(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
イソシアネート基含有1,2-ポリブタジエンの固形分100重量部に対しフッ素樹脂粒子を10〜160重量部の割合で含有させ、分散剤としてパーフルオロアルキル基含有オリゴマー系含フッ素界面活性剤2.5〜20重量部を用いた有機溶剤溶液からなる加硫ゴム用表面処理剤。
シールリップ部を加硫ゴム用表面処理剤をコーティング処理した後、150〜250℃で熱処理された請求項4記載のコーティング被膜を有するシールリップ部を有するオイルシール。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴム被覆金属製ガスケットのゴム層やベアリングシール、オイルシール等のゴム製弾性体摺動部の表面には、固着防止、ブロッキング防止および耐摩耗性向上という目的で、グラファイトのコーティング膜や、脂肪酸の金属塩またはアミド、パラフィン等のワックス、シリコーンオイルなどのコーティング膜あるいはバインダーとしてエチルセルロース、フェノール樹脂などを含むコーティング膜を形成させることが行われている。エンジンガスケットなどは、高面圧、高温度条件下で使用され、これに更にエンジンの振動が加わると、ガスケット表面のゴム被覆層が摩耗し、ガス洩れを発生させることがある。また、ベアリングシールやオイルシール等のゴム製弾性体摺動部のゴム被覆層が、くり返し摺動により摩耗し、オイル洩れを発生させることがある。
【0003】
そこで、本出願人は先に、エンジンヘッドガスケットの使用環境である高面圧、高温度に、更に振動が加わるような苛酷な使用条件下においても、ガスケット表面のゴム被覆層に摩耗や破壊を生ずる現象が殆んどみられず、ガスシールに有効なガスケットなどのゴム層を形成させ得る加硫ゴム用表面処理剤として、液状1,2-ポリブタジエンの水酸基含有物およびその硬化剤としての1,2-ポリブタジエンイソシアネート基含有物に、ポリオレフィン樹脂の水性分散液を添加した加硫ゴム用表面処理剤を提案している(特許文献1)。
【0004】
ここで、提案された加硫ゴム用表面処理剤は、ゴム被覆層の耐摩耗性の向上という所期の目的は達成させるものの、水性分散液が用いられているため、水が1,2-ポリブタジエンの水酸基とイソシアネート基との間の反応を促進し、また水がイソシアネート基自身とも反応するため、表面処理分散液の粘度上昇およびゲル化が起こり、塗布加工時の作業性が悪いという問題がみられた。また、水とイソシアネート基との反応の結果、1,2-ポリブタジエンの高分子量化が妨げられ、表面処理層の耐摩耗性、耐剥離性および滑り性が劣るという欠点もみられた。
【0005】
かかる問題を解決すべく、本出願人はさらにポリオレフィン樹脂の水性分散液をポリオレフィン樹脂の有機溶媒分散液に変更した加硫ゴム用表面処理剤を提案している(特許文献2)。しかし、この方法ではポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂が含まれないため、高温圧縮時の粘着や高面圧での摩擦摩耗により、塗膜の剥がれを生じるといった問題があった。
【0006】
本出願人はさらに、従来の固着防止、ブロッキング防止および耐摩耗性向上といった加硫ゴム用表面処理剤に要求される性能を損なうことなく、高温圧縮時の粘着や高面圧での摩擦摩耗により、塗膜の剥がれを生じない加硫ゴム用表面処理剤として、イソシアネート基含有1,2-ポリブタジエンまたはこれに水酸基含有1,2-ポリブタジエンがブレンドされた1,2-ポリブタジエン混合物100重量部に対し、軟化点40〜160℃のワックスおよびフッ素樹脂をそれぞれ10〜160重量部の割合で含有させた有機溶媒溶液よりなる加硫ゴム用表面処理剤を提案している(特許文献3)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
