特許第6146688号(P6146688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6146688
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】浴槽
(51)【国際特許分類】
   A47K 3/02 20060101AFI20170607BHJP
   A47K 3/00 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   A47K3/02
   A47K3/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-124044(P2012-124044)
(22)【出願日】2012年5月31日
(65)【公開番号】特開2013-248080(P2013-248080A)
(43)【公開日】2013年12月12日
【審査請求日】2015年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武藤 孝雄
【審査官】 小林 俊久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−194087(JP,A)
【文献】 特開2011−143000(JP,A)
【文献】 特開平10−323295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/00 − 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室の洗い場に隣接させて設置され、上部の周囲にリムが形成された平面視長方形状の浴槽本体と、
前記浴槽本体の上面を密閉する風呂蓋と、を備えた浴槽において、
前記浴槽本体は、前記洗い場に最も近接した洗い場側リムを、前記洗い場側リムの上面が長手方向に対して凹状となるように同一の曲率で湾曲させてなり、且つ、前記洗い場から最も離れた奥壁側リムを、前記奥壁側リムの上面が長手方向に対して凹状となるように同一の曲率で湾曲させてなり、
前記風呂蓋は、複数枚で浴槽の上面を覆うことが可能な板状であり、その全体を前記浴槽の凹状湾曲面と同一の曲率で湾曲させたことを特徴とする浴槽。
【請求項2】
前記浴槽本体の、前記洗い場側リムと前記奥壁側リムとを繋ぐ短手側リムを、前記洗い場側リムと奥壁側リムと同一の方向に同一の曲率で湾曲させたことを特徴とする請求項1記載の浴槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風呂蓋を具備する浴槽に関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽につかった状態で、浴槽のリムを枕代わりにした入浴姿勢をとることにより、リラックスすることができることは、従来より知られている。しかし、浴槽の高さは、洗い場から入浴する際にまたぎやすい、比較的低い寸法になっているので、腰を前方に投げ出した姿勢をとらないと浴槽のリムに頭を載せるのが難しかった。
そこで、浴槽のリムの洗い場側は高さを変えず、頭が来る位置だけリムを一段高くした浴槽が考えられるが、これでは、浴槽のリムに段部が形成されてしまうので、見た目が良くない、という問題があった。
これに対して、特許文献1に示すように、浴槽のリムを長手方向に凹状湾曲面を形成した浴槽が提案されている。この例では、またぎ高さを確保したまま、頭の当たる位置のリムを高くすることができる上、リムに段部がなく、上面が緩い湾曲面を描いているので、見た目にも美しさを感じられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−323295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このように上面が湾曲面となった浴槽の上面を密閉するには、従来の平板状の風呂蓋では大きな隙間ができてしまうので、特許文献1の図6,7に示すごとく、巻き式風呂蓋を使わざるを得なかった。ところが、巻き式風呂蓋は、巻き取った風呂蓋を収納することができず、浴槽のリム上に置かれることが多いため、汚れやすく、その反面、巻き式風呂蓋の表面には巻き取るための凹凸が形成されているので、汚れを除去しにくく、極めて清掃性が悪いものであった。
