(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1乃至3の何れか1項に記載のヘテロ二量体型修飾ユビキチンタンパク質の生成方法において、前記非天然標的タンパク質が、血管内皮成長因子(VEGF)、VEGF−A、ED−B、TNF−α、MIA−2、NGF、およびIgGから選択されることを特徴とする方法。
請求項1乃至4の何れか1項に記載のヘテロ二量体型修飾ユビキチンタンパク質の生成方法において、前記ヘテロ二量体型修飾ユビキチンタンパク質が多量体であることを特徴とする方法。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を以下に詳細に説明する前に、本発明は、本明細書に記載の特定の方法、プロトコル、および試薬に限定されるものではないことを理解すべきである。なぜなら、これらは変更しうるからである。また、本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態を説明することだけを目的としたものにすぎず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定しようとするものではないことも理解すべきである。とくに定義されていないかぎり、本明細書で用いられる科学技術用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同一の意味を有する。好ましくは、本明細書で用いられる用語は、“A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)”,Leuenberger,H.G.W,Nagel,B.and Koelbl,H.eds.(1995),Helvetica Chimica Acta,CH−4010 Basel,Switzerland)に記載されるように定義される。本明細書で参照される配列はすべて、添付の配列リストに開示されており、その全内容および開示は、本明細書の一部である。
【0025】
結合タンパク質としての修飾ユビキチンタンパク質
「ユビキチンタンパク質」という用語は、配列番号1に適合するユビキチンおよび以下の定義に適合するその修飾体を包含する。ユビキチンは、真核生物において高度に保存される。たとえば、現在までに研究されたすべての哺乳動物において、ユビキチンは、同一のアミノ酸配列を有する。とくに好ましいのは、ヒト、齧歯動物、ブタ、および霊長動物に由来するユビキチン分子である。そのほかに、任意の他の真核生物源に由来するユビキチンを使用することが可能である。たとえば、酵母のユビキチンは、野生型ヒトユビキチンと3個のアミノ酸のみ異なる。一般的には、「ユビキチンタンパク質」という前記用語に包含される非修飾単量体型ユビキチンタンパク質は、配列番号1に対して70%超、好ましくは75%超もしくは80%超、85%超、90%超、95%超、96%超のアミノ酸同一性、または97%までの配列同一性を示す。
【0026】
配列番号1と同一でないただし類似したユビキチンタンパク質に修飾が導入される実施形態を包含するように、「に対応する」という用語を使用してきた。前記同一でないただし類似したユビキチンでは、本明細書に明記されたアミノ酸の位置は、配列番号1と異なる可能性があるが、配列番号1を基準にした位置により表される位置に割り付けることが可能である。「同一でないただし類似した」とは、たとえば、非ヒト起源であるまたは配列番号1から誘導される、したがってアミノ酸配列が配列番号1と異なるユビキチンを記述する。
【0027】
ユビキチンのポリペプチド鎖は、単量体に対応する76個のアミノ酸で構成されて(配列番号1)、驚くほど緻密なα/β構造でフォールディングされ(Vijay−Kumar,1987)、ポリペプチド鎖のほぼ87%は、水素結合により二次構造エレメントの形成に関与する。二次構造は、3回転半のαヘリックスさらには4つのストランドで構成された逆平行βシートである。これらのエレメントの特徴的配置は、一般的には、いわゆるユビキチン様フォールディングモチーフとみなされる。さらなる構造上の特徴は、αヘリックスとβシートとの間のタンパク質内部の顕著な疎水性領域である。
【0028】
逆平行βシートの形成に寄与する4つのβストランドのアミノ酸は、本発明によればおよび構造1UBQによれば、配列番号1の以下のアミノ酸位置、すなわち、第1のストランド(アミノ末端):2〜7、第2のβシートストランド:12〜16、第3のストランド:41〜45、第4のストランド(カルボキシ末端):65〜71に存在する。ストランドの位置は、シートを上側から見た場合(下側にアミノ末端、上側にカルボキシ末端)、左から右に、第2、第1、第4、第3のストランドであり、第1および第4のストランドの間のポリペプチド鎖は、αヘリックスを形成する。
【0029】
「修飾ユビキチンタンパク質」という用語は、アミノ酸の置換、挿入、もしくは欠失のいずれか1つまたはそれらの組合せのユビキチンタンパク質修飾を意味するが、置換が最も好ましい修飾であり、以上に記載の修飾のいずれか1つがこれに追加されていてもよい。前記修飾単量体ユビキチンユニットのそれぞれは、配列番号1に対して75%、少なくとも83%、少なくとも85%%、少なくとも87%、および少なくとも90%の群の少なくとも1つのアミノ酸同一性を有するので、修飾の数は、厳しく制限される。したがって、多くとも、非天然標的への新規な結合性に関連する単量体ユニット中の置換の全数は、置換および欠失のみを考慮に入れて80%のアミノ酸同一性に対応する16個のアミノ酸に制限される。挿入を全アミノ酸同一性の計算に組み込んだ場合、配列番号1に対する前記同一性は、75%〜80%になりうる。二量体型ユビキチン分子中の置換アミノ酸または欠失アミノ酸の全数は、32個までのアミノ酸でありうる。これは、非修飾二量体型ユビキチンタンパク質を基準にして約20%のアミノ酸が置換されたことに対応する。配列番号1で示される基準単量体配列を有する二量体型非修飾ユビキチンタンパク質と比較した二量体型修飾ユビキチンタンパク質のアミノ酸同一性は、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも83%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、および少なくとも90%の群の少なくとも1つから選択される。
【0030】
「ループ」または「ループ領域」という用語は、ユビキチンのαヘリックスやβストランドなどの規則的二次構造エレメントを結合する非繰返しコンフォメーションの領域を意味する。ヒトユビキチンの構造は、二次構造エレメントを結合する7つのリバースターン(ループ):7〜11、18〜21、37〜40、45〜48、51〜54、57〜60、62〜65を呈する(Vijay−Kumar et al.1987 J Mol Biol.;194(3):531−44)。
【0031】
「挿入」という用語は、タンパク質の元のアミノ酸配列へのアミノ酸の追加を包含する。本発明では、ユビキチンが有意な構造変化を伴うことなく安定性を維持するユビキチン単量体への追加のアミノ酸を記載する。
【0032】
二量体型ユビキチン中の挿入位置
前記単量体ユビキチンユニット(ユビキチン単量体)は、一方または両方のユビキチン単量体、好ましくは一方の単量体中に挿入を含有する。2つのユビキチン単量体は、それぞれ同一または異なる挿入を含有することも可能である。またさらなる実施形態では、一方または両方のユビキチン単量体中に2、3、または4つの挿入が組み込まれる。
【0033】
挿入のサイズ
本発明は、好ましく、非天然標的への結合を規定するユビキチン単量体の結合領域中に2〜15個のアミノ酸の挿入を包含する。特定的には、挿入されるアミノ酸の数は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15個である。本発明の一実施形態は、第1のユビキチン単量体の8個のアミノ酸の挿入断片を示す(たとえば、配列番号12を参照されたい)。しかしながら、すべての挿入のアミノ酸の全数は、修飾ユビキチンの構造完全性および非天然標的タンパク質へのその結合能を維持することにより制限される。挿入は、一方もしくは両方の単量体型ユビキチンタンパク質中に6〜10個のアミノ酸もしくは7〜9個のアミノ酸もしくは8個のアミノ酸または2〜15個のアミノ酸の範囲に含まれる任意の他の数(2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15)のアミノ酸の挿入を含みうる。単量体型ユビキチンでは、多くとも15個のアミノ酸、好ましくは6〜10個のアミノ酸、最も好ましい8個のアミノ酸の挿入が許容されうる。配列番号1の残基61〜65の領域のアミノ酸位置61〜62もしくは位置62〜63もしくは位置63〜64もしくは位置64〜65に対応するアミノ酸間に、最も好ましくは配列番号1の位置61〜62に対応するアミノ酸間に、または前記置換アミノ酸にごく近接して(1〜3アミノ酸)、またはβシートから0、1、2、3、4、もしくは5アミノ酸離れて、8個のアミノ酸を挿入することが最も好ましい。6〜10個(6、7、8、9、または10個)のアミノ酸、好ましくは8個のアミノ酸の挿入は、天然ループ領域を伸長することにより、標的に対する結合部位を伸長するので、標的と修飾ユビキチンとの間の結合相互作用に有利である(Affilin(登録商標))。
【0034】
単量体型ユビキチン中の挿入位置
アミノ酸の挿入は、βシートストランドにごく近接して、任意選択でβシートストランドから、好ましくは第4(C末端)または第1(N末端)のβストランドから0、1、2、3、4、または5アミノ酸離れて存在することがさらに好ましく、任意選択で、前記挿入は、N末端(第1)のユビキチン単量体中に位置する。挿入は、一般的には、βシート中に位置するのでなく、βシートに近接して、任意選択でβシートから0、1、2、3、4、または5アミノ酸離れて位置することにより、βシート中の置換アミノ酸の近くに伸長構造を形成する。挿入は、第4(C末端)または第1(N末端)のβストランドから0、1、2、3、4、または5アミノ酸離れていることが好ましい。
【0035】
挿入は、前記アミノ酸置換のN末端方向またはC末端方向に1〜3アミノ酸以内であるかまたはそれにごく近接していることが好ましい。アミノ酸の好ましい挿入は、前記修飾単量体型ユビキチンの1つのループ領域中に存在する。ユビキチン中のループ領域とは、以下にさらに規定されるように、配列番号1の残基7〜11、18〜21、37〜40、45〜48、51〜54、57〜60、62〜65を意味する。本発明の好ましい一実施形態では、追加のアミノ酸の挿入は、C末端βシートに近接するループ領域の前(位置61および62の間)またはループ領域内(アミノ酸62〜64)に存在することにより、既存のループ領域を伸長してより大きい結合部位を形成する。ユビキチンタンパク質の天然表面露出ループ中へのアミノ酸の追加は、βシートなどの安定な構造エレメントを結合する領域中が有利である。一実施形態では、挿入は、配列番号1の残基61〜65のループ領域内のアミノ酸61〜62または62〜63または63〜64または64〜65に対応するアミノ酸残基間、最も好ましくは配列番号1の位置61および62に対応するアミノ酸間に位置する。アミノ酸の挿入は、第4のβストランド中のアミノ酸置換のC末端、言い換えれば、アミノ酸の挿入は、アミノ酸62〜65のループ領域の近くまたはループ領域内であることが最も好ましい。CDスペクトルから結論付け可能なように、挿入配列は、グローバル構造に影響しないが、挿入部位は、影響する。したがって、アミノ酸の挿入は、配列番号1のヒトユビキチンの61〜62または62〜63または63〜64または64〜65に対応するアミノ酸間が好ましく、最も好ましいのは、配列番号1の位置61および62に対応するアミノ酸間である。第4のβストランドの近接領域中へのそのような挿入は、天然ループ領域を有意に伸長することにより、非天然標的に対する伸長結合部位を形成する。結合部位は、好ましくは修飾アミノ酸のC末端領域に近接するループ領域中へのアミノ酸の挿入と共に、N末端領域2〜8およびC末端領域62〜68中のアミノ酸内の置換により形成される。置換および挿入は、アミノ酸領域2〜8および61〜68中が好ましい。最も好ましいのは、配列番号1の領域2〜8中の置換、および置換と、ユビキチンの少なくとも一方の単量体の配列番号1のアミノ酸領域61〜68中への2〜15個のアミノ酸の挿入と、の組合せである。
