。すなわち、右側のアーク伸長用凹部16は、前後方向において消弧容器10の前壁12から後壁13に至るまで延びている。
【0037】
このように、左側及び右側のアーク伸長用凹部16の各々を、主接点側可動接触子23の延長方向と直交する方向に延長することにより、アークの駆動方向を第1実施形態のように、主接点側可動接触子23の延長方向(左方向及び右方向)に限定することなく、主接点側可動接触子23の延長方向と直交する方向(前後方向)にもすることができる。
以下、第2実施形態に係る電磁接触器1におけるアークの駆動及び消弧について説明する。
【0038】
先ず、アークを一対のアーク伸長用凹部16の各々の延長方向(前後方向)、即ち一対のアーク伸長用凹部16内に駆動するための二対のアーク駆動用永久磁石61,62,63,64が、
図10乃至
図12、
図15及び
図16に示すように、主接点機構2を収容する消弧容器10の前壁12、右側壁15、後壁13、及び左側壁14に配置されている。
そして、主接点側可動接触子23が
図14に示す開極状態から一対の主接点側固定接触子21,22から下方に離間する開極開始状態になると、主接点側可動接触子23の両接点23a,23bと、一対の主接点側固定接触子21,22の両接点21a,22aとの間にアークが発生し、アークによって電流の通電状態が継続されることになる。
【0039】
ここで、
図16に示すように、消弧容器10の前壁12に配置されたアーク駆動用永久磁石61のN極から左側壁14に配置されたアーク駆動用永久磁石64のS極及び右側壁15に配置されたアーク駆動用永久磁石62のS極に向けて鎖線の矢印Cで示す方向に磁力線が向いている。この磁力線がアークに作用し、フレミング左手の法則により、主接点側可動接触子23の接点23aと、一方の主接点側固定接触子21の接点21aとの間に発生したアーク(以下、左アークという)は実線の矢印Dで示す後方向に駆動される。一方、主接点側可動接触子23の接点23bと、他方の主接点側固定接触子22の接点22aとの間に発生したアーク(以下、右アークという)も実線の矢印Dで示す後方向に駆動される。すると、左アーク及び右アークは、それぞれ消弧容器10の後壁13に衝突した際に、
図17の実線で示すように(
図17には右アークの流れのみ図示)、後壁13に沿って下側に伸長する。そして、左アーク及び右アークは、左側及び右側のアーク伸長用凹部16のそれぞれの底壁に衝突してから前方に延び、前後方向中央部で主接点側可動接触子23に戻り、消弧される。
【0040】
ここで、左側及び右側の各アーク伸長用凹部16のそれぞれは、主接点機構収容室25と補助接点機構収容室41とを仕切る隔壁11を補助接点機構収容室41側に凹ませてなるので、主接点機構収容室25及び補助接点機構収容室41を配列した方向(上下方向)の大きさを大きくすることなくアークの伸長スペースを大きくすることができる。このため、主接点機構2に流れる電流が大電流の場合でも、アークの遮断を適切に行うことができる。
【0041】
次に、第2実施形態に係る電磁接触器1においては、
図18に示すように、アークを主接点側可動接触子23の延長方向(左方向及び右方向)、即ち一対のアーク伸長用凹部16内に駆動するための一対のアーク駆動用永久磁石65,66を、主接点機構2を収容する消弧容器10の前壁12及び後壁13に対向して配置することができる。
【0042】
この場合、消弧容器10の後壁13に配置されたアーク駆動用永久磁石66のN極から前壁12に配置されたアーク駆動用永久磁石65のS極に向けて鎖線の矢印Eで示す方向に磁力線が向いている。この磁力線がアークに作用し、フレミング左手の法則により、主接点側可動接触子23の接点23aと、一方の主接点側固定接触子21の接点21aとの間に発生したアーク(以下、左アークという)は実線の矢印Fで示す左方向に駆動される。一方、主接点側可動接触子23の接点23bと、他方の主接点側固定接触子22の接点22aとの間に発生したアーク(以下、右アークという)は実線の矢印Fで示す右方向に駆動される。すると、左アーク及び右アークは、それぞれ消弧容器10の左側壁14あるいは右側壁15に衝突し、その際に、
