特許第6146823号(P6146823)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タイコ エレクトロニクス アンプ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハウツンクの特許一覧

特許6146823微細構造化コンタクト部材を有する電気プラグコネクタ
<>
  • 特許6146823-微細構造化コンタクト部材を有する電気プラグコネクタ 図000002
  • 特許6146823-微細構造化コンタクト部材を有する電気プラグコネクタ 図000003
  • 特許6146823-微細構造化コンタクト部材を有する電気プラグコネクタ 図000004
  • 特許6146823-微細構造化コンタクト部材を有する電気プラグコネクタ 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6146823
(24)【登録日】2017年5月26日
(45)【発行日】2017年6月14日
(54)【発明の名称】微細構造化コンタクト部材を有する電気プラグコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/04 20060101AFI20170607BHJP
   H01R 13/03 20060101ALI20170607BHJP
【FI】
   H01R13/04 E
   H01R13/03 D
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-546418(P2014-546418)
(86)(22)【出願日】2012年12月5日
(65)【公表番号】特表2015-501071(P2015-501071A)
(43)【公表日】2015年1月8日
(86)【国際出願番号】EP2012074544
(87)【国際公開番号】WO2013087487
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2015年10月14日
(31)【優先権主張番号】102011088793.8
(32)【優先日】2011年12月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501090342
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ジャーマニー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツンク
【氏名又は名称原語表記】TE Connectivity Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(72)【発明者】
【氏名】ブルーメンシャイン、 ルディ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、 ヘルゲ
【審査官】 竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−202266(JP,A)
【文献】 特開2006−202569(JP,A)
【文献】 特表2011−526844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/03
H01R 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触表面(120,220,300,400,500)を有する導電性コンタクト部材(110,210)を有する電気プラグコネクタ(100,200)であって、
前記接触表面(120,220,300,400,500)が微細構造(150)を有し、
前記微細構造(150)は、隣接する鱗片が部分的に重なり合っている鱗片状構造(330)を有する電気プラグコネクタ(100,200)。
【請求項2】
前記接触表面(120,220,300,400,500)が錫又は銀、又は錫又は銀の合金を有する請求項1に記載の電気プラグコネクタ(100,200)。
【請求項3】
前記コンタクト部材(110,210)が銅又は銅合金からなり、錫、銀、又は錫合金や銀合金でコーティングされた請求項2に記載の電気プラグコネクタ(100,200)。
【請求項4】
前記接触表面(120,220,300,400,500)は、凸部(310,410,510)及び凹部(320,420,520)を有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気プラグコネクタ(100,200)。
【請求項5】
少なくとも1個の凹部(320,420,520)に潤滑剤が配置された請求項4に記載の電気プラグコネクタ(100,200)。
【請求項6】
前記微細構造(150)は、少なくとも部分的に周期的構造を形成する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電気プラグコネクタ(100,200)。
【請求項7】
前記周期的構造は、少なくとも1つの方向に1μm乃至100μmの範囲内の周期長(331,421,511)を有する請求項6に記載の電気プラグコネクタ(100,200)。
