特許第6146676号(P6146676)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6146676
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】免疫賦活化剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/716 20060101AFI20170607BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20170607BHJP
   A61K 47/50 20170101ALI20170607BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20170607BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20170607BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170607BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   A61K31/716
   A61K47/34
   A61K47/48
   A61K39/39
   A61P37/04
   A61P35/00
   A61P43/00 121
【請求項の数】11
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2014-551863(P2014-551863)
(86)(22)【出願日】2014年10月9日
(86)【国際出願番号】JP2014077038
(87)【国際公開番号】WO2015053354
(87)【国際公開日】20150416
【審査請求日】2017年2月28日
(31)【優先権主張番号】特願2013-212103(P2013-212103)
(32)【優先日】2013年10月9日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100143971
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】古 志 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】朴 俊 植
(72)【発明者】
【氏名】ルー ジャオ
【審査官】 常見 優
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−504535(JP,A)
【文献】 特開平07−053404(JP,A)
【文献】 特開平10−194977(JP,A)
【文献】 特開2007−269791(JP,A)
【文献】 特開2009−256324(JP,A)
【文献】 特表2011−506334(JP,A)
【文献】 須賀哲也,他,ミセラピスト超微粒子β‐グルカン,機能性食品と薬理栄養,2005年,Vol.2, No.4,p.219-227
【文献】 須賀哲也,微細化技術による機能性食品の研究開発,食品と開発,2006年,Vol.41, No.2,p.4-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00−33/44
A61K 9/00− 9/72
47/00−47/69
A61K39/00−39/44
A61P 1/00−43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
β−グルカンとポリ(ヒドロキシ酸)が共有結合したβ−グルカン修飾体を有効成分とする、免疫賦活化剤。
【請求項2】
β−グルカンが、1つ以上のβ−1,3結合および/または1つ以上のβ−1,6結合で連結されたグルコースの重合体である、請求項1に記載の免疫賦活化剤。
【請求項3】
β−グルカン修飾体が、β−グルカンの主鎖およびポリ(ヒドロキシ酸)の側鎖で構成されるグラフト型ポリマーである、請求項1または2に記載の免疫賦活化剤。
【請求項4】
β−グルカンセグメントの比率が1〜50%(w/w)である、請求項1〜3のいずれかに記載の免疫賦活化剤。
【請求項5】
β−グルカンが、カードラン、パキマン、ラミナラン、リケナン、シゾフィラン、レンチナン、スクレログルカン、黒酵母グルカンまたはパキマランである、請求項1〜4のいずれかに記載の免疫賦活化剤。
【請求項6】
β−グルカンの数平均分子量が500〜100,000である、請求項1〜5のいずれかに記載の免疫賦活化剤。
【請求項7】
ポリ(ヒドロキシ酸)が、ポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体、ポリ乳酸またはポリグリコール酸である、請求項1〜6のいずれかに記載の免疫賦活化剤。
【請求項8】
β−グルカン修飾体の微粒子を有効成分とする、請求項1〜7のいずれかに記載の免疫賦活化剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の免疫賦活化剤を有効成分として含有する、医薬。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の免疫賦活化剤および抗原を有効成分として含有する、ワクチン。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の免疫賦活化剤および癌抗原を有効成分として含有する、癌の治療および/または予防のためのワクチン。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本特許出願は、2013年10月9日に出願された日本出願特願2013−212103号に基づく優先権の主張を伴うものであり、この日本出願の全開示内容は、引用することにより本願の開示の一部とされる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、β−グルカンとポリ(ヒドロキシ酸)が共有結合したβ−グルカン修飾体を有効成分とする免疫賦活化剤に関する。
【背景技術】
【0003】
多糖類は、生体に対して様々な作用を有していることが知られており、中でもβ−グルカン類は、生体中の免疫細胞に存在するレセプター(Dectin−1など)などと結合して免疫反応を活性化することが知られている(非特許文献1参照)。これまでにβ−グルカン類の持つ免疫活性化作用を利用した免疫賦活化剤の開発研究が行われてきたものの(特許文献1参照)、β−グルカン類の免疫活性化作用は強力とはいえず、十分な効果を得るために他の免疫賦活化剤との併用が検討されてきた(特許文献2参照)。
【0004】
一方、多糖類は生体適合性の材料としても知られており、多糖類の持つ生体適合性を利用することで、ヒドロゲルや徐放製材料の基材として使用されている。また、生分解性ポリマーを多糖類に修飾することで、生体適合性を保持したまま、その物性を変換することが可能となっている(特許文献3および非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−194977号公報
【特許文献2】特開2011−504487号公報
【特許文献3】特開2013−67709号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】マイコロジカル・リサーチ、2007年111号、635−652ページ
【非特許文献2】ポリマー、2003年44号、3927−3933ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、β−グルカンの免疫活性化作用を増強することによって強力な免疫賦活化剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を克服するために、本発明者は、β−グルカンの免疫活性化作用を増強する手段を検討した結果、β−グルカンをポリ(ヒロドキシ酸)で修飾することによって生体内で高い免疫活性化能を有することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は以下の(1)〜(12)の構成を有する。
(1)β−グルカンとポリ(ヒドロキシ酸)が共有結合したβ−グルカン修飾体を有効成分とする、免疫賦活化剤。
(2)β−グルカンが、1つ以上のβ−1,3結合および/または1つ以上のβ−1,6結合で連結されたグルコースの重合体である、(1)に記載の免疫賦活化剤。
(3)β−グルカン修飾体が、β−グルカンの主鎖およびポリ(ヒドロキシ酸)の側鎖で構成されるグラフト型ポリマーである、(1)または(2)に記載の免疫賦活化剤。
(4)β−グルカンセグメントの比率が1〜50%(w/w)である、(1)〜(3)のいずれかに記載の免疫賦活化剤。
(5)β−グルカンが、カードラン、ラミナラン、パキマン、リケナン、シゾフィラン、レンチナン、スクレログルカン、黒酵母グルカンまたはパキマランである、(1)〜(4)のいずれかに記載の免疫賦活化剤。
(6)β−グルカンの数平均分子量が500〜100,000である、(1)〜(5)のいずれかに記載の免疫賦活化剤。
(7)ポリ(ヒドロキシ酸)が、ポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体、ポリ乳酸またはポリグリコール酸である、(1)〜(6)のいずれかに記載の免疫賦活化剤。
(8)β−グルカン修飾体の微粒子を有効成分とする、(1)〜(7)のいずれかに記載の免疫賦活化剤。
(9)(1)〜(8)のいずれかに記載の免疫賦活化剤を有効成分として含有する、医薬。
(10)(1)〜(8)のいずれかに記載の免疫賦活化剤および抗原を有効成分として含有する、ワクチン。
(11)(1)〜(8)のいずれかに記載の免疫賦活化剤および癌抗原を有効成分として含有する、癌の治療および/または予防のためのワクチン。
(12)(1)〜(8)のいずれかに記載の免疫賦活化剤または(9)に記載の医薬を、生体に投与する、免疫賦活化方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、従来よりも強力に免疫を活性化する免疫賦活化剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ラミナランおよびラミナラン加水分解物(1)〜(3)のGPC測定の結果を表す。