【0036】
アミノ酸挿入の利点
好ましくは、1つの単量体ユビキチンユニット中に1つの挿入のみが存在する。最も好ましいのは、二量体のN末端(第1)の単量体ユビキチンユニット中の挿入である。前記挿入は、非天然標的タンパク質たとえばVEGF−Aおよびそのアイソフォームへの修飾ユビキチンの新たに生成された結合に関与しうる。挿入のさらなる好影響は、置換されうるひいては標的への結合に関与しうるアミノ酸の数の増加である。挿入断片は、任意選択で、伸長構造たとえばループ構造を形成しうる。追加のアミノ酸を加えることによるユビキチン構造の伸長は、タンパク質の全コンフォメーションおよび安定性に有意な影響を及ぼさない。置換および挿入を有する修飾ヘテロ二量体型ユビキチン足場は、溶解状態を維持する。
【0037】
本発明は、非天然標的に対する伸長された相互作用界面を有する工学操作された新規な高親和性結合代替足場を提供する。置換アミノ酸にごく近接して伸長または延長された構造たとえばループ構造の形成は、いくつかの利点を有する。第1に、標的結合部位は、タンパク質の全体構造を破壊することなく追加のアミノ酸により伸長される。追加のアミノ酸がタンパク質に加えられるが、ユビキチン足場の全体構造および機能は、保存される。この結果、高い親和性および特異性を有して非天然標的への結合がもたらされる。第2に、伸長構造を形成することにより、コンフォメーションは、特定の標的またはエピトープに到達できるように変化されうる。構造可撓性は、結合部位が固定されないので置換アミノ酸と挿入との組合せにより形成されたそのような結合部位への標的の結合がより強くなるという好影響を有する。結合は、標的のコンフォメーションの変化により妨害されることはないであろう。したがって、C末端のβシートの近くの挿入部位は、標的への結合に関して挿入断片自体の配列よりも重要である。挿入部位が標的結合の決定要因となっている。
【0038】
「置換」という用語はまた、たとえば、元のアミノ酸への化学基または残基の置換または追加によるアミノ酸の化学修飾も包含する。表面露出アミノ酸の置換は、とくに重要である。本発明のさらなる実施形態では、領域2〜8および62〜68に位置する少なくとも5、6、7、または8個のアミノ酸、特定的には位置2、4、6、8、62、63、64、65、66、および/または68から選択されるアミノ酸は、置換により修飾され、さらに1〜7個の追加のアミノ酸が置換により修飾され、この置換は、任意選択で、位置36、44、70、71、72、および73のアミノ酸の1つ以上から選択される。本発明では、各単量体ユニット(単量体)中で、すなわち第1および第2の単量体中で、これらの各変異の組合せが可能であることを理解すべきである。たとえば、第1の単量体は、5つの修飾を含みうるが、第2のユニットは、6または7つの修飾を含み、第1の単量体は、7つの修飾、かつ第2のユニットは、5つ修飾を含みうるなどである。以上に列挙された各アミノ酸は、後で組み合わせられる第1および/または第2の単量体中で選択可能である。好ましい置換および挿入は、本明細書で以下に記載される。
【0039】
配列番号1で示されるアミノ酸配列に対するユビキチン誘導体の配列同一性の程度を決定するために、たとえば、SIM局所類似性プログラム(Xiaoquin Huang and Webb Miller,”Advances in Applied Mathematics,vol.12:337−357,1991)またはClustal,W.を使用することが可能である(Thompson et al.,Nucleic Acids Res.,22(22):4673−4680,1994)。本明細書に規定される配列番号1に対する修飾タンパク質の配列同一性の程度は、配列番号1で示される完全配列と対比して決定される。本発明との関連では、修飾配列とその誘導に用いられる配列(「親配列」とも称される)との間の配列同一性の程度は、とくに明記されていなければ、一般的には非修飾配列の全長に対して計算される。
【0040】
二量体型ユビキチンタンパク質の潜在的結合パートナー
本明細書では、「標的」、「リガンド」、および「結合パートナー」という用語は、同義的に用いられ、交換可能である。本発明を実施する場合、好ましい標的、リガンド、および結合パートナーは、タンパク質、より特定的にはタンパク質上に存在する抗原エピトープである。本発明で標的、リガンド、および結合パートナーとみなされるのは、本明細書に規定される親和性を有してヘテロ二量体型修飾ユビキチンタンパク質に結合可能な任意のタンパク質である。本発明に係る標的またはリガンドまたは結合パートナーは、ヒトユビキチンに対するまたはユビキチン二量体に対する非天然標的である。このことは、結合性がde novoで生成されてヘテロ二量体型修飾ユビキチン結合タンパク質の形成前には存在しなかったことを意味する。言い換えれば、本発明に係る標的は、非修飾野生型ユビキチンに結合することはできない。
【0041】
少なくとも一方の単量体中に2〜15個のアミノ酸の挿入を有する二量体型修飾ユビキチンタンパク質の例示的な非天然リガンドは、たとえば、VEGF−A、ED−B、TNF−α、MIA−2、NGF、またIgGでありうるが、これらに限定されるものではない。本発明は、これらの特定のリガンドに限定されるものではなく、当技術分野で公知のリガンドおよび標的分子のすべてまたは少なくともほとんどで実施可能である。それらの標的は、当業者であれば、当技術分野の一般知識の範囲内で選択可能である。以下では、リガンドおよび標的の一般的定義を提供するとともに、さらなる潜在的結合パートナーの選択例を提供する。
【0042】
本発明に係る「結合可能なタンパク質」または「結合タンパク質」という用語は、標的タンパク質に対する結合ドメインを含むヘテロ二量体型修飾ユビキチンタンパク質を意味する。ユビキチンに基づくそのような結合タンパク質はいずれも、結合ドメインでない追加のタンパク質ドメイン、たとえば、多量体化部分、ポリペプチドタグ、ポリペプチドリンカー、および/または非タンパク質ポリマー分子などを含みうる。非タンパク質ポリマー分子のいくつかの例は、ヒドロキシエチルデンプン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレンである。前記標的タンパク質への結合は、de novoで生成される。修飾(置換および挿入)を含まないユビキチン単量体は両方とも、結合パートナーに結合できない。修飾後にはじめて、天然ユビキチン単量体にはこれまで存在しなかった新しい結合性が生成された。修飾を有する人工二量体型ユビキチン構造のみが、そのような非天然標的に結合する。
【0043】
抗体およびそのフラグメントは、当業者に周知であるが、本発明に係る結合タンパク質は、抗体でもなく、FabフラグメントやscFvフラグメントなどのそのフラグメントでもない。さらに、本発明に係る結合ドメインは、抗体中に存在する免疫グロブリンフォールドを含まない。本発明に係る結合タンパク質は、代替足場、特定的には修飾ユビキチン系二量体型タンパク質に基づく足場のみを含む。
【0044】
「VEGF−A」という用語または「VEGF」と略称される用語は、配列番号13(受託番号P15692)に対して少なくとも70%、任意選択で75%、さらに任意選択で80%、85%、90%、95%、96%、または97%またはそれ以上または100%の配列同一性を示すかつVEGFの以上に規定された機能を有するすべてのタンパク質を包含する。「VEGF−A」という用語または「VEGF」と略称される用語はまた、VEGF−Aのアイソフォームをも包含し、VEGF−Aの周知のアイソフォームは、VEGF121およびVEGF165である。
【0045】
ユビキチン二量体
「二量体」は、本発明では、2つの単量体型ユビキチンタンパク質(ユビキチン単量体)を含むタンパク質とみなされる。二量体が2つの異なって修飾された単量体を含む場合、それは、「ヘテロメリック二量体」または「ヘテロ二量体」と呼ばれる。本発明に係る「ヘテロ二量体型融合タンパク質」または「ヘテロ二量体型タンパク質」は、特異的結合パートナーとしての非天然標的に対する特異的結合性を一緒になって提供する結合領域を有する少なくとも2つの異なって修飾された単量体型ユビキチンタンパク質を含むタンパク質とみなされる。ヘテロ二量体は、2つの単量体型ユビキチン分子を融合することにより達成され、これらの分子は両方とも、本明細書に記載されるように異なって修飾される。本発明に係る「ホモ二量体型融合タンパク質」または「ホモ二量体型タンパク質」は、結合領域を有する2つの等しく修飾された単量体型ユビキチンタンパク質を含むタンパク質とみなされる。ホモ二量体は、2つの単量体型ユビキチン分子を融合することにより達成され、これらの分子は両方とも、本明細書に記載されるように等しく修飾される。好ましいのは、二量体型もしくは四量体型のタンパク質またはその多量体である。好ましい結合領域は、ユビキチン単量体のアミノ酸領域2〜8および62〜68中の置換および挿入により形成される。最も好ましいのは、配列番号1の領域2〜8中の置換、および置換と、ユビキチンの少なくとも一方の単量体の配列番号1のアミノ酸領域61〜68中への2〜15個のアミノ酸の挿入と、の組合せである。
【0046】
結合活性を有するヘテロ二量体型またはホモ二量体型の結合タンパク質を生成すべく異なってまたは等しく修飾されたユビキチン単量体の二量化の利点は、修飾可能なアミノ酸残基の全数の増加、またはタンパク質標的に対する新しい高親和結合性を生成する結合領域の二量化にある。主な利点は、さらに多くのアミノ酸が修飾されるにもかかわらず、タンパク質の化学的完全性が、非天然タンパク質標的に対する前記新たに生成された結合タンパク質のユビキチン足場の全体的安定性を低減することなく維持されることである。非天然標的に対する新規な結合部位を形成すべく修飾可能な残基の全数は、2つの単量体型修飾ユビキチンタンパク質に修飾残基を割付け可能であるので増大される。修飾の数は、修飾単量体型ユビキチン分子の数に対応するユビキチンの異なる単量体分子に多重化および分配される配列番号1の両方でありうる。ユビキチン系結合タンパク質のモジュール構造は、前記修飾アミノ酸が前記2つの単量体型ユビキチン分子上に組み込まれるので修飾アミノ酸の全数の増加を可能にする。
【0047】
したがって、結合パートナーに対する結合部位を有する本発明に係るタンパク質の使用は、修飾残基の全量が二量体を形成する2つの単量体ユニット(単量体)全体にわたり分配されるので、最終結合分子のタンパク質の化学的完全性に過度に影響を及ぼさない増大された数の修飾残基の導入の可能性を広げる。所定の標的に結合する前記二量体型修飾ユビキチンタンパク質は、タンパク質のライブラリー中に存在する。本発明の一実施形態では、単量体型タンパク質は、互いに融合される。二量体化分子は、さらなる多量体化に使用可能である。二量体化ユビキチン分子に関して提供された解説は、必要な変更を加えれば、より高度の多量体化分子にもあてはまる。したがって、VEGF−Aに結合するホモ二量体またはヘテロ二量体は、さらなる多量体化に使用可能である。したがって、二量体型タンパク質は、同一の二量体型タンパク質を用いてまたは異なる二量体型タンパク質を用いてさらに多量体化可能である。異なる二量体型タンパク質は、第1の二量体型タンパク質以外の他の特異性を有しうる。好ましいのは、二量体型もしくは四量体型のタンパク質またはその多量体である。その例は、A−A(ホモ二量体)、A−B(ヘテロ二量体)、A−B−A−B、A−A−A−B、A−B−A−A、A−A−A−A、A−B−C−D、A−A−C−Dである。構築物A−B−C−DおよびA−A−C−Dは、2つの異なる標的に対する特異性を有する二重特異性結合タンパク質でありうる。
【0048】
本発明によれば、1つのタンパク質リガンドに結合する2つの修飾ユビキチン単量体は、たとえば、遺伝学的方法を用いて、頭−尾融合により互いに結合されうる。「頭−尾融合」とは、本発明では、N末端からC末端の方向に連結することにより2つのタンパク質を融合一体化させることと理解されるものとする。この頭−尾融合では、ユビキチン単量体は、なんらリンカーを用いることなく直接結合されうる。他の選択肢として、ユビキチン単量体の融合は、リンカーたとえばポリペプチドリンカーを介して実施可能である。
【0049】