イソシアネート基含有1,2-ポリブタジエンとしては、末端基としてイソシアネート基が付加された分子量1,000〜3,000程度のものが用いられ、これは固形分濃度約3〜70重量%の市販品、例えば日本曹達製品日曹TP-1001(固形分濃度50重量%の酢酸ブチル溶液)などをそのまま用いることが出来る。このポリブタジエン樹脂は、加硫ゴム表面の官能基や水酸基含有成分と反応し、接着、硬化することができ、同様のイソシアネート基で反応高分子化するポリウレタン樹脂よりも、ゴムとの相性、相溶性が良いため、ゴムとの密着性が良く、特に耐摩擦摩耗特性が良いのが特徴である。
【0015】
また、このイソシアネート基含有1,2-ポリブタジエンは、末端基にイソシアネート基が付加されているため、加硫ゴム表面の官能基や任意成分たる水酸基含有1,2-ポリブタジエンと反応させることで高分子化し、水酸基含有1,2-ポリブタジエンの硬化剤としても使用することもできる。この際用いられる末端基として水酸基が付加された水酸基含有1,2-ポリブタジエンとしては、分子量l000〜3000程度ものが用いられ、市販品、例えば日本曹達製品日曹G-1000、C-1000、GQ-1000、GQ-2000などをそのまま用いることが出来る。
【0016】
イソシアネート基含有1,2-ポリブタジエンと水酸基含有1,2-ポリブタジエンが混合して用いられる場合には、いずれも固形分として、イソシアネート基含有1,2-ポリブタジエンが25重量%以上、好ましくは40〜100重量%、水酸基含有1,2-ポリブタジエンが75重量%以下、好ましくは0〜60重量%の割合で用いられる。イソシアネート基含有1,2−ポリブタジエンがこれより少ない場合には、ゴムとの密着性が低下することになり、ひいては滑り性、非粘着性能が低下し、耐摩擦摩耗特性が低下するようになる。
【0017】
フッ素樹脂粒子としては、粒子状のポリテトラフルオロエチレン〔PTFE〕、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体などが挙げられる。
【0018】
これらのフッ素樹脂粒子としては、塊状重合、懸濁重合、溶液重合、乳化重合などで得られたフッ素樹脂を粒子径約0.1〜5μm程度に分級したものや、懸濁重合、溶液重合、乳化重合などで得られた分散液をせん断攪拌などにより、約0.1〜5μm程度に微粒子分散させたもの、上記重合で得られたものを凝析・乾操後、乾式粉砕や冷却粉砕により、約10μm以下に微粒子化したものが用いられる。約0.1〜10μmに設定される粒子径において、粒子径がより小さい場合には、塗布厚みを小さく出来るメリットがあるが、塗布表面の凹凸が小さくなることにより接触面積が小さくなり、そのため低面圧では摩擦係数が大きくなる傾向があり、一方粒子径がより大きい場合には、塗布厚みが大きくなり、そのため塗布の際のコストがかかるが、凹凸が大きくなり、低面圧では相手材との接触面積が小さくなり、そのため摩擦係数が下がるようになる。したがって、粒子径は使用要求によって適宜調整され、例えばシール部品などではこれら長所、短所を考慮して決定され、好ましくは約0.5〜2μm程度のものが用いられる。
【0019】
フッ素樹脂粒子は、イソシアネート基含有1,2−ポリブタジエンの固形分100重量部に対して10〜160重量部、好ましくは25〜125重量部の割合で、必要に応じて有機溶剤の溶液または分散液として用いられる。フッ素樹脂粒子の割合がこれより多いと、ゴムとの密着性、耐摩擦摩耗特性が悪くなり、皮膜の柔軟性が損なわれ、そのため硬化塗膜にヒビ割れが発生し、一方この範囲より少ないと、滑り性、非粘着性が悪くなるようになる。なお、本発明に係る加硫ゴム
用表面処理剤を、シール部品などに用いる場合には、フッ素樹脂粒子は25〜120重量部が好ましい。
【0020】