図2】ラミナラン修飾体(5)のGPC測定の結果を表す。
図3】TMS化ラミナラン(3)のH−NMR測定の結果を表す。
図4】ラミナラン修飾体(5)のH−NMR測定の結果を表す。
図5】カードラン加水分解物(4)〜(6)のGPC測定の結果を表す。
図6】カードラン修飾体(9)のGPC測定の結果を表す。
図7】TMS化カードラン(5)のH−NMR測定の結果を表す。
図8】カードラン修飾体(9)のH−NMR測定の結果を表す。
図9】β−グルカン修飾体のin vitro刺激試験の結果を表す。
図10】β−グルカン修飾体を基材とした微粒子のin vitro刺激試験1の結果を表す。
図11】β−グルカン修飾体を基材とした微粒子のin vitro刺激試験2の結果を表す。
図12】β−グルカン修飾体のin vivo試験1の結果を表す。
図13】β−グルカン修飾体のin vivo試験2の結果を表す。
図14】β−グルカン修飾体のin vivo試験3の結果を表す。
図15】パキマン修飾体(16)のH−NMR測定の結果を表す。
図16】シゾフィラン修飾体(17)のH−NMR測定の結果を表す。
図17】黒酵母グルカン修飾体(18)のH−NMR測定の結果を表す。
図18】スクレログルカン修飾体(19)のH−NMR測定の結果を表す。
図19】パキマラン修飾体(22)のH−NMR測定の結果を表す。
図20】β−グルカン修飾体のin vitro刺激試験2の結果を表す。
図21】β−グルカン修飾体を基材とした微粒子のin vitro刺激試験3の結果を表す。
図22】β−グルカン修飾体のin vivo試験4の結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、β−グルカンとポリ(ヒドロキシ酸)が共有結合したβ−グルカン修飾体を有効成分とする、免疫賦活化剤に関する。
【0013】
グルカンとはグルコース含有多糖類であり、β−グルカンはグルコースサブユニット間に1つ以上のβ−結合を含むものである。すなわち、本発明で使用されるβ−グルカンはβ−結合を含むものであり、β−結合のみを含むものであってもよい。また、本発明で使用されるβ−グルカンは分枝状であっても線状であってもよい。
【0014】
本発明で使用される好ましいβ−グルカンとしては、1つ以上のβ−1,3結合および/または1つ以上のβ−1,6結合を含むものや、1つ以上のβ−1,2結合および/またはβ−1,4結合を含むものが挙げられるが、1つ以上のβ−1,3結合および/または1つ以上のβ−1,6結合を含むものがより好ましく、1つ以上のβ−1,3結合を含むものがさらに好ましい。1つ以上のβ−1,3結合を含むβ−グルカンの具体例としては、カードラン、パキマン、ラミナラン、リケナン、シゾフィラン、レンチナン、スクレログルカン、黒酵母グルカン(好ましくは、黒酵母由来β−1,3グルカンもしくはβ−1,6グルカン)またはパキマランが挙げられ、好ましくはカードラン、パキマン、ラミナラン、シゾフィラン、スクレログルカン、黒酵母グルカンまたはパキマランが挙げられる。
【0015】
1つ以上のβ−1,3結合を含む線状のβ−グルカンとしては、主としてβ−1,3結合からなるβ―グルカン(例えば、カードランやパキマン)や、β−1,3結合とβ−1,3結合以外のβ−結合からなるβ−グルカン(例えば、ラミナランやリケナン)が挙げられる。
【0016】
1つ以上のβ−1,3結合を含む分枝状のβ−グルカンとしては、β−1,3結合とβ−1,6結合からなるβ−グルカン(例えば、シゾフィランやレンチナン、スクレログルカン、黒酵母グルカン)が挙げられる。
【0017】
また、本発明で使用されるβ―グルカンは誘導体化されていてもよい。誘導体化の例としては、カルボキシメチル基の付加反応や酸化的開裂反応が挙げられる。誘導体化されたβ−グルカンの例としては、カードランにカルボキシメチル基が付加されたカルボキシメチルカードランや、パキマンが開裂されたパキマランが挙げられる。
【0018】
β−グルカンの数平均分子量は特に限定されないが、好ましくは500〜100,000であり、より好ましくは1,000〜50,000であり、さらに好ましくは1,900〜25,000である。数平均分子量とは、分子の大きさの重み付けを考慮しない方法で算出した平均分子量であり、β−グルカンの数平均分子量はゲルパーミションクロマトグラフィー(GPC)により求めることができる。
【0019】
ポリ(ヒドロキシ酸)は特に限定されないが、免疫賦活化剤の構成成分であるという観点から生体投与時に著しく有害な影響を与えない生体適合性ポリマーであることが好ましい。ここで言う生体適合性とはラットに該ポリマーを経口投与する場合のLD50が2,000mg/kg以上のものを指す。また、複数種類のヒドロキシ酸の共重合体であってもよいが、好ましくは2種類以下のヒドロキシ酸の重合体である。
【0020】
ポリ(ヒドロキシ酸)の好ましい具体例としては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ(2−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(2−ヒドロキシ吉草酸)、ポリ(2−ヒドロキシカプロン酸)、ポリ(2−ヒドロキシカプリン酸)、ポリ(リンゴ酸)またはこれらの高分子化合物の誘導体ならびに共重合体が挙げられるが、ポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体、ポリ乳酸またはポリグリコール酸がより好ましく、ポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体がさらに好ましい。ポリ(ヒドロキシ酸)がポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体である場合のポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体の組成比(乳酸/グリコール酸)(モル/モル)は、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定されないが、100/0〜30/70のものが好ましく、60/40〜40/60のものがより好ましい。
【0021】
ポリ(ヒドロキシ酸)の数平均分子量は特に限定されないが、好ましくは500〜1,000,000であり、より好ましくは10,000〜100,000であり、さらに好ましくは14,700〜68,300である。ポリ(ヒドロキシ酸)の数平均分子量は、β−グルカン修飾体の数平均分子量とβ−グルカンの数平均分子量の差より求められる。
【0022】
β−グルカン修飾体の構造は特に限定されず、具体例としては、β−グルカンとポリ(ヒドロキシ酸)がつながった直鎖状のブロック型ポリマー、β−グルカンまたはポリ(ヒドロキシ酸)が複数個存在する分岐を持った分岐ポリマー、β−グルカンの主鎖およびポリ(ヒドロキシ酸)の側鎖からなるグラフト型ポリマー、ポリ(ヒドロキシ酸)の主鎖およびβ−グルカンの側鎖からなるグラフト型ポリマーが挙げられるが、好ましくは、β−グルカンの主鎖およびポリ(ヒドロキシ酸)の側鎖からなるグラフト型ポリマーである。
【0023】
β−グルカン修飾体は、長期に渡って免疫賦活化作用を持続させるため、生体内ですぐに排泄されないよう全体として水不溶性であることが好ましい。ここでいう水不溶性とは、水への溶解度が1g(β−グルカン修飾体)/100ml(水)以下であることをいう。
【0024】
β−グルカン修飾体の数平均分子量は特に限定されないが、好ましくは1,000〜1,000,000であり、より好ましくは10,000〜100,000であり、さらに好ましくは13,800〜84,000である。β−グルカン修飾体の数平均分子量はゲルパーミションクロマトグラフィー(GPC)より求められる。
【0025】
β−グルカン修飾体におけるβ−グルカンセグメントの比率(β−グルカンセグメント/β−グルカン修飾体)は特に限定されないが、好ましくは1〜50%(w/w)であり、より好ましく5〜45%(w/w)であり、さらに好ましくは8.3〜42.5%(w/w)ある。β−グルカン修飾体におけるβ−グルカンセグメントの比率はβ−グルカンの数平均分子量とβ−グルカン修飾体の数平均分子量の比を用いて求められる。
【0026】
β−グルカンの主鎖およびポリ(ヒドロキシ酸)の側鎖からなるグラフト型ポリマーの場合、各グラフト鎖の数平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは1,000〜10,000であり、より好ましくは1,300〜6,400である。各グラフト鎖の数平均分子量は核磁気共鳴(NMR)測定によって末端残基のピーク積分値と末端残基以外のピーク積分値の比から求められる。
【0027】
β−グルカンの主鎖およびポリ(ヒドロキシ酸)の側鎖からなるグラフト型ポリマーの場合、グラフト鎖の数は、特に限定されないが、好ましくは3から15である。グラフト鎖数は、β−グルカン修飾体の数平均分子量からβ−グルカンの数平均分子量を引いた値を、各グラフト鎖の数平均分子量で割ることで求められる。
【0028】
β−グルカン修飾体は既知の方法で製造すれば良く、具体的には、β−グルカンにポリ(ヒドロキシ酸)を加えて縮合反応を行い製造する方法、β−グルカンにヒドロキシ酸活性化モノマーを加えて重合反応を行い製造する方法が例として挙げられる。
【0029】
特に、β−グルカン修飾体がβ−グルカンの主鎖およびポリ(ヒドロキシ酸)の側鎖からなるグラフト型ポリマーである場合、以下の(1)、(2)または(3)のようにして製造することができる。
(1)すず触媒存在下、β−グルカンにヒドロキシ酸活性化モノマーを加えて重合反応を行い、ポリ(ヒドロキシ酸)を導入することでグラフト型ポリマーを製造する方法[Macromolecules,31,p.1032−1039(1998年)]
(2)水酸基の大部分が置換基で保護されたβ−グルカンの一部未保護の水酸基を塩基で活性化後、ヒドロキシ酸活性化モノマーを加えてポリ(ヒドロキシ酸)からなるグラフト鎖を導入し、最後に保護基を取り除くことにより、グラフト型ポリマーを製造する方法[Polymer,44,p.3927−3933,(2003年)]
(3)β−グルカンに対して、ポリ(ヒドロキシ酸)の共重合体を脱水剤および/または官能基の活性化剤を用いて縮合反応させることにより、グラフト型ポリマーを製造する方法[Macromolecules,33,p.3680−3685(2000年)]。
