(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6146596
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】酸性溶液漏れ感知装置
(51)【国際特許分類】
G01M 3/16 20060101AFI20170607BHJP
【FI】
G01M3/16 E
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-555922(P2015-555922)
(86)(22)【出願日】2014年2月4日
(65)【公表番号】特表2016-509221(P2016-509221A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】KR2014000932
(87)【国際公開番号】WO2014119974
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2015年8月10日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0012288
(32)【優先日】2013年2月4日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2013-0113039
(32)【優先日】2013年9月24日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515208201
【氏名又は名称】ユミン システム テクノロジー カンパニー,リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】515208212
【氏名又は名称】ユ,ホン グン
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ホン グン
【審査官】
萩田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−095224(JP,A)
【文献】
特表2011−517337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00 − 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム材質からなるベースフィルム層と、
前記ベースフィルム層の上部面に長手方向に平行に形成された1対の導電ラインと、
強酸性溶液により溶解される物質により、前記導電ラインが外部に露出しないように、ベースフィルム層の上部面に塗布されるコート層と、
からなる強酸性溶液漏れ感知装置であって、
前記ベースフィルム層は、合成樹脂材で形成され、
前記導電ラインは、
CNT(Carbon Nano Tube)分散液50〜90重量%と、揮発性溶剤が混合されたアクリルアルキド樹脂10〜50重量%とが混合されたCNTインキを用いて、印刷方式により前記ベースフィルム層の上面に印刷されることにより形成されることを特徴とする強酸性溶液漏れ感知装置。
【請求項2】
前記コート層の上部面には、フィルム材質からなる上部保護フィルム層が積層され、前記上部保護層には、ベースフィルム層の導電ラインを上部に露出させるためのセンシングホールが、一定の間隔で形成されることを特徴とする請求項1に記載の強酸性溶液漏れ感知装置。
【請求項3】
前記CNT分散液は、CNTパウダー1〜10重量%、エチルセロソルブ溶媒80〜98重量%、及びノニオン性界面活性剤型分散剤1〜10重量%が混合されてなることを特徴とする請求項1に記載の強酸性溶液漏れ感知装置。
【請求項4】
前記コート層は、前記導電ラインを覆うように、エナメルまたはアルキド樹脂、またはPEまたはPET等の樹脂材から形成されることを特徴とする請求項1に記載の強酸性溶液漏れ感知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性溶液漏れ感知装置に関し、特に、硫酸、塩酸、硝酸、フッ酸等のような酸性の有毒性化学溶液の漏れを感知するための酸性溶液漏れ感知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、既に数件の登録特許(特許文献1及び特許文献2等)において、テープ型となり、漏水が発生しやすい位置に設置することにより、漏水の発生を容易に感知可能にするテープ型の漏水感知センサを提案している。
【0003】
図1及び