そこで、本発明は、清掃性にすぐれた板状の風呂蓋を用いて、上面を凹状湾曲面を有する浴槽を密閉することが可能な風呂蓋を具備した浴槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した目的を達成するために、本発明の請求項1にかかる発明は、浴室の洗い場に隣接させて設置され、上部の周囲にリムが形成された平面視長方形状の浴槽本体と、前記浴槽本体の上面を密閉する風呂蓋と、を備えた浴槽において、前記浴槽本体は、前記洗い場に最も近接した洗い場側リムを、前記洗い場側リムの上面が長手方向に対して凹状となるように同一の曲率で湾曲させてなり、且つ、前記洗い場から最も離れた奥壁側リムを、前記奥壁側リムの上面が長手方向に対して凹状となるように同一の曲率で湾曲させてなり、前記風呂蓋は、複数枚で浴槽の上面を覆うことが可能な板状であり、その全体を前記浴槽の凹状湾曲面と同一の曲率で湾曲させたものである。

【0006】
これによれば、浴槽本体のリムは、端から端まで同じ曲率の湾曲面となっているので、四角形が基本の浴室内で、浴槽本体が丸みを帯びた見た目となるため、浴室内に柔らかな感じを与えることができる。
また、風呂蓋は、浴槽本体のリムに一致する湾曲面を備えているので、浴槽上を風呂蓋で密閉することができ、一般的な浴槽本体と同様の断熱効率を保つことができる。
さらに、風呂蓋の浴槽側の面は、浴槽本体のリムの湾曲面と同一の曲率を有する湾曲面となっている。そのため、風呂蓋の位置がずれたとしても浴槽本体との間に隙間が生じることはない。よって、極めて高い断熱効率を得ることができる。
【0007】
また、請求項2にかかる発明は、前記浴槽本体の、前記洗い場側リムと前記奥壁側リムとを繋ぐ短手側リムを、前記洗い場側リムと奥壁側リムと同一の方向に同一の曲率で湾曲させている。
【0008】
これによれば、浴槽本体の短手側リムは、従来の浴槽本体のリムの位置よりも高い位置で、且つ、浴槽本体の内側に傾くように形成された湾曲面となるため、従来の浴槽本体よりも、入浴姿勢の人の頭を楽な姿勢で支えることができ、より入浴時にリラックスすることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、清掃性にすぐれた板状の風呂蓋を用いて、上面を凹状湾曲面を有する浴槽を密閉することが可能な風呂蓋を具備した浴槽が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の浴槽を具備した浴室の斜視図
図2】浴槽本体の斜視図
図3】風呂蓋を表す図で、(a)は平面図、(b)は断面図
図4】浴槽本体に風呂蓋を載せた状態の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の浴槽を具備した浴室の斜視図、図2は浴槽本体の斜視図である。
図1に示すように、浴槽本体2は、浴室1の内部にて、洗い場11に隣接するように設置され、洗い場11との境界にはバスエプロン28が設置されている。
【0014】
浴槽本体2は平面視長方形状であって、底面21と、洗い場に最も近い洗い場側内側面22と、洗い場側内側面22と対向して洗い場11から最も遠い奥壁側内側面23と、背もたれ用左側内側面24と、背もたれ用右側内側面25と、を備え、上面が開口部26となっている。また、洗い場側内側面22、奥壁側内側面23、背もたれ用左側内側面24、背もたれ用右側内側面25の上端部には、外方に突き出るように形成されたリムが設けられている。このリムは、浴槽本体2の四周に連続して形成されている。
【0015】
また、浴槽本体2は、その底面に排水口211が形成され、浴槽本体2に湯を貯められるように排水口211を塞ぐことができる排水栓(図示せず)を備えている。
【0016】
なお、浴槽本体2は、貯めた湯の熱を逃げにくくするために、図示せぬ保温材で周囲を囲っておくのが好ましい。
【0017】
また、この浴槽本体2は、奥壁側内側面23よりも洗い場側内側面22を傾斜させている。これにより、浴槽本体2の洗い場11に近い側の内面コーナー部26は、洗い場11から離れた奥壁側の内面コーナー部27よりも、大きな曲率のRとなっている。よって、洗い場11に近い側の内面コーナー部26を背もたれとして利用することができる。内面コーナー部26を背もたれとすることにより、入浴姿勢で脚を伸ばすスペースが確保できるので、脚の長い人であってもよりリラックスすることができる。
【0018】
次に、浴槽本体のリムの形状について説明する。
