(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6146771
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】チューブシートレス構造の多管式熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 9/18 20060101AFI20170607BHJP
F28F 1/02 20060101ALI20170607BHJP
F28D 7/16 20060101ALI20170607BHJP
B23K 9/00 20060101ALI20170607BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20170607BHJP
B23K 101/14 20060101ALN20170607BHJP
【FI】
F28F9/18
F28F1/02 A
F28D7/16 A
B23K9/00 501H
B23K1/00 330K
B23K101:14
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-164392(P2013-164392)
(22)【出願日】2013年8月7日
(65)【公開番号】特開2015-34645(P2015-34645A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000120249
【氏名又は名称】臼井国際産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】後藤 忠弘
【審査官】
安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−008971(JP,A)
【文献】
特開2010−101273(JP,A)
【文献】
特開2011−112331(JP,A)
【文献】
実開昭55−089089(JP,U)
【文献】
実開昭58−083696(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0277105(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/18
F28F 1/02
F28D 7/16
B23K 1/00
B23K 9/00
B23K 101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数積層された扁平伝熱管を備え、前記扁平伝熱管群の外周を囲むように形成されたシェルと、シェル端部に冷却水流入口及び流出口を有し、前記扁平伝熱管内を通流する排気ガスと、前記シェル内を通流する冷却媒体との間で熱交換を行うように構成された多管式熱交換器であって、各扁平伝熱管の両端部を断面における周方向に拡管した形状となし、隣り合う扁平伝熱管における同拡管形状部をろう接により接合したチューブシートレス構造の多管式熱交換器において、前記扁平伝熱管群の両端部の拡管形状部に、当該拡管形状部の最外周部を囲繞するごとく外嵌ろう接した環状枠体又は筒形枠体からなるスペーサ部材を介して当該扁平伝熱管群をシェルに溶接した構造となしたことを特徴とするチューブシートレス構造の多管式熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンあるいはガソリンエンジン等の冷却水等の液体状の冷却媒体によってエンジンの排気ガスからの熱回収や、EGRガスを冷却する多管式熱交換器に係り、特にチューブシートレス構造の多管式熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の多管式の熱交換器としては、例えば以下に記載するEGRガス冷却装置(特許文献1〜4)が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1に開示されている多管式熱交換器は、
図9にそのコア部(チューブアセンブリ)を示すように、積層された複数本の扁平伝熱管11の両端をチューブシート(エンドプレート、ヘッダープレート、チューブプレート等とも称する)12に貫通し、ろう接又は溶接により接合して組立てたコア部13を、前記チューブシート12を介して、シェル(ケーシング、アウターケース等と称している)(図面省略)に組付けた構造となしたものである。
【0004】
このチューブシートにより扁平伝熱管群を支持する構造の多管式熱交換器とは異なり、チューブシートを使用せずに扁平伝熱管群をシェルに直接組付ける方式、即ち、チューブシートレスの多管式熱交換器が各種提案されている。