図2に示すように、このような漏水感知センサ100は、下部接着層120と、ベースフィルム層110と、上部保護フィルム層130とが、底面から上方へ順次に積層されてなる。
【0004】
下部接着層120は、漏水が発生する場所に付着するためのものであり、接着テープの形態となり、ベースフィルム層110は、導電ライン111、112を上部に形成するための層であり、導電ライン111、112のパターンを印刷方式で形成するために、PET、PE、PTFE、PVC、またはその他のテフロン系材質のフィルムから形成される。
【0005】
また、導電ライン111、112は、ベースフィルム層110の上部表面において互いに離隔し、長手方向に平行にストリップ状に配置され、導電性インキまたは銀化合物で印刷される。
【0006】
上部保護フィルム層130は、ベースフィルム層110の上部に積層され、導電ライン111、112を外部の刺激から保護するための層であって、ベースフィルム層110のように、PET、PE、PTFE、PVC、またはその他のテフロン系材質から形成され、導電ライン111、112に該当する位置に一定の間隔毎にセンシングホール131が貫通して形成されるようになる。
【0007】
したがって、漏水が発生すると、漏水が発生した位置のセンシングホール131から水分が流入し、両導電ライン111、112が水分により通電され、遠隔の制御器が、その通電状態、すなわち閉回路が形成される状態を把握し、漏水の有無を感知し、それによる警報を発生するようになる。
【0008】
ところが、このような従来のフィルム型の漏水感知センサ100は、水はもとより、導電性を有する硫酸、塩酸、硝酸、フッ酸等の酸性の有毒性化学溶液も検出することができるが、これを、酸性の液体が貯蔵された屋内外の貯蔵槽または配管に設置し、酸性溶液の漏れを感知する目的で用いる場合、湿気や雨水、結露、雪、水蒸気等に晒されても、警報が発生してしまい、誤作動の結果をもたらす。
【0009】
また、酸性の溶液により、ベースフィルム層110と導電ライン111、112が溶解される場合、正しい強酸性溶液の漏れ感知が困難であるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国登録特許第10‐0909242号公報
【0011】
【特許文献2】韓国登録特許第10‐0827385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、酸性液体が漏れた場合にのみ、導電ラインが通電されて動作するようにした酸性溶液漏れ感知装置を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、強酸性溶液に溶解されないフィルム材質でベースフィルム層を構成し、また、導電ラインも、強酸性溶液により溶解されない物質で構成し、正確な強酸性溶液の漏れを感知するようにした強酸性溶液漏れ感知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した目的を達成するために、本発明による酸性溶液漏れ感知装置は、フィルム材質からなるベースフィルム層と、前記ベースフィルム層の上部面に長手方向に平行に形成された1対の導電ラインと、酸性溶液により溶解される物質により、前記導電ラインが外部に露出しないように、ベースフィルム層の上部面に塗布されるコート層と、からなる。
【0015】
本発明の他の目的による酸性溶液漏れ感知装置は、フィルム材質からなるベースフィルム層と、前記ベースフィルム層の上部面に長手方向に平行に形成された1対の導電ラインと、からなり、前記ベースフィルム層は、合成樹脂材質から形成され、前記導電ラインは、CNT(Carbon Nano Tube)分散液60〜90重量%と、揮発性溶剤が混合されたアクリルアルキド樹脂10〜50重量%とが混合され、印刷方式により印刷される。
【0016】
また、CNT分散液は、CNTパウダー1〜10重量%、エチルセロソルブ溶媒80〜98重量%、またノニオン性界面活性剤型分散剤1〜10重量%が混合されてなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、酸性の溶液にのみ反応して通電されるので、酸性を有する有毒物の貯蔵施設や移送施設に設置される場合、酸性の成分のみを正確に感知するとともに、テープ型であるので、配管等に容易に設置することができ、また、製造費用も安価であり、価格競争力にも優れた長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図3】本発明の酸性溶液漏れ感知装置の構造を示す図である。