【請求項8】
前記コンタクト部材(110)はコンタクトピンである請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電気プラグコネクタ(100)。
【請求項9】
前記コンタクト部材(210)はコンタクトスプリングである請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電気プラグコネクタ(200)。
【請求項10】
前記電気プラグコネクタ(100,200)は複数のコンタクト部材(110,210)を有する請求項1乃至9のいずれか一項に記載の電気プラグコネクタ(100,200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求項1に記載の電気プラグコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術においては電気プラグコネクタの多くの構造が知られている。電気プラグコネクタは、適切なプラグコネクタ相手部品に接続されて電気接続を行うように設けられる。電気プラグコネクタは一般的に導電性コンタクト部材を有し、このコンタクト部材は、プラグコネクタがプラグコネクタ相手部品に接続される際にプラグコネクタ相手部品のコンタクト部材と接触する。プラグコネクタのコンタクト部材はコンタクトピンとして構成されることが多く、プラグコネクタ相手部品のコンタクト部材はコンタクトスプリングとして構成される。プラグコネクタとプラグコネクタ相手部品の接続状態では、コンタクトスプリングは、コンタクトスプリングとコンタクトピンとの間の確実な導電接続を保証するためにコンタクトピンに弾発力を印加する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
既知の電気プラグコネクタのコンタクト部材は、錫めっきされた接触表面を有することが多い。プラグコネクタ相手部品に対するプラグコネクタの最初の接続時に、コンタクトスプリングによってコンタクトピンに加えられる弾発力により、錫めっき面から錫が部分的に擦れ落ちることが多い。これには、プラグコネクタをプラグコネクタ相手部品に接続するために大きな挿入力を加えなければならないという欠点がある。更に、コンタクト部材同士間の移動抵抗が不必要に増加することにより、一方又は両方の接触表面が摩耗によって変化する可能性がある。
【0004】
従って、本発明の目的は、改良された電気プラグコネクタを提供することである。この目的は、請求項1の特徴を有するプラグコネクタによって達成される。好適な発展形態は従属請求項に記載される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従う電気プラグコネクタは接触表面を有する導電性コンタクト部材を有する。この場合、前記接触表面は微細構造を有する。前記プラグコネクタが前記プラグコネクタ相手部品に接続される際に、前記コンタクト部材の接触表面とプラグコネクタ相手部品のコンタクト部材の接触表面との間の支持面が前記微細構造によって減少するので有利である。これにより、前記接触表面同士間に作用する摩擦力が減少し、これにより前記プラグコネクタの前記プラグコネクタ相手部品への接続に必要な挿入力が低減するので有利である。前記接触表面同士間の支持面の減少は同時に前記接触表面同士間の接触点の増加を伴い、これにより前記接触表面同士間の電気的移動抵抗が減少するので有利である。本発明に従う前記プラグコネクタの他の利点は、前記微細構造化によって前記接触表面の摩耗が減少することである。
【0006】
前記電気プラグコネクタの有利な実施形態では、前記接触表面が錫又は銀、又は錫又は銀合金を有する。錫、銀、又はそれらの合金は、好ましい電気的及び機械的特性を有し、それによって耐久性のある接触表面が生成されるので有利である。
【0007】
前記プラグコネクタの好適な実施形態では、前記接触表面が銅又は銅合金からなり、錫、銀、又は錫合金や銀合金でコーティングされている。この場合、前記コンタクト部材は低オーム抵抗を有するので有利である。更に、銅又は銅合金からなる錫コーティング又は銀コーティング作業又は前記コンタクト部材のコーティング作業中に、硬質の金属間化合物が形成され、この金属間化合物は、前記コンタクト部材の微細構造化時に前記接触表面の表面に達し、それによりプラグコネクタ相手部品のコンタクト部材が前記コンタクト部材の前記接触表面上でより容易に滑動することができる。
【0008】
前記電気プラグコネクタの一実施形態では、前記接触表面が凸部と凹部を有する。これにより、前記プラグコネクタの前記コンタクト部材の前記接触表面とプラグコネクタ相手部品のコンタクト部材の接触表面との間の支持面が減少するので有利である。
【0009】
電気プラグコネクタの一発展形態では、少なくとも1個の凹部内に潤滑剤が配置される。前記接触表面の1個以上の凹部内に潤滑剤を設けることにより、前記プラグコネクタをプラグコネクタ相手部品に接続するのに必要な挿入力が更に低減するので有利である。
【0010】
前記電気プラグコネクタの一実施形態では、前記微細構造が少なくとも部分的に周期的構造を形成する。この場合、前記微細構造は簡単な方法で生成することができ、再現性を有するので有利である。