【0030】
β−グルカン修飾体を免疫賦活化剤として使用する場合の形態は、ファイバー、フィルム、微粒子などが挙げられるが、免疫賦活化剤を生体内に投与する場合、投与の容易性から微粒子が好ましい。
【0031】
β−グルカン修飾体微粒子を製造する方法は特に限定されず、液中乾燥法、噴霧乾燥法、粉砕法などが挙げられるが、液中乾燥法によって好ましく製造される。
【0032】
液中乾燥法によって微粒子を製造する方法としては、O/Wエマルジョン法、W/O/Wエマルジョン法、S/O/Wエマルジョン法などが挙げられる。
【0033】
O/Wエマルジョン法により微粒子を製造する場合の例を挙げると、β−グルカン修飾体を溶解した水非混和性有機溶媒と表面改質剤水溶液を混合し、O/Wエマルジョン溶液を調製する工程、およびO/Wエマルジョン溶液から水非混和性有機溶媒を除去して微粒子を得る工程によって製造することができる。
【0034】
W/O/Wエマルジョン法により微粒子を製造する場合の例を挙げると、水系溶媒とβ−グルカン修飾体を溶解した水非混和性有機溶媒を混合しW/Oエマルジョン溶液を調製する工程、W/Oエマルジョン溶液と表面改質剤水溶液を混合しW/O/Wエマルジョン溶液を調製する工程、およびW/O/Wエマルジョン溶液から水非混和性有機溶媒を除去して微粒子を得る工程によって製造することができる。
【0035】
S/O/Wエマルジョン法により微粒子を製造する場合の例を挙げると、水系溶媒とβ−グルカン修飾体を溶解した水非混和性有機溶媒を混合しW/Oエマルジョン溶液を調製する工程、W/Oエマルジョン溶液から溶媒を除去し固形分を得る工程、固形分を水非混和性有機溶媒に分散させS/Oサスペンジョン溶液を得る工程、S/Oサスペンジョン溶液と表面改質剤水溶液を混合しS/O/Wエマルジョン溶液を調製する工程、およびS/O/Wエマルジョン溶液から水非混和性有機溶媒を除去して微粒子を得る工程によって製造することができる。
【0036】
微粒子調製に使用する表面改質剤は水溶性ポリマーまたは界面活性剤であることが好ましい。ここでいう水溶性ポリマーとは、水への溶解度が1g(親水性ポリマー)/100ml(水)以上の高分子化合物である。
【0037】
表面改質剤となる水溶性ポリマーの例としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ−1,3−ジオキソラン、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンポリマー、ポリ−1,3,6−トリオキサン、ポリアミノ酸、ペプチド、タンパク質、糖類多糖類が挙げられるが、ポリビニルアルコールがより好ましい。
【0038】
表面改質剤となる界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンジ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリンジ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の非イオン性活性剤や、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸塩またはレシチンが挙げられるが、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールがより好ましい。
【0039】
微粒子調製に使用する水非混和性有機溶媒は、β−グルカン修飾体が可溶で且つ、β−グルカンが難溶または不溶であることが好ましい。水非混和性有機溶媒の水への溶解度は、好ましくは30g(水非混和性有機溶媒)/100ml(水)以下である。水非混和性有機溶媒の具体例としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、塩化メチレン、クロロホルムが挙げられる。
【0040】
微粒子調製に使用する水系溶媒は、水あるいは水溶性成分を含有する水溶液である。該水溶性成分として、例えば、無機塩類、糖類、有機塩類、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、核酸などが挙げられる。
【0041】
β−グルカン修飾体微粒子の微粒子表面には、前記製造過程で使用される表面改質剤が結合していてもよい。ここでいう結合とは非共有結合であっても共有結合であっても良い。非共有結合は、好ましくは疎水的な相互作用であるが、静電相互作用、水素結合、ファン・デル・ワールスカでも良く、それらが複合した結合でもよい。
【0042】
前記微粒子の平均粒径は0.01〜10μmであることが好ましく、0.1〜1μmであることがさらに好ましい。ここでいう平均粒径は、動的光散乱装置(DLS:例えば、大塚電子株式会社、ELS−Z)を用いて、光散乱強度分布及び拡散係数を測定し、キュムラント法によって解析することによって算出した。
【0043】
免疫賦活化剤とは、生体内で免疫応答を活性化させる薬剤であり、本発明の免疫賦活化剤はβ−グルカン修飾体を有効成分とすることを特徴としている。免疫賦活化剤が活性化させる免疫応答の種類は限定されず、生じさせる免疫応答の種類としてはTh1型免疫応答やTh2型免疫応答があり、抗原や投与部位、投与方法の種類によってどちらかの免疫応答に優位に生じることが知られるが、本発明の免疫賦活化剤はTh1型、Th2型両方のタイプの免疫応答を生じさせうる。
【0044】
本発明の免疫賦活化剤は、単独または他の薬剤と併用して医薬として使用することができる。本発明の免疫賦活化剤と他の薬剤を併用する場合、これらを配合して製剤化してもよく、別々に投与することを目的にそれぞれ独立して製剤化してもよい。
【0045】
本発明の免疫賦活化剤と併用する薬剤は特に制限はないが、抗原が好ましく用いられる。ここでいう抗原とは、生体内で免疫を惹起する物質であって、疾患の治療および/または予防を目的としたワクチンとして利用されるものである。本発明の免疫賦活化剤と抗原を併用することによって、抗原によって惹起される免疫応答を強化することができる。
【0046】
抗原の例としては、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、糖脂質、脂質、炭水化物、核酸、多糖類およびこれらを含むウイルス、菌体、アレルギー原因物質、組織、細胞、などが挙げられる。具体的には、花粉由来抗原、A型肝炎ウイルス由来抗原、B型肝炎ウイルス由来抗原、C型肝炎ウイルス由来抗原、D型肝炎ウイルス由来抗原、E型肝炎ウイルス由来抗原、F型肝炎ウイルス由来抗原、HIVウイルス由来抗原、インフルエンザウイルス由来抗原、ヘルペスウイルス(HSV−1、HSV−2)由来抗原、炭疽菌由来抗原、クラジミア由来抗原、肺炎球菌由来抗原、日本脳炎ウイルス由来抗原、麻疹ウイルス由来抗原、風疹ウイルス由来抗原、破傷風菌由来抗原、水痘ウイルス由来抗原、SARSウイルス由来抗原、EBウイルス由来抗原、パピローマウイルス由来抗原、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacterpylori)菌由来抗原、狂犬病ウイルス由来抗原、ウエストナイルウイルス由来抗原、ハンタウイルス由来抗原、連鎖球菌由来抗原、ブドウ球菌由来抗原、百日咳(Bordetellapertussis)菌由来抗原、結核菌(Mycobacteriumtuberculosis)由来抗原、マラリア原虫(Plasmodium)由来抗原、ポリオウイルス由来抗原、各種人畜共通感染症由来抗原、各種食物アレルギー由来抗原、自己抗原などが挙げられる。
【0047】
その他、抗原の好ましい例として癌抗原が挙げられる。癌抗原とは、癌細胞に特異的に発現するタンパク質に由来する物質であって、生体外から生体内に投与されることで免疫応答によって癌の治療および/または予防の効果を奏する抗原である。本発明の免疫賦活化剤と癌抗原をともに使用することで、癌の治療および/または予防のためのワクチンとして使用することができる。
【0048】
本発明の免疫賦活化剤がβ−グルカン修飾体微粒子である場合は、抗原は該微粒子に封入されることが好ましい。β−グルカン修飾体微粒子に抗原を封入させる方法としては、水系溶媒として抗原水溶液を用いてW/O/Wエマルジョン法またはS/O/Wエマルジョン法によりβ−グルカン修飾体微粒子を製造する方法が挙げられる。
【0049】
抗原がβ−グルカン修飾体微粒子に封入される場合、その封入率(抗原/β−グルカン修飾体)は好ましくは0.01〜20%(w/w)、より好ましくは0.1〜10%(w/w)である。封入率の定量方法としては、β−グルカン修飾体微粒子より有機溶媒を用いて抗原を抽出し、ゲル電気泳動または液体クロマトグラフィーにより定量する方法が挙げられる。
【0050】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の免疫賦活化剤または医薬を、生体(被験体)に投与する、免疫賦活化方法が提供される。本発明の免疫賦活化剤または医薬を用いて免疫反応を活性化(賦活化)させる方法については限定されず、免疫賦活化剤または医薬を生体に投与しても良いし、生体外に摘出した免疫担当細胞に接触させても良い。生体への投与方法に特に限定はないが、例を挙げると、皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、経鼻投与、経肺投与、経口投与、経皮投与、舌下投与、腟内投与、腹腔内投与、リンパ節投与などであり、好ましくは皮内投与または皮下投与である。投与する生体はヒトであってもヒト以外の動物であってもよいが、好ましくはヒトあるいは家畜、愛玩動物または実験動物として飼育されているブタ、ウシ、トリ、ヒツジ、ウマ、ロバ、ヤギ、ラクダ、イヌ、ネコ、フェレット、ウサギ、サル、ラット、マウスまたはモルモットである。
【0051】
本発明の免疫賦活化剤を医薬(ワクチンを含む)として用いる場合、製剤学的に有用な各種添加剤を配合して製剤化しても良く、添加剤の具体例としては、緩衝剤、抗酸化剤、塩、ポリマーまたは糖が挙げられる。
【0052】
本発明の免疫賦活化剤を医薬として用いる場合のβ−グルカン修飾体の投与量については、投与方法、投与回数によって適宜設定されるが、例えばヒトに対して本発明の免疫賦活化剤を皮下投与する場合、β−グルカン修飾体の量として1回あたり0.01〜1,000mgが投与される。
【0053】
本発明の免疫賦活化剤を抗原と併用する場合の抗原等他の薬剤の投与量については、0.001〜100mgが好ましい。
