(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6146570
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】調光制御システム
(51)【国際特許分類】
H05B 37/02 20060101AFI20170607BHJP
【FI】
H05B37/02 B
H05B37/02 N
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-195741(P2013-195741)
(22)【出願日】2013年9月20日
(65)【公開番号】特開2015-60806(P2015-60806A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】久保 博樹
【審査官】
安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−268239(JP,A)
【文献】
特開2000−004246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DMX規格の通信プロトコルに基づいて512チャンネルのデータフレームによって送信されてくる調光データを受信して照明負荷を調光制御するとともに、512チャンネルのデータフレームの一部を使用して送信されてくる自己の機器情報を要求するコマンドを受信することで512チャンネルのデータフレームの受信後に自己の機器情報を返信する照明機器と;
DMX規格の通信プロトコルに基づいて512チャンネルのデータフレームによって前記照明機器毎の調光データを送信するとともに、調光データを送信する512チャンネルのデータフレームのうちの一部を使用して前記照明機器の機器情報を要求するコマンドを送信可能とし、1回の調光データの送信後から次回の調光データの送信までの間に前記照明機器から返信されてくる機器情報を受信する返信待ち時間を設ける上位機器と;
を具備することを特徴とする調光制御システム。
【請求項2】
前記照明機器は、固有のID情報を有し、
前記上位機器は、前記コマンドとして前記照明機器のID情報を送信する
ことを特徴とする請求項1記載の調光制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、照明機器を調光制御する調光制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、舞台やスタジオ等の照明機器を調光制御する調光制御システムにおいては、舞台照明として演出された照明状態が得られるように上位機器から調光データを送信し、この調光データを受信した照明機器が照明負荷を調光制御している。
【0003】
調光データの送信には、DMX規格(DMX512/1990;米国劇場技術協会(USITT)規格)に従った所定のデータフレーム構造の通信プロトコルが採用されることが多い。
【0004】
また、近年では、DMX規格の拡張機能として、RDM(Remote Device Management)規格も採用されている。RDM規格では、上位機器から問い合わせコマンドを送信し、このコマンドを受信した照明機器が機器情報を上位機器に返信するが、この問い合わせにはDMX3パケット分の時間が規定されており、この問い合わせおよび返信中はDMX規格に従った次の調光データを送信することができないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−204175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上位機器で照明機器の機器情報を取得する場合、問い合わせおよび返信中はDMX規格に従った次の調光データを送信することができないため、演出調光に求められる明かりの変化のリアルタイム性が確保できない虞がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、演出調光のリアルタイム性を確保しつつ、照明機器の機器情報を取得できる調光制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の調光制御システムは、照明機器および上位機器を備える。照明機器は、
DMX規格の通信プロトコルに基づいて
512チャンネルのデータフレームによって送信されてくる調光データを受信して照明負荷を調光制御する
とともに、512チャンネルのデータフレームの一部を使用して送信されてくる自己の機器情報を要求するコマンドを受信することで512チャンネルのデータフレームの受信後に自己の機器情報を返信する。上位機器は、
DMX規格の通信プロトコルに基づいて
512チャンネルのデータフレームによって照明機器毎の調光データを送信するとともに、調光データを送信する
512チャンネルのデータフレームの
うちの一部を使用して照明機器の機器情報を要求するコマンドを送信可能と
し、1回の調光データの送信後から次回の調光データの送信までの間に照明機器から返信されてくる機器情報を受信する返信待ち時間を設ける。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上位機器では調光データを送信するデータフレームの一部を使用して照明機器の機器情報を要求するコマンドを送信可能とするため、演出調光のリアルタイム性を確保しつつ、照明機器からの機器情報を取得することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態を示す調光制御システムのブロック図である。
【
図2】同上調光制御システムが採用する通信プロトコルのデータフレームの一例を示す構成図である。
【
図3】同上データフレームの他の例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、一実施形態を、
図1ないし
図3を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、調光制御システム10は、上位機器11、複数の端末としての照明機器12、および上位機器11に対して複数の照明機器12を通信可能に直列に順次接続する通信線13を備えている。
【0013】
そして、上位機器11は、例えば調光操作卓であり、例えばフィーダなどを含む操作入力が可能な操作入力部16、通信線13を通じて照明機器12と通信する通信部17、および通信制御を含み上位機器11を制御する制御部18を備えている。