【0011】
前記電気プラグコネクタの好適な実施形態では、前記周期的構造が少なくとも1方向に1μm乃至100μmの範囲内の周期長を有する。この程度の周期的構造であれば、接触表面の機械的及び電気的特性が特にはっきりと向上することが実験により示されている。特に好適な実施形態では、前記周期長は2μm乃至30μmの範囲内であり、約10μmまでの範囲内であることが好ましい。約10μmのサイズが好ましいことが実験により判明している。
【0012】
前記電気プラグコネクタの一実施形態では、前記微細構造は鱗片状構造を有する。鱗片状構造は、前記接触表面の電気的及び機械的特性の向上に適した微細構造を構成することが判明しているので有利である。
【0013】
前記電気プラグコネクタの好適な実施形態では、前記微細構造は、前記接触表面のレーザ又は電子ビーム処理作業によって生成される。レーザ又は電子ビーム加工作業を使用することにより、広範囲の接触表面積を極めて短時間で正確且つ再現可能な方法で微細構造化することができる。
【0014】
前記電気プラグコネクタの一実施形態では、前記コンタクト部材はコンタクトピンである。前記プラグコネクタ相手部品のコンタクトピンが接続時に前記コンタクトピンの接触表面の広い領域に亘って滑動するので、コンタクトピンの接触表面の微細構造化は特に効果的なので有利である。
【0015】
前記電気プラグコネクタの他の実施形態では、前記コンタクト部材はコンタクトスプリングである。コンタクトスプリングの接触表面の微細構造化も前記コンタクトスプリングの機械的及び電気的特性を向上させるので有利である。
【0016】
前記電気プラグコネクタの一発展形態では、前記電気プラグコネクタは複数のコンタクト部材を有する。この場合、前記プラグコネクタとプラグコネクタ相手部品を接続するのに必要な前記挿入力が、接続される前記コンタクト部材の数に応じて変わるので、前記コンタクト部材の前記接触表面の前記微細構造化によって生じる前記挿入力の低減が特に顕著なので有利である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図面を参照して本発明を以下により詳細に説明する。
図1】2個のプラグコネクタの接続中のコンタクトピンとコンタクトスプリングの概略図である。
図2】第1の微細構造化接触表面の平面図である。
図3】第2の微細構造化接触表面の平面図である。
図4】第3の微細構造化接触表面の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、2個のプラグコネクタの接続中のこれらプラグコネクタのコンポーネントの非常に概略的で且つ部分の断面図である。
【0019】
図1は、第1のプラグコネクタ100の第1のコンタクト部材110を示す。第1のコンタクト部材110は、コンタクトピンとして構成され、図1では断面図で示されている。第1のコンタクト部材110は、導電性であり、基材130と、基材130の表面上に配置されたコーティング140とを備える。基材130は例えば銅又は銅合金である。コーティング140は例えば錫、銀、又は錫や銀、その他の元素の合金である。コーティング140は、例えば溶融錫めっきによって基材130に施されている。基材130とは反対側のコーティング140の表面が、第1の接触表面120を形成する。
【0020】
図1は、更に、第2のプラグコネクタ200の第2のコンタクト部材210の一部を示す。第2のプラグコネクタ200は、第1のプラグコネクタ100に対するプラグコネクタ相手部品として構成され、第1のプラグコネクタ100に接続するために設けられる。第2のコンタクト部材210は、第1のプラグコネクタ100と第2のプラグコネクタ200が接続された時に、第1の接触表面120に接触する第2の接触表面220を有する。第2のコンタクト部材210は、コンタクトスプリングとして構成され、限度内で弾性的に変形させることができる。
【0021】
図1に示すように、第1のプラグコネクタ100と第2のプラグコネクタ200が接続される場合、第1のコンタクト部材110と第2のコンタクト部材210との間を導電接続を行うために、第2のプラグコネクタ200の第2のコンタクト部材210が第1のプラグコネクタ100の第1のコンタクト部材110に接触する。第1のプラグコネクタ100と第2のプラグコネクタ200との接続時は、第1のプラグコネクタ200の第1のコンタクト部材110は、第2のプラグコネクタ200の第2のコンタクト部材210に対して第1の相対的挿入方向111に移動する。第2のプラグコネクタ200の第2のコンタクト部材210は、第1のプラグコネクタ100の第1のコンタクト部材110に対して、第1の相対的挿入方向111とは反対方向である第2の相対的挿入方向211に移動する。
【0022】