特許文献2〜4に開示されている多管式熱交換器は、そのチューブシートレス構造の扁平伝熱管を使用した多管式熱交換器を例示したもので、特許文献2に開示されている多管式熱交換器は
図10に示すように、扁平伝熱管端面を拡管し隣り合う扁平伝熱管21の当該拡管部21−1同士をろう接して複数本の扁平伝熱管からなる扁平伝熱管群22の最外部に位置する扁平伝熱管21を、端部キャップ部23−1付きのシェル23の内面側にろう接により接合する構造となしたものである。24はシェル23の端部キャップ部23−1に内嵌固着された締結用フランジである。
【0005】
特許文献3に開示されている多管式熱交換器は、
図11に示すように、チューブシートレス構造の扁平伝熱管31を使用した熱交換器において、前記特許文献2に開示されている多管式熱交換器と同様に、扁平伝熱管端面を拡管し隣り合う扁平伝熱管31の当該拡管部31−1同士をろう接し、その積層された扁平伝熱管群32の最外部に位置する扁平伝熱管31を、端部キャップ部33−1付きのシェル33の内面側にろう接により接合する構造となしたものである。なお、この熱交換器のシェル33は、シェル本体部と端部キャップ部を分割構造となしたものである。
【0006】
特許文献4に開示されている多管式熱交換器は
図12に示すように、前記特許文献2、3に開示されている多管式熱交換器と同様に、管端部を拡管した扁平伝熱管41の当該拡管部41−1同士をろう接し、その積層された扁平伝熱管群42の最外部に位置する扁平伝熱管41を、シェル43の内面側にろう接により接合するとともに、シェル43の両端部に、環状に形成された端部キャップ44をろう接により接合した構成となしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−96047号
【特許文献2】特開2007−225190号
【特許文献3】特開2008−275244号
【特許文献4】特開2012−149794号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した従来の特にチューブシートレス構造の多管式熱交換器には、以下に記載する問題がある。
1).複数本の扁平伝熱管が積層された扁平伝熱管同士の接合手段としては、一般的に炉中ろう接が選択されるが、この扁平伝熱管群とシェル(ケーシング等)との気密を確保する場合の接合手段として溶接手段を採用する場合、扁平伝熱管同士の接合に使用されたろうが最外周部に存在するため、シェルとの接合部となる部分は溶接時に溶接熱により一度溶融し周辺に存在するろうを巻き込み、溶接割れを惹起する。
2).積層された扁平伝熱管とシェルを同時に炉中ろう接する方法は、ろう接時の熱処理の影響によりシェルに軟化(硬度低下)が起こり、強度が低下する。特にシェルにおいては、冷却水等の冷却媒体が通流することから発生する圧力変化に耐えることが重要であり、圧力脈動に耐える強度が求められており、その強度を向上させるために、例えばリブ等の突起をシェルに成形して強度を向上させる等の対策が必要であり、製造コストが高くつく。
3).SUS材のろう接において、Niろうを使用したろう接は、真空炉あるいは連続炉が選択され、真空炉によるろう接は、真空ポンプにより炉内の空気を吸引し極限まで真空状態に近くすることでSUS表面が還元されろう濡れを起こさせろう接する方法であり、連続炉によるろう接は、キャリアガスが接合部を還元することで表面を清浄にしろう濡れを起こさせろう接する方法であるが、本熱交換器構造において、前記真空炉によるろう接方法により、積層された扁平伝熱管とシェルを同時にろう接すると、積層された扁平伝熱管はその外周部を覆うシェルに内接する構造、即ち、シェル内面側に囲まれることとなり袋形状となるので空気抜けが不十分となり、ろう濡れ性の悪化をきたし、ろう切れなどを生じる。又、前記連続炉によるろう接方法の場合も、シェル等の還元性を悪くする遮蔽物等が存在することで、ろう濡れ性を低下させ良好なろう接が得られにくい。
4).積層された扁平伝熱管の各接合部は、気密確認する必要があるが、扁平伝熱管とシェルの同時ろう接の場合、気密した際にシェル内面部にて漏れがあった場合、確認することができない。又、ろう流れ状況(ろう引け等)の目視確認を行うことが困難となる。
【0009】
本発明は上記した従来のチューブシートレス構造の多管式熱交換器の問題を解決するためになされたもので、溶接割れの防止、圧力変化や圧力脈動に耐える機械的強度の向上、ろう濡れ性の向上、及び品質の安定向上をはかることができるチューブシートレス構造の多管式熱交換器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るチューブシートレス構造の多管式熱交換器は、複数積層された扁平伝熱管を備え、前記扁平伝熱管群の外周を囲むように形成されたシェルと、シェル端部に冷却水流入口及び流出口を有し、前記扁平伝熱管内を通流する排気ガスと、前記シェル内を通流する冷却媒体との間で熱交換を行うように構成された多管式熱交換器であって、各扁平伝熱管の両端部を断面における周方向に拡管した形状となし、隣り合う扁平伝熱管における同拡管形状部をろう接により接合したチューブシートレス構造の多管式熱交換器において、前記扁平伝熱管群の両端部の拡管形状部に、当該拡管形状部の最外周部を囲繞するごとく外嵌ろう接した環状枠体又は筒形枠体からなるスペーサ部材を介して当該扁平伝熱管群をシェルに溶接した構造となしたことを特徴とするものである。