【0054】
本発明の好ましい態様によれば、β−グルカンとポリ(ヒドロキシ酸)が共有結合したβ−グルカン修飾体を有効成分とする免疫賦活化剤であって、該β−グルカンが、カードラン、パキマン、ラミナラン、シゾフィラン、スクレログルカン、黒酵母グルカンまたはパキマランであり、該ポリ(ヒドロキシ酸)がポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体である、免疫賦活化剤が提供される。
【0055】
本発明の別の好ましい態様によれば、β−グルカンとポリ(ヒドロキシ酸)が共有結合したβ−グルカン修飾体を有効成分とする免疫賦活化剤および癌抗原を有効成分として含有するワクチンであって、該β−グルカンが、カードラン、パキマン、ラミナラン、シゾフィラン、スクレログルカン、黒酵母グルカンまたはパキマランであり、該ポリ(ヒドロキシ酸)がポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体であるワクチンが提供される。
【実施例】
【0056】
以下に実施例を示すが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0057】
実施例1 ポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体が修飾されたラミナラン(ラミナラン修飾体(1)〜(8))の合成
(1)ラミナランの加水分解反応(ラミナラン加水分解物(1)〜(3)の合成)
ラミナラン(数平均分子量25,000、東京化成工業株式会社)10gをジメチルスルホキシド120mlに溶解した後、0.5規定塩酸水溶液15mlを加え、105℃で0.5時間攪拌した。該反応溶液を透析膜に移し、水中で透析を行った後に、凍結乾燥を行い、ラミナラン加水分解物(1)(数平均分子量12,700)を粉末として得た。同様の条件で、1.5時間反応させることでラミナラン加水分解物(2)(数平均分子量6,700)を、2時間反応させることでラミナラン加水分解物(3)(数平均分子量4,100)を合成した。
【0058】
ラミナランおよびラミナラン加水分解物の数平均分子量はGPC測定(カラム:東ソー −TSK−gel G3000PWXL−CP×2、酢酸緩衝液系溶媒(10mM、pH=5)、検出器:RI、標準品:プルラン)によって決定した(図1:ラミナランおよびラミナラン加水分解物(1)〜(3))。
【0059】
(2)ラミナランのトリメチルシリル(TMS)化反応(TMS化ラミナラン(1)〜(4)の合成)
ラミナラン(数平均分子量25,000、東京化成工業株式会社)2.4gにホルムアミド48mlに加え、80℃に加熱した。この溶液に1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン48mlを20分掛けて滴下し、80℃で2.5時間攪拌した。該反応溶液を分液漏斗に移し、二層に分離するまで静置した。上層を回収し、減圧下濃縮した後、メタノール 144mlを加え、得られた固体をろ過、乾燥し、TMS化ラミナラン(1)3.14gを白色固体として得た。同様の方法で、ラミナラン加水分解物(1)からTMS化ラミナラン(2)を、ラミナラン加水分解物(2)からTMS化ラミナラン(3)を、ラミナラン加水分解物(3)からTMS化ラミナラン(4)を合成した。
【0060】
TMS化反応進行は、H−NMR測定(図3:TMS化ラミナラン(3))により確認した。
【0061】
(3)ラミナランに対するポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体の修飾反応(ラミナラン修飾体(1)〜(8)の合成)
TMS化ラミナラン(1)0.5gとtert−ブトキシカリウム(tBuOK)26mgを加熱減圧下2時間乾燥後、テトラヒドロフラン10mlを加え、1.5時間室温で攪拌し、活性化溶液を得た。活性化溶液の調製に使用したtBuOKの35倍モルのモノマー((DL)−ラクチドとグリコリドのモル比1:1の混合物)をテトラヒドロフランに溶解し、モノマー溶液を得た。該活性化溶液に、該モノマー溶液を滴下し、30分間攪拌後、酢酸0.5ml加えて反応を停止させた。反応終了後の溶液を減圧下濃縮し、クロロホルム(良溶媒)−メタノール(貧溶媒)系およびクロロホルム(良溶媒)−シクロヘキサン(貧溶媒)系で再沈殿精製を行い、白色固体を得た。得られた白色固体をクロロホルム5mlに溶解し、トリフルオロ酢酸0.5mlを加え、室温で30分間攪拌した。該反応溶液を減圧下濃縮し、クロロフホルム(良溶媒)−ジエチルエーテル(貧溶媒)系で再沈殿精製を行い、ラミナラン修飾体(1)を白色固体として得た。
【0062】
同様の方法で、TMS化ラミナラン(1)にtBuOKの50倍モルのモノマーを反応せることでラミナラン修飾体(2)を、TMS化ラミナラン(2)にtBuOKの35倍モルのモノマーを反応せることでラミナラン修飾体(3)を、TMS化ラミナラン(2)にtBuOKの50倍モルのモノマーを反応せることでラミナラン修飾体(4)を、TMS化ラミナラン(3)にtBuOKの30倍モルのモノマーを反応せることでラミナラン修飾体(5)を、TMS化ラミナラン(3)にtBuOKの35倍モルのモノマーを反応せることでラミナラン修飾体(6)を、TMS化ラミナラン(3)にtBuOKの50倍モルのモノマーを反応せることでラミナラン修飾体(7)を、TMS化ラミナラン(4)にtBuOKの35倍モルのモノマーを反応せることでラミナラン修飾体(8)を合成した。
【0063】
ラミナラン修飾体(1)〜(8)の評価結果を表1に示す。ラミナラン修飾体の数平均分子量はGPC測定(カラム:東ソ− TSK−gel α−5000×2、DMF系溶媒、検出器:RI、標準品:プルラン)によって決定した(図2:ラミナラン修飾体(5))。ラミナラン修飾体に含まれるラミナランセグメントの比率(w/w)は、合成に使用したラミナランの数平均分子量とラミナラン修飾体の数平均分子量より決定した。各グラフト鎖の数平均分子量は、H−NMR測定により決定した(図4:ラミナラン修飾体(5))。グラフト鎖数の平均は、ラミナラン修飾体の数平均分子量からラミナランの数平均分子量を引いた値を、各グラフト鎖の数平均分子量で割ることで決定した。
【0064】
【表1】
【0065】
実施例2 ポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体が修飾されたカードラン(カードラン修飾体(9)〜(14))の合成
(1)カードランの加水分解反応(カードラン加水分解物(4)〜(6)の合成)
カードラン(数平均分子量:約90,000、和光純薬工業株式会社)12.8gをジメチルスルホキシド384mlに溶解した後、1規定塩酸水溶液19.2mlを加え、110℃で0.75時間攪拌した。該反応溶液を透析膜に移し、水中で透析を行った後に、凍結乾燥を行い、カードラン加水分解物(4)(数平均分子量2,800)を粉末として得た。同様の条件で、0.8時間反応させることでカードラン加水分解物(5)(数平均分子量2,300)を、0.85時間反応させることでカードラン加水分解物(6)(数平均分子量1,900)を合成した。
【0066】
カードランの数平均分子量はGPC測定(カラム:東ソ− TSK−gel G3000PWXL−CP×2、酢酸緩衝液系溶媒(10mM、pH=5)、検出器:RI、標準品:プルラン)によって決定した(図5:カードラン加水分解物(4)〜(6))。
【0067】
(2)カードランのトリメチルシリル(TMS)化反応(TMS化カードラン(5)〜(7)の合成)
カードラン加水分解物(4)1gをホルムアミド20mlに加え、80℃に加熱した。この溶液に1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン20mlを20分掛けて滴下し、80℃で2.5時間攪拌した。該反応溶液を分液漏斗に移し、二層に分離するまで静置した。上層を回収し、減圧下濃縮した後、メタノール60mlを加え、得られた固体をろ過、乾燥し、TMS化カードラン(5)1gを白色固体として得た。同様な方法で、カードラン加水分解物(5)からTMS化カードラン(6)を、カードラン加水分解物(6)からTMS化カードラン(7)を合成した。
【0068】
TMS化反応進行はH−NMR測定により確認した(図7:TMS化カードラン(5))。
(3)カードランに対するポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体の修飾反応(カードラン修飾体(9)〜(14)の合成)
TMS化カードラン(5)0.2gとtert−ブトキシカリウム(tBuOK)14mgを加熱減圧下2時間乾燥後、テトラヒドロフラン5mlを加え、1.5時間室温で攪拌し、活性化溶液を得た。活性化溶液の調製に使用したtBuOKの35倍モルのモノマー((DL)−ラクチドとグリコリドのモル比1:1の混合物)をテトラヒドロフランに溶解し、モノマー溶液を得た。該活性化溶液に、該モノマー溶液を滴下し、30分間攪拌後、酢酸0.2ml加えて反応を停止させた。反応終了後の溶液を減圧下濃縮し、クロロホルム(良溶媒)−メタノール(貧溶媒)系およびクロロホルム(良溶媒)−シクロヘキサン(貧溶媒)系で再沈殿精製を行い、白色固体を得た。得られた白色固体をクロロホルム5mlに溶解し、トリフルオロ酢酸0.4mlを加え、室温で30分間攪拌した。該反応溶液を減圧下濃縮し、クロロフホルム(良溶媒)−ジエチルエーテル(貧溶媒)系で再沈殿精製を行い、カードラン修飾体(9)を白色固体として得た。
【0069】
同様の方法で、TMS化カードラン(5)にtBuOKの50倍モルのモノマーを反応せることでカードラン修飾体(10)を、TMS化カードラン(6)にtBuOKの35倍モルのモノマーを反応せることでカードラン修飾体(11)を、TMS化カードラン(6)にtBuOKの50倍モルのモノマーを反応せることでカードラン修飾体(12)を、TMS化カードラン(7)にtBuOKの35倍モルのモノマーを反応せることでカードラン修飾体(13)を、TMS化カードラン(7)にtBuOKの50倍モルのモノマーを反応せることでラカードラン修飾体(14)を合成した。
【0070】