本明細書で用いられる場合、「リンカー」という用語は、共有結合または非共有結合のいずれかにより、たとえば、水素結合、イオン結合、またはファンデルワールス相互作用により、少なくとも2つの他の分子を連結する分子、たとえば、一方の相補的配列に5’末端でかつ他方の相補的配列に3’末端でハイブリダイズすることにより2つの非相補的配列を連結する核酸分子を意味する。「リンカー」は、本出願との関連では、第1のポリペプチドを少なくともさらなるポリペプチドに結合する部分と理解されるものとする。第2のポリペプチドは、第1のポリペプチドと同一であっても異なっていてもよい。
【0050】
この場合には、ペプチドリンカーが好ましい。このことは、ペプチドリンカーが、第1のポリペプチドを第2のポリペプチドに結合するアミノ酸配列であることを意味する。本発明では、ペプチドリンカーは、2つのユビキチン単量体を結合可能なアミノ酸配列である。典型的には、ペプチドリンカーは、1〜20アミノ酸長、たとえば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20アミノ酸長を有する。ペプチドリンカーのアミノ配列は、ヒトに対して免疫原性でないことが好ましい。そのようなリンカーの例は、さまざまな長さのグリシンセリンリンカー、たとえば、少なくともアミノ酸配列GIG(配列番号14)を有するものまたは少なくともアミノ酸配列SGGGGを有するもの、たとえば、GIG(配列番号14)、SGGGG(配列番号15)、SGGGGIG(配列番号16)、SGGGGSGGGGIG(配列番号17)、またはSGGGGSGGGG(配列番号18)、または(SGGG)n(ここで、nは、任意の数1〜4である)である。リンカーは、2〜16アミノ酸長を有しうる。2つのユビキチン単量体の遺伝子的融合のための他のリンカーもまた、当技術分野で公知であり、使用可能である。
【0051】
本発明の一実施形態では、2つの単量体型タンパク質は、最も強力な結合ユビキチン分子をスクリーニングした後、結合一体化されないが、ただし、すでに、スクリーニングプロセスは、二量体型ユビキチンの存在下で行われている。最も強力な結合ユビキチン分子に関する配列情報を得た後、この分子は、任意の他の方法により、たとえば、化学合成により、または遺伝子工学的方法により、たとえば、2つのすでに同定された単量体ユビキチンユニット(ユビキチン単量体)を連結一体化させることにより、取得可能である。前述のことは、非天然リガンドタンパク質に対するより効率的な結合を提供する修飾ユビキチンタンパク質のホモマーにもあてはまる。
【0052】
特異的修飾による所定の標的への高い特異性および親和性の結合
したがって、本発明の目的は、所定のタンパク質標的に特異的にかつ高い親和性を有して結合可能なユビキチンに基づく新規な二量体型タンパク質を提供することである。−天然条件下で−ユビキチンには結合しないが新規な修飾二量体型ユビキチン系タンパク質には高親和性を有して結合可能な標的(「非天然標的」)が選択される。一実施形態では、非天然標的は、VEGF−Aまたはそのアイソフォームである。しかしながら、本発明は、VEGF−Aまたはそのアイソフォームに限定されない。置換と挿入との組合せにより二量体型ユビキチンの結合がde novoで生成されるかぎり、任意の他の標的を使用可能であることは、重要である。少なくとも一方の単量体中に置換と挿入との組合せを有する二量体型ユビキチンタンパク質は、標的またはリガンド(その発現は、本明細書では同義的に用いられる)に対する新規な結合親和性を有する工学操作された人工のタンパク質である。
【0053】
本発明の一実施形態では、少なくとも一方の単量体中の挿入と置換とを有する修飾された新規な結合タンパク質は、非天然リガンドタンパク質としてのVEGF、好ましくはVEGF−Aおよびアイソフォームに結合する。ヒトでは、VEGF−Aの複数のスプライシングアイソフォームが同定されている。最も一般的なアイソフォームは、121、165、および189個のアミノ酸で構成され、ネズミ相同体は、アイソフォーム1つあたり1個のアミノ酸を欠失する。VEGF165をはじめとするVEGF−Aのより長いスプライスアイソフォームは、高塩基性ヘパリン結合ドメインを含有する。しかしながら、挿入と置換とを有する修飾ユビキチン結合タンパク質は、任意の他の非天然標的に結合可能である。
【0054】
所与の標的たとえばVEGF−Aに特異的な新規な結合ドメインを形成するための、すなわち、標的たとえばVEGF−Aに対する新規な結合性を生成するように修飾するためのアミノ酸置換は、本発明に従って任意の所望のアミノ酸を用いて実施可能である。アミノ酸が置換されるアミノ酸に類似した特定の化学性または側鎖をそれぞれ有するように注意することが絶対に必要というわけではないので、VEGF−Aに対する結合親和性が増強されるかぎり、かつユビキチン結合分子の構造完全性が損なわれないかぎり、一般的には所望の任意のアミノ酸をこの目的に使用可能である。
【0055】
さらなる実施形態では、本明細書に特定的に規定されたアミノ酸置換は、類似の化学的性質を有する他のアミノ酸により、たとえば、
Ala、Val、Leu、Ile、Met、Pro、Phe、Trp:脂肪族疎水性側鎖を有するアミノ酸
Ser、Tyr、Asn、Gln、Cys:非荷電ただし極性の側鎖を有するアミノ酸
Asp、Glu:酸性側鎖を有するアミノ酸
Lys、Arg、His:塩基性側鎖を有するアミノ酸
Gly:中性側鎖
により変更される(いわゆる「保存的置換」)。
【0056】
所定のアミノ酸の修飾ステップは、本発明に従って、好ましくは、ランダム突然変異誘発(すなわち、所定のアミノ酸のランダム置換)による遺伝子レベルの突然変異誘発により行われる。好ましくは、ユビキチンの修飾は、それぞれのタンパク質に属するDNAを変化させる遺伝子工学の方法を利用して行われる。次いで、好ましくは、ユビキチンタンパク質の発現が原核生物または真核生物において行われる。
【0057】
好ましい実施形態では、アミノ酸残基は、少なくとも一方の単量体中でアミノ酸置換と挿入との組合せにより改変される。挿入されうるアミノ酸の数は、二量体型ユビキチンタンパク質に対してユビキチン単量体で2〜15個のアミノ酸、したがって、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15個のアミノ酸に制限される。一実施形態では、アミノ酸挿入は、二量体型ユビキチン系結合タンパク質の1つの単量体サブユニット中で、好ましくはN末端(第1)の単量体サブユニット中で行われる。好ましい挿入位置は、異なってもしくは等しく修飾され、かつ/または6〜10個のアミノ酸もしくは7〜9個のアミノ酸もしくは8個のアミノ酸が、一方もしくは両方の単量体型ユビキチン単量体に挿入される。一実施形態では、アミノ酸の挿入は、前記修飾単量体型ユビキチンのループ領域内、または請求項1に明記されたアミノ酸置換内もしくはそれにごく近接して、任意選択で、請求項1に明記された置換位置のN末端方向もしくはC末端方向に0、1、2、もしくは3アミノ酸の位置に存在する。他の実施形態では、アミノ酸の挿入は、βシートストランド、好ましくは第4(C末端)または第1(N末端)のストランドにごく近接して、任意選択でそれから0、1、2、3、4、または5アミノ酸離れて存在する。好ましいのは、N末端(第1)の単量体中への挿入である。任意選択のアミノ酸挿入位置は、たとえば、置換アミノ酸位置にごく近接するヒトユビキチン位置61〜62または62〜63または63〜64または64〜65に対応する位置である。特定的には、次のアミノ酸挿入位置、すなわち、9〜10(アミノ酸2〜7に対応する第1のβストランド)、35〜36(アミノ酸41〜45に対応する第3のβストランド)、最も好ましくは第4のβストランド(アミノ酸65〜71に対応する第4のβストランド)にごく近接する位置65の前が、ヒトユビキチン位置に対応させて選択される。
【0058】
たとえば、非ヒトユビキチンを出発タンパク質として使用するのであれば(たとえば、酵母のユビキチン)、対応するタンパク質およびアミノ酸位置を互いに割り当てるために、野生型ヒトユビキチン(配列番号1)に与えられたアミノ酸位置を修飾ユビキチンにアライメントしなければならない。各単量体ユビキチンサブユニットの番号付け(およびアライメント)は、同一方法で行われる。すなわち、たとえば、二量体のアライメントは、個々の各サブユニットに対してアミノ酸位置1から開始される。
【0059】
ヘテロ二量体用のビルディングユニットとして使用される本発明に係る単量体型ユビキチンの修飾は、修飾が置換および挿入の両者の組合せを含む場合、合計でアミノ酸の約25%までを占める。ヘテロ二量体用のビルディングユニットとして使用される本発明に係る単量体型ユビキチンの修飾は、修飾が置換のみを含む場合、合計でアミノ酸の約15%、好ましくは10%までを占める。これを考慮すれば、修飾が置換および挿入を含む場合、配列番号1に対して少なくとも75%の修飾単量体型ユビキチンタンパク質の配列同一性が存在する。これを考慮すれば、修飾が置換のみを含む場合、配列番号1に対して少なくとも80%、少なくとも83%、少なくとも85%、少なくとも87%の修飾単量体型ユビキチンタンパク質の配列同一性が存在する。本発明のさらなる実施形態では、アミノ酸レベルの配列同一性は、配列番号1で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%、少なくとも83%、少なくとも85%、少なくとも87%、さらには少なくとも90%または少なくとも93%の配列同一性である。標的への新しい結合の形成に関与する置換のみを考慮するのであれば(生化学的性質に関連する置換ではなく、たとえば、位置45、75、および76の変化である)、アミノ酸レベルの配列同一性は、配列番号1で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも88%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%である。標的への新しい結合の形成に関与する置換および挿入を考慮するのであれば(生化学的性質に関連する置換ではなく、たとえば、位置45、75、および76の変化である)、アミノ酸レベルの配列同一性は、配列番号1で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも80%である。したがって、たとえば、一実施形態では、7個のアミノ酸が置換されてかつ8個のアミノ酸が挿入されて、配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性に相当する新しい結合性を形成する。
【0060】
本発明のさらなる実施形態では、2つの各ユビキチン単量体は、配列番号1の領域2〜8および62〜68から選択される、好ましくは位置6、8、62、63、64、65、および66から選択される5または6または7個のアミノ酸が置換され、かつ追加的に、第1(N末端)の単量体の領域61〜65に、好ましくは位置61〜62または62〜63または63〜64または64〜65に、したがって、前記置換アミノ酸にごく近接する範囲内に、2〜15個のアミノ酸が挿入される。最も好ましいのは、配列番号1の領域2〜8中の置換、および置換と、ユビキチンの少なくとも一方の単量体の配列番号1のアミノ酸領域61〜68中への2〜15個のアミノ酸の挿入と、の組合せである。他の実施形態では、これらの位置で修飾されるユビキチン単量体は、すでに前修飾されたものであり、これは、標的の結合に影響しない。たとえば、より良好な安定性またはタンパク質の化学性を生成するために、さらなる修飾は、アミノ酸75および76にまたはアミノ酸45に置換を含みうる。配列番号1で示される単量体型ユビキチンの少なくとも5個のアミノ酸ただし合計で9、10、11、12、13、14、15個、最大16個までのアミノ酸、最も好ましくは5〜9個のアミノ酸が置換された修飾ユビキチン単量体を取得可能である。追加の2〜15個のアミノ酸が配列に挿入される。一実施形態によれば、標的への新規な結合に関与する8つの置換と8個のアミノ酸の挿入とを有する修飾単量体型ユビキチンを取得可能である(たとえば、結合に影響しないさらなる3個のアミノ酸を修飾可能である)。ユビキチンのアミノ酸の全数を基準にして、これは、約26%の全修飾パーセントに対応する(結合に関与する修飾:約22%)。通常かなり低いパーセントであってもタンパク質のフォールディングを乱すのにすでに十分であるので、これは、きわめて驚くべき予想しえないことであった。
【0061】