ここで、前記スペーサ部材としては、複数個の金属製板状部材を組合わせて形成した環状枠体又は筒形枠体、あるいは一体形の環状枠体又は筒形枠体を用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のチューブシートレス構造の多管式熱交換器は、積層した扁平伝熱管の両端部の拡管形状部に予め環状枠体又は筒形枠体からなるスペーサ部材をろう接した後、該スペーサ部材の外面側に配置したシェルとスペーサ部材を溶接することにより、スペーサ部材の存在によりシェルとスペーサ部材の溶接部とスペーサ部材ろう接部とを隔てることとなり、溶接熱によるろうの巻き込みによる溶接割れを防止できるので、シール性を向上できる。又、積層した扁平伝熱管にスペーサ部材をろう接後、シェルとスペーサ部材を溶接することにより、シェルはろう接の熱処理影響を受けないことになるのでシェルの強度が低下することはなく、冷却水等の冷却媒体が通流することから発生する圧力変化、圧力脈動に耐える強度が得られる。さらに、シェルとスペーサ部材の溶接はスペーサ部材のろう接実施後になるので、積層された扁平伝熱管接合部は遮蔽物による影響を受けることがなく接合部のろう付け環境が向上し、ろう濡れ性も向上する。又、積層した扁平伝熱管にはスペーサ部材が接合されているので、積層扁平伝熱管における各接合部の気密確認を容易に行うことが可能となる。
上記のように、本発明の多管式熱交換器によれば、スペーサ部材を用いて扁平伝熱管群をシェルに溶接した構造となしたことにより溶接割れの防止、圧力変化や圧力脈動に耐える機械的強度の向上、ろう濡れ性の向上、及び品質の安定向上をはかることができるので、ディーゼルエンジンあるいはガソリンエンジン等の冷却水等の液体状の冷却媒体によってエンジンの排気ガスからの熱回収や、EGRガス等の排気ガスの冷却に大きく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施例に係るチューブシートレス構造の多管式熱交換器の要部を示す縦断側面図である。
【
図2】
図1に示すチューブシートレス構造の多管式熱交換器のスペーサ部材を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第2実施例に係るチューブシートレス構造の多管式熱交換器の要部を示す縦断側面図である。
【
図4】
図3に示すチューブシートレス構造の多管式熱交換器のスペーサ部材を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第3実施例に係るチューブシートレス構造の多管式熱交換器の要部を示す縦断側面図である。
【
図6】
図5に示すチューブシートレス構造の多管式熱交換器のスペーサ部材を示す斜視図である。
【
図7】本発明の第4実施例に係るチューブシートレス構造の多管式熱交換器の要部を示す縦断側面図である。
【
図8】本発明の第5実施例に係るチューブシートレス構造の多管式熱交換器の要部を示す縦断側面図である。
【
図9】従来の多管式熱交換器の一例を示す概略側面図である。
【
図10】従来のチューブシートレス構造の多管式熱交換器の端部を示す縦断側面図である。
【
図11】従来の他のチューブシートレス構造の多管式熱交換器の端部を示す縦断側面図である。
【
図12】従来の別のチューブシートレス構造の多管式熱交換器の端部を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1、
図2に示す本発明の第1実施例に係るチューブシートレス構造の多管式熱交換器は、管両端部に周方向に拡管した拡管部2−1を有する扁平伝熱管2を積層しその隣り合う扁平伝熱管2の当該拡管部2−1同士をろう接して複数本の扁平伝熱管からなる扁平伝熱管群1の前記拡管部2−1に、環状枠体からなるスペーサ部材4が当該拡管部の最外周部を囲繞するごとく外嵌され、かつスペーサ部材4と扁平伝熱管2はろう接され、このスペーサ部材4がシェル3に溶接された構造となしたものである。ここで、環状枠体からなるスペーサ部材4は、所望厚さの矩形断面の金属製板状部材からなる矩形の環状枠体からなり、その構造は枠体の上下左右辺をそれぞれ扁平伝熱管2の拡管部2−1の管軸方向長さとほぼ同一幅の板状部材4−1で構成したものである。