浴槽本体2の洗い場側内側面22の外方に形成された洗い場側リム22a、および、奥壁側内側面23の外方に形成された奥壁側リム23aは、その上面が、リム22a、23aの長手方向に沿って下方に凹むような湾曲面となっている。そして、その曲率は、端から端まで同一であり、本実施形態ではR4000〜R5000の曲率である。また、背もたれ用左側内側面24の外方に形成された左リム24a、および、背もたれ用右側内側面25の外方に形成された右リム25aは、その上面が、リム24a、25aの短手方向に沿って、且つ、洗い場側リム22aおよび奥壁側リム23aの長手方向の湾曲面と同一の曲率で、凹んだ湾曲面となっている。そのため、浴槽本体2のリム22a〜25aの上面は、長方形状の長手方向に端から端まで同一の曲率の湾曲面となる。
【0019】
このように、この浴槽本体2のリム22a〜25aは、端から端まで同じ曲率の湾曲面となっているので、四角形が基本の浴室1内で、浴槽本体2が丸みを帯びた見た目となるため、浴室1内に柔らかな感じを与えることができる斬新な形態となる。
【0020】
また、左リム24a、右リム25aは、従来のリムの位置よりも高い位置であり、且つ、浴槽本体2の内側に傾くように形成された湾曲面となっている。そのため、従来の浴槽本体よりも、入浴姿勢の人の頭を楽な姿勢で支えることができる。よって、従来よりも、入浴時にリラックスすることが可能となる。
【0021】
しかも、左リム24a、右リム25aが従来よりも高い位置にあるのに対して、洗い場側リム22aと奥壁側リム23aの長手方向の中央部分の高さは従来と同じ高さに抑えることができるので、浴槽本体2のまたぎ高さは従来どおりとすることができる。
【0022】
次に、浴槽本体を覆う風呂蓋について説明する。
図3は風呂蓋の平面図および断面図であり、図4は浴槽本体に風呂蓋を載せた状態の斜視図である。
【0023】
風呂蓋3は、洗い場11から見て向かって左側に設けられる左側蓋31と、向かって右側に設けられる右側蓋32と、に分かれている。左側蓋31と右側蓋32は対称な形状なので、以下、左側蓋31について説明する。
【0024】
左側蓋31は、内部に発泡ウレタンなどの断熱材を内蔵させ、表面をABSなどの樹脂で成形した樹脂成形品である。左側蓋31のほぼ中央部には、左側蓋31を持ち運ぶための把手311が設けられている。そして、この左側蓋31は、上面が下方に凹状となるように凹んだ湾曲状となっている。また、左側蓋31の浴槽側の面31aは、下面が凸状となるような湾曲面となって。そして、浴槽側の湾曲面31aの曲率は、前述した浴槽本体2の洗い場側リム22aおよび奥壁側リム23aの長手方向の湾曲面と同一の曲率であり、本実施形態ではR4000〜R5000の曲率である。
【0025】
この風呂蓋3が、浴槽本体2のリム22a、23aの湾曲面と一致しない場合には、風呂蓋3で浴槽本体2の開口部26を密閉することができず、貯めた湯の熱が浴室内に逃げてしまうため、せっかく貯めた湯がすぐに低下してしまう。
【0026】
しかし、本実施形態の風呂蓋3は、浴槽本体2のリム22a〜25aに一致する湾曲面を備えているので、浴槽上を風呂蓋3で密閉することができ、一般的な浴槽本体と同様の断熱効率を保つことができる。
【0027】
さらに、本実施形態の風呂蓋3の浴槽側の面31aは、浴槽本体2のリム22a、23aの湾曲面と同一の曲率を有する湾曲面となっている。そのため、風呂蓋3の位置がずれたとしても浴槽本体2との間に隙間が生じることはない。よって、極めて高い断熱効率を得ることができる。
【0028】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。
例えば、実施の形態では、浴槽本体2の上面及び風呂蓋3の下面の曲率をどちらもR4000〜R5000としたが、本発明は、これに限定されるものではない。
また、浴槽本体2の短手側リム(左リム24、右リム25)を、リムの長手方向に洗い場側リムや奥壁側リムと同一の曲率で湾曲させてもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 浴室
11 洗い場
2 浴槽本体
3 風呂蓋
22 洗い場側内側面
22a 洗い場側リム
23 奥壁側内側面
23a 奥壁側リム
24 左リム(短手側リム)
25 右リム(短手側リム)
26 洗い場に近い側の内面コーナー部
27 洗い場から離れた側の内面コーナー部
図1
図2
図3
図4