カードラン修飾体(9)〜(14)の評価結果を表2に示す。カードラン修飾体の数平均分子量はGPC測定(カラム:東ソ− TSK−gel α−5000×2、DMF系溶媒、検出器:RI、標準品:プルラン)によって決定した(図6:カードラン修飾体(9))。カードラン修飾体に含まれるカードランセグメントの比率(w/w)は、合成に使用したカードランの数平均分子量とカードラン修飾体の数平均分子量より決定した。各グラフト鎖の数平均分子量は、H−NMR測定により決定した(図8:カードラン修飾体(9))。グラフト鎖数の平均は、カードラン修飾体の数平均分子量からカードランの数平均分子量を引いた値を、各グラフト鎖の数平均分子量で割ることで決定した。
【0071】
【表2】
【0072】
比較例1 ポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体が修飾されたデキストラン(デキストラン修飾体(15))の合成
デキストラン(数平均分子量4,100、SERVA社)5gを用い、上記の実施例1および実施例2と同様の方法で、TMS化デキストラン(8)5.2gを白色固体として得た。次いで、TMS化デキストラン(8)0.5gに、上記の実施例1および実施例2と同様の方法で、tert−ブトキシカリウム(tBuOK)とtBuOKの35倍モルのモノマー((DL)−ラクチドとグリコリドのモル比1:1の混合物)を反応させることで、デキストラン修飾体(15)0.9gを白色固体として得た。
【0073】
デキストラン修飾体(15)の評価結果を表3に示す。各値については、上記の実施例1および実施例2と同様の方法で算出した。
【0074】
【表3】
【0075】
実施例3 O/Wエマルジョン法を用いた微粒子(カードラン微粒子(1)〜(5)、ラミナラン微粒子(6)、(7)、PLGA比較微粒子(8)、デキストラン比較微粒子(9))の調製
表4に記すカードラン修飾体(9)〜(13)10mgを酢酸エチル1mlに溶解し、ポリマー溶液を調製した。該ポリマー溶液を1%(w/v)ポリビニルアルコール水溶液4mlに滴下し、ミキサー(ポリトロン社、PT2100S)を用いた11,000rpm、1分間の撹拌によりO/Wエマルジョン溶液を調製した。該O/Wエマルジョン溶液から液中乾燥により酢酸エチルを除去して、微粒子懸濁液とした。該懸濁液を15mlチューブに移し、8,000rpm、10分間の遠心により微粒子を沈殿させた。上清を除いた後に、微粒子を10mlの蒸留水に再懸濁し、上記条件での遠心により微粒子を再度沈殿させた。この洗浄操作をもう一度繰り返し、上清を除いた後に微粒子を5%(w/v)マンニトールおよび0.1%(w/v)ポリソルベート80を含む水溶液1.8mlに懸濁させた。該懸濁液を液体窒素で予備凍結した後、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社、FD−1000)を用いて、トラップ冷却温度−45℃、真空度20Paにて12時間凍結乾燥することで、カードラン微粒子(1)〜(5)を得た。
【0076】
同様の方法で、ラミナラン修飾体(3)、(8)をそれぞれ基材としたラミナラン微粒子(6)、(7)を得た。
【0077】
また比較例として、同様な方法で、ポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体(PLGA、数平均分子量5,000、和光純薬工業株式会社)を基材としたPLGA比較微粒子(8)、およびデキストラン修飾体(15)を基材とした、デキストラン比較微粒子(9)を得た。
【0078】
微粒子の平均粒径は、動的光散乱装置(大塚電子株式会社、ELS−Z)を用いて、光散乱強度分布及び拡散係数を測定し、キュムラント法によって解析することによって算出した。結果を表4に示す。
【0079】
【表4】
【0080】
実施例4 S/O/Wエマルジョン法を用いた微粒子(OVA含有カードラン微粒子(10)、カードラン微粒子(11)、OVA含有ラミナラン微粒子(12)〜(14)、OVA含有デキストラン比較微粒子(15))の調製
カードラン修飾体(13)100mgを炭酸ジメチル1.8mlおよびtert−ブタノール200μlに溶解し、ポリマー溶液を調製した。該ポリマー溶液に、0.1%(w/v)OVA(卵白アルブミン、シグマ社))水溶液1mlを滴下し、ミキサー(ポリトロン社、PT2100S)を用いた11,000rpm、1分間の撹拌によりW/Oエマルジョン溶液を製造した。該W/Oエマルジョン溶液を液体窒素で予備凍結した後、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社、FD−1000)を用いて、トラップ冷却温度−45℃、真空度20Paに12時間凍結乾燥した。得られた固形分を酢酸エチル10mlに分散させ、S/Oサスペンジョン溶液を調製した。該S/Oサスペンジョン溶液を1%(w/v)ポリビニルアルコール水溶液40mlに滴下し、ミキサー(シルバーソン社、L5M−A)を用いた6,000rpm、5分間の撹拌によりS/O/W型エマルジョン溶液を調製した。該S/O/W型エマルジョン溶液から液中乾燥により酢酸エチルを除去して、微粒子懸濁液とした。該懸濁液を50mlチューブに移し、8,000rpm、10分間の遠心により微粒子を沈殿させた。上清を除いた後に、微粒子を50mlの蒸留水に再懸濁し、上記条件での遠心により微粒子を再度沈殿させた。この洗浄操作をもう一度繰り返し、上清を除いた後に微粒子を5%(w/v)マンニトールおよび0.1%(w/v)ポリソルベート80を含む水溶液8mlに懸濁させた。該懸濁液を液体窒素で予備凍結した後、凍結乾燥機を用いて、トラップ冷却温度−45℃、真空度20Paにて12時間凍結乾燥することで、OVA含有カードラン微粒子(10)を得た。
【0081】
同様の方法で、OVA水溶液の代わりに蒸留水を用いることでOVAを含まないカードラン微粒子(11)を得た。同様な方法で、ラミナラン修飾体(1)、(3)、(5)を用いることでOVA含有ラミナラン微粒子(12)〜(14)を得た。
【0082】
比較例として、同様な方法で、デキストラン修飾体(15)を基材として用いることでOVA含有デキストラン比較微粒子(15)を得た。
【0083】
微粒子の評価結果を表5に示す。微粒子の平均粒径は、動的光散乱装置(大塚電子株式会社、ELS−Z)を用いてキュムラント法により算出した。抗原の封入率(w/w)は、微粒子より有機溶媒を用いて抗原を抽出し、抽出した抗原をゲル電気泳動装置(TEFCO社)でゲル電気泳動後に、コロイドCBB染色キット(TEFCO社)を用いて染色を行うことにより決定した。
【0084】
【表5】
【0085】
参考例1 マウス骨髄由来樹状細胞(BMDC)の誘導
オスC57BL/6マウス8週齢を炭酸ガスで安楽死させた後に、大腿骨を採りだした。大腿骨の両端をハサミで切断し、大腿骨の内部に注射器を用いて10%FBS(シグマ社)、100単位/mlペニシリン(ライフテクノロジー社)、100単位/mlストレプトマイシン(ライフテクノロジー社)を含むRPMI1640倍地(以下、RPMI培地)を注入し、骨髄溶液を回収した。該骨髄溶液は1,500rpm、5分間の遠心により細胞を沈殿させ、上清を除去した。回収した細胞は、溶血用バッファー(1.66%(w/v)塩化アンモニウム水溶液)1mlに懸濁させた後に、4℃で4分間静置することで溶血させた。溶血後の細胞懸濁液に、RPMI培地10mlを加え、1,500rpm、5分間の遠心により細胞を沈殿させ、上清を除去した。細胞は10%FBS(シグマ社)、10ng/mlGM−CSF、100単位/mlペニシリン(ライフテクノロジー社)、100単位/mlストレプトマイシン(ライフテクノロジー社)を含むRPMI1640倍地(以下、培養培地)に懸濁させた後に、6ウェルプレート(IWAKI社、Flat Bottom Tissue culture Treated,Polystyrene)に播種した。播種したプレートは5%CO、37℃、湿度100%の条件に設定したCOインキュベーター(NAPCO社)内で3時間培養し、マイクロピペットを用いて強く懸濁することで、プレートに接着していない細胞のみを回収した。回収した細胞は培養培地に再懸濁させた後に、6ウェルプレートに播種し、COインキュベーター内で培養した。培養2日目および4日目に培養培地の交換を行い、培養5日目にマイクロピペットを用いて強く懸濁することで、プレートに接着していない細胞、すなわち誘導された樹状細胞のみを回収した。
【0086】
実施例5 マウス骨髄由来樹状細胞(BMDC)を用いたβ−グルカン修飾体のin vitro刺激試験
<方法>
実施例2で得られたβ−グルカン修飾体(カードラン修飾体(9)〜(12))10mgを秤量し、アセトニトリル10mlに溶解しポリマー溶液を得た。該ポリマー溶液100μl(ポリマー100μg分)を6ウェルプレートに滴下し、乾燥させることでポリマーコートプレートを得た。該ポリマーコートプレーに参考例1で得られた樹状細胞を培養培地とともに1ウェルあたり1×10個となるよう播種した。播種したプレートは、COインキュベーター内で2日間培養した後に、マイクロピペットを用いて強く懸濁することで、プレートに接着していない細胞のみを回収した。回収した細胞は、1,500rpm、5分間の遠心により細胞を沈殿させ、上清を除去し、RPMI培地100μlに懸濁させた。該細胞懸濁液に、FITC標識抗CD86抗体およびPE標識抗CD11c抗体を添加し、4℃で15分間静置することで抗体標識反応を行った。抗体標識反応終了後、フローサイトメトリーにより活性化マーカー(CD86)の発現量を蛍光強度(MFI)により評価した。
【0087】
比較例としては、比較例1で得られたデキストラン修飾体(15)、実施例1で得られたTMS化カードラン(1)またはポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体(PLGA、和光純薬株式会社、PLGA−5020)を同様にコートしたプレートを用いて、同様に活性化マーカーの発現量を比較した。また別の比較例として、実施例1で得られたカードラン加水分解物(1)100μgまたは免疫活性化能が知られているpoly I:C(シグマ社)100μgを培養培地に添加して、同様に活性化マーカーの発現量を比較した。
【0088】
<結果>
CD86の発現量の指標である蛍光強度(MFI)を図9に示す。CD86は樹状細胞の活性化マーカーの1つである。カードラン修飾体(9)〜(12)を用いた場合は、デキストラン修飾体(15)およびポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体を用いた場合と比較して、CD86の発現量が高いことより、β−グルカン修飾体は強い樹状細胞が活性化能を有することが明らかとなった。また、カードラン加水分解物(1)およびTMS化カードラン(1)を用いた場合は、β−グルカン修飾体を用いた場合と比較してCD86の発現量が低いことより、樹状細胞の活性化にはβ−グルカンへのポリ(ヒドロキシ酸)の修飾が重要であることが明らかとなった。