【0014】
また、照明機器12は、舞台やスタジオ等の照明に用いられる例えばホリゾントライトやスポットライト等を含む各種の照明器具である。
【0015】
照明機器12は、照明負荷21、通信線13を通じて上位機器11と通信する通信部22、機器情報を取得するセンサ部23、および照明機器12を制御する制御部24を備えている。
【0016】
照明負荷21には、例えばLED等の光源が用いられる。
【0017】
センサ部23は、照明負荷21等の温度、照明負荷21の短絡、漏電、その他の異常等を含む機器情報を検知する。
【0018】
照明機器12は、照明機器12毎に固有のID情報を備え、また、調光制御のための固有のアドレスとしてチャンネルが任意に設定されている。これらID情報やチャンネル情報は制御部24が備える記憶部に記憶されている。
【0019】
そして、照明制御システム10では、例えばDMX規格に対応した通信プロトコルを採用し、上位機器11から調光データを送信し、照明機器12が自己のチャンネルの調光データを受信して照明負荷21を調光制御する。また、上位機器11と照明機器12とは相互に通信可能としており、照明機器12からのデータを上位機器11に送信可能とする。
【0020】
図2および
図3には、調光制御システム10が採用する通信プロトコルのデータフレームの一例を示す。DMX規格では、パケット化された制御信号として生成され、パケットの単位は、フレームと称されている。1フレームは、8ビットで構成され、最初のフレームはデータの種類を指定するスタートコードとなっており、残りのフレーム1〜512は、データフレームとなっている。このデータフレームは、チャンネル1〜512に対応する調光データで構成されていて、1チャンネルあたり8ビット構成のため、256諧調の調光制御が可能となっている。さらに、1チャンネル分の調光データの最初と最後には、始まりと終わりの合図としてスタートビットとストップビットが付加されている。したがって、1チャンネル分の調光データは、スタートビットとストップビットとによって挟まれるように構成されている。
【0021】
また、チャンネル1〜512のうち、全てのチャンネルが使用されることは少なく、すなわち照明機器12は512台より少ないことが多い。そのため、チャンネル1〜512のうち、例えば下位のチャンネルのデータフレームが使用されないことが多い。なお、照明機器12のチャンネルの設定によっては、上位や中位のチャンネルのデータフレームが使用されない場合もある。
【0022】
上位機器11では、使用されていないチャンネルのデータフレームを利用して、照明機器12に対して機器情報を要求するコマンド情報を送信する。例えば下位7つのチャンネル506〜512を含むチャンネルが使用されない場合、チャンネル506〜512のデータフレームを照明機器12の機器情報を要求するコマンドに割り当てる。コマンドとしては、照明機器12のID情報である。
【0023】
また、照明機器12では、データフレームに自己のID情報が含まれているかを確認する。データフレームに自己のID情報が含まれていた場合には、上位機器11からの1回の調光データ送信の完了を確認した直後、すなわち最後のデータフレームのストップビットを確認した直後に、センサ部23によって検知した機器情報を上位機器11に送信する。
【0024】
さらに、上位機器11では、1回の調光データ送信の直後、すなわち最後のデータフレームのストップビットの直後から次回の調光データ送信までの間に、照明機器12からの返信を受信するための返信待ち時間を設定する。この返信待ち時間は、人間が明かりの変化と認識できない範囲内の時間であって、例えば10ms程度である。
【0025】
図2に示すように、返信待ち時間には、上位機器11からの出力をローレベルとすることにより、照明機器12からの返信されてくる機器情報の信号(
図2に破線にて示す)を上位機器11で受信することができる。また、
図3に示すように、返信待ち時間における上位機器11からの出力をハイレベルとしてもよく、この場合には、照明機器12側でシグナルグランドに接続してローレベルとして機器情報の信号(
図3に破線にて示す)を送信することにより、照明機器12からの返信されてくる機器情報を上位機器11で受信することができる。
【0026】
次に、調光制御システム10の作用を説明する。
【0027】
上位機器11は、舞台照明として演出された照明状態が得られるようにDMX規格に対応した通信プロトコルに従って調光データを各照明機器12に送信する。
【0028】
各照明機器12では、上位機器11から送信されてくる調光データのうち、それぞれ自己のチャンネルの調光データを受信し、照明負荷21を調光制御する。
【0029】
また、上位機器11は、調光データを送信する際に、使用されていないチャンネルのデータフレームを利用して、機器情報を要求する特定の照明機器12のID情報を送信する。
【0030】
特定の照明機器12では、上位機器11から送信されてきたデータフレームに自己のID情報が含まれていたことを確認すると、1回の調光データ送信の完了を確認した直後、すなわち最後のデータフレームのストップビットを確認した直後に、センサ部23によって検知した機器情報を上位機器11に送信する。
【0031】
上位機器11は、1回の調光データ送信の直後、すなわち最後のデータフレームのストップビットの直後から次回の調光データ送信までの間の返信待ち時間に、照明機器12から返信される機器情報を受信する。これにより、上位機器11では、照明機器12の状態を取得でき、上位機器11で確認することができる。
【0032】
また、上位機器11では、調光データ送信の都度、機器情報を要求する照明機器12のID情報を変えて送信することにより、機器情報を要求可能な照明機器12についての機器情報を取得することができる。
【0033】
このように、上位機器11では調光データを送信するデータフレームの一部を使用して照明機器12の機器情報を要求するコマンドを送信可能とするため、次回の調光データ送信までの間に照明機器12からの返信を受ける時間があればよく、次回の調光データ送信までの時間を短くでき、演出調光のリアルタイム性を確保しつつ、照明機器12からの機器情報を取得することができる。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
10 調光制御システム
11 上位機器
12 照明機器
21 照明負荷