分散剤として作用する含フッ素界面活性剤としては、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を有するパーフルオロアルキル基含有オリゴマー系のものが用いられ、例えば疎水性基として炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレートモノマーと親水性基としてポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン等のポリオキシアルキレン基を有するマクロモノマー(分子量約2000〜10000)である(メタ)アクリレートモノマーとを共重合させたオリゴマー(25℃における水への溶解性:0.1%以下)が用いられる(特許文献4)。この際、モノマー中のエチレン性不飽和基1モルに対して約0.1〜0.6モルの重合開始剤が用いられてオリゴマー化反応を達成させており、同時に2-ヒドロキシエチルアクリレート等の他のモノマーを共重合させることもできる。これに対し、単なるエチレンオキサイド付加タイプ(25℃における水への溶解性:1%以上)のものは液の安定性に欠け、耐摩耗性の向上にあまり有効ではない。
【0021】
実際には、市販品、例えばAGCセイミケミカル製品サーフロンS-611、DIC製品F-561等がそのまま用いられる。これらは水に不溶性であり、イソプロパノール、メタノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン等に約1〜10重量%、場合によっては10重量%以上の溶解性を有しているので、有機溶剤溶液の形で供給されることもある。また、トルエン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに対しては、0.1%溶液として23mN/m程度の表面張力を有している。
【0022】
これらの含フッ素界面活性剤分散剤は、イソシアネート基含有1,2-ポリブタジエンの固形分100重量部当り約2.5〜20重量部、好ましくは約5〜20重量部の割合で用いられる。この範囲より少なく用いられると、フッ素樹脂粒子の分散性が悪化し、沈降が生ずるようになるばかりではなく、耐摩耗性の十分な向上も達成されない。一方、これよりも多く用いられると、バインダー硬さが低下し、トルクが上昇するようになる。
【0023】
特許文献5には、かかる含フッ素界面活性剤分散剤を用い、バインダー樹脂、固体潤滑剤としてのフッ素系樹脂および有機溶剤を含有する塗料組成物が記載されているが、バインダー樹脂はポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂またはアクリル樹脂とされ、またその実施例の記載によれば、濡れ性および耐硝酸試験(耐薬品性)が合格基準を満たしていたとされているが、エチレンオキサイド付加タイプ(EO基数=12または18)の含フッ素界面活性剤を用いた場合にも同様の効果が得られている点で、本発明との違いが認められる。
【0024】
本発明に係る加硫ゴム用表面処理剤中には、下記組成を有するOH基含有フッ素樹脂組成物溶液および/またはシリコーンオイルを添加して用いることもできる。
【0025】
有機溶剤溶液として用いられるOH基含有フッ素樹脂組成物は、固形分濃度約10〜50重量%で、
(A)パーフルオロアルキルアルキル(メタ)アクリレート
(B)水酸基含有(メタ)アクリレート
の共重合体〔I〕、アクリル酸アルキルエステルの重合体〔II〕、フッ素化オレフィンの重合体〔III〕および硬化剤〔IV〕を含有し、共重合体〔I〕と重合体〔II〕と重合体〔III〕とが2〜15:35〜70:20〜50の重量比(合計100)等である組成物よりなる。このOH基含有フッ素樹脂組成物溶液は、OH変性基を有するため、バインダー成分であるイソシアネート基含有1,2-ポリブタジエンと効果的に反応し、安定した恒久性の高い被膜を形成することができる。これらOH基含有フッ素樹脂組成物の詳細は、例えば特許文献6に記載されている。また、有機溶剤としては、例えばメチルイソブチルケトン-酢酸エチル-メチルエチルケトン混合溶剤等が用いられる。
【0026】