第2のコンタクト部材210の第2の接触表面220によって第1のコンタクト部材110の第1の接触表面120に加えられる押圧力により、第1の接触表面120と第2の接触表面220との間では摩擦力が働くが、第1のプラグコネクタ100と第2のプラグコネクタ200が接続される間はこの摩擦力を克服しなければならない。従来のプラグコネクタに対してプラグコネクタ100,200を接続するために必要な挿入力を低減するために、第1のプラグコネクタ100の第1のコンタクト部材110の第1の接触表面120は、以下に詳細に説明する微細構造150を有する。微細構造150は、第1の接触表面120の微細構造化によって生成される。プラグコネクタ100,200の接続中は、プラグコネクタ100,200が接続された後に部分的に平滑化された微細構造160が残るように、第1の接触表面120の微細構造150は、第1の接触表面120に沿って滑動する第2のコンタクト部材210によって部分的に平滑化される。
【0023】
他の実施形態では、第2のプラグコネクタ200の第2のコンタクト部材210の第2の接触表面220が微細構造を備えることもできる。この実施形態では、第1のプラグコネクタ100の第1のコンタクト部材110の第1の接触表面120も微細構造150を備えていてよい。しかしながら、この実施形態では、第1のプラグコネクタ100の第1のコンタクト部材110の第1の接触表面120上の微細構造150は省略されてもよい。しかしながら、この実施形態の欠点は、第2のコンタクト部材210が曲線構造のため、第1のコンタクト部材110の第1の接触表面120に接触する第2のコンタクト部材210の第2の接触表面220の一部が、第2のコンタクト部材210の第2の接触表面220に接触する第1のコンタクト部材110の第1の接触表面120の一部よりも著しく小さいことである。これにより、第2のコンタクト部材210の第2の接触表面220の微細構造化では、第1のコンタクト部材110の第1の接触表面120の微細構造化ほどはっきりとプラグコネクタ100,200を接続するのに必要な挿入力の低減が生じない。
【0024】
図2は、第1の微細構造化接触表面300の概略図である。図1の第1のコンタクト部材110の第1の接触表面120上の微細構造150は、一実施形態において第1の微細構造化接触表面300と同様に構成されてもよい。
【0025】
第1の微細構造化接触表面300は、一定の間隔で周期的に配置された複数の鱗片330を有する。隣接し合う鱗片330は部分的に重なり合っている。その結果、各鱗片330は突出領域と凹陥領域を有する。隣接する鱗片330に重なる鱗片330の部分は、凸部310を形成する。隣接する鱗片330が重なる関連する鱗片330の領域に隣接する鱗片330の部分は、凹部320を形成する。凸部310は、第1の微細構造化接触表面300に対して垂直な方向に凹部320よりも高くなっている。凸部310と凹部320との間の高低差は、数百ナノメートル乃至数マイクロメートルの範囲内でよい。
【0026】
第1の微細構造化接触表面300の横方向に、鱗片330は鱗片サイズ331を有する。鱗片330によって形成される第1の微細構造化接触表面300の周期的構造は、従って、少なくとも1つの横方向の空間方向に、鱗片サイズ331に対応する周期長を有する。鱗片サイズ331は、1μm乃至100μmの範囲内であることが好ましい。特に好適には、鱗片サイズ331は、2μm乃至30μmの範囲内であり、特に約10μmまでの範囲内とすることが非常に好ましい。
【0027】
図3は、例示的な第2の微細構造化接触表面400の概略図である。図1の第1のプラグコネクタ100の第1の接触表面110の第1の接触表面120上の微細構造150は、第2の微細構造化接触表面400と同じ方法で構成されてよい。
【0028】
第2の微細構造化接触表面400は、周期的な凸部410と凹部420による規則的なパターンを有する。凹部420は円盤状の穴として構成される。凸部410は、第2の微細構造化接触表面400に対して垂直な方向に凹部420よりも高くなっている。第2の微細構造化接触表面400の平面では、2個の隣接し合う凹部420は少なくとも1つの空間方向に穴間隔421を有する。その結果、凸部410と凹部420によって形成された第2の微細構造化接触表面400の周期的構造は、少なくとも1つの横方向の空間方向に、穴間隔421に対応する周期長を有する。穴間隔421は、例えば、この場合も同様に1μm乃至100μmの範囲内であり、2μm乃至30μm程度が好ましく、約10μmまでの範囲内とすることが特に好ましい。第2の微細構造化接触表面400に対して垂直な方向の凹部420に対する凸部410の高さは、同様に数百ナノメートル乃至数マイクロメートルでもよい。
【0029】
図4は、例示的な第3の微細構造化接触表面500を示す。図1の第1のプラグコネクタ100の第1のコンタクト部材110の第1の接触表面120上の微細構造150は、第3の微細構造化接触表面500と同様に構成することができる。
【0030】
第3の微細構造化接触表面500は、凹陥と隆起を交互に繰り返す規則的な周期的ストリップ構造を有する。隆起は凸部510を形成する。凹陥は凹部520を形成する。凹部520は、いずれも2個の凸部510間に配置される。凸部510は、いずれも2個の凹部間に配置される。2個の連続する凹部520は、互いに対して凹陥間隔511を有する。凹陥間隔511は、1μm乃至100μmのサイズを有することが好ましく、2μm乃至30μmの範囲内のサイズであることが好ましく、約10μmまでの範囲であることが特に好ましい。隆起即ち凸部510は、凹陥即ち凹部520と同じ幅を有してもよい。しかし、凹陥即ち凹部520は、隆起即ち凸部510よりも幅広又は幅狭となるように構成してもよい。凹部520に対する凸部510の高さは、数百ナノメートル乃至数マイクロメートルの範囲でもよい。