【0014】
上記チューブシートレス構造の多管式熱交換器の製造に際しては、積層した各扁平伝熱管2の拡管部2−1の最外周部に前記環状枠体からなるスペーサ部材4を外嵌した後、積層扁平伝熱管2とスペーサ部材4を同時に炉中ろう接を行う。4−2、4−3は積層扁平伝熱管2とスペーサ部材4のろう接部である。次いで、気密確認と外観目視を行った後、スペーサ部材4の外面側とシェル3の溶接を行う。この時、シェル3とスペーサ部材4の溶接部4−4と、スペーサ部材4と扁平伝熱管2のろう接部4−2、4−3とが離れているので、シェル3とスペーサ部材4の溶接熱がスペーサ部材4と扁平伝熱管2のろう接部4−2、4−3に影響をおよぼすことがほとんどなく、溶接熱によるろうの巻き込みによる溶接割れを防止できる。これによりシェル3とスペーサ部材4の溶接部4−4のシール性を向上できる。又、シェル3はろう接の熱処理影響を受けないことになるので強度が低下することはない。
【0015】
次に、
図3、
図4に示す本発明の第2実施例に係るチューブシートレス構造の多管式熱交換器は、前記
図1、
図2に示すチューブシートレス構造の多管式熱交換器のスペーサ部材4に替えて、筒形枠体からなるスペーサ部材5を採用したもので、そのスペーサ部材5の構造は枠体の上下両辺をそれぞれ扁平伝熱管2の拡管部2−1の管軸方向長さより長い広幅の板状部材5−1で構成したものであり、この筒形枠体からなるスペーサ部材5が前記
図1、
図2に示す多管式熱交換器と同様の構成を有する積層扁平伝熱管の拡管部2−1の最外周部を囲繞するごとく外嵌され、かつスペーサ部材5と扁平伝熱管2はろう接され、スペーサ部材5とシェル3が溶接された構造となしたものである。図中、9は締結用フランジ部材であり、スペーサ部材5に溶接される。
【0016】
上記
図3、
図4に示すチューブシートレス構造の多管式熱交換器の場合もその製造に際しては、前記
図1、
図2に示すチューブシートレス構造の多管式熱交換器の場合と同様に、積層した各扁平伝熱管2の拡管部2−1の最外周部に前記筒形枠体からなるスペーサ部材5を外嵌した後、積層扁平伝熱管2とスペーサ部材5を同時に炉中ろう接を行う。5−2、5−3は積層扁平伝熱管2とスペーサ部材5のろう接部である。次いで、気密確認と外観目視を行った後、スペーサ部材5の外面側とシェル3の溶接を行う。この時、シェル3とスペーサ部材5の溶接部5−4と、スペーサ部材5と扁平伝熱管2のろう接部5−2、5−3とが離れているので、シェル3とスペーサ部材5の溶接熱がスペーサ部材5と扁平伝熱管2のろう接部5−2、5−3に影響をおよぼすことがほとんどなく、溶接熱によるろうの巻き込みによる溶接割れを防止できる。これによりシェル3とスペーサ部材5の溶接部5−4のシール性を向上できる。又、シェル3はろう接の熱処理影響を受けないことになるので強度が低下することはない。
【0017】
図5、
図6に示す本発明の第3実施例に係るチューブシートレス構造の多管式熱交換器は、前記
図1、
図2と、
図3、
図4に示すチューブシートレス構造の多管式熱交換器のスペーサ部材4,5に替えて、締結用フランジ部6−1が一体形の筒形枠体からなるスペーサ部材6を採用したもので、そのスペーサ部材6の構造は外側端部に締結用フランジ部6−1が一体に設けられた筒形枠体で構成され、その筒形枠体からなるスペーサ部材6が前記
図1〜
図4に示す多管式熱交換器と同様の構成を有する積層扁平伝熱管の拡管部2−1の最外周部を囲繞するごとく外嵌され、かつスペーサ部材6と扁平伝熱管2はろう接され、スペーサ部材6とシェル3が溶接された構造となしたものである。
【0018】
上記
図5、
図6に示すチューブシートレス構造の多管式熱交換器の場合もその製造に際しては、前記
図1〜
図4に示すチューブシートレス構造の多管式熱交換器の場合と同様に、積層した各扁平伝熱管2の拡管部2−1の最外周部に前記筒形枠体からなる締結用フランジ部6−1付きスペーサ部材6を外嵌した後、積層扁平伝熱管2とスペーサ部材6を同時に炉中ろう接を行う。6−2、6−3は積層扁平伝熱管2とスペーサ部材6のろう接部である。次いで、気密確認と外観目視を行った後、スペーサ部材6の外面側とシェル3の溶接を行う。
本実施例においても、スペーサ部材6とシェル3の溶接時、シェル3とスペーサ部材6の溶接部6−4と、スペーサ部材6と扁平伝熱管2のろう接部6−2、6−3とが離れているので、シェル3とスペーサ部材6の溶接熱がスペーサ部材6と扁平伝熱管2のろう接部6−2、6−3に影響をおよぼすことがほとんどなく、溶接熱によるろうの巻き込みによる溶接割れを防止できる。これによりシェル3とスペーサ部材6の溶接部6−4のシール性を向上できる。又、シェル3はろう接の熱処理影響を受けないことになるので強度が低下することはない。