共重合体〔I〕の(B)成分である水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が用いられる。重合体〔II〕は、基材との密着性、他の成分との相溶性、ニーズに合致した皮膜を形成させる点で重要な成分である。重合体〔III〕としては、例えばフッ化ビニリデン系重合体等が用いられ、皮膜の断面方向において表面成分である共重合体〔I〕と密着成分である重合体〔II〕との中間に位置し、基材樹脂に含有される顔料、染料、可塑剤等の添加物のコーティング層への移行を防止するバリア層の役割を担う。硬化剤
〔IV〕としては、OH基と反応する反応性官能基、例えばイソシアネート基、エポキシ基等を有する有機化合物が、重合体〔I〕、〔II〕、〔III〕の合計量に対して約0.001〜100重量%の割合で用いられる。
【0027】
OH含有フッ素樹脂組成物溶液としては、実際には市販品、例えばDIC製品ディフェンサTR-101(OH価:6.0mgKOH/g溶液)、102(OH価:2.7mgKOH/g溶液)、103(OH価:4.1mgKOH/g溶液) 等が用いられる。
【0028】
OH基含有フッ素樹脂組成物溶液は、その固形分がイソシアネート基含有1,2-ポリブタジエンの固形分100重量部当り約100重量部以下、好ましくは約10〜65重量部の割合で用いられる。OH基含有フッ素樹脂組成物溶液の使用は、形成されるコーティング被膜の耐摩耗性の向上に有効であり、ただしそれ以上の割合で用いられても耐摩耗性は改善されない。
【0029】
本発明で用いられるシリコーンオイルは、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル等の無変性タイプでも、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基等の官能基を有する変性タイプでもよく、ただしその粘度が8,000cs(8Pa・s)以上でなければならない。シリコーンオイルの粘度が8,000csよりも小さいと、ゴム基材との十分な密着性に欠けるようになる。実際には、市販品、例えば信越シリコーン製品KF-96H-100万cs、KF-96H-10,000cs等の無変性シリコーンや同社製品KF-1001等のエポキシ変性シリコーンオイルが用いられる。
【0030】
これらのシリコーンオイルは、イソシアネート基含有1,2-ポリブタジエンの固形分100重量部に対し、約60重量部以下、好ましくは約10〜40重量部の割合で用いられる。これ以上の割合で用いられると、コーティング被膜の耐摩耗性が悪化し、被膜表面のベトツキを引き起こすようになる。
【0031】
有機溶剤としては、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが単独であるいは混合溶剤として用いられる。有機溶剤による希釈量は、塗布厚み(膜厚)、塗布方法に応じて、適宜選択されるが、一般には全固形分濃度が約3〜20重量%、好ましくは約5〜15重量%になるように設定される。なお、膜厚は、通常1〜10μm、好ましくは2〜5μmであり、膜厚がこれより小さい場合には、ゴム表面をすべて被覆することが出来ず、滑り性、非粘着性を損なうことがある。一方、膜厚がこれより大きいと、塗布表面の剛性が高くなり、シール性、柔軟性を損なうことがある。シール部品などの使用用途では、膜厚が約1〜5μm程度が好ましい。
【0032】
かかる表面処理剤により処理が可能なゴムとしては、フッ素ゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、天然ゴムなどの一般的なゴム材料が挙げられ、この内好ましくは、ゴムに配合している老化防止剤、オイルなどのゴム表面層へのブルームミングが少ないゴム材料が用いられる。なお、ゴム材質や目的に応じて、上記各成分の配合比率および有機溶剤の種類、有機溶剤量、有機溶剤混合比率は適宜選択される。
【0033】