【0089】
実施例6 マウス骨髄由来樹状細胞(BMDC)を用いたβ−グルカン修飾体を基材とした微粒子のin vitro刺激試験1
<方法>
参考例1で得られた樹状細胞を培養培地とともに1ウェルあたり1×10個となるよう6ウェルプレートに播種し、さらに実施例3で調製した微粒子(カードラン微粒子(1)〜(5)、PLGA比較微粒子(8)、デキストラン比較微粒子(9))0.2mgを添加した。播種したプレートは、COインキュベーター内で2日間培養し、マイクロピペットを用いて強く懸濁することで、プレートに接着していない細胞のみを回収した。回収した細胞は、1,500rpm、5分間の遠心により細胞を沈殿させ、上清を除去し、RPMI培地100μlに懸濁させた。該細胞懸濁液に、FITC標識抗CD86抗体およびPE標識抗CD11c抗体を添加し、4℃で15分間静置することで抗体標識反応を行った。抗体標識反応終了後、フローサイトメトリーにより活性化マーカー(CD86)の発現量を蛍光強度(MFI)により評価した。
【0090】
比較例として、poly I:C(シグマ社)100μgを培養培地に添加して、同様に活性化マーカーの発現量を比較した。
【0091】
<結果>
各微粒子におけるCD86の発現量の指標である蛍光強度(MFI)を図10に示す。微粒子(カードラン微粒子(1)〜(5)、PLGA比較微粒子(8)、デキストラン比較微粒子(8))を用いた場合は、未添加の場合と比べて、CD86の発現量が高いことより、微粒子が樹状細胞活性化能を有することが明らかとなった。さらにカードラン修飾体を基材とした微粒子(カードラン微粒子(1)〜(5))を用いた場合は、デキストラン修飾体を基材とした微粒子(デキストラン比較微粒子(9))やPLGAを基材とした微粒子(PLGA比較微粒子(8))を用いた場合と比較して、より強力な樹状細胞活性能を有することが明らかとなった。β−グルカン修飾体を基材とした微粒子は強い免疫活性化能を有することが確認された。
【0092】
実施例7 マウス骨髄由来樹状細胞(BMDC)を用いたβ−グルカン修飾体を基材とした微粒子のin vitro刺激試験2
<方法>
実施例6と同様の方法で、参考例1で得られた樹状細胞を播種したプレートに、実施例3で調製した微粒子(ラミナラン微粒子(6)、(7)、PLGA比較微粒子(8)、デキストラン比較微粒子(9))0.2mgを添加し、活性化マーカー(CD86)の発現量を蛍光強度(MFI)により評価した。
【0093】
比較例として、poly I:C(シグマ社)100μgを培養培地に添加して、同様に活性化マーカーの発現量を比較した。
【0094】
<結果>
各微粒子におけるCD86の発現量の指標である蛍光強度(MFI)を図11に示す。ラミナラン修飾体を基材とした微粒子(ラミナラン微粒子(6)、(7))を用いた場合は、デキストラン修飾体を基材とした微粒子(デキストラン比較微粒子(9))やPLGAを基材とした微粒子(PLGA比較微粒子(8))を用いた場合と比較して、より強い樹状細胞活性能を有することが明らかとなった。つまりラミナラン修飾体を基材とした微粒子は、実施例6のカードラン修飾体を基材とした微粒子と同様に強い樹状細胞活性化能を有することとが明らかとなった。
【0095】
実施例8 マウスを用いたβ−グルカン修飾体のin vivo試験1(IFN−γ産生能による評価)
<方法>
実験に使用するマウスは、日本SLC社より5週齢で購入したC57BL/6NCRマウス5週齢オスを社内飼育施設で昼夜12時間サイクルの自由給餌下で1週間飼育し馴化した。
【0096】
マウスに表6に示す条件で投与を行った。条件(1)、(2)および比較条件(3)は、実施例4で調製した微粒子(OVA含有カードラン微粒子(10)、OVA含有デキストラン比較微粒子(15))を4%(w/v)マンニトール水溶液50μlに分散し、後ろ両足フットパッドに29G注射針(テルモ社マイジェクター)を用いて投与した。比較条件(4)は、同様の方法で、OVA(シグマ社)およびpoly I:C(シグマ社)を投与した。比較条件(5)は、同様の方法で、抗原を含まない溶液を投与した。
【0097】
条件(2)および比較条件(3)、(4)は、最初の投与の3日後に同様の方法で2回目の投与を、最初の投与の6日後に同様の方法で3回目の投与を行った。
【0098】
投与後のマウスは自由給餌、給水可能な環境で飼育し、最初の投与より2週間後に炭酸ガスを用いて安楽死させた。投与部位近傍の膝下リンパ節を無菌的に摘出し、内包される細胞を分散させた後、200μmフィルター(アズワン社、FILCONS,120−22S)で濾過しデブリを除去した。回収した細胞は10%FBS(シグマ社)、100単位/mlペニシリン(ライフテクノロジー社)、100単位/mlストレプトマイシン(ライフテクノロジー社)を含むRPMI1640倍地(以下、RPMI培地)に懸濁し、1ウェルあたり5×10個となるように96穴プレート(IWAKI社、Flat Bottom Tissue Culture Polystyrene)に播種し、さらにOVA10μg、2メルカプトエタノール0.75μgを含むRPMI培地を加えて刺激した。播種したプレートは、COインキュベーターで48時間インキュベート後、培養上清を回収しELISA法(MabTech社、Mouse IFN−gamma ELISA kit(HRP))により各細胞群から産生されたIFN−γ濃度を測定した。
【0099】
<結果>
リンパ節細胞の産生するIFN−γ量を図12に示す。IFN−γは、細胞性免疫の活性化を表す指標である。OVA含有微粒子を投与した条件(条件(1)、(2)、比較条件(3))では、抗原を投与していない条件(比較条件(5))やOVAとpoly I:Cを投与した条件(比較条件(4))と比較して、強いIFN−γの産生が確認されたことより、抗原を含有した微粒子が抗原特異的な免疫の活性化に有効であることが明らかとなった。カードラン修飾体を基材とした微粒子を投与した条件(条件(1)、(2))では、デキストラン修飾体を基材とした微粒子を投与した条件(比較条件(3))と比較して、さらに強いIFN−γの産生が確認された。つまり、β−グルカン修飾体を基材とし抗原を含有した微粒子は、抗原特異的な免疫を増強することが明らかとなった。また、微粒子を3回投与した条件(条件(2))では、微粒子を1回投与した条件(条件(1))と比較して、IFN−γの産生量が高いことより、複数回の投与が免疫のさらなる増強に有効であることも明らかとなった。
【0100】
【表6】
【0101】
実施例9 マウスを用いたβ−グルカン修飾体のin vivo試験2(IFN−γ産生能による評価)
<方法>
実施例8と同じ条件で飼育したマウスに表7に示す条件で投与を行った。条件(6)〜(8)および比較条件(9)は、実施例4で調製した微粒子(OVA含有ラミナラン微粒子(12)〜(14)、OVA含有デキストラン比較微粒子(15))を4%(w/v)マンニトール水溶液100μlに分散し、後ろ両足フットパッドに29G注射針(テルモ社マイジェクター)を用いて投与した。比較条件(10)は、同様の方法で、OVA(シグマ社)およびpoly I:C(シグマ社)を投与した。比較条件(11)は、同様の方法で、OVA(シグマ社)を投与した。比較条件(12)は、同様の方法で、抗原を含まない溶液を投与した。
【0102】
投与後のマウスは自由給餌、給水可能な環境で飼育し、最初の投与より2週間後に炭酸ガスを用いて安楽死させた。実施例8と同様の方法で、リンパ節に内包される細胞を取り出し、OVAで刺激後のIFN−γ産生量を測定した。
【0103】
<結果>
リンパ節細胞の産生するIFN−γ量を図13に示す。OVA含有ラミナラン微粒子を投与した条件(条件(6)〜(8))では、OVA含有デキストラン比較微粒子を投与した条件(比較条件(9))やOVAとpoly I:Cを投与した条件(比較条件(10))と比較して、強いIFN−γ産生が観察された。ラミナラン修飾体を基材として抗原を含有した微粒子は、実施例8のカードラン修飾体を基材として抗原を含有した微粒子と同様に、抗原特異的な免疫を増強することが明らかとなった
【0104】
【表7】
【0105】
実施例10 マウスを用いたβ−グルカン修飾体のin vivo試験3(抗腫瘍効果)
<方法>
担癌細胞としてOVA発現マウス癌細胞E.G7−OVA(ATCC社)を事前に対数増殖状態を保ち、RPMI培地を用いて一週間培養した後、滅菌したPBSで3回洗浄し、移植細胞を調製した。
【0106】
ホスト動物としては日本SLC社より5週齢で購入したオスC57BL/6NCRマウスを弊社飼育施設で昼夜12時間サイクルの自由給餌下で飼育し馴化した後、E.G7−OVA細胞 2×10個を含むPBS100μlを腹部皮下に25G注射針を用いて担癌した。
【0107】
担癌から0日目、3日目、7日目、10日目および15日目に、表8に示す条件で投与を行った。条件(13)および条件(14)では、実施例4で調製した微粒子(OVA含有カードラン微粒子(10)、カードラン微粒子(11))を4%(w/v)マンニトール水溶液100μlに分散し、担癌部位近傍に29G注射針(テルモ社マイジェクター)を用いて投与した。比較条件(15)では、同様の方法で、OVA(シグマ社)およびpoly I:C(シグマ社)を投与した。比較条件(16)では、同様の方法で、抗原も粒子を含まない溶液を投与した。
【0108】
投与後のマウスは自由給餌、給水可能な環境で飼育し、腫瘍組織の体積を測定した。
【0109】
<結果>
各条件5匹の担癌後の腫瘍組織の体積平均値を図14に示す。抗原を含まない微粒子を投与した条件(条件(14))では、抗原も粒子も投与していない条件(比較条件(16))と比較して、腫瘍体積の増加が抑えられていることより、β−グルカン修飾体を基材とした微粒子が抗腫瘍効果を有することが明らかとなった。抗原を含有した微粒子を投与した条件(13)では、抗原を含まない微粒子を投与した条件(条件(14))やOVAとpoly I:Cを投与した条件(比較条件(15))と比較して、腫瘍体積の増加がより抑えられていたことより、β−グルカン修飾体を基材として抗原を含有した微粒子は、より強い抗腫瘍効果を有することが明らかとなった。
【0110】
【表8】
【0111】