【
図5】酸性溶液により通電される過程を説明するための図である。
【
図6】酸性溶液により通電される過程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付した図面に基づき、本発明の好適な実施例について詳述する。
【0020】
図3は、本発明の構造を示す図であり、
図4は、本発明の側断面図であって、ベースフィルム層110、付着層120、上部保護フィルム層130の構造は、従来と同一であるので、本発明において適用されたコート層200を中心として説明する。
【0021】
先ず、有毒物である酸性溶液は、水のように電気的導電性を有しており、土壌や大気に漏れた場合は、水質汚染、土壌汚染、大気汚染等が発生することにより、物的被害はもとより、人的被害まで深刻に発生してしまう。
【0022】
したがって、このような酸性溶液の漏れを、迅速かつ安価で感知しなければならないが、このため、本発明は、導電ライン111、112が形成されたベースフィルム層110の上部面には、硫酸、塩酸、硝酸、フッ酸等のような強酸性の有毒性化学溶液、すなわち、酸性溶液により溶解されるコート層200が形成され、このようなコート層200は、ベースフィルム層110の上部面の全体に塗布され、または導電ライン111、112のみを外部から隔離させるために、導電ライン111、112が形成された部位にのみコートが行われる。
【0023】
コート層200は、酸性溶液により容易に溶けて溶解されるエナメル、メラミン、ウレタン、その他の合成樹脂等が、噴射により、薄膜形態でコートされて形成される。
【0024】
前記コート層200の上部には、センシングホール131が形成された上部保護フィルム層130が積層されるが、このような上部保護フィルム層130は、選択的に積層されてもよい。
【0025】
すなわち、外部環境に大きく影響される屋外では、コート層200を保護するために、上部保護フィルム層130が積層されることが好ましく、屋内では、与件により、上部保護フィルム層130が積層されても、積層されなくてもよい。
【0026】
本発明では、上部保護フィルム層130が積層された状態を挙げて説明する。
【0027】
したがって、本発明が、酸性溶液が移動する配管の継ぎ手部分や貯蔵槽の外部に付着されまたは巻き付けられて設置される場合、酸性溶液の漏れが発生し、
図5に示すように、本発明の上部保護フィルム層130の上部面に酸性溶液300が位置し、センシングホール131に流入すると、
図6に示すように、コート層200が酸性溶液により溶解され、導電ライン111と導電ライン112が通電される。
【0028】
遠隔の制御器は、このような通電状態を確認し、酸性溶液の漏れ状態を確認することができる。
【0029】
図7は、本発明の他の実施例を示す図であり、コート層210が上部保護フィルム層130の上部面に塗布された形態を示すものである。
【0030】
そのため、酸性溶液が漏れた場合、最も上部層であるコート層210を溶解させた後、センシングホール131から流入し、導電ライン111、112が互いに通電されることにより、漏れを感知することができる。
【0031】
図8は、また他の実施例を示す図であり、ベースフィルム層110や上部保護フィルム層130の全面に塗布するものではなく、センシングホール131のみを埋める形態で、コート部位220が形成され、酸性溶液がコート部位220を溶解させ、導電ライン111、112を通電させるようになる。
【0032】
このような
図7と
図8の構造は、従来技術におけるように、積層が完了した既存の漏水感知センサ100をそのまま用い、上部保護フィルム層130の上部表面にコート液を塗布し、またはセンシングホールのみをコート液により埋める工程を加えることだけで、酸性溶液漏れ感知装置を容易に製造することができる。
【0033】
もちろん、最も好ましくは、外部の環境による影響を最小化し、また、導電ラインを外部から完全に隔離させるために、
図3に示すような構造を有することが好適である。
【0034】
一方、硫酸、塩酸、硝酸、フッ酸等のような強酸性の有毒性化学溶液を選択的に感知するために、本発明の漏れ感知装置は、フィルム材質からなるベースフィルム層と、前記ベースフィルム層の上部面に長手方向に平行に形成された1対の導電ラインと、からなり、前記ベースフィルム層は、合成樹脂材で形成され、前記導電ラインは、CNT(Carbon Nano Tube)分散液60〜90重量%と、揮発性溶剤が混合されたアクリルアルキド樹脂10〜50重量%とが混合され、印刷方式により印刷される。
【0035】