加硫ゴム表面処理剤のゴム表面への塗布方法としては、浸せき、スプレー、ロールコータ、フローコータなどの塗布方法が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。この際、あらかじめ表面処理剤塗布前にゴム表面の汚れ等を洗浄などにより除去することが好ましい。特に、加硫ゴムからブルーム物、ブリード物が表面に析出している場合には、水、洗剤、溶剤などによる洗浄および乾燥が行われる。
【0034】
加硫ゴム表面処理剤をゴム表面へ塗布した後、約150〜250℃で約10分〜24時間程度熱処理して焼成される。加熱温度がこれより低く、加熱時間がこれより短い場合には、皮膜の硬化およびゴムとの密着性が不十分で、非粘着性、滑り性が悪くなる。一方、加熱温度がこれより高く、加熱時間がこれより長い場合には、ゴムの熱老化が起こるようになる。従って、各種ゴムの耐熱性に応じて、加熱温度、加熱時間を適宜設定する必要がある。
【0035】
また、アウトガス量の低減が要求される加硫ゴムの場合には、熱処理、減圧処理、抽出処理などを単独または組み合わせて行うことができるが、経済的には熱処理が最も良く、アウトガス量を減らすには、約150〜250℃で1〜24時間程度熱処理することが好ましく、ゴム中の低分子成分および皮膜中のワックス、ポリブタジエンに含まれる低分子成分をガス化させるために、温度は高いほど、また時間は長い程有効である。
【実施例】
【0036】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0037】
実施例1
PTFE樹脂粒子(AGCセイミケミカル製品フルオン172J; 22重量部
粒子径0.2μm)
オリゴマー系含フッ素界面活性剤(同社製品サーフロンS-611) 4 〃
NCO基含有1,2-ポリブタジエン(日本曹達製品TP-1001; 98 〃
固形分濃度50重量%の酢酸ブチル溶液)
酢酸ブチル〔AcOBu〕 876 〃
以上の各成分からなる表面処理剤(合計1000重量部)を調製し、次の各項目の測定、評価を行った。
液安定性:ガラス容器中で表面処理剤を調製し、経時的に沈降の有無を目視で確認
(評価) ○:沈降なし
△:しばらくして沈降あり
×:直ちに沈降あり
バインダー硬さ:金属板上に、コーティング剤のバインダー成分のみ(フッ素樹脂粒子成分を除く)を50μmの膜厚になるように塗布し、200℃で10時間焼成したサンプルを作製し、島津製作所製ダイナミックス超微小硬度計を用い、三角錐圧子(稜間角115°)を負荷速度14.1mN/秒で押し込み、押し込み深さが10μmのときのダイナミック硬さを測定
10〜30の値であることが好ましい
摩擦係数:厚さ2mmの加硫圧縮成形したフッ素ゴム表面にコーティング剤を膜厚10μmとなるように塗布し、200℃で10時間焼成したサンプルを作製し、新東科学製HEIDON TYPE 14DRを用い、コーティング被膜表面に荷重50gを載せた直径10mmの綱球を押し当て、往復動距離50mm、速度50mm/分の速さで移動させ、動摩擦係数を測定
(評価) ○:0.13未満
△:0.13以上0.17未満
×:0.17以上
耐摩耗性試験:厚さ2mmの加硫圧縮成形したフッ素ゴム表面にコーティング剤を膜厚10μmとなるように塗布し、200℃で10時間焼成したサンプルを作製し、レスカ製フリクションプレーヤーFPR-2000を用い、コーティング被膜表面に荷重2kgを載せた直径3mmの圧子球を押し当て、平均面圧3.9MPa、線速度20.9cm/秒の速さで回転させ、コーティング被膜が剥がれ、ゴムが露出する迄の回転数を測定
(評価) ◎:15万回以上
○:5万回以上15万回未満
△:1万回以上5万回未満
×:1万回未満
製品評価:トルク測定用回転試験機を用い、回転数500〜8000rpm、油温80℃の条件下でトルク値を測定
(評価) ○:従来品よりもトルク値が低下
△:従来品と同等のトルク値
×:従来品よりもトルク値が上昇
【0038】
実施例2