実施例11 ポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体が修飾されたβ−グルカン(パキマン修飾体(16)、シゾフィラン修飾体(17)、黒酵母グルカン修飾体(18)、スクレログルカン修飾体(19)、カードラン修飾体(20)(21))の合成
(1)β−グルカンの加水分解反応(パキマン加水分解物(7)、シゾフィラン加水分解物(8)、黒酵母グルカン加水分解物(9)、スクレログルカン加水分解物(10)、カードラン加水分解物(11)(12)の合成)
【0112】
パキマン(バイオサプライ社)320mgをジメチルスルホキシド27mlに溶解した後、1規定塩酸水溶液1.2mlを加え、110℃で0.5時間攪拌した。該反応溶液を透析膜に移し、水中で透析を行った後に、凍結乾燥を行い、パキマン加水分解物(7)(数平均分子量1,900)を粉末として得た。
【0113】
同様の条件で、シゾフィラン(インビボジェン)を1.3時間反応させることでシゾフィラン加水分解物(8)(数平均分子量4,400)を、黒酵母グルカン(ダイソー株式会社)を0.15時間反応させることで黒酵母グルカン加水分解物(9)(数平均分子量2,700)を、スクレログルカン(エチシチル社製)を1.15時間反応させることでスクレログルカン加水分解物(10)(数平均分子量3,000)を、カードラン(和光純薬工業株式会社)を0.1時間反応させることでカードラン加水分解物(11)(数平均分子量18,700)を、0.75時間反応させることでカードラン加水分解物(12)(数平均分子量1,900)を得た。
【0114】
β−グルカンの数平均分子量はGPC測定(カラム:東ソ− TSK−gel G3000PWXL−CP×2、酢酸緩衝液系溶媒(10mM、pH=5)、検出器:RI、標準品:プルラン)によって決定した。
【0115】
(2)β―グルカンのトリメチルシリル(TMS)化反応(TMS化パキマン(9)、TMS化シゾフィラン(10)、TMS化黒酵母グルカン(11)、TMS化スクレログルカン(12)、TMS化カードラン(13)(14)の合成)
パキマン加水分解物(7)180mgジメチルスルホキシド25mlに加え、80℃に加熱した。この溶液に1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン20mlを20分掛けて滴下し、80℃で16時間攪拌した。該反応溶液を分液漏斗に移し、二層に分離するまで静置した。上層を回収し、減圧下濃縮した後、メタノール5mlを加え、得られた固体をろ過、乾燥し、TMS化パキマン(9)250mgを白色固体として得た。
【0116】
同様の方法で、シゾフィラン加水分解物(8)よりTMS化シゾフィラン(10)を、黒酵母グルカン加水分解物(9)よりTMS化黒酵母グルカン(11)を、スクレログルカン加水分解物(10)よりTMS化スクロレログルカン(12)を、カードラン加水分解物(11)よりTMS化カードラン(13)を、カードラン加水分解物(12)よりTMS化カードラン(14)を合成した。
【0117】
TMS化反応進行はH−NMR測定により確認した。
【0118】
(3)β−グルカンに対するポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体の修飾反応(パキマン修飾体(16)、シゾフィラン修飾体(17)、黒酵母グルカン修飾体(18)、スクレログルカン修飾体(19)、カードラン修飾体(20)、(21)の合成)
TMS化パキマン(9)230mgとtert−ブトキシカリウム(tBuOK)22mgを加熱減圧下2時間乾燥後、テトラヒドロフラン10mlを加え、1.5時間室温で攪拌し、活性化溶液を得た。活性化溶液の調製に使用したtBuOKの35倍モルのモノマー((DL)−ラクチドとグリコリドのモル比1:1の混合物)をテトラヒドロフランに溶解し、モノマー溶液を得た。該活性化溶液に、該モノマー溶液を滴下し、30分間攪拌後、酢酸0.2ml加えて反応を停止させた。反応終了後の溶液を減圧下濃縮し、クロロホルム(良溶媒)−メタノール(貧溶媒)系およびクロロホルム(良溶媒)−シクロヘキサン(貧溶媒)系で再沈殿精製を行い、白色固体を得た。得られた白色固体をクロロホルム9mlに溶解し、トリフルオロ酢酸1mlを加え、室温で30分間攪拌した。該反応溶液を減圧下濃縮し、クロロフホルム(良溶媒)−ジエチルエーテル(貧溶媒)系で再沈殿精製を行い、パキマン修飾体(16)287mgを白色固体として得た。
【0119】
同様の方法で、TMS化シゾフィラン(10)よりシゾフィラン修飾体(17)を、TMS化黒酵母グルカン(11)より黒酵母グルカン修飾体(18)を、TMS化スクレログルカン(12)よりスクレログルカン修飾体(19)、TMS化カードラン(13)よりカードラン修飾体(20)、TMS化カードラン(14)よりカードラン修飾体(21)を合成した。
【0120】
β−グルカン修飾体の評価結果を表9に示す。β−グルカン修飾体の数平均分子量はGPC測定(カラム:東ソ− TSK−gel α−5000×2、DMF系溶媒、検出器:RI、標準品:プルラン)によって決定した。β―グルカン修飾体に含まれるβ―グルカンセグメントの比率(w/w)は、合成に使用したβ―グルカンの数平均分子量とβ―グルカン修飾体の数平均分子量より決定した。各グラフト鎖の数平均分子量は、H−NMR測定により決定した(図15:パキマン修飾体(16)、図16:シゾフィラン修飾体(17)、図17:黒酵母グルカン修飾体(18)、図18:スクレログルカン修飾体(19))。グラフト鎖数の平均は、β―グルカン修飾体の数平均分子量からβ―グルカンの数平均分子量を引いた値を、各グラフト鎖の数平均分子量で割ることで決定した。
【0121】
【表9】
【0122】
実施例12 ポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体が修飾されたパキマラン(パキマラン修飾体(22))の合成
(1)パキマンの酸化開裂反応(パキマランの合成)
パキマン(バイオサプライ社)1gに水120mlに混合させ、0.1M過ヨウ素酸ナトリウム水溶液40mlを加え、室温で40時間攪拌した後に、遠心分離により反応物を回収した。該反応物に水54mlに混合させ、水素化ホウ素ナトリウム216mを含む水溶液27mlを加え、室温で28時間攪拌した後に、遠心分離により反応物を回収した。該反応物に0.05M硫酸水溶液70mLに混合させ、室温で24時間攪拌した後に、遠心分離によりパキマラン0.91gを回収した。
【0123】
(2)パキマランの加水分解反応(パキマラン加水分解物(13)の合成)
上記の実施例11と同様の方法で加水分解を行い、パキマラン360mgを用いて、パキマラン加水分解物(13)(数平均分子量2,100)229mgを粉末として得た。
(3)パキマランのトリメチルシリル(TMS)化反応(TMS化パキマラン(15)の合成)
【0124】
上記の実施例11と同様の方法でTMS化を行い、パキマラン加水分解物(13)200mgを用いて、TMS化パキマラン(15)325mgを白色固体として得た。
(4)パキマランに対するポリ(乳酸−グリコール酸)共重合体の修飾反応(パキマラン修飾体(22)の合成)
上記の実施例11と同様の方法で、TMS化パキマラン(15)300mgに、tert−ブトキシカリウム(tBuOK)とtBuOKの35倍モルのモノマー((DL)−ラクチドとグリコリドのモル比1:1の混合物)を反応させることで、パキマラン修飾体(22)353mgを白色固体として得た。
【0125】
パキマラン修飾体(22)の評価結果を表10に示す。各値については、上記の実施例11と同様の方法で、GPC測定およびH−NMR測定により決定した(図19:パキマラン修飾体(22)のH−NMR測定)。
【0126】
【表10】
【0127】
実施例13 O/Wエマルジョン法を用いた微粒子2(パキマン微粒子(16)、シゾフィラン微粒子(17)、黒酵母グルカン微粒子(18)、スクレログルカン微粒子(19)、カードラン微粒子(20)、パキマラン微粒子(21)、デキストラン比較微粒子(22))の調製
パキマン修飾体(16)10mgを酢酸エチル1mlに溶解し、ポリマー溶液を調製した。該ポリマー溶液を1%(w/v)ポリビニルアルコール水溶液4mlに滴下し、ミキサー(ポリトロン社、PT2100S)を用いた11,000rpm、5分間の撹拌によりO/Wエマルジョン溶液を調製した。該O/Wエマルジョン溶液から液中乾燥により酢酸エチルを除去して、微粒子懸濁液とした。該懸濁液を15mlチューブに移し、8,000rpm、10分間の遠心により微粒子を沈殿させた。上清を除いた後に、微粒子を10mlの蒸留水に再懸濁し、上記条件での遠心により微粒子を再度沈殿させた。この洗浄操作をもう一度繰り返し、上清を除いた後に微粒子を5%(w/v)マンニトールおよび0.1%(w/v)ポリソルベート80を含む水溶液1.8mlに懸濁させた。該懸濁液を液体窒素で予備凍結した後、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社、FD−1000)を用いて、トラップ冷却温度−45℃、真空度20Paにて12時間凍結乾燥することで、パキマン微粒子(16)を得た。
【0128】
同様の方法で、シゾフィラン修飾体(17)を基材としたシゾフィラン微粒子(17)を、黒酵母グルカン修飾体(18)を基材とした黒酵母グルカン微粒子(18)を、スクレログルカン修飾体(19)を基材としたスクレログルカン微粒子(19)を、カードラン修飾体(20)を基材としたカードラン微粒子(20)を、パキマラン修飾体(22)を基材としたパキマラン微粒子(21)を得た。
【0129】
また、比較例として、同様の方法で、デキストラン修飾体(15)を基材としたデキストラン比較微粒子(22)を得た。
【0130】
微粒子の平均粒径を、動的光散乱装置(大塚電子株式会社、ELS−Z)を用いてキュムラント法により算出した結果を表11に示す。
【0131】
【表11】
【0132】
実施例14 S/O/Wエマルジョン法を用いた微粒子(OVA含有カードラン微粒子(23)、(24)、OVA含有スクレログルカン微粒子(25))の調製