表面露出アミノ酸の突然変異誘発のために、入手可能なX線結晶構造に基づいて、これらを同定することが可能である。結晶構造を入手できないのであれば、コンピューター解析を利用した試行により、入手可能な一次構造に対して表面露出アミノ酸および個々のアミノ酸位置の到達性を予測したり、または3Dタンパク質構造をモデリングして、これにより潜在的表面露出アミノ酸に関する情報を取得したりすることが可能である。そのさらなる開示は、たとえば、Vijay−Kumar et al.1987 J.Mol.Biol.194(3):531−44から得ることが可能である。
【0062】
突然変異される、好ましくは置換される表面露出アミノ酸位置は、ランダム突然変異誘発に付され、その後、以前にその取出しに用いたタンパク質をコードするDNAに再組込みされる。この後、所望の結合性を有する突然変異体の選択過程が行われる。「表面露出アミノ酸」とは、周囲溶媒に到達可能なアミノ酸のことである。タンパク質中のアミノ酸の到達性がモデルトリペプチドGly−X−Gly中のアミノ酸の到達性と比較して8%超である場合、アミノ酸は「表面露出」と呼ばれる。これらのタンパク質領域または個々のアミノ酸位置は、それぞれ、本発明に従って選択が行われる潜在的結合パートナーに対する好ましい結合部位である。それに加えて、Caster et al.,1983 Science,221,709−713およびShrake & Rupley,1973 J.Mol.Biol.79(2):351−371(完全開示のために参照により本出願に組み込まれる)を参照されたい。
【0063】
本発明の他の実施形態では、これらの所定の領域内で突然変異されるアミノ酸位置が同定される。次いで、このようにして選択されたアミノ酸位置は、部位指向突然変異誘発によりDNAレベルで突然変異させることが可能であり、すなわち、特定のアミノ酸をコードするコドンが、あらかじめ選択された特定の他のアミノ酸をコードするコドンにより置換され、または置換は、ランダム突然変異誘発の枠内で行われ、この場合、置換されるアミノ酸位置は、規定されるが、そのコドンは、まだ確認されていない新規なアミノ酸をコードする。
【0064】
親タンパク質からそれぞれde novoで生成される人工結合部位の領域内のアミノ酸置換または/およびアミノ酸挿入が異なるユビキチンタンパク質の変異は、それぞれの配列セグメントの標的突然変異誘発により形成可能である。この場合、極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性などの特定の性質を有するアミノ酸を、それぞれ、個別の他の性質を有するアミノ酸により交換または置換することが可能である。置換以外に、「突然変異誘発」および「修飾」および「交換」という用語はまた、挿入も包含する。タンパク質レベルでは、修飾はまた、当業者に公知の方法に従ってアミノ酸側鎖の化学変換により行うことが可能である。
【0065】
ユビキチンの突然変異誘発方法
それぞれの配列セグメントの突然変異誘発の出発点として、たとえば、当業者に公知の方法により調製、改変、および増幅が可能なユビキチンのcDNAを使用することが可能である。一次配列の比較的小さい領域内のユビキチンの部位特異的改変では(約1〜3アミノ酸)、市販の試薬および方法が利用可能である(“Quik Change”,Agilent;“Mutagene Phagemid in vitro Mutagenesis Kit”,Bio−Rad)。より大きい領域の部位指向突然変異誘発では、たとえば、当業者であればポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の特定の実施形態を利用可能である。この目的では、たとえば、突然変異を導入するために、所望の位置に変性塩基対組成を有する合成オリゴデオキシヌクレオチドの混合物を使用することが可能である。これはまた、ゲノムDNA中に天然に存在しない塩基対アナログたとえばイノシンを用いることによっても達成可能である。ユビキチンの突然変異誘発の出発点は、たとえば、ユビキチンのcDNAさらにはゲノムDNAでありうる。さらに、ユビキチンタンパク質をコードする遺伝子はまた、合成的に調製することも可能である。
【0066】
とくに、部位特異的突然変異誘発方法、ランダム突然変異誘発方法、PCRを用いた突然変異誘発方法、または類似の方法を含めて、それ自体公知のさまざまな方法を突然変異誘発に利用可能である。
【0067】
本発明の好ましい実施形態では、突然変異されるアミノ酸位置は、あらかじめ決定される。修飾されるアミノ酸の選択は、修飾すべきアミノ酸に関する本請求項1に記載の限定要件を満たすように行われる。いずれの場合も、それ自体公知の方法を用いてスクリーニングされるさまざまな突然変異体のライブラリーは、一般には確立されている。一般的には、修飾されるユビキチンタンパク質に関して十分な構造情報を入手可能であるので、修飾されるアミノ酸の事前選択は、とりわけ容易に行うことが可能である。
【0068】
標的突然変異誘発方法さらにはより長い配列セグメントの突然変異誘発方法、たとえば、PCRを利用した方法、化学的突然変異誘発による方法、または細菌ミューテーター株を用いた方法はまた、先行技術に属し、本発明に従って使用可能である。
【0069】
本発明の一実施形態では、突然変異誘発は、アミノ酸コドンNNKを有するDNAオリゴヌクレオチドのアセンブリーにより行われる。しかしながら、他のコドン(トリプレット)を使用することも可能であることを理解すべきである。突然変異は、βシート構造が好ましくは維持されるように行われる。一般的には、突然変異誘発は、タンパク質の表面上に露出した安定なβシート領域の外側で行われる。それは、部位特異的突然変異誘発およびランダム突然変異誘発の両方を含む。一次構造中の比較的小さい領域を含む部位特異的突然変異誘発は(約3〜5個のアミノ酸)、Agilent(登録商標)(QuikChange(登録商標))またはBio−Rad(登録商標)(Mutagene(登録商標)ファージミドin vitro突然変異誘発キット)の市販のキットを用いて引き起こすことが可能である(米国特許第5,789,166号明細書、米国特許第4,873,192号明細書を参照されたい)。
【0070】
より伸長された領域を部位特異的突然変異誘発に付す場合、DNAカセットを調製しなければならず、この場合、突然変異される領域は、突然変異位置および不変位置を含有するオリゴヌクレオチドのアセンブリーにより得られる(Nord et al.,1997 Nat.Biotechnol.8,772−777、McConell and Hoess,1995 J.Mol.Biol.250,460−470)。ランダム突然変異誘発は、ミューテーター株中でのDNAの増殖によりまたはPCR増幅(エラープローンPCR)により導入可能である(たとえば、Pannekoek et al.,1993 Gene 128,135 140)。この目的では、増大された誤り率を有するポリメラーゼが使用される。導入される突然変異誘発の程度を増強するためにまたはさまざまな突然変異を組み合わせるために、それぞれ、DNAシャフリングを利用してPCR断片の突然変異を組み合わせることが可能である(Stemmer,1994 Nature 370,389−391)。酵素に対するこれらの突然変異誘発戦略のレビューは、Kuchner and Arnold (1997)TIBTECH 15,523−530のレビューに提供されている。また、このランダム突然変異誘発を所定のDNA領域で行うために、突然変異誘発に使用されるDNAカセットを構築しなければならない。
【0071】
ランダム修飾は、当技術分野で十分に確立された周知の方法により行われる。「ランダム修飾されたヌクレオチド配列またはアミノ酸配列」とは、いくつかの位置で性質を予測できないヌクレオチドまたはアミノ酸による挿入、欠失、または置換に付されたいヌクレオチド配列またはアミノ酸配列のことである。多くの場合、複数のまたは1つの挿入されたランダムヌクレオチド(アミノ酸)配列は、「完全にランダム」であろう(たとえば、ランダム合成またはランダムPCR媒介突然変異誘発の結果として)。しかしながら、ランダム配列はまた、一般的機能特性(たとえば、発現産物のリガンドとの反応性)を有する配列を含みうるし、またはランダム配列は、たとえばさまざまなアミノ酸が一様分布されて最終発現産物が完全にランダムな配列であるという意味でランダムでありうる。
【0072】
ベクター中にランダム断片を適正に導入するために、本発明によれば、部位指向PCR媒介突然変異誘発の原理によりランダムヌクレオチドを発現ベクター中に導入することが好ましい。しかしながら、他の選択肢が当業者に公知であり、たとえば、合成ランダム配列ライブラリーをベクター中に挿入することも可能である。
【0073】
たとえば、融合PCRにより突然変異体またはライブラリーを作製するために、3つのPCR反応を行いうる。2つのPCR反応は、部分的にオーバーラップする中間断片を作製するために行われる。第3のPCR反応は、中間断片を融合するために行われる。
【0074】
ライブラリーまたは突然変異体の構築方法は、所望の制限部位の周りの第1の一組のプライマー(制限部位プライマー)すなわちフォワードおよびリバースの制限プライマー、ならびにたとえば対象のコドンの上流および下流の周りの第2の一組のプライマー(突然変異原性プライマー)すなわちフォワードおよびリバースの突然変異原性プライマーを構築することを含みうる。一実施形態では、対象のコドンのすぐ上流および下流のプライマーが構築される。制限プライマーおよび突然変異原性プライマーは、第1の中間断片および第2の中間断片を構築するために使用される。2つのPCR反応では、これらの線状中間断片を生成する。これらの各線状中間断片は、少なくとも1つの対象の突然変異コドン、フランキングヌクレオチド配列、および消化部位を含む。第3のPCR反応では、2つの中間断片ならびにフォワードおよびリバースの制限プライマーを用いて融合線状生成物を生成する。線状生成物の対向するまだ未結合の末端を制限酵素により消化して線状生成物上に付着末端を形成する。DNAリガーゼを用いて線状生成物の付着末端を融合して環状生成物(たとえば、環状ポリヌクレオチド配列)を生成する。
【0075】
中間断片を構築するために、二組のフォワードおよびリバースのプライマーの設計および合成を行う。第1の一組は、制限酵素消化部位をそのフランキングヌクレオチド配列と一緒に含有し、第2の一組は、少なくとも1つの対象の変異コドンを含有する(突然変異原性プライマー)。変異体の数が所望の変異アミノ酸修飾の数に依存することは、当業者であればわかるであろう。この過程で他の制限酵素を使用すれば、それに応じて、この消化部位の厳密な位置ならびにフォワードおよびリバースのプライマーの対応する配列を改変しうると、本発明者は考えている。他の方法を当技術分野で利用可能であり、代わりに使用しうる。
【0076】
本発明に係る足場中に導入される発現産物のランダム断片を有する以外に、多くの場合、少なくとも1つの融合パートナーをコードするヌクレオチド配列に融合されたランダムヌクレオチド配列を有することにより、ランダム配列を融合パートナーに結合することが必要である。そのような融合パートナーにより、たとえば、発現産物の発現および/または精製/単離および/またはさらなる安定化を促進することが可能である。
【0077】
単量体型ユビキチンの領域2〜8および62〜68から、好ましくは位置2、4、6、8、62、63、64、65、66、および/または68から選択されるアミノ酸の本発明の一例に係るランダムなアミノ酸置換またはアミノ酸挿入は、挙げられた位置がタンパク質のアミノ末端またはカルボキシ末端の近くに局在化されているので、PCRを利用してとくに容易に行うことが可能である。したがって、操作されるコドンは、対応するcDNAストランドの5’末端および3’末端にある。したがって、突然変異される位置2、4、6、および/または8のコドン以外の突然変異原性PCR反応に使用される第1のオリゴデオキシヌクレオチドの配列は、ユビキチンのアミノ末端のコードストランドに対応する。したがって、突然変異される位置62、63、64、65、66、および/または68のコドン以外の第2のオリゴデオキシヌクレオチドは、少なくとも部分的には、カルボキシ末端のポリペプチド配列の非コードストランドに対応する。両方のオリゴデオキシヌクレオチドを利用して、単量体型ユビキチンをコードするDNA配列を鋳型として用いてポリメラーゼ連鎖反応を行うことが可能である。
【0078】
