(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、可変容量型過給機におけるタービンハウジング内のタービンスクロール流路とタービンインペラとの間に配設される可変ノズルユニットについて種々の開発がなされており、本願の出願人も既に可変ノズルユニットについて開発して出願している(特許文献1及び特許文献2等参照)。そして、その先行技術に係る可変ノズルユニットの具体的な構成は、次のようになる。
【0003】
タービンハウジング内には、第1ベースリングとしてのノズルリングがタービンインペラと同心状に配設されており、このノズルリングには、複数の支持穴がタービンインペラの軸心を中心とした仮想円上に等間隔に形成されている。また、ノズルリングに対してタービンインペラの軸方向に離隔対向した位置には、第2ベースリングとしてのシュラウドリングがタービンインペラと同心状に配設されており、このシュラウドリングは、タービンインペラにおける複数のタービンブレードの外縁(先端縁)を覆う筒状のシュラウド部(円筒部)を備えている。そして、ノズルリングの対向面とシュラウドリングの対向面との間には、少なくとも3本以上の連結ピンが連結するように設けられており、3本以上の連結ピンは、タービンインペラの軸心を中心としかつ前記仮想円よりも径の大きい別の仮想円上に間隔を置いて配置されている。
【0004】
ノズルリングの対向面とシュラウドリングの対向面との間には、複数の可変ノズルが円周方向に等間隔に配設されており、各可変ノズルは、タービンインペラの軸心に平行な軸心周りに開閉方向(正逆方向)へ回動可能である。また、各可変ノズルの前記軸方向一方側の側面には、ノズル軸が一体形成されており、このノズル軸は、ノズルリングの対応する支持穴に回動可能に支持(貫通支持)されている。更に、各可変ノズルは、径方向外側翼面におけるノズル軸の基端側に、ノズルリングの対向面に接触可能なアウタ鍔を有し、径方向内側翼面におけるノズル軸の基端側に、ノズルリングの対向面に接触可能なインナ鍔を有している。
【0005】
ノズルリングの対向面の反対側に形成した環状のリンク室には、複数の可変ノズルを同期して回動させるためのリンク機構(同期機構)が配設されている。ここで、複数の可変ノズルを開方向(正方向)へ同期して回動させると、タービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積が大きくなると共に、複数の可変ノズルを閉方向(逆方向)へ同期して回動させると、前記排気ガスの流路面積が小さくなるようになっている。
【0006】
なお、本発明に関連する先行技術として前述の特許文献1及び特許文献2の他に特許文献3から特許文献5に示すものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年、可変容量型過給機の車両搭載性の向上の要請が強くなっており、その要請に応えるために、タービンハウジング内に配設される可変ノズルユニットのコンパクト化を図ることが急務になってきている。
【0009】
そこで、本発明は、コンパクト化を容易に図ることができる、新規な構成の可変ノズルユニット等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の特徴は、可変容量型過給機におけるタービンハウジング内に配設され、前記可変容量型過給機におけるタービンインペラ側へ供給される排気ガスの流路面積を可変する可変ノズルユニットにおいて、前記タービンハウジング内に前記タービンインペラと同心状に配設され、複数の支持穴が前記タービンインペラの軸心を中心とした仮想円上に等間隔に貫通形成(形成)された第1ベースリングと、前記第1ベースリングに前記タービンインペラの軸方向に離隔対向した位置に前記タービンインペラと同心状に配設された第2ベースリングと、前記第1ベースリングの対向面と前記第2ベースリングの対向面との間に連結するように設けられ、前記タービンインペラの軸心を中心としかつ前記仮想円よりも径の大きい別の仮想円上に間隔を置いて配置された少なくとも3本以上の連結ピンと、前記第1ベースリングの対向面と前記第2ベースリングの対向面との間に円周方向に等間隔に配設され、前記タービンインペラの軸心に平行な軸心周りに開閉方向へ回動可能であって、前記軸方向一方側の側面に前記第1ベースリングの対応する前記支持穴に回動可能に支持(貫通支持)されるノズル軸が一体形成され、径方向外側翼面における前記ノズル軸の基端側に前記第1ベースリングの対向面に接触可能なアウタ鍔を有し、径方向内側翼面における