図19の実線で示すように(
図19には右アークの流れのみ図示)、前後に分かれて前壁12及び後壁13に衝突する。そして、左アーク及び右アークは、その後、実線の矢印で示すように、下側に伸長し、左側及び右側のアーク伸長用凹部16のそれぞれの底壁に衝突してから中央に延びる。そして、主接点側可動接触子23に戻り、消弧される。
【0043】
ここで、左側及び右側のアーク伸長用凹部16のそれぞれは、主接点機構収容室25と補助接点機構収容室41とを仕切る隔壁11を補助接点機構収容室41側に凹ませてなるので、主接点機構収容室25及び補助接点機構収容室41を配列した方向(上下方向)の大きさを大きくすることなくアークの伸長スペースを大きくすることができる。このため、主接点機構2に流れる電流が大電流の場合でも、アークの遮断を適切に行うことができる。
【0044】
また、第2実施形態に係る電磁接触器1においては、
図20に示すように、左アークをアーク伸長用凹部16の延長方向(前方向)に駆動し、右アークをアーク伸長用凹部16の延長方向(後方向)に駆動するための一対のアーク駆動用永久磁石67,68を、主接点機構2を収容する消弧容器10の左側壁14及び右側壁15に対向して配置することができる。
【0045】
この場合、消弧容器10の左側壁14に配置されたアーク駆動用永久磁石67のN極から右側壁15に配置されたアーク駆動用永久磁石68のS極に向けて鎖線の矢印Gで示す方向に磁力線が向いている。この磁力線がアークに作用し、フレミング左手の法則により、主接点側可動接触子23の接点23aと、一方の主接点側固定接触子21の接点21aとの間に発生した左アークは実線の矢印Hで示す前方向に駆動される。一方、主接点側可動接触子23の接点23bと、他方の主接点側固定接触子22の接点22aとの間に発生した右アークは実線の矢印Hで示す後方向に駆動される。すると、左アークは、消弧容器10の前壁12に衝突し、さらに下方向に伸長して左側のアーク伸長用凹部16の底壁に衝突し、当該底壁上を後方向に伸長して前後方向中央部から主接点側可動接触子23に戻る。これにより、消弧される。一方、右アークは、
図21に示すように、消弧容器10の後壁13に衝突し、さらに下方向に伸長して右側のアーク伸長用凹部16の底壁に衝突し、当該底壁上を前方向に伸長して前後方向中央部から主接点側可動接触子23に戻る。これにより、消弧される。
【0046】
ここで、左側及び右側のアーク伸長用凹部16のそれぞれは、主接点機構収容室25と補助接点機構収容室41とを仕切る隔壁11を補助接点機構収容室41側に凹ませてなるので、主接点機構収容室25及び補助接点機構収容室41を配列した方向(上下方向)の大きさを大きくすることなくアークの伸長スペースを大きくすることができる。このため、主接点機構2に流れる電流が大電流の場合でも、アークの遮断を適切に行うことができる。
【0047】
以上説明したように、第2実施形態に係る電磁接触器1によれば、左側及び右側のアーク伸長用凹部16の各々を、主接点側可動接触子23の延長方向と直交する方向に延長する。すなわち、各アーク伸長用凹部16を、前後方向において消弧容器10の前壁12から後壁13に至るまで延長する。これにより、アークの駆動方向を、主接点側可動接触子23の延長方向(左方向及び右方向)に限定することなく、主接点側可動接触子23の延長方向と直交する方向(前後方向)にもすることができる。
【0048】
次に、左側及び右側のアーク伸長用凹部16のそれぞれを、前後方向において消弧容器10の前壁12から後壁13に至るまで延びるよう構成すると、各アーク伸長用凹部16を形成する分だけ補助接点機構収容室41内の広さが小さくなる。これにより、補助接点機構4を補助接点機構収容室41内に収容できないおそれがある。
【0049】
この問題を解消するために、第2実施形態に係る電磁接触器1においては、
図10乃至