さらに、たとえば制限エンドヌクレアーゼに対する認識配列を導入するフランキングオリゴデオキシヌクレオチドを用いて、得られた増幅産物を他のポリメラーゼ連鎖反応に追加することが可能である。本発明によれば、所定の標的への結合性を有するユビキチン変異体を単離するために、得られた遺伝子カセットを後続の選択手順で使用するのに好適なベクター系中に導入することが好ましい。
【0079】
ユビキチン中の修飾領域
修飾領域は、基本的には、結合パートナーとしてのヒトユビキチンの前記非天然標的タンパク質、たとえばVEGF、特定的にはVEGF−Aまたはそのアイソフォームに到達可能であるかに関して、およびタンパク質の全体構造が修飾に対する耐容性を示すと推定されるかに関して、選択可能である。
【0080】
とくに好ましいのは、ユビキチン単量体の領域2〜8および62〜68の表面露出アミノ酸の1つ以上の置換である。好ましいのは、ユビキチン単量体、好ましくは哺乳動物(ヒト)ユビキチン単量体の次の位置、すなわち、配列番号1の位置2、4、6、8、62、63、64、65、66、68のアミノ酸またはこれらの位置に対応するアミノ酸から選択される置換である。任意選択で、単量体1つあたり5、6、7、8、9個の前記アミノ酸残基は、さらなるアミノ酸残基の追加と組み合わせて、たとえば、好ましくはN末端の単量体型ユビキチン中へのおよび前記置換アミノ酸にごく近接する2〜15個のアミノ酸、好ましくは5〜10アミノ酸、好ましくは8個のアミノ酸の挿入と組み合わせて、修飾される。前記置換アミノ酸にごく近接する2〜15個のアミノ酸、好ましくは5〜10個のアミノ酸、好ましくは8個のアミノ酸の挿入の利点は、伸長構造、任意選択でループ構造を形成することによる非天然標的に対する結合面の伸長である。
【0081】
以上の修飾を行った後、本発明者らは、実施例に記載の修飾二量体型ユビキチン配列が非天然タンパク質標的(ここではVEGF−A)に非常に高い親和性および特異性を有して結合することを見いだした。
【0082】
追加の挿入断片を有する修飾ユビキチン二量体
標的に対する結合活性を呈してKd=10
−7〜10
−12Mで非天然タンパク質標的に結合する本発明に係るユビキチン二量体は、
(1)第1の単量体ユニット中に、位置2、4、6、8、62、63、64、65、66、68に対応するかつそれらの位置から選択される5、6、7、8、または9個のアミノ酸の置換、
(2)第2の単量体ユニット中に、アミノ酸位置2、4、6、8、62、63、64、65、66、68に対応するかつそれらの位置から選択される5、6、7、8、または9個の置換、および
(3)そのほかに、少なくとも一方の単量体ユビキチンユニット中に、前記置換にごく近接する2〜15個のアミノ酸の挿入
を示す。
【0083】
一実施形態では、融合タンパク質は、第1のユビキチン単量体の位置2、4、6、8、62〜66、68の置換と、たとえば、野生型ヒトユビキチンに対応する次のアミノ酸残基間61〜62、62〜63、63〜64、および/または64〜65に挿入された2〜15個のアミノ酸と、第2のユビキチン単量体の位置2、4、6、8、62〜66、68のアミノ酸残基の置換と、を有する前記ユビキチン単量体の遺伝子融合ヘテロ二量体、好ましくは
図1に示されるものである。
【0084】
好ましいのは、リガンドに対する結合タンパク質を生成する二量体型ユビキチン中の修飾、すなわち、
(1)第1の単量体ユニット中の少なくとも位置6、8、62、63、64、65、66の置換、
(2)第1の単量体中への8個のアミノ酸の挿入、
(3)第2の単量体ユニット中の少なくとも位置6、8、62、63、64、65、66、
である。好ましいのは、単量体型ユビキチンのc末端領域内への8個までのアミノ酸の挿入である。より好ましいのは、第4のβシートにごく近接する位置への挿入である(アミノ酸位置65の前)。最も好ましいのは、前記置換にごく近接する、好ましくはアミノ酸61および62、62および63、63および64、64および65の間、最も好ましくはアミノ酸61および62の間への挿入である。
【0085】
最も好ましいのは、リガンドたとえばVEGF−Aに対する結合タンパク質を生成する以下の修飾である(変異体40401)(配列番号2)(
図1a参照)
(4)第1の単量体ユニット中の少なくともK6Y、L8D、Q62S、K63W、E64M、S65P、およびT66Aの置換、
(5)第1の単量体中のアミノ酸61および62の間へのアミノ酸残基DVAEYLGIの8個のアミノ酸の挿入、
(6)第2の単量体ユニット中の少なくともK6A、L8D、Q62R、K63D、E64T、S65V、およびT66S
【0086】
置換および挿入を有するさらなる変異を表1および
図1に示す。
【0087】
表1は、第1の単量体中への8個のアミノ酸の挿入を有するヘテロ二量体型ユビキチン系VEGF−A結合タンパク質中の好ましいアミノ酸置換を示している(この表に挿入は示されていない)。濃灰色(位置6、8、62、63、64、65、66):N末端(第1)のユビキチン単量体中の置換、薄灰色(位置6’、8’、62’、63’、64’、65’、66’):結合タンパク質のC末端(第2)のユビキチン単量体中の置換。他の位置のさらなる置換は、示されていないが、可能である。それに加えて、非天然標的への結合に関係しない置換、たとえば位置45、75、および76の置換は、示されていない。「−」は、この位置に置換が存在せずに野生型アミノ酸が残存することを示している。完全な配列情報に関しては、
図1a〜iを参照されたい。
【0088】
これらのVEGF−A結合変異体のコンセンサス配列として(表1および
図1に示されるとおり)、以下のコンセンサス配列が観測された(より大きい文字は、9つの変異体に対して高度の同一性を示す)(表2)。
【0089】
したがって、第1(N末端)の単量体では、コンセンサス置換は、次のもの、すなわち、K6Y、L8D、Q62S、K63W、E64M、S65P、T66Aである。挿入は、第1の単量体中の第4(C末端)のβシートにごく近接して、したがって位置62〜66の置換アミノ酸にごく近接して(N末端方向に)、好ましくはアミノ酸61および62、62および63、63および64、64および65の間、最も好ましくはアミノ酸61および62の間に位置する。二量体型ユビキチンの第2の単量体ユニットは、さまざまな置換を示し、これらの実施形態では、5〜7個のアミノ酸が、配列番号1の位置6、8、62、63、64、65、および/または66で置換される。
【0090】
所与の標的に対する新規な結合親和性を有するタンパク質を生成する置換および挿入を有する変異体は、
図1ならびに表1、表2、および表3に示される。
【0091】
各単量体中の以上に示されたこれらの代替置換は、得られる修飾ユビキチンヘテロ二量体がKd=10
−7〜10
−12MのVEGF−Aへの特異的結合親和性を示してVEGF−Aへの結合活性を呈するかぎり、かつユビキチンタンパク質の構造安定性が破壊されたり妨害されたりしないかぎり、なんら制限されることなく互いに組合せ可能である。本発明に係るタンパク質の結合親和性は、表3に示される。VEGF−Aアイソフォーム121および165に対する親和性データが示される。ELISAアッセイおよびBiacoreアッセイからデータを得た。細胞増殖アッセイによりさらなるデータを得た。アッセイはすべて、実施例の節でさらに説明される。
【0092】
本発明のさらなる態様では、本発明はまた、以下でさらに説明されるように、タンパク質または修飾ユビキチン融合タンパク質またはコンジュゲートをコードするポリヌクレオチドを包含する。そのほかに、前記ポリヌクレオチドを含むベクターが本発明に包含される。
【0093】
本発明の他の態様では、本明細書に記載の二量体型修飾ユビキチンタンパク質もしくは融合タンパク質もしくはコンジュゲート、および/または本発明に係る前記組換えタンパク質もしくは融合タンパク質もしくはコンジュゲートをコードするポリヌクレオチド、または前記ポリヌクレオチドを含有するベクター、を含む宿主細胞が包含される。
【0094】
結合特異性(解離定数)
本発明に係るタンパク質の結合特異性は、非修飾タンパク質に対して以上に規定されたようにKdで与えられる。本発明によれば、「Kd」という用語は、本発明に従って10
−7〜10
−12Mの範囲内にある特異的結合親和性を規定する。10
−5M以下の値は、定量可能な結合親和性とみなしうる。用途に依存して、10
−7M〜10
−11Mの値は、たとえば、クロマトグラフィー用途に好適であり、10
−9〜10
−12Mの値は、たとえば、診断用途または治療用途に好適である。さらに好ましい結合親和性は、10
−7〜10
−10M、好ましくは10
−11Mまでの範囲内である。
【0095】
結合親和性を決定する方法は、それ自体公知であり、たとえば、次の方法、すなわち、ELISA、表面プラズモン共鳴(SPR)に基づく技術(たとえば、Biacore(登録商標)により提供されるもの)、蛍光分光法、等温滴定熱量測定(ITC)、分析用超遠心分離、FACSから選択可能である。
【0096】
以上の修飾を行った後、本発明者らは、高い親和性(10
−10MまでのKd値)を有して標的に結合する実施例に記載のアミノ酸修飾ユビキチン配列を見いだした。
【0097】
融合タンパク質およびタンパク質コンジュゲート
他の好ましい実施形態では、本発明は、治療活性(医薬活性)成分または診断活性成分と融合されたまたはそれにコンジュゲートされた本発明に係る結合タンパク質を含む融合タンパク質またはコンジュゲートに関する。
【0098】
またさらなる態様では、本発明は、診断活性成分または治療活性(医薬活性)成分と融合されたまたはそれにコンジュゲートされた本発明に係るヘテロ二量体型結合タンパク質を含む融合タンパク質またはコンジュゲートに関する。本発明に係る融合タンパク質またはコンジュゲートは、非ポリペプチド成分、たとえば、非ペプチドリンカー、非ペプチドリガンド、たとえば、治療または診断に関連する放射性核種を含みうる。また、小さい有機系化合物または非アミノ酸系化合物、たとえば、糖、オリゴサッカリドまたはポリサッカリド、脂肪酸なども含みうる。本発明の好ましい一実施形態では、ヘテロユビキチン系結合分子は、共有結合または非共有結合により治療または診断に関連する性質を有するタンパク質またはペプチドまたは化学化合物と融合されるかまたはそれにコンジュゲートされる。
【0099】
本発明の一実施形態は、医薬活性成分または診断活性成分と融合されたまたはそれにコンジュゲートされた二量体型修飾ユビキチンタンパク質を含む融合タンパク質またはコンジュゲートを包含する。ただし、前記医薬活性成分は、任意選択で、サイトカイン、ケモカイン、細胞傷害性化合物、ユビキチン系結合タンパク質、もしくは酵素であるか、または前記診断活性成分は、蛍光性化合物、光増感剤、もしくは放射性核種から選択される。
【0100】
本明細書で用いられる「コンジュゲート」という用語は、共有結合または分子間相互作用のいずれかにより治療分子または診断分子に結合された、たとえば、化学的方法または他の好適な方法によりタンパク質または非タンパク質の化学物質に結合された多量体型修飾ユビキチンを記述する。コンジュゲート分子は、たとえば、ペプチドリンカー配列または担体分子を介して1つもしくは複数の部位で結合可能である。
【0101】
「融合タンパク質」という用語は、機能性成分またはエフェクター成分に融合された本発明に係る結合タンパク質または非タンパク質タンパク質を含む融合タンパク質を意味する。一実施形態では、本発明は、機能性ドメインまたはエフェクタードメインに融合された標的化部分として本発明に係るヘテロ二量体型結合タンパク質を含む融合タンパク質に関する。本発明に係る融合タンパク質は、非ポリペプチド成分、たとえば、非ペプチドリンカー、非ペプチドリガンド、治療または診断に関連する放射性核種を含みうる。また、小さい有機系化合物または非アミノ酸系化合物、たとえば、糖、オリゴサッカリドまたはポリサッカリド、脂肪酸なども含みうる。共有結合または非共有結合により対象のタンパク質を担体に結合する方法は、当技術分野で周知であるので、ここではこれ以上詳細に説明しない。
【0102】
本明細書で用いられる「融合」という用語は、共有結合または分子相互作用のいずれかにより治療分子または診断分子、たとえば、タンパク質または非タンパク質の化学物質に融合された多量体修飾ユビキチンを記述する。他のタンパク質分子またはペプチド分子との融合は、好ましくは、遺伝学的手段により行われる。しかしながら、「融合」および「コンジュゲート」という用語を限定する鮮明な境界線は、存在しないので、両者は、オーバーラップする可能性があり、こうした理由から、両方の用語は、同義的に用いられる。
【0103】