前記ノズル軸の基端側に前記第1ベースリングの対向面に接触可能なインナ鍔を有した複数の可変ノズルと、前記第1ベースリングの対向面の反対面側又は前記第2ベースリングの対向面の反対側に配設され、複数の前記可変ノズルの回動動作を同期させるためのリンク機構と、を具備し、複数の前記可変ノズルの前記アウタ鍔のうち、前記ノズル軸が前記連結ピンの径方向内側に隣接する前記可変ノズルの前記アウタ鍔の前縁側に、複数の前記可変ノズルを全開状態にしたときに前記連結ピンの外周面(外周面の一部)と係合する切欠部が形成され、前記隣接する可変ノズルの前記アウタ鍔の後縁側に、複数の前記可変ノズルを全閉状態にしたときに前記連結ピンの外周面(外周面の一部)と係合する別の切欠部が形成されていることを要旨とする。
【0011】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「配設され」とは、直接的に配設されたことの他に、別部材を介して間接的に配設されたことを含む意であって、「設けられ」とは、直接的に設けられたことの他に、別部材を介して間接的に設けられたことを含む意である。また、「前縁」とは、主流(排気ガスの主流)の流れ方向から見て上流側の縁のことをいい、「後縁」とは、主流の流れ方向から見て下流側の縁のことをいう。
【0012】
第1の特徴によると、エンジン回転数が高回転域にあって、排気ガスの流量が多い場合には、前記リンク機構を作動させつつ、複数の前記可変ノズルを開方向(正方向)へ同期して回動させることにより、前記タービンインペラ側へ供給される排気ガスのガス流路面積を大きくして、多くの排気ガスを供給する。一方、エンジン回転数が低回転域にあって、排気ガスの流量が少ない場合には、複数の前記可変ノズルを閉方向(逆方向)へ同期して回動させることにより、前記タービンインペラ側へ供給される排気ガスのガス流路面積を小さくして、排気ガスの流速を高めて、前記タービンインペラの仕事量を十分に確保する。これにより、排気ガスの流量の多少に関係なく、前記タービンインペラによって回転力を十分かつ安定的に発生させることができる。
【0013】
前述の作用の他に、前記隣接する前記可変ノズルの前記アウタ鍔の前縁側及び後縁側に前記切欠部及び前記別の切欠部が形成されているため、前記連結ピンと前記可変ノズルとの干渉を回避しつつ、前記連結ピンを前記タービンインペラの軸心に極力近づけて配置することができる。これにより、前記可変ノズルユニットの大幅な設計変更を行うことなく、前記第1ベースリング及び前記第2ベースリングの外径を小さくすることができる。
【0014】
本発明の第2の特徴は、エンジンからの排気ガスのエネルギーを利用して、前記エンジン側に供給される空気を過給する可変容量型過給機において、第1の特徴からなる可変ノズルユニットを具備したことを要旨とする。
【0015】
第2の特徴によると、第1の特徴による作用と同様の作用を奏する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前記可変ノズルユニットの大幅な設計変更を行うことなく、前記第1ベースリング及び前記第2ベースリングの外径を小さくすることができるため、前記可変ノズルユニットのコンパクト化を容易に図ることができ、前記可変容量型過給機の車両搭載性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について
図1から
図9を参照して説明する。なお、図面に示すとおり、「R」は、右方向、「L」は、左方向である。
【0019】
図9に示すように、本発明の実施形態に係る可変容量型過給機1は、エンジン(図示省略)からの排気ガスのエネルギーを利用して、エンジンに供給される空気を過給(圧縮)するものである。そして、可変容量型過給機1の具体的な構成等は、以下のようになる。
【0020】
可変容量型過給機1は、ベアリングハウジング3を具備しており、ベアリングハウジング3内には、ラジアルベアリング5及び一対のスラストベアリング7が設けられている。また、複数のベアリング5,7には、左右方向へ延びたロータ軸(タービン軸)9が回転可能に設けられており、換言すれば、ベアリングハウジング3には、ロータ軸9が複数のベアリング5,7を介して回転可能に設けられている。
【0021】
ベアリングハウジング3の右側には、コンプレッサハウジング11が設けられており、このコンプレッサハウジング11内には、遠心力を利用して空気を圧縮するコンプレッサインペラ13がその軸心(換言すれば、ロータ軸9の軸心)S周りに回転可能に設けられている。また、コンプレッサインペラ13は、ロータ軸9の右端部に一体的に連結されたコンプレッサホイール(コンプレッサディスク)15と、このコンプレッサホイール15の外周面に周方向に等間隔に設けられた数枚のコンプレッサブレード17とを備えている。