基本的な構造は、
図1及び
図2に示した形態と同一であるので、ベースフィルム層110、導電ライン111、112、また、上部保護フィルム層130の構成物質を中心として説明する。
【0036】
先ず、有毒物である強酸性溶液は、水のように電気的導電性を有しており、土壌や大気に漏れた場合は、水質汚染、土壌汚染、大気汚染等が発生することにより、物的被害はもとより、人的被害まで深刻に発生してしまう。
【0037】
したがって、このような酸性溶液の漏れを、迅速かつ安価で感知しなければならないが、このため、本発明は、ベースフィルム層110、導電ライン111、112、上部保護フィルム層130を、硫酸、塩酸、硝酸、フッ酸等のような強酸性の有毒性化学溶液、すなわち、酸性溶液により溶解されないようにしなければならない。
【0038】
このため、ベースフィルム層110は、PC、PP、PE、PET、PTFE(テフロン)材質等の合成樹脂材から形成するが、その厚さは、100〜250μmである。
【0039】
すなわち、強酸性に溶解され難いPC、PP、PTFE等の合成樹脂材で、ベースフィルム層110を構成する場合、厚さは、100〜130μm程度であり、強酸に比較的に溶解されやすいPE、PET等の合成樹脂材で構成する場合は、130〜250μm程度に厚くすることが好ましい。
【0040】
前記導電ライン111、112を構成する組成物は、導電性を有するCNT(Carbon Nano Tube)分散液と、揮発性溶剤が混合されたアクリルアルキド樹脂が混合されて組成されるが、CNT(Carbon Nano Tube)分散液60〜90重量%と、揮発性溶剤が混合されたアクリルアルキド樹脂10〜50重量%とが混合され、CNTインキが組成され、そのCNTインキで、グラビア印刷方式により、ベースフィルム層110に印刷し、導電ライン111、112を形成するようになる。
【0041】
このとき、アクリルアルキド樹脂混合物は、アクリルアルキド樹脂40〜60重量%と、揮発性溶剤40〜60重量%とが混合された形態であり、アクリルアルキド樹脂は、強酸に強く、かつベースフィルム層110への印刷時、付着力が強いという特徴があり、揮発性溶剤は、印刷時、揮発性を高め、印刷作業を容易にするものである。
【0042】
CNT分散液は、全体85重量%を100重量%に換算し、その換算された100重量%中において、CNTパウダー1〜10重量%、エチルセロソルブ溶媒80〜98重量%、またノニオン性界面活性剤型分散剤1〜10重量%が混合されてペースト形態で構成されるが、CNTパウダーは、導電性を有し、エチルセロソルブ溶媒とノニオン性界面活性剤型分散剤は、カーボンナノチューブ(CNT)の構造を安定化させ、粒子を均一にする。
【0043】
したがって、CNT分散液とアクリルアルキド樹脂混合物が混合されたCNTインキを、グラビア方式で印刷して導電ライン111、112を形成するが、そのとき、厚さは、8〜12μm程度を有する。
【0044】
上部保護フィルム層130は、強酸性溶液に強いPC、PP、PE、PET、テフロン材質等の合成樹脂材であり、100〜250μmの厚さで形成される。
【0045】
これも、ベースフィルム層110と同様に、強酸に溶解され難いPC、PP、PTFE等の合成樹脂材で構成する場合、厚さは、100〜130μm程度であり、強酸に比較的に溶解されやすいPE、PET等の合成樹脂材で構成する場合は、130〜250μm程度に厚くすることが好ましい。
【0046】
したがって、強酸性溶液の漏れが発生すると、漏れが発生した位置のセンシングホール131から強酸性溶液が流入し、導電ライン111、112が通電されることにより、抵抗値の変化が発生する。
【0047】
そのため、遠隔の制御器が、その導電状態での抵抗値の変化を提供され、強酸性溶液の漏れの有無を確認することができるようになる。
【0048】
また、
図3に示すように、導電ライン111、112の上部を覆うように、エナメル、アルキド樹脂、PE、PET等のように強酸に溶解されやすい樹脂材により、コート層200を形成するようになるが、これは、強酸性溶液により溶解されるものの、水によっては溶解されない物質である。
【0049】
したがって、水が流入した場合は、導電ライン111、112がコート層200により通電されず、強酸性溶液が流入した場合にのみ、コート層200が溶解され、CNTインキにより印刷された導電ライン111、112が露出し、強酸性溶液により通電されることにより、強酸性溶液の漏れの有無を感知することができる。
【0050】
このとき、コート層200の厚さは、16〜18μmの厚さを有する。