【実施例】
【0020】
図1は、本願発明の実施の形態に係る健康状態推定システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2は、
図1の健康状態推定システム1における処理の一例を示すフロー図である。
【0021】
健康状態推定システム1は、居宅3と、電力計測装置5と、推定装置7(本願請求項の「推定装置」の一例)を備える。
【0022】
居宅3は、居住者等の電力の消費者が居住する建造物である。
【0023】
電力計測装置5は、計測部11を備える。計測部11は、居宅3において使用される電力使用量を計測する(
図2のステップST1)。
【0024】
推定装置7は、消費者が使用した電力使用量から消費者の健康評価値を推定するものである。ここで、健康評価値は、消費者の健康の度合いを評価するための値であり、例えば、消費者の身体から計測される身体計測値だけでなく、野菜摂取量なども含むものである。推定装置7は、入力部21と、制御部23と、電力使用量記憶部25と、統計処理部(本願請求項の「統計処理手段」の一例)27と、推定部29(本願請求項の「推定手段」の一例)を備える。入力部21は、電力計測装置5の計測部11が計測した電力使用量を入力する(
図2のステップST2)。制御部23は、推定装置7における制御処理を行うものであり、入力部21に入力された電力使用量を電力使用量記憶部25に記憶する(
図2のステップST3)。統計処理部27は、電力使用量記憶部25に記憶された電力使用量に対し、統計処理を行う(
図2のステップST4)。統計処理部27による統計処理により得られた値を、統計処理値という。統計処理は、例えば、1か月間の電力使用量を積算し、日数で割ることにより日平均電力使用量を得るものである。推定部29は、統計処理部27により演算された統計処理値に応じて、消費者の健康評価値を推定する(
図2のステップST5)。
【0025】
図1では、例えば、推定装置7は、スマートフォンやタブレット端末等であり、統計処理部27や推定部29等は、アプリ等を利用して実現されるものである。すなわち、推定装置7の利用者は、例えば消費者であり、計測部11が測定した電力使用量を入力して、この値に対して統計処理を行い、現在及び/又は将来の健康評価値を推定するような場合を想定している。さらに、例えば、電力計測装置5は、計測部11が計測した電力使用量を送信する送信部を備え、推定装置7は、送信された電力使用量を受信する受信部を備え、受信した電力使用量に対して統計処理を行って、健康評価値を推定するものであってもよい。
【0026】
続いて、推定部29の処理について、具体的に説明する。
図3〜
図6を参照して、実証試験の結果について説明する。
図3〜
図6は、参加者に対して、自己記入式アンケートを回収し、計測機器(血圧計、体重計、歩数計)と電力計を配布して、日々測定した結果を示すものである。データ解析には、IBM SPSS Statistics等を使用し、相関分析(ピアソンの相関と散布図)を行った。
【0027】
図3は、平成25年2月における単身世帯の日平均電力使用量と血中HDLの関係についての解析結果を示すグラフである。横軸は、血中HDL(mg/dl)である。縦軸は、1日平均電力使用量(Wh)である。r値は、0.674であり、p値は、0.002である。
図3にあるように、日平均電力使用量が少ないほど、血中HDLが増加する傾向が認められる。よって、推定部29は、電力使用量が少ないほど、血中HDLが多いと推定する。また、グラフ上のラインを使用して、日平均電力使用量から血中HDLの値を推定してもよい。
【0028】
図4は、平成25年2月における日平均電力使用量と血中LDLの関係についての解析結果を示すグラフである。横軸は、血中LDL(mg/dl)である。縦軸は、1日平均電力使用量(Wh)である。r値は、0.686であり、p値は、0.003である。
図4にあるように、日平均電力使用量が少ないほど、血中LDLが少ない傾向が認められる。よって、推定部29は、電力使用量が少ないほど、血中LDLが少ないと推定する。また、グラフ上のラインを使用して、日平均電力使用量から血中LDLの値を推定してもよい。
【0029】
図5は、平成25年2月における日平均電力使用量と中性脂肪の関係についての解析結果を示すグラフである。横軸は、中性脂肪(mg/dl)である。縦軸は、1日平均電力使用量(Wh)である。r値は、0.755であり、p値は、0.000である。
図5にあるように、日平均電力使用量が少ないほど、中性脂肪が少ない傾向が認められる。よって、推定部29は、電力使用量が少ないほど、中性脂肪が少ないと推定する。また、グラフ上のラインを使用して、日平均電力使用量から中性脂肪の値を推定してもよい。
【0030】
図6は、平成25年2月における日平均電力使用量と週平均野菜摂取量の関係についての解析結果を示すグラフである。横軸は、週平均野菜摂取量である。縦軸は、1日平均電力使用量(Wh)である。r値は、0.502であり、p値は、0.047である。
図6にあるように、日平均電力使用量が少ないほど、週平均野菜摂取量が多い傾向が認められる。よって、推定部29は、電力使用量が少ないほど、野菜摂取量が多いと推定する。また、グラフ上のラインを使用して、日平均電力使用量から野菜摂取量の値を推定してもよい。
【0031】
このように、
図3〜
図6によれば、電力使用量が多くなるほどに、血中LDLは多く、血中HDLは少なく、中性脂肪については多く、野菜摂取量については少なくなる傾向が認められる。そのため、推定部29は、全体的な傾向として、電力使用量の値が増加するほどに、健康評価値として、健康的でないものに推定するものと認められる。
【0032】
なお、推定部29は、例えば
図3〜
図6にあるように、過去の統計データから健康評価値の推定値を得ておき、統計処理値に対応する健康評価値の推定値を得てもよい。また、統計処理値を、他の電力使用量と比較して、健康評価値の増減を相対的に推定するものであってもよい。他の電力使用量と比較する場合には、例えば、同じ消費者が、1年前の同じ期間に使用した電力使用量と比較して、健康評価値の増減を判断してもよい。
【0033】
また、複数の電力使用量を総合的に考慮して、健康評価値を得るものであってもよい。例えば、月平均電力使用量の推移を比較的長期間(例えば一年間)遡ってみる。例えば、各月において、蓄積されたデータ全てから算出された全年月平均電力使用量を計算する。全年月平均電力使用量に対する月平均電力使用量の相対値を計算する。時間の経過とともに、前記相対値が単調増加であった場合、健康評価値が単調に悪化して、生活習慣病が発症する、又は、発症が早まることが予想される。また、ある月を境に、月毎電力使用平均値(蓄積データ)に対する電力使用量が比較的長期間にわたって相対的に単調減少した場合、健康評価値は改善するため、将来的には、生活習慣病のリスクが低下する可能性が予想される。このように、例えば、各時点において取得されたデータだけでなく、それ以前に取得され記憶されたデータをも考慮することにより、消費者の電力使用量の変化を読み取り、健康状態の‘変化’を推定して、生活習慣病の発症のリスク等を予測することが可能になる。