【0022】
コンプレッサハウジング11におけるコンプレッサインペラ13の入口側(コンプレッサハウジング11の右側部)には、空気を取入れる空気取入口19が形成されており、この空気取入口19は、空気を浄化するエアクリーナ(図示省略)に接続可能である。また、ベアリングハウジング3とコンプレッサハウジング11との間におけるコンプレッサインペラ13の出口側には、圧縮された空気を昇圧する環状のディフューザ流路21が形成されており、このディフューザ流路21は、空気取入口19に連通してある。更に、コンプレッサハウジング11の内部には、渦巻き状のコンプレッサスクロール流路23が形成されており、このコンプレッサスクロール流路23は、ディフューザ流路21に連通してある。そして、コンプレッサハウジング11の適宜位置には、圧縮された空気を排出する空気排出口25が形成されており、この空気排出口25は、コンプレッサスクロール流路23に連通してあって、エンジンの吸気マニホールド(図示省略)に接続可能である。
【0023】
図5及び
図9に示すように、ベアリングハウジング3の左側には、タービンハウジング27が設けられており、このタービンハウジング27内には、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させるタービンインペラ29が軸心(タービンインペラ29の軸心、換言すれば、ロータ軸9の軸心)S周りに回転可能に設けられている。また、このタービンインペラ29は、ロータ軸9の左端部に一体的に設けられたタービンホイール(タービンディスク)31と、このタービンホイール31の外周面に周方向に等間隔に設けられた複数のタービンブレード33とを備えている。
【0024】
タービンハウジング27の適宜位置には、排気ガスを取入れるガス取入口35が形成されており、このガス取入口35は、エンジンの排気マニホールド(図示省略)に接続可能である。また、タービンハウジング27の内部には、渦巻き状のタービンスクロール流路37が形成されており、このタービンスクロール流路37は、ガス取入口35に連通してある。更に、タービンハウジング27におけるタービンインペラ29の出口側(タービンハウジング27の左側部)には、排気ガスを排出するガス排出口39が形成されており、このガス排出口39は、タービンスクロール流路37に連通してあって、排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置(図示省略)に接続可能である。
【0025】
なお、ベアリングハウジング3の左側面には、タービンインペラ29側からの熱を遮蔽する環状の遮熱板41が設けられており、この遮熱板41の径方向外側には、段部43が形成されている(
図6参照)。
【0026】
タービンハウジング27内には、タービンインペラ29側へ供給される排気ガスの流路面積(流量)を可変する可変ノズルユニット45が配設されており、この可変ノズルユニット45の具体的な構成は、次のようになる。
【0027】
図5から
図8に示すように、タービンハウジング27には、第1ベースリングとしてのノズルリング47がタービンインペラ29と同心状に配設されており、このノズルリング47には、複数の第1支持穴49がタービンインペラ29の軸心Sを中心とした仮想円AC上に等間隔に形成されている。また、ノズルリング47の内周縁部は、遮熱板41の段部43に嵌合してある。
【0028】
ノズルリング47に対して左右方向(タービンインペラ29の軸方向)に離隔対向した位置には、第2ベースリングとしてのシュラウドリング51が配設されており、このシュラウドリング51は、タービンハウジング27内に形成した環状の段付き凹部53に収容されている。また、シュラウドリング51は、複数のタービンブレード33の外縁(先端縁)を覆う筒状のシュラウド部55を備えており、シュラウドリング51には、複数の第2支持穴57がノズルリング47の複数の第1支持穴49に整合するように円周方向に等間隔に形成されている。
【0029】
ノズルリング47の対向面とシュラウドリング51の対向面との間には、少なくとも3本以上(本発明の実施形態にあっては、5本)の連結ピン59が連結するように設けられている。換言すれば、3本以上の連結ピン59の一端部(右端部)は、ノズルリング47にかしめよって一体的に連結されており、3本以上の連結ピン59の他端部(左端部)は、シュラウドリング51にかしめによって一体的に連結されている。また、3本以上の連結ピン59は、タービンインペラ29の軸心Sを中心としかつ仮想円ACよりも径の大きい別の仮想円BC(