【0031】
第3の微細構造化接触表面500の凸部510及び凹部520の延在方向は、第1のプラグコネクタ100の第1のコンタクト部材110の第1の相対的挿入方向111と平行又は垂直、又はそれ以外の角度を有するようにしてもよい。
【0032】
第1のプラグコネクタ100の第1のコンタクト部材110の第1の接触表面120上の微細構造150は、例えば、図2の第1の微細構造化接触表面300と同じ方法で又は図3の第2の微細構造化接触面400と同じ方法で、又は図4の第3の微細構造化接触表面500と同じ方法で構成される。しかしながら、微細構造150は異なるように構成されてもよい。微細構造150は、第1の接触表面120をレーザ又は電子ビームを用いて微細構造化することによって生成されることが好ましい。レーザ又は電子ビームを使用することにより、非常に大きな接触表面を極めて短時間で微細構造化することができるので有利である。
【0033】
第1の接触表面110が生成された後に、第1のコンタクト部材110の第1の接触表面120に微細構造150を設けてもよい。或いは、第1の接触表面110は、予め微細構造150が設けられたストリップ材料から生成されていてもよい。この生成方法では、例えば、基材130のストリップにまず溶融錫めっきによってコーティング140を設ける。次に、後に第1の接触表面120を形成するコーティング140の表面に、レーザ又は電子ビームによって微細構造150を設ける。次に、ストリップ材料から第1の接触表面110を作製する。
【0034】
第1のプラグコネクタ100の第1のコンタクト部材110の第1の接触表面120上の微細構造150の存在により、第1のプラグコネクタ100を第2のプラグコネクタ200に接続させる間、第1のプラグコネクタ100の第1のコンタクト部材110の第1の接触表面120と第2のプラグコネクタ200の第2のコンタクト部材210の第2の接触表面220との間の支持面が減少する。これにより、プラグコネクタ100,200を接続するのに必要な挿入力が低減する。更に、微細構造150により、プラグコネクタ100,200が接続されている間、第1の接触表面120上で錫の摩耗及び錫の蓄積(雪掻き効果(snow shovel effect))が減少する。それにより、プラグコネクタ100,200を接続するのに必要な挿入力も低減される。
【0035】
例えば銅からなる基材130への例えば錫からなるコーティング140の塗装中、コーティング140の材料と基材130の化合により金属間化合物が部分的に形成され、この金属間化合物はコーティング140の材料よりも高い硬度を有する。これは、特にコーティング140が溶融錫めっきによって基材130に施される場合に当てはまる。微細構造150の生成時、より硬度の高い金属間化合物が部分的に第1の接触表面120に到達する。その結果、第1のコンタクト部材110の第1の接触表面120が、第2のコンタクト部材210の第2の接触表面220上をより良好に滑動するようになる。これにより、プラグコネクタ100,200を接続するのに必要な挿入力も低減する。第1の接触表面120の微細構造化の後に第1の接触表面上に残るコーティング140の材料(例えば錫)が、プラグコネクタ100,200の接続中に、第1のコンタクト部材210の第2の接触表面220に第1のコンタクト部材110の第1の接触表面120上をより容易に滑動させる潤滑剤として更に作用する。それにより、プラグコネクタ100,200を接続するのに必要な挿入力も低減する。
【0036】
第1の接触表面120上の微細構造150に形成された凹部320,420,520は、更なる潤滑剤を受容するために使用されることもできる。この潤滑剤は、例えば微細構造150に備わる第1の接触表面120に塗り付けることによって凹部320,420,520に取り込まれる。この潤滑剤は、例えば、グラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェンMoS2及びそれらの混合物等の、オイル、グリース、ペースト、又は固形潤滑剤を有する。凹部320,420,520に配置された潤滑剤により、プラグコネクタ100,200を接続する際に第2のコンタクト部材210の第2の接触表面220が、第1のコンタクト部材110の第1の接触表面120上をより容易に滑動するようになる。これにより、接続に必要な挿入力が更に低減する。
【0037】
第1の接触表面120上に配置された微細構造150により、更に、プラグコネクタ100,200を接続する際に第1の接触表面120と第2の接触表面220との間の接触点の数が増加する。これは、微細構造が設けられていない接触表面であっても顕微鏡的に見れば平らではないからである。第2のコンタクト部材210の第2の接触表面220と第1のコンタクト部材110の第1の接触表面120との間の接触点数の増加により、第1のコンタクト部材110と第2のコンタクト部材210との間の電気的移動抵抗が減少する。この移動抵抗の減少は、第1のコンタクト部材110の第1の接触表面120上の微細構造150を図4の第3の微細構造化接触表面500と同様に構成する場合に特に明らかであることが実験から分かっている。
図1
図2
図3
図4