カードラン修飾体(21)100mgを炭酸ジメチル2.6mlおよびtert−ブタノール200μlに溶解し、ポリマー溶液を調製した。該ポリマー溶液に、0.5%(w/v)OVA(卵白アルブミン、シグマ社))水溶液1mlを滴下し、ミキサー(ポリトロン社、PT2100S)を用いた11,000rpm、1分間の撹拌によりW/Oエマルジョン溶液を製造した。該W/Oエマルジョン溶液を液体窒素で予備凍結した後、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社、FD−1000)を用いて、トラップ冷却温度−45℃、真空度20Paに12時間凍結乾燥した。得られた固形分を酢酸エチル10mlに分散させ、S/Oサスペンジョン溶液を調製した。該S/Oサスペンジョン溶液を1%(w/v)ポリビニルアルコール水溶液40mlに滴下し、ミキサー(シルバーソン社、L5M−A)を用いた6,000rpm、5分間の撹拌によりS/O/W型エマルジョン溶液を調製した。該S/O/W型エマルジョン溶液から液中乾燥により酢酸エチルを除去して、微粒子懸濁液とした。該懸濁液を50mlチューブに移し、8,000rpm、10分間の遠心により微粒子を沈殿させた。上清を除いた後に、微粒子を50mlの蒸留水に再懸濁し、上記条件での遠心により微粒子を再度沈殿させた。この洗浄操作をもう一度繰り返し、上清を除いた後に微粒子を5%(w/v)マンニトールおよび0.1%(w/v)ポリソルベート80を含む水溶液8mlに懸濁させた。該懸濁液を液体窒素で予備凍結した後、凍結乾燥機を用いて、トラップ冷却温度−45℃、真空度20Paにて12時間凍結乾燥することで、OVA含有カードラン微粒子(23)を得た。
【0133】
同様の方法で、カードラン修飾体(20)を用いることでOVA含有カードラン微粒子(24)を、スクレログルカン修飾体(19)を用いることでOVA含有スクレログルカン微粒子(25)を得た。
微粒子の評価結果を表12に示す。微粒子の平均粒径は、動的光散乱装置(大塚電子株式会社、ELS−Z)を用いてキュムラント法により算出した。抗原の封入率(w/w)は、微粒子より有機溶媒を用いて抗原を抽出し、抽出した抗原をゲル電気泳動装置(TEFCO社)でゲル電気泳動後に、コロイドCBB染色キット(TEFCO社)を用いて染色を行うことにより決定した。
【0134】
【表12】
【0135】
実施例15 マウス骨髄由来樹状細胞(BMDC)を用いたβ−グルカン修飾体(パキマン修飾体(16)、シゾフィラン修飾体(17)、黒酵母グルカン修飾体(18)、パキマラン修飾体(22))のin vitro刺激試験2
<方法>
実施例11で得られたβ−グルカン修飾体(パキマン修飾体(16)、シゾフィラン修飾体(17)、黒酵母グルカン修飾体(18)、パキマラン修飾体(22))10mgを秤量し、アセトニトリル1mlに溶解しポリマー溶液を得た。該ポリマー溶液100μl(ポリマー1mg分)を12ウェルプレートに滴下し、乾燥させることでポリマーコートプレートを得た。該ポリマーコートプレーに参考例1で得られた樹状細胞を培養培地とともに1ウェルあたり3×10個となるよう播種した。播種したプレートは、COインキュベーター内で2日間培養した後に、マイクロピペットを用いて強く懸濁することで、プレートに接着していない細胞のみを回収した。回収した細胞は、1,500rpm、5分間の遠心により細胞を沈殿させ、上清を除去し、RPMI培地100μlに懸濁させた。該細胞懸濁液に、FITC標識抗CD86抗体およびPE標識抗CD11c抗体を添加し、4℃で15分間静置することで抗体標識反応を行った。抗体標識反応終了後、フローサイトメトリーにより樹状細胞(CD11c陽性細胞)における活性化マーカー(CD86)の発現量を蛍光強度(MFI)により評価した。
【0136】
比較例としては、比較例1で得られたデキストラン修飾体(15)同様にコートしたプレートを用いて、同様に活性化マーカーの発現量を比較した。また、別の比較例としては、実施例11で得られた未修飾のβ−グルカン(パキマン加水分解物(7)、シゾフィライン加水分解物(8)、黒酵母グルカン加水分解物(9)、パキマラン加水分解物(13))1mgまたは免疫活性化能が知られているpoly I:C(シグマ社)100μgを培養培地に添加して、同様に活性化マーカーの発現量を比較した。
【0137】
<結果>
樹状細胞の活性化マーカーであるCD86の発現量の指標である蛍光強度(MFI)を図20に示す。β―グルカン修飾体を用いた場合は、デキストラン修飾体(15)を用いた場合と比較して、CD86の発現量が高いことより、β−グルカン修飾体は強い樹状細胞が活性化能を有することが明らかとなった。未修飾のβ−グルカンを用いた場合は、β―グルカン修飾体を用いた場合と比較して、CD86の発現量が低いことより、β−グルカンへのポリ(ヒドロキシ酸)の修飾が免疫活性化能に重要であることが明らかとなった。また、線状のβ−グルカンの修飾体(実施例4:カードラン修飾体(9)〜(12)、本実施例:パキマン修飾体(16))のみならず、分枝上のβ−グルカンの修飾体(本実施例:シゾフィラン修飾体(17)、黒酵母グルカン修飾体(18))や誘導体化されたβ−グルカンの修飾体(本実施例:パキマラン修飾体(22)も、免疫活性化能を有することが確認された。
【0138】
実施例16 マウス骨髄由来樹状細胞(BMDC)を用いたβ−グルカン修飾体を基材とした微粒子(パキマン微粒子(16)、シゾフィラン微粒子(17)、黒酵母グルカン微粒子(18)、スクレログルカン微粒子(19)、カードラン微粒子(20)、パキマラン微粒子(21))のin vitro刺激試験2
参考例1で得られた樹状細胞を培養培地とともに1ウェルあたり3×10個となるよう12ウェルプレートに播種し、さらにβ−グルカン修飾体を基材とした微粒子(パキマン微粒子(16)、シゾフィラン微粒子(17)、黒酵母グルカン微粒子(18)、スクレログルカン微粒子(19)、カードラン微粒子(20)、パキマラン微粒子(21))0.05mgを添加した。播種したプレートは、COインキュベーター内で2日間培養し、マイクロピペットを用いて強く懸濁することで、プレートに接着していない細胞のみを回収した。回収した細胞は、1,500rpm、5分間の遠心により細胞を沈殿させ、上清を除去し、RPMI培地100μlに懸濁させた。該細胞懸濁液に、FITC標識抗CD86抗体およびPE標識抗CD11c抗体を添加し、4℃で15分間静置することで抗体標識反応を行った。抗体標識反応終了後、フローサイトメトリーにより樹状細胞(CD11c陽性細胞)の活性化マーカー(CD86)の発現量を蛍光強度(MFI)により評価した。
【0139】
比較例として、デキストランを基材とした微粒子(デキストラン比較微粒子(22))0.05mgを培養培地に添加して、同様に活性化マーカーの発現量を比較した。
【0140】
<結果>
各微粒子におけるCD86の発現量の指標である蛍光強度(MFI)を図21に示す。β−グルカン修飾体を基材とした微粒子(パキマン微粒子(16)、シゾフィラン微粒子(17)、黒酵母グルカン微粒子(18)、スクレログルカン微粒子(19)、カードラン微粒子(20)、パキマラン微粒子(21))を用いた場合は、未添加の場合およびデキストラン修飾体を基材とした微粒子(デキストラン比較微粒子(22))を用いた場合と比べて、CD86の発現量が高いことより、β−グルカン修飾体を基材とした微粒子が樹状細胞を強く活性していることが明らかとなった。
【0141】
実施例17 マウスを用いたβ−グルカン修飾体のin vivo試験4(IFN−γ産生能による評価)
<方法>
実験に使用するマウスは、日本SLC社より5週齢で購入したC57BL/6NCRマウス5週齢オスを社内飼育施設で昼夜12時間サイクルの自由給餌下で1週間飼育し馴化した。
【0142】
マウスに表13に示す条件で投与を行った。条件(17)〜(19)は、実施例14で調製した微粒子(OVA含有カードラン微粒子(23)、(24)、OVA含有スクレログルカン微粒子(25))を4%(w/v)マンニトール水溶液50μlに分散し、後ろ両足フットパッドに29G注射針(テルモ社マイジェクター)を用いて投与した。比較条件(20)は、同様の方法で、OVA(シグマ社)およびカードラン加水分解物(12)を投与した。
【0143】
すべての条件で、初回投与の3日後に同様の方法で2回目の投与を、初回投与の7日後に同様の方法で3回目の投与を、初回投与の10日後に同様の方法で4回目の投与を行った。
【0144】
投与後のマウスは自由給餌、給水可能な環境で飼育し、初回投与より16日後に炭酸ガスを用いて安楽死させた。投与部位近傍の膝下リンパ節を無菌的に摘出し、内包される細胞を分散させた後、200μmフィルター(アズワン社、FILCONS,120−22S)で濾過しデブリを除去した。回収した細胞は10%FBS(シグマ社)、100単位/mlペニシリン(ライフテクノロジー社)、100単位/mlストレプトマイシン(ライフテクノロジー社)を含むRPMI1640倍地(以下、RPMI培地)に懸濁し、1ウェルあたり5×10個となるように96穴プレート(IWAKI社、Flat Bottom Tissue Culture Polystyrene)に播種し、さらにOVA10μg、2メルカプトエタノール0.75μgを含むRPMI培地を加えて刺激した。播種したプレートは、COインキュベーターで48時間インキュベート後、培養上清を回収しELISA法(MabTech社、Mouse IFN−gamma ELISA kit(HRP))により各細胞群から産生されたIFN−γ濃度を測定した。
【0145】
<結果>
リンパ節細胞の産生するIFN−γ量を図22に示す。IFN−γは、細胞性免疫の活性化を表す指標である。カードラン修飾体を基材としたOVA含有微粒子を投与した条件(条件(17))では、OVAと未修飾のカードランを投与した条件(比較条件(20))と比較して、強いIFN−γの産生が確認されたことより、in vivoのおいてもβ−グルカン修飾体が未修飾のβ−グルカンと比較して強い免疫活性化能を有することが明らかとなった。また、高分子量のカードラン修飾体を基材としたOVA含有微粒子を投与した条件(条件(18))や分枝上のスクレログルカン修飾体を基材としたOVA含有微粒子を投与した条件(条件(19))においても、強いIFN−γの産生が確認されたことより、分子量や線状と分枝状の違いによらず、β−グルカン修飾体が強い免疫活性化能を持つことが示された。
【0146】
【表13】
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明の免疫賦活化剤は医薬として、特に感染症や癌などの治療および/または予防のためのワクチンのための免疫賦活剤として利用することができる。
図1
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図22