図7参照)上に等間隔に配置されている。ここで、3本以上の連結ピン59は、前述のように、ノズルリング47とシュラウドリング51を連結する他に、ノズルリング47の対向面とシュラウドリング51の対向面との間隔を設定する機能を有している。なお、3本以上の連結ピン59が別の仮想円BC上に等間隔に配置されているが、別の仮想円BC上に不等間隔に配置されても構わない。
【0030】
ノズルリング47の対向面とシュラウドリング51の対向面との間には、複数の可変ノズル61が円周方向に等間隔に配設されており、各可変ノズル61は、タービンインペラ29の軸心Sに平行な軸心周りに開閉方向(正逆方向)へ回動可能である。そして、各可変ノズル61の右側面(タービンインペラ29の軸方向一方側の側面)には、第1ノズル軸63が一体形成されており、この第1ノズル軸63は、ノズルリング47の対応する第1支持穴49に回動可能に支持(貫通支持)されている。また、各可変ノズル61は、径方向外側翼面61eにおける第1ノズル軸63の基端側に、ノズルリング47の対向面に接触可能な円弧形状の第1アウタ鍔65を有し、径方向内側翼面61iにおける第1ノズル軸63の基端側に、ノズルリング47の対向面に接触可能な円弧形状の第1インナ鍔67を有している。同様に、各可変ノズル61の左側面(タービンインペラ29の軸方向他方側の側面)には、第2ノズル軸69が一体形成されており、この第2ノズル軸69は、シュラウドリング51の対応する第2支持穴57に回動可能に支持されている。また、可変ノズル61は、径方向外側翼面61eにおける第2ノズル軸69の基端側に、シュラウドリング51の対向面に接触可能な円弧形状の第2アウタ鍔71を有し、径方向内側翼面61iにおける第2ノズル軸69の基端側に、シュラウドリング51の対向面に接触可能な円弧形状の第2インナ鍔73を有している。
【0031】
なお、各可変ノズル61は第1ノズル軸63と第2ノズル軸69を備えた両持ちタイプであるが、第2ノズル軸69を省略して片持ちタイプにしても構わなく、この場合には、第2アウタ鍔71及び第2インナ鍔73も省略することになる。
【0032】
ノズルリング47の対向面の反対面側に形成した環状のリンク室75内には、複数の可変ノズル61を同期して回動させるためのリンク機構(同期機構)77が配設されている。また、リンク機構77は、前述の特許文献1及び特許文献2等に示す公知の構成からなるものであって、複数の可変ノズル61に連動連結されてあって、複数の可変ノズル61を開閉方向へ回動させるモータ又はシリンダ等のアクチュエータ(図示省略)に動力伝達機構79を介して接続されている。
【0033】
続いて、本発明の実施形態の要部について説明する。
【0034】
図1及び
図3(a)に示すように、複数の可変ノズル61の第1アウタ鍔65のうち、第1ノズル軸63が連結ピン59の径方向内側に隣接する可変ノズル61の第1アウタ鍔65の前縁側には、複数の可変ノズル61を全開状態にしたときに連結ピン59の外周面(外周面の一部)と係合する凹状の第1切欠部65aが形成されている。また、
図2及び
図3(b)に示すように、前記隣接する可変ノズル61の第1アウタ鍔65の後縁側には、複数の可変ノズル61を全閉状態にしたときに連結ピン59の外周面(外周面の一部)と係合する凹状の別の第1切欠部65bが形成されている。なお、前記隣接する可変ノズル61の第1アウタ鍔65の第1切欠部65a及び別の第1切欠部65bの形状は、適宜に変更可能である。
【0035】
同様に、
図1及び
図3(a)に示すように、複数の可変ノズル61の第2アウタ鍔71のうち、第2ノズル軸69が連結ピン59の径方向内側に隣接する可変ノズル61の第2アウタ鍔71の前縁側には、複数の可変ノズル61を全開状態にしたときに連結ピン59の外周面(外周面の一部)と係合する凹状の第2切欠部71aが形成されている。また、
図2及び
図3(b)に示すように、前記隣接する可変ノズル61の第2アウタ鍔71の後縁側には、複数の可変ノズル61を全閉状態にしたときに連結ピン59の外周面(外周面の一部)と係合する凹状の別の第2切欠部71bが形成されている。なお、前記隣接する可変ノズル61の第2アウタ鍔71の第2切欠部71a及び別の第2切欠部71bの形状は、適宜に変更可能である。
【0036】