【0019】
図7に示す本発明の第4実施例に係るチューブシートレス構造の多管式熱交換器は、前記
図1〜
図6に示すチューブシートレス構造の多管式熱交換器のスペーサ部材4、5、6に替えて、ボンネット部7−1が一体形の筒形枠体からなるスペーサ部材7を採用したもので、そのスペーサ部材7の構造は外側端部にボンネット部7−1が一体に設けられた筒形枠体で構成され、その筒形枠体からなるボンネット部付きスペーサ部材7が前記
図1〜
図6に示す多管式熱交換器と同様の構成を有する積層扁平伝熱管の拡管部2−1の最外周部を囲繞するごとく外嵌され、かつスペーサ部材7と扁平伝熱管2はろう接され、スペーサ部材7とシェル3が溶接された構造となしたものである。
【0020】
上記
図7に示すチューブシートレス構造の多管式熱交換器の場合もその製造に際しては、前記
図1〜
図6に示すチューブシートレス構造の多管式熱交換器の場合と同様に、積層した各扁平伝熱管2の拡管部2−1の最外周部に前記筒形枠体からなるボンネット部7−1付きスペーサ部材7を外嵌した後、積層扁平伝熱管2とスペーサ部材7を同時に炉中ろう接を行う。7−2、7−3は積層扁平伝熱管2とスペーサ部材7のろう接部である。次いで、気密確認と外観目視を行った後、スペーサ部材7の外面側とシェル3の溶接を行う。
本実施例においても、スペーサ部材7とシェル3の溶接時、シェル3とスペーサ部材7の溶接部7−4と、スペーサ部材7と扁平伝熱管2のろう接部7−2、7−3とが離れているので、シェル3とスペーサ部材7の溶接熱がスペーサ部材7と扁平伝熱管2のろう接部7−2、7−3に影響をおよぼすことがほとんどなく、溶接熱によるろうの巻き込みによる溶接割れを防止できる。これによりシェル3とスペーサ部材7の溶接部7−4のシール性を向上できる。又、シェル3はろう接の熱処理影響を受けないことになるので強度が低下することはない。
【0021】
図8に示す本発明の第5実施例に係るチューブシートレス構造の多管式熱交換器は、前記
図1〜
図4に示すチューブシートレス構造の多管式熱交換器のスペーサ部材4、5と略同様の構造を有する環状枠体からなるスペーサ部材8にボンネット部材10を取付けた構造のものを採用したもので、そのスペーサ部材8の構造は枠体の上下両辺をそれぞれ扁平伝熱管2の拡管部2−1の管軸方向長さとほぼ同一幅の板状部材8−1で構成したものであり、この環状枠体からなるスペーサ部材8が前記
図1〜
図4に示す多管式熱交換器と同様の構成を有する積層扁平伝熱管の拡管部2−1の最外周部を囲繞するごとく外嵌され、かつスペーサ部材8と扁平伝熱管2はろう接され、スペーサ部材8とシェル3が溶接され、さらにスペーサ部材8にボンネット部材10が溶接された構造となしたものである。
【0022】
上記
図8に示すチューブシートレス構造の多管式熱交換器の場合もその製造に際しては、前記
図1〜
図6に示すチューブシートレス構造の多管式熱交換器の場合と同様に、積層した各扁平伝熱管2の拡管部2−1の最外周部に前記環状枠体からなるスペーサ部材8を外嵌した後、積層扁平伝熱管2とスペーサ部材8を同時に炉中ろう接を行う。8−2、8−3は積層扁平伝熱管2とスペーサ部材8のろう接部である。次いで、気密確認と外観目視を行った後、スペーサ部材8の外面側とシェル3の溶接を行う。しかる後、スペーサ部材8にボンネット部材10を溶接する。
本実施例においても、スペーサ部材8とシェル3の溶接時、シェル3とスペーサ部材8の溶接部8−4と、スペーサ部材8と扁平伝熱管2のろう接部8−2、8−3とが離れているので、シェル3とスペーサ部材8の溶接熱がスペーサ部材8と扁平伝熱管2のろう接部8−2、8−3に影響をおよぼすことがほとんどなく、溶接熱によるろうの巻き込みによる溶接割れを防止できる。これによりシェル3とスペーサ部材8の溶接部8−4のシール性を向上できる。又、シェル3はろう接の熱処理影響を受けないことになるので強度が低下することはない。
【0023】
なお、上記本発明の第1〜第5実施例において、シェル3とスペーサ部材4〜8の溶接は、TIG、MIG、プラズマ、レーザー溶接等、適宜選択して用いることはいうまでもない。又、シェル3とスペーサ部材4〜8、締結用フランジ部9、ボンネット部材10の溶接位置については、スペーサ部材4〜8あるいは締結用フランジ部材9、ボンネット部材10の長手方向位置を適宜に選択して決めることとする。
【符号の説明】
【0024】
1 扁平伝熱管群
2 (積層)扁平伝熱管
2−1 拡管部
3 シェル
4、5、6、7、8 スペーサ部材
4−2、4−3、5−2、5−3、6−2、6−3、7−2、7−3、8−2、8−3 ろう接部
4−4、5−4、6−4、7−4、8−4 溶接部
4−1、5−1、8−1 板状部材
6−1 締結用フランジ部
7−1 ボンネット部
9 締結用フランジ部材
10 ボンネット部材