図12に示すように、補助可動接触子支持部材43は、左右方向において一対のアーク伸長用凹部16間の補助接点機構収容室41に収容されるよう構成する。また、複数(本実施形態にあっては2つ)の補助接点側可動接触子49は、主接点側可動接触子23と直交する前後方向に長く延びて補助可動接触子支持部材43に支持される。さらに、補助固定接触子支持部材42は、左右方向において一対のアーク伸長用凹部16間の補助接点機構収容室41であって前後方向において補助可動接触子支持部材43の前後に収容された2つの補助固定接触子支持部42g、42hを有する。各補助固定接触子支持部42g、42hは、2つの補助接点側固定接触子48,48を固定するとともに、略矩形平板状の底板部42i上に設置される。底板部42iの中心部には、連結軸36が挿通可能な貫通孔42fが形成されている。これにより、一対の左側及び右側のアーク伸長用凹部16を消弧容器10の隔壁11を補助接点機構収容室41側に凹ませて形成し、さらに各アーク伸長用凹部16を前後方向において消弧容器10の前壁12から後壁13に至るまで延びるよう構成しても、補助接点機構4を補助接点機構収容室41内に適切に収容することができる。この場合、補助固定接触子支持部42gに固定された補助接点側固定接触子48と、補助固定接触子支持部42hに固定された補助接点側固定接触子48とが、補助接点側可動接触子49によって相互に導通する。
【0050】
なお、
図22及び
図23に示すように、複数(本実施形態にあっては2つ)の補助接点側可動接触子49を支持した補助可動接触子支持部材43を、連結軸36を中心に90°回転させて複数の補助接点側可動接触子49を主接点側可動接触子23と同一の左右方向に長く延びるようにしてもよい。この場合、補助固定接触子支持部42gに固定された2つの補助接点側固定接触子48が補助接点側可動接触子49によって相互に導通するとともに、補助固定接触子支持部42hに固定された2つの補助接点側固定接触子48が別の補助接点側可動接触子49によって相互に導通する。
【0051】
図22及び
図23に示すように、補助可動接触子支持部材43を、連結軸36を中心に90°回転させて複数の補助接点側可動接触子49を主接点側可動接触子23と同一の左右方向に長く延びるようにしても、補助接点機構4を補助接点機構収容室41内に適切に収容することができることは勿論である。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されずに種々の変更、改良を行うことができる。
【0052】
例えば、第1実施形態に係る電磁接触器1及び第2実施形態に係る電磁接触器1の双方において、各主接点側固定接触子21,22は、消弧容器10内に突出する円柱形状に形成されている。しかし、各主接点側固定接触子21,22を消弧容器10内で断面コ字形に形成し、主接点側可動接触子23をそれら断面コ字形に形成された主接点側固定接触子21,22に接触させるようにしてもよい。
【0053】
また、第1実施形態及び第2実施形態に係る電磁接触器1を横にして主接点機構2、補助接点機構4及び電磁石ユニット3を水平方向に向くように設置してもよい。
また、第1実施形態に係る電磁接触器1及び第2実施形態に係る電磁接触器1の双方において、補助接点機構4は、補助接点機構収容室41内に収容されればよく、図示した構造に限定されない。
【0054】
また、第1実施形態に係る電磁接触器1において、アークを主接点側可動接触子23の延長方向に駆動するアーク駆動用永久磁石51,52は少なくとも一対あればよく、一対設ける場合に限定されない。
また、第2実施形態に係る電磁接触器1において、アーク駆動用永久磁石の配置及び磁極面は、アークを主接点側可動接触子23の延長方向又は一対のアーク伸長用凹部16の各々の延長方向、即ち一対のアーク伸長用凹部16内に駆動するようになっていれば、図示した例に限定されない。
【解決手段】電磁接触器1は、主接点機構収容室25と補助接点機構収容室41とを仕切る隔壁11を備える。隔壁11には、補助接点機構収容室41側に凹ませてなる一対のアーク伸長用凹部16を形成してある。