ここで、第1切欠部65a及び第2切欠部71aが形成されても、第1アウタ鍔65及び第2アウタ鍔71は前縁側の端(一端)から後縁側の端(他端)にかけて残存するようになっているが、
図4(a)(b)に示すように、第1アウタ鍔65及び第2アウタ鍔71は前縁側の端を除去するようにしても構わない。
【0037】
図5及び
図6に示すように、ノズルリング47の径方向外側には、サポートリング(取付リング)81がタービンインペラ29と同心状に配設されており、このサポートリング81の外周縁部は、複数の取付ボルト83を介してベアリングハウジング3に一体的に連結されている。また、サポートリング81の内周縁部には、径方向内側へ突出した断面L型の複数の突出片85が円周方向に間隔を置いて一体形成されており、円周方向に隣接する突出片85間の間隙によって、タービンスクロール流路37とリンク室75が連通するようになっている。なお、サポートリング81の外周縁部がベアリングハウジング3に一体的に連結される代わりに、タービンハウジング27との協働によりベアリングハウジング3に挟まれるように連結されても構わない。
【0038】
サポートリング81は、複数の突出片85とノズルリング47の外周縁部を圧接させた状態でノズルリング47に対して相対的な径方向(サポートリング81の径方向又はタービンインペラ29の径方向)の移動(変位)を許容されるようなっている。また、サポートリング81は、複数の突出片85のみがタービンスクロール流路37に対峙する(臨む)ように構成されており、換言すれば、サポートリング81における複数の突出片85を除く大部分は、タービンハウジング27内におけるタービンスクロール流路37とリンク室75との間に形成した環状の壁部87によって、タービンスクロール流路37に対して遮蔽されるようになっている。
【0039】
ベアリングハウジング3の左側面における遮熱板41の右側には、付勢部材としての波ワッシャ89が設けられており、この波ワッシャ89は、複数の突出片85とノズルリング47の外周縁部を圧接させるようにノズルリング47を遮熱板41を介してタービンインペラ29の出口方向(左方向)へ付勢するものである。ここで、前述のように、サポートリング81の外周縁部がベアリングハウジング3に一体的に連結される他に、複数の突出片85とノズルリング47の外周縁部を圧接させることにより、ノズルリング47及びシュラウドリング51等、換言すれば、可変ノズルユニット45がタービンハウジング27内に配設されるようになっている。
【0040】
サポートリング81の外周面には、サポートリング81に発生した熱を吸熱する吸熱リング91が圧入又は焼きばめによって圧接して設けられており、この吸熱リング91は、タービンハウジング27内の壁部87によってタービンスクロール流路37に対して遮蔽されている。更に、複数の取付ボルト83の緩みを防止するために、吸熱リング91の右側面(タービンインペラ29の軸方向一方側の側面)は、複数の取付ボルト83の頭部に圧接してある。
【0041】
なお、シュラウドリング51のシュラウド部55の外周面には、周溝93が形成されており、この周溝93には、シュラウドリング51の対向面の反対面側からタービンインペラ29の出口側への排気ガスの漏れを抑える複数のシールリング95が設けられている。
【0042】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0043】
(可変容量型過給機1の通常の作用)
ガス取入口35から取入れた排気ガスをタービンスクロール流路37を経由してタービンインペラ29の入口側から出口側へ流通させることにより、排気ガスの圧力エネルギーを利用して回転力(回転トルク)を発生させて、ロータ軸9及びコンプレッサインペラ13をタービンインペラ29と一体的に回転させることができる。これにより、空気取入口19から取入れた空気を圧縮して、ディフューザ流路21及びコンプレッサスクロール流路23を経由して空気排出口25から排出することができ、エンジンに供給される空気を過給(圧縮)することができる。
【0044】
可変容量型過給機1の運転中、エンジン回転数が高回転域にあって、排気ガスの流量が多い場合(大流量の場合)には、回動アクチュエータによってリンク機構77を作動させつつ、複数の可変ノズル61を開方向(正方向、
図1から
図4において反時計回り方向)へ同期して回動させることにより、タービンインペラ29側へ供給される排気ガスのガス流路面積(可変ノズル61のスロート面積)を大きくして、多くの排気ガスを供給する。一方、エンジン回転数が低回転域にあって、排気ガスの流量が少ない場合(小流量の場合)には、回動アクチュエータによってリンク機構77を作動させつつ、複数の可変ノズル61を閉方向(逆方向、