実施例1において、NCO基含有1,2-ポリブタジエン量を77重量部に、酢酸ブチル量を868重量部にそれぞれ変更し、OH基含有フッ素樹脂組成物溶液(DIC製品ディフェンサTR-103;OH価4.1mgKOH/g溶液、固形分濃度30重量%の
MIBK-AcOBu-MEK混合溶剤溶液)29重量部がさらに用いられた。
【0039】
実施例3
実施例1において、PTFE樹脂粒子量を21重量部に、NCO基含有1,2-ポリブタジエン量を90重量部に、酢酸ブチル量を878重量部にそれぞれ変更し、シリコーンオイル(信越シリコーン製品KF-96H 100万cs)8重量部がさらに用いられた。
【0040】
実施例4
PTFE樹脂粒子(フルオン172J) 37重量部
含フッ素界面活性剤(サーフロンS-611) 4 〃
NCO基含有1,2-ポリブタジエン(TP-1001) 74 〃
酢酸ブチル 885 〃
以上の各成分からなる表面処理剤を調製し、実施例1と同様の測定、評価が行われた。
【0041】
実施例5
実施例4において、NCO基含有1,2-ポリブタジエン量を59重量部に、酢酸ブチル量を879重量部にそれぞれ変更し、OH基含有フッ素樹脂組成物溶液(ディフェンサTR-103)22重量部がさらに用いられた。
【0042】
実施例6
実施例4において、PTFE樹脂粒子量を34重量部に、NCO基含有1,2-ポリブタジエン量を68重量部に、酢酸ブチル量を886重量部にそれぞれ変更し、シリコーンオイル(KF-96H 100万cs)8重量部がさらに用いられた。
【0043】
実施例7
実施例1において、オリゴマー系含フッ素界面活性剤としてDIC製品F-561が同量(4重量部)用いられた。
【0044】
比較例1
実施例1において、含フッ素界面活性剤としてAGCセイミケミカル製品サーフロンS-243(エチレンオキサイド付加タイプ)が同量(4重量部)用いられた。
【0045】
比較例2
実施例1において、含フッ素界面活性剤としてDIC製品F-444(エチレンオキサイド付加タイプ)が同量(4重量部)用いられた。
【0046】
比較例3
実施例1において、酢酸ブチル量を880重量部に変更し、オリゴマー系含フッ素界面活性剤が用いられなかった。
【0047】
比較例4
実施例1において、含フッ素界面活性剤量が1重量部に、酢酸ブチル量が879重量部にそれぞれ変更された。
【0048】
比較例5
フッ素樹脂粒子溶液(固形分濃度5重量%の酢酸ブチル溶液) 365重量部
PEワックス溶液(固形分濃度5重量%の酢酸ブチル溶液) 365 〃
OH基含有フッ素樹脂組成物溶液(ディフェンサTR-103) 40 〃
ウレタン樹脂溶液(DIC製品16-416; 40 〃
固形分濃度30重量%のMEK-IPA混合溶剤溶液)
イソプロパノール〔IPA〕 95 〃
メチルエチルケトン〔MEK〕 95 〃
以上の各成分からなる表面処理剤を調製し、実施例1と同様の測定、評価が行われた。
【0049】
比較例6
フッ素樹脂粒子溶液(固形分濃度5重量%の酢酸ブチル溶液) 468重量部
PEワックス溶液(固形分濃度5重量%の酢酸ブチル溶液) 468 〃
NCO基含有1,2-ポリブタジエン(TP-1001) 54 〃
OH基含有フッ素樹脂組成物溶液(ディフェンサTR-103) 10 〃
以上の各成分からなる表面処理剤を調製し、実施例1と同様の測定、評価が行われた。
【0050】
比較例7
比較例6において、NCO基含有1,2-ポリブタジエン量を56重量部に変更し、シリコーンオイル(KF-96H 100万cs)が8重量部さらに用いられ、OH基含有フッ素樹脂組成物溶液が用いられなかった。
【0051】
比較例8
比較例6において、フッ素樹脂粒子溶液量、PEワックス溶液量が共に470重量部に、NCO基含有1,2-ポリブタジエン量が60重量部にそれぞれ変更され、OH基含有フッ素樹脂組成物溶液が用いられなかった。
【0052】
以上の各実施例および比較例で得られた測定結果は、次の表に示される。