以下では、所与の標的たとえばVEGF−Aまたはそのアイソフォームへの結合能力を有するユビキチン系融合タンパク質またはコンジュゲートの取得方法に関するいくつかの例を与える。
a)ユビキチン中に存在するリシン残基を介するタンパク質のコンジュゲーション、
b)システイン残基を介するヘテロ二量体型ユビキチン系結合タンパク質のコンジュゲーション、
−C末端または任意の他の位置に位置しうる(たとえば、アミノ酸残基24または57)、マレイミド選択性成分とのコンジュゲーション、
c)ペプチド性またはタンパク質原性のコンジュゲーション−遺伝子融合(好ましいC末端またはN末端)、
d)「タグ」に基づく融合−標的タンパク質のC末端またはN末端のいずれかに位置するタンパク質またはペプチド。融合「タグ」、たとえば、ポリヒスチジン(とくに放射性標識に適合する)。
【0104】
共有結合または非共有結合により対象のタンパク質を担体に結合するこれらのおよび他の方法は、当技術分野で周知であるので、ここではこれ以上詳細に説明しない。
【0105】
本発明のさらなる実施形態では、本発明に係るヘテロ二量体型ユビキチン系結合タンパク質は、人工アミノ酸を含有しうる。
【0106】
本発明に係る融合タンパク質またはコンジュゲートのさらなる実施形態では、好ましくは、前記活性成分は、γ放射性同位体、好ましくは、99
Tc、123
I、111
Inの群、もしくはポジトロン放射体、好ましくは18
F、64
Cu、68
Ga、86
Y、124
Iの群、もしくはβ放射体、好ましくは131
I、90
Y、177
Lu、67
Cuの群、もしくはα放射体、好ましくは213
Bi、211
Atの群のいずれかの放射性核種の群、または蛍光染料、好ましくはAlexa Fluor染料もしくはCy染料(Berlier et al.,J.Histochem.Cytochem.51(12):1699−1712,2003)、または光増感剤から選択される成分である。
【0107】
さらなる実施形態は、血清中半減期を変調する成分、好ましくは、ポリエチレングリコール、アルブミン結合ペプチド、および免疫グロブリンもしくは免疫グロブリンフラグメントからなる群から選択される成分をさらに含む本発明に係る融合タンパク質に関する。
【0108】
標的に特異的に結合する本発明に係るタンパク質の使用
本発明に係る修飾ユビキチン結合タンパク質は、たとえば、in vitroまたはin vivoで使用するための診断手段さらには治療手段を作製するために使用されるものとする。本発明に係るタンパク質は、たとえば、直接的エフェクター分子(モジュレーター、アンタゴニスト、アゴニスト)または抗原認識ドメインとしての使用可能である。
【0109】
本発明に係る医薬組成物は、癌たとえば乳癌もしくは結腸癌またはVEGF−Aが豊富な任意の他の腫瘍疾患の治療に使用可能である。それに加えて、VEGF−A結合タンパク質は、加齢黄斑変性(AMD)や糖尿病黄斑浮腫(DME)などの眼疾患に使用可能である。
【0110】
組成物は、治療上有効用量を含有するように適合化される。投与される用量は、治療される生物、疾患のタイプ、患者の年齢および体重、ならびにそれ自体公知のさらなる因子に依存する。
【0111】
本発明は、二量体型修飾ユビキチンタンパク質または修飾ユビキチン融合タンパク質またはコンジュゲートまたはそれらの組合せと、薬学的に許容可能な担体と、を含有する医薬組成物を包含する。本発明はさらに、二量体型修飾ユビキチンタンパク質または融合タンパク質またはコンジュゲートと、診断的に許容可能な担体と、を含む診断剤を包含する。組成物は、薬学的または診断的に許容可能な担体を含有し、任意選択で、それ自体公知の助剤および賦形剤をさらに含有しうる。これらは、限定されるものではないが、たとえば、安定化剤、界面活性剤、塩、緩衝剤、着色剤などを包含する。
【0112】
医薬組成物は、液体製剤、クリーム剤、局所適用に供されるローション剤、またはエアロゾル剤の形態、粉末剤、顆粒剤、錠剤、坐剤、またはカプセル剤の形態、エマルジョン剤またはリポソーム製剤の形態をとりうる。組成物は、好ましくは、無菌、非発熱原性、かつ等張性であり、しかもそれ自体公知の薬学的に従来型のかつ許容可能な添加剤を含有する。米国薬局方またはRemington’s Pharmaceutical Sciences,Mac Publishing Company(1990)の規制をさらに参照されたい。
【0113】
人間医学的および獣医学的な治療および予防の分野では、本発明に従って修飾された少なくとも1種の二量体型VEGF−A結合ユビキチンタンパク質を含有する薬学的に有効な医薬は、それ自体公知の方法により調製可能である。ガレヌス製剤に依存して、これらの組成物は、注射もしくは輸液により非経口的に、全身的に、経直腸的に、腹腔内に、筋肉内に、皮下に、経真皮的に、または他の従来から利用されている適用方法により投与可能である。眼疾患治療用途では、滴剤として眼内への直接適用が好ましい。医薬製剤のタイプは、治療される疾患のタイプ、疾患の重症度、治療される患者、および医学分野の当業者に公知の他の因子に依存する。
【0114】
本発明に係る「医薬組成物」は、さまざまな活性成分と希釈剤および/もしくは担体とが互いと混合されて含まれる組成物の形態で存在しうるか、または活性成分が部分的にもしくは完全に個別の形態で存在する組合せ製剤の形態で摂取されうる。そのような組合せまたは組合せ製剤の例は、キットオブパーツである。
【0115】
さらなる実施形態では、医薬組成物は、本発明に係る組換えユビキチンタンパク質/融合タンパク質に対しておよび1種以上の化学療法剤に対して分離された要素を提供するキットオブパーツの形態である。
【0116】
またさらなる態様では、本発明は、たとえば腫瘍関連タンパク質たとえばVEGF−Aまたはそのアイソフォームに特異的に結合する本発明に係る修飾ユビキチンを診断的に許容可能な担体と共に含む診断用組成物を開示する。たとえば腫瘍関連分子の発現増大は、腫瘍悪性度に関連付けられるので、前記腫瘍特異的標的分子への結合能を有する修飾ユビキチンは、たとえば患者のVEGFに関する情報を得るために、非侵襲性イメージング用の診断剤として使用可能である。さらに、たとえばVEGF−Aおよびそのアイソフォームへの結合能を有する修飾ユビキチンは、抗血管新生治療に対する患者の反応を評価するために使用可能である。そのサイズが小さくかつ親和性が高いので、ユビキチン足場に基づく放射性標識タンパク質は、たとえばVEGF画像診断剤として使用するうえで重要性が高い。
【0117】
本発明のさらなる態様では、医学的な治療方法または診断方法で使用するための組換えタンパク質および/または融合タンパク質またはコンジュゲートが包含される。
【0118】
本発明に係る二量体型結合タンパク質の製造方法
本発明に係る結合タンパク質は、明快な有機合成戦略、固相支援合成技術などの多くの従来型の周知の技術のいずれかによりまたは市販の自動合成装置により、調製されうる。一方、従来型の組換え技術単独でまたは従来型の合成技術との組合せにより、調製することも可能である。
【0119】
本発明の一態様では、新規な結合性を有する組換え修飾ユビキチンタンパク質の生成方法が提供される。この方法は、少なくとも以下のステップ、すなわち、
a)ユビキチンタンパク質を提供するステップと、
b)潜在的標的としてヒトユビキチンに対する非天然標的タンパク質を提供するステップと、
c)配列番号1で示されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する単量体型タンパク質が得られるように前記ユビキチンタンパク質を修飾するステップであって、少なくとも5個かつ多くとも8個のアミノ酸が、位置2、4、6、8、62、63、64、65、66、および/または68に対応するかつそれらの位置から選択されるアミノ酸の置換により修飾され、かつ2〜15個のアミノ酸または6〜10個のアミノ酸または7〜9個のアミノ酸または8個のアミノ酸が、前記単量体の少なくともの1つに挿入され、前記挿入が、少なくとも1つの単量体ユビキチンユニット中の前記アミノ酸置換内またはそれにごく近接して、任意選択で前記位置から0、1、2、または3アミノ酸離れて、好ましくはアミノ酸61および62、62および63、63および64、64および65の間に、最も好ましくはアミノ酸61および62の間に存在するものとするステップと、
d)異なって修飾された前記単量体型タンパク質ユニットの2つを融合するステップと、
e)前記修飾ヘテロ二量体型ユビキチンタンパク質を前記標的タンパク質に接触させるステップと、
f)10
−7〜10
−12Mの特異的結合親和性を有して前記標的に結合する修飾ヘテロ二量体型ユビキチンタンパク質をスクリーニングするステップと、任意選択で
g)f)の条項を満たす前記修飾ヘテロ二量体型ユビキチンタンパク質を単離するステップと、
を含む。
【0120】
本発明の他の態様では、修飾ユビキチンタンパク質の同定方法が提供される。この方法は、少なくとも以下のステップ、すなわち、
a)単量体型ユビキチンタンパク質に由来する異なって修飾されたヘテロ二量体型ユビキチンタンパク質の集団を提供するステップであって、前記集団が、頭−尾配置で結合一体化された2つの異なって修飾されたユビキチン単量体を含むヘテロ二量体型ユビキチンタンパク質を含み、前記多量体タンパク質の各単量体が、配列番号1の位置2、4、6、8、62、63、64、65、66、および68に対応するかつそれらの位置から選択される5、6、7、または8個のアミノ酸の置換により修飾され、かつさらなる2〜15個のアミノ酸が、少なくとも1つの単量体ユビキチンユニット中の前記アミノ酸置換内またはそれにごく近接して、任意選択で配列番号1の位置2、4、6、8、62、63、64、65、66、および68に対応するかつそれらの位置から選択される前記置換アミノ酸から0、1、2、または3アミノ酸離れて、好ましくはアミノ酸61および62、62および63、63および64、64および65の間に、最も好ましくはアミノ酸61および62の間に挿入されるものとするステップと、
b)潜在的標的としてユビキチンの非天然リガンドタンパク質を提供するステップと、
c)前記ヘテロ二量体型修飾ユビキチンを前記標的タンパク質に接触させるステップと、
d)10
−7〜10
−12Mの特異的結合親和性を有して前記標的タンパク質に結合するヘテロ二量体型修飾ユビキチンを同定するステップと、任意選択で
e)前記結合親和性を有する前記ヘテロ二量体型修飾ユビキチンを単離するステップと、
を含む。
【0121】
さらなる実施形態は、以下のステップ、すなわち、
a)ヘテロ二量体型修飾ユビキチンを提供するステップと、
b)前記修飾されたヘテロ二量体型修飾ユビキチンタンパク質を医薬活性成分および/または診断活性成分に融合またはコンジュゲートするステップと、
を含む、ヘテロ二量体型融合タンパク質またはコンジュゲートの生成方法を包含する。
【0122】
さらなる実施形態は、第1の態様で規定されたタンパク質の調製方法を包含する。前記方法は、以下のステップ、すなわち、
(a)第1の態様で規定されたタンパク質をコードする核酸を調製するステップと、
(b)前記核酸を発現ベクター中に導入するステップと、
(c)前記発現ベクターの宿主細胞内に導入するステップと、
(d)宿主細胞を培養するステップと、
(e)宿主細胞を融合タンパク質が前記ベクターから発現される培養条件下に付すことにより、第1の態様で規定されたタンパク質を生成するステップと、
(f)任意選択で、工程(e)で生成されたタンパク質を単離するステップと、
を含む。
【0123】
一実施形態では、工程(e)で生成されるタンパク質は、封入体の形態をとる。さらなる好ましい実施形態では、この方法はさらに、次のステップ、すなわち、封入体を単離するステップと、前記封入体を可溶化させることにより可溶性融合タンパク質を取得するステップと、少なくとも2つのクロマトグラフィーステップにより前のステップで得られた可溶性融合タンパク質をさらに精製するステップと、を含む。好適なクロマトグラフィーステップは、サイズ排除クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、および陽イオン交換クロマトグラフィーを含むが、これらに限定されるものではない。
【0124】