図1から
図4において時計回り方向)へ同期して回動させることにより、タービンインペラ29側へ供給される排気ガスのガス流路面積を小さくして、排気ガスの流速を高めて、タービンインペラ29の仕事量を十分に確保する。これにより、排気ガスの流量の多少に関係なく、タービンインペラ29によって回転力を十分かつ安定的に発生させることができる。なお、可変容量型過給機1の通常の運転状態において、複数の可変ノズル61が
図2に示すような全閉状態になることはない。
【0045】
なお、大流量の場合には、前記隣接する可変ノズル61の第1アウタ鍔65及び第2アウタ鍔71が連結ピン59のウェイク(後流)の範囲内に位置しており、前記隣接する可変ノズル61の第1アウタ鍔65の第1切欠部65a及び別の第1切欠部65b等がタービンインペラ29に流入する流れに大きな影響を与えることはないものである。
【0046】
(可変ノズルユニット45及び可変容量型過給機1の特有の作用)
シュラウドリング51がタービンハウジング27内における環状の段付き凹部53に収容されているため、タービンスクロール流路37を流れる排気ガスがシュラウドリング51に直撃することがなく、シュラウドリング51の周方向の部材温度のばらつきを低減して、シュラウドリング51の不均一な熱変形を抑えることができる。また、サポートリング81の内周縁部に複数の突出片85が円周方向に間隔を置いて一体形成され、サポートリング81は複数の突出片85のみがタービンスクロール流路37に対峙するように構成され、サポートリング81の外周面に吸熱リング91が圧接して設けられているため、可変容量型過給機1の運転中に、サポートリング81の部材温度を低くして、サポートリング81がその内周縁部を押し広げるように熱変形することを抑えることができる。また、サポートリング81は複数の突出片85とノズルリング47の外周縁部を圧接させた状態でノズルリング47に対して相対的な径方向の移動を許容されているため、ノズルリング47がサポートリング81の熱変形に追従して変形することを抑えることができる。これにより、可変容量型過給機1の運転中におけるノズルリング47の対向面とシュラウドリング51の対向面の平行度を十分に確保した上で、ノズルサイドクリアランスを極力小さくすることができる。なお、「ノズルサイドクリアランス」とは、ノズルリング47の対向面と可変ノズル61の右側面との隙間、又はシュラウドリング51の対向面と可変ノズル61の左側面との隙間のことをいう。
【0047】
前記隣接する可変ノズル61の第1アウタ鍔65の前縁側及び後縁側に第1切欠部65a及び別の第1切欠部65bが形成され、前記隣接する可変ノズル61の第2アウタ鍔71の前縁側及び後縁側に第2切欠部71a及び別の第2切欠部71bが形成されているため、連結ピン59と可変ノズル61との干渉を回避しつつ、連結ピン59をタービンインペラ29の軸心Sに極力近づけて配置することができる。これにより、可変ノズルユニット45の大幅な設計変更を行うことなく、ノズルリング47及びシュラウドリング51の外径を小さくすることができる。
【0048】
従って、本発明の実施形態によれば、可変容量型過給機1の運転中におけるノズルリング47の対向面とシュラウドリング51の対向面の平行度を十分に確保した上で、ノズルサイドクリアランスを極力小さくできるため、複数の可変ノズル61の回動動作の安定性を十分に確保した上で、ノズルサイドクリアランスからの漏れ流れを低減して、可変容量型過給機1のタービン効率を高めることができる。また、可変ノズルユニット45の大幅な設計変更を行うことなく、ノズルリング47及びシュラウドリング51の外径を小さくすることができるため、シュラウドリング51がタービンハウジング27内における環状の段付き凹部53に収容されるようにした場合でも、可変ノズルユニット45のコンパクト化を容易に図って、可変容量型過給機1の車両搭載性を向上させることができる。つまり、本発明の実施形態によれば、可変容量型過給機1のタービン効率を高めつつ、可変容量型過給機1の車両搭載性を向上させることができる。
【0049】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、例えば、リンク機構73がノズルリング47の対向面の反対面側に配設される代わりに、シュラウドリング51の対向面の反対側に配設されるようにする等、その他、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。