任意選択で、修飾は、原核生物もしくは真核生物においてまたはin vitroでDNAレベルの遺伝子工学操作および修飾タンパク質の発現上より行われうる。さらなる実施形態では、前記修飾ステップは、化学合成ステップを含む。本発明の一態様では、異なって修飾されたタンパク質の集団は、異なって修飾された単量体型ユビキチンタンパク質をそれぞれコード化する2つのDNAライブラリーを遺伝子融合することにより得られる。またさらなる態様では、前記方法は、前記修飾二量体型ユビキチンタンパク質が診断成分と融合されるように、または前記組換え修飾二量体型ユビキチンタンパク質が前記診断成分を介して生成されるように、適合化される。本発明によれば、修飾タンパク質はさらに、化学合成により調製可能である。この実施形態では、次いで、請求項1に記載のステップc)〜dが一工程で行われる。
【0125】
さらなる態様では、本発明は、本発明に係るヘテロ二量体型ユビキチンタンパク質の提供の根底をなす、以上に規定された修飾単量体型ユビキチンタンパク質をコードするDNAを含有するライブラリーに関する。またさらなる本発明の態様では、以上に明記された2つのライブラリーを融合することにより得られるDNAを含有する融合ライブラリーが提供され、各ライブラリーは、ホモ二量体型またはヘテロ二量体型のユビキチン融合タンパク質が得られるように等しくまたは異なって修飾されたユビキチン単量体をコードし、その単量体は、頭−尾配置で結合一体化され、前記ライブラリーは、リガンドに対する結合活性を呈するユビキチンのホモ二量体型またはヘテロ二量体型の融合タンパク質をコードする。前記結合一体化は、当業者に公知のいずれか1つのリンカーまたは本明細書に記載のリンカーのいずれかを用いて行われる。
【0126】
実施例1では、複合ライブラリーの作製を概説する。しかしながら、そのようなライブラリーの品質に関しては、注意しなければならない。足場技術におけるライブラリーの品質は、まず第一に、その複雑性(個々の変異体の数)さらには機能性(得られる候補の構造完全性およびタンパク質の化学的完全性)に依存する。しかしながら、両方の特徴は、互いに悪影響を及ぼし合って、足場上の修飾位置の数を増加させることによりライブラリーの複雑さを増大させると、変異体のタンパク質化学特性の劣化を招きかねない。この結果、溶解性低下、凝集、および/または低収率がもたらされうる。この理由は、エネルギー的に有利なタンパク質パッケージングを有する天然足場からの偏位の増大にある。したがって、標的に対して最適化されるようにできるかぎり多くの変異を元の配列中に導入する極限位置と、好ましくないタンパク質化学効果が回避されるようにできるかぎり多くの元の一次配列を保存する極限位置と、の間で、そのような足場ライブラリーを好適に構築するようにバランスをとる。本開示にはまた、本発明の態様または実施形態を考慮して本明細書に記載の特徴の考えられる各組合せも包含されることに、留意されたい。
【0127】
結合親和性を有する修飾ユビキチンタンパク質の選択および結合親和性に関与する修飾アミノ酸の決定
たとえば、各単量体ユビキチンユニット(ユビキチン単量体)中の所定のアミノ酸を異なって修飾することにより、二量体型修飾ユビキチンタンパク質をコードする少なくとも2つの異なるDNAライブラリーを確立した後、これらのライブラリーは、ヘテロ二量体型修飾ユビキチンタンパク質をコードするDNA分子が得られるように、たとえばリンカー技術により、遺伝子的に融合される。これらのライブラリーのDNAは、タンパク質の形態に発現され、それにより得られた修飾二量体型タンパク質は、本発明に従ってリガンドVEGF−Aに接触させると、任意選択で、結合親和性が存在すれば、パートナーとの相互の結合が可能になる。
【0128】
ホモ二量体型またはヘテロ二量体型のユビキチンタンパク質に対して接触プロセスおよびスクリーニングプロセスがあらかじめ行われることが、本発明のきわめて重要な態様である。このプロセスは、所与の標的への結合活性を提供するユビキチンタンパク質のスクリーニングを可能にする。
【0129】
本発明に係る接触は、好ましくは、好適な提示および選択方法を利用して、たとえば、ファージディスプレイ法、リボソームディスプレイ法、mRNAディスプレイ法、または細胞表面ディスプレイ法、酵母表面ディスプレイ法、もしくは細菌表面ディスプレイ法、好ましくはファージディスプレイ法を利用して行われる。完全な開示のために、次の参照文献、すなわち、Hoess,Curr.Opin.Struct.Biol..3(1993),572−579、Wells and Lowmann,Curr.Opin.Struct.Biol.2(1992),597−604、Kay et al.,Phage Display of Peptides and Proteins−A Laboratory Manual(1996),Academic Pressも参照されたい。
【0130】
以上に挙げられた方法は、当業者に公知であり、その変法を含めて、本発明に従って使用可能である。修飾タンパク質が所定の結合パートナーに対して定量可能な結合親和性を有するかの判定は、本発明に従って、好ましくは、次の方法、すなわち、ELISA、プラズモン表面共鳴分光法、蛍光分光法、FACS、等温滴定熱量測定、および分析用超遠心分離の1つ以上により、実施可能である。
【0131】
二量体型結合タンパク質の特性解析
このようにして得られたユビキチン変異体のさらなる特性解析は、対応する遺伝子カセットを好適な発現ベクター中にクローニングした後、以上に詳述したように可溶性タンパク質の形態で実施可能である。適切な方法は、当業者に公知であるか、または文献に記載されている。二量体型結合タンパク質の例示的な特性解析法は、本発明の実施例の節で概説される。
【0132】
好ましくは、所定の結合パートナーに対して結合親和性を有するタンパク質を検出するステップに続いて、検出されたタンパク質を単離および/または富化するステップが行われる。
【0133】
本発明に係る修飾ユビキチンタンパク質の発現の後、それ自体公知の方法によりさらに精製および富化することが可能である。所定の方法は、当業者にはそれ自体公知のいくつかの因子、たとえば、使用される発現ベクター、宿主生物、意図された使用分野、タンパク質のサイズ、および他の因子に依存する。簡易精製では、本発明に係る修飾タンパク質は、分離材料に対して増大された親和性を有する他のペプチド配列に融合可能である。好ましくは、ユビキチンタンパク質の機能に有害な影響を及ぼさない融合体が選択されるか、または特異的プロテアーゼ切断部位の導入により精製後に分離可能である。そのような方法はまた、当業者にはそれ自体公知である。
【0134】
ベクター、宿主細胞、およびタンパク質生成方法
ベクターは、1種以上の所定の宿主細胞内でベクターの複製を可能にする核酸配列を含有する発現ベクターおよびクローニングベクターでありうる。一般的には、クローニングベクターでは、この配列は、宿主染色体DNAとは独立してベクターの複製を可能にするものであり、複製起点または自己複製配列を含む。そのような配列は、さまざまな細菌、酵母、およびウイルスで周知である。プラスミドpBR322の複製起点は、ほとんどのグラム陰性細菌に好適であり、2μプラスミド起点は、酵母に好適であり、そして種々のウイルス起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV、またはBPV)は、哺乳動物細胞内のクローニングベクターに有用である。一般的には、複製起点成分は、哺乳動物発現ベクターでは必要とされない(SV40起点は、典型的には、初期プロモーターを含有するという理由のみで、使用されることもある)。
【0135】
発現ベクターおよびクローニングベクターは、選択性マーカーとも称される選択遺伝子を含有しうる。典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質もしくは他の毒素、たとえば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセート、もしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与するタンパク質、(b)栄養要求性欠損を補完するタンパク質、または(c)複合培地からは得られない重要な栄養素を供給するタンパク質をコードし、たとえば、遺伝子は、桿菌のD−アラニンラセマーゼをコードする。
【0136】
発現ベクターおよびクローニングベクターは、通常、宿主生物により認識されるプロモーターを含有し、修飾ユビキチン足場タンパク質をコードする核酸に機能可能に結合される。原核宿主と共に使用するのに好適なプロモーターとしては、phoAプロモーター、β−ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系、およびハイブリッドプロモーターたとえばtacプロモーターが挙げられる。しかしながら、他の公知の細菌プロモーターが好適である。細菌系で使用するためのプロモーターはまた、修飾ユビキチン系足場タンパク質をコードするDNAに機能可能に結合されたシャイン・ダルガルノ(S.D.)配列を含有するであろう。
【0137】
真核生物のプロモーター配列は、公知である。実質上すべての真核遺伝子は、転写が開始される部位から約25〜30塩基上流に位置するATリッチ領域を有する。多くの遺伝子の転写開始点から70〜80塩基上流に見いだされる他の配列は、CNCAAT領域(ここで、Nは任意のヌクレオチドでありうる)である。ほとんどの真核遺伝子の3’末端には、コード配列の3’末端へのポリAテールの付加のシグナルでありうるAATAAA配列である。これらの配列はすべて、真核発現ベクター中に好適には挿入される。
【0138】
好適な宿主細胞としては、原核細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、または細菌細胞が挙げられる。好適な細菌としては、グラム陰性またはグラム陽性の生物、たとえばE.コリ(E.coli)またはバチルス属(Bacillus)の種が挙げられる。酵母、好ましくはサッカロマイセス属(Saccharomyces)の種、たとえばS.セレビシアエ(S.cerevisiae)もまた、ポリペプチドの産生に使用されうる。種々の哺乳動物細胞または昆虫細胞の培養系もまた、組換えタンパク質を発現するために利用可能である。昆虫細胞内で異種タンパク質を産生するためのバキュロウイルス系は、Luckow and Summers,(Bio/Technology,1988,6:47)によりレビューされている。
【実施例】
【0139】
本発明のさらなる例示のために、以下の実施例を提供する。とくに、例としてユビキチンの修飾に関して、本発明を実証する。しかしながら、本発明は、それに限定されるものではなく、以下の実施例は、以上の説明に基づいて本発明の実用性を単に示しているにすぎない。発明の完全な開示のために、本出願書類および添付書類で引用された参照文献も参照されたい。それらはすべて、その全体が参照により組み込まれる。
【0140】
実施例1。
挿入断片(伸長構造)を有する修飾ユビキチンタンパク質に基づくヘテロ二量体型結合タンパク質の同定
ライブラリーの構築およびクローニング
とくに指定がないかぎり、たとえばSambrookらにより記載されたような確立された組換え遺伝子的方法を使用した。少なくとも14個の所定のアミノ酸位置の協奏的突然変異誘発により、高い複雑性を有するヒトユビキチンヘテロ二量体のランダムライブラリーを作製した。NNKトリプレットにより置換された修飾アミノ酸は、近位/N末端(第1)のユビキチン単量体中の位置6、8、62、63、64、65、66から選択されるアミノ酸、および遠位/C末端(第2)のユビキチン単量体中の位置6、8、62、63、64、65、66から選択されるアミノ酸を含んでいた。少なくとも配列GIGまたは少なくとも配列SGGGG、たとえば、GIG、SGGGG、SGGGGIG、SGGGGSGGGGIG、またはSGGGGSGGGGを有するグリシン/セリンリンカーにより、両方のユビキチン単量体を遺伝子的に結合(頭−尾)したが、任意の他のリンカーが可能であり、またはリンカーなしが可能である。
【0141】
標的タンパク質VEGF−A
VEGF−Aは、いくつかのアイソフォームで存在する。VEGF121およびVEGF165は、VEGF−A(受託番号p15692)の天然に豊富なアイソフォームである。VEGF121(受託番号p15692−9)およびVEGF165(受託番号p15692−9)は、Humanzyme(製造番号HZ−1206(VEGF121)およびHZ−1153(VEGF165))から購入した。データベース項目と比較して、アイソフォームVEGF165は、シグナルペプチドが含まれていないので26アミノ酸短い。適正グリコシル化が確保されるように、両方のアイソフォームをヒト細胞内で発現させた。
【0142】
TATファージディスプレイの選択
たとえばTATファージディスプレイを選択系として用いて、ヘテロ二量体型ユビキチンライブラリーをVEGF−Aに対して富化した。当技術分野で公知の他の選択方法を使用することが可能である。標的は、タンパク質結合表面上に非特異的に、またはタンパク質に共有結合されたビオチン化残基を介して固定することが可能である。ビオチンを介してストレプトアビジンビーズまたはニュートラビジンストリップ上に固定することが好ましい。標的結合ファージは、溶解状態でまたは固定標的上で選択されている。たとえば、ファージと共にビオチン化および固定化された標的をインキュベートし、続いて、マトリックスに結合されたファージを洗浄し、そしてマトリックス結合ファージを溶出させる。各サイクルで、標的インキュベーション後、ビーズを溶液から磁気的に分離して、数回洗浄した。第1の選択サイクルでは、ビオチン化標的をニュートラビジンストリップに固定し、一方、サイクル2〜4では、溶解状態で選択を行い、続いて、ストレプトアビジン被覆Dynabeads(登録商標)(Invitrogen)上に標的ファージ複合体を固定した。洗浄後、最初の2つの選択サイクルでは、酸性溶液を用いた溶出により標的結合修飾ユビキチン分子のファージを放出させた。選択サイクル3および4では、過剰の標的を用いた競合的溶出によりファージの溶出を行った。溶出されたファージを再増幅した。結合剤の特異性を誘導するために、標的に類似したタンパク質を選択時に組み込むことが可能である。
【0143】
TATファージディスプレイ選択の代替:リボソームディスプレイ選択
たとえばリボソームディスプレイを選択系として用いて、ユビキチンライブラリーを標的に対して富化した。当技術分野で公知の他の選択方法を使用することが可能である。標準的方法に従って標的をビオチン化し、ストレプトアビジン被覆Dynabeads(登録商標)(Invitrogen)上に固定した。PURExpress(商標)In Vitro Protein Synthesis Kit(NEB)を用いて、リボソームとmRNAと新生ユビキチンポリペプチドとを含む三元複合体を集合させた。最初に4ラウンドまでの選択を行って三元複合体をインキュベートし、続いて類似の2ラウンドの選択を行った。各サイクルで、標的インキュベーション後、ビーズを溶液から磁気的に分離して、およびストリンジェンシーの増大されたリボソームディスプレイ緩衝液で洗浄した。最初の2サイクルの選択で洗浄後、ビーズを再び溶液から磁気的に分離し、50mM EDTAの添加により標的結合修飾ユビキチン分子のmRNAをリボソームから放した。選択サイクル3および4では、過剰の標的を用いた競合的溶出によりmRNA複合体の溶出を行った(Lipovsek and Pluckthun,2004)。各サイクル後、RNeasy MinElute Cleanup Kit(Qiagen,Germany)、Turbo DNA−free Kit(Applied Biosystems,USA)、およびTranscriptor Reverse Transcriptase(Roche,Germany)を用いて、RNA精製およびcDNA合成を行った。
【0144】
富化プールのクローニング
第4の選択サイクルの後、合成cDNAをPCRにより増幅し、好適な制限ヌクレアーゼを用いて切断し、そして適合付着末端を介して発現ベクター中にライゲートした。
【0145】
単一コロニーヒット分析
NovaBlue(DE3)細胞(Merck, Germany)にトランスフォームした後、100μg/mlアンピシリンおよび20g/lグルコースを含有するSOB培地中でアンピシリン耐性単一コロニーを増殖させた。自動誘導培地ZYM−5052(Studier,2005)を用いて96ウェルディープウェルプレート中で培養することにより、VEGF−A結合修飾ユビキチンの発現を達成した。細胞を採取し、続いて溶解させた。遠心分離後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(POD)とコンジュゲートされた4μg/mLのVEGF−Aおよびユビキチン特異的Fabフラグメントで被覆されたNunc MediSorpプレート(Thermo Fisher Scientific,USA)を用いて、得られた上清をELISAによりスクリーニングした。検出試薬としてTMB−Plus(KEM−EN−Tec)を使用し、0.2M H
2SO
4溶液を用いて黄色に発色さ、450nm対620nmでプレートリーダーにより測定した。
【0146】
通常、数サイクル、たとえば、4サイクルの選択ディスプレイ対VEGF−Aを行った。最後の2サイクルの選択で、過剰の遊離VEGF−Aを用いて結合分子を溶出させた。成熟により結合分子をさらに選択した。
【0147】
高親和性を有する所定のVEGF−A結合クローンの成熟
VEGF−Aに対して親和性ユビキチン系二量体型結合タンパク質を増強するために、所定の結合タンパク質の二量体のユビキチンビルディングユニット(単量体)をナイーブ単量体ユビキチンライブラリーに融合した。たとえば、二量体型ユビキチン結合ユニットのN末端またはC末端の単量体のいずれかを単量体ユビキチンライブラリーに融合した。数種、たとえば1〜10種、好ましくは3種のVEGF−A結合分子を選択し、そして位置6、8、62、63、64、65、および/または66に置換を有するかつ任意選択で位置61〜62に挿入を有するN末端ユビキチン単量体を、好適なアミノ酸リンカーたとえばGIGにより、ランダム化アミノ酸位置6、8、62、63、64、65、および/または66を有するナイーブ単量体ユビキチンライブラリーに融合した。併行して、位置6、8、62、63、64、65、および/または66に置換を有するヘテロ二量体型結合タンパク質のC末端領域のユビキチン単量体を、好適なアミノ酸リンカーたとえばGIGにより、ランダム化アミノ酸位置6、8、62、63、64、65、および/または66および/または42、44、68、70、および72〜74を有するナイーブ単量体ユビキチンライブラリーに融合した。7つまでのランダム化位置を有する得られた二量体型ユビキチンライブラリーは、プールされ、理論数約1,5×10
10の異なる変異体を呈し、これらは、当業者に公知の方法を用いて、各変異体の10倍提示まで、リボソームディスプレイにより完全にディスプレイ可能であった。混合ライブラリーは、可溶性VEGF121を用いたVEGF−A結合分子の3ラウンドの競合的溶出を含めて4ラウンドのリボソームディスプレイに適用された。
【0148】
VEGF−Aに対する高親和性を有するVEGF−A結合剤は、必ずしも長期間にわたり安定な複合体を形成するとは限らない。いくつかの複合体(ユビキチン二量体およびVEGF−A)は、高いオフ速度を有する。つまり、結合は強いが、複合体は急速に解離する。たとえば、Biacoreアッセイによる決定したとき、より低いオフ速度が望ましい。したがって、高い親和性ただし高いオフ速度を有する変異体からの安定なVEGF−A結合複合体が解離されるよう、16時間オフ速度選択で1ラウンドを行った。溶出は、1000×非結合標的タンパク質を用いて競合的条件下が行われる(たとえばストレプトアビジンビーズに結合された標的タンパク質と比較して)。16時間後、依然として固定標的タンパク質に結合されているすべての結合剤をさらに分析する。この選択の後、当業者に公知の標準的方法を用いて、VEGF−A結合分子を有するプールを発現ベクターにサブクローニングし、以下で説明されるようにヒットスクリーニング(たとえばELISA)でさまざまなタイプのVEGF−Aへの結合に関してプローブした。
【0149】
挿入断片を有するいくつかの例示的なVEGF−A結合タンパク質(たとえば40401)を
図1ならびに表1、2、および3に示す。実施例2に記載されるように結合タンパク質を分析した。
【0150】
実施例2:ヒトVEGF−Aに対する修飾ユビキチン系結合タンパク質の結合分析
実施例2A。濃度依存性ELISAによる修飾ユビキチン系VEGF結合変異体の結合分析。
ヒトVEGF−Aへのユビキチン系変異体の結合を濃度依存性ELISAによりアッセイした。ヒトVEGF−A121またはVEGF−A165および陰性対照としてNGFで被覆されたNUNC−medisorpプレートに漸増量の精製タンパク質を適用した。1ウェルあたり1〜2.5μg/mlで抗原被覆を4℃で一晩行った。PBS、0.1%Tween20 pH7.4(PBST)でプレートを洗浄した後、ブロッキング溶液(PBS pH7.4、3%BSA、0.5%Tween20)を用いて、ウェルを室温で2時間ブロックした。再びPBSTを用いてウェルを3回洗浄した。次いで、さまざまな濃度の修飾ユビキチン系VEGF−A結合タンパク質を、ウェル中、室温で1時間インキュベートした(
図3参照)。PBSTを用いてウェルを洗浄した後、anti−Ubi fabフラグメント(a−Ubi−Fab)PODコンジュゲートを、PBST中の適切な稀釈液(たとえば1:6500)で適用した。300μl緩衝PBST/ウェルでプレートを3回洗浄した。50μlのTMB基質溶液(KEM−EN−Tec)を各ウェルに添加してインキュベートした。0.2M H
2SO
4/ウェルを添加することにより、反応を停止させた。TECAN Sunrise ELISA−Readerを用いて、ELISAプレートの読取りを行った。参照波長として620nmを用いて、450nmで吸光度測定を行った。
図3aは、VEGF−Aへの40401(配列番号2)の非常に高い親和性結合を明確に示しており、見掛けのKD値は、2.2〜2.5nMである。さらなる例が
図3に示される。したがって、ユビキチン野生型中にごくわずかな修飾を行うだけで(各単量体中の6までの置換)、VEGF−Aに対する高い親和性結合がもたらされる。
図2は、VEGF−Aへの40401(配列番号2)の非常に高い親和性結合を明確に示しており、見掛けのKD値は、2.2〜2.5nMである。変異体は、対照(NGF)への結合を示さなかった。他のVEGF−A結合タンパク質のさらなる結果が表2に示される(前掲)。
【0151】
実施例2B。Biacoreアッセイによる修飾ユビキチン系VEGF結合変異体の結合分析。
当業者に公知の方法を用いて、CM5チップ(Biacore(登録商標))上に固定されたVEGFへの結合に関して、さまざまな濃度の変異体を分析した(たとえば、0〜450nMの変異体、好ましくは40401)。得られたデータをBIAevaluationソフトウェアおよび1:1ラングミュア当てはめにより処理した。
図4に示されるように、VEGF165に対する40401のKDは、2.2×10
−8Mであった。結合速度定数が
図4および表2に示される。他のVEGF−A結合タンパク質のさらなる結果が表2に示される(前掲)。
【0152】
実施例3:本発明に係る修飾ヘテロ二量体型ユビキチン系結合タンパク質によるVEGF刺激細胞増殖の阻害
VEGF刺激HUVEC細胞増殖の阻害を次のアッセイにより評価した。10%FCS、0.1mg/mlヘパリン、10ng/ml b−FGFを含むHams F−12 Nutrient Mixture(Kaighn’s Modification,Gibco)中でHUVEC細胞(Promocell)を増殖させ、第5および第6継代を使用した。1日目、6000個の細胞をコラーゲン被覆96ウェルプレート中の完全培地に接種した。その翌日、細胞を100%Hams F12 Nutrient Mixtureと共に6時間プレインキュベートした。この後、培地をプレインキュベーションミックスと交換して、追加された5%FCS、0.1mg/mlヘパリン、およびゲンタマイシンを含有する培地を調製し、VEGF特異的結合タンパク質の希釈系列を15ng/ml VEGF121(Biomol/Humanzyme)とプレミックスした。1:3ステップで希釈系列を作製し(指定どおり1.5μMから出発して)、室温で1時間インキュベートした。各濃度を三重試験方式で試験した。VEGF特異的治療用モノクロナール抗体Avastin(登録商標)(Roche)を対照として使用した(図示せず)。3日後、製造業者の説明書に従ってWST試薬(Roche)を用いて細胞の生存能を評価した。この阻害アッセイの結果が
図4および表2に示される。他のVEGF−A結合タンパク質のさらなる結果が表2に示される(前掲)。本発明に係る結合タンパク質は、HUVEC細胞のVEGF−A誘発増殖の有意な